シナリオ詳細
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完了
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オープニング
●一枚のコイン
それに如何様な価値を付けるのかと、世界がクスクスと微笑していた。とある男はくれてやると吐き捨てた。世界は大喜びでコインを受け取った。とある女は絶対に嫌よと叫んで逃げた。世界は大喜びで拒絶を受け取った。とある老人は先は短いと全てを投げ売った。世界は大喜びで命を貪った。とある子供は甘酸っぱい思い出を奪われた。世界は掌におさまらない、人々の心を縫い合わせた――そうして世界は再び、新たなる時を刻み始めた――リンゴン・リンゴンと再構築が完了する。世界は名を『消失』と言った。
消失は創造を行う為に人々の想像を酷使したのだ。何度も何度も繰り返し成された『コピー&ペースト』じみた喰い散らかし、廃人として堕ちた者の数は知れず、愈々『消失』させるコインはなくなった――じゃあ。如何すれば世界を維持する事が出来る――簡単だ。人々の存在を『消失』に変えてしまえば良い。そうすれば新たなる胎も造られるだろう。機械的に、無慈悲に、その虚空は胃袋を空けた……この世の始まりで、人類の終わりだ。
誰か。嗚呼、誰か『消失』出来るコインを、記憶を持つ者はいないのか。有象無象の祈りが聞こえてくる。誰か。嗚呼、誰か『消失』に大切なものを捧げてくれないか。有象無象の足掻きが響いている。助けて。誰か、助けてくれ――。
一人、また一人と、消えていく。
●莫迦らしいほど釣り合わない
境界案内人たるこすもの溜息が、ゆっくりと君達を抱き混むだろうか。彼女の目は何処か光なく、ぶつくさと虚を眺めている。静けさが数分と経った後、ようやく宇宙色が自我を取り戻した。ハっ、と、エメラルド・グリーンがギラついた。
「ごめんなさいね。ちょっとした考え事って言うべきかしら? あなた達には大切なもの、失くしたくないものって有るかしら? 少なくとも一個は有るわよね? ねえ、それを『消失』に捧げてくれないかしら――言葉が足りないかしら? とある世界を維持する為に『大切なもの』を落としてくれないかしら? そう。でも、大丈夫よ。帰ってこれたら『全部元に戻るんだから』ね」
くすくす、と、少女じみた鈴の音が遊んでいる。
「今回の物語は『消失世界』の物語、誰かが『何かを失わないと』世界を維持できない欠陥品よ。ええ、察しが良いわね。この世界の住民はもう『自分以外を捧げちゃった』のよ。だから、消失が『存在そのもの』を喰らう前に止めようってわけ。彼等にとっては死活問題でも君達にとってはフィクションでしょう? いってらっしゃいな」
ところで何かを忘れている、嗚呼、正気だ。
- p3p――完了
- NM名にゃあら
- 種別ラリー(LN)
- 難易度-
- 冒険終了日時2021年07月04日 22時01分
- 章数1章
- 総採用数18人
- 参加費50RC
第1章
第1章 第1節
ガリ、と酷く心地のよい音が顎に響いていた。消失かぁ――茫々と成るような精神感覚に浸りつつ、イーハトーヴは大切な人の記憶にしがみついていた。憑かれたかのような眼球の下でオフィーリアのしかめっ面が作られている。何で怒っているの? 疑問符を叩き付けるほどにオマエは肝が据わっているのか、ああ、何度も何度も旗を立てたがる可愛らしさめ――フラグってなぁに? 純粋さに漬け込んだナンセンスどものニマニマが、ずいずいと脳味噌に突き刺さってくる。何だかふらふらしているけど追及するのは『愚』の骨頂。変なのがいっぱいに、いっせいに蠢動を始めている。後悔しているのは美味しいお菓子の犇めき遭いだ、如何して俺は持ってこなかったのだろうか。もしかしたらヌガー・スナック、油たっぷりの鍋へと落っことしたに違いない。そういえば俺って何を手放したんだろう――重たくて軽いもの。視えているけど視えていないもの。何だって構わないけど、如何してぬいぐるみは嘆息しているのだ。垂れ下がったケチャップはアンモニアじみている……気分はソーダ水みたいにスッキリしている。お腹には何も残っていないのだ。
