シナリオ詳細
spooky night!
オープニング
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のっぺりと影が伸び上がり揺らいでいる。笑った影に潜んだのは小さな誰か。
幻燈の灯り連なるその場所は昼の太陽も目が眩む。
魔女の魔法の夜にだけ開かれるフェアリーテイル。夜の国。
君の欲しいあかりはここにはあるだろうか?
屹度、道を示してくれるから――さあ、迷子のおばけさん、どうぞ遊びにいらっしゃい?
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「大変、大変! みんな居るかい!? おねがい! 僕に力を貸して欲しいんだ!」
――さぁさ、お手を拝借。幻燈の夜市(フェアリーテイル)へ行ってみよう!
もうすぐ『ファントムナイト』がやってくる!
魔女によるとびきりお茶目な魔法は姿さえも変えてしまうから。君が誰だか分からなくなる準備をしておかなくちゃ!
荷ほどきをしていた商人は鼻歌交じりの語り部へとこう告げた。
『もうすぐ、幻燈の夜市が開かれる。砂漠の夜が、色とりどりのあかりで満たされるんだよ』
愉快で可笑しいおばけの夜に道導が市にかんばせを連ねる。
そんな祭りにとびきりの『お宝』を狙う悪戯っこ達がやってくる。
サンティール・リアン (p3p000050)は朗々と歌うようにそう言った。
「盗賊団『瑕疵の牙』は傲慢にも市のいちばんを狙おうとしているのさ。
それはなにって? 『燭光の月』! 彼等はいちばん美しいものが好きだから。
きみたちも攫われて仕舞わぬようにね? そして、あの美しい月を僕等の手で守って見せよう」
にんまりと微笑むサンティールにブラッド・バートレット (p3p008661)は小さく頷いて。
「ソレはどの様なものなのですか?」と問い掛けた。
一等美しいその月は橙色の光を灯してゆらゆらと。薄く作られた光膜が仄明かりに道を示すと囁かれて。
夜市に連なる幻燈を奪われてしまわぬように守らなくてはならないと。一等素敵な使命を果たせばこの夜市を見て回れるだろうかとちょっぴりとした『おねだり』を潜ませて。
「力を貸してくれるかい?」
「勿論だよ。けれど、その『瑕疵の牙』という盗賊は美しいものが好き……なんだよね?」
首を傾げたアレクシア・アトリー・アバークロンビー (p3p004630)にサンティールは頷いた。
「きみの瞳も、きみの髪も。彼等は何だって美しいと思えば奪ってしまうから。どうか気をつけて」
髪を指さされたアーリア・スピリッツ (p3p004400)が「まあ!」とおっかなびっくり悲鳴を上げて見せた。
幻ばかりの悪戯の夜に姿を変えてやってくる。彼等の悪戯を防ぐのは至難の業かとハンナ・シャロン (p3p007137)が唇を尖らせて。
「ふぁんとむないと、というのは不思議な祭りですね」
神威神楽には縁もない。霞帝が受入れるであろうこの愉快な祭りはルーキス・ファウン (p3p008870)にとってもまだ慣れず。
なりたい姿になれると囁かれればアーマデル・アル・アマル (p3p008599)はさて何になろうかと首を捻って。
「アチラが『姿を闇に紛らわせる』ならこちらもそうしたらいいかもしれないな? 特に、イレギュラーズは目立つから」
ラサの街では知らぬ者はあまりに少ないエルス・ティーネ (p3p007325)はそうねと頬を朱色に染めて。
「夜市の不思議な魔法に掛けられて仕舞えば良いって事だろう?」
スティーブン・スロウ (p3p002157)が愉快だと微笑めば、「仕事を熟すのも大事です」と星穹 (p3p008330)は揶揄うように囁いて。
怪盗気取りの彼等を『お縄』にするのは夜闇に潜んだ『おばけ』の仕事。
さあさ、みなさま。お手を拝借。とびきり素敵な夜にしましょう――?
