PandoraPartyProject

シナリオ詳細

安楽椅子イレギュラーズ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 ユリーカ・ユリカ(p3n00002)はローレット本部のロビーにたむろするイレギュラーズ数名を一瞥すると、不意に訳の分からないことをいい出した。

「これから皆さんに、推理力テストを出すのですッ!」
「テスト?」

 近くに居たイレギュラーズのひとりが、怪訝そうに小首を傾げる。

「ここのところ幻想では大きな事件が相次いでいて、イレギュラーズの皆さんは相当お疲れのご様子なのです。そこで今日は箸休めの、ちょっとした頭の体操をしてもらおうと思うのです」

 いいながらユリーカは、一枚のメモを取り出した。
 どうやら他の誰かが作成したらしいそのメモを、ユリーカはまるで自分が打ち出したアイデアであるかのように朗々と読み上げた。

===================

 とある、月曜の朝。
 舞台は幻想内の農村バルフ。多くの若者が都に出稼ぎに出ており、村は過疎の一途を辿っている。
 このバルフで変死事件が起きた。被害者は44歳の中年女で小さな農場を持つ地主のカイラ。
 殺人現場は木造二階建ての古い家屋で、カイラの自宅であるという。
 カイラの死体は一階の炊事場兼食堂の土間で発見された。床に俯せとなった状態で、背中には心臓脇の動脈に達する傷があり、一条の血潮が背中に赤く浮き出していた。
 吐瀉物の異臭が漂う中で、最初にこの死体を発見したのは薬草や毒抜き処理したキノコの販売で生計を立てているボラム爺という人物だった。
 その後の自警団と村医者ギーゼル氏の調査によると、既に死後数時間は経過しているとのこと。
 この状況から見て、明らかに殺人事件だった。
 関係者は、以下の四人である。

 ボラム爺、72歳。
 妻には先立たれ、ふたりの優秀な息子が都で高級官僚を務めていたらしい。
 本人は薬草や毒抜き処理したキノコの販売で生計を立てている。心臓の悪いカイラの為に週に一度、毎週月曜の朝に薬草を届けており、毎日服用する薬草を指定していた。日曜夜から朝にかけては村医者ギーゼル氏と新たな薬草の調合について酒を酌み交わしながら話し合っていた。カイラの死体の第一発見者である。

 ペレー青年、19歳。
 鍛冶屋の見習いで、カイラの前夫が他所で浮気して作らせた不義の子。自分はカイラの夫が残した財産を受け継ぐ権利があると毎日のように詰め寄っていたが、カイラからは相手にされず相当頭にきている。日曜夕方にカイラ宅を訪れており、そこでも激しく口論した。その後は自宅に戻ったが、それ以後のアリバイは無い。
 尚、ペレー青年にはカイラの前夫が密かに多額の支援金を出していたらしく、カイラはその支援金もペレー青年が受け取るのは違法だと主張して、即時返還を求めていた。

 リヴ未亡人、30歳。
 5歳のひとり息子を育てている農婦で、カイラの農場で小麦を生産する小作農をしており、小麦製品を売って生計の足しにしている。カイラにはリヴの亡き夫が残した莫大な借金があり、息子にも借金返済の負担を強いるよう迫られていた。
 昨晩リヴは農地使用料の支払いの為に、遅くにカイラ宅を訪れている。この時カイラは食事中だったが、片手間に適当な使用料計算を叩き出し、いつもより多額の使用料を請求してきた。そこでリヴが不平を口にするとカイラはいきなり麺棒を投げつけ、リヴの額に手酷い傷を負わせた。その後リヴは泣きながら帰宅し、息子を寝かしつけてから自身も早々に休んだ。その為、アリバイは無いに等しい。

 下男フェルド、39歳。
 カイラの下で働くやや頭の悪い大男。日曜夜にカイラが苦しむ声を聞いていたが、どうせいつもの癇癪だろうと無視してそのまま寝てしまった。特に動機は無いがアリバイも無い。

