シナリオ詳細
不思議なダンジョンへの届け物
オープニング
●不思議なダンジョンにて
「ほっほっほ! まさか鍵穴が全部ダミーとはのう! やってくれるわい!」
笑いながら走るのは、かなりマッチョな体格の老人だ。
転がってくる岩から逃げているようだが、焦っている様子はまるでない。
「む、あれじゃな……そぉい!」
見つけた横道に飛び込み岩をやり過ごした老人は「ふう」と息を吐き、転がっていった岩を見て舌を出す。
「へっ、ばーかばーか、転がるしか能のない罠なんぞで今更ワシが死ぬかっての! 2段構えくらい……」
ポン、と老人の肩を叩く手。
振り向けばそこには大人程の大きさの金属ゴーレムがいる。
「おーう……ハロー。君が2段構えの罠かね? いやあ、素晴らしい仕組みだ! ワシ感動しちゃう!」
ゴウ、と。凄まじい速度で放たれる拳をしゃがんで避け、通路まで転がり出る。
そのまま岩が転がっていった方向で走り、老人は笑う。
「ハハハハハ! いやー、怖ぇ! 今のは死ぬ! くらってたら頭パーンだったのう! ハハハハハハ!」
笑いながら走るその老人は、やがて色々なルートを通った果てに広い大部屋のような場所に辿り着く。
色んなものが叩き壊されたその部屋のガラクタの中には、この部屋のガーディアンだったと思われるモノの残骸もある。
そして、その中央にあるのはガラクタを寄せ集めて作ったと思われる家だ。
そう、何と驚くべきことにコレは老人の拠点なのだ。
鍵を開けてその拠点の中に入ると、老人は荷物を降ろし椅子に座りこむ。
「はー。このダンジョン、ワシが生きとる間に攻略できるかのう?」
コーヒーを入れて、乾燥果物をひと齧り。
「む、そういや……そろそろ連中が来る頃じゃないか? こりゃいかん。金は何処に置いとったかのう?」
●パサジール・ルメスの届け物
「依頼です」
『旅するグルメ辞典』チーサ・ナコック(p3n000201)はそう言うと、奇妙なものを机に置く。
何やらユラユラと揺れてダンスを踊る、ちょっとキモかわいい系の人形。
そうとしか言いようがないモノだが、どういう理屈で動いているのかはサッパリ不明だ。
「この手の変なものを売りつけてくる連中に心当たりがあると思うですが」
パサジール・ルメス。移動民族である彼等の名前を誰かが口にすると、チーサは「そうです」と頷く。
ラサ傭兵商会連合の勢力下である砂漠の「とある地点」に、不思議なダンジョンが存在する。
総階層数は不明、未だに攻略者もなし。
そんなダンジョンに半ば住むようにして探索と研究を続けている、物好きな探検家の老人がいるのだという。
名前はセダム。年齢はもう70を超えているはずだが、会う度に筋肉量が増えていると言われる変人だ。
「商隊が定期的に届け物に行くですが、ダンジョン内は危険なので届けに行ってくれる人を探しているのです」
ダンジョン前までは、商隊が荷物を運んでくれる。
つまり、そこまで商隊と同行しダンジョンに潜り、荷物を渡して代金と売り物を受け取るまでが仕事だ。
勿論、交渉ごとに関しては商隊の若手「ロウダ」が同行して行ってくれる。
その護衛も含んでいる……というわけだ。
「ダンジョン内は罠もモンスターも多いそうですが……まあ、頑張ってくるです」
- 不思議なダンジョンへの届け物完了
- GM名天野ハザマ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年09月02日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●不思議なダンジョンへ
「よーしお届け物を渡すお仕事頑張るっす!」
『赤々靴』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)は元気に叫び、その「入り口」に視線を向ける。
そう、それこそは不思議なダンジョンの入り口。見た目にはただの遺跡の入り口にしか見えないそこに『最期に映した男』キドー(p3p000244)達は立っていた。
「ま〜モノ好きですこと。数を誇るんじゃあなく、ひとつのダンジョンを極めようとしてるってトコは好感を持てるがな。それにしたって変人だぜ!」
「おそらく一生をかけて不思議なダンジョンの探索……ロマンがあっていいね。荷物を届けに行くのに命の危険が伴うのはあまり良くないけど。届ける人が死んだらゼダムさんもよろしくない状況になりそうだしね」