身体も心も風船みたいな、プカプカした状態だ。嗚呼、折角失くしたのに、反芻するなど莫迦らしく思えてきた。ぷるぷると震えたベーコンの大波に乗ってハンバーグごっこを楽しもう。このまま世界に食べてもらっちゃおうよ――消失と呼ばれた怪物が頬を舐った。
成否
成功
第1章 第2節
遠方へと投擲された語尾が、高々と宝物を弄り啜っていた。イルミナ・ガードルーンは人としてたくさんの記憶を抱えており、その悉くは『なくてはならない』輝きだろう。大切なものッスか。端から端まで、思い付けば思い付くほどに、失くしたくない煌めきに満ちている、うむむと傾げるのは当然の事で、その当たり前は誰にでも当て嵌まるだろう。ああ、とは言え、だ。世界を消失から守る為、消失と呼ばれる世界を救う為、特に、最も大切なものを捧げた方が『満足』いくだろう。身投げの先は断崖絶壁が相応しいのだ――それなら。頭の中身を虚空に撒き散らしてリスト・アップ、効率よく評定した結果が良い。駆動に影響のない範囲のものから棄てろ・棄てろ・棄てろ――何故にマシンが言語を扱っているのか。考えて行動するなど赦されていない。
嗜好・趣味・友人・感情・記録・記憶・人格――ゴミ袋一枚では物足りないほど、不要埋もれた山の出来上がりだ。こうしてみると普段の※※※※がおそろしく無駄にみえる。カメラ・アイは生温かさで濡れる事なく、本当の高笑いを教えてくれた。特にこの『心』はかなりの領域を占めていた形跡はありますが……削除済み……これも捧げてしまいましょう。何よりも壁打ちが大好きだったのだ、面白くもない。
――プログラムの戯言に目が眩んでいた。メンテナンスの際に亀裂が奔ったのだ。
はじめまして、マスター。まずは投機の初期設定をお願いします。
成否
成功
第1章 第3節
纏めるのは思った以上に簡単だった、アストラルの体を如何に調べたのかと連中は傾げていたがそのような『昔』は関係ない。今現在、消失世界に捧げるべき大切はおそらく、最も価値のある記憶だろう。冒険譚は老若男女問わずワクワクさせる言辞なのだ、誰しもが求める幻想に違いない。どろりとカラメルと混ざってしまったプリンアラモード、掬える程度に柔らかさが残っているのか。兎も角、これも一つの実験だ。だらしなくブラ提げた頭の中を、スポイトでちゅうちゅうとやってやる――何故か、眼球に映ったのは『走馬灯』に近しい刹那だったからで、その身動きの難しさは幼い頃に等しい。冒された感覚は今でも滓れており、機械仕掛けの四肢を手に入れた現でも同じような窓際だ。しかし、少なくとも混沌世界では『外』に出れたのだ。ああ、記憶を失ったなら、何度も何度も未知の景色を咀嚼出来る。心機一転、赤子が這う這うするように、心躍るというものだ。
ぼとん――広げた知識の風呂敷は出入口を見失っていた。どこか、ネジの一本かを刺し忘れたかのように『ゼフィラ』はぼんやりと起立していた。元の世界の記憶も失くしてしまったか――ぎぃぎぃとオイル不足の節が啼いている、寝込んでいる退屈な日々が――圧し掛かったのは疑問。この、やけに粘つく喪失感は何に向けた『感情』だと言うのか……この指輪、私のパンドラだが。
どこで手に入れたものだった……嵌まらない、婚約指輪か?
