シナリオ詳細
ルゴス=ウィスクムの昼下がり
オープニング
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深緑と、そう呼ばれるほどに深き森に覆われたアルティオ=エルム。
中央に聳えるはつ大樹ファルカウである。『ルールを知らぬ者』を惑わせると伝わる迷宮森林で過ごす幻想種達は日々を温和に過ごしていた。
大樹ファルカウより幾分か離れた場所に『ルゴス=ウィスクム』と呼ばれた霊樹が存在して居た。
アルティオ=エルムにはさまざまな『しきたり』や特異な『価値観』が存在して居るが、その中の一つが霊樹である。
信仰の象徴であるファルカウに力を与えると信じられている霊樹を中心とした集落が各地には点在し、旧時代の遺跡の守人をしているらしい。
『炎』を歓迎しない森林に棲まう人々はファルカウは勿論、霊樹を傷付ける事を禁じている。
このルゴス=ウィスクムとて同じであった。
「ルゴス=ウィスクムは大樹ファルカウの霊樹の中でも一際大きな樹なのです。
故に、この周辺には神聖なる空気が漂っているのです。大気のマナも光の如く、ファルカウに力を与えています。
……は、そうか。見ることが叶いませんね。フランツェル、我らが友にも『視』る力を与えていただけますか?」
「その為に呼んだのよね? リュミエ」
『ファルカウの巫女』であり、アルティオ=エルムの実質的指導者である『預言者』リュミエ・フル・フォーレの言葉に『灰薔薇(アンテローゼ)の司教』フランツェル・ロア・ヘクセンハウスが渋い顔を見せた。
「構いませんけど。ええ、巫女が望むならばそれ位はできましょうとも」
フランツェルは手にしていた祭具を振るう。霊樹ルゴス=ウィスクムはその仕草に答えるようにイレギュラーズへと『光』を視る力を授けたのだろう。
きらり、きらりと大気に存在して居た魔力はファルカウは光合成でもするかのように集められていく。
「美しいでしょう。特異的に視ることが出来る。ルゴス=ウィスクムは特別な樹でもあるのです。
妹……カノンも好んでこの樹を見に来ていたのですが……私もあの子が居なくなってからは此処に立ち寄ることもなく、」
「でも、イレギュラーズに見せたくてやって来たんでしょう?」
揶揄うようなフランツェルの声音にリュミエはやんわりと頷いた。
「練達の『異空間』での出来事は耳にしました。成程、『仮想空間』での私がその様なことを……。
もしも、幻想種が排他的ならば、そうしたかもしれないと、そう思います。ですが、そうでは無い事を友好の証として示しておきたかったのです」
如何でしょうかと微笑んだリュミエにフランツェルはふと思いついたように提案する。
「そうだわ、お茶会をしましょう」
「……お茶会、ですか?」
突然の発案にリュミエはその美しいエメラルドの瞳をぱちりと瞬かせた。
フランツェルは嬉しそうに胸を張る。アルティオ=エルムは閉鎖的な国家であった。故に、まだまだ知らぬことも多いだろう。
伝えられることは少なくはあるが、『外の者』達と共に過ごしてみるのもきっと悪くはない。
「お茶会です。イレギュラーズには『一人、一品』お土産を用意して貰いましょうよ。
美味しいお菓子でも特別な手料理でも良いわ! 持ち寄って素敵なお茶会にするの、楽しくないですか?」
「……そう、ですね。
我々、幻想種は永きにわたって同盟国であるラサのみとの友好を築いてきました。
各国についての知識はそれ程多くはないのです。……指導者が、無知であるのはお恥ずかしい限りです。
よろしければ、私に皆さんの冒険についてお聞かせ下さいませんか。ソレと共に、答えられる範囲のことをお答えしましょう」
微笑んだリュミエは会場はここ、ルゴス=ウィスクムをと選んだ。
彼女にとっては遠い昔、妹共に視た美しい景色だった。
――綺麗。こんなにも綺麗なんだもの。また一緒に見に来ましょうね『姉さん』
何時だってあの声音が思い出された。リュミエは懐かしそうに目を細めてから「宜しくお願いします」と穏やかに笑みを浮かべて。
- ルゴス=ウィスクムの昼下がり完了
- GM名夏あかね
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2021年10月11日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談8日
- 参加費150RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
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特異運命座標となって、突然の空中庭園への『召喚』で否応なしに故郷より引き離された『紅き弾道は真実に導く』ワルツ・アストリア(p3p000042)の『楽しい外世界ライフ』もある程度満喫できた。4年ぶりにもなる故郷への帰還に僅かな気まずさを滲ませているのは森で起こしたボヤ騒ぎのせいもある。
おとぎ話として伝わっていたラブストーリーの事もあり、戻るに戻れないで居たワルツが満を持して故郷へと戻る事になったきっかけというのもリュミエ・フル・フォーレによる茶会の誘いであった。
「大樹ファルカウの巫女であるリュミエ様とお茶会ができる日がくるとは。
これは失礼がないようにしなければいけませんね。な、なんだか緊張してきたのです!!
