シナリオ詳細
<オンネリネン>only only you
オープニング
●「そろそろジェニファーのルームメイトが救出に来るんじゃない?」
――曰く、山中に敵兵あり。
知らせを受けて調査したイーリン・ジョーンズ(p3p000854)は確かな足跡とそれを含む痕跡類を文字にまとめ、秘密教会の神父スナーフへと突き出した。
横からそれをのぞき込み、ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)は小さく、本当に小さくだけため息をついた。
「狙いはジェニファー……かな」
確証を持たず述べたが、それが答えで間違いないと思えた。
独立都市アドラステイアという場所がある。
天義の大きな失敗を経て生まれたこの都市は、天義の信仰の誤りを指摘しながら真なる神ファルマコンを信仰し、争いも誤解もない平等な世界を作るという。
しかしその実、行われているのは連日の魔女裁判であり、イコルという特殊な薬物への依存や聖獣という極めて不穏な存在によって担保される兵力によってできていた。
これに関して述べるべき事はあまりにも多いが、今すぐ述べるべきは……やはり『雷桜の聖銃士』ジェニファー・トールキンについてだろう。
これまで旅人害悪説を信じ、浄化作戦というウォーカーを専門に駆逐する作戦に従事していたジェニファー。彼女は幾度もの衝突の末、ココロたちに身柄を拘束されいまここスナーフ秘密教会へと収容されている。
「当然、向こうさんからしたら仲間を攫ったことになるわけだから……人の心があれば取り返しにくるわよね。
既にこの場所をある程度は絞り込んでるみたい。山中を探索してる痕跡があったわ」
真顔で肩をすくめてみせるイーリンに、ココロは頷いた。
そして、庭の外で植木の手入れをしているジェニファーをガラス越しに見た。
「あの子は、帰りたいのかな……」
「仮にそう言ったら?」
「絶対帰さない。ベッドに縛り付けてでも」
だったら決まりね、とイーリンは椅子を立つ。
「探索の進展具合からして、おそらく襲撃は明日よ。準備をしておきなさい」
『なさい』と命令形で言った。師匠から弟子に対してするように。
●正義の裏に正義あり
翌朝、スナーフ秘密教会の外にはココロとイーリン、そしてイレギュラーズの仲間達が集合していた。
イーリンの背をトンッと押される形で前に出たココロが、咳払いをする。
「ここ、スナーフ秘密教会は『本来なら断罪されていた不正義たち』がかくまわれる形で暮らしている教会なの。スナーフ神父は異端審問官の重役だけれど、天義の正義だけで人が救えないことも知ってる。だからここでは、天義の審問官たちの目から隠して教育や精神の治療が行われてるの。
アドラステイアの聖銃士だった子や、アドラステイアで暮らしていた子もそう。
もし天義の表を歩いていれば騎士たちに殺されてしまってもおかしくないし、国外に逃げても追っ手をかけられるはず。だから、『最も近くて遠い』この場所がなくちゃ、だめなの」
長々と話したが、本当に言うべきはひとつだ。
「アドラステイアから派遣された傭兵部隊『オンネリネンの子供達』がこの場所を襲撃するの。この場所は気付かれてはいけないし、壊されてもだめ。ましてや、かくまっている子達が連れ去られることはもっとだめ。
襲撃者にこの場所が知られるまえに、山中で襲撃者たちを倒さなくちゃいけないの」
カバーすべき範囲は広い。が、ある程度は探索しアタリをつけてきているだけに、こちらもカバー範囲を絞ることが出来る。
朝の森の中に潜むなり、こちらからも探索するなりして襲撃者達を撃退するのだ。
もし彼らが教会に到達するようなことがあれば……それは、我々の敗北と考えるほかない。
「お願い。皆の力を貸して。守りたい子達が……守りたい約束が、あるの」
- <オンネリネン>only only you完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年10月03日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●only only you
