シナリオ詳細
<月没>月閃リベンジャーズ
完了
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オープニング
●夜妖を纏い、夜妖を討て!
「魔哭天焦――『月閃』!」
名無しの退魔師 (p3y000170)は奇妙な形の木刀の腹をスッとなぞると黒き炎を燃え上がらせた。炎はバンカラスタイルである彼の姿を包み込み、上半真の服と帽子を燃え上がらせていく。
その下から現れたのは体中に伸びた赤いライン。ラインは更に拡大し、両目を縦断するようにはしった赤い三日月模様がくっきりと浮かび上がる。
木刀には真っ黒な光が宿り、襲いかかる無数の夜妖を次々に切断しては捨てていく。
「人を捨てたこの力、もはや貴様如きでは止められんぞ」
ニッと笑いギザ歯を見せつけ、悪魔めいた笑いを浮かべた退魔師は眼前で身構える大蛇型の夜妖へと飛びかかった。
牙をむき出しにして食らいつく夜妖――だが、黒き炎が燃え上がり夜妖をも包み込む。肉体をぼこぼこと変容させ、腐らせ、溶かし、動きを無理矢理に鈍らせたところで剣による一撃をたたき込む。
ぐちゃぐちゃに崩れ落ちた夜妖に背を向けて、剣をブンと振り下ろせば炎は消え、そして退魔師のアバター体もまた通常のソレへと戻った。
手のひらを見つめ、握って開く。
「なるほど。使えるな、『月閃』」
●君だけの戦いへ
Rapid Origin Online(R.O.O)2.0『帝都星読キネマ譚』イベントに進行があった。それは副題を『月没』という。
その内容は『侵食の月』といい、ヒイズルに突如現れた皆既月食現象であり、この状態を指した『侵食度』というパラメーターがコンソール画面に表示されたのである。
恐るべきは同じ『侵食の月』が混沌世界である希望ヶ浜地区にも出現し、その平穏を脅かし始めているということだ。これだけの事件を起こせるのは真性怪異をおいて他にはない。
R.O.Oでは『豊底比売』と呼ばれた水神、国産みの女神。
希望ヶ浜では『日出建子命』と呼ばれる国作りの男神。
その二柱による侵食と破滅に抗わねばならない。
このことを受けて練達上層部佐伯 操と、神威神楽の陰陽師月ヶ瀬・庚は協力し、ROOのシステムへ手を加え本来ならば天香遮那と敵対し霞帝の下に付くことになっていたプレイヤーの立場を『高天京特務高等警察』の立ち位置に変化させた。
更に侵食の月を転用したシステム『月閃』を発見。
これはプレイヤーアバターに夜妖を纏わせることで一時的に能力を跳ね上げるというものだ。
姿を禍々しいものへ変化させ、一定時間だけだがすさまじい力で暴れることのできる技。
まるで疑似反転ともいうべき力だった。
●君だけの知らせ
『侵食の月』が現れてからというもの、天香家をはじめとする国家の動きは不穏さを増していった。
イレギュラーズに協力的だった人物が逮捕拘留されるケースは優しいもので、中には夜妖が突如として現れ、執拗なまでにその人物を抹殺しようとするケースが発生し始めたのだ。
未来を写影できる装置ほしよみキネマによってそれを知らされたあなたは、『高天京特務高等警察』という立場と『月閃』の力を手に、夜妖と戦うべく単身出現する!
――いざ、夜妖(ヨル)を纏いて夜妖(ヨル)をうつのだ!