庶民(仮)ハーモニアにはリュミエ様はまぶしいのです!」
待ち合わせ場所であったルゴス=ウィスクムに辿り着いて、『守る者』ラクリマ・イース(p3p004247)が滲ませた緊張は眼前で首を傾げるリュミエを目の当たりにしたからだ。緊張するなあと呟いて、少し跳ねてしまっていた髪の毛を無理矢理撫で付けた『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)はリュミエの側でニコニコと笑っていたフランツェル・ロア・ヘクセンハウスを手招いて。
「……フランさん、大丈夫だよね? 変じゃないよね? ね?」
「ふふ、大丈夫よ。可愛い可愛いアレクシアさんの髪の毛がぴょんと跳ねていても愛嬌だわ」
「……もう!」
頬を赤らめたアレクシアにフランツェルはおかしそうに小さく笑みを零す。相変わらずの様子のフランツェルに眉を寄せたリュミエは小さく息を吐いてから「お越し頂け光栄です」とテーブルより立ち上がった。
「リュミエ様、ご無沙汰しております。エリスです。魔術を教えていただいた際には、大変お世話になりました」
リュミエから直接魔術の指南を受けた『呪い師』エリス(p3p007830)は穏やかに微笑んだ。彼女から『フォーレ・カース』を学ぶ際には其れは其れは『途轍もない特訓』が必要ではあったのだが。
「エリスさん。息災そうでなによりです」
緊張なさらないでとラクリマへと囁くリュミエに、そうは云われてもと彼はおっかなびっくりと云った調子で席に着く。此は貴重な機会であると『黒のミスティリオン』アリシス・シーアルジア(p3p000397)はよくよく感じていた。
リュミエと直接話が出来る。参加するならお土産を1品持ってくること、というのは外の世界への興味から来るものなのだろうか。
「ルゴス=ウィスクム……光の樹、霊樹……。素晴らしい場所にお招き頂き、感謝を」
「こんにちは、リュミエ様。お茶会の作法については分かりませんが、招いて頂けて嬉しいです」
招待して良かったと彼女に感じて欲しいと和装に身を包んで緑茶を手土産にやってきた『ただの死神』クロバ・フユツキ(p3p000145)は普段は文をやりとりするだけの間柄であることから緊張を感じていた。
彼らの緊張を感じながらも、美しい森に再度こうして訪れる事が出来たのだと喜ぶ『埋れ翼』チック・シュテル(p3p000932)は「とっても、嬉しい」とその瞳を煌めかせた。黄金蜜の瞳は嬉しそうに細められる。
「……そっか。今日は……『お手伝い』をしなくても、大丈夫な日……なんだ。
余り馴染みがないから、こそ。ドキドキな気持ち……いっぱい。皆で……楽しい時間、過ごす。出来ます様に」
「はっ、そうね。そう、リュミエ。あのね、霊樹プルウィアの祝祭を手伝って貰ったの」
チックさんとアレクシアさんにね、と胸を張ったフランツェルにリュミエは「フランツェルがご迷惑を」と困り眉で頭を下げた。
彼女たちの力関係は分かり易い。小さく笑みを漏らしたアリシスは「一品、皆で持ち寄りました」とリュミエへと声をかけた。
「オーッホッホッホッ!! リュミエ様! お招き頂きましてとってもとってもありがとうございますわー!
