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シナリオ詳細

【Tissier Town】キラキラ輝く夏の日よ

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●夏の定番、夏の新顔

 今日のティシエール街は、先日までの梅雨が嘘のように、さんさん晴れの晴れ模様。即ち、夏が訪れたのだ。
それを皮切りに、ティシエールの住人達は『待ってました!』とばかりに、とある所に集まっていた。

ざぱあん、白い波が寄せては返し。
ころころと、その流れに乗って転がるものがある。丸く愛らしいさくらんぼや、それは細かく切られた、パインや桃といった小さなフルーツ達。

そう、この街でしか味わえない、不思議なフルーツポンチの海。シュガーハーバーだ。

キラキラと陽光を受けて輝くアーモンドプードルとグラニュー糖が入り交じる砂浜の上では、そこに埋まる金平糖を探しながら砂遊びをしたり、今まさにすぐそこの海から汲んできたフルーツポンチを味わいながら、太陽の恵みを楽しむ人々が集まっている。

 逆に、日焼けするのは嫌だけど、涼しい所で泳ぎたい!というちょっとわがまま(?)な人向けのスポットも、このところ開発された。

蒼く幻想的な光に包まれているその場所の名は『ソーダキャンディの洞窟』。

洞窟内はひんやり涼しい空気で満たされ、風が吹く度にその恩恵を感じる事だろう。
最奥部の地底湖もまた、シュガーハーバーの海と同質の水質、つまりフルーツポンチで満たされており、そこにひんやり、シュワっとした味わいのアイスキャンディを浮かべて食べるのが、ここ最近の流行りなのだとか。

シュガーハーバーと違い陽光から閉ざされた所ではあるが、その分洞窟全体の気温はその外部に比べると低く、夏であれば誰もが「気持ちいい……」と口にしてしまうほどの清涼な空気で満たされているという。

管理人は、洞窟の壁面と同じ材質で作られた、アイスキャンディのゴーレム。
一見無表情に見える彼も、貴方の来訪を、きっと歓迎してくれる筈だ。

ーーさあ、果たして貴方は、ティシエールの夏をどこで過ごすのだろう?

●一足早い夏をあなたに

「……うーん……フルーツポンチの海水浴も楽しそうだけど……洞窟の中もきっとロマンティックなんだろうなあ……」

 悩ましげにうんうん唸るマチネ。
しかし自分を見つめる視線に気づいた時、彼女はビシッとその居住まいを正した。

「あっ、イレギュラーズ、丁度いいところに! あのね、ティシエール街って所から、海開きの招待が届いているの」

毎年夏になれば、ティシエール街の住人は大挙してシュガーハーバーに集まり、自由にフルーツポンチの海を泳いだり、ビーチでじっくり小麦色の肌を作ったり……というのが、お決まりのイベントだ。

だが、今年は例年と異なり、ソーダキャンディの洞窟までもが、一般向けにも開放されているようだ。そこにはシュガーハーバーの海と同じ水質の、フルーツポンチの地底湖が広がっており、陽光がキラキラと眩しいシュガーハーバーとはまた違った、神秘的な青い光に満たされている。

陽を求めるか涼を求めるか、非常に悩ましいところだ。
……さて、ティエール街のおかしな夏。貴方はどちらを選ぶ?

NMコメント

NMコメント

どうも、なななななです。
ティシエール街で、少し早い海開きはいかがでしょう。

以下、詳細になります。

●ティシエール街

 家も公園の遊具も外灯も、お菓子で作られた不思議な街です。
 
 街中のお菓子全てに不思議な魔法が掛かっていて、思いっきり踏んだり叩いたりすれば割れるものの、何をしても汚れる事はなく、食べてお腹を壊すこともありません。
また、食べてもまたすぐに、新しいものがどこかからやってきます。 
『チョコ噴水』『パフェ公園』『シュガーハーバー』『ハニー池』『ベークド通り』等、人気のスポットから寂れた裏通りまで、お菓子に覆い尽くされています。

 『ティーパーティー』を経てから、徐々に隣町や遠方の人々を積極的に招待するようになり、今やすっかり、観光客にも人気の街となったようです。
この街の発祥もまた、『お菓子の魔女の物語』として、街の所々で、密かに語られるようになりました。
『お菓子の魔女』の従者だというアイスキャンディーのゴーレムも、ティシエール街にある『ソーダキャンディの洞窟』に密かに暮らしています。

●目的
『シュガーハーバー』もしくは『ソーダキャンディの洞窟』で夏を楽しむ!