- <月没>月閃リベンジャーズ完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別ラリー
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年09月12日 16時30分
- 章数1章
- 総採用数22人
- 参加費50RC
第1章
第1章 第1節
夜闇にともるガス灯の、その上に立つ者がある。
「夜妖を纏い、身体能力を向上させる月閃……。
此方の暦も敵として登場した今、新たな力に慣れておく必要はありそうですね」
手をかざし、己の手のひらと、そして甲をそれぞれ見る。
視線を落とすと、大きな沼トカゲを二足歩行させたような夜妖の集団がこちらをにらみつけていた。
地面にはナイフのようなものが突き刺さり、その先に尻餅をついていた見知らぬ男性はおとした 帽子をひろいあげて逃げ出していく。
「戦闘アンドロイドNO.1にして高天京特務高等警察――陽炎、参ります」
頃合いか。そう判断した陽炎は宙へ舞い、『月閃』を発動。
彼は『影の夜妖』を纏うと、背より禍々しい触手を生やした。『Dangerous!』の文字が表示されたモニター群が彼の周囲をまわりはじめ、その姿のいびつさを物語る。
夜妖たちは爪をむき出しにして飛びかかるが、それだけだ。
放った触手のすべてが夜妖たちを貫き、時にはつかまえ、地面や壁へ叩きつける。
すべての夜妖が沈黙するまで、およそ6秒といった所だろうか。
使いこなせる。その確信を得て、陽炎はスタンと地におりたった。
「この力、存分に使わせて頂きますよ……!」
成否
成功
第1章 第2節
サクラメントを出て、昼間の大通りを歩く。
彼――否、彼女の姿は星型サングラスの男性のものではなく、髪の長い女性。つまりは正純そのものの姿であった。
『四の五の言って居られない』入江・星(p3x008000)はしっくりくる身体に頷いて、裏路地へ続く影に足を止めた。
悪漢たちに襲われる娘がひとり。取り囲まれ今にも社会の闇へと引きずり込まれようとしている。
常人であればただ止めにはいるだけだろうが、悪漢たちが夜妖に取り憑かれていることを星は既に知っていた。
スッと肩の上に手を伸ばし、空振りする。そういえば弓はなかったのだった。
「ならば――」
突如として吹き上がった夜妖の気配。真っ白なそれを纏った星は長い鎖につながれ、正体不明の黒いキューブを抱いていた。
星のかがやきも、声も、ない。だが今はそれでいい。
「なるほど、これは確かに。
あまり気持ちのいいものじゃありませんね」
星は不快げに顔を歪ませ、そして悪漢たちへと飛びかかる。
まるで星を誘い出すことが狙いであったかのように悪漢たちが振り返り武器を抜くが。
その動きがひどく遅く見えた。
「慈愛と憤怒の星に灼かれなさい」
スローモーションに引き延ばされた世界の中で、すべての悪漢を手刀で払いのけ、女性を抱えて通り抜ける。
あとに残ったのは、全員まとめて壁にめり込んだ悪漢と、元の姿に戻った星と、腕に抱えられた女性のみ。
「この力なら、天香にもあるいは……」
成否
成功
第1章 第3節
空を泳ぐ人魚のような存在が、悲痛な歌をうたい続けている。
歌は痛みの剣となり、剣は群れを成し、そのすべてが『闇祓う一陣の風』白銀の騎士ストームナイト(p3x005012)へと殺到する。
盾をかざし防御するも、あまりの衝撃に彼の身体は吹き飛ばされる。
「くっ、強い。やはり一人ではきつい、か。
しかし、撤退するわけにもいかない。私が退けば、無辜の命が奪われることとなる……」
ふと振り向けば数人の子供達。
これより後ろへ退くことは、ありえない。
「……使うしか、ないか」
立ち上がり、そして剣と盾を放り捨てる。
まるで自棄になったかのような行動に人魚がハッとするが、構うことはない。
「あーもう! 頼るわけじゃねえからな! 利用するだけだかんな卑踏! ――魔哭天焦・『月閃』!!」
突如鎧は黒曜のごとき漆黒となり、黒髪一部を残して白髪化していく。
左の瞳が妖しく赤く輝き……新たに生まれた黒き剣が彼の手に収まる。
「転身! 宵闇の騎士、ストームナイト・ノワール!」
再び殺到する剣のすべてを打ち払い、そして暴風のごとく接近。
「髪の色はお父さんそっくりになって、なんかイヤだけど……まあいい、いくぞ!