スナーフ秘密教会屋の根の上に立ってみると、思ったよりも強くて冷たいかぜが『にじいろ一番星』ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)の髪をもてあそぶようになびかせていく。
愛用のライフルを膝に置き、斜めに重ねられた赤煉瓦屋根に腰掛ける。
周囲には背の高い木が多くて、見晴らしはあまりいいとは言えない。
けれどその方が、この場所にはいいのだろう。きっと……。
「ルシアと同じくらいの子が今もひどい目に遭っていて、でもここで少しずつ普通の生活に戻ってきているのに……」
立ち上がり、翼を広げる。
すると、すぐ足下を五匹ほどのリスや小鳥が統率のとれた動きで駆け抜けていく。『狐です』長月・イナリ(p3p008096)の張り巡らせた情報網だろう。
当のイナリは森の中にワイヤートラップを仕掛けるべく先行しているという。
ゲリラ山岳兵並の技術を持ったイナリのことである。そうとうに相手を嫌がらせる罠を巡らせているだろう。準備時間が数日あればもっとえげつないことができたのかもしれないが……。
教会には最悪の事態に備えてスナーフ神父が詰め、子供達は一つの部屋に集めて監視状態にある。
ジェニファーやその他のアドラステイア出身者からすれば、同胞が助け出しに来てくれたと言う状況である。自発的にこの場所にやってきた者はほぼいないことからも、彼らの脱走リスクは大きいと言って良い。
そんな厳戒態勢のなか、『Enigma』エマ・ウィートラント(p3p005065)は教会前で精霊に呼びかけていた。森の精霊はあまり活発でないようで、索敵が可能なくらい話の通じる上位精霊にはアクセスできなかったらしい。
この不便さは相手にとっても同じ事なので、それがわかっただけでも充分だろう。
(ふむ、ジェニファー様にオンネリネンの子供達。
アドラスティアは相も変わらず、でありんすか。
あそこは洗脳により己の意思を上書きしておりんしたからねえ……わっちとしては面白くない。
何がって……わっちは人の意思の輝きが見たい。魅ていたい。
それを妙な物を使って紛い物に……おっと、話が逸れんしたね。
まあ、今回の子らもそういう類でありんしょうが……残念ながらわっちはいかな洗脳された子供とはいえ、積極的に殺さずを行う程優しくはない。
武器を手にした以上、覚悟は出来ているのでごぜーましょう? もっともこんな事、口にはしないでありんすけど)
頭の中でそう語ってから、仲間に続いて歩き出す。
戦闘準備を終えた『誰かの為の墓守』グリム・クロウ・ルインズ(p3p008578)が頷き、一緒に歩き出した。
(不正義であったとしても他に何も知らなかった者が犯したそれは本当に不正義か否か。
難しい話だ。断罪するべきだというのも分かるけど、それでもこの場所は彼らを守った。
なら守らなくては、未来を見るべき子がいるならば、きっと死者様も望まれる)
しばらく進むと、既に先行していた『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)が手書きの地図を片手に地面へ屈んでいた。
秘密教会といえど誰も行き来をしないわけではない。荷馬車が通ることだってある。
ここはそのメインとなる道。最も迷いづらい道だ。
この場所に目星をつけた敵が最も選びやすいルートといってもいい。
「他には小川を伝って登っていくコースと、よく脱走者が出るっていう裏道かしらね。
『ウサギの穴』を探すアリスじゃあるまいし、人間が生息する以上見つける手立てはいくらでもあるわ。その上で、武装して襲撃するならルートが限られるってだけで」
立ち上がると、ラムレイが歩いてくる。
「たまには――迷宮を仕掛ける側もいいでしょう。
やるわよ、弟子たち。『神がぞれを望まれる』」
