PandoraPartyProject

シナリオ詳細

あなたはわたし

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●いつものローレット
「ここから少し離れた所にある、霧に包まれた廃都から回収してほしいものがある。という事なのです」
 ローレットのロビーで、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)がいつものように依頼の説明をしてくれている。
 内容は単純で、とある貴族がかつて暮らしていた廃都にあった自分の家から一冊の日誌を回収してほしいというものだった。
「まぁ、よくある依頼なのですけど」
 どー……と、ユーリカは言葉に詰まった。
 流石にそんなことを言われたら聞くしかない、依頼を受ける君達がユーリカに詳しく話を聞かせて暮れ、と聞く。
「……ううー、お化けが出るらしいのです。自分そっくりの」
 どういうことかと話を聞けば廃都は崩壊した時から霧がかかった空間となっており、そこに踏み込んだものは脱出する前に霧に閉じ込められるという。
「負けると自分に成り代わられちゃう、とかそんな怖い話があるのです」
 なら負けなければいいのでは、とロビーで誰かがそういった。
「勝たせてくれない、のです。同じことを同じことで潰してくる……らしいのです」
 自分の行動を相手は全く同じ行動をぶつけて潰してくる。
 つまりは自分の姿の存在には絶対に勝てないが、他の人の姿の存在にならば勝つことができる、という事だろうか。
 なんでそんなに詳しいのか、というのはおいておいて、兎にも角にも依頼自体は何とか達成は出来そうである。
 自分と全く同じ存在、正体までは掴めていないがこれを面白いと感じるか、怖いと感じるかは人それぞれだろう。

●霧のかかる廃都にて
 依頼にあった屋敷はすぐに見つかり、日誌も話通りの場所に存在した。
 無事に回収するものを回収し、屋敷を後にして外に出れば、ふと違和感に気が付く。

 霧が深い。

 先ほどまではある程度先まで見通せていたというのに、今は10m先を見通すのが必至なレベルで深く深く、霧は白く視界を閉ざしている。

 くすくすくす。

 声が聞こえた。
 誰かの声だ。ここにいる誰かの声で、笑い声が聞こえた。

 わたしは あなた。
 あなたは わたし。
 わたしは わたし。

 声と共に霧が形をとる。
 気味が悪いくらいに精巧で、そっくりで、まるで鏡を見ているかのように目の前に君達と全く同じ姿の存在が現れた。
 それと同時に確信した。
 この霧そのものがこの影だと。
 この領域に取り込まれた以上、これを打ち払わねば脱出は出来ぬ、と。
 いや、この霧に敗北してしまっても脱出は出来るだろう。
 それは、自分なのかはわからないが。
 だが今はこれを打ち払うしかないだろう。
 君達は思い思いに武器を構え、迫る自分達と戦う構えを取る。

GMコメント

 ドッペルゲンガー、皆様は信じますでしょうか。
 自分と同じ姿の存在を見てしまえば、死ぬとかいう奴です。実際私は見たことないですが、どうもトビネコです。
 今回は随分と不可思議なシナリオを用意させていただきました。

 オープニングの時点で既に依頼の品の回収は完了している為、後は無事に廃都を脱出してローレットに帰るだけなのですが、皆様を阻む霧と皆様を模倣した存在が立ちはだかっています。
 なので、この霧から生まれた存在を討ち果たせば無事に脱出は可能でしょう。

 しかし話に合った通り、自分と全く同じ姿をした存在は自分の行動を全て無効化します。
 自分自身に挑めば終わりのない戦いとなってしまうことは必至ですので、ご注意ください。


●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●状況について
 現在皆さまは、とある廃都で自分達と全く同じ姿をした一段と遭遇しています。
 正体は不明ですが、霧が形を取った存在のようで倒せばこれらは霧散して消えます。

 戦う場所は遮蔽物がそこそこある広場で、正面から遭遇した状態になります。
 ある程度移動すれば多くの建物が存在する住宅街まで移動できますが、この状態ではいくらは知っても走っても霧の外に抜け出すことは出来ませず、不思議と同じ場所に戻ってきてしまいます。

