PandoraPartyProject

シナリオ詳細

>>特異運命病院へようこそ!<<

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●頭大丈夫ですか?(診察)
 此処は大病院、『特異運命病院』。
 ひっきりなしに止まない電話、それから沢山運ばれてくる救急の患者、骨折してたりどこか悪かったりああもう大変!

 あなたは、一枚のカードを握っていた。

 そのカードには、『医者』と書かれているかもしれないし、『患者』と書かれているかもしれないし、はたまた『ナース』だの『受付』だの『警備員』だの書かれているだろう。
 そう。あなたはこの病院に関わる一人なのだ。
 この大病院に働く一人かもしれないし、通う一人かもしれない。
 遠くから見覚えのあるような医療クラークの一人が見えてきた。
「ちょっと、先生! もう患者さん来てるんですからね! どこほっつき歩いてるんですか」
 手首を捕まれーーよくよく見てみれば白衣を着ていたーー広い院内をずんずんと突き進んでいく。
 よくよく聞いてみれば胸元にはじゃらじゃらと名札が揺れる音が、ボールペンがぶつかり合う音がしているような気がする。
 そうだ。自分はここに働いていたのだ。
 確信に近い感動。
 そうだ。自分には患者がいる。今日も。きっと昨日も。それから、明日も。
 待っている人のために、今日も行かなくてはーーああ、忙しい!

●先生!
「先生って呼ばれるのは、慣れないような心地がするんじゃないかな」
「研修医さんかも。いろんなことをみて学ぶのよ!」
 カストルとポルックス、双子星は笑顔を煌めかせながら振り向いた。
 カストルの服の上には白衣、ポルックスは装いを所謂ナースのコスプレにしていた。
「ほんとうに働いてる人はこんなのじゃないんだって、カストル!」
「おや、そうなんだ。スカートは大変だろうから、仕方ないけどね」
 果ての迷宮第十層に位置する異空間、境界世界――図書館のように見える其処には、いくつもの物語が助けての声をあげていた。
 それはこの物語とて同じ。医師として働くあなたが求められている。
「戦わなくても良い人助けって、きっとあなたにとっても幸せじゃないかしら、特異運命座標(イレギュラーズ)!」
「それとも、武器を持って、肉を絶って――そうやって、傷付ける人助けの方が好きなのかい、特異運命座標(イレギュラーズ)?」
 『カストルったら、意地悪言わなくても良いじゃない!』『ポルックスが優しすぎるだけだよ』と小さく続く押し問答にカストルがひとつ咳払い。ポルックスはピンと背を伸ばして。
「……ともかく! 君を待っている人がいるのは確かだからね」
「さあ、行ってきて。ドクター!」

NMコメント

 一度はうちの子がお医者さんだったら、って妄想したことあると思うんですよね(言い訳)
 染です。ラリーはなかなか案配が難しいのですが、折角思い浮かんだので書いてみました。

●依頼内容
 病院で働  or 病院に携わる

●特異運命病院って?
 なんか大規模な病院です。病院と言ったら特異運命病院。いいね?
 どんな科も揃っています。夜間救急も、外科も、小児科も!

●できること
 例)・小児科担当医になって小さい子と触れ合う
   ・外科医になってオペを開始してみる
   ・研修医になって色んなことを知ってみる
   ・ナースになって患者さんとコミュニケーションをとる
   ・受付になって色んな人と話す
   ・入院患者になる

 などなど、やりたいことをやってみてください!

●カード
 あなたはこの境界世界に入ったときに、カードを手にして居ます。
 そのカードに記してあったことを、プレイングに教えてください。

 具体的に言うと、プレイングの一行目にはやりたいRPを書いてください!
 ありもしないドクターでも大丈夫です。ゴブリン科とか、海種科とか。

●NPC等
 染の持つ境界案内人、
 ・絢
 ・カナタ
 ・フローラ
 等は呼ばれれば顔を出します。

●サンプルプレイング(絢)
 カード:獣医

 どうしてここに獣医が併設されているのかはわからないけど、大きなびょういん……なんだよね?
 なら、きっとそういうことだよね。と、とりあえず診察を……って、うわあ!?
 い、いぬ……犬……そっと手を伸ばしてみるけど、いぬぱんちされちゃった。おれ、やっぱり犬には嫌われてるのかな……

 以上となります。
 ご参加をお待ちしています、ドクター!

