PandoraPartyProject

シナリオ詳細

祝SHOW会!!

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●祝いの席でのアレ

「サーカス団打倒にカンパーイ!!」

 幻想、王都のとある屋敷では多くの貴族たちが集まってどんちゃん騒ぎに興じていた。
 誰もがお互いを称賛し合い、深まった結束に頷き、ラブロマンスにディナーにエールに夢中になって行った。
 それもその筈、あの恐ろしいサーカス団。シルク・ド・マントゥールに勝利したのだから。
「今宵は無礼講! ハッハッハッハ! さあさあ飲みたまえ歌いたまえ、祝勝会だぞー!」
 眼鏡をかけた小太りな貴族がカツラをワインの入っていたグラスに投げ入れて、持っていた赤毛の令嬢に平手で殴られた。
「おっとぉ、そんなところでなーにをしてるんだねぇチミたち。祝勝会だよ! なんかもうイベントに参加したつもりではしゃぎたまえよ!!」
 いきなり窓際で外に酔った貴族が叫んで引き戻されたりしている中、茫然としていたイレギュラーズに貴族の男が近づいて来る。
「君たちのおかげでサーカスに勝ったんだ、それは素直ではない貴族連中もわかってるさ。だからこそチミ達に楽しんで貰えたらうれしいのよん!」
 急に口調がおかしくなったが同じ貴族の男である。
 今回この屋敷に連れて来られたイレギュラーズは、
『祝勝会に招待するから来い。え? 他の祝勝会に出てて参加できる奴がいない? こっちはイージーランク報酬を前金として出すぞ!』
 という。半ば強引に十人集められて来てしまったのが諸君等であるわけだった。
 それはいい、祝いの席に出席できるなら彼等も嬉しい。ただ余りにも時間が経つにつれて荒れてきていないだろうか?
「んっへへへ……あれぇ? あっちにりーぜロッテ殿がひゃくにんいるぞぉ?」
 通りがかったムッキムキな騎士が目を細めて言った。
「いんやぁ、いい気分だ。これが『魔酒』と呼ばれる酒か…………さいこうだぜ!」
「ひっく、ひっく」
「うるあああ!! ダイナミック廊下レース開催ィ!!」
「『魔酒』のおかわりしてこよーっと」
 あちこちで明らかに様子がおかしくなっていく貴族達。さすがに見るに見かねたイレギュラーズが声をかけるが、その反応は恐ろしい豹変ぶりが返って来るのみだった。
「邪魔すんなやコラァーー!!」
「おい! こいつら俺達から『魔酒』を取り上げるつもりだぞ! 捕まえろーーー!!!」
 全力で追いかけて来る貴族達。
 そんな彼等の後方では、ニヒルな笑みを浮かべて酔っている眼鏡をかけた小太りな貴族が黒いオーラ漂うワインボトルを手にしていた。

GMコメント

 祝いの席に紛れ込んだ呪われた酒に酔って暴走した貴族達(前線組多数)が蔓延る屋敷へ、ようこそ!!
 相談している皆様が立て籠もっているのは一階の端にある談話室です、お菓子とか入った籠があります。
 リプレイ開始時はここからスタートとなります。 

 以下情報

●依頼達成内容
 祝勝会を楽しむ(騒動を収める)

 広大な貴族の屋敷で開かれた、サーカス撃破祝勝会にて謎の騒動が起きてしまいました。
 これに対処しなくても別に問題無かったのですが、せっかくの祝勝会が台無しになるのを見過ごすのも勿体無いので助けて行きましょう。
 貴族達は男女関係なく全員酔っており、全員おかしくなっています。襲ってきます。
 彼等を無力化しつつ、屋敷内のどこかにある『魔酒』と呼ばれるワインを探し出してください。
 恐らくそのワインさえ確保できれば、後は時間が解決するでしょう。

