PandoraPartyProject

シナリオ詳細

海から来たる秋の旬

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●戻り鰹! 豊作!!
 豊穣を囲む海では、鰹は年に二度獲れる。二度、旬を迎えるのだ。
 雪や氷が溶けて暖かくなってきた春先に訪れる鰹は初鰹。餌を求めて北上し、その時に頂くことができる鰹だ。育ち盛り引き締まった身は赤みがかり、刺し身よりも表面を軽く炙り、『たたき』として食べるのが美味い。薬味はポン酢やにんにく等が好まれるが、通は塩で食べる。さっぱりとした塩に、ガツンと響くにんにくが美味い。
 秋が始まる頃には、餌場で身を肥やした栄養たっぷりの鰹が戻ってくる。戻り鰹と言われる鰹だ。たたきが美味い初鰹と違い脂がたっぷりとった戻り鰹は、断然『刺し身』が美味い。身の色はより赤みを増し、食感はもっちり。中でも脂がよくのっているものは『トロ鰹』と呼ばれ、マグロの大トロにも負けず劣らずのとろけるような脂を味わえる。
 そして今、豊穣の魚河岸では戻り鰹が溢れいていた。
「どれも脂がのって美味いよ!」
「今朝入って来たばかりの新鮮な鰹だ! 今年は豊作だから安くしておくよ!」
 賑わいを見せる魚河岸では――本っっ当に鰹に溢れていたのだった。

●ローレット
「寿司は好きかな?」
 ひょっこりとローレットへと顔を出した『浮草』劉・雨泽(p3n000218)が、そんなことを口にした。
「依頼って言う程のことではないから、『お願い』かな。良かったら、話を聞いてくれると嬉しいよ」
 そうして語られるのは、今、豊穣に鰹が溢れていると言う話。
 脂ののった美味い鰹がたくさん捕れたということで、人々は賑わった。――最初は。
 つまるところ、獲れすぎてしまったのだ。
 最初は戻り鰹を喜んでいた豊穣の民たちも、それがずっと続けば飽きてしまう。脂たっぷりの魚はたまに摂る分には美味いが、毎日となるともっとさっぱりとした魚も食べたくなるのだ。
 そこで、せっかく旬を迎えて美味い鰹が無駄になってしまわないようにと、動き出した者たちが居る。
 ――料理人たちだ。
「知り合いの寿司屋が、鰹に限り半額で提供してくれてね」
 鰹であるならば、寿司でも、刺し身でも、たたきでも、漬け丼でも、角煮でも……全て半額にしてくれるのだ。
 勿論、他の寿司等は通常価格だけれど。
 寿司屋の店内は、一段上がった座敷席とカウンターに別れている。何人かでの食事なら座敷を勧められるが、ひとりやふたりならカウンターで板前の職人技を見ながら食べるのもオツなものだ。
「よかったら、どうかな? 僕の気に入りの寿司屋だから、味は保証できるよ」
 笠を親指で軽く上げた男が、他のイレギュラーズたちにも声を掛けてくれると嬉しいなと笑った。

GMコメント

 お寿司食べたい!
 壱花です。よろしくお願いします。

●できること
 美味しいお寿司を食べれます。
 鰹以外のネタもたっぷりありますので、お好きな物をお好きなだけ楽しんでください。
 豊穣の回らないお寿司屋さんにある料理なら食べれますが、他国の料理はありません。
 飲み物は日本酒かお茶になります。

●おやくそく
 本ラリーは【1章構成】となります。
 お酒は肉体年齢二十歳から。

※プレイング失効してお手元に戻ってしまった際
 わたしの手の遅さが原因なことが殆どですので、気持ちにお変わりなければ『内容を変更せず』再送願えますと幸いです。

●迷子防止のおまじない
 同行者が居る場合は一行目に、魔法の言葉【団体名+人数の数字】or【名前(ID)】の記載をお願いします。その際、特別な呼び方や関係等も二行目以降にありますととても嬉しいです。
 また、同行者の方とは送る日にちを合わせてください。

●NPC
 『浮草』劉・雨泽(p3n000218)が居ます。
 カウンターで食べているので、お声掛けがありましたら反応します。

 それでは、素敵なお寿司日和となりますように。

  • 海から来たる秋の旬完了
  • GM名壱花
  • 種別ラリー
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2021年09月12日 22時05分
  • 章数1章
  • 総採用数11人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

天閖 紫紡(p3p009821)
要黙美舞姫(黙ってれば美人)