イーリンの言った『弟子達』がどこに配置されたのかと言えば、イーリンが策定した裏道コース。
獣道とよぶにはかなり心細いルートに陣取って、『恋する探険家』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)はじっと腕組みをして立っていた。
(こぼれ落ちる人に手を差し伸べること……。
スナーフ神父さんたちのしていることはワタシも望ましく思うし、理想的だとも思う。だったら誰にも邪魔はさせないよ)
理解者がいて嬉しいのか、『医術士』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)が隣に立って妹弟子へ頷いて見せた。
(わたしには仲間がいるし、師も妹弟子もいる。誰も彼もわたしが守りたい人。
あの子だけじゃない。みんなの為に、そしてわたしの為に……)
深く息を吸い込むと、湿った葉っぱや土の匂いがした。
近くの枝にとまった小鳥が鳴き声を発してこちらを見ている。おそらくイナリの飛ばしてくれたファミリアーだろう。
ココロは小鳥に準備完了のハンドサインを出してから、自分に気合いを入れるようにぱちんと頬をたたいた。
「約束は破らない!」
「随分と、山道を進みづらくしたものねえ」
小川を伝って下った先で、『律の風』ゼファー(p3p007625)が長い髪を団子状に縛ってシニヨンで包んでいた。
あちこちには足止め用のトラップがしかけられている。
「けど、この辺に陣取ってくれて助かったわ。川辺は奇襲がしやすいのよ。音が紛れやすくて」
「それはよかった」
生い茂った草木の間から姿を見せるイナリ。どうやら草木を茂らせるギフト能力を使って罠や足跡を消していたらしい。これで奇襲能力があったら、できれば山道で敵対したくない相手になるだろう。つまり『潜んで、襲って、殺す』すべに長けたゼファーとのタッグは完璧ということである。
「さて、あとは相手がどの程度やれるかよね……」
襲撃というものは、襲う側のほうが不利だ。兵站の面からも明らかだし、特に今回は秘密教会の場所を絞り込むためにリソースが割かれている。迎撃能力に極振りして戦えば、利は多きくこちらに傾くだろう。
けれど、不安もある。
「……『守りたいもののために必死に戦う』のが、むしろあちら側にこそ多そうなのよねえ」
『頑張り』で壊せないだけの壁を、こちらが作らねばならないということでもある。
果たしてそれは叶っただろうか……?
「ま、やってみればわかるでしょう」
「そうね」
ゼファーは首をかしげて目を細め、イナリは笑顔でそれに答えた。
●うそつきは勝者の特権
山中。ロープを握って歩いていたフラーゴラはピリリとした敵意を察知した。よく探すまでもない。武装した一団がこちらへと一直線に走り、接近してきたからだ。
探索中のエリアで敵を見つけたからか? 半分は正解だが、もう半分は……。
「聖騎士ジェニファー、いま助けます! その場で伏せて!」
聖なるマスケット銃を構えた少年兵が射撃体勢をとり、フラーゴラへ狙いを付ける。
呼びかけた先は軽鎧と眼帯をした少女。牽制の射撃でフラーゴラが大きく飛び退き構えた隙を突いて、よろめいたもう一方の少女へ剣を装備した少年兵が駆け寄った。
一旦剣を鞘に収め、よろめいた彼女をささえようと手を伸ばした――その瞬間、少女は。否、ジェニファーに似せて変装していたココロは短剣を抜き放った。
腕を斬られ、そして彼女が目的のジェニファーではなかったことに気付いた少年兵が飛び退く。
「ジェニファーじゃない……罠だ!」
咄嗟に剣をとろうとするも、フラーゴラが急接近するほうが早かった。
剣に伸びた手を素早く蹴りつけ、払いのける。あげた足がムチのようにしなり、ヒュンという風切り音を鳴らして少年の顎をかすめるように通り過ぎた。
それによって脳を揺すられた少年が平衡感覚を失って崩れ落ちる。
「もう一息って所まで押せたのはラッキーだった。けど……」
罠を察して散らばり、絶え間なくあちこちから射撃をしかけてくる少年兵たち。