●敵貴族
 『汎用貴族』×20
 ベロンベロンに酔っぱらったおっさん達。なぜか脱いでる率が高い。
 一撃で倒せる。女性貴族には優しくエレガントに対処しましょう。

 『騎士』×20
 決戦にも出て来ていた騎士達。割と力があって危険。八極拳の真似をしていたりパンツをぶんぶん振り回してきます。
 何故か全員オネェ口調になっているが、筋肉は漢らしさに溢れている。
 少し倒すのに威力を盛りたいところ。

 『小太りの貴族』
 小太りの貴族を探す為、判定としてプレイングシートの一行目に【】に1~6の数字を入れて彼を探す内容のプレイングを書いて下さい。
 やけに強いですが遠慮なくボコっても問題ありません。おっさんから滲み出る油が色々軽減してくれます、攻撃したあなたは精神的ダメージを負います、多分。

●屋敷内
 三階まである豪奢なお屋敷。
 色々な部屋があり、どこも美味しい料理やデザートが一杯。
 騒動を解決するために奔走するも寄り道しまくるのもアリでしょう。

 以上、祝勝会をお楽しみください。
 サーカスとの決戦、見事な完勝でした。これからも素晴らしい活躍を期待しております。
 皆様のご参加御待ちしております、ちくわブレードでした。

  • 祝SHOW会!!完了
  • GM名ちくわブレード(休止中)
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2018年07月19日 20時45分
  • 参加人数10/10人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

清水 洸汰(p3p000845)
理想のにーちゃん
七鳥・天十里(p3p001668)
エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)
特異運命座標
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
ディバイン・シールド
アグライア=O=フォーティス(p3p002314)
砂漠の光
星影 霧玄(p3p004883)
二重旋律
天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
蓮乃 蛍(p3p005430)
鬼を宿す巫女
エウラリア(p3p005454)

リプレイ

●パーティー開幕

「くっ、普段食べれない豪華な食べ物に釣られたばっかりに……全くもー、まさかこんなカオスな空間が待ってるなんて」
 談話室から続々と仲間が出て行くのを見送る七鳥・天十里(p3p001668)。彼はごくごくとジュースを煽りつつ、テーブルの上に置かれた籠から菓子類をつまんでいた。
「さっさとこの騒動を起こしたやつをとっ捕まえないとね。むぐむぐ……むっ! このお菓子もおいしい!」
「いや言ってる事とやってる事ちがくない!? ……おいしいけどさ」
 天十里にツッコみつつも一つ便乗する『二重旋律』星影 霧玄(p3p004883)は談話室の外の様子を伺っている。
 彼等の他にも実はパーティー参加者として依頼を受けているイレギュラーズが居るのだが、既に数日の籠城(?)の末にとある作戦を立てて屋敷内の騒動に立ち向かっていた。
「面白いと思ったら案の定面白い……もとい大変なことに! なんて言ってられないよねー……」
「じゃあ僕達もそろそろ行く? 一階のみんなの様子見て行くつもりだったけど」
 天十里がテーブルのマカロンをペロリと食べ終えると、片手銃を取り出しながら笑う。
「……よし、行こう!」