この! わたくし!」
ぱちん、と指を鳴らして『きらめけ!ぼくらの』御天道・タント(p3p006204)の額が煌めいた。
\きらめけ!/
\ぼくらの!/
\\\タント様!///
「――が! 馳せ参じましたわーー!」
パーティプリティインフィニティポーズを決めたタントもしっかりお土産は準備済みなのである。
「わたくしからのお土産は、どん!」
世界各国特産の果物をふんだんにのせたタルトはアレクシアと一緒に作ったのだという誇らしげな笑顔を添えて。
海洋のトロピカルフルーツに鉄帝の鮮やかな甘みのリンゴ。リュミエにとっては馴染みないそれらは――嗚呼、その表情を見れば直ぐに分かる。
「……フランツェル、お土産を並べて、直ぐに茶会を始めましょう?」
――期待以上だったのだろう。
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お土産を一点ずつ。そう言われたときにエリスが最初に思い浮かべたのは故郷で人気であったというバターミルクビスケットであった。
「あ、ワルツです。ども……お招き頂きありがとうございましゅ」
そろそろとワルツが差し出したのは練達で人気の菓子シュトッカーのファミリーアソートパックであった。定番のチョコにイチゴ、ミルク、緑茶と様々なフレーバーが楽しめておいしい。何処かでは将軍が即席麺で喜んだこともある。ならば、指導者には異国の俗な文化である。
ドキマギとしているワルツは会話が成立した後で流暢さを得るオタク的トーク術なのだと身を縮めていた。
(はああ……リュミエ様、ちっとも変わらず美しいままね。当たり前か。
昔は大樹の様に届かない存在に感じたものだけど、私が強くなったのかしら。ふふ)
ダークな笑みを浮かべていたワルツはリュミエが「これは、菓子ですか?」と首を傾いだ様子にふと、友人の姿が重なった。
金髪に紅い瞳、幻想種の友人のようなタイプには少し弱い。何でも受け入れてくれそうな自然と過ごす長命の種の朗らかさにうずうずとしてきたのだ。
「では、私からは『元の世界』で長く住んでいた国の伝統的なお菓子を作ってみました。
『スフォリアテッラ』という……簡単に言えば、パイの一種ですね。量は程々ですが、御茶の席には合いましょう」
「元の世界、と云うと旅人なのですね」
リュミエがぱちりと瞬けば、フランツェルは「幻想でも似たようなものを食べれる気がするかも」とアリシアの手製の料理を眺めている。
スフォリアテッラのそばにそっと差し出されたのはチックがよく行くパン屋さんご指導のもとで作ったという手作りのクッキーだ。
「……いつもは、ちょっと変な形になっちゃう、けれど。今日は……綺麗に出来た気が、する。
まあるいものに、お花に、猫の形。さくさく、ほろほろ。優しい……バターの味。きっと……美味しいお茶にも合うと、思う」
「まあ、手製のものをちょうだいできて嬉しいです。タントさんやアレクシアさんのタルトも素敵ですが、チックさんのクッキーやエリスさんのビスケットもとても茶会の席に合いますね」
リュミエの元にずずいと身を乗り出したラクリマは折角だから珍しいものを探してきたのですとイレギュラーズがギルドで経営している店を眺めて選んできたとバスケットを取り出した。
「実は、自分の所のはマヨネーズくらいしかないので、やめておくのです。
リュミエ様にマヨネーズ送るとかマジでシャレにならんレベルで父親に怒られるのです……」
「マヨネーズ、も、頂いたらそれなりに使い道がありますよね? フランツェル」
「まあ、あると思うけど、欲しいならラクリマさんにお願いしておけば……」
案外許容範囲の広いリュミエにラクリマは「喜んでー!」と明るく返事をし――
\ ベーコンエッグバケットサンド /
「女性が多いのでお菓子とかは多いかなと思ったので、軽食的な物にしてみました! 小さく切ればみんなで食べれそうかな。
他にもたくさんのお店が沢山あって、サクサクメロンパンとか猫の形したチョコとか、今ならハロウィンの人形がついたお菓子とかもあるのですよ!」
「成程。ならば、此方をどうぞ。甘いものが多いと見越して用意しました。
確かに甘味はとても素晴らしいものだ。俺も好物なので非常にわかりますとも。