成否
成功
第1章 第4節
愚痴を認めないのは当たり前だ、だから白紙を棄てる事は難しくない。古木に離別を告げたのはきっとまっ茶色な葉っぱで、その一枚一枚に対した意味などないのだろう。されど、それ等が文字列を抱けば真逆に化ける筈だ。幸せか不幸せかを決めるのは、確実に書いた人間なのだから――やわらかく握ったのは万年筆。元の世界で家族から貰った、大事な大事な心の支えで趣味の象徴。たくさんのインク、つまりは思い出が詰まっている。なんて思考すれば総ては現在であり過去でもあるよ。この感触を味わっていたら召喚された日の自分を想起する――失くしてしまったかもしれない――絶望していた。これから果実を棄てると覚悟したら樹木は如何成る。ほら、改めて自分の手で捨てるとなると少し怖いかな。じゅくじゅくと擂り潰した黒が指先を擽ってくる――何をしているんですか。誰かさんの怒声が聞こえた気がした。幻聴だろう、辛さを知っている人たちだから許してくれると思うんだ。だから誰が? 誰か……ぽい、天地がひっくり返るならば『虚』に呑まれて往くのも正解だろう。
結局のところは一時的な安寧でしかないのだ。人は今を生きる為に過去と未来を見据えている。反芻したものは最終的に味も栄養も失くしてしまうのだ。この世界もテーブルの上のご馳走なのだろう、いずれは消えかける運命とぶつかる――ちりちりと手紙が燃えている、成程、未開封ならば怖さも半減だ。その時が訪れるまで。
成否
成功
第1章 第5節
棺の中に小麦粉を添えれば誰だって幸福に成れるものだ、うどんを啜れば喉越しもさわやか、悪魔も天使も皆兄弟だと言えよう。賢者の言辞も酔っ払いの戯言も等しく尊いものであり、モンスターは外宇宙からやってきた神様なのだ。ああ、大切なものか……呟きの間におめめをパチリした天狐、何だろうかと頭を左右に揺らせば傍らの賽銭箱。元の世界と関係のある代物であり、唯一無二の『神聖』なものだ。パンとワインの代わりに麺と出汁だと告げている。きっと人類最初の食物は長くてつるつるしていたに違いない――こいつはちゃんと持ち帰って元の位置に戻さねばならぬからな――信者としてアブラアゲとして、天啓を得た者として『忘れてはならない』とターバン巻いたあの人が見えてくる。コレを失うのは駄目な気がするのう。ある種の警鐘が煩々と頭蓋を殴っている――これで何度目だろうか、しかし『何故に鳴っているのか』も夢現に囚われていた。さて、どうなることやら。
帰る意味も目的も、意志すらも忘れてしまいそうで、スダチの皮じみた心地だった。されど一度投擲して魅せたら如何だ、此方の世界も心地が良いと白米が笑っている。滝の如く降り注いだカレー・ルーには冷えた白さが絶対だとキミが叫ぶ。あの宙に映っているのは黄金色の絨毯か、駆けろ翔けろかけ廻れ。物理的に歪んでいた社が脳裡からかっ消えた。五体投地――これで届かないならば地面を頭突けよ、オー、コメトレルヤ!
成否
成功
第1章 第6節
電極が突き刺さった脳に感情が宿るとは思えない、支離滅裂に視えて、抱える本人だけが真面だと認識しているものだろう。世界そのものにも言える事柄で悉くは『=』の関係性とも考えられる。大切なものを失え、と来たか。錆びた歯車を取り外すかのようにルクト・ナードは水色を回してみせた。何が残っているのだろうか。生身に刻まれたカセットを乱雑に巻き取っていく。あいつは。私が守るべき相手だ。機械に刻まれた臓物を丁寧に貫き取っていく。商人は。私に力をくれた。両方ともから自身の不要を選び抜き、面倒だと思ってゴソリと落とした。■■■は。私に、戦い方を教えてくれた。幾度も磨いた狩猟の得物、獲物の名前は気にしてはいないが、それらは俗物だろう――人。人。人。人に支えられながら、生きていたのか。活かされていたとも想像が可能だ、最期じみた光景は生温かい。嗚呼『物』として定義するのは間違いなのだ。彼or彼女は血のにおいを漂わせている。
物――即ち。単純に列するとして、体は『物』と定義できるのではないか? ギリと歯が鳴っているのかパーツを鳴らしているのか。いや。待て。定義するとしても私は『生きて』いる。貴様は兵器ではないと証言できるのか? ごくり。呑んだのは唾ではない。最後のしがみ付き……兵器として大切なものは何か?