『シュガーハーバー』は一見すると白い砂浜に色とりどりの貝殻が映えるビーチ……ですが、何もかもがお菓子でできているティエール街を象徴するかの如く、甘い砂には金平糖が埋まっており、キラキラ輝く海はなんとフルーツポンチです。
適度に波があり天候も良いので、サーフィンをする人もいるようです。
街の自警団がライフセーバーとして見回りもしています。

『ソーダキャンディの洞窟』は幻想的な青が美しい、清涼とした洞窟です。最奥部にフルーツポンチの地底湖が広がっており、波もなく穏やかな場所です。その名の通り、洞窟の壁はソーダ味のアイスキャンディーで構成されており、それを削って食べる人も多いです。
ここに住むアイスキャンディーゴーレムも、皆様を温かく迎えてくれることでしょう。

●書式

プレイング一行目【シュガーハーバー】もしくは【ソーダキャンディの洞窟】とご記入ください。

二行目には同行者の方のお名前とIDをご記載ください。

※迷子防止のために、ご友人や恋人、相方さんと参加される方は、互いの行き先が食い違っていないか、互いの名前&IDがきちんと書かれているかご確認ください。



【シュガーハーバー】
マチネ(p3pxxxxxx)と一緒に行くよ!
フルーツポンチの海だって!
炭酸の泡が太陽の光と一緒にキラキラしてて……素敵〜!!
よーし、いっぱい泳いでいっぱい食べちゃうぞ〜!!


※一回のプレイングで行ける場所は一箇所のみですが、同一参加者が一回目『シュガーハーバー』、二回目『ソーダキャンディの洞窟』という風に参加されるのは大歓迎です。

一章構成、7月中に終了予定です。

以上になります。
どうか、良き夏の思い出を。

  • 【Tissier Town】キラキラ輝く夏の日よ完了
  • NM名ななななな
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年07月24日 21時30分
  • 章数1章
  • 総採用数9人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)
希うアザラシ

 ひんやりとしたこの場所に居るは真っ白なあざらし。そして彼を抱きかかえる黒い犬獣人。彼らの名はレーゲンとグリュックといった。

青白いアイスキャンディに囲まれたソーダキャンディの洞窟に、今こそ突撃だ!

「フッフッフ……レーさん自慢のヒレ捌きを、今こそ見せるっきゅ!」

 シャキンと構えたヒレは、青の洞窟、その一部をザクザク削り取っていく。それを氷のように透明な器に盛り、そしてシロップにかけて。

「完成! これで実質メロンソーダ味っきゅ!」
「ナルホド、ソノヨウナ食シ方モアルノカ」

海の家から借りたものをフル活用するレーゲンに、感心の言葉をかけたのはここの守護者、アイスキャンディーゴーレムだ。

「アーさんも食べるっきゅ?」
「アーサン」

そのような、呼び方をされた事がなかったのか、ゴーレムは一瞬動きが止まるが。

「イヤ、遠慮シテオク。我ニハ味覚ガナイモノデナ」
「ええ〜、勿体ないっきゅー。レーさんいっぱい削れるし、余ってもいっぱい食べ、れ、っ……!?」

突如レーゲンを襲うのは、頭が凍てつくようなキーンとした感覚。

「きゅ〜!?」
「ソレハアイスクリーム頭痛トカ言ウモノダロウ。温メルトイイ」

その言葉通り、グリュックがレーゲンをもふもふぎゅっと抱きしめる。
少し頭痛が和らいだ気もするが、本格的に治すならば、少し温かい場に行った方が良いだろう。

「んんん……一時撤退するっきゅ。アーさん、バイバイっきゅ!」
「オ大事ニ」

成否

成功


第1章 第2節

暁 無黒(p3p009772)
No.696

「おぉ~中はひんやり~気持ちいいっすね~」

 砂浜と太陽の眩しいシュガーハーバーから一度離れ、アイスキャンディーの洞窟を訪れたのは無黒だ。

「えーっと……ここにも確か、アレがあるんすよね……」

ここを訪れた理由は単純、一涼み、もとい水分補給のためだ。
……シュガーハーバーにもフルーツポンチはあるが、自分が泳いだ海を食するには、少々抵抗があったのだ。

「お、あったあった、うおお! マジでフルーツポンチっす!」

 その水底は不思議な青に光ってこそいるが、シュガーハーバーで見たものと全く同じ、シュワシュワサイダーと細かなフルーツが見た目に楽しいフルーツポンチが、そこにあった。