だが立て続けに食べても甘いものの味が混ざって大変な事になります。
という事で一度すっきりした飲み物を用意することによってまた別のお菓子を楽しめる、って寸法ですよ」
クロバは緑茶を淹れてリュミエの前へとそっと置いた。さっぱりとした緑茶で甘味を何度も楽しもうという算段だ。何せ、これから話は長くなるのだから。
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「外の話……そうですね、最近印象に残った依頼と言えばウニガミ様の依頼ですね!」
「ウニ……?」
一体何だろうかと首を傾いだフランツェルに「貴女も知らないのですか」とリュミエが不思議そうな表情を見せる。
ポピュラー過ぎる存在ではないのだろう。チーサ・ナコックが仕事を斡旋してくれたというウニガミ様に関する依頼は独特であったらしい。
「海洋のウニ漁で有名な場所に出現したウニを狙うモンスター、レッドスター達を退治するという依頼なのですが、退治の仕方が独特でして……
ウニガミ太鼓という太鼓を叩いてウニ漁の守護神ウニガミ様を呼び出してレッドスターキングを抑えてもらっている間に、私達はレッドスター達と戦いました。
最期にウニガミ様がレッドスターキングを倒して無事にパープルウニを守り切り、お礼としてウニ料理をご馳走になりました」
「ウニ、というのは海産物なのですね」
食べたことがありません、とリュミエが不思議そうな表情を見せる。海に余り馴染みのない森の住民である彼女にそうでしょうとエリスは頷いた。
「ウニ料理を食べたのは初めてでしたが、あんなに美味しかったとは……! リュミエ様も機会があればパープルウニを召し上がってみてください!」
「まあ、機会があれば……」
ちら、とクロバを見遣ったリュミエに期待されているのだろうかとクロバは頬を掻いた。外かあ、とワルツが唇を尖らせ話すタイミングを計っている最中――
「海洋にあった、『絶望の青』っていう危ない海に……ね。
安全な島が……見つかって。そこに、『トラン』っていう……ぶよぶよした、生き物がいて。
その子……触ったら、姿……変わるんだ。触った人、二人分に。……えと。つまり、おれや……他に島、来てた人。三人に、なってた。
でも、大丈夫。その子達は、悪い子達じゃ……なかった、から」
「海洋というのは、不思議な場所なのですね。どうやら、未知が溢れているようで……」
チックは深緑についての質問は皆に任せて、自身の経験を語った。パチリと瞬くリュミエは海洋に興味を持ったのだろう。
「それにしましても、霊樹の光……とってもきらめいておりますわねー……!」
コミュニケーション能力が『最強』のタントはきらめきに興味を示していた。うっとりとため息を吐いてしまうほどの美しさ。
そうでしょうと微笑むリュミエに「はっ!」と慌てた彼女は早速と外の冒険について語り始めた。
「外での冒険、となれば先日のヴィーグリーズ会戦ですかしら?
太陽の翼・ハイペリオン様の背に乗り、神翼の勇者にしてわたくしの恋人のジェック様と二人で力を合わせ、この大空をびゅーーんっと飛びまして!」
両手を広げてびゅーんとして見せるタントはボディーランゲージ多めに語り続ける。
「わたくしがきらきらーっ! ときらめけば!」と両手を前にかざす。
「そうしましたらジェック様がキリッ! ばしゅーん! とっても格好良かったのですわ~!! ……んぬ? 伝わっておりますかしら?」
ライフルを構える真似をしてにんまりと微笑んだ彼女にリュミエは「ばしゅーん、ですね」と頷いて。
「外、そうだ。練達、練達はどうですか? 学校の試験、お祭り、台風、ゾンビ退治、真夏のプール、仮想空間での戦い……
気になる変わった子がいる事も。どれも最高に楽しい思い出! 凄いんですよ、練達って!」
やけに饒舌になっていくワルツは希望ヶ浜学園での生活は新しいことばかりなのだと告げた。
「話したいことはいっぱいいっぱいあるんですけど……一番ビックリした国を……ワルツくんと同じだけど。練達のことを。
どんな感じの国かっていうのはふんわり聞いてると思うんですけど、深緑とは何もかもが違って、植物はあんまりないけれど、その代わりに機械がたくさんあって、それで、普通の人でも魔法みたいに色んなことができるんです!