安全、装置――?
コアがナマモノに囁いている。
軽い。軽い。不思議と軽い。これならもっと……戦えそうだ。
成否
成功
第1章 第7節
頭を酒に落っことして、爛れた中身は蜂蜜に似ているのだ。自分以外の全てを捧げてしまった者達の貌は、嗚呼、何処かで視たアーリア・スピリッツの恍惚だろう。七色をくるくると遊ばせて、ごっちゃなものに堕とすだなんて勿体ない。なんにも無くなってなお、住民は自分以外を捧げるわけにはいかないって抗うのね。世界そのものを悪だと断じない脳には敬意を表したいだろうか、刃は誰にも向けられていない――私なら、自分ってもの以外何にも無くなっちゃたら――ふらり。虚空への身投げよろしく捧げる未来。なぁんて、ぽわぽわした表情で笑ったって意味がない。林檎は何処までいってもノンアルコールなのだ。
シュレディンガーのオマエは袋の中を確認したくなった。失うものは、内臓。でんろりと伸びるだろう腸はピンクであると嬉しいものだ。うぅん『臓物』って言った方がお好みかしら。趣味の悪いお友達はにっこりとヴェールを剥がすだろう。否、もっと大切なものがあるだろう? そんなのフィクションでも、捧げてしまうのは怖いわ。そんなに溺死したいならばお望み通り用意してやる、神様がジンをぶち撒けた――美味しい酒は空を通る、渇いて餓えて酔えない、おや、心臓がこぼれた。
甘い言葉に弾めない、言葉も『脳』にかからない。空っぽで、それでいて何かが込み上げそうになって。
あ、だめ。吐いてしまいそう――空っぽの私から漏れたものって、なぁに?
尊い、考えられない。
成否
成功
第1章 第8節
瞼をひねるように捲ればクソガキ、そんなイメージを世に叩き付ける事が出来た。空になった収容室を思いつつ、包まれるように世界へと飛び込んだ。たくさんの紙束とペンに囲まれながらエクレアはぼんやりと知を眺めて言ちた。僕から『学習』を取ったらどうなるのか。よくあるのかと誰かに問われたら稀と返すのが常、そもそも他人にそのような台詞を吐いた記憶がない。兎角、知識の吸収は生物の糧。進化や退化を行う為に不可欠な事柄だ。学ぶこと、習うことを放棄して僕は正常でいられる自信がないな。直射日光の下で嘔気を覚えるようなものだ。思考が拒絶するのか。身体が崩壊するのか。他にも末路は多々と在るだろう。不思議だね、知り尽くした自分自身だというのに。財団職員にも笑われそうだ。これが意外と興味が沸、かない……赤茶が違和感を写していた。あれ? 這うような寒気に手を伸ばす。
ペラとひどく簡単な『もの』を捲ってみた。内容が読めない。暗記する為に腕を……おかしい。ペンすらも握れない。震えだした『ながいもの』を抑え込んで、どうすれば良いのかわからない。何もかもが理解できない。ぐるん、後頭部が何かに衝突した。
ぶちぶちと増殖する虚無が、考える事すらも億劫に堕としていく。じわりじわりと圧し寄せてくる怠惰が、空腹な脳を殺戮してみせた。もういいや。瞳を閉じて遮断しよう。唯一の救い――おやすみ、みんな。おやすみ、世界。
さようなら……僕。
成否
成功
第1章 第9節