- spooky night!完了
- GM名日下部あやめ
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2021年10月20日 22時05分
- 参加人数10/10人
- 相談8日
- 参加費---RC
参加者 : 10 人
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参加者一覧(10人)
リプレイ
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きらり、きらりと光が落ちて。ファントムナイトの喧噪に踊るように繰り出せば『誰か』も問わずに一礼を。無粋なことなど今日は厳禁。この灯りに酔い痴れて――ランタンの明かりが『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)の横顔を照らす。
なりたいものと問われてもアーマデルの『過ぎた日々』はそんなことを思いつきもしなかった。けれど、今年は『俺を望んでくれる者のため、俺は俺で』なんて。
甘い言葉を耳にして、黒猫の耳がぴこりと揺れる。『竜首狩り』エルス・ティーネ(p3p007325)が告げたい愛の言葉はこのオアシスの何処かの彼に向けたいけれど。今宵の魔女は『わるいこどもたち』にとびきりの魔法をかけて無くてはならないから。ふわりふわりと揺らいだ尾が恥じらうように宙を踊って。
「ね、あの……猫耳と尻尾ってこんな感じ? なんだかいつもと違う格好だからソワソワしちゃうわ……」
恥ずかしがり屋の黒猫に揶揄い笑った髪長姫は「愛しい方も睦み言を囁くでしょう」と揶揄って。
「な、あの方は関係ないでしょ! ま、まぁ……この姿も見てもらいたいとか……そ、そんな事思ってない…わけでもない…けれど…な、なんて! も、もう! 行くわよ!」
花をあしらった銀髪に、柔らかな布で出来たドレスをふわりと揺らした『星雛鳥』星穹(p3p008330)に『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)はくすりと笑う。恋する乙女は何時だって愛らしい。エルスも星穹も心を満たす相手が側に寄り添えば忽ち花開くように微笑むだろう。
とんがり帽子にワンピース。美しい魔女はマジカル・ブルームを『えいっ』と振るい古めかしい箒へと変化させて。
ファントムナイトは悪戯っ子が何処からともなく現れる。其れも限度があるのだと『てちてち』歩いた『武の幻想種』ハンナ・シャロン(p3p007137)。大きなペンギンさんが拗ねたように頬を膨らませれば『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)は愛らしいと頬を突いて。
「キレイなものについつい目が奪われてしまう気持ちがわかるけれど。
だからといって、それを自分のものにしようとする悪い子には、少しお仕置きが必要だね」
「そうですね。何事にも限度が必要。粋すぎたら『お仕置きの魔法』がやってくるんですから!」
胸張ったペンギンに笑み零したアレクシアは純白の翼を揺らがせて。何時の日か憧れたお伽話の天使様。届かぬ憧れに姿だけでもと身を委ねれば、その純白を見つめていた『散華閃刀』ルーキス・ファウン(p3p008870)はふと息を飲む。
「これが『ふぁんとむないと』……初めてです。夜市も皆さんの仮装を見るのも楽しみですね」
貴族の着用する豪奢な装うに仮面を着けて怪人を思わせれば、傍らの怪盗は「それぞれの自由な発想から生まれる仮装が素敵ですね」と頷いて。
怪盗、『0℃の博愛』ブラッド・バートレット(p3p008661)は此度の『盗人』たちには苦言を呈す。
「悪戯とはいえ、どの国でも常に神に見られているという考えはあります。俺達で未遂に終わらせるよう努めましょう」
神様は人々の笑みを害する行いを決して許しはしないだろう。ブラッドが、眉潜めればその眼前に薔薇が一輪差し出されて。
マントをひらりと揺らがせて。『雲雀』サンティール・リアン(p3p000050)は夜市を舞台に練り歩く。
「ごぞんじ? 月の女神と星々が紡いだ、あえかな燈りに誘われて、いたずらを企む子たちがいるんだって。
でもでも。こわがらないで! 今宵彼らのこころを射止めるのはどのあかりでもないのさ」
皆の目を奪うように笑みを零して。サンティールは雄弁に。誰も彼もが語り部を見遣る。言葉は巧みに、姿は煌びやかに。
巨大なはさみを手にした裁縫屋さんは賑やかな彼ら彼女らを眺め見る。『こわいひと』スティーブン・スロウ(p3p002157)は手をぱちりと大きく叩いて。
「さぁさぁ、今夜はお祭りだ! 景気よく行こうぜ! 子供にはお菓子を、お嬢さんには悪戯と花を」
誰も彼もが『面白おかしく』笑い合う。そんな恐ろしくも愉快な夜がやってきた。月を一滴、落とした滴を愛したならばどうぞ言葉にして頂戴?