 そして少年達は談話室を飛び出して、いざ狂気の屋敷へ。
 今回のイレギュラーズはサーカスを倒した祝勝会に呼ばれていたのだが、何がどうしてこうなったのか。屋敷内は謎の『魔酒』と呼ばれる酒に酔って阿鼻叫喚ちくわ大明神状態である。
 ぶっちゃけ適当な貴族か組織に任せて逃げても良かったのだが、せっかくの祝勝会が台無しになったままというのも勿体無い。
 そこでイレギュラーズはこれを解決すべく屋敷内を奔走し始めていた。
「ブッフェへへへ卿はイイ身体してますネェェ」
「当たり前じゃンなぁぁあ~~い! ゥフ(はぁと)この自慢の筋肉でピエロどもを闇市のぱんつみたいにしてやったわ!!」
「すげぇや! つまりぱんつはサーカスなんすネぇ!」
「股間が大サーカスだぁ!!」
 廊下を泥酔した騎士や貴族がまさに身の毛がよだつ様な会話を繰り広げ、奥の客室等では戦闘音が響き渡っていた。
 霧玄は速やかに見なかった事にして談話室から一番近い階段を駆け上がって行く。
「うッ……!?」
「あらァ? 可愛い坊や、さっき通った娘やスーツの男より素敵じゃない!」
 そこに現れたのは明らかに殴打されたと思しき青痣がパンダの如く顔に付けた騎士達(何故か半裸にバスローブ)だった。
 霧玄は階段上に座り込んで談笑している酔っ払い共を前に急ブレーキ、未だ酔いが醒めていない様子の騎士達に手元の武器を振り下ろそうか迷い……迷った結果。
「一曲、聞きます……?」
「あら! ちょっとみんな、この子が一曲弾いてくれるんですってよ!」
 最早苦肉の策。とは言え効果は思いの外あった。霧玄が虚空から鍵盤をその場に出したのをきっかけに、続々とやけにボコられた騎士や貴族達が出て来たのである。
 多少驚くも、霧玄は視界の端を誰かがコソッと抜けたのに気付いてそちらへ視線を向ける。
「……?」
「(マカセタヨ!)」
「ちょ、君ーーーー!!?」
 天十里は霧玄を置いて逃走。二階のパーティールームへ駆け込んで行ったのを最後に姿は見えなくなったのだった。
「ちょおっとぉ、演奏はまだなのぅうう??」
「今やるから待って待って!」
 イチゴクリームを唇に塗った騎士が近付いて来たのを鍵盤を叩いた音波で吹き飛ばしつつ、霧玄は階段の手摺に腰掛けてその指先を躍らせた。
 歌声も合わせてのソロ演奏。
 しかしどうだろう? 彼が奏でて、紡ぎだす歌と旋律はその快活さによって耳にする者達を虜にしていく。
 
 本来の祝勝会に相応しい一曲。
 屋敷内を軽快なジャズミュージックが霧玄の演奏と共に流れ始め、再びパーティーが始まりを告げたのだった。

●ナイツオブラウンド!
 作戦立案時、その紳士……否、ファンドマネージャはこう言った。
「空気を壊さずに仕事をしましょう。その方が我々も、楽しめるというものです」
 朗らかに、素敵で不敵に。
 仮にもパーティーであり祝勝会なのだから、なんでも暴力とシリアスに訴えるのは如何なものか。我々が楽しむのも仕事の内である。
 彼の名は『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)。その肩書に恥じぬ本物の紳士である。
「見てくれこのケツに挟んだナスを。こいつをどう思う?」
「ヒューッ、すごく……大きいです……」
 だがしかし、彼の礼節を重んじる紳士協定はいとも容易く酔っ払いの作法の前に破り捨てられた。
 故に。
「……マナーがね」
 寛治は尻ナス族達を適当な部屋へ連れて来て、ドアを閉じた。
「作るんです――――」
 そしてその鍵を施錠して。
「――――人を」
 その手に持った傘を瞬時に逆手に。手前のチェスト上に置かれていたグラスを傘を一閃させ、さながら弾丸の如く飛ばして尻ナス族を破砕音と共に沈めた。
 男達は泥酔した頭で何が起きたのか理解しようと、倒れた仲間を目で追う。
「一生立ったままでいるつもりですか?」
 直後、紳士が嵐の如く男達をフルボッコにして出て来たのだった。