我が暗黒の力にて闇に還るがよい!!」
黒き折れぬ剣が、人魚の胸を貫く。
成否
成功
第1章 第4節
下卑た笑みを浮かべた怪物がいた。
都にて若い娘ばかりを狙い、その血をすするという人型の夜妖だ。
今回夕暮れの路地裏へ追い詰めたのは、これまた美しい娘だった。
いや、その評価は正しくない。
「こんな『置き物』で良かったらお助けするわ」
髪を払うと、『月閃』を発動。
突如として形容しがたいほどおぞましい怪物へと変化した『母胎』ユグゴト・ツァン(p3x000569)は、無数の腕でもって夜妖の顔面を殴った。
顔面を、顔面を、顔面を、顔面を、顔面を、すさまじい速度とパワーで殴り続け、原形が分からないほどに歪めていく。
「――HAHAHAHA! 殺し尽くせるならば散らかして魅せ給え、我が茸類は永久の如くに円筒(シリンダー)なのだ」
破壊し尽くした夜妖を抱きしめ、囁く。
「私が貴様の『お母さん』であれば、どこに『行く』必要がある」
と。
成否
成功
第1章 第5節
炎のように燃える目。強く蹄が大地を蹴る音。
栗毛の名馬『炎血馬』。その背に跨がっているのは『月将』アメベニ(p3x008287)である。
併走しているのは上半身が黒い肌の獣人めいたケンタウロス型の夜妖であった。
『火魂舞』の舞いにより鳥のような姿の鬼火を召喚し撃ち込むが、堅い毛皮はそれをはねのける。
「無駄だ、人間よ。死に絶え、血と骨を晒すがいい」
爪をむき出しにして反撃にでる夜妖。
が、アヤベニは迷うことも慌てることも、増して退くこともなかった。
「救助対象からは、もう充分離れたようですね」
とだけ呟くと、『月閃』を発動。
突如として湧き上がった黒い炎を纏い、髪もまた黒炎へと変化させる。
「何ッ!?」
「正直まだ不安はありますが……この黒い炎とともに、美しく舞って見せましょう!」
夜妖の繰り出す爪は、アヤベニをとらえることはできなかった。
それよりも早く繰り出した炎が夜妖を包み込み、硬い毛皮もその内側も、すべてを焼きつくしてしまったから。
成否
成功
第1章 第6節
ヒイズルは夜も眠らない。
ガス灯に照らされた駅前には人力車や路面電車が行き交い、和服姿の男性たちが忙しそうにしている。
そんな光景を駅の時計台の上から見下ろすのは、『月将』ビャクダン(p3x008813)である。
「別物とはいえ、それでも故郷が元になった国……それが荒れるのは、なんとも気分が悪ぃもんです」
広げた翼でふわりと浮きあがると、夜空に溶けるように飛ぶ巨大な人面鴉をにらみつけた。
こちらへ興味を向ける人はいない。空に結界がはられているのか、こちらの姿は夜に溶けて見えなくなっているようだ。
なら好都合。
「――『月閃』!」
黒角が増え、片目が禍々しく変色したビャクダンは一瞬で風となった。
「こーいう『よくないとされるもの』を利用すんのは、慣れてるもんで」
幾重もの爪による斬撃によって八つ裂きになった人面鴉。空へ飛び上がったビャクダンは再び翼を羽ばたかせると、そのまま夜の空へと消えていった。
成否
成功
第1章 第7節
「アナタ、殊更真面目に仕事をするタイプだったのね」
『聖女』ルチアナ(p3x000291)からそんな風に言われ、『世界の意思の代行者』グレイシア(p3x000111)は肩をすくめた。
現場へと向かう道中のこと。沈みゆく太陽が茜色に街並を照らすさなか。
「何時如何なる時も、仕事に手を抜いた覚えはないのだが……」
「知れば知るほど『魔王』のイメージが崩れていくわ」
グレイシアからすれば困ってしまうような話だ。
ルチアナのいう『魔王らしさ』というのは、敵対する集団が作り上げ操作された印象に過ぎない。『勇者像』もまた然り。
立場を失うとこんなものなのだろうかと、ルチアナは苦笑した。
「さて、人命救助よ『魔王』?」
「そのようだ」
駆けつけた現場はひどい有様だった。
呉服店の中ではあったが、すべての服がズタズタに引き裂かれ、両手をハサミに変えた赤い服に赤帽子の夜妖の女が紅色の唇を歪ませている。目元は、見えない。
店の奥では怯える店主らしき老女。
「如何なる代償を支払ったのかはしらないが……使うとしよう。この力を」
夜妖を纏うグレイシア。
銀髪が数房だけ黒髪へと変化する。炎のような影が彼を纏い、『いつかの彼』を彷彿とさせる。