 脂ののった戻り鰹とくれば、日本酒と合わない筈がない。
 塩をちょんと付けて口へと運べば、塩気が旨味を引き立てる。
「これは、日本酒が……」
 ゴクリ。
「最高っっっ!」
 普段はお菓子の街でスイーツを堪能している『要黙美舞姫(黙ってれば美人)』天閖 紫紡(p3p009821)だが、酒が飲めない訳ではない。寧ろ『いける口』だ。
 なんて美味しいのだろう、日本酒と鰹。様々な調理方法で提供されると聞いているし、全部食べられるだろうか――いいえ食べてみせますっと紫紡はキリリッ。
(――あれは、雨泽さん?)
 見覚えのある笠にきょとりと頭を揺らせた紫紡は、一端箸を置いて彼に近付いていった。
「先日の神異、私も先輩方と共に少女を救うことが出来ましたっ! 沢山の助言をありがとうございましたっ!」
「やあ、こちらこそ。助けてくれてありがとうね」
 良ければ一献どうかなと掲げられたお猪口に、いただきますと即答した。
 一献傾けきる間に会話に華を咲かせ、紫紡は席へと戻り酒に肴に舌鼓。
 美味な酒に美味い肴とくれば、傾く酒坏もいつもより速度が増す。
「おや」
 ふと雨泽が気付いた頃には、紫紡はひとり机の上に頭を預け、空の一升瓶を転がし幸せな夢の中。
 ――大将、何か掛けるものはない?
 夢の帳を隔てた向こうで聞こえる声に、紫紡はえへへと頬を緩ませた。

成否

成功


第1章 第2節

源 頼々(p3p008328)
虚刃流開祖


「寿司! 鰹! 半額! これはもう食い漁るしかないのであるな!」
 何とも嬉しい話を聞いた! と呵々と笑った『虚刃流開祖』源 頼々(p3p008328)は早速豊穣の寿司屋へと爪先を向けた。
「やはり鰹の刺身は美味であるな!」
 たたきも良いが、頼々は断然刺し身派。つまり、刺し身派にとってありがたい戻り鰹はいくらでも頂けてしまう。
 しかし、しかしだ。
 どれかひとつに拘っては勿体ない。数多の美食があるのならば、それを全て食してみたくなるのが人の性(さが)。ええい、鰹料理全てもってこーい!
 オードブルにと出された鰹のなめろうは、味噌とミョウガが利いて美味。
 スープは鰹のアラ汁。濃厚な鰹出汁が利き、胃にひとときのやすらぎが与えられる。
 メインの大きな焼き鰹はじっくりと熱を溜め込み、箸を入れる度にじゅわりと脂が汁となって溢れた。
 最後は、鰹のアラ出汁で作ったゼリーに糖度の高いミニトマトを閉じ込めたデザート。
「うむ、美味であった!」
 たくさん食べて大満足した頼々はポンと腹を叩く。
「秋刀魚の季節も大漁であったら是非ともまた、ワレらイレギュラーズに声を掛けるのである! 万難を排して力と胃袋を貸すぞ! 」
 美味だったと仲間たちにも伝えるからなと笑って、頼々は寿司屋を後にするのだった。

成否

成功


第1章 第3節

襞々 もつ(p3p007352)
同一奇譚


「お隣良いですか?」
 尋ねた『同一奇譚~別冊』襞々 もつ(p3p007352)に、雨泽が「どうぞ」と返した。
「雨泽さんのおすすめは何ですか?」
「他の料理も美味だけれど、僕は刺し身が好きだよ」
 では私もそれで。
 そう、『鰹の刺し身』を頼んだはずなのだが――。
「おにく!!!」
「「え?」」
 板前と雨泽の声が綺麗に重なった。ハモリコンテストをしたら優勝できそうなくらい、綺麗に。
 それも仕方がない。もつの眼前にあるのはどう見ても鰹の刺し身であって肉ではない。実はもつのギフトの所為なのだが、それを知らない者たちの間には微妙な気配が流れる。
「あ、このおにくおにくにしてはサッパリした脂で幾等でも食べられますね」
 お魚だからね、とは言わない。板前も雨泽もお口チャックである。
「僕は酒を頼むけど、君は?」
「私はお茶をお願いします。げこげこですので」
 熱いお茶が差し出される前にペロリとおにく(鰹)を平らげたもつはお品書きを覗く。
「おっ。角煮もあるじゃないですかこれはおにくと言っても過言じゃありませんね」
「そうかもしれないね」
 違うのでは? と思いつつも、雨泽は適当に相槌を打つ。
 角煮もおにくおにく言いながら食べたもつは、次に頼んだ漬け丼も「このおにくタレが絶妙ですね! おかわり!」なんて言いながらモリモリ食べた。
「いやあ、おにくおいしいですね!」
「そうだねぇ」
 鰹だけれど。

