PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<イデア崩壊>$('charoro').astral_layer()

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●学校を守るため
 セイラー航海王国の田舎町ガリウム。その一角に、四階建ての建物があった。
 見る者が見れば、それが『小学校』だと分かるだろう。
「ねえ、あれがきみ達の言ってた魔獣?」
 フェンスもない屋上の手すり越し。チャロロ・コレシピ・アシタという少年がつま先立ちで校庭にちらほらと入ってくるモンスターの群れを指さした。
 中性的なせいか、格好が違えば性別を間違えてしまいそうな美少年だ。
 そんな彼に答えたのは清水 洸汰という少年。こちらは見るからに野球少年といった風貌で、実際肩にバットをかついでいる。
「あーうん、かなー。オレっていうか、このガッコーのボーエーにあたってくれたイレギュラーズって人たちが言ってたんだけどなー」
 校庭には既に武装した兵士たちが配備され、巨大な獅子や大蛇や岩の塊といったような統一感皆無の魔獣軍団を相手に魔法の射撃を浴びせていた。
 何匹かの魔獣がそれによって倒れるも、倒れた魔獣を越えてさらなる魔獣の群れが兵士達へと殺到。彼らはたちまちのうちにかみ砕かれ、踏み潰され、無残なありさまへと変わっていく。
 兵士の死に顔を曇らせるチャロロたち。
 だが、他人の死を悼んでいる余裕はない。
 なぜなら、魔獣達は彼らをぎろりと睨むと学校めがけて走り出したからだ。
 そしてひとつ、気付いたことがある。
 魔獣達はそれぞれ、『R財団』の所属を示す首輪やタグをつけていたことだ。

●六■小学校防衛戦
 ROO内に新たに発生した隠しイベント■■■■■■■-CCC-■■■■■DEA、通称『イデア崩壊』。
 世界の謎を解明する近道としてクエストクリアを重ねてきたイレギュラーズたちは、新たな解明の糸口を掴もうとこのイベントへと挑んだ。
 今回はその第二段階であり、ここ航海国の田舎町ガリウムを舞台としたクエスト群で構成されていた。
「この街を襲った秘密結社からガッコーを守るっていうのが、クエストの内容みたいだなー」
 混沌側とまるで変わらない姿のコータ(p3x000845)は、今まさに襲われつつある学校内の職員室で腕組みをしていた。
 一方で、混沌側とはまるで違う姿の壱轟(p3x000188)が同じように腕組みをしてホワイトボードを見やる。
 ホワイトボードの左右には無数のモニターがみっしりと並び、学校のあちこちをうつした監視カメラ映像が表示されている。
 すぐそばの校長用デスクには『武装ロッカー解放』と書かれたレバーがある。
 レバーは既に下がっており、それによって部屋の隅にある掃除用具入れを大量に並べたような物体が開き、中にあるライフルや剣などの武器が露わになっていた。どうやらこれが、すべての教室に配備されているらしい。
「今ここに居る八人だけで解決できそう……では、ないな」
 外の魔獣はかなりの数だ。今はこちらを一人も逃がさないようにと校舎をあらゆる方向から包囲し、飛行可能な種は空へと舞い上がっている。窓から突っ込んでこないのは、すべての窓に防弾シャッターを下ろしその内側で全校生徒が武装して待ち構えているからだ。
「今居るメンバーだけでなく、武装した全校生徒が力を合わせることでクリアできるクエスト……ということか」
 職員もいるのでは、と思ったが、どうやら真っ先に野外へ出撃し魔獣たちを足止めしているらしい。突破されるのは時間の問題だが。
「それにしても、学校らしからぬ学校だな。武器はあるし、生徒も多少の訓練はされているらしいし……」
「んー、まー、そうだなー」
 コータは頭の後ろで手を組んで言った。それ自体に深い感情をもたないかのように。
「けど、オレの元いた世界の『ガッコー』にはソックリだぜ。時間割は一日20時間あったし、オレみたいに『子供は遊ぶのが仕事』って思ってる奴の方が異常だったんじゃねーかなー」
「地獄か……?」
 壱轟は素直な感想を述べたが、今ここに至ってはむしろ幸運だ。
 サクラメントがすぐそばに無い以上、自分たちが魔獣に特攻したところで数の差で負けて指揮されていない生徒達が個別に殺されて終わりになるだろう。
 だが彼らが訓練されているなら、それぞれ武器を持たせて部隊を作り、監視カメラだらけの校舎でタワーディフェンスができる。
 生徒も死者を出さないよう安全に運用すれば、そのほうが確実に彼らを生かすことが出来るというわけだ。
 コータはその辺りにぬかりはなく、持ち前の審人眼で生徒の特性を見抜き、適切な武器や役割を与えている。校舎三階の仮設救護教室のメディックたちを選抜したのも彼だ。
「魔獣達はじきに校舎内へ侵入してくる。大きさからして侵入可能な数に限りはあるだろうが、それを各ブロックで撃破し数を減らそう。
 うまく数を減らせたら、野外に残る魔獣を俺たちが出撃して倒す。それでいいな?」
「オッケー、賛成だぜ!」
 コータたちは職員室を出ると、それぞれの持ち場へと移っていく。
 この学校を守るために。
 そしてひとりでも死者を少なくするために。