神に捧げられていた筈だ、誰かが丸呑みにしていない限り『冬越 弾正』は世界に存在している。命は大切なものだが、意識があるという事は『他のもの』を捧げたのだろう。違う、この場合は『与えた』と呟くのが正しい事で、消失と生死は別物だと理解出来るだろう。そして幸いな事に好きだった人の記憶も『まだ』残っている。ならば汚い泉に落っことしたものは何だというのか、隣の鴉に訊ねてみたら『かぁ』と謳われていた。そうだ……あの人が死んだ時、俺は共に『大切なもの』を置いてきた気がする。つまりは最初から捨てる事が容易かった、されど無意識の内に抱いていたかった『類』だろう。ここに来なくても自発的に踏む事が出来る、そんな程度のお遊びだったのか? もれた息が拍子抜けだと表している。ゆっくりと手を覗き込めば、しっかりと信仰心があふれている――俺はイーゼラー様に仕える信徒。あの人が真っ直ぐ神の身元へ還れるように。
多くの『善き命』を摘んだ。これからも、何度も何度も手折るだろう。花畑に咲いた、醜い弁も余さず。あの世の美しさに導いてしまえば良い。それが証明。それが俺の存在理由。如何だ、剣は心臓にも首にも、ちゃんと届いている。
ただ――嗚呼。繋がらない! 大切なものが無くなったら、あの人へ執着する理由がまるで無い! 教義に従う理由もなぜ生きなければならないのかも何もかも……。
吐いたものさえ響かない。ない、ない。ない……?
成否
成功
第1章 第10節
煙に巻かれた深淵が、ぽっかりオマエの再来を待ち望んでいた。一滴、ぽちゃんと患った肝臓が只管に病毒を啜っている。ああ、参ったな。オマエには『大半の記憶』が残っていないと世界がしょんぼりしている。手探りで暴こうとも『本人にも曖昧』な大切なものだ、欠片もあったかどうかもわからんと呟く。ぐちぐちとベニテングを潰している暇はない、とりあえず、パッと思いついたもんにしとくか。木々とした香りがグラスのフチに塗りたくられていた。俺の「トキノエ」って名、これも『大切なもの』に入るか。たとえ忌み名でもあだ名でも、それが『オマエのもの』で在るならば消失は受け取ってくれるだろう。腐れ縁みてえな奴が俺に押し付けた『もの』だが――年々と重ねれば馴染み深い味わいだろう、舌の上であまぁく燃える。得体の知れない男、即ち『俺』が此処に在るために必要なもんだ、手放すわけには……こんな時だというのに、月が綺麗に思えた。
ん――? ふわふわと歩みながら『なにか』を『俺』が探している。そうだ、大分前に記憶と一緒に忘れちまったんだ。松果体をつたった琥珀色が他人事じみて手を掴んでくる。まぁいいか。不便だがそこまで困るほどでもねえし……孤独に放り込まれた疫病ども。
道が混んでいた。あっちに女、こっちに男、どっかになにもない。君――トキノエ? 誰だそいつは――とんだ骨折り損のくたびれ儲けじゃないか。知らねえぜ、悪いが他を当たりな。
成否
成功
第1章 第11節
ちぎっては投げを反芻したグロテスクさに差を望んでいたのか。滴った肉汁が頬を濡らして尚、虚無感は満たされなかった。見渡す限りの花畑は何処か可粘性を思わせ、覚えている『もの』を再現している。なんだったか。女の子の純粋を落とした、面白くもない大人のように。薔薇は棘だけを残して赤を散らす――よく、わからない。分からないで好きなものを『とっていけ』と言った筈だ。これが儚くされた末路だと言うのか。楽園の所以を理解しようとも『奈落』が壊れたならば残酷に等しい。ああ、うん、記憶は大切なものじゃなかったんだろう。塵紙じみた『いのち』も宿っている。当たり前ではないのか。天蓋にぶらさがっている鉄筒に独り言ちた。美少女ならさして重要な『もの』ではない――四肢はしっかりと動いている。握り締めた林檎は外見を忘れている。つまり、見た目では何もわからないのだ。