  • >>特異運命病院へようこそ!<<完了
  • NM名
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年07月01日 17時35分
  • 章数1章
  • 総採用数18人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

有栖川 卯月(p3p008551)
お茶会は毎日終わらない!

 人が少ないに越したことはない。苦しむ患者(ひと)がいないのはいいことだから。
 少しだけ落ち着いた病院をせかせかと歩くのは卯月。甘いカールを描いたオレンジブラウンの髪を靡かせて歩く後ろ姿で誰かわかる。
 当たり前をきっちりこなすことができるのは卯月の特徴であり、仲間からも信頼を置かれている点だった。

 バイタルサインチェックは素早く丁寧に、注射や採血は1発で。
 それから、診察はどんな環境であれきっちりまじめにやる。卯月の信条だ。
「ちょっとチクっとするけど、うさぎのぱんちだって思ってね?」
「うん!」
「……はい! うさぎぱんちは痛くなかったかな?」
「うさぎなら許せる!」
 幼い患者とのコミュニケーションは卯月の得意分野だ。えへへ、と笑った患者に微笑み返しながらカルテに目を通す。数値が安定しているようだから、そのうち退院かもしれない。
 早くよくなりますように、と、心の内で呟いた。

「手術明日なんですけど、不安なことはありますか?」
「ちょっとだけ怖いかなあ……麻酔とか」
「あー……でも、明日の麻酔担当は私ですよ! だから怖くない!」
「あはは! 卯月ちゃんなら安心ね」
「ふふ、そうでしょう? 明日、頑張りましょうね!」

 寝不足だって、疲れだって、悲しいことだってある。
 それでも、患者さんの、ご家族のありがとうを聞くために、笑顔を見るためなら、頑張れる。

 だって卯月は白衣の天使(ナース)なのだから。

成否

成功


第1章 第2節

クロバ・フユツキ(p3p000145)

「先生、いい加減その死神っていう異名やめてください」
「えっ」
 多分そろそろ泣くかもしれない。嘘だけど。
 医者として日頃から名医だのなんだの言われてる世界、なのだが。
 朝起きて、ご飯食べて『あ、時間ない』、回診して、手術して、なんか呼び出されて、手術して、寝て
……絵に描いたような充実しすぎた毎日を送っているのが、死神(笑)のクロバだった。お医者さんだもんね。死神はいくないね。
「先生ご飯食べてます?」
「メシ? まぁ3秒で吸えるあれ系のごはんがあれば大丈夫、時間がない医者の味方です」
「今からメシ行きましょうか、カツ丼らへん」
「話聞いてた? ねえ? もしもし?」

 ――嗚呼、不幸なことに今日も緊急の患者が訪れた。
「まぁこの死神と呼ばれた俺に任せておきなさい。
 双刀とも謂われるメス捌きで鮮やかに救って見せよう」
 刀だと ちょっと危ない 気がするな
 勿論、人の命を救うためだし、軽口を叩くのは患者の緊張を解すため。理解しているし信頼しているからこそ、仲間からの扱いは今日も雑を極める。それでいいのか。
 なおその後めちゃくちゃ過労で倒れた。
 慣れるまではひやひやするが、これもまた『死神』先生の常である。命を救うために彼自身が死にかねないのが悪癖とも言えるだろう。

(嗚呼、看護師姿の女性とはかくも美しきかな――ジャージほどじゃないけど)
 うん、やっぱこいつから重傷にすべきだって、思っちゃうんだよね――!