●パーティーの羽休め
「これがお酒の恐ろしさ……なのでしょうか?」
 『鬼を宿す巫女』蓮乃 蛍(p3p005430)は戦慄した。
 二階に上がって来てから既に十人近く酔っ払いを(正当防衛で)吹っ飛ばし続けて来た、しかし彼女が二階奥の客室からお茶を少し頂いてから出て来ると何故か先ほどより盛り上がって復活していたのである。
「困りましたね……とは言っても、既に奥まで探し終えた感じとしては例の『魔酒』を持った方は見つかりませんし……」
 やはりここは下の階の仲間を手伝うべきか。
 そう思い蛍は何やらソロ演奏のピアノによる軽快な音色を聴きながら廊下を行く。すると、不意に彼女は袖を引かれる感触に振り向いた。
「やっほ、こっち来ない?」
「七鳥様……? 何か見つかったのですか」
「違う違う、休憩だよ!」
 そう言って天十里に手を引かれ、蛍は二階に並ぶ客間へ引き摺り込まれてしまった。
 他の人達は良いのかな、と蛍が廊下に振り向いたりしていると……
「如何です蓮乃様、こちらの葡萄絞りはワインのような深みのあるジュースですよ」
「あれ……新田様!?」
 ブドウジュース片手に迎えた寛治に驚き、よく見れば客間のベッドのあちこちに妙齢の女性達が寝かされている。
 蛍が「ええ……」と言いながら振り返るが天十里と寛治は二人共肩を竦めるだけ。
 そうしている内に彼女は気付いた。
「やっぱり魔酒は別の階に?」
「ええ、それもやはり貴婦人方といえど酔っていてはまともな話も出来ませんでした」
「僕も聞いてみたけど不発かな、でもこれはこれで良いかなってね!」
 聴いてごらん、と。
 天十里に言われて蛍は耳を傾ける、屋敷内に響く喧噪と奇声、そして歌。
 曲だ。霧玄の演奏が聴こえて来ていた。
「僕達は僕達で頑張ったしさ、せっかくだし今は少し休憩を楽しんでいいんじゃないかな」
「そう、ですね。報せがあれば急ぐとして……では私も」
 大騒ぎだし、ちょっと目を向ければ変態が転がっている異世界。
 だけど蛍は、天十里も寛治も、宴の最中に訪れる熱が少し冷める様なひとときの合間に霧玄の奏でる演奏を聴きながらパーティーの喧噪を楽しむ事にした。
 それもまた仕事、であった。


 ちょっと予想外の展開になったなぁ、と彼女は苦笑した。
「祝勝会ですし、お酒が入って多少羽目を外す位なら理解もするのですが……」
 一階の談話室から近い階段脇の小部屋で『砂漠の光』アグライア=O=フォーティス(p3p002314)は男性貴族達に水を配っていた。
 生来の気品とある程度の作法の心得、そこに加えて何だか優しい言葉をかけてくれるアグライアに親父達はメロメロになっていたのだ。
 サーカス事件のせいで疲れが溜まって、ストレスに耐性の無い男達は魔酒に呑まれていたわけだが。
 逆にそこを突いた形でアグライアは喫茶店の様にぱたぱたと駆け、酔い潰れていた貴族を集めて落ち着かせていた。
「一階を回っているゴリョウ様達は大丈夫でしょうか……?」
 泣き上戸になった貴族を慰めつつ、廊下に顔を出す。
 軽快な音楽がいつの間にか流れている中、アグライアはその大きな耳を動かして確かに聴き付けた。
「……! 魔酒を、見つけた!?」
 しがみついていた貴族を蹴り飛ばし、小部屋をアグライアは飛び出した。