どうでもいいけど――きらきらと装飾が舞っている、ただ気付くのを『待っている』かの如くに。「私」はなにを捧げてしまったんだろう。少しは気になっていたのだ、何が小さな宝石なのかを……豪快な笑いはどこへやら、か細い咽喉が鳴いている。逆算しても判りはしない。オマエは何の為に『くだらない事』に盲目していた? 臓物を啜るなんて莫迦みたいだ。辛いなぁ。
武の極みなんて何の価値もない。間違いない現実だ。先程から瞼がひどく重い……。
死んじゃおうか。咲花の骨を齧ってくれ。
成否
成功
第1章 第12節
君に悪魔が囁くとすれば『置き去りと消え去りの何方が好い』かだ。当然、俺はそのような選択肢を突き付けられるほど『罪深くはない』筈だ。しかし物語上で在るならば話は別で、消失へ何を捧げるのか考えねばならない。あいにくと後悔の果実だけはたっぷりだ。どっぷりと沈むような脳味噌には羊羹浸けがお似合いだろう。不良在庫の山を引き取ってくれるなら諸手をあげて歓迎さ。何もかもが都合の悪い『首飾り』で、ツリーの頂点には液塗れの季節外れ、それだけ持って行ってくれないかな? さぞかし『生まれ変わった』気分になれるだろうね。何を愚かな事を、世の中そうもうまくはいかない。
――これはフィクション。これはフィクション。これはフィクション。ぷるぷるとしたゼリーが蓋の中で、みっちりと僕を揺らしている。だから何が来ても怖くない。きっと、たぶん。曖昧な台詞と深呼吸がぐるぐると混ざって、気持ち良さと気持ち悪さが圧し合いっこしていた。大丈夫。記憶はまだまだ明確で、季節外れの電極も骨髄に繋がっている。問題の欠片もありません。ふるふると頭を左右にすれば最大の悪夢……忘れてしまったら。僕は僕を許せなくなりそう。でも、捧げるのがおつとめだ。本当は怖いクセになんでこんな……。
そう言われましても心は常に二枚舌。蛇神様の真似事だなんて俺にはサッパリ出来ません。閑さえあれば逃げ場を見繕っておくのが秋宮の処世術。あの真っ蒼な波に呑まれても『泳ぎきる』所以が在るのだ。女王陛下、俺の心の活力。放りだされた混沌での支え。この言の葉は真実――砂絵が虚ろな風に吹き散らされていた。
だから水槽に脳を置きっ放しにすれば良かったのだ。冬宮の中から**ちゃんの記憶が消えていく。そういえば悪魔が何かしら問答していたっけ。気づきを得ました。置いていかれるなら、こんな風に忘れてしまう方がまし――でもこれはフィクションだからこれはフィクションだからこれはフィクションだから――褪せた。褪せた。褪せていった。
俺の最初の人、最後の人。おまえと出会いこじらせた日々、べっとりとくっついた『溶液』が眼鏡を濡らしている。どうしてくれんだよ。愛してるんだ。愛されているんだ。どうしようもない外道に、抱かれているんだ。これも真実……。
なんで息をしているんだろう。
逆さに吊られたドンペリが吐物に変わっていた。
早く戻さないと早く容れないと早く早くもう遅い。
赤々と球体、四個が絶えていた。
本能の赴くままに歩み始めた。オトコ・オンナってしょうもない生き物。それで、大事なものを何個掴んで死んでいるのだ。この世界的には潤っちゃっていいんじゃない? アハハの大行進目前――さっき通り過ぎていったアイツは何者だ。肌がべたべたしている。目がひどく痛がっている。熱病の治し方をどうやって訊ねたのだ?