●自分達の模倣体について
 参加者の皆さまと同じ人数が存在しており、装備やスキルは全く同じものを所持しています。
 ある程度装備やスキルを皆さまの装備で調整することもできますが、この存在自体が独自に持っている攻撃方法もあるようなので、装備やスキルを一切なし、という状態で挑んだ場合相手側が有利になってしまう点をご注意ください。
 
 自分と同じ姿をした存在と戦う場合、全く同じ行動をもって行動を潰し、無効化してくるため自分自身に対しては絶対に勝つことができない、という嫌らしい相手になっています。
 その為、自分と異なる相手と戦うか、一人で自分と戦わないという事が推奨されています。

 また、この模倣体の能力値は模倣された皆様と全く同じというわけではなく、独自の能力を有している為、ステータスやレベルで上回っているから有利というわけにもならず、下回っているからその人の模倣体には勝てないという事にはなりません。
 油断せず、また心配せず挑んでください。 
 
 依頼と状況の説明は以上となります。
 皆さまが無事皆さまのまま帰ってこれることを、祈っております。

  • あなたはわたし完了
  • GM名トビネコ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年06月23日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ガルズ(p3p000218)
ベイグラント
オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
優しき水竜を想う
ヴェノム・カーネイジ(p3p000285)
大悪食
サイズ(p3p000319)
妖精■■として
ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)
穢翼の死神
ミセリア・バラル(p3p001161)
乱れ撃ち
エスラ・イリエ(p3p002722)
牙付きの魔女
ミラーカ・マギノ(p3p005124)
森よりの刺客

リプレイ


 くすくすくす。

 笑い声が聞こえる。
 目の前に現れた自分達でもない、かといって誰かが笑ったわけでもない。
 周囲の霧があざ笑うように、身体にまとわりつく。
「鬱陶しい霧ね、これじゃあ遠くも見れないじゃない」
 気味の悪い霧を払いながら『ツンデレ魔女』ミラーカ・マギノ(p3p005124)は霧が形を取った自分達を見据えた。
「ともあれ、これを預けておくわ」
「む、了解した。それにしても話に聞いていた通りだな、予定通りツーマンセルで行くぞ」
 『ベイグラント』ガルズ(p3p000218)はミラーカから猫の使い魔を受け取りながら自身の被る兜を脱ぎ捨てる。
 敵味方を判別するための行動として装備を脱ぐが、相手は一切同じ行動はとらない。
 完全にこちらと同じ行動をするわけではないようだ、言葉も笑ってばかりである以上用意した合言葉や判別方法も不要だったかもしれない。
 とはいえ、備えておいたことは無駄にはなってはいない。安心して戦術も立てられたというものだ。
「ギフトも模倣されないみたいっすね」
 世界にただ一つ、彼らにのみ与えられたギフトも彼らは模倣は出来ないようだ。
 『双色の血玉髄』ヴェノム・カーネイジ(p3p000285)は翼を輝かせた『木漏れ日妖精』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)の様子を見てそう判断した。
 相手のオデットの翼は特に光る様子は見えてはいない。
「じゃあここまですることはなかったって事?」
 自分の頬に切り傷を作っていた『隠名の妖精鎌』サイズ(p3p000319)は少し不満げな様子を見せた。
「見た目で判別がつきづらい事は確かなんだ。意味はあるさ」
 『乱れ撃ち』ミセリア・バラル(p3p001161)がそう言い捨てながら銃器を構える。
「ほんと、あちらは鏡に映ってるのね」
 持ち込んだ鏡で、自身と相手を映し比べれば、自分は映らず、相手ははっきりと映っている。
 このギフト自体嫌いで仕方なかったのだが、こんなところで役に立つ事があるとは思ってもみなかった。
「ともあれ、奴らを蹴散らして突破するぞ」
 作戦通り、イレギュラーズは二人一組に分かれると散り散りに戦闘を開始する。
 それを見て映し出された彼らもまた、一斉に行動を開始した。