フラーゴラはそれ以上の攻撃を受けないように樹木の後ろへと滑り込んだ。
「ワタシの『威嚇術』は威力が期待できないから、あんまりアテにはしないで」
「分かってる。できるかぎりわたしがやる」
総合的な戦闘力でならこちらがやや勝っているであろうココロとフラーゴラ。
その上で、彼女たちは『相手を殺さないように倒す』ことを決めていた。
フラーゴラほど速攻性制圧制に長けたファイターでも、そうなると手札が限られる。ココロは幸いなことに最大火力がそのまま【不殺】性をもっているからよいものの、射程距離の不安やヒーラーとしての手数をさく必要がでた場合の不安が大きかった。
けれど……。
「慎重に。時間をかけてやれば大丈夫」
ココロは樹幹の裏から飛び出し、反転させた輝きを地面へと叩きつけた。赤い光の柱が、少年兵の足下から吹き上がる。
「作戦内容は『殺さずに』だったわよね?」
「時間がかかっても大丈夫。B班が戦いを終えてこっちへ来れば制圧は容易になるしね」
小川のそばで待ち構えていたイナリ。
先行させていたファミリアー越しに敵の接近を読み、ゼファーへと合図を出した。
人間をガン見してくる小動物の少ない都市内ならまだしも、このような森の中ではリスや小鳥のようなファミリアーは透明になったようなものである。相手の索敵能力が優れていればあるいは見つかったかもしれないが……。
「ステルスキルが狙える……あ、キルしたらダメだったわね」
ゼファーは足音を殺しながら森の中で手を突いて移動する。土を擦る音すらさせない材質の靴とやわらかな手のひらで、まるで獲物を慎重にねらう肉食動物のように茂みの中を移動した。
実際の所、肉食狩猟動物のようにふるまうのはゼファーによく似合う。
敵を見つけやすいように散開して移動していた少年兵の一人にゆっくりと接近。距離5mをきった所で、急速に動き出した。
相手の足首を握って膝関節を殴り無理矢理体勢をうつ伏せに倒した後、ロールして後頭部を踏みつける。相手が抵抗しようと手のひらに魔力を溜めたのを見てサバイバルナイフを手の甲に突き立て固い土に縫い付けると、そのまま相手の首に腕を回してしめ落とした。
「来る日も来る日もがきんちょ共のお仕事の邪魔。いい加減、心が痛むわねえ……」
悲しそうに目を細め首を振り……そしてちろりと上唇をなめた。
「なぁん、て。おうちが『あんな場所』じゃあね。帰らせる来が失せちゃったわ」
と、そこで。ザッと周りの気配が動いた気がした。
こちらのステルスキルが見抜かれたのだろうか。何かしら、倒されたことを察知するからくりがあったのかもしれない。
エネミーサーチなどなくても分かるほどの殺意をビリビリと感じる。実際、顔をあげたゼファーの頬を銃弾がかすめていった。
「なぁに。心配しなくたって皆纏めて可愛がってあげるわよ。
少なくとも。イコルなしで見るあの街より、ずっとずっとマシな寝床ぐらい用意してあげますからね」
このエリアの目的は足止め。
散開して戦う少年兵たちは、それ以上大きく動くことはなかった。なぜなら、イナリが『大体一発か二発程度ひっかかるように』罠を配置したからだ。
時間がなかったがゆえの作戦だが、相手はそれ以上に罠があることを警戒して動かねばならない。イナリの隠し方が巧妙であったがために、一見安全そうな場所ですら警戒せねばならなくなったのだ。
「もう、勝ち筋はできあがってるのよ」
イナリは周囲を警戒しながら立ち止まる少年兵の背後に回り、『乱炎迦具土神』を発動させた。燃え上がる炎と刃が、少年兵を襲う。
フラーゴラたちのA班とイナリたちC班。それぞれが『時間はかかるが慎重にやっていけば成功しそうな戦い』をしている一方で、ルシアたちB班は速攻を求められていた。
「敵、襲来! 速攻でして!」
木の枝に立って警戒していたルシアはグッと身をかがめ、枝を蹴って飛ぶ。広げた翼で風を操作し揚力をえると、大きく羽ばたきを加えることで加速し滑空。身をきりもみ回転させることで風を穿つように更に加速すると、敵の戦闘可能範囲外から急速に射程範囲へと侵入。大きく翼を広げて制動をかけつつライフルのねらいを付ける。