「魔女さま、天使さま! 首尾はどうだい?」
サンティールが囁けば、空から降ったのは目を引くきらりと輝く星屑。アーリアの『魔法』の傍らで天使の光があたりを照らす。
「幕開けの序曲は奏でたわよぉ、青薔薇の怪盗さん」
「青薔薇の怪盗さん、首尾は上々。でも、いたずらっ子は諦めが悪いものだから」
アレクシアの言葉に頷いて。薔薇を一輪手にしたサンティールは手を叩く。
「わあ! せら、きれい!」
ぱちりと。瞬いた姫君は小さく微笑んだ。綺麗だなんてことばは、太陽の為にあるもので。あの輝かんばかりの太陽(きみ)が夜闇を照らしてくれるから――光(ことば)がきらりと降ってくる。それは、まるで。魔法のようだと、思った。
●
飴細工の薔薇が光に照らされ色をこぼれさせて。ブラッドはサンティールと共にランプの明かりを受け続ける。
彼ら、彼女らの『舞台』には特別なるゲストが存在していた。その名も『瑕疵の牙』。今宵を無粋に騒がせた悪戯っ子の集団だ。
イレギュラーズはその尻尾をちょっぴり掴んで、こっちへいらっしゃいと手招いた。
「こんばんは、素敵な夜ですね。今宵の俺達は幻かもしれません、夢か現実か知りたければしっかり見ていてください」
目を離しては霞のように、靄のように、消えてしまうから。そんな悪戯めいた言葉に誘われて、ひらりと躍り出たルーキスが恭しくも傅いた。
「今宵は仮面舞踏会。不思議な魔法に彩られた夜を存分に楽しみましょう」
囁く言葉は可憐なる。「これは美しいお嬢さん。私と踊って頂けませんか?」なんて、柄にもないと呟いて。照れは忘れたように『ターゲット』を見定める。獰猛なる獣のように目を細めた青年が手をそっと握ったのは『瑕疵の牙』――悪戯っ子達のお出ましだ。
菓子を容れた陽気なバスケットを手にしていたアーマデルは焔の如くうっすらと影を纏う。霊魂をモチーフにしたその姿。
自身は霊魂と疎通する。故郷ではヒトの本体は魂の方だとされていた。肉体は容れ物であるが故。アーマデルは『自分そのもの』をイメージしたのだろう。
遺体は焼かねば『死』が凝って屍人になってしまう。だからこそ、遺体を灼く火は限りなく大切で。彼の神は樹木由来の神であるが故、取り扱いには注意を。火は恐れと畏れ、二つの意味を込めて。彼は纏い『立ち塞がった』
美しくもほの暗い気配。その傍らに立っていたペンギン――ハンナは顔を上げて「魔女様、天使様、いらっしゃいましたね!」と微笑んだ。
「さぁ、魔法の夜を、はじめましょう」
星纏い。姫君は堂々とカーテシ―をひとつ。星穹はサンティールの口上に合わせて穏やかに微笑んだ。
目を奪うそれを見遣って美しいと手を伸ばすのは短い髪の娘。そばかすの散った彼女は長い髪に憧れるように飛びかかる。
「……ブラッド! きみも! きみも! 今宵の僕らは、こころを絡め取る薔薇の怪盗さ。
ごきげんよう、瑕疵の牙諸君! 美しさに目を奪われるは必然だけれど、無理矢理に奪うのはいただけないね。
月よりも、星よりも輝いてみせるから……僕から目を離しちゃあ、いやだよ?」
囁いて、サンティールが星穹の肩を抱く。お姫様を護る騎士の如く薔薇を一輪投げやれば、姫君はくすりと小さく笑みを零した。