GMコメント

 航海の田舎町ガリウムを舞台とした連動シナリオです。同時参加禁止ルールがあるのでお気を付けください。

※このシナリオは<イデア崩壊>シリーズのひとつです。
(https://rev1.reversion.jp/page/ideaworldendles)
 同時公開されている同シナリオタグのなかから一つにだけ参加することができます。
 複数に同時予約した場合もひとつにだけ当選できます。

●オーダー
・成功条件:魔獣軍団の撃
・オプションA:生徒の死者数を3割以下に抑える

 ここ田舎町に存在する六■小学校は妙にセキュリティの堅い学校です。
 そんな場所へ魔獣の軍団が襲撃をしかけてきました。
 どうやらこの街に存在する画期的なエネルギー資源であるsinエネルギーのコアを狙って秘密結社の襲撃がおこったらしく、この魔獣達はその一環として街各所に送り込まれた戦力であるようです。
 学校には生徒達が詰めており、ちょうど襲撃にあうところであるようです。
 職員たちが足止めしている間に校舎内の防衛をかため、侵入してくる魔獣たちを撃退しましょう。

 罠や兵の配置などは自由です。といっても自由すぎるとトッカカリがないので、ある程度校舎の内容をご紹介します。

・玄関口
 よくあるスチール製の下駄箱が沢山ならんだ玄関です。
 今は防弾シャッターが降り、自動車が突っ込んだくらいでは開かない守りになっています。が、魔獣が攻撃しまくったら突破されてしまうでしょう。ある意味、このエリアは遮蔽物が多く横に広いため射撃戦闘をするにはぴったりです。

・屋上
 フェンスもなく解放された屋上です。
 といっても重要なのは屋上のフロアではなくその扉を抜けた踊り場と階段。そして四階フロアです。
 飛行可能な種や壁を登れる種は屋上側から侵入するため、狭い階段を突っ切って突破しようとする魔獣たちと戦うことになるでしょう。
 戦闘エリアが狭いため、近接戦闘が活きる場面です。

・裏庭
 魔獣たちは裏側からも回り込み、校舎裏口からの侵入を試みています。
 ここはコの字型校舎の先端部であり、逆先端部上階からの射撃(打ち下ろし)が可能です。
 防御をめっちゃ固めて魔獣を押しとどめて別働隊で撃ちまくる作戦が強そうです。