「さて……」
 こちらが分かれた以上、相手はどうでるか。
 重盾を構えながら相手の様子を見たガルズはもう一人の自分と、もう一人のティアが追ってきていることを確認した。
 どうやらこの霧から生まれた相手は、同じ姿の相手を追って動くようだ。
「これはわかりやすいね」
『同じ相手の狙う性質なんだろうな』
「厄介だけどしっかり倒さないとね」
 ティアの中に存在する神様と会話しながら様子を確認する。
 敵の意識は前線に立つガルズに向いた、こればかりは相手も同じ相手ばかりを狙うわけでもないようだ。
「じゃあまずは……」
 バチバチと帯電させた雷撃をティアは戦場を迸る様に走らせる。
 その様子を見たもう一人のティアも同様に電撃を走らせた。
『ダメだ、それは……!』
「ぐあっ!?」
 ティアの中の神様がいうよりも早く相手の電撃は戦場を走り、その中間点にいた二人のガルズを貫く。
「しまった……ガルズさん、大丈夫…?」
 前線に味方が出ている以上、ガルズが斜線に入る為にティアは雷撃を中止、遠距離術式をもう一人のガルズに叩き込む。
「だ、大丈夫だ……」
 雷撃が奔り、眩暈のする身体を支えながら正面の自分を見据える。
 防御に集中していたおかげで被害は最小限に抑えられたものの、ダメージを受けたことに変わりはない。
 幸いだったのは相手も同じようにダメージを受けていたことだ、バッシュを仕掛けようにも目の前の相手は同じように迎撃の構えを見せ、向こうかを行う姿勢を見せる。
「チッ、兎にも角にもこいつを倒してくれねぇとか……」
 普段なら自分が倒れても、残りのティアが後衛を倒せばいいのだが、もう一人のティアにティアをぶつけても決着はつかない。
「もうちょっと纏まるべきだったか……?」
 少しばかり戦術が悪い方向に傾いたかと思いはするも、今の状況を乗り切るしかない。
 盾を構え直し、なんとしてでも生き残ることを意識してガルスは気を引き締めた。


「大丈夫かな……」
 離れた場所で響く戦闘の音。
 オデットはその音を聞きながら目の前の相手に意識を向ける。
 自分と、サイズと同じ姿をした相手。
 だが、もう一人のオデットは羽を光らせていないし、もう一人のサイズは顔に傷もついていない。
「大丈夫……って邪魔……!!」
 鎌を振りかぶり、もう一人のオデットを狙う為にサイズが突破を図るが、もう一人の自分が正面に飛び出し同じように鎌をぶつけ、互いに武器が弾け合う。
「サイズ……!」
 その隙を目がけ、オデットが魔弾を撃ち込む。
 攻撃を受け、隙の生まれていたもう一人のサイズに遠慮なく魔弾が叩き込まれていく。
「っと、相手も黙ってるわけじゃないか」
 放たれる魔弾を受けながら、サイズは鎌を構えなおす。
「今だ!」
 最初から自身の分身ではなく、もう一人のオデットを狙っていたサイズは自身の分身を振り切り、奥へ駆ける。
 距離を詰める事に意識を割く以上、集中してからの一撃を狙う余裕はないが逆に言えば相手を一気に倒すという選択を取ったのは間違いではなかった。
「貰ったぁ!」
 振りかぶった鎌を相手の背に添わせるようにし、一気に引き抜く。
 ザンッ、という確かな手ごたえをと共にもう一人のオデットの胴はサイズの本体によって刈り取られた。
「……あれ、血は吸えないのか」
 鎌の一撃により、刈り取られたもう一人のオデットはその魔で消えるように霧散していく。
 こればかりは期待していたところもあったが、元々が霧だったとすれば仕方ない。
 少し落胆したサイズだったが、まだ戦いは終わっていないことを思い出す。
「こっちは……大丈夫」
 サイズが前線を突破した以上、もう一人のサイズはどう動くかといえば同じようにオデットへと走っていた。
 元となったサイズと近い思考をしたのか。それとも倒しやすいと判断したのかはわからないが、自分と同じじゃない以上戦いようはある。
 だからこそ、強気な面を見せながらオデットは後方へと翼をはためかせながら魔弾による弾幕を展開した。
 放たれる弾丸が、もう一人のサイズを撃ち抜く。
「……まだ」
 撃ち抜かれた部分が霧散し、身体に穴が開いてももう一人のサイズは止まらずその鎌を大きく構える。
 後ろに下がりながら攻撃するものと、正面に突き進むものではその移動力の差には圧倒的に差が生まれる。
 奥を見ればサイズが自分の分身を斬り捨てている姿が見えた。
 すぐに彼が戻ってくると判断したオデットは防御することに意識を集中し、鎌の一撃をいなそうとする。
「くっ……」
 振り下ろされた一撃を回避することは出来なかったが、被害は最小限。
 そして、相手はこちらに攻撃したことで足が止まった。
「能力は同じ……というわけじゃないのね」
 後ろで同じように鎌を振るったサイズのものよりもその威力は低い。
 華奢な体が鎌によって傷つけられるが、直ぐにオデットは魔力の火花を放ちもう一人のサイズを炎で包む。
 決着はついた。燃え上がり狼狽するもう一人のサイズは、後ろからかけてきたサイズの一刀で両断された。
「……ふぅ」
 勝った。一息ついたオデットは、自身の傷を癒す為に詠唱を開始した。
「やっぱり所詮霧の魔物ってことかな。でもこれで終わったなら他の所に行かないと」
「そうね。近くの所からいきましょう」
 自身の分身を片づけたオデットとサイズは互いに頷き、近くで戦闘を続ける仲間の元へと急いだ。