成否

成功


第1章 第3節

マルク・シリング(p3p001309)

「こちら特異運命病院です」
「トンネル工事中の崩落事故、腹部からの出血止まりません!」
「わかりました、受け入れます。
 事故ですね? 申し送りください! バイタルは? ……これは緊急手術が必要ですね。すぐ準備します」
 サイレンも、早鐘も、聞き慣れてしまった。
 荒くなる呼吸に酸素を回して、冷静を装うことしかできない。
「他の先生は…みんな手が塞がってるか。判った。僕が執刀する」
「はい!」
「3番手術室空いてるよね!? 麻酔医とオペ看、誰か連れてきて!」
「わかりました!」
 ――多分、働き方としては正所謂ブラックだ。
(それでも、ひとの命を救える機会と施設が、たしかに此処にはあるから)
 だから、ここに居る。ここに居る価値は、それだけで、ある。
「内臓出血の疑いが強い、開腹して止血します。皆、出血部位を見逃さないで」
 こぽこぽと溢れ出す血液。青いゴムの手袋が赤く染まる。
 焦り。苛立ち。困惑。押し殺して、冷静に。
 今自分がぶつけるべきは、正しき医療の技のみだ。
(自分でもわかってる。僕は天才外科医なんかじゃない、どこにでもいる凡庸な医者だ。
 ――なら、自分の凡才と向き合って、精一杯やるしかない)
 初めてひとを救えなかったときの苦しみも。
 初めてひとを救ったときの感動も。
 何もかも、ちゃんとマルクの心にある。

 助けたい命がそこにあるなら。
 今日も、昨日も。明日だって、立ち止まってなんかいられないから。

成否

成功


第1章 第4節

郷田 京(p3p009529)
ハイテンションガール

「何故だ……病院と来て、京ちゃんだぞ?
 白衣の天使に決まってるじゃないか……解せない……!」
 がっくりと肩を落とした京。カードに輝く学生ボランティアの文字はぴくりとも動かない。
「京ねーちゃんはナースなんてむりだよ!」
「そーそー、セーシンネンレーが同じだから子供(おれたち)の相手のほーが向いてるぜ!」
「よ、よくも言いやがったなこんにゃろー!?」
「あっ、京ねーちゃんがおこった!」
「にげろにげろー!」
 元から子供は好きだ、とは本人の弁。相性も良く溌剌とした京と元気な子供たちとの仲は極めて良好。
 病院の薬の匂いが染み付いた髪で、手で、一生懸命生きている子供たちをみると、頑張ろうと思わずにはいられない。
 遊び足りないからボランティアが居る。学生とは言え、力になれるのは嬉しい。
「まー、遊び足りないからってあんまり動いちゃ……って……あわわわわああ!??!!」
「どーだ!」
「まいったかぁ!」
「もうっ、一斉に飛びかかったら危な……おいコラ、どさくさで何処触ってるか、そこは将来の旦那様のだぞ、オマエ結婚すんのかオー!!?」
「でっけー!」
「触るんじゃない!!!!」
「あー!! また怒った!!!」
「にげろ~!」
「待て、今度は逃がさない! こーらぁーー!!!!」
 ちいさなからだに見合わないおおきなびょうき。
 その小さな身体でどれほどの痛みと苦しみに戦っているのだろう。
 だから、せめて。今くらいは笑顔を。

成否

成功


第1章 第5節

御子神・天狐(p3p009798)
ワイルドフォックス

「今日も入院患者にうどんを差し入れするお仕事がはかどるのう!」
「せんせー、おうどんちょーだい!」
「もちろんじゃとも! やはり病には気と薬とうどん、コレじゃな」
 生姜にネギに健康なものたっぷり入れれば治りもはやくなるじゃろ、とてんこもりにしたうどん。子供たちには大ウケ、大好評なのだが。
「先生、それは予防であって病には……」
「なーに大丈夫、そのうち効くようになるじゃろ! うむ!」
 美味しいものはこころが元気になる。それは間違いない。
 ほかほかのうどん。
 天ぷらをのせたうどん。
 きつねうどん。
 おもちののったうどん。
 手術後は食欲のない患者も多い。そんなときに活躍するのがこの『うどん科』だ。名前は大分あれでそれだが、特異運命病院にとっては欠かせない科なのである。多分。
「部屋から動けぬ者もいるじゃろうて、メシくらい美味しい物食べたいじゃろ!」
 ふんふふんふふんと鼻歌交じりに天狐は白衣を揺らし、うどんをのせたカートを押す。実は案外好評で、うどん科を受診する患者もおおいのだとか。それくらい愛されているのだ。
「安心せい、料理は得意じゃしエキスパートじゃからな!」
 ふふん、と胸を張った天狐に大人の患者は吹き出し、子供の患者はおお、と瞳を煌めかせる。これがうどん科クオリティ。
「先生、そういえばお昼ごはんは――」
「はっ! まだじゃ――お昼にしようかの!」
 お昼には、とびきりのうどんを添えて。