 尚、村医者のギーゼル氏は死亡したカイラについて、以下のような証言を自警団相手に残している。

「カイラさんは、もうすぐあの餓鬼どもの財産が手に入ると随分、ご満悦だった。私は、あの男の金には手を出さない方が良いと忠告したんだがね。カイラさんの吐瀉物にはパンや何かの麺類が混ざっていた。小麦アレルギーなんだから多食は良くないと、あれほど口酸っぱく注意したんだけどねぇ」

===================

 ここでユリーカはメモから顔を上げて、イレギュラーズ達に向けて不敵な笑みを見せた。

「さぁ、ここで皆さんに挑戦状です。犯人を割り出す材料は既に揃っているのです。物凄く簡単な論理です。誰が犯人なのか、一発回答してみせるのです」

 読み上げられた状況証拠と各容疑者の簡単な情報だけで、真犯人を割り出せとユリーカはずずいと身を乗り出してイレギュラーズ達に迫ってきた。

GMコメント

 こんにちは、革酎です。
 非常に簡単な論理ゲームをお届けします。ちょっとした頭の体操と思って下されば結構です。

 以下は、本シナリオの補足情報となりますのでご一読下さいませ。

●依頼達成条件
・ユリーカの出した問題に正解して、得意顔のユリーカをぎゃふんといわせる。

●参加方法
 特に制限はありません。
 ユリーカを論理的思考で論破するも良し。色々実演して推理を働かせるも良し。但し今回ユリーカが出した問題は実在の人物・団体とは一切関係がありませんので、実際にバルフという村で殺人事件が起きた訳ではありません。

  • 安楽椅子イレギュラーズ完了
  • GM名革酎
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2018年07月14日 21時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

テテス・V・ユグドルティン(p3p000275)
樹妖精の錬金術士
武器商人(p3p001107)
闇之雲
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
フルオライト・F・フォイアルディア(p3p002911)
白い魔女
アニエル=トレボール=ザインノーン(p3p004377)
解き明かす者
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
ミルキィ・クレム・シフォン(p3p006098)
甘夢インテンディトーレ
美城・誠二(p3p006136)
元。

リプレイ

●知力合戦開幕
 ローレット本部ロビーの一角。
 リクライニング用ソファーやティータイム用テーブルなどが並ぶ休憩エリアに、ユリーカ・ユリカ(p3n00002)と八人のイレギュラーズ達が顔と突き合わせていた。
「さぁ見事、推理してみせるのです」
 そこに居並んでいたのは、以下の面々である。

 『白い魔女』フルオライト・F・フォイアルディア(p3p002911)
 『お節介焼き』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
 『樹妖精の錬金術士』テテス・V・ユグドルティン(p3p000275)
 『闇之雲』武器商人(p3p001107)
 『元。』美城・誠二(p3p006136)
 『千法万狩雪宗』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
 『特異運命座標』アニエル=トレボール=ザインノーン(p3p004377)
 『見習いパティシエ』ミルキィ・クレム・シフォン(p3p006098)