一方でルチアナは暗色から明色へ。髪も銀にかえた。
「その姿『あの子』が見たらどう思うかしらね?」
「……」
ルチアナのからかうような問いかけに、しかしグレイシアは答えなかった。
やるべきことは、別にある。
こちらを振り返った夜妖が奇声を上げながら襲いかかってくる。が、二人は意にすら介さない。
燃え上がるような影が。どこからともなく現れた銀の剣が。同時に夜妖を交差し切り裂き、その一太刀のもとに破壊し尽くしてしまった。
「皮肉なものね」
「かもしれん」
成否
成功
第1章 第8節
(月閃…代償がゲーム内の「私」だけではなく、現実の『オレ』に跳ね返ってくるのだとしたらかなり厄介そうではあるけれど、そういった話は今のところ聞かない。
とはいえそう安易にバーゲンセールみたいに何度も使ってはいけなさそうだ。後で何起きるかわからん)
『閃雷士見習い』Steife(p3x005453)は獣耳をぴこんと動かすと、風すさぶ夜の港湾にて立ち上がった。
大量に積み上げられた木箱の上。海から這い上がってきた夜妖たちが夜間にも働く作業員たちを追い詰める場面が眼下にあった。
「でもまあ、折角試せるというのなら――」
助走をつけて跳躍。『月閃』を発動させると黒いもやに包まれ、大斧による斬撃で夜妖を一刀両断。
更にスライド変形した大剣による回転斬りによって夜妖たちを一太刀のうちに切り伏せた。
「日頃の鬱憤をぶちまけるには丁度良いな」
成否
成功
第1章 第9節
夜妖との死闘中。
大正風情あふれるヒイズルにおいて平安めいた街並が並ぶ長屋の一角で、ファン・ドルド(p3x005073)は眼鏡にスッと中指をあてた。
「では、試してみましょうか――『月閃』」
両手を血塗れの鎌にかえた長髪の女めいた夜妖が襲いかかるその一瞬の間に、再現CGのような姿となってゴーグルを装着した。
「旋風――」
刀に手をかけ。
「虎徹」
背景の建物ごと斜めに夜妖を切断。
爆発する夜妖から急速反転し、カメラ目線で見栄を切った。
そんな彼の不意を打つかのように足下から術式爆発が起き、空中に放り投げられるファン。
「裂空――」
が、眼下にとらえた夜妖に対して。
「虎徹」
40mの距離を無視して伸びた超長距離斬撃が夜妖を(カメラ目線で)切断。
そして頭から(カメラ目線で)落ちた。
成否
成功
第1章 第10節
(デスカウントもそうだけれど、代償の定かでない力はあまり多用したくはないけれど……仕方がない時もある)
イズル(p3x008599)は小さく息をつくと、歓楽街からやや離れた川辺の小道で振り返った。囃子の音が漏れ聞こえる、薄暗い土道に、身長にして3mをゆうに越える白衣の女性が立っていた。
人間とは思えぬ声でなにかを呟き、こちらを見つめている。
間違いない。夜妖だ。
「『月閃』」
呟くと、編んでいた髪がするりとほどけて風になびき、大きくプラチナ色に広がった。
襲いかかってくる夜妖に対して、動きはしない。
ただ立ったまま、イズルの影より現れた無数の蛇型の闇物質が噴出したかのように現れ、そしてすべてが夜妖へと食らいつく。更に青白く光る翼から刃が分離し、夜妖を次々に貫いていった。
夜妖が崩れ落ちるのと、月閃が溶けるのは同時だった。
きびすを返し、歩き出す。
お囃子の音は、まだ聞こえている。
成否
成功
第1章 第11節
月の欠けた夜。侵食された夜。
秩母山中の頂上にヒロ(p3x010030)の姿があった。
巨大な鴉型の夜妖が接近するのを、上着のポケットに両手を入れたまま見つめると、スッとポケットから取り出した拳銃を連射。
それでも勢いの衰えない夜妖に対して小さくため息をつくと。
「仕方ない、か」
木の上から跳躍しようとするかのように身をかがめ、『月閃』を発動させた。
まるで蛇人間のように口がさけ、鋭い牙がはえ、肌には鱗がうき、身体は黒い霧を纏った。
強化された肉体で跳躍。
夜妖による突進を回避すると、空中で反転しながら霧を纏った拳銃の狙いを定めた。
連射。
一発目で激しくバランスを崩した夜妖は続けた数発の着弾をうけきりもみ回転しながら山中へと墜落していく。
「っし!」
別の木の枝に着地し、月閃を解除する。
「こーいうのも使いこなしてこそ、カッコよく決められるってもんだよな!」
成否
成功
第1章 第12節