成否

成功


第1章 第6節

ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
希う魔道士

「獣医併設の大病院!いいなぁ!」
 と笑顔を見せたのはヨゾラ。猫達が怪我や病で苦しむのは悲しいからと、自ら運営する領地も同じようにしているのだという。

 まずは診察を始めよう。
(猫だー! 可愛い! それもふわふわの…とても大きい猫! 可愛い!)
 ふわふわ、大きなからだのその猫。痛みを和らげるように手を伸ばして、診察開始だ。
 逃げようとすることも仕方ないと受け止める。なんせ病院、猫からしたらわけもわからぬ生き物に身体をまさぐられるのだ。怖い以外にあるわけがない。
「でもごめん少しだけ我慢してねー!」

(……異常はなし。健康そのものだね)
 ヨゾラはふむ、と頷き。問題がないのは極めていいことだ。
「後はお注射を…あー待っておちついて!」
 看護師を呼び、優しく抑えて貰う。ついでに目元を多い、針が見えないように。
「さぁ――迅速に丁寧に、ちくっ……と。はい、もう大丈夫だよー。
 飼い主さんは、帰ったら暫く様子見てあげて。不調とか出た場合は知らせてね」
 ありがとうございますと頭を下げた飼い主にひらひらと手を降って、注射針を横目にふぅと一息。
 憧れこそあれど、実践ともなれば話はまた別で。
(医療関係の人達ってすごいなぁ)
 と、感心するばかり。

 ――これからもここが素敵な病院でありますように!
 次の患者を呼びながら、小さく。祈りを込めた。
 苦しむ生き物が少しでも減るように。そんな小さな願いも込めて。

成否

成功


第1章 第7節

ローガン・ジョージ・アリス(p3p005181)
鉄腕アリス

(うーむ、吾輩、医者の仕事はほぼ分からんのである……チビっ子が怪我した時の応急手当くらいなら経験あるのであるが、流石にこんな立派な病院では……なんか油臭いであるな?)
 白衣を纏っていることに首をかしげつつ、ローガンは院内を歩いていた。何やら鼻につく香りがする、と思ったら。

 ――なんか、ロボット修理工場みたいな科があるー!?

「ええっと……鉄騎や機械系の旅人向けの場所であるかな?」
 扉の奥をそっと覗いてみれば予想通り。機械の修理、リハビリなどを行うところのようであった。
「此処なら役に立てそうである! 吾輩、機械の修理ならそこそこできるのであるよ!」
 ぱっと笑みを浮かべるローガンは頷き扉の奥へ。
「ささ、場所が決まったなら張り切って働くのである! ……しかし、これやる事は医者というかメカニックであるな?」
 その通りである。
 ベンチもあればメジャー、ねじまき、コイルにはんだごてにその他色々!
 機械のお医者さんといえば聞こえはいいが、専門的な知識も居るために医者が少ない極めて忙しい科のひとつ。そんなところにローガンは来てしまったのだ。
「先生! 次こっちの患者さんの手術です!」
「ええ!? 早速であるか……!?」
「早く行きますよ、麻酔切れますから」
「ちょ、ちょっと……!!!」
 慌てるローガンを横目に、看護師はスタスタと手術室へと進んでいく。ため息をつきながら、ローガンは分厚い軍手を手に取った。

成否

成功


第1章 第8節

古木・文(p3p001262)
柴犬さんのお散歩マスター

(普段はスキルで治してしまうから、こういった患者さんを看るのは久し振りだなぁ。外科の腕が鈍っていないと良いんだけど)
 と手をグーパーさせたのは文。久々に鼻を擽るゴムの手袋の匂いは、その感触は、嫌でもここが命に関わる最前線なのだということを理解させてしまう。
 それが、スキルごときで治るような優しい世界ではなかったことも。
(どうせ手伝うなら忙しそうな場所が良いと思っていたけれど、この辺りのセクションなら当たりだね)
 ぐ、と拳を作り。己がまた向き合えるように、そっと頷いて。ここで甘えは、許されない。
「若輩者ではありますが精一杯努めて参りますので今日は……いや今日も、よろしく願いしますね」