 さて、何故か勝ち誇ったように胸を張るユリーカに、まず最初に挑んだのはフルオライトだ。
「はい先生ッ! さっぱりわからんのだッ! もうこの際、全員犯人で良いのではないかッ!」
 いきなり発せられた随分と前衛的で大胆な迷推理というか白旗宣言に、その場の全員が危うくずっこけそうになった。
 フルオライトの説明を聞いてみよう。まずボラム爺について。
「第一発見者は、矢張り怪しいものよなッ! 服用する薬草を指定していたということは、その場におらずとも殺すことは可能であるわけだしなッ!」
 次にペレー青年。
「鍛冶屋となッ! 鍛冶屋ならば凶器の入手は容易いなッ! その刃物でもって刺したのではないのか!」
 更にリヴ未亡人。
「小麦製品を売っているッ! つまりパンだなッ! 無理に食べさせて、アレルギー反応を狙うことができるなッ!」
 最後に下男フェルド。
「こやつに関してはよくわからぬなッ!」
 何とも壮絶な、怒涛の如きマシンガントークにはユリーカのみならず、他の面々もただただ呆気に取られているのだが、ひとりだけ給仕担当を自ら買って出ている華蓮だけは違った。
 華蓮はメイド然とした丁寧な所作でフルオライトの前に紅茶とお菓子をそっと差し出し、お疲れ様でしたとにっこり微笑む。テーブルに並んでいる軽食も全て、華蓮が用意したものだ。お互いに推理を出し合うテーブルゲームに於いては、華蓮のような存在は非常にありがたい。
 しかしただ給仕担当だけで終わる訳ではなく、華蓮は華蓮で独自の推理を完成させていた。が、この場では自ら積極的に発言しようとはせず、他の面々の推理に耳を傾け、その内容をメモに書き留めるなどして、徹底してサポート役に自らを任じていた。
「では、次に推理を披露するのはどなたかしら?」
 自然と、華蓮が進行役のような立場となる。
 お茶菓子でひと息ついているフルオライトに続いて挙手したのは、テテスだった。テテスは車椅子の上で小首を傾げ、やや自信無さげに口を開いた。
「犯人は、リヴ未亡人か?」
 出血量が少な過ぎることから、死因が心臓脇動脈に達していた傷ではなく、毒殺が正解だテテスはいう。この毒殺説はフルオライトを除く他の全員が共通して抱いている認識で、この意見に対しては誰も異論を唱えなかった。
「まぁ、あの状況ならそう考えるのが妥当かな」
「あんまり血がどばどばーって吹き出てた感じじゃなかったもんね」
 アニエルとミルキィがテテスの説明の邪魔にならないよう、静かに囁き合っていた。汰磨羈もふんふんと頷きながらテテスの説明をメモに書き留めている。
 さて、テテスがここで注目したのは、動機だ。
 カイラ殺害の動機を持つのはペレー青年リヴ未亡人のふたりだけしか居ないというのがテテスの立場だ。ここでテテスはフルオライトと同じく、リヴ未亡人が小麦製品を扱っている点に着目し、ペレー青年を選択肢から消した。
 結果として残ったのがリヴ未亡人。
「では、背中に傷を入れたのもリヴ未亡人?」
 華蓮が口にした疑問に、テテスはかぶりを振った。
「違うな。それはボラム爺の仕業だろう」
 曰く、ボラム爺が自分に容疑がかかるのを恐れて、刃傷沙汰による殺人事件だと偽装する為に、死体発見時に入れた傷だろうというのがテテスの最終結論だった。
 だがテテス自身、この推理に絶対的な自信がある訳ではないらしい。彼女は自分の出番が終わるとさっさと口をつぐみ、早く次の推理者の意見を聞きたいという態度を見せていた。
 単なる暇つぶしで参戦したテテスだが、こういう頭の体操は嫌いではないらしい。

●次なる容疑者
 華蓮が促すと、ほとんど同時に武器商人と誠二のふたりが手を挙げた。
 武器商人も誠二も、犯人はボラム爺という立場だ。
 まず武器商人が先に口を開いた。
「今回に限っていえば、煩雑な人間関係も、動機の考察も必要は無いんじゃあないかな。違和感にひとつ気付けば、あとは『誰がそれをやる必要があったか?』で終わり」
 武器商人のいう違和感とは即ち、刺し傷と出血量、そして嘔吐物の存在だ。と、ここで武器商人はユリーカに視線を転じ、どこか可笑しそうに問いかけた。
「あァところで念の為の確認だけども、カイラはアンデッド系の旅人だったりしないよね?」
「それは心配無用なのです。そういうアンファアな情報は無いのです」
 ユリーカの応えに満足すると、武器商人はまたもや悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「じゃあ、確定だね。殺害方法のミスリードだ。皆さんも異存は無いとは思うけど」
「時系列としては、こんなとこだろうか」
 誠二が華蓮からメモ帳を借りて、そこに以下のような内容を記した。