「さて、どうだ?」
「ええ、ちゃんと来ているわね」
 仲間と別れて行動していたミセリアとミラーカは自分の同じ姿の相手が二人追いかけてきているのを確認した。
 背中合わせになりながらその様子を確認しながら、二人は互いに獲物を構え、術式を詠唱する。
「ふふん、悪いけど一気にカタを付けさせてもらいましょうか」
「ああ? ならどっちが先に倒せるか、だな?」
 ふふ、と二人は互いに笑みを浮かべる。
 自身が自身の分身を倒せないというのならば、二手に分かれて別々のものを一気に倒してしまった方がいい。
 そう考えた二人は、勝負と称して互いに発破をかけるとミラーカは一気に駆け出した。
「さて、じゃああのヤローを潰すか」
 残ったミセリアはライフルを構えながら、周囲の崩れた建物の影へと身を潜め二人のミラーカの様子を確認する。
 距離を詰めたミラーカは既に自分と戦闘を開始しているようで、どちらに対してもすぐに射撃を打ち込める位置へ移動した後は、もう一人のミラーカに銃を向け、狙いすました一撃を打ち込む。
 放たれた一射が胴を撃ち抜き、相手はその威力に大きく仰け反るが撃ち抜かれた場所は霧と霧散していく。
「……流石にあれだけ違いがあれば偽物かどうかはする分かるな」
 そもそも作りが人とはまるで違う。それだけで相手と自分を見間違えることなどないという事は即座に判断できた。
「っと!」
 反撃といわんばかりに、空中に生み出された剣が投擲されミセリアの居た場所を遮蔽物ごと貫いた。
 幸いにも咄嗟に判断を回し、身をかわすことが出来たがミラーカと同じものを使うだけあってなかなかに火力も手ごわい。
「……なら、こうするか」
 ミセリアは、その銃口を本物のミラーカへと向けた。

「さぁ、覚悟しなさい!」
 至近距離まで一気に詰めたミラーカは即座に術式を詠唱、低威力ではあるが簡易的な術式を炸裂させる。
 威力は低いと言えども、純粋に高い魔力を持つミラーカの一撃はもう一人のミセリアに大きな痛手を与えていた。
「とはいえ、流石に受けてばっかりじゃ……」
 相手は反撃に入ってくる、ミラーカはそう思ったがどうにも照準がおかしい。
 狙いは自分ではない、別の誰か。
「こんなところで他の相手を狙ってるなんて!」
 甘い、といわんばかりに巨大な剣を作り出してもう一人のミセリアが自身と関係ない場所へ銃撃を行った直後に、投擲した剣がミセリアを切り裂き、霧散させる。
 同時に、自身の後方で二つの銃弾がぶつかり合い、弾け飛ぶ音が響く。
「ちょっと、何やってるのよ!」
 離れた場所で、こちらを見て勝ち誇った笑みを浮かべるミセリアの姿があった。
 戦いの最中だというのに、こちらを見て援護射撃を行い隙を作り出したのだ。
「もう、後で奢ってもらうんだから!」
 今度はこちらが手を貸す番。あとで奢ってもらう約束で後悔させてやろうと考えながらも、ミラーカはミセリアの援護に走り出す。