・体育館
 こちらはちょっと毛色が異なり、体育館に取り残されている生徒を救出する必要があります。
 ジップスライド(ぴんとはった太いワイヤーにフックかけてヒューって滑っていくやつ)で体育館内に飛び込み、今まさに襲われている生徒たちを救出します。
 このとき彼らは武装を持っていませんので、バックパックに軽くてコンパクトな武装を詰め込んで突入、配って即反撃といった戦い方がお勧めです。

●NPC
・清水 洸汰
https://rev1.reversion.jp/illust/illust/33546
 活発野球少年。近接戦闘がめちゃ得意。
 遠距離にはベースボール型手榴弾で一応対応できるが手数は少ない。

・チャロロ・コレシピ・アシタ
https://rev1.reversion.jp/illust/illust/41462
 カワイイ少年。大抵の武装は平均的に扱えるオールラウンダー。
 なぜだか壱轟にちょっとなついている。

・一般生徒たち
 武装した生徒達です。武器の扱いはある程度学んでおり、戦闘が可能です。
 この中には『虹色の髪とモザイクのかかった顔の少女』『イデアと呼ばれる少年』が観測されています。が、どの位置にいるか(どこに配属されるか)は分かりません。

●フィールド:六■小学校
 各所に監視カメラがあり防弾シャッターなどやけにセキュリティの堅い学校。
 どうやらコータの出身世界にあった施設によく似ているらしい……。学校名前はコータ的に初耳。

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●R財団
 混沌世界では死の商人であり人類の数を減らして魔種にとって『つまらない世界』にすることで人類を存続させようという思想で動く団体でした……が、ROOでも同じ思想で動いていると考えるのは少々不自然かもしれません。
 ROOにおけるR財団の狙いは、今もって不明なのです。

●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • <イデア崩壊>$('charoro').astral_layer()完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年10月05日 22時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

壱轟(p3x000188)
サイバーウィザード
コータ(p3x000845)
屋上の約束
IJ0854(p3x000854)
人型戦車
リアナル(p3x002906)
音速の配膳係
ユリウス(p3x004734)
循環の天使
ジェック(p3x004755)
花冠の約束
きうりん(p3x008356)
雑草魂
ねこ・もふもふ・ぎふと(p3x009413)
しろねこぎふと