・最初にボラム爺が、月曜日に渡す日曜分薬草をなんから別の薬に差し替えて渡す
・日曜日 夕刻 ペレー氏が口論を起こす
・日曜日 夜 リヴ氏が口論を起こす(この時おそらく小麦の食事を取っていた)
・日曜日 夜 食事後、薬の服用を行った(推論が正しければフェルドはこの声を聞いたと考えられる)
・月曜日 朝 死体発見時にボラム氏が背中に刃を刺しておき、死因のすり替えを行った

 誠二もリヴ未亡人とペレー青年に動機と殺害の可能性はあると考えていたが、犯人は要素的に断定できるとユリーカがいっていた為、逆に二者択一で断定できないので敢えて除外した。
 結果、残ったのがボラム爺という訳だ。
 武器商人は誠二が皆に見せた時系列の整理表を、完璧だと頷いて静かに笑った。
 実は他にもボラム爺犯人説を唱える者は居たのだが、時系列に関していえば、誠二が示したものと概ね合致していた。
「そして最後に村人はこう思う訳だ。嗚呼、哀れなカイラは夜に具合を悪くして水でも飲みに来たところで、背後から刺されて殺されたのだッ! とね」
 やや芝居がかった調子だが、傷口の描写はあったものの、刃物それ自体の描写が無かったことにも言及した武器商人の説明には、非常な説得力があった。
「矢張り、アリバイの有無だな。ボラム爺だけしっかりしたアリバイがあり、容疑から最も遠いところに居るように見せかけたのが逆に仇となったな」
 誠二は武器商人の意見を代弁した訳ではないが、結果としてふたりはボラム爺のアリバイが却って怪しいと踏んでいた。
 成程、そういう考え方があるのか、とテテスが感心して頷いている隣で、フルオライトがうぉー、すげー、などと幾分興奮気味に叫んでいた。
「ふたりとも、ボラム爺犯人説で確定ね。他にボラム爺犯人説を取るひとは?」
 華蓮が問いかけると、汰磨羈が腕を組んで渋面を浮かべた。
「ボラム爺が犯人、というところは同意見だが、私はもう少し、突っ込んだところを考えてみた」
 汰磨羈の意味ありげな台詞に、今度は聞き手に廻った武器商人と誠二が揃って視線を向ける。汰磨羈もまた自信の無さでは他の面々に引けを取らないのだが、しかし観点の独自性という点では非常に個性的だったといって良い。
「実は村医者ギーゼルが共犯者だった、ということはないだろうか」
 その思わぬ切り口に武器商人や誠二のみならず、華蓮も澄まし顔ながら幾分興味を惹かれた様子だった。
 テテスとフルオライトに至っては何をかいわんや、だ。
「ギーゼル氏がここで登場、と……どうぞ、続けて」
 誠二からメモを返して貰った華蓮は、意外な人物の名を書き記しながら汰磨羈に続きを促した。