 住宅地の一角で、二人のヴェノムがぶつかり合っていた。
「ちっ、めんどくさいっすねぇ!」
 体勢を崩すことを狙った一撃を、全く同じ攻撃をもってぶつけられ、互いに弾き合う。
 無為な攻撃だとはわかっているが、自身が攻撃をして相手を足止めしなければ自身の分身は後方で自分を援護するエスラの方へと行きかねない。 
 この場でもって、足止めを続けている状態でもう一人のエスラが同じように攻撃をしてくるのを抑えながらである以上若干手が足りていないのは否めない。
「まだっすか!」
「もう、ちょっと……!」
 高い魔力をもって遠距離術式を叩き込む。
 並の相手や、他の分身体であったならば容易に吹き飛ばせていたと思ったが、もう一人のヴェノム自身が防御に特化した立ち回りをする為中々押し切れていない。
「あと少しなんだけど……」
 同じようにもう一人のエスラが遠距離術式を発動させ、ヴェノムへと叩き込む。
 急所を外すように、最小限のダメージでそれを受け流し、続くもう一人の自分の突破を止める。
「ちぃっ……一発入れられれば殴っちまえば早いんすけど」
 相手の体勢さえ崩せてしまえば、強力な一撃を叩き込めるが自分自身から仕掛ける攻撃を無効化してくるというのは非常にやりづらい。
 が、そんなやり取りを続けていると、銃声が一つ戦場に響き渡った。
「……今っす!」
 離れた住宅地の上、ライフルを構えて狙撃体制を取っていたミセリアの姿が見えた。
 一撃が足を穿ち、もう一人の自分の体勢が崩れる。
 完全にチャンスが生まれた。攻撃を無効化するとは言えども、ここまで体勢が崩れればそれを行う事は物理的に不可能だ。
 ヴェノムが盾で強引にぶつかり、もう一人の自分の体勢を完全に崩しさり大地に叩き付けた所に触腕が奔り、強烈な一撃が撃ち込まれる。
「エスラせんぱーい!」
「ええ!」
 一歩踏み込んだエスラが、自身の膨大な魔力を純粋な破壊力として倒れ込んだもう一人のヴェノムへと叩き込む。
 その威力は大地を抉り、跡形残らずもう一人のヴェノムを消し飛ばす。
「うへ、敵とはいえちょっと容赦ないっすね」
 敵とはいえ同じ姿の自分が吹き飛ばされるのを見て苦笑いを浮かべるが、一気に状況は傾いた。
「ミラーカ先輩もやってますねぇ。んじゃあ一気に!」
 もう一人のエスラを見やれば、離れた場所でミラーカの放った剣がもう一人のエスラへと叩きつけられている。
 駆け寄った勢いで盾を叩きつけ、もう一人のエスラを文字通り引き倒すと再び触腕を上段から振り下ろすように叩き付ける。
「弱肉強食。まぁ完全再現じゃねぇってことで相手が悪かったっすね」
 一撃を受け、倒れ込むもう一人のエスラに突きつけた銃のトリガーをヴェノムは引いた。
「あ、ところで先輩方。肉ください」
「知らないわよそんなの!」
 まったく意味のないやり取りに、即座にミラーカが反応する。
 言いたかっただけなんじゃないかと突っ込まれれば、彼女は「知らないわよ!」とそっぽを向いたがまんざらでもなさそうだ。