(……こんなに強力な夜妖が……急に現れるなんて……。
……一人でここに来るべきじゃなかったかな……このままじゃ何もできずに……僕の方がやられる……)
使うしかなさそうか。
そう呟いたのは『分岐点の別の道』アルヴ(p3x001964)であった。
腕が無数にはえた黒い獅子のような、あまりにもいびつな夜妖との戦いでひどく傷ついていた。
彼の予想通り、このままでは勝てないだろう。
だからこそ。
「――『月閃』」
一瞬で『グレイル』の姿となったアルヴは、更に体毛を黒と赤に変化させ、炎と煤の幻影を纏い始めた。瞬きをすると目は黒く、溢れるように赤い血が流れ出た。
その様子にびくりとした夜妖。こちらを引き裂こうと攻撃を仕掛ける――その一瞬。突き出した腕が夜妖をえぐりとり、そしてその一握だけで相手を消滅させてしまった。
(…この力は…確かに強いけど…なんだろう…正直気味が悪いな…。
…僕が僕でないみたいだ…この力は…あまり使うべきでないね…)
成否
成功
第1章 第13節
『神の仔竜』リュート(p3x000684)は小さな身体で一生懸命パタパタすると、血の流れた自分の身体をちらりと見た。
巨大な蝿から人間の手足が生えたような奇怪な夜妖がそれを追跡し、追いつき次第手に持ったナイフで刺し殺そうという意図がその刃にたれた血が物語っている。
(最初から全力出しすぎたな、そろそろあそぶのもシンドいッス)
リュートは空中でくるりと反転。
覚悟を決めたかとナイフを構える夜妖に対して……。
「ぎゃうっ(『月閃』)!」
突如としてその姿を禍々しき黒龍の姿へと変化させた。
びくりと身体をふるわせる夜妖。
このまま追撃すべきか退くべきか迷ったのだろう。
だが、どちらを選択しても同じだ。
「――我は飽きたぞ。終焉だ」
口を大きく開くと、まるで戦闘艦に搭載された機関砲のごとき黒き光弾ブレスが放たれ夜妖をたちまちのうちに破壊し尽くしてしまった。
成否
成功
第1章 第14節
「困った……負ける予定じゃなかったんだがなぁ」
ヒイズルに最近作られたという学校は立派な二階建てで、廊下にはガラス窓が並んでいる。
『ホシガリ』ロード(p3x000788)はそんな廊下に腰を下ろし、窓側の壁に背を付けていた。
あちこちから血が流れ、見る者が見れば左手首からさきがなく、断面がデータ粒子になってふわふわと浮かんでいるのがわかるだろう。
ふと見ると、階段を上がってきた女学生風の夜妖がこちらを見た。顔面はなく、暗黒だ。
ここはいっそ自爆してサクラメントからやりなおすべきか?
そう考えて……ふとあるシステムに思い至った。
「その手があったなぁ――『月閃』!!!」
大きく息を吐いてから叫ぶロード。
やや成長したような彼のボディ突っ込んでくる夜妖に対して、瞬時に動いた。
相手の攻撃の回避と、相手の首を落とすこと。それは同時だった。
崩れて消える夜妖を背に、通常状態へと戻る。
「こんなに強い力なら、現実で使えたら楽だろうなぁ」
成否
成功
第1章 第15節
朝焼けかすむ港の埠頭。これまでイレギュラーズたちに海上輸送や近隣の島々への移動という形で協力していた彼らは今、海より這い上がる河童型の夜妖たちに襲われていた。おぞましい肉体と憎しみに満ちた顔。最初の一人が鋭い爪によって切り裂かれようとした,その時――。
一本の剣が、夜妖と人の間に突き刺さった。
夜妖は敵に対して、人は救いに対してそれぞれ振り返る。
積み上げられた大木箱の上にたつ、二人の少女に。
「私達が来ました! 安心してください!」
剣の主である『ヒーラー』フィーネ(p3x009867)はそう叫ぶと、隣の『かつての実像』いりす(p3x009869)が狙撃銃型アサルト水鉄砲を構えた。
(被弾量を分配すれば何とか出来る、はず……)
射撃。が、しかし夜妖は自らの力を解放し巨大化。射撃を水の膜によって弾いてしまった。
だがいりすたちが恐れることはなかった。
「行きますよ、いりすちゃん!」
「うん、フィーネさん……!」
二人はかざした手を合わせると――。
「「月閃!!」」
渦巻く風に包まれた二人はその姿を変えた。
いりすはどこかの学校制服を着た少女に。フィーネは腕に黒いオーラを纏い、漆黒の光が二人を包み込んだ。
「私がいる限り、全員無事に帰宅させます!