「ははっ、僕も死ぬのは嫌ですし……よろしくお願いしますね」
『空に願う』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)に商人ロウダもそう言って笑う。
「お家を自分好みに改装したい気持ちは分かるのでして。きっと罠とか迷宮とかが好きな方ですよ? でも自宅が迷宮はちょっと不便だと思うのです……」
このダンジョンの奥に居る老人セダムに届けるべき荷物は食料品が多いらしく、『にじいろ一番星』ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)の言う通りに「自宅が迷宮」のようなことにもなっている。
「じゃ、行くとするか」
「ふむ、迷宮内への配達というところか。単純ながら手間のかかりそうなことだ、が……うむ、少し楽しみではあるな。頑張らせてもらおう」
キドーに『斧鉞』玄界堂 ヒビキ(p3p009478)も頷き、ダンジョンの中へと進んでいく。
「ダンジョン内に届け物を持って来いとか、どれだけ引き篭もるつもりだい」
『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)はそう言いながらも、ワクワクする気持ちを否定はしない。
迷宮探索というものは、幾つになってもワクワクするものだと分かっているからだ。
「しかし、このダンジョンはマダ攻略をされてないって事だよな。俺自身の手で攻略してみたいとは思うが、今回は引き篭もりへ届け物をするだけにしておこうか」
今回は無理かもしれないが、ジェイクが望むのであればそれも可能だろう。
とにかく、そうしてジェイク達はダンジョンの中へと入る。
「ここが、例のダンジョンですか。見る限り、そこまで危険な気はしませんが」
『砂漠の蛇』サルヴェナーズ・ザラスシュティ(p3p009720)の言う通り、ダンジョンの中には明かりも灯り、視界も充分に確保されている。
何か問題があるようには見えないが……サルヴェナーズがふと触れた壁が、その一瞬後に電撃のようなものが奔る。
もしずっと触れていたら、今の電撃を受けていただろう。
「前言を撤回します。気を付けて進みましょう」
「それがいいわね。しかしカビ臭いダンジョンだわ……踏破者居ないって聞いたけどよく通る気になるわねぇ……まぁいいわ、仕事の時間ね」
『慈悪の天秤』コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)もそう言って気持ちを切り替える。
此処から先、何があってもおかしくはない。コルネリア達はともかく、護衛対象であるロウダに何かあっては困るのだ。
「そうっすね。罠があるってことは入って来てそうそう振り子ハンマーが飛んできたり……っす!?」
言うなりレッドの鼻先を振り子ハンマーが掠めていくが、なんともいきなり殺意が高いダンジョンではある。
「あ、それだよレッドさん。床の色が違う」
「あ、ほんとっすね!」
フォルトゥナリアに指摘され、レッドは床から足をどける。
此処からは細心の注意を払わなければならない。
フォルトゥナリア、ジェイク、サルヴェナーズを前衛に、キドー、コルネリアを中衛に、レッド、ルシア、ヒビキを後衛に……そして真ん中のロウダを護る布陣で進んでいく。
具体的にはコルネリアが【超視力】で遠方まで、【広域俯瞰】で周囲広く、【暗視】で隅や奥の暗い所まで探りながら都度都度キドーに情報を流していくという手法をとることで極限まで罠を事前発見し、フォルトゥナリアもダンジョン内の明かりを過信せず光源を用意し、ジェイクと分担し罠対処をすることで危険を排除する方向性であった。
こうすることで自然とロウダの安全も確保できるという手法だ。
「ネズミさんにちょっとお願いっす」
レッドのファミリアーもダンジョンを先行するように進んでいき、それはレッドに様々な情報をもたらしてくれるだろう。
それでもスケルトンやゴーレムの襲来までは防げないが……。
「灯りを絶やさず、警戒を怠らず、だ。奇襲される前に気付ければよいのだからな」
そんなヒビキの言葉通り、無駄に気を抜くものは此処のメンバーには居ない。
「む、早速罠だな。油のにおいがしやがる」
ジェイクのハイセンスが感じ取ったその匂いは、罠の存在を気付かせるには十分すぎた。