「やっぱ、さくらんぼは欠かせないっしょ〜。一個あるだけで映えるっすよねぇ」

そう言いながら、器にそれを掬っていく。
更に、壁をガリガリと削り取って、こんもり器に盛り付けたなら。

「完成っ! 無黒スペシャル特製ソーダかき氷っすよ〜!!」

これだけ美味しい夏の味が味方なら、怖い物など何もない。

 こうして、無黒は再び、涼味とともに夏の太陽の下へと駆け出していった。
そうして真夏の空に再び抱かれた時、彼は空にも近い青さのそれを口にする。
しゃくり、しゅわっと。冷たくも爽やかな刺激が、舌を楽しませてくれる。

「かぁ〜っ! やっぱり冷たい物は暑い太陽の下で食べるのが最高っすね!」

夏、最高!
高らかに腕を突き上げ叫ぶ声は、太陽にも届くような勢いだった。

成否

成功


第1章 第3節

レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)
希うアザラシ

「もきゅもきゅ……ふわあ……いいお日様っきゅ〜……」

 ひんやりクールなソーダキャンディの洞窟を離れ、今度はシュガーハーバーを訪れたレーゲン&グリュック。
日差しで溶けていくように、少しずつアイスクリーム頭痛も和らいでいく。

遠くに海で泳ぐ人の姿も見えるが、もう少し温まっていたい。

「それじゃあ、貝殻集めでも……」

 そう言ってぽすんと砂にその身体を置くレーゲン。この暖かさの中でも砂糖が溶けてベタつくこともなく、触れるものを優しく、温かく包み込んでくれる。

てちてち、砂上を探り、ザクザク、ヒレで砂を掘ったなら。
そこにあったのは、小麦色の貝殻? 否。

「……うきゅ!この貝殻クッキーでできてるっきゅ!」

試しにそのまま齧りついてみる。砂が余計な湿気を吸ってくれたのか、サクッと美味しい。

「まさか……まさか……!?」

ピンクの二枚貝は、どこにもヒビの入っていない美しいマカロン。
蛤のように立派な、大判どらやき。
極めつけの大物は、サクフワメロンパンに、クリームたっぷりマリトッツォだ。
砂に埋まる魅力的な宝に、レーゲンは一層目を輝かせた。

「酒池肉林ならぬ、甘砂菓浜っきゅー!!」

その身体の特性故か、いくら食べても太らない身体のレーゲン。だから見つけたものはすぐ食べる。うん、美味しい!

 そうやってはしゃぐ彼の姿を見守るように、グリュックはそっとそこに座っていて。
レーゲンの宝探しは、まだまだ続く。

成否

成功


第1章 第4節

天閖 紫紡(p3p009821)
要黙美舞姫(黙ってれば美人)

「夏だ! 海だ~! ティシエール街だ~!」

 つい先日、街中で行われたレイニードロップ集め。その時から紫紡は、何度もこの街を訪れていたのだが……待ちに待ったティエール街の海開きに、歓喜の声を上げる。

水着、果実酒を仕込むあの大きな瓶、そして西瓜。装備はバッチリだ。この街に魅力的なものは色々あるけれど、何を置いてもまずはあの、シュワシュワ爽快の海へ。

「乗り込め〜!!」

勢いよく、飛び込んでいく。

 海をひとしきり楽しんだなら、瓶にさらさら、甘い砂を流し込んでいく。その中に交じる色とりどりの金平糖が、その目を楽しませてくれる。
しかも持ち帰れば美味しいおやつになる。一度で何度も美味しいのだ!