リプレイ

●魔獣学園
 校舎をぐるりと囲んでいるのは魔獣の軍勢であった。
 多種多様、異種異様な光景は滅びの風景と呼ぶに相応しかったが……しかし、ここはネクスト。イレギュラーズたちの降り立った世界である。
「失礼。通してもらおうか?」
 機械翼を五輪バイクに合体させた『調査の一歩』リアナル(p3x002906)が豪速で魔獣達の間を駆け抜け、抜け際に小さな段ボール箱を放り投げる。飛び出たランプが赤く点滅したかと思えば、爆発があたりを包み込んだ。
「小学校……懐かしい、な」
 『淡き光の白子猫』ねこ・もふもふ・ぎふと(p3x009413)は爆発によってあいたスキマを駆け抜けながら、ソレを阻もうと横から手を出す魔獣に肉球によるぽっふんというパンチを叩きつける。急速に脱力し、くてんとなる魔獣。
 ねこは着地し、そして仲間達に尻尾で合図をしてから走り出す。
「僕の覚えのある小学校とは、だいぶ違って…防御がしっかりしてるけど。魔獣に突破されたら、学校の皆が危ないね。魔獣達を倒して、皆を守るよ。みゃー」
「おーけーい! 犠牲者ゼロを目指そう! あっ今の交番の標語みたい!」
 『雑草魂』きうりん(p3x008356)が巨大な魔獣達の足の間をスライディングやフットワークを駆使して駆け抜け――ようとしたところでガブッとやられ、身体が半分になったかと思いきや手を突いてバク転。着地しY字のポーズをとった時には既に身体が修復されていた。
「ユリウスそっちお願い!」
「ん」
 『ゲーム初心者』ユリウス(p3x004734)は二つの目がついたボールを両手の上に浮かべると、その双方から色の異なる魔力光線を放って魔獣達をなぎ払っていく。
 といっても、巨大な魔獣達の群れに向けて左右交差するように、ないしはナイフで斬り付けるように線を描くのみだ。倒そうなどとは思っていない。通り抜けられればそれでいいのだ。
(か弱い子供を狙うとはなんたる外道!神に代わって天罰を下さないといけないようだね。それと、子供達はなんとしても守らなくては)
 そうして『切れ目』のはいった魔獣の群れめがけ、『人型戦車』IJ0854(p3x000854)がジェット噴射とローラーダッシュの合わせ技で突撃していく。
 更には四連装ガトリングガンとミサイルポットから火力をばらまきながら。
「おはようございます。当機はIJ0854、貴方の健康を守ります」
 そう語るIJ0854の両肩には『せなかにかくれる』ジェック(p3x004755)と『永遠の少年』コータ(p3x000845)。
 しがみつこうと飛びかかってくる狼型の魔獣たちを、バットやハンマーでたたき落としていく。
 そして二人は校舎へと視線を向ける。
「ねえ、コータ」
「ん、どーした?」
「『イデアの棺』で抽出実験をしていた時、コータの世界に行ったことがあったよね。
 あのときも、私達が気付かなかっただけでイデアやエイスはいたのかな。それとも、あの段階ではいなかったのかな」
「さーなー」
 コータはバットで魔獣を叩きながら答えた。
「どっちだとしても、次に会うときはぜってー見逃さないぜ。ジェックはそのつもりで来たんだろ?」
「……うん」
 おそらく、ネクストにログインしたアバターのなかでイデアとエイスを見つけ出す能力にかけては、今現在のジェックほど優れた者はないだろう。
「あの学校に、やっぱいるのか?」
 コータの問いかけに、ジェックは頷く。
「いる。間違いなく、両方とも。けど……」
 なぜだろう。
 あの校舎の中のどこかにイデアとエイスがいることはわかるのに、胸の中が『それだけじゃない』とざわついている。
 まるではるか天空の……否、世界のワンレイヤー上から、求めている者の気配がするような気がする。現実世界と仮想世界の間にある、なんともえない階層から。
「ううん、なんでもない。今は目の前のことを、だね」
「だな、今度こそ!」
「そう、今度こそ……守るから」

 魔獣達を切り拓き、校舎へとたどり着く『サイバーウィザード』壱轟(p3x000188)たち。
 校舎内の生徒が不安げにこちらを見るが、壱轟は『俺たちは味方だ』と言って手を振った。
 校舎から代表して出てくるのは、チャロロだ。
 見たところ生身の人間のようで、混沌世界の(あるいは出身世界の)チャロロが見せるようなパワーや機能は発揮しそうにない。
 だが、確信を持ってこれをチャロロだと思えた。
 ニカッと笑う、その表情から。
「助けに来てくれたんだな。地元の軍隊とか警察とかは……まだ来ないか」
「ああ。それまでの時間稼ぎをしに来た。救出すべき子供達もいるらしいし、な」
 壱轟の言葉を信じるべきか子供達は一瞬迷ったようだ。だが、チャロロはそれをすぐに信じてくれた。
「なんでだろうな。オイラにはわかるんだ。きみはイイヤツだって。信じていい、ってさ」
 中に入れよ、と手招きをしながら走って行く。
 壱轟たちは頷き、校舎の中へと入っていった。