「さて、十徳ナイフでどうにかなるか……?」
カチャカチャとジェイクとサルヴェナーズがやり始めた近くでは、キドーが罠の位置を地図に書き込んでいく。
こうすることで罠が再設置されていても気付くことができるのだ。
「これで帰り道はもっとスムーズに進めるだろうさ!」
「こうした積み重ねが大事でしてー」
キドーにルシアも頷きながら、不自然に垂れてきた紐を引っ張りたがるレッドを引っ張って止める。
「やっぱ罠っすかねえ」
「どう見ても罠ね。でも、凄いタイミングで垂れてくるわね」
諦めたレッドをコツンとこづきながらコルネリアは上を見上げるが、何処に繋がっているかは全く分からない。
「大丈夫みたいですよ。罠の解除、お疲れ様でした。さあ、次に進みましょ」
言った瞬間、サルヴェナーズの足元がパカッと空いて。近くに居たコルネリアが瞬間的にその手を掴む。
「あっぶないわねえ……」
「二重の罠か……三重くらいまでは警戒した方が良さそうだね」
最初の罠に引っかかると二つ目の罠は発動しないのだろうか、落とし穴に変化した床は、フォルトゥナリアにも区別がつかないほどに他の床と変わりがなかった。
「し、死ぬかと思いました。ありがとうございます……」
「結構手の込んだ罠でして! 遠くの罠はルシアに任せるのですよー!」
その時は魔砲で破壊しようと意気込むルシアに、思わず全員が和む。
ガッチガチの対罠布陣を組む中で、その純粋さがちょっと救いになったのだ。
まあ、魔砲どころか破式魔砲を撃つチャンスを狙ってるとまでは分からないだろうが。
「あの……セダムとかいう爺さんだっけ? アイツもこのダンジョンで暮らしてるなら内部の構造には詳しいだろう。ヤツのねぐらに付いたら照らし合わせてみよう……まあ、内部が常に変わっている可能性もあるが!」
「そうなったらお手上げだが……まあ、そうじゃない事を信じよう」
キドーにジェイクはそう言って肩をすくめ、周囲に「三つ目」の罠がない事をフォルトゥナリアと共に確認する。
「……結局この紐はなんだと思う?」
「ただの紐……かな?」
先程レッドが引っ張りたがった紐だが、どうも罠だという感覚がない。
あまりにも「意味のない」紐だが……。
「まあ、引っ張って……」
「ならやるっす! えいっ」
レッドが引っ張ると、紐に引っ張られレッドの頭上に何かがゴンッと音をたてて落ちてくる。
「あっだああ……って宝箱! あ、開けてみたいっす……!」
「めげないね……」
フォルトゥナリアが思わず笑ってしまうが……ちなみに開けた結果は、よく分からない小さなメダルが1枚入っていただけだったので、レッドに贈呈されることになった。
●迷宮の老人セダム
吊り天井に仕掛け矢、笑気ガス……様々な罠を乗り越えて、進んでいく。
「ロウダさん疲れてないっす? 大丈夫っすか? 少し休憩も入れるっす?」
「ははっ、ありがとうございます。ですが大丈夫ですよ。僕より皆さんのほうが心配です」
レッドに気遣われ、ロウダは大丈夫と元気アピールする。
事実、ここまでかなり大変な道程ではあった。
「まだ未熟の俺には出来ることは多くないからな。仲間の指示に従う方針で気楽に臨んではいる」
「いやあ、凄い胆力だ。僕には真似できないなあ」
ヒビキにそう言いながら笑うロウダだが……その辺りは戦闘職と非戦闘職の違いではあるだろう。
「敵だ!」
「キドー、視えたわ。前方右曲がり角、敵が居る。ロウダ、誰でもいいから誰かの後ろに! 離れるんじゃないわよ!」
本日何度目かの襲撃にジェイクが叫び、コルネリアが次々と仲間に声をかけていく。
敵はスケルトン。全員剣装備で遠距離攻撃の心配はないが、油断はしない。
「お届け物の邪魔しちゃダメでして!」
ルシアの破式魔砲が炸裂し、コルネリアのCall:N/Glanz、ジェイクのハニーコムガトリング、そしてキドーのフーアとの盟約が発動しあっという間にスケルトン達を殲滅する。
……だが、キドー達は油断しない。何故なら。
「来ると思うか? 第二弾」
「あ、来たっすよ!」
レッドが叫び、壁が開いてゴーレムの群れが姿を現す。
「ゴーレムやスケルトンぐらいなら大した敵じゃないって言いたいっすけど……数多ッ」
「任せて下さい。私のギフトと魔眼で、大量の凶悪な侵入者の幻覚を見せて、敵が戸惑っている内に突破しましょう」
「いいから逃げるわよ! あんな数相手してられっか!」