 搬送されてきた患者を診察し、場合によっては専門の科に振り分ける。単純なようで複雑な作業だ。
 最近はそんな便利な検査機器があるんだ、と呑気に思いながらも、担架に乗ってきた患者を『1、2、3』で下ろす時の声は、人一倍大きい文。
「先生!!」
「うん、わかった。5番手術室に運んで、麻酔用意も」
「わかりました」
「でも先生、さっきも手術を」
「大丈夫。体力と徹夜にはそこそこ自信があるし、これだけ良い設備が揃っているんだもの――大丈夫だよ」
 自分ひとりが倒れる程度なら。
 自分ひとりのために、誰かの命がなくなるよりも、うんといい。
 看護師は頷いて、文の指示に従って手術室へと入っていった。嗚呼、今日も眠れそうにない――。

成否

成功


第1章 第9節

カティア・ルーデ・サスティン(p3p005196)
グレイガーデン

「…え。ここどこ、僕、何故こんなところにいるの?
病院…? 怪我なんてしてな…心療内科? え、どういうこと?」
 落ち着いてください、と医者に促され、カティアは大きく深呼吸。吸って、吐いて。うん、やっぱ此処病院だ。

 カルテにさらさらと、綴られていく。読むことは出来ない。
「かいりせいけんぼうしょう」
「はい。自覚は?」
「自覚? あるわけないでしょ?そもそも何でここにいるのか思い出せな…えぇ…?」
「……記憶がなさそうですね」
「…そういわれてみると、記憶があちこち抜けてるような気はするけど…ほんとに? …これ、治るものなの?というか、治さなきゃいけないものなの…?」
 複雑そうな顔をしたカティアに、医者は首をかしげた。
「思い出したいような、思い出したくないような…?
 生活に支障が出ないようなら、いまはこのままでもいいかなって…え、出てるからここに連れて来られた? 誰に?」
「あなたの友人ではないのですか?」
「…全然心当たりないよ。それ、本当に僕の知り合いなの…?」
 わからない。何一つ、わからない。
 記憶がないだけで不安で不安でしょうがない。
 誰も自分を知らないし、自分も自分がわからない。
 連れてきた友人とやらは、今は席を外しているようだった。戻ってくるかもわからない。
 なんでこんな目に。
 小さく呟いた『患者特有のそれ』は、医者の顔を薄く歪めた。

 ――とりあえず、リハビリはしない方向で行きますか?

成否

成功


第1章 第10節

佐藤 美咲(p3p009818)
合理的じゃない

(これまたなんてニッチな役割が…)
 カードに煌めく患者の文字。黒のマジック。擦っても消えそうにないので、美咲はとりあえず眼鏡をくいっ。
(まあいいっス。混沌に来てから健康診断なんて受けてませんでしたからね。…いや、混沌に召喚される前もちゃんと受けれてなかったっス。
 ほんと、公務員の癖にブラックだったな…)
 思い出したら頭痛がしそうなのでやめた。折角混沌に来たのだから、と考えたところで此処は混沌ではない。
 人生何があるかわからないものだ、本当に。

 とりあえず血を抜いて、視力と聴力を測って、
身長と体重を量る。
「此方に乗ってください」
「…体重は47キロでーす❤」
「……」
「おい、何も言わずに16進数から10進数に戻すな。せめて笑え…! 鼻で笑ってもいいから…!」
「はは」
「心込めて」
「次のかたどうぞ~」

 割とギリギリではあったものの、とりあえずBMI以外は引っかからなかった。検査シートに赤い文字が踊る。
(視力も裸眼1.0。まだまだ伊達眼鏡のままで大丈夫そうでス。
 これを機会に生活習慣を見直しまスかね…)
 と考えた矢先、美咲の鼻を美味しい匂いが擽った。
「あ、美味しそうなラーメンが売店に売ってる……明日から頑張りましょう」
 食欲に屈してもいいじゃない。人間だもの。
 ダイエットは明日からでもいいし、痩せなくたって問題はない。生きていればいい。これでいいのだ。
 暴論を豚骨スープで、ぐいっと。