「派手に騒ぐのはそろそろこの辺にしときましょ? でもって……そろそろお仕置の時間よ?」
ゆらりと由来だ猫の尾に。『勝手知ったる』ラサの街の騒動にエルスが唇を尖らせて。
浪々なる誘い文句を口にしたルーキスの側で踊るように俊敏に。猫のように靱やかに。エルスがするりと飛び出して。
黒猫は影と共に密やかに、悪戯っ子の夜を彩って。
「美しき花と剣の魔法を見せて差し上げましょう」
――とはいっても付与魔法。だって、私が倒れなければ、彼等の罪は軽くなる。盾は傷を作らせないためにあるのだから。
剣を手にせず、姫は受け止めるために立っている。星穹のかたわらでぴょいんと跳ねたハンナはてちりとステップを一つ。
踊るように叩きつけるペンギンアタックの背後で光帯びたのはアレクシアの光。
神聖なる天使様は、少し気恥ずかしいけれど。劇舞台だと思えば少しは気楽になってくるから。瑕疵の牙たちは『お目当て』から少しの浮気心。
輝く天使様へと視線を奪われれば、その側に小さな妖精達がくすくすと笑みを浮かべた。『ブーザァ・ブーザァ』は酔っぱらい妖精達との楽しいワルツ。誰も彼も、君も貴方も。一緒に飲めばお友達だというように。
魔女様の気まぐれに応えて楽しげに妖精達があたりを踊る。「ぎゃあ!」と叫んだ少年の手を掴み、あっちへどうぞと妖精達が踊り出す。
「そんなにコイツが欲しい?えーどうしようかなぁ?」
誘いように悪戯めいて微笑んだスティーブンに少年が飛びかかる。まるで闇が伸びるように影が背を伸ばせばそれさえ魔法めいて感じさせて。
ひょい、と身を逸らしたスティーブンのそばにアーマデルが『面白おかしく』攻撃放つ。
「わあ!」
驚いて声を上げた少年はそれでもスティーブンが手にした袋を狙い続ける。その中に、きっととびきりの素晴らしいものが入っている。
そんな風に考えて走り寄っていく子供は「何が入ってるんだ!」と叫んだ。
「中身? そりゃー綺麗な雪の結晶よ。今じゃ水だけどな」
――びっくり。目を見開いた少年の前にそらのかけらが花開く。
サンティールがくすりと笑って「悪戯だね」と微笑めばスティーブンも「まあ」と可笑しそうに笑みを返して。
ルーキスの仮面を取っ払ってやるのだと意気込んだ少女に「秘密ですよ」とささやき声が一つ。
「頂戴! 綺麗な目をしているものね!」
「うつくしいものを映す瞳はうつくしくなるのですよ――貴方の瞳だって」
ひらりと。踊るように星穹が傍らに立ち、その手を掴む。ぐるん、と。ダンスホールで笑うように踊りに誘えば少女の脚が小さく縺れる。
夜市の皆を怯えさせないように。どこか演劇めいて。楽しげに。誰も彼もが『不思議な夜』に魅せられているから。
笑ってしまうほどに穏やかな夜を過ごしていよう。
「っと、お仕置もやりすぎちゃあダメよね? 仕上げは他へおまかせしましょうか!」
エルスが目配せすれば、目映く薔薇が花開く。さあ、目を離しちゃいけないと囁いたからにはこっちを向いて――
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「さて、終わったら夜市に……の、前に!