これも、ここじゃあ何も使えないですけど……向こうだと遠くの人と話したり、景色を切り取ったり、色んなことができて……」
aPhoneを取り出せば「あの国じゃ、これでテレパシーみたいに言葉を届けるんですよ!」とワルツが身を乗り出した。
「練達は旅人たちの作った地区なのはご存じですよね? はい、以前送ったメールもその技術の一つですし。
話にあったROOもそうですし街並みのこことは大きく違うものとなります。一番信じがたいと思うのは夜の景色ですね。
あの街には火を起こさず灯りをともす仕組みがあって、目に見える建物のすべてが光を放っています。地上に星空があるようなものだと思ってください」
クロバに続きアリシスが「ROOでは此方が再現されていたのです」と告げた。例えば再現されていたのは鉄帝の『ギアバジリカ』だ。
この話での個人的な胆は、鉄帝国にはこのような古代の文明の遺物や、遺跡の類が無数に存在していると云うことだった。ラサのアカデミアや深緑にある古代遺跡も同じくそうした遺物だろう。
「それで、深緑に存在する遺跡について何処まで把握できているのだろうか、という事です。
幻想種の文明の遺跡なのか否かも気になりますが、内部を把握しきれているのか否か。
……迷宮森林にいたブルーベルは妖精郷にも当然のように姿を現した。幻想種だったオラクルのことも鑑みれば、彼女や冠位怠惰の活動拠点は深緑領内に存在する可能性が高いのでは、と。
ならば潜んでいる可能性が最も高いのは何処か……深緑に無数に存在する遺跡の深奥ではないか、という予測をしています」
首を捻ったアリシスにリュミエは表情を硬くした。
「遺跡の内部については全てを把握できていません。そして、冠位魔種についても私たちも警戒を強めています。
ですが、全てを『把握しきる』事は出来ませんので、私は此処で巫女として過ごしているのです」
自信が外に出ない理由であると、そう告げるリュミエにアリシスはふと、思い出す。『翡翠』ではよく聞いた石花病だ。
「石花病? ああ、アレクシアさんのお友達も罹ってるわよね。治療方法は確立されてないのだけれど……『ROO』でその治療方法が確立されれば現実でも役立つかしら?」
フランツェルの言にアリシスは翡翠はどちらかというと『あちらで調査を行った』方がこれからに役立つのだろうかと感じていた。
「なんてことのない素朴な疑問ですよ。以前話しましたっけ? 俺にも妹がいますので。
リュミエ様から見たカノンとの思い出とか、ね。もちろん話せる範囲で構いませんよ。
差し出がましいとは思いますけど、俺は貴方を理解したいと思ってます。イレギュラーズとして、この美しい国に関わる冒険者として」
クロバへとリュミエは「そうですね……」と呟いた。
「幼い頃、カノンがお遣いに行くと行って出て行ったことがあります。心配して先代のヘクセンハウスと共に着いていったのですが、慌てて転んだ彼女が……」
何かを思い出すように、ぽつりぽつりとリュミエは語る。カノンはとてもかわいらしく、そして引っ込み思案であったと。
それでも、自身等のことを慮ってくれる素晴らしい妹であったのだと。それが――あの様なことになったと不安げに呟いて。
彼女は妹を大切にしていた。其れが分かっただけでもクロバにとっては良いことだ。
「そう、それで……リュミエ様って、ここから……ファルカウからはやはりあまり離れられないのでしょうか?」
問うたアレクシアにリュミエとフランツェルが顔を見合わせた。少しばかり、予想外であったのかもしれない。
ウニやラクリマがおすすめの肉が入ったプリンに興味を示す自分自身が子供っぽかっただろうかとリュミエは少しばかり頬を朱色に染める。
「もしそうなら、私になにかお手伝いできることってないでしょうか? もちろん、私も外が全ていいものだ、なんて言いません。
それでも……やっぱり伝聞ではなく、その目で、その身で、感じてほしいなって。