コルネリアがロウダを抱え、全員が走り出す。
総勢100を超えるゴーレムの群れ……命名「ゴーレムの罠」。
一定距離を逃げれば戻っていくと分かっているだけに、逃げる事に誰も異論はない。
そうして走っていくと……コルネリア達は、何やら広い大部屋のような場所に辿り着く。
色んなものが叩き壊されたその部屋のガラクタの中には、この部屋のガーディアンだったと思われるモノの残骸もある。
そして、その中央にあるのはガラクタを寄せ集めて作ったと思われる家だ。
そう、何と驚くべきことにコレこそがセダムの拠点なのだ。
「お? 何か騒がしいと思ったら……」
その家から顔を出す老人セダムに、ジェイクが代表して「セダムか?」と声をかける。
「おお、如何にもワシがセダムじゃが」
「依頼よ。コレを届けに来たわ」
コルネリアがロウダを降ろし、フォルトゥナリアもメカ子ロリババアに載せていた荷物を降ろす。
「やあ、どうもセダムさん。取引に参りました」
「おお、おお! そうかそうか、待っとったぞ。いつもと同じで足りるかの?」
「ええ、問題ありません。で、今回は何か良いものは見つかりました?」
「うむ。その家の中にあるから探るとええ」
「では失礼しまして」
家の中に入っていったロウダが歓喜の声をあげるが、何か良いモノでも見つけたのだろう。
「ふう、これでお仕事もまずはひと段落。酷い目に遭いましたが、でも、楽しかったですね」
「ああ、良い勉強になった」
「そうだね。あとは無事に帰れば依頼も終了だ」
サルヴェナーズにヒビキも頷き、フォルトゥナリアはようやくといった感じで一息をつく。
「しかしまあ、こんな罠だらけのダンジョン……一体誰が作ったのよ……帰ったら1杯やりましょ」
「ほっほっほ。誰が作ったか……か。それが分かったら面白いのう」
「確かにな。浪漫がある」
セダムとジェイクもコルネリアに頷き、そんなセダムにルシアが魔砲クラッカー(粗品)をプレゼントしていた。
「やー、外にも面白いものがあるのう!」
「セダムさんはこのダンジョン攻略するだけじゃなくダンジョンを楽しむ為に此処に住んでるんっすか?」
本当に面白そうに弄りまわしているセダムにレッドがそう聞くと、セダムは「ほっほっ」と笑う。
「両方じゃな!」
「両方っすか?」
「楽しんで攻略しとるんじゃよ。万が一此処が攻略できたとして、わしゃすぐ次に行くじゃろうの」
ライフワークじゃよ、とセダムは笑う。
まあ、確かに義務感とか使命感を持っているようには、お世辞にも見えはしない。
「やあ、セダムさん! 今回も素晴らしいものばかりですね! 高値で買いますよ!」
「おお、そうかそうか」
ロクに値段交渉もせずに取引を終えたセダムの姿からは、確かに何も気負いは感じられない。
「……さて、ロウダさんよ。ひとつ商談なんだが。俺が記録したこの地図、買わねェか? 今後も護衛役は必要だろう? 俺らの後任にこの地図の写しを持たせりゃ色々捗るんじゃあねェか? どうよ。悪い話じゃあねェと思うが。ひひ」
「貴方も中々商人ですねえ……では、こんなもんでどうです?」
交渉を始めるキドーとロウダの姿にセダムがカラカラと笑っているが……こうして、不思議なダンジョンへの届け物は、無事に完遂するのであった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
コングラチュレーション!
お届け物を無事完了しました!
GMコメント
ダンジョン内の何処かに拠点を作っている探検家「セダム」の元にロウダと一緒に行きましょう。
そんな感じのアクション系シナリオです。
トラップのある扉やトラップのある宝箱、落とし穴や急な坂に変わる階段や吊り天井など、トラップいっぱいです。
モンスターは剣や弓装備のスケルトンに大人程の大きさの各種武装のゴーレムです。
なお、大部屋に出るとガーディアンとして巨大ゴーレムが存在しています。
こいつは踏みつけや殴りつけ、ゴーレムビームを使ってきます。
そんな感じの楽しいダンジョンアクションです。
思いっきりノリでプレイングをかけてみてください。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
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