成否

成功


第1章 第4節

八重 慧(p3p008813)
歪角ノ夜叉
囲 飛呂(p3p010030)
点睛穿貫


 学生はいつだって財布の中身は心許ない。新商品を見掛けたら食べたいし、流行りだって追いかけたい。
「鰹が半額で食べられる!?」
 そんな状況でうまい話を聞いたのなら、前のめりになってしまったって仕方がない。浮かれ気味でいそいそと豊穣まで出向いたって仕方がない。
 ……それなのに。
「すみませんねぇ、お一人様用のお席が……どなたかとの相席ならお通しできるのですが」
 この気持ちを表す言葉が「マジで」しか浮かんでこなかった『特異運命座標』囲 飛呂(p3p010030)は店の玄関口で固まった。鰹を食べる気満々で来たのだ、もう腹は鰹求めている。今更別のものを食べる気は起きない。
 しかしこういう時は大抵、良い出会いがあったりするものだ。
「あー、じゃあ俺が一緒していいっすか」
 飛呂の後ろから同じ話を聞いて店にやってきた『歪角ノ夜叉』八重 慧(p3p008813)が「いいっすか」と再度声に出す。飛呂への確認だ。こくこくと大きく頷いて、都合の良い時のみに信仰する神様に感謝した。

「うっま」
 軽く自己紹介をしあってから向かい合った席で丁寧に手を合わせ、早速口へと運んだ刺し身は、脂で頬が蕩けてしまいそうだった。
「やっぱり刺し身や寿司っていいっすね」
 故郷が海から離れている慧は、普段食べられない新鮮さを求めて箸を動かす。日持ちがするようにと干物や酢漬け、粕漬けになった魚を口にすることはあっても、矢張り寿司や刺身といった生魚は滅多と口に出来るものではなかった。
「鰹の角煮もうっま」
「本当っすね、しっかりと味が染みて……これは」
「米が食べたくなる!」
 意見が一致したふたりは、ハハッと笑い合う。
 白米への思いをはせそうになりつつも漬け丼をかき込めば、これまた美味である。飛呂の前にあったたくさんの鰹料理が消えていくのを、慧はお茶を口にしつついい食べっぷりだと見守った。
 腹もちょうどよく膨れてきたら、慧は酒を注文する。
「あれ、酒もいけるんだ?」
「あんま強くないんで、最後に少しだけ頂こうかと」
 酔ったら折角の鰹の味がわからなくなりそうでとはにかむような慧の姿に、飛呂はこういう楽しみ方もあるのだと目を瞬かせる。自分も成人したら真似をしてみるのも良いかもしれない。
 酒と鰹の旨味を堪能していた慧が、ふと何となしに品書きを見て口を開く。
「あ、飛呂さん。鰹の唐揚げもあるそうですよ」
「マジで!?」
「俺も食べたいけれどもうあんま入んないんで、分け合いません? というか奢るっす」
「えっ、俺は嬉しいけど」
 本当にいいのかと向ける視線に、これでも少し先輩だからと慧が少しだけ柔らかく笑む。誰かと摂る食事は楽しくて、美味い肴に美味い酒。いつもよりも贅沢と思えることを味わえる幸せを、誰かと共有したい気分だったのだ。
 そうしてふたりは鰹の唐揚げも注文して、存分に腹を満たす。
 ――ご馳走様でした!
 満たされた声は、幸せに満ちていた。

成否

成功


第1章 第5節

久留見 みるく(p3p007631)
月輪


 寿司。それは『月輪』久留見 みるく(p3p007631)にとって、未知の味だ。
「これが、お寿司」
「召し上がり方は解りますか?」
「ええ。パパ……」
 ポロリと出た言葉に、みるくは慌てて咳払いをした。
「……父さんが生まれた国にもある食べ物だと聞いているわ」
 存在自体は父から聞いている。みるくの生まれた練達にもあるけれど、もっと新鮮なものが食べたいとみるくの父はよく残念がっていた。だからとても興味があったのだ。
 尋ねてきた店員に大丈夫よと答え、早速手をのばすのは鰹の寿司。
「さて、どんな味なのかしら。いただきます」
 食んだ瞬間に解る、活きの良さ。新鮮な身はしっかりした歯ごたえで、その後は脂がサラッと溶けていくよう。
「この厚さが絶妙ね。とても美味しいわ」
 口元に手を当てて感想を述べれば、包丁を布巾で拭った板前が「こだわりを持ってやらせてもらってやすんで」と笑う。切り方ひとつ、包丁の当て方ひとつで味の変わる世界がそこにはあった。
「あ。そう言えばメニューにいわし……なんてないわよね?」
「ありますよ」
 鰯の旬は9月末までだ。
 次はそれを握りましょうかと尋ねてきた板前に、みるくはゆるく首を振る。
「いわしを食べるとブチ切れてくる女がいるから、気を付けたほうがいいわ、大将。見つかったら大変よ」