死ぬことは許されません……戦ってくださいね?」
二面性の深いことを言うフィーネに、いりすはぶつぶつと早口で独り言をいった。常人ではまず理解できない専門用語の、それも略語である。
だがそれに見合っただけのスピードで手元のスマートフォン型端末を両手親指で操作し、彼女たちの周囲に大量の銃器を召喚、配置、一斉射。
夜妖は反撃の水弾を乱射するも、そのダメージはフィーネの光によって阻まれた。
「あなたでは相手になりませんね」
たちまちのうちに夜妖は穴あきチーズと変わり果て、最後には身を伏せた救出対象者だけが残るのだった。
成否
成功
第1章 第16節
路面電車のレールが交差する道路の上。
多くの者が眠る夜中にあって、電車は一台たりとも走っていない。
……筈だが、一台の車両が二人の女の前にとまった。
「なるほど、これが」
ライトに照らし出されたのは二人の女……もとい二人の花嫁であった。『しろきはなよめ』純恋(p3x009412)と『花嫁キャノン』澄恋(p3x009752)。
二人は手帳をかざし、夜妖へと突きつける。
「高天京特務高等警察です」
「我々の協力者を狙い拉致しているという列車型の夜妖は、あなたですね?」
「……小癪な」
言い返せるような言葉がなかったのだろう。車両の全面が口のように開き、そう語った。
更には無数の触手をはやし、車両内部を肉の塊が埋まる。
「矮小な貴様ら二人でこの車両を止めることなど――」
「「月閃」」
途端、二人の空気が変わった。
青いブーケを手に赤い涙を流す花嫁。
その一方は姿こそ変わらないものの、吹き上がる気配は常軌を逸していた。
「いつでもぱーふぇくとなのがプロ花嫁!
それにしても……日頃のROOでの振る舞いの方がまだ私らしかったですよ、"澄恋"?」
「そっちこそ"澄恋"になるのが下手です!」
二人は両手に纏った血の塊をばきりと鬼のように変化させると、突っ込んでくる車両を両サイドに交わしながら爪で斬撃。
がぎりと切り裂かれた車体が三枚におろされ夜妖は崩れ落ちながら消えていった。
「小さい角に菫色の髪。産まれるべきだった、正解のわたし……」
車両が通りすぎ、ぽつりと呟いた純恋の横顔を、澄恋はちらりと見た。それだけだった。
成否
成功
第1章 第17節
ヒイズル首都からやや離れた道の上。
バイクに跨がる女の姿。彼女の後ろにはもう少し若そうな少女がしがみつき、後ろを振り返っている。
夜闇になびく髪のさらに先。四つ脚の獣がすさまじいスピードでこちらを追いかけてきている。
このままではバイクをアーマー形態にすることができない。万事休すか……と思われたが。
「鬼ごっこはそろそろ終わり……最終幕としようか?」
あえてバイクのブレーキをかけてスライド。
「――『月閃』」
ラムダはバイクから降りると、自らを一度黒き風に包ませた。
額に長き双角、鋭き双眸に鋼の四肢。
生きているかのように蠢く流体金属の外套。
妖艶な、そして蠱惑的な笑みを浮かべ、獣型夜妖めがけて飛翔した。
ハッと顔をあげた夜妖へ、複数の鎖が飛ぶ。四肢を拘束すると、蛇腹剣を振り込んだ。
跡形もなく切り裂き、轢き潰した夜妖が消えていく。
「ん~悪くはないのだけど昂りすぎて抑えが利かなくなるのが欠点よね~」
月閃を解除したラムダは髪をはらい、息をついた。
成否
成功
第1章 第18節
協力者を馬で逃がし、立ちはだかる『鉄騎魔装』鬼丸(p3x008639)。
対するは煙をあげて走る装甲服めいた人型夜妖であった。
突き出した巨大な拳銃から打ち出される弾丸が鬼丸へ命中。
目をバッテンにして吹き飛ばされ、火花をあげながら地面をすべった。
「このままじゃ厳しいか……それなら……!」
地面をガンと叩いて起き上がり――。
「月閃……悪鬼魔装モード!」
素早く変形した鬼丸……だがその形状は元のそれとは大ききく異なっていた。
赤く尖った禍々しい鎧。
頭部から上に伸びる一本のツノ。
そして兜状の仮面の下から覗く目はピンク色のモノアイタイプだった。
ドゥっとジェット噴射をかけて跳躍。
夜妖がそれを打ち落とそうと射撃をしかけるが、華麗な飛行によって一発もあたらない。
「お前を破壊する……! 魏駕破壊砲(ギガブラスターキャノン)、発射!」
飛行を一時やめ、砲撃を放つ鬼丸。