●スクール・タワー・ディフェンス
 職員室はもぬけの殻。本来その場所で管理を受け持つ筈だった職員たちは皆野外に出て魔獣と戦っていたからだ。そして彼らは、帰っては来ない。
 コータは教員用の椅子を引き、くるりと回してから腰掛ける。手元のマイクを引き寄せると、眼前に並んだモニター群を睨んだ。
 コータの特殊能力である『名監督』が画面越しにまで適用されるのかといえばちょっと難しいが、事前にある程度は直に見て確かめているのでその情報と照らし合わせれば大体のことはわかる。それにそもそも、コータという人間は『こういうこと』に向いている筈なのだ。
 マイクのスイッチをオンにして呼びかける。
「よし、みんな集まってるな! この放送は学校じゅうに響いてる。外にも、体育館にもだ!
 体育館で取り残されてる皆、安心してくれ、いまジップラインを使って仲間達が助けに行く! 助けが来たら指示に従って隊を編成し直すんだ。いいな!
 それじゃあ既に編成できてる第一から第六隊、事前に話した通りの配置について迎撃開始だ! 一匹も魔獣を中に入れないぞー!」

 放送を受けた壱轟とチャロロは、玄関口に生徒たちと一緒に構えていた。
 生徒は各教室にある『戦闘用具入れ』からアサルトライフルや拳銃、コンバットナイフや手榴弾といった装備を取り出し装着し、並んだスチール製の下駄箱前に整列していた。
 閉じたシャッターの向こうからはドスンドスンと何かがぶつかる音が響き、そのたびにシャッターを少しずつ歪めている。突き破られるのも時間の問題だ。
 生徒達はその音に恐怖し逃げ出してしまわぬよう互いをちらりと見合ってから、歪むシャッターへ銃口をぴたりとあわせる。
 そして、なんとも言えぬ破壊音と同時にシャッターが吹き飛び、サイに鋼の鎧をつけたような魔獣が玄関口へ突入してきた。
「総員一斉射撃! 最初の一体を狙え!」
 壱轟は杖をぐるりと回してライフルのように構えると強烈な灼熱波を発動。激しい熱の光線がサイ型魔獣にぶつかり、押し返されぬようにと魔獣が踏ん張ろうとした。そこへチャロロたちがアサルトライフルによる射撃を集中。
 サイ型魔獣はその攻撃によってうずくまり動きを止めるも――。
「壱轟、別のシャッターが壊されそうだ! てか、いくつも一斉に壊される! どうする!」
「隊をわけて対応だ。玄関から中へは一匹たりとも入れるな!」
 いくつも同時に破壊される下駄箱。なぎ倒される大型下駄箱によって偶然にも三つに分かれた魔獣の群れに対して、壱轟とチャロロによる激しい迎撃が始まった。

 一方こちらは裏庭。回り込んだ魔獣立ちが校舎裏口からの侵入を目指し、一斉に押しかけていた。
 二足歩行する岩できた大猿のような魔獣が多く、かれらは花壇を破壊しながら裏庭に作ったバリケードへと殴りかかっていた。
「バリケードを壊されるのも時間の問題かー。よっし、それじゃあ私がひとはだ脱ごう! きゅうり的な意味で!」
 窓をがらりと開いたきうりん。身を乗り出して手を振った。
「おーい!! 襲撃前に腹ごしらえとかどうですかー!!」
 思わずこちらを見上げた大猿魔獣めがけてあえてのダイブ。
 大猿魔獣はそれをパンチによって粉砕――したが、その背後できうりんは再生、振り向いた。
「だいじょーぶ! まだ生きてるよ!! きうりん不死身!!」
 『おらこっちこいよ!! ビビってんのかおら!』と挑発しながら魔獣の群れにもみにもまれるきうりん。
 見下ろす生徒のひとりが不安げにIJ0854へと振り向いた。
「あの人本当に不死身なんですか?」
「EXFも高く再生能力や自己治癒能力も高いので非常にタフではありますが……すりつぶされるのも時間の問題でしょう」
 となれば、やるべきことは一つ。
「総員、一斉射」
 窓から身を乗り出したIJ0854は四連装ガトリング砲を突き出し、魔獣たちを撫でるように射撃。
 激しく飛び散る空薬莢が窓に当たっては落ちていく。それ以上に赤い雨となって降り注いだ砲撃が魔獣達を次々に吹き飛ばしていく。
 生徒達も手榴弾のピンをぬくと魔獣の群れめがけて放り投げ、次々と爆発が起こった。
 そんな中、生徒の一人が悲鳴のように声をあげる。
「倒しきれないわ! バリケードを破られる!」
「了解。一階裏口へ回ります。この場は任せました」
 IJ0854は急速に走り出し、階段を前段飛ばしにしながら一階裏口へ移動。破られたバリケードから大猿魔獣が顔を出したその瞬間に、自らガトリング砲フルバースト状態のまま体当たりをぶちかました。
 地面と水平に吹き飛び、別の魔獣(ときうりん)にぶつかる大猿魔獣。
「当機はIJ0854。ここは通しません」
 ミサイルポットのセーフティーを開放。ガトリング砲の銃帯をリロード。
 空薬莢だらけになった帯を放り捨て、両目にあたる部分をギュオンと赤く光らせた。
 そして背部に無理矢理取り付けていた折りたたみ式大砲を展開。全部の三脚を立たせ後部を自らの身体で支えると、コックピット内でマークが三つ重なった。
「FlexibleMissileLauncher――FIRE」