「逃がさねぇぞ、貴様だけは! 楽しい祝勝会に水差しやがって!」
「あらぁぁああ! 貴女どこかで会ったかしらァ??」
「決戦で共に戦った騎士様とこのような形で再会することになるとは……!」
「こちとら一仕事終えて疲れてるっつーのに、やたら面倒な事を……!」
「ほら貝吹きますか? 吹いていいんですのよね??」
「なんでお前も酔ってるんだしっかりしろォ!!」
 屋敷の一階。それも、『談話室』からイレギュラーズ達が一斉に飛び出した。
 彼等が追いかけているのは酔っ払いの障害物散る廊下を素早い動きで駆け抜け、その脇に黒いオーラ漂うワイン……魔酒を抱えている小太りな貴族の男である。
 なんと恐ろしい。一階を徹底的に調べていなければ、まさか数日間の相談をしていた談話室にこそ潜んでいるとは思わなかっただろう。
 『名監督』ゴリョウ・クートン(p3p002081)を先頭に。『紅風』天之空・ミーナ(p3p005003)と『特異運命座標』エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)。
 更に追走するのはなんか足首にマッチョが絡み付いてるエウラリア(p3p005454)、割と凄い威力で蹴りつけているのだが中々離さない様だった。
「酔ってないですわ! ところで廊下に魔砲はどうでしょう、派手に参りましょう。火事と喧嘩は江戸の華ですわ!」
「おい誰かどうにかしろやべえぞアイツ!?」
「エリザベスさんって酔うんですか!?」
「私は知らねーよ!! って、っとと! レディ、後で素敵な一時を約束しよう。その綺麗な顔に傷をつけたくないんだ、下がってくれたまえ」
「素敵ですわ、この土壇場でなんというラブロマンス……!」
 エウラリアが漸く騎士を蹴り倒して追い上げて来ると、その隣で超不穏なワードを並べるエリザベス。
 逃げ回りながら周囲の貴族や騎士をけしかけて来たリポイポイ投げて来る、小太りな貴族をゴリョウはどうにか距離を詰めて引き留めようとするが。小太りな貴族は意外にも機動力が高かった。
 しかし、一階と二階を繋ぐ階段踊り場で何故か酔っ払い達が曲に合わせて歌い、集まっている事が幸いした。
 小太りな貴族は上階に逃げられず、そのまま一階の奥へ奥へと走り抜けて行ったのだ。
「ククク……! うぷっ、しつこい奴らめェ……ッ」
「!! よっしゃ、あの先はトイレだ! 袋のネズミだぜガハハハ!」
「ホワッチャァァア!」
「パンツ振り回すなこの野郎! 報告書読む良い子が真似したらどうすんだ!」
 死屍累々。ヌンチャクの如くパンツを振り回して来た騎士をエウラリアが蹴りで受け止め、ゴリョウがぶっ飛ばす。
 次々と雪崩れ込んで来る女性貴族は何故かミーナが上手く躱して、足元から手を伸ばしてくる貴族をエリザベスが股間の矮小さを嗤って轟沈して行く……!
 そして、遂に小太りな貴族は頭から砲弾のようにトイレへ突っ込み壮絶な音と姿を晒しながら、勢いよくそこへゴリョウ達が大量の貴族達酔っ払いと転がり殺到した。