成否

成功


第1章 第6節

白鳳 山城守 楓季貞(p3p010098)
光の女退魔侍


 腹が減っては戦はできぬ。
 どんな武者であろうとも、どんな豪傑であろうとも、ひとである以上それは避けられぬ。腹が減れば出せるものも出せなくなり、過ぎたれば剣の鋭さも鈍るというもの。故に相棒探しを暫し忘れ、腹ごしらえにと『光の女退魔侍』白鳳 山城守 楓季貞(p3p010098)は草履の先をその店へと向けた。
 ――しかしそれは、言い訳だ。
 旬の鰹が大盤振る舞いされると聞いて、はいそうですかと見過ごすことなど出来ようか!
 そうして足を運んだ店に着くなり刺し身を頼み、一口。
「これはうまい」
 鰹の漬けを頼み、一口。
「実にうまい」
 酒もあるのかと酒を頼み、酒と交互に一口。
「うむ、うまい」
 ……。
 …………。
 うまいとしか言えていないことに気付き、暫し箸を止めて真顔になってしまう。
 しかし、脂ののった鰹が旨すぎるのがいけないのだ。仕方がないと言う気持ちと、いつもならもっと語彙がと誰に向けてでもない言い訳を胸に、楓季貞は箸を滑らかに動かした。
(あいつと入っていたら、この店の酒が底をつくところであったな)
 おちょこの揺れる水面に顔を映して想うのは、相棒のこと。
(飲み尽くしては、店からも疫病神だと言われるだろうか)
 今日は内緒の独り占めだと、ふ、と笑って、酒を飲み干した。
 ――それでも、一緒ならもっと美味かったのかもな。
 なんて、柄にも無いことを思ってしまうのだ。

成否

成功


第1章 第7節

シガー・アッシュグレイ(p3p008560)
紫煙揺らし
希紗良(p3p008628)
鬼菱ノ姫


「鰹を食べて欲しいという話だったけど……希紗良ちゃんは好きな物を頼んで良いからね」
 カウンターに並んで座り、隣の『鬼菱ノ姫』希紗良(p3p008628)へ品書きを渡してから『スモーキングエルフ』シガー・アッシュグレイ(p3p008560)は「とりあえず鰹の刺し身を」と注文した。
 やはり一品目は旬のお勧めを食べるのがいい。気に入れば何度でも、最後の締めも一品目と同じにするのも悪くないだろう。
「希紗良ちゃん、決まらない?」
 傍らから響くうーーーんっという真剣な唸りに、シガーの落ち着いたスモークグレーな声色に笑みが滲む。
「お待たせしてすみませぬ、アッシュ殿。キサはこういうお店には縁がなく……」
 折角なので色々と試してみたいが、でもどれから食べようかと考えると悩んでしまうのだ。贅沢な悩みだと解っているのだが、どれもこれも美味しそうなのがいけない。
「とりあえずお勧めなら、無難に鰹の握りとお刺身になるかな?」
「ならば、キサ、それにするであります! どれも食べたくて悩み過ぎてしまったでありますよ」
 気恥ずかしさに、頬に熱が集うのが解った。布団に入って丸くなりたいような心地に伏せそうになる青を、紫煙の香りを纏う吐息がすくい上げる。
「時間はあるから、ゆっくり楽しんでいこう」
 頬を両手で押さえた希紗良はそろりとシガーを見て、「はい!」と元気に頷いた。
 良いお返事と笑んだシガーは鰹の握りと漬け丼も注文し、希紗良ちゃんはどうする? と問いかける。
「鰹の握りや刺し身の後は何を食べたい?」
「そうでありますな……」
 希紗良の瞳が真剣味を帯びて、品書きの文字の上を幾度も行き来する。
 どれもこれも美味しそうだから、やはり選ぶことができない。
 けれど――、
「は。アッシュ殿。『炙り』とはどういったものでありましょうか?」
 これです、とシガーにも見えるように品書きを指差す希紗良の想像では、寿司の酢飯を炙り、焼きおにぎり風になった寿司だ。通常の寿司と違い、シャリが温かいのだろう。
「炙りは、刺身の表面を軽く火で焼いた物…と言う説明でわかるかな?」
 違った。思わず、むむむと声が溢れる。
 炙った鰹――つまり、鰹のたたきだ。
「にんにく等の薬味と一緒に食べると美味いよ。食べてみる?」
「不思議な食べ方であります! ではこれも頼んでよいでありますか?」
「うん、どんどん頼んでいこう! 折角の旬だからね」
 その調子で、気になったものは全て注文してしまえばいい。
 もし希紗良ちゃんが苦手な料理が出てきたとしても食べてあげる。そう告げてくれるシガーの言葉が何とも心強く、希紗良はそれではと様々な鰹料理や色々な魚に挑戦してみる。
 職人技で握られる寿司たちはどれも美味しく美しく、希紗良は落ちてしまわないように頬を抑えるのに忙しく、シガーはそんな希紗良を穏やかに見守った。
 ああ、なんて至福な――。