●最大の謎、それは動機
 村医者ギーゼルが共犯者とは、どういうことなのか。
 イレギュラーズ達、そして出題者たるユリーカも意外そうな面持ちで汰磨羈に視線を集めている。そんな中で汰磨羈は、相変わらず自信の無そうな様子で華蓮に促されるまま、言葉を続けた。
「新たな薬草の調合についての話し合い……ここからふたりには何らかの繋がりがあると考えた。日曜の夜から朝まで……互いを庇い合うにはうってつけの話」
 だからふたりは協力関係にあった、と汰磨羈は論ずる。
 基本的な時系列は誠二が示した内容に大差は無かったが、ただ一点異なったのは、心臓脇の動脈に刺し傷を入れたのはボラム爺ではなくギーゼルだったというのが、汰磨羈の推測だった。
「検死担当が片棒を担いで、捜査を混乱させる……ありそうな話ね」
 可能性としては十分考慮すべきだ、と華蓮はこの点についてもメモを追記した。
 では、動機は何なのか。ここで汰磨羈ははにかんだ様子で頭を掻いた。
「あの男の金には手を出さない方が良い、というギーゼル氏の証言に何かありそうな気がするのだが、申し訳ない、ちょっとこれ以上は思いつかなかった」
 最後は幾分尻すぼみに終わった形だったが、兎も角汰磨羈は、村医者ギーゼルが相当に色々な事情に通じているという点に着目した。この着眼点は正解に至るかどうかは別として、推理を働かせる者には必須の要素ではないだろうか。
 あらゆる点を疑ってみせる。探偵として頭を使うならば、避けては通れぬ道だろう。
 何よりも出題したユリーカ自身が驚いた表情を見せているのが、最も印象的だった。
 因みにギーゼル氏が関与したのは、ペレー青年に容疑を被せる為というのが汰磨羈の推論。動機よりも、容疑の目を他者に向けさせる方に注力したのでは、というところを注目した格好だ。
 ここまで、容疑者としてイレギュラーズ達が具体的に名を挙げたのはリヴ未亡人とボラム爺の両名。そして共犯者として新たに浮上した村医者ギーゼル。
 フルオライトが全員を怪しいと読んだのは、敢えて除外する。
「しかしボラム爺が犯人だとすると、動機は何なのだろうなッ!」
 話が面白くなってきたと、フルオライトが若干声を弾ませた。早々に推理ゲームから脱落した後は、こうしてひたすら野次係に徹している訳だが、そんなフルオライトを華蓮は微笑まし気に眺めていた。
「それについてはさっきもいったけど、余り考慮する必要はないんじゃないかなぁ」
 武器商人は依然として、動機は後付けで良いというスタンスだったが、汰磨羈も動機という部分では、どうにも歯切れが悪かったことを認めざるを得なかった。
 だが、実はボラム爺にも立派な動機があるのでは、という推理を示す者達が居た。
 アニエルとミルキィの両名である。
 これには誠二も驚きを隠せない。
「まさか……あの少ない情報の中から、動機が見いだせたのか?」
「うん。多分、間違いないと思うよ」
 ミルキィは不敵な笑みを浮かべて、僅かに胸を反らした。武器商人も意表を突かれた様子で、ミルキィとアニエルの整った容貌を、感心したように眺めていた。
 実のところミルキィとアニエルは、お互いの推理がほとんど同じ内容で合致していることを既に確認済みであり、後はどのような分担で推理結果を披露するかというところまで話し合いが進んでいた。
 最終的にはまず動機のところから説明した方が良いだろうということで、殺害手段ではなく動機から考察を始めたミルキィが推理を披露することになっていたのだが、その前に、とアニエルが話を中断してユリーカに振り向いた。
「確認だけど、当然犯人は既に逮捕されている筈だね? これで逮捕にまで至っていなかったら、検死担当は相当にポンコツだったといわねばならないが」
 ところが意外にもユリーカはかぶりを振った。アニエルは僅かに渋い表情を見せ、何故だといわんばかりに疑問の視線を向ける。
 ユリーカは困ったように頭を掻いた。
「いや、これはあくまで作り話なのです。作者もそこまで考えていなかったのです」
「あぁ成程……そうだったね。これは単なる推理テストだったか」
 アニエルは苦笑し、ミルキィに向かって先をどうぞと促した。
 さて、ここからがいよいよ真相に切り込む段である。