「ブォオ、オオ~~~!!」

 魔酒を手にしたエリザベスがほら貝を吹いたのは数十秒後。
 いやおせえよ、というツッコミがゴリョウから出たのは必然だった。

●そして、祝勝会に戻る
 何だか凄い音がしたと思ったら、事件が解決した。
 『雲水不住』清水 洸汰(p3p000845)は実はイレギュラーズの中で一番最初に三階まで上がり、小太りな貴族の行方を追っていたのだが。どうやら先を越された事に気付いて降りて来る。
 その頃には二階も、一階も、魔酒を混入させたり飲ませていた元凶が断たれた事で貴族の参加者達は落ち着きを取り戻し始めていた。
「ところでこれ、うんめーぞ? 一口食うかー?」
「あ、それじゃいただきますね」
 どこかの部屋から持って来た料理を皿に盛って来た洸汰からアグライアも一口貰う。良い香りの木で燻製されたソーセージだった。
「これとか日持ちするかなー、蛍ちゃんはどう思う?」
「えっと、生クリームを使っている物は今の時期それほど保たないかと……」
 そこに混ざって持ち帰れそうな菓子類を発掘している天十里。屋敷の主催者に既に許可は得ているとはいえ、遠慮が無い様子に蛍が不安そうに周りを見ている。
 とはいえ、そもそも主催者が誰なのかと言えば。
「すまなかった……私としたことが、なんという事だ」
「全く、パーティーの席で皆にメーワクかけちゃうダメなんだぞー! 鉄拳制裁ー!」
「本当にすまなかった……」
「うをぉ!? なんか拳がヌタァって!」
「手を洗って来た方がいいですよ……?」
 脂ぎった小太りな貴族の額は洸汰のはたいた手を皮脂まみれのギットギトにした。
 アグライアがおしぼりを差し出しつつ洸汰を見送って、再びその場に集まった者達の視線が貴族に集まる。
 そう。魔酒を祝勝会に招き入れてしまったのは、主催者でありイレギュラーズを招いた小太りな貴族張本人だったのである。
 彼の名は『オーガス・シュトラーセ』という。
「大変な事をしてしまった。酔っていた者の中にも異変に気付く者は出て来るだろう、如何に魔酒が恐るべきカースドアイテムだったとしても……記憶までは消せないからな」
「なぜそのようなワインを?」
「……評判すら無いような、そんな無名の酒だったのだ。だがとにかく『楽しい』とだけ聞いていた、そこで私はコレクションとして蒐集していたのだ」
 今はもうトイレで割れて流れてしまったが、黒いボトルの香りを小太りな貴族は嗅ぎながら語った。
 部屋の隅でオーシャン・ジェラートに舌鼓を打っていたゴリョウが笑う。
「まあそんなら仕方ねえな! 俺達はどうにもできないしよ!」
「私はせめて休めればそれでいいな……疲れた」
 ソファに体を沈めてココナッツジュースを吸うミーナ。彼女もゴリョウ達と同じくケーキの類を持って来ていた。
「……うーん、俺は気持ちが分かるかも。だってあれだけ苦労した後だ、皆で何かを祝う時にそういう物を出してもいいんじゃないかな」
「私もそう思いますね。共有したいという思いはファンドマネージャも似た様なものですから。それはそうと魔酒を一口私も味わってみたかったですね」
 酒よりも歌って騒ぐ。そんな男達と貴婦人達を惹きつける演奏を終えた霧玄は、喉をミルクで潤しながら寛治と共に小太りな貴族の肩を叩いた。
 或いは魔酒を抑えなくても、イレギュラーズなら今回の騒動を最初から解決出来たのかもしれない。
 主催者のオーガスはその姿を見上げて、それから決意した様に力強く頷いて、立ち上がった。
「君達に頼みたいことがある」

 エウラリアのギフトのおかげで、荒れ果てていた屋敷内が再び清潔感と豪奢で煌びやかな空間に戻った。
「皆の活躍と、幻想の平和を祝して、いざかんぱーい!」
 洸汰が盛大にグラスを掲げて、ジュースを揺らして祝杯を鳴らす。
 一連の騒動は数日も続くという事件となっていたものの、それは外部に漏れる事なく共に戦った仲間達同志の間でしか起きていない。
 なら、イレギュラーズが決戦の時と同じく介入し、そして再び事を収めたなら文字通り水に流してもいいのではないか。
「さてと、歌うぞー! 歌詞わかんないけど大丈夫だよね!」
「勿論!」

 霧玄が鍵盤を弾き鳴らして、それにつられて宴が始まる。
 今度は酒を誰も手に取らなかった。
 かわりに、共に活躍した仲間の手を取って今宵こそ祝いを挙げるのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でしたイレギュラーズの皆様。
 酒を持って逃げている男が潜み、発見場所のポイントとなるのは1F【3】でした。
 まさか複数人に当てられるとは思っていなかったのか、もう小太りな貴族に出来る事は酔っ払いけしかけて逃げるだけでした。

 祝勝会ムードも終わり、これから始まる夏のイベントも沢山出て来る事かと思われます。
 これからも是非皆様のご活躍を期待しております。

 それでは、またの機会をお待ちしております。

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