 コータの誘導を受けて屋上へと駆け上がるねこ。
 その横には清水 洸汰の姿があった。
「一緒に戦おう……よろしく、ね。みゃー」
「おう! よろしくなー!」
 野球のバットを握っているが、よくみれば戦闘用に改造された魔道衝撃バットだった。野球の試合で使ったら一発退場モノの。
 屋上の扉を開くと、翼をはばたかせた獅子のような魔獣が複数、こちらをにらみ付けている。
 既に展開を終えていたらしいが、こちらとしてはあまり関係ない。
「下がって踊り場を守るんだ。敵はそれだけ避けづらくなる!」
「みゃー」
 ねこは身を翻して踊り場下部へと陣取ると、『赦して癒す子猫の光』を発動させた。
 みゃーんと鳴き声をあげれば白い光があがり、暖かくてもっふりしたエネルギーが生徒や洸汰たちへもたらされた。
「よっしゃあ、百人力だぜ!」
 洸汰は扉を破壊し突入してきた有翼獅子型魔獣めがけてバットを叩きつけ、粉砕。
 その横を抜ける鴉型の魔獣たちが生徒をついばんだり魔法の炎をまき散らしたりするが、ねこは尚もみゃーんを続けることで生徒達を後ろから支援していた。
 支援しながら……。
(イデアとエイス……らしい子はここでも見つからなかった。みゃー)
 とすると居場所は体育館だろうか。
 だとすれば……。

『IDとAIは体育館だ。拠点まで遅れるか!?』
 放送を受けて、ユリウスはちらりと体育館を見下ろした。周囲を魔獣達が取り囲んでおり、脱出するのは困難そうだ。
「確か、『あの二人』は生かすつもりなんだったね?」
「……」
 ジェックが強く頷く。
 とすれば、当初の予定通り内部に突入して彼らに武器を渡すのが一番だろう。
「全員守る。そこにいるなら、好都合」
「…………」
 リアナルは二人の会話を横で聞きながら、黙って考えを巡らせていた。
 コータたちはエイスとイデアとおぼしき存在に対して、『こちらが認識している』と知られないように暗号で放送すると定めていた。
 知られたくない理由はいくつかあるのだろうし、実際に『イデアとエイスは自分たちが認識されていることに気付いていない』ようだ。
 そのことが良く作用する要素もあれば、悪く作用する要素もある。そのあたりを、一旦頭に留め置いたほうがよいのでは……と考えたあたりで思考をとめた。
「それじゃあ、早速運ぼうか」
 マギラニアRのアクセルをふかし、破壊した壁から飛び出す。翼を広げ滑空状態を作ると、体育館の窓――が車体より小さいことに気がついた。
「――おっと」