俺は椅子。僕は縄――ぎぃ、ぎぃ、ぎぃ……。
心中お察しします。くすくすくす。
成否
成功
第1章 第13節
キーウィ・フルーツの滓を、じゅるると吸い込んだ結果は酷く酸っぱいものだった。大事なモノ、嘆息のように『なぁ』と漏らせば、頭の中の『インク』を整えていく。大好きなアイツの事は今でも大好きだし、貌を撫でる潮風と波の音は聞こえている。ざあざあと降り注ぐようなノイズが翻弄し、方々へと意識を融かしてしまう。嗚呼、何かないような気がするんだよな。鳥肉と一緒に炒めた果肉の名称、パイナップルは不可欠なのか? くるみ割り人形みたいなあの人が手招きしている――大好きな人を包み込んだ大きな――朱に混じる事は難しくない、かっこうに巣を侵略された誰かのようだ。大きな空を――で――如何したというのか、醜い妄想に嵌まっている。伸ばした肢はいくつに『わかれて』いた。人であり、鳥であるこの体――早く、速く、疾く――鳥である象徴の――絡まった甘辛さが落胆していた、煮込まれる危惧は知らない。
羽毛に包まれた全身が寒くて冷えて、寂しさが痛みを刻んでいる。何故かはわからないけれど鳥肌が立つ。たとえば串刺しにされた気分だ、塩漬けは今日も焦がれている。いや、何も問題はない、はず。全てはカイトの気の所為で、普段から『俺は俺』だろう。何もなくしてる訳が――壺に押し込まれた怖気がゆっくりと迫った、ティーカップに頭からおちた小人。
心から自分を振り払い空を見上げた。大好きな世界が金色に飛び込んで、遠く遠く感じている。
――届かない。
成否
成功
第1章 第14節
断絶の所以を弄ろうと、腕を伸ばしても真偽は不明の儘だ。愛でられ撫でられの記録も元に、黙阿弥へと還すのが嫌なのか如何かと問われたら「良いデショウ」――大切なものを棄てろと世界が謂うならば頷くしかない。全てを捧げろと世界が餓えているならば鵜呑みするしかない。重ねて、この物語は尽くが幻想なのだ。我々にとっては『フィクション』、尚の事好都合ではないのか。たとえば崖の上からぶん投げた腸の欠片、海底へと沈む場合は音も聞こえない――それじゃ、景気良く。自分自身としての意識、わんことしての存在は『バグやらなんやら』の産物もしくは祈祷文。慕っている『※※』の事も含めて大事にしなきゃいけないんデスケドネ……? 丸めて潰したチリ紙、さぁ、ポイっと。
時計の針を逆回しして『遡る』事が出来るとでも思ったのか、世界と共にオマエは『失せる』道しか歩んでいない。機械を動かす意識やオイルがこぼれたら如何だ、残ったのは価値のない物質程度だろう。物も言えないよくあるドール、金属と半導体の塊――嗚呼、何れは毀れて仕舞われるのだ。けれど、誰かの為に『いなくなれる』なんて、それこそ機械の本望じゃないか――病的なまでに染み付いた悦び、痕を引いていた。
さぁ。これで――とける渦中で消失が啜っている。感謝を表す事も出来ない、真ん丸な穴が埋まっている。おかしな哄笑の術も『無』を患い、ずぶずぶと同化されて往った――良かったんだろう?
成否
成功
第1章 第15節
赤い糸は大切な『モノ』と言えるだろうが、すみれの掌には『者』しかなかった。召喚されたその日に『者』すらも失って、この心臓には何が残っていると告ぐのか。代わりといっては何ですが、ありきたりな花を添えるのは素敵だろう。弁をもぎ取って記す言の葉、恋心と愛のふたつを泥にのせる。とても大切なものですが、夫のいない世界でこれらは不要ですから――正解を歩んでも幸福とは限らず、非常に『よく似た』蕾しか摘めないのだ。頭を垂らしたのか心を落としたのかわからないが、ああ、あとでもう一人の私に謝っておきますかね……次は畝程度残してやってくれ。
水面に浮かんだ『わたし』は何故『こんな場所』に居るのか、右も左もわからなかった。先程まで捲っていた人体錬成の本は傍らに存在していない。しかし如何いう事だろうか。水色だった髪が紫に染まり、角が削れたようにひどく短い。そして白無垢はドレスとかわり、みにくく思えていた