成否

成功


第1章 第11節

Я・E・D(p3p009532)
赤い頭巾の断罪狼

――ここは正体不明科。文字通り正体不明な謎の生き物達のお医者さんがいるのである。

「ん、今日も正体不明な患者さんでいっぱいだね」
 何だか黒い毛玉にしか見えなくてらコロコロ転がってきた人がいる。生き物なのだろうか。ワンチャン毛玉まであるかもしれない。
「まずはどうやって話をしようかな……口とか無いように見えるんだよね……」
 お口はありますか、の問いかけに対して患者は飛び跳ねて。うん、わからん。そう思ったЯ・E・Dを――むしゃり。

「ふぅ、まさかあんな会話方法があったなんて。わたしも初めてでビックリした」
 唾液らしきぬるぬるを拭き取りながら、Я・E・Dは次の患者を呼んだ。
「それじゃあ、次の患者さんは……植木鉢に植わった木にしか見えないね……体温とか計れるのかな?
 注射器とかもたぶん通らないよね、これは根っこに栄養剤とかかな……困ったよ」
 栄養アンプルは果たしてあっただろうか。
 土が酸性だから中性に戻して欲しいという頼みかもしれない。これもまた意志疎通は難しそうで、Я・E・Dの声には疑問が踊って。
 木(患者)は苦しそうに葉を揺らすのだが、エアコンの効いた室内では風に揺れたようにしか見えない。だめだこりゃ。
「……聴診器、当ててみるか」
 なにも聞こえない。知ってた。

 今日も正体不明科には色々な患者さんが来る。
 ――負けるなЯ・E・D、頑張れЯ・E・D!
 患者さんの健康は君の手にかかっているぞ――!

成否

成功


第1章 第12節

ルクト・ナード(p3p007354)
蒼空

 白い髪が空に溶けてしまいそうだった。晴れやかなる空は、ルクトのこころをひどく揺さぶった。
(戦わない人助け。私にはいささか無縁だった話だ。
 手元にあるのは扉の鍵。私はこれがどこに続いているのか知っている――故に、私なりのやり方は決まっている)
 恐れることはなかった。ただ、知りたかった。
 武器を持たずとも、救われる命はあるのか、と。

 ルクトの仕事は入院している小さな子供達の相手となることだった。
 退屈そうな子、遊び足りない子、静かな子、元気な子
子供の見せる表情はどれもバラバラで、そして賑やかではあるのだが、ずっと屋内にいることを、不満がる子供達も多い。
 そんな子供たちを連れて、ルクトは定期的に皆と屋上に出ることにしていた。
「ルクトー! きょうはなにするの?」
「今日は紙飛行機をつくって飛ばしてみよう。誰のが一番遠く飛ぶか、競争だ」
「わぁー!!」
 無邪気で。ちいさくて。とうとくて。
 そんな命に巣食う病魔が、憎くて憎くて仕方なくなる。
 身体が強ければ生きられたのかと嘆く親をいくつも見てきた。その度に、唇を噛むことしかできなくて。
 ルクトは白い紙を折る。
 子供たちは、そんな様子を真似して、不器用ながら、折る。
「できたか?」
「うん!」

 いっせーのーでっ!

 空を走る飛行機は、酷く不恰好だった。
 風を切るには優しすぎる。だからこそ、愛おしい。
 飛行機を追いかけた小さな背を、ルクトは追いかけた。


成否

成功


第1章 第13節

ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク

「というわけで、俺は入院患者に対する食事・栄養管理を行う栄養士だ。こいつぁ良い勉強になりそうだな!」
 ゴリョウは大きな白衣を腕捲りして、ふむと頷いた。
(普段みてぇに美味さ重視、見栄え重視、健康は各自で考えてくれな方針じゃなくて、自発的に意識して栄養管理を行わねぇといかねぇ……結果まで考えなきゃいけねぇわけだ。これでさらに上級の『管理栄養士』をするとなったら流石にお手上げだったぜ)
 不幸か幸いか、そこまで責任は重くないらしい。有り難く一生懸命働くことにした。