 バギャン、という言葉では処理しきれない激しい破壊音と砕け散る窓ガラス。
 リアナルはひしゃげたバイクから機械翼をパージし自分に装着すると、バイクを捨てて単独滑空。生徒たちのもとへと降り立った。
 そして抱えていた鞄から拳銃やナイフなどの武装を生徒達に配っていく。
 彼らも慣れたもので、武器をみるやすぐに手に取り点検からの構えまでを的確にやってのけた。
 その後次々と突入してくるユリウスとジェック。そして他の生徒達。彼らによってもたらされた武装を手にした体育館内の生徒達は、扉を突き破ってきた巨大なアリのような魔獣へと射撃を開始した。
 ユリウスはちらりと、虹色髪の少女エイスへと視線を向ける。
(保護して欲しいと? 喜んでそうさせて貰うさ。命がけでお守りするよ。善人か悪人かを問うのも野暮だろう)
 だが、こちらが『特別に守ろうとしている』ことは伏せておいた。
「さあ、始めよう――私はユリウス。君達のことを教えてくれた私の仲間達、彼らのことも紹介しよう。良い子だよ、皆。きっと仲良くなれるさ」
 そんなふうに、どこか優雅にふるまいながら二つの目から拡散ビームを発射。魔獣たちへと降り注ぐ。
 リアナルは持ち運んでいた箱の中からサブマシンガンを取り出すと、アリ魔獣めがけて乱射しはじめた。
「あいにく私は持久戦に向かないんだ。前衛は頼んだよ」
「ん、まかせて……」
 ジェックは助走をつけて跳躍。鋼のハンマーを振りかざし、アリ魔獣の頭部を叩き潰した。
 そんなジェックへ吹き付けられる白い粘着質の糸。巨大な蜘蛛型魔獣が体育館へとのっそりと入り込んでいた。
 糸をはがそうにも上手くいかない。そこへ蜂型の魔獣が飛び込み、尻の針を発射した。
「危ない!」
 飛び込む少年の姿が、ジェックの視界の端に見えた。
 見間違うはずもない。彼がそうだ。彼がイデアだ。
「――ッ!」
 無理矢理糸を引きちぎり、イデアの腕を掴んで自分と相手の位置を入れ替える。
 そして、ジェックは背から針を受けた。胸まで貫通したそれを抑え、がくりと膝を突く。
「そんな……!」
 肩を掴み、仲間のもとへと引きずるイデア。
 エイスがかけより、ジェックの身体を抱え起こした。
「まって、まって、『今度はそうなる』の!?」
 言い方がひっかかる。なんだろう。なにが引っかかったんだろう。
 ジェックは薄れゆく意識のなかで、そんなふうに考えた。

●そして再びの崩壊
 屋上に、イレギュラーズたちは立っていた。
 防衛作戦中に命を落とした者もいたので全員というわけではないが。
 コータが屋上の手すりを握り、見下ろす。校庭には無数のジープや装甲車がとまり、残った魔獣を火炎放射器やらなにやらで撃退していた。
 もうじきこの学校の安全も確保され、生徒達も無事に外へと出られるだろう。
 生徒の犠牲は……ゼロというわけにはいかなかったが、かなり多くを助けることに成功した。
「……『イデアは生き残った』。ってことは……」
 コータが空を見上げる。
 パキリ、と空に亀裂が走った。ガラスが割れるみたいに亀裂は広がり、そして……あたりが光に包まれた。

成否

成功

MVP

ジェック(p3x004755)
花冠の約束

状態異常

壱轟(p3x000188)[死亡]
サイバーウィザード
ジェック(p3x004755)[死亡]
花冠の約束
きうりん(p3x008356)[死亡]
雑草魂

あとがき

 ――クエスト達成
 ――生徒が3割以上生存しました
 ――生徒が5割以上生存しました
 ――生徒が8割以上生存しました
 ――エイスが生存しました
 ――イデアが生存しました

 ――異常なデータが検出されました
 ――データ量の急速な増大を確認しま――

 ――reboot...OK

 ――周辺エリアの情報がリセットされました
 ――六■小学校は消滅しました

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