「オーダーは――『出来るだけ迅速に全員を無力化する』でして!」
ライフルの中で今まさに打ち出されようという弾頭に魔力をこめ、スコープ越し40mの距離にぴったりと狙いをつけ、そして放つ。
ルシアの最大火力が少年兵の一人にたたき込まれる。
一撃必殺――というほど派手ではないが、常人を一撃でのす程度にはすさまじい火力だ。
それをくらった少年兵が吹き飛び樹幹に叩きつけられたその途端、イーリンはラムレイを走らせ急速接近。
「鏡の国でも探しに来たのかしら? チェスボードに閉じ込められるわよ」
軽口をいいながら『紅い依代の剣・果薙』を握り混む。
ルシアとはまた別の形での一撃必殺。『カリブルヌス・改』を発動させるためだ。
髪は紫苑へ、精気は幽世へ。瞳だけが紅玉の輝きを湛え光の尾を引く。
魔力を伴った斬撃が暴力の塊となって、樹幹に叩きつけたばかりの少年兵へと襲った。
「殺す事に遠慮はしないでごぜーますけど。子供達の命に興味はありんせんで、不殺が狙えるならやっておきんしょう」
「何処までも悪なる者、どうしようも無い者、既に終わってしまった者、君たちはそうじゃないだろう?だから自分は殺したくないし殺さない。……どうか君たちも未来を見れますように」
控えていたエマとグリムが飛び出し、戦闘に加わった。
エマは『ヴァイス&ヴァーチュ』の不殺性質をアクティブにし、魔力の塊を発射。
その一方でグリムは『神気閃光』の力を『不朽の霊杖』に宿し、大地へと突き立てた。
大地を辿って吹き上がった光の柱が少年兵を包み込み、意識だけを剥ぎ取っていく。
「聖光よ、どうか救いを与え給え」
瞑っていた目を開き、他の少年兵を見やる。
元々散っていたせいで範囲攻撃でひとまとめに出来なかったのは惜しいが、敵も(そして当然こちらも)そこまで愚かではない。
長い紫色の髪をした少女が妙に柄の長い短剣を抜き、腕に装着した金色の籠手へしゃらんと撫でるように払った。すると赤い刀身が伸び、短剣をグレートソードへと変化させた。
「ジェニファーを返しなさい! この世界を、私達の平和な世界を、これ以上壊さないで!」
エマを庇うようにグリムが立ちはだかろうとするが、そんなグリムに横から翼を広げた少年兵が突進。抱きかけるようにして近くの木へともろとも激突した。
更に、やや高度をとって射線を確保したルシアを牽制するように鉄騎種の少女が軽機関銃を乱射。防御に難のあるルシアが下がると同時にイーリンが跳躍によって間に割り込み、魔力の障壁を突き出して弾を弾いた。全弾障壁によって止まり、ぱらぱらとおちていく。
「こいつら強っ! マリリン、先に行って! 囚われてる場所だけでもわかればいい!」
呼びかけをうけ、突き進んでくる紫髪の少女マリリン。
エマは仕方ないといった様子で再び『ヴァイス&ヴァーチュ』を近接戦闘モードで発動。血のように赤い大剣を叩きつける少女マリリンの斬撃へと対抗する。
●必ず会えるから
結果を端的に述べるなら、B班の速攻殲滅というタスクは失敗した。
イーリンとルシアの火力と命中精度はなかなかのもので敵を追い詰めるのに非常に役立ったが、エマとグリムは『速攻戦を仕掛ける』という点においては性能の向きが異なっていた。
マンパワーの不足というべきだろうか。回復とカバーリングによって粘った少年兵たちに足止めをくらった間、紫髪の少女マリリンはイーリンたちの防衛ラインを突破。
イナリの情報網で状況を察知したA班及びC班は応援を送ろうとしたが、それぞれの少年兵が足止めを行ったことで応援を送ることはかなわなかった。
追わせまいとしがみつく少年兵たちを必死に振り払うルシアたちをしりめに、マリリンはついにスナーフ秘密教会の場所を突き止めたのだった。
だが、『突き止めただけ』だ。
「彼女は撃退した。捕らえることは叶わなかったが……」
子供達を拘束し監視状態においたまま戦うことは困難を極める。