(とはいえ、カロリーや栄養面を注意して作成した献立でも『不味くて食べたくない』とかになると意味がねぇんだな)
 美味しく、見栄え良く、体に良い。この三拍子が非常に重要なのだ。
「三方良しの料理ってのは非常に難易度が高いが、それ故に面白れぇとも思うな!」
 誰かのために作る料理の楽しさを知っている。
 誰かが食べたあとに美味しいと喜んでくれたときのやりがいを知っている。
 食事の楽しさを、知っている。
 だからこそ考えずにはいられない。楽しく美味しく、健康に。味わいはもちろん、食べていて苦痛にならないかどうかも。料理は食べてくれる人が居るからこそ成り立つものなのだから。
 苦労して考え作り、苦手な食べ物を上手く隠して食べさせた後、『おいしい』が聞けたときの嬉しさといったら、もう!
「――というわけで、次の患者さんの症状は、と……糖尿病かぁ」

成否

成功


第1章 第14節

シルキィ(p3p008115)
繋ぐ者

("戦わなくても良い人助けは幸せ"かぁ……いい事言うねぇ。確かにその通り。
 お医者さんとしてのわたしが求められているのなら、それに応えるよぉ)
 保健室で見守ってきた命があるように。此処でだって、自分にできることがあるのなら。

 まずは予定の確認を。ぺらぺらとスケジュール帳を捲りながら、ふむむと思案する。
 今のシルキィは外科医だ。患者を助けるためには手術が必要になってくる。そのためにも、プランをたてるのは必要であるし、重要な項目のひとつだと言えるだろう。
「ふむふむ、患者さんの病状はこうで……腫瘍の切除が必要になるんだねぇ? いいよぉ、手術着を用意してもらえるかなぁ?」
「はい!」
「ありがとぉ、準備ができたらオペ室に向かうとするねぇ」
 白糸の髪を纏め、白衣を脱ぐ。
 手術は時間との戦いだ。救うためには、患者の身体への負担を短くしなければならないのだから。
(誰かの命を預かるのは、いつだって緊張するけれど……助けを待っている人がいるなら、力にならなくちゃねぇ)
 医療知識に医療技術を片っ端から詰め込んで。白き女王は、患者が亡くなるのを消して許さない。
 救える命は、ひとつでも多く。助けたいと願ったのならば、逃げ出したりなどするものか。
「それじゃあ、手術を始めよっかぁ……!」
 青いゴムの手袋の香りが鼻をつく。
 やがて、段々と紫に染まっていく。
 ――最短ルートで紡いだ未来は、誰かの命を救うために。

成否

成功


第1章 第15節

ヴェルグリーズ(p3p008566)
全てを断つ剣

「うーん、外科っていうことは手術をしたりするお医者さんのことだよね?」
 手術は恐ろしいものだと人間は言う。だから、患者さん一人一人にきちんと向き合わないといけないと、ヴェルグリーズは理解していた。
「患者さんに不安を与えないように術前の説明は丁寧に根気よく行わないといけないね」

 さあ、手術を始めよう。

 正確に素早く、看護師さんや麻酔医の先生達とも協力して一生懸命に。
 手術の予定がたくさん詰まっていると大変ではあるけれど、手は抜けない。何せ、他人の命がかかっているのだから。
 頼られているし、信じられている。一方的な押し付けかもしれない。それでも、ヴェルグリーズは嬉しかった。人の役に立つことこそが、この『人生』の生き甲斐なのだから。

 術後の説明や回診もしっかりと。雑にしていいものではないからこそ、此方も入念に行うのがヴェルグリーズ先生の特徴だ。
「針で縫ってはありますが、また糸を取らないといけないので、暫くは安静にお願いできるかな?」
 少しでも病院にいる負荷を和らげられるように、心配りは尽くさずに。看護師達とも協力して、ヴェルグリーズは個室入院の手配を終えた。
 一人の患者を無事に家へ送り出すまでは丁寧に。手術が終わったとは言え、まだまだ気を抜くことはできない。
 担当医も執刀医も自分自身。剣の扱いが上手いだけでは救えない命が此処にはある。医者とは、仕事とはそういうものなのだから。