綺麗な天使様はちょーっと自分を二の次にしがちだから、汚れを落としましょうね?」
魔女様の視線が少し痛かったけれど。アレクシアは気恥ずかしいと肩を竦めて。アーリアが「だめよ」とこつりと額に優しくこぶしを当てれば、アレクシアは小さく笑う。彼女は自分が傷つく位ならば大丈夫だと全てを受け入れてしまうから。
「ささ、これでおっけー!」
折角の白が台無しだと整えて。『魔女様の素敵な魔法』にかけられた『天使様』はありがとうと穏やかに笑みを零した。
気を失った『悪戯っ子』たちが狙ったランプは無事に灯されて。少しして、目が覚めた彼らが驚いたように暴れ出す。
「悪戯っ子さんたち」とサンティールが呼びかければおっかなびっくり『瑕疵の牙』の盗賊達が目を見開いた。盗賊なんて、名ばかりで。悪戯ごっこの綺麗な者が大好きな。そんな普通の少年少女にアレクシアは「だめだよ」と目を合わせて。
反省してくれたのならば、ブラッドはサンティールの言葉の通り『お祭りを楽しむ』為の準備を整える。
「祭りは皆で楽しむべきだと聞きました。なので、この様なお願いを聞いてはいただけませんでしょうか」
ブラッドは依頼人へと向き直る。今回はお説教で『悪戯』を勘弁して遣ってはくれないか。また同じ事があったなら、喜んで依頼を受ける事。
それから『わるい子』(かれら)には用意したお菓子を配るお手伝いを頼むこと。その際には参加者の笑顔を奪ってはならないと。
「そりゃあ、言うことを聞いてくれるならば……まあ。でも良いのかい? アンタらも困っただろう」
頬を掻く店主にブラッドは「お祭りですから」とゆるゆると頷いた。
「さあ、ブラッド! お祭りに行こう!」
笑うサンティールの声を聞きブラッドは頷いた。
「罪を憎んで人を憎まず。苦い思い出ではなく後の笑い話に昇華して来年また正しくお祭りを楽しめればと思います」
サンティールの呼びかけに、ブラッドは「お待たせしました」と顔を見せた。さあ、今から皆で夜市を楽しもう。
「ハンナ、あるける? おててつないであげる! 雪風、僕たちの活躍どうだった? きみの好きなヒロインみたいになれたかなあ」
ハンナの手をぎゅうと繋いだサンティールに雪風は「勿論。格好良かった」と微笑んだ。
「まあ! 手を繋いでくださるのですか、サティ様。ありがとうございます!
この姿だと歩幅が小さくなってしまうのでとても助かります!!」
てちてちと音がしそうな程にゆっくりと。夜の記念を探しに行こうと手を握れば暖かい。
「十三人の上司と、それから……ううん。その箱をひとつ、郵送してくださるかしら」
首を傾いだ髪長姫の選んだランプをまじまじと見遣って「これも良い」とアーマデルは頷いた。
星穹のたくさんの贈り物。箱に詰まったそれは今宵のとびきりを込めている。
アーマデルは保護者には綺麗な卓上ランプを。夜告鳥の使徒、掲げたランプで暗い足元を照らし、患者を見守るものをとぴったりの品を選んで。
恋人は悪戯心を溢れるお菓子を用意する彼の隣でアーリアは愛しい彼へとランプを一つ。
「ランプは、この秋の夜長に本を読むのにちょうど良さそうなものを探してみようかな? 私の分と、お土産にもうひとつを」
アレクシアが小さく笑みを浮かべれば「誰にかしら」とアーリアが囁いて。アレクシアは秘密と悪戯めいて微笑んだ。
「ファントム・ナイト限定カクテルなんてあったの?
もうちょっと早く知りたかったわ……ね、まだある? 実は私お酒が好きで……」
「お嬢ちゃん、子供はお酒は飲めやしないさ」
「な!? 私はちゃんと大人だから!」
アーリアと星穹が小さく笑う。頬を赤らめたエルスがむうと唇を尖らせれば「知っていますよ、エルスさん」とラサの商人はおかしそうに笑みを零す。
「えっ――あ、あの、この仮装のことは『あの方』には……!」
目を白黒とさせたエルスに「『呼ばれて答えた』エルスの負けだね!」とサンティールが可笑しそうに笑う。
「名を呼ばれてもつーんと猫のようにしらんぷりをしたら良かったのに!」
揶揄うアレクシアにエルスは「ああ」と頬を赤らめて小さく呻いた。あの方に『この姿』が伝わらないようにこの明かりに願いをかけて。
「おっじょうさーん! 甘いお菓子でお茶しなーい? トリックオアトリート! 面白おかしく楽しもう」
可愛いレディへと手を差し伸べに行くスティーブンにサンティールはくすくす笑う。
彼は素敵なレディとこの夜市を歩き回ることだろう。ならば、先にサンティールから『トクベツ』をプレゼント。
「僕から皆への贈り物さ。飴細工の青い薔薇。このこの贈り物が、かけがえのない『トクベツ』になったらいいなあって思うんだ。