スナーフ神父は残念そうに首を振り、そして教会を振り返る。
戦闘を終えたイレギュラーズたちがその場に集まっていたが、『オンネリネンの子供達』による少年兵の姿はない。戦いの混乱の中、結果として彼らは戦闘不能になった仲間を抱えて撤退したのだ。
深追いはさらなる戦力増加と各個撃破の危険ありとして行わなかった。そしてそれ以上に……。
「一刻も早くこの場所を離れなければならない。君たち。手伝ってくれ」
敵に場所を知られた以上、この場所は危険だ。
ジェニファーがぽつりと漏らした。
「マリリンが来ていたのね、ここまで」
強い視線を送るココロ。
「帰りたいの?」
「誰だってそうでしょう。自分の居場所に帰りたい」
そんなのは間違いだ。けれど、彼女たちにそれをわからせることは、今は未だ難しい。
成否
失敗
MVP
状態異常
なし
あとがき
――mission failured
――スナーフ秘密教会はその場所を確認されたため、急遽引き払うこととなりました。
――事前に確保されていた別の場所に教会を移し、活動は継続されます。
――ジェニファーがアドラステイアに帰りたいという意思を明確に示すようになりました。
GMコメント
部隊は天義国山中。
国内の異端審問官たちにすら秘匿されてきた秘密教会の場所が発覚しつつあります。
もし『オンネリネンの子供達』が教会までたどり着くことがあれば、彼らはこの場所を捨てるほかないでしょう。
山中に潜み、あるいは探索し、襲撃者である『オンネリネンの子供達』を撃退するのです。
●フィールド:山中の森
襲撃者はあるていどのルートを構築しており、およそ3パターンのルートが予想されています。
そして襲撃者側は教会に誰か一人でもたどり着けばいいので、このパターンすべてを一度に試すでしょう。
PCたちを三つのグループにわけて配置してもいいですし、ルート内を探索することでこちらから発見してもいいでしょう。奇襲が活きる場面でもあります。
●エネミー:オンネリネンの子供達
襲撃者がアドラステイア下層市民であること以外は、そのメンバーや武装に関して不明なままです。
数は10~12人程度と予想されており、総合兵力はそこまで高いとは思えない……そうです。
少なくとも武装した子供であるのは確かで、彼らなりに警戒や探知をしている筈ですが、事前調査によってレーダー系の能力には乏しいとみられています。
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●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●独立都市アドラステイアとは
天義頭部の海沿いに建設された、巨大な塀に囲まれた独立都市です。
アストリア枢機卿時代による魔種支配から天義を拒絶し、独自の神ファルマコンを信仰する異端勢力となりました。
しかし天義は冠位魔種ベアトリーチェとの戦いで疲弊した国力回復に力をさかれており、諸問題解決をローレット及び探偵サントノーレへと委託することとしました。
アドラステイア内部では戦災孤児たちが国民として労働し、毎日のように魔女裁判を行っては互いを谷底へと蹴落とし続けています。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/adrasteia
●『オンネリネンの子供達』とは
https://rev1.reversion.jp/page/onnellinen_1
独立都市アドラステイアの住民であり、各国へと派遣されている子供だけの傭兵部隊です。
戦闘員は全て10歳前後~15歳ほどの子供達で構成され、彼らは共同体ゆえの士気をもち死ぬまで戦う少年兵となっています。そしてその信頼や絆は、彼らを縛る鎖と首輪でもあるのです。
活動範囲は広く、豊穣(カムイグラ)を除く諸国で活動が目撃されています。
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