 さらに、えいっ! と、遊ぶ間にキンッキンに冷やしておいた西瓜を切り分けて、中をキレイにくり抜く。
中に何を入れるのか? それは勿論。
くり抜いたスイカの中身、そして海から掬い上げたキラキラのフルーツポンチ。此等が組み合わさったなら。

「えっへへ、理想のフルーツポンチの完成~!」

弾ける炭酸、噛み締めた果実から染み出る甘い味。
夏の始まりを、舌で存分に感じ取る。この夏最初の思い出だ。

 ふと遠くから涼しい風を感じて振り向けば、遠くに見えるのは青く光る洞窟。緑色の猫がそこに駆け込んでいくのが見えた気がした。

「……次はあそこにも行ってみよっと!」

そう決心してから、更に一匙、夏を味わった。
夏の思い出は、これからも生まれるのだ。

成否

成功


第1章 第5節

エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト

「これは……素晴らしい……!」

 エッダが今目にしているのは、キラキラと輝くシュガーハーバー。
既に水着にまで着替えている彼女も、全身で夏を味わう準備ができている。

彼女の視界には、泳ぎながら、或いは一休みしつつフルーツポンチを食す者が多いが……。

「チチチ、このまま食べるのはシロートであります。この海には……無限のポテンシャルがある!!」

クワッと目を開いてエッダが取り出したのは……透明な水?
否、一度ボトルを開けたなら、そこに香るは独特の匂い。そう、オトナには欠かせない命の水だ。

海の家で借りたコップには、既にフルーツポンチが入っている。
そこに何フィンガーか、ヴォトカを注ぎこんだなら。

「アルコールパンチ、完成であります!!」

 そしてシュガーハーバーといえば忘れてはいけないのが、砂に埋まる小さくてカリカリの金平糖。これを何に使うかといえば。

「果実酒に……ドーン!!!」

そのまま飲んでも美味しい果実酒に、甘さとシュワシュワの刺激が増す。それをグイッと飲んだなら。

「はああ美味しい……一生ここに住むであります……」

 ティエールは子供も喜ぶお菓子の街だが、酒呑みにも嬉しい大人の街でもあるようだ。
少なくとも今ここにいる、至上の喜びでグラスを傾ける彼女の姿を見たならば、それを疑う者などいないだろう。

成否

成功


第1章 第6節

エマ(p3p000257)
こそどろ

「おお? ……おおー!!」

 先程からずっとペタペタと、青く輝く洞窟を触って回っているのはエマだ。触るとひんやり冷たく、爽やかな香りが間近に感じられる。話には聞いていたとはいえ、このティエール街を包む不思議な魔法にはただただ驚かされるばかりだ。
壁面を削り取ってみればシャリシャリとした氷菓が本当に出てくる……とあれば、味見せずにはいられまい。

「あむっ! んんーっ、ちべたいれす……!」

幻想の道端でも、落ちた食べ物を拾っては食べていた彼女だが、ここのお菓子は不思議な魔法に守られている。何があっても汚れる事はないし、お腹を壊す事もないのだ。

「ま、今更岩肌を食べたくらいでおなかを壊したりは……しないでしょう! えひぇひぇ!」

それにしても、洞窟が削りすぎて無くなったり、崩れ落ちることは無いのだろうか?

「心配ニハ及バナイ。美味ナルモノヲ皆ト分カチアイ楽シム民ガ居ル限リ、コノ魔法ハ消エナイノダ」

 エマのそんな疑問には、洞窟の住民でティエールの守護者たるゴーレムが、そう答えてくれた。
細かい事はよく分からないが、ティエールの現地民よりもずっと長い時を生きているという彼が言うならば、きっとその通りなのだろう。

「何にせよ……ありがたいです。おいしい美味しい……」

原理を知らずとも構わない。
食を楽しむ心と感謝の気持ちが、更にティエールを包む甘美な魔法の原動力になるのだ。

成否

成功


第1章 第7節

イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色

「お菓子の海か……もう毎度のことだけど、それでもやっぱり不思議な光景だ」

 何度来てもこの街の神秘には驚かされるばかりだと、イズマは常々思う。しかし、こうも思うのだ。街の様々な場所で楽しい出来事を味わえるのは、本当にありがたいことだ、と。

 さて、今回のイズマの目的は海。安全に泳いでいけるよう、準備体操も忘れずに行って。いざ、出発!