だから、もし外に出たいなって時は必ず力になりますから! 言ってくださいね!」
「出られない――訳ではないのです。ですが、そうですね。この地の脅威が払いのけられたなればいつか。そのときは力を貸してくださいね」
微笑んだリュミエへとチックは改めて向き直った。輝く、ルゴス=ウィスクムの光が、溢れている。
「リュミエ……様、フランツェル。今日は、楽しい時間を……過ごせて。本当に、良かった。
あなたの大切な『ひかり』を、教える……してくれて。ありがとう」
「……ええ。こちらこそ。素敵な時間を過ごして頂けたのならば嬉しいです」
この地は、とても美しい――故に、この空間を喜んでくれたのならば、嬉しいと彼女は目を細めて。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
このたびは楽しいお茶会をありがとうございました。
リュミエ様は皆さんのお土産にご満悦でした。茶会、良いことですねと微笑んでいらっしゃったのでした。
GMコメント
夏あかねです。リュミエ様とお茶会をしましょう。
●目的
リュミエ様と楽しいお茶会を過ごす。
●難易度
本依頼に戦闘は御座いません。部分リクエストである事からノーマル相応の経験値を得られますが『Easy』シナリオとして扱います。
●ルゴス=ウィスクム
光の樹とも称される霊樹。古語魔術と呼ばれた『深緑特有』の術式を有する霊樹の守人が棲まう集落です。
リュミエとカノン(リュミエの実妹)は此の地を好み、イレギュラーズへと友好の証として此の地へと訪れたかったようです。
フランツェルの計らいでお茶会を行うこととなりました。
●ルゴス=ウィスクムのお茶会
『お一人様、一品』のお土産をお持ち寄り下さい。故郷のお菓子でも手作り料理でも茶葉でもなんでもOKです。
リュミエは『外』について余り詳しくないのでよければオススメを教えてあげて下さい。
また、伝え聞いてはいても皆さんの口から語られるローレットの冒険譚に耳を傾けたいと望んでいます。全ては和平のために。
皆さんからもリュミエに質問することが可能です。アルティオ=エルムについてなど気になることを質問してみて下さい。
ただし、リュミエも『言って良いことと悪いこと』の判断が付くために踏み込んだ話までは教えてくれないかも知れません。
ちなみにリュミエ様は『アルティオ=エルムで高価に取引される茶葉(深緑産)』を用意しました。
フランツェルは故郷幻想から取り寄せた種なしのグレープを準備したようです。
●リュミエ・フル・フォーレ
深緑の指導者。実妹にカノン・フル・フォーレ(熱砂の恋心にて死亡)が存在する。
大魔道、予言者とも呼ばれたファルカウの巫女であり、年齢不詳。混沌に於ける大多数より長命であると考えられます。
非常に温和であり他所の諍いにちょっかいをかけることは好みません。アルティオ=エルムに関しての手出しも好んでいません。
永きを生きたため、他種の価値観を理解しているが故なのでしょう。
非常に幻想種らしい幻想種です。『善良が全ての解決にならない事を理解して』いますが、表に出さない程度には『出来た人間』です。
答えてくれることは答えてくれますが、都合が悪いことは水に流される場合があります。
●フランツェル・ロア・ヘクセンハウス
アンテローゼ大聖堂の司教。代々、大聖堂の司教が襲名する『ヘクセンハウス』を幻想貴族であった過去を捨て拝命した人間種です。
智慧の司教とも渾名される『ヘクセンハウス』であるために、先代の記憶を全て暗記しており、過去を視てきたように語ります。
基本的にはイレギュラーズ側の人間です。ですが、ポジションは深緑である事を忘れていません。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。のんびりとお茶会を楽しみましょう。
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