成否

成功


第1章 第16節

グレイシア=オルトバーン(p3p000111)
知識の蒐集者
ルアナ・テルフォード(p3p000291)
絶望を砕く者

 苦々しい面持ちで珈琲を飲むグレイシア。今日も不幸か幸運か手術スケジュールは一杯、喜ぶべきか、喜ばざるべきか。
 仕事があるのは勿論いいことなのだろうが、それ以上に、それだけの人が怪我をしていると言う事実は『医者としては』顔をしかめざるを得ない。
 それに。
「今日はオペが三件…休憩時間が存在してないように見えるのは如何なものか」
 はぁ、とため息が溢れる。休憩がないのは少々つらい。好きで血や臓器を見るわけではないので、少々なりとも疲弊はするのだ。休憩があるだけで大分負担が減るのに、とぼやけども現実は無情、変わることを覚えやしない。
 そんな困ったグレイシアとは反対に、ルアナは目をきらきらと輝かせていた。
(ひゃー!! おじさまの白衣かっこいー!!! ふへへ近くで見れて嬉しいな!
 …じゃなかったええと優秀さをアピールしなきゃ!)
 えっへん、と胸を張り、グレイシアに向けて笑みをみせた。にぱー。
「ここに超優秀なオペ看がいるからだいじょうぶだよ、おじさま!」
「…そうだな、手術を一緒に行う以上、揃って休憩が無い事になるな…」
「おわったらご褒美に特製ホットケーキ焼くから頑張ろ!
 普段おじさまに焼いて貰ってるのを横で見てるからだいじょうぶ! 焼いたことないけど何とかなるよ!」
 休憩は難しくとも、終わった後のご褒美の設定は可能だ。
 ふむ、と頷いたグレイシア。成功報酬を用意することでやる気を引き出す。グッドアイデアだ。
「――出来る限り迅速にオペを進め、休憩時間を確保するとしよう」
「ねえ、『ホットケーキ楽しみにしてる』は!?」
 ぷく、と頬を膨らませたルアナ。彼女曰く、それが聞きたかったのだとか何だとか。
 しかしグレイシアは知っている。ルアナを一人で台所に立たせてはいけないことを。包丁を握らせたら大惨事になることを。
「あぁ、そうだな…一緒にホットケーキを作るとしようか」
「もー! 一人でできるのに!」
 ぷんすこと頬を膨らませたルアナ。本日二回目だ。しかし和やかにしていられる時間はタイマーによって終わりを告げる。そろそろ、行かなくてはならない。
「さて……ルアナ、行けるか?」
「まっかせて、おじさま! ばっちりサポートするからね!」
 長いポニーテールが揺れた。手術室まで並んで、二人は進んでいく。

 ――さあ、手術を始めよう。
 魔王(ドクター)と勇者(ナース)の前に、倒せない敵(びょうき)は何一つないのだから――!

成否

成功


第1章 第17節

眞田(p3p008414)
Re'drum'er

 小児科担当医、眞田先生。
 普通は医者なんて選択肢にすら入らない。でも1日くらいならむしろやりたい! そんな気持ちでやって来たのだと言う。
「白衣着てるだけでいつもより少しインテリに見える! でも普段着ないから落ち着かないな…改造っていいの? だめ?」
 ~眞田先生、試行錯誤中~
「こういうのなら子供受けよさそう! 行けるはず! 行こう!」

 医療用語はよく分からない。ので、とりあえずマニュアル頼りで。
 基本業務はマニュアルと横に付いてくれてるナースに聞きもって、上手く終えていく。
「はい、あーして」
「あーーー!!!」
「お、元気一杯でいいね! 最近はどんな感じ?」
「オムライスたべた!」
「あはは、そっか。旨かった?」
「うん!」
「いいことだね! ……喉も腫れてないし、体調も良さそう。オムライスパワーかな?」
「そうかもしれない! ここのオムライス、すごくおいしい!」
「マジ!? 今度俺も食べよ」
 入院患者とのコミュニケーションも仕事のひとつ。子供にとって退屈なのはじっとしていることと一人の時間。大人になったら早く進む時計の針も、彼らにとっては遅すぎてつまらないだろうから。
「よし、今から院内の散歩にいこっか!」
「せんせーさぼりー?」
「え!? サボりじゃないっすよそんなまさか」
「うっそだー!!」
 きゃらきゃらと声をあげて笑う子供。車椅子を押しながら、眞田は院内を進んだ。
 たまにはこんな日も、悪くはない。

成否

成功

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