成否

成功


第1章 第8節

チック・シュテル(p3p000932)
燈囀の鳥


 カウンター上の大皿には色とりどりの野菜の煮物、鱗の綺麗な魚、茶色のスープに浸かった塊と……と『埋れ翼』チック・シュテル(p3p000932)の知らない食べ物で溢れ、沢山の美味しそうな香りと沢山の人々の笑顔がそこにあった。
「……あ」
 思わず声が溢れたのは、知った姿を見つけたから。
 近寄れば向けられる顔が、笑う。……彼はいつも笑顔なのだけれど、何となくそんな気がしたのだ。
「雨泽、こんにちは」
「やあ、チック」
 良かったらどうぞと掌で示される隣の席に、頬を緩ませて座った。
 先日幻想で会ったから、会うのは一月ぶりだろうか。
 久し振りだねと告げながら差し出してくる雨泽から品書きを受け取って。
「おれ、鰹も……、お寿司……も。初めて」
「そう? それなら色々と食べてみないとだね」
「ん……、今日は色々食べる……する」
 寿司とお茶を注文すれば、あいよと応えた大将が手早く握ってチックの前に置いてくれる。
「……! ん……、美味しい」
 新鮮な鰹は身に弾力もあり、食むのが楽しい。口に含む前に鼻に感じた酸っぱい香りは、魚ではなく米に使われているのだと口にしてから解った。
「チック、良かったらこれも食べてみて」
 美味しいよと寄せられた皿には、炙った切り身の鰹と、茶色い塊。
「これ、は……?」
「たたきと角煮。美味しいよ」
「……!」
 どうやらそれらも口にあったようだ。
 ね、と笑う雨泽にチックはコクコクと頷き返した。

成否

成功


第1章 第9節

隠岐奈 朝顔(p3p008750)
共に歩む道


 お寿司を沢山食べても良いと聞いた『真意の選択』隠岐奈 朝顔(p3p008750)がその店を覗くと、店内はイレギュラーズで溢れていた。イレギュラーズではない一般の豊穣の民もいて、豊穣の方ならお寿司は好きですものねと朝顔はうんうんと頷いた。
 朝顔も例に漏れず寿司が好きだ。むしろ大好きだ。
 マグロに海老にイカに……好きなネタの名前を思いつくつままに口にしたら、キリがない。
(けれど今日は鰹中心で!)
 折角の旬の鰹が採れ過ぎで困っているのなら、美味しく食べてあげないと!
 カウンターへと案内され、隣の席の笠を被った男性に「お隣失礼しますね」と挨拶をした。
 ――彼は『知って』いる。時折ローレットで見るひとだ。そして今日の寿司屋を案内していた。確か名前は――、
「劉さん」
 呼ばれた名前に、男が顔を向けてくる。軽く自己紹介をした朝顔は品書きを手にしながら「おすすめはありますか?」と問うた。
 品書きには寿司から始まり、表面を炙るタタキに、しっかりと柚子と塩気を効かせた出汁に漬け込んだ漬け丼。新鮮な刺し身に、醤油と酒と砂糖でじっくり煮込んだ角煮、そして茶漬けまで。ずらりと並ぶ料理名に、どれから食べようかと悩んでしまう。
「僕のおすすめはね」
 伸ばされた指先が、品書きを右から左になぞる。
「ええ、全部ですか!?」
 こうなったら食べれるだけ食べよう! と決意して。
 朝顔はすみませんと板前に注文するのだった。

成否

成功


第1章 第10節


 海が、齎してくれる恵み。季節が、齎してくれる旬の幸。
 美味しいものを美味しく頂けることは幸いである。
 旬のものを口にすることは健康にも良いとされている豊穣では、一層のことだ。
 鰹を腹いっぱい食べた客たちは満足し、また明日も来ようだとか次は違う友人を誘って……などと笑い合う。

 ――ご馳走様でした。

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