――Trick or Treat! さ、とびきりの笑顔をおくれ!」
サンティールの『とびきりの悪戯』にブラッドとハンナが顔を見合わせ小さく笑う。ぱちりと瞬くエルスは「いきなり!」と慌てて頬を赤く染めあげた。
アーリアが手にしたカクテルは彼女が手にしていたチョコレートにもぴったりで。「魔女様ほど」は強くないけれど、星穹は同じようにお酒を傾けて。
「お返し……クッキーしか持ってないな。美味いんだぞ?」
「ああ。こんなに面白い夜は、初めて!」
アーマデルのクッキーと星穹のかぼちゃのクッキーを交換すればたくさんの『おいしい』が笑みを齎した。
夜の明かりに照らされて.折角だからご一緒にとエルピスを誘ったルーキスは『なりたい姿』に戸惑う彼女に『トクベツ』を提案した。
君が困るなら。君にとっての新しいを与えてやりたい。
「エルピス、良ければ折角の機会だし、一緒に仮装をしてみない?」
普段はシンプルな服を好んだ彼女に、折角だからと豪華なドレスをと進めれば、僅かに戸惑いエルピスは雪風を振り返る。
「いいじゃん、ルーキスさんと行っておいで」
「はい、その。ルーキスさん、似合います、でしょうか」
戸惑いに、仮面を着けた彼女は困り顔で微笑んで。もちろんと手を取りエスコートの誘いをかければそうと手袋に包まれた指先が伸ばされる。
「とりっくおあとりーと! はい、お菓子をどうぞ」
ポケットからお菓子を取り出し揶揄い笑えば、エルピスが「わたしが渡す側ですよ」と可笑しそうにころころと鈴鳴らす。
手を引いて、市の光に照らされる。不思議そうに見回す横顔にルーキスは彼女の名を呼んで。
「七夕の時は、その……急に驚かせちゃってごめん。
俺の気持ちは簡単に変わったりしないから。何時迄だって待つよ。だから、エルピスの歩調で……ゆっくり進んでいければ良いと思うんだ」
「……ごめんなさい。わたしが、臆病で。それから、ありがとうございます」
その一歩さえ重苦しく。彼女が見せたくらい表情に「今は其れを忘れて楽しもう」と手を引いた。ランプに彩られた街の明かりに照らされて。
君を照らして、輝いた。この魔法が解けなければいいのにと。そう願わずには居られない。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
この度は皆様のファントムナイトの思い出を照らす機会を頂きありがとうございます。
素敵なリクエストを頂戴し、とても楽しかったです。
本番の夜まであと少し。素敵な魔法に掛かった皆様とお会いする夜を楽しみにしております。
GMコメント
リクエストいただき有難うございます。日下部あやめです。
●成功条件
・『瑕疵の牙』の捕縛
・『燭光の月』の確保
●幻燈の夜市
まるでフェアリーテイルのような素敵な場所です。ラサの小さなオアシスでファントムナイトの夜に行われる素敵なお祭りです。
魔女の魔法は何でもなりたい姿に変えてしまいます。皆さんの姿も変わってしまえば、屹度誰かはわかりませんね。
そんな不思議な仮面舞踏会を照らす『ランプの市場』です。
その中でも目玉商品、とびきり美しいのが燭光の月と名付けられたライトです。薄い光の膜が蕾のように重なり合って、中央の月が花より咲くように見えると言われております。
●燭光の月
美しいライトです。依頼人の商売テントに飾られています。燭光の月のみを飾っており、依頼人は他のテントで商いを行っているようです。
出来るだけ市場を壊さないように立ち回ってあげると喜ばれそうです。
●『瑕疵の牙』
人数は男女混合8人。盗賊気取りの悪戯っこたち。皆それぞれ美しいもの(物、人問わず)を好みます。
イレギュラーズ達にもそれらを見出し、隙あらば奪おうとしてきますので注意して下さい。
頭がキレるわけではないので、簡単に挑発にも乗ってしまうでしょう。
戦闘ではそれ程強くありません。ファントムナイトの魔法で姿を変化させているようです。
●その他
フェアリーテイルの魔法で姿を好きなものに変化させることが出来ます。ファントムナイトの予行練習に如何でしょうか?
なりたい姿や仮装に変化してみて下さいませ。
彼等を捕縛した後、市場を見て回る事ができます。是非、素敵なランプと出会えますように。
日下部のNPC(雪風、エルピス、万葉)はお声かけを頂きました場合は市場での散策に参加させていただきます。
それでは、素敵な夜になりますように。
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