●安楽椅子の探偵達
 犯人はボラム爺で、殺害手段は曜日指定服薬で薬草に混入した毒、そして刺し傷はカモフラージュに過ぎないという点は、他のボラム爺犯人説を唱えている武器商人、誠二、汰磨羈の三人と変わらない。
 問題は、動機だ。
 武器商人と誠二の提示では動機は不明のままで、汰磨羈もある程度の目星はつけたものの、解明には至っていない。
 だがミルキィとアニエルは、ユリーカが提示した情報の中からほとんど完璧に近しい精度で動機をも見抜いていたのである。
 ここでミルキィは村医者ギーゼルの証言に注目した。
「あの餓鬼どもの財産ってところと、あの男の金には手を出さない方が良いと忠告したところだね。一番の問題は、あの餓鬼どもってとこ。複数形だよね」
 ボラム爺には高級官僚の息子がふたり居た。リヴ未亡人の子はひとり。カイラ前夫の子だったペレー青年にも兄弟が居たという情報は無い。
 つまりミルキィは、カイラがボラム爺の息子達の財産に手を出そうとしていたことが動機だった、と結論付けた訳である。
 この点についてはアニエルも全くの同意見だった。尤もアニエルは、ギーゼルがボラム爺を犯人として見抜いていたのではと推測したが、ユリーカの説明によれば、そこまでお話は出来上がっていなかったらしい。
 だからこそ、汰磨羈がギーゼル共犯説を打ち出した時にはユリーカも驚いていたのであるが。
 しかし、あの証言から動機を見出してしまうとは──フルオライトは、うぉぉぉぉ見事だぁぁぁぁなどとひとりで派手に吠え廻っていた。
 明確な動機を示すことが出来なかった武器商人、誠二、汰磨羈の三人も驚きを隠せず、リヴ未亡人犯人説を取っていたテテスも、お手上げだとばかりに苦笑する他は無かった。
 ここまで完璧に動機を見抜いたミルキィとアニエルだが、殺害に使用された毒についても同じような見解を示していた。
 ミルキィは心臓に異常を起こす毒だと考え、アニエルは強心剤として用いられるジキタリスか、それに近いものが用いられたのではないかと推測していた。いずれにせよ、敢えて心臓脇を刺し貫いたところを見ると、心臓に何か関わるような毒薬だったことは間違いないだろう。
 さて、ミルキィとアニエルの両名が動機、アリバイ崩し、ミスリード看破、殺害方法の全てを正解させた訳である。
「ぎゃ、ぎゃふんッ!」
 出題者のユリーカは、すっかりいい当てられて見事に狼狽していた。
「……本当に声に出してぎゃふんっていうひと、初めて見たよ」
 物凄く冷静に突っ込むテテスに、ユリーカは顔を真っ赤にしながら両手をぶんぶんと振り回して抗議した。
「ほ、放っておくのですッ! ボクがぎゃふんって叫ぶのは、ボクに与えられた基本的人権なのですッ!」
 随分と妙な弁解で自らの正当性を主張するユリーカに、イレギュラーズ達は内心で苦笑していた。
 その一方で、ミルキィが用意していたお菓子をテーブル上にいそいそと並べている。頭を使ったので、カロリーを補充せねばということらしい。
「ユリーカちゃんも、一緒にどうぞ♪」
「是非、頂くのです」
 お菓子を供せられて気分が良くなる辺り、流石ユリーカである。
 ところで、武器商人、誠二、汰磨羈の三人は動機の解明の段になって驚きを隠せなかったのだが、ひとりだけ妙に冷静だった華蓮の態度が気になった。
 三人が何故あの時驚かなかったのかと問いかけると、華蓮は何事も無かったかのようにしれっと応じた。
 曰く、
「どうしても何も、私も全く同じ推理だったから」
 単なるサポート役兼進行役に徹していた華蓮だったが、実は探偵としての頭脳も中々隅に置けない人物であるらしい。
 そんな中でアニエルは、ミルキィが振る舞うお菓子にありつきながら、ふと真面目に考えた。
「矢張り私は、実働よりもこういった仕事の方が性に合っている気がする……」
「おぉー、そうなのかッ! では次からは頭脳労働は任せるぞーッ!」
 頭を使う仕事はさっぱりだが、肉体労働は任せろといわんばかりにフルオライトが派手に笑っていた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 こんにちは、革酎です。
 見事完全正解に辿り着いたアニエルさんとミルキィさん、そして華蓮さんは素晴らしい推理でした。
 他の方々もシナリオを盛り上げるプレイングを提供して頂き、誠に感謝感激です。
 もしまた推理系のシナリオを出す機会がございましたら、是非挑戦して頂ければ幸いです。

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