 浜辺近く、もとい浅瀬では、このシュガーハーバーが『フルーツポンチの海』とも呼ばれる通り、コロコロ、ダイス状にカットされたフルーツが転がっていたが、遠く、深い海になるにつれて、飴細工の珊瑚礁が広がり、クラゲのように漂うグミが、カラフルに海を彩っている。
息継ぎついでに周りを見れば、僅かに海上に頭を出している小島がそこにあった。よくよく見れば、そこにはフジツボのようにびっしりと、中央が丸く窪むおかきがへばりついていた。

水平線は、遥か先。
先日ティエールに迷い込んだあのサメも、どれだけ遠くから来てしまったのか、まるで検討もつかない。
興味は尽きない所だが、そろそろ引き返そう。

 ふかふかの砂の上で、イズマは収穫を味わった。
おかきはあの環境の中でも驚くほど香ばしさを保ち、グミのモチモチとした歯応えは、噛むほどに果汁の味を口の中で広げてくれる。

「どれも美味しいな。暑い夏をこうやって楽しめるのは最高だ」

キラキラ、珊瑚の飴を日に透かしてみる。この街は本当に、美味しくて美しい。

成否

成功


第1章 第8節

クロバ・フユツキ(p3p000145)
深緑の守護者

ヒソヒソ、コソコソ、街の住人の囁き声。

あのお兄ちゃん、暑くないのかな。
日焼けするのが嫌なんじゃない?

 何故なら今の彼……クロバは、全ての太陽光を吸い込む程に黒いロングコートスタイル。半袖のものや、長袖だとしてもかなり薄手の生地を纏うものが多い夏のティエール街では、彼の姿は際立って目立つだろう。

そんなクロバが、吸い寄せられるようにたどり着いたのはソーダキャンディの洞窟。
食べられる洞窟とは、境界にも不思議な世界があったものだ。

 一歩踏み込むだけで、外の蒸し暑い空気が嘘のように冷涼で爽やかな風へと変わっていき、求めていた快適な環境に彼もほうと息を吐いた。一見平気な顔をしている彼でも実は暑さは苦手なのだ。

なんの気無しに壁に手を付いてみれば、既に他の誰かが削っていたのだろう、アイスキャンディーの欠片がパキリとその手に収まる。そっとそれを口に運べば、程よい甘みと程よい酸味が、冷たさと共に僅かな刺激を持って口中を満たしていく。

「涼しい場所で、甘くて冷たい物を食いながら暑さを忘れるって、かなり贅沢だよな……暑いの苦手だからすごく助かる」

それにしても、この洞窟には外部との温度差が大きい都合上、上着を羽織っている者も幾らか見受けられるが、やはりクロバのように長く黒く重いコートを着ている者は居なかった。

「ロングコートスタイル、流石に見直すべきか……」

こうしてクロバにも一つ、夏の課題が生まれたのだった。

成否

成功


第1章 第9節

アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切

 アーマデルが訪れたのは、この所整備されたばかりのソーダキャンディの洞窟。海にまだ殆ど馴染みのない彼だ、海のイメージを混線させたくない。故に敢えて、今回シュガーハーバーは遠慮したのだ。

「やっぱフルポンにアイス入れると美味しい〜」

と小麦色の肌の娘が遠くで笑う。自分もそれをやってみようと、アイスキャンディーを探す。はたと、目があったのは。

「ドウシタ客人」
「……アイスキャンディー……ゴーレム……?」

洞窟の壁と同じく、青白く輝くゴーレムがアーマデルの前に現れた。思わず、周りの風景と彼を見比べる。

「……皆が食べてるのはお前じゃないよな? 壁だよな?」
「我ニ齧リツイタラ怒ルゾ」
「でも壁削って大丈夫なのか、お前の住居でもあるのだろう?」
「心配スルナ。コノ街デ食サレタモノハヤガテ、ヨリ美味シク、美シク生マレカワル。ソレガ魔女様ガコノ街ニカケタ魔法ナノダカラ」

その言葉に従い、アーマデルも洞窟の一部をナイフで削り取り、食べてみる。シュワシュワ甘酸っぱい氷菓は、今の季節には至高の一口だ。

それにしても不思議な光景だ。
この街の殆ど全ては、飲食物、それも贅沢品・嗜好品に分類される菓子で出来ている。

「興味ガアルナラ、我ノ知ル、コノ街ノ歴史ヲ話ソウカ」

ゴーレムの提案に、アーマデルは彼の側に腰を下ろす事で応える。それを受け、彼は静かに語り始めた。
彼等の創造主たる『お菓子の魔女』、そして『ティエール』なる娘の物語を。

成否

成功


第1章 第10節

 かくして、陽光煌めくフルーツポンチの海、もしくは神秘的に輝く洞窟での一日が過ぎていくのであった。

この先も、ティエールでは季節の美味が続々と見出されることだろう。

ティエールの住民もここを訪れる客人も、四季折々の味にこれからも、感謝と感動を覚えるに違いあるまい。

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