禍々しい赤き光の奔流にのまれ、夜妖は跡形もなく消え去った。
成否
成功
第1章 第19節
氷でできた城のごとき風景のなか、天使が舞い降りた。
「お裁き届けにあがりやした! 桐野……じゃなかったリエル=ティオールっす!」
夜妖によって形勢された特殊空間。そこに囚われた協力者を救うべく、『天使の様な何か』リエル=ティオール(p3x001062)が結界を破り突入してきたのである。
「狙った獲物は逃さないっすよ!」
グルル、と威嚇のような声を上げて人狼型の夜妖が構える。
瞬間的に距離を詰めたリエルは人狼へ斬りかかる。一撃必殺回避不能な急所攻撃――の筈だったが、それは人狼の首の毛皮によって止められた。
「――!?」
腕を振る人狼によってなぎ払われるリエル。
が、すぐに『月閃』を発動。
「バグにはバグを、っす!」
すさまじい高速左右反転をしながら変化するカラーリング。ハイロウが黒く、髪は紫に、そして服装も黒いものへと変化した。
「貰ったっすよ!」
残像を残しながら人狼の周囲に分身を出現させ、そのすべてでもって八つ裂きにしていく。
もはや逃れるすべはなし。
成否
成功
第1章 第20節
今宵もどこかで、人知れず夜妖の牙に怯える者が居る。
だが忘れるなかれ。
夜妖を纏い、夜妖を祓う、イレギュラーズたちがいることを。
彼らは今宵も、月夜を駆ける。
GMコメント
このシナリオはラリーシナリオです。仕様についてはマニュアルをご覧ください。
https://rev1.reversion.jp/page/scenariorule#menu13
全1章予定で、全体採用人数は未定。
募集期間は公開から3~4日程度を予定していますが、予告なく変更されることがあります。
●シナリオ概要
あなたは『高天京特務高等警察』となって出動し、夜妖に襲われそうになっている協力者を助けるべく強力な夜妖と戦います。
戦う場所や協力者や夜妖の種類はケースによってバラバラですが、共通して『一人だけで倒すのは少し骨が折れる状況』であるようです。
ですがあなたには『月閃』があります。
『月閃』とは、プレイングで宣言することで使用できる<月没>シリーズ限定の技です。
プレイング内で月閃時のアバターの容姿を指定してください。
疑似反転現象であるため大抵はワルな見た目に変化します。いっそ性格も変化しても構いませんが、時間経過で元に戻るうえ完全な悪堕ちはしないので一時的なダーク変身としてお楽しみください。
そしてお察し頂けているかもしれませんが、このシナリオは『自分だけを主役に月閃のおいしいとこだけ楽しんじゃおうスペシャル』です。
単身、あるいは誰かとペアで強力な夜妖へと挑み、そしてダークスタイリッシュに撃破しましょう!
●魔哭天焦『月閃』
当シナリオは『月閃』という能力を、一人につき一度だけ使用することが出来ます。
プレイングで月閃を宣言した際には、数ターンの間、戦闘能力がハネ上がります。
夜妖を纏うため、禍々しいオーラに包まれます。
またこの時『反転イラスト』などの姿になることも出来ます。
月閃はイレギュラーズに強大な力を与えますが、その代償は謎に包まれています。
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■グループタグ
誰かと一緒に参加したい場合はプレイングの一行目に【】で囲んだグループ名と人数を記載してください。所属タグと同列でOKです。(人数を記載するのは、人数が揃わないうちに描写が完了してしまうのを防ぐためです)
このタグによってサーチするので、逆にキャラIDや名前を書いてもはぐれてしまうおそれがあります。ご注意ください。
例:【二人はおじキュア】2名
●情報精度なし
ヒイズル『帝都星読キネマ譚』には、情報精度が存在しません。
未来が予知されているからです。
●侵食度
当シナリオは成功することで希望ヶ浜及び神光の共通パラメーターである『侵食度』の進行を遅らせることが出来ます。
●ROOとは
練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline
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