 戦場で響く音がどんどんと少なくなっていく。
 他の場所ではすでに決着がついたのだろう、勝ったのはどちらかはわからないが状況も次第に動いてくるだろう。
「だいぶ手間取ったが……」
 目の前で盾を構えるもう一人のガルズを見て、ガルズは相手も疲弊したことを再確認する。
 自分からの攻撃はなかなか通らないが、ティアの攻撃を何度も受け続ければ相手も疲弊するというものだ。
「もう少しかな」
『ああ、一気に決めよう』
 ティアの中の神様が相手の様子を見て一気に勝負を決めることを促す。
「じゃあ」
『これで終わりだよ』
 この地で倒れ、死して逝ったであろう者たちの怨念が形となり、矢を生成する。
 ティアがそれを一瞥し、手を翻せば怨念の矢がもう一人のガルズへと立て続けに打ち込まれていく。
 完全にトドメとはならないが、打ち込まれた怨念はそう簡単には終わらない。
 もう一人のガルズの身体を蝕み、呪い、削り。その四肢を徐々に霧散させていく。
「……よし、後はこちらの仕事だな」
『ああ、申し訳ないね』
「ちょっと、余力が尽きました」
 ここに来るまでに強力な攻撃を繰り返していたティアはだいぶ疲弊したのだろう、座り込んで少し休み始めた。
「おおおおっ!」
 重盾を構え、ガルズは真っ直ぐ突破を図る。
 もう一人のティアが放つ攻撃を盾で弾き、至近に潜り込むとその盾を全力で押し込み叩き付ける。
 重い一撃が叩き込まれ、もう一人のティアは大きく仰け反った。
「ん?」
 もう数撃だろうと踏んだところで、周囲に小さな影が見える。
 光る翼と、大きな鎌の影。
 なるほどと、それを確認したガルズは頷いた。
「ゴリラの好物は!」
「妖精の血!」
「バナナね!」
 片方意味があるじゃないかとは思ったが、即座に返事をすることに意味がある。
 であれば後は気にせず仕掛けるのみ。
「こいつで!」
 ガルズが再び立てを構え、駆けだす。
 同時に霧の中から放たれた魔弾が相手を貫き、霧の中から現れた鎌が反撃に転じようとした相手の腕を刈り飛ばす。
「終わりだ!」
 そして叩き込まれる渾身の一撃。
 吹き飛ばされたもう一人のティアは、地上へ叩きつけられる前に霧となって消えていく。

 くすくすくす。
 わたしはあなた。
 あなたになりたい。
 なれなかった、かなしい。

 最後の分身が消えると同時に霧から声が聞こえてきた。
 一体何だというのか、だが次第に霧は晴れていく。
「……ん?」
 気が付けば、霧の中で戦っていた8人は霧に包まれた街の外にいた。
 休んでいたティアは座ったままだし、離れた場所にいた者達も気が付けば同じ場所にいる。
「何が起きたんだ?」
「わからないけど……」
 何かが起きたことは間違いない。
 幸い依頼目的の日誌は彼らの手の中にあった。
「また何か起きそうだけど」
「まぁ、今は戻るっす」
 ともあれ、無事に脱出できたのならば、後は帰るだけだろう。
「この廃都……何、呪いでもかかっているのかしら」
 ふと、手元の日誌を見たエスラは気になって日誌をめくってみた。
 内容は当たり障りのない、貴族が記したもの。
 この霧と都市について気になる点は全く見当たらない。
「……え?」
 少し肩を落としかけたエスラだったが、ふと一つのページを見て手が止まる。

 また会おうね。
 ガルズ、サイズ、オデット、ヴェノム、ティア、ミセリア、ミラーカ、そしてエスラ。

 そう記されたページには、この場にいる8人の名前がしっかりと記されていた。
 

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

くすくすくす。
あなたはわたし?
それともわたしがあなた?
もしかしてわたしがあなたであなたがわたしでわたしはわたしであなたがあなたで

はいすみません、調子に乗りましたトビネコです。
依頼に関して、皆様は無事に依頼の日誌を持ち帰り、依頼を完了することが出来ました。
また何かが起きた時、依頼がローレットに回るかもしれません。
その時はまた依頼を手に取っていただければ幸いです。

それでは皆様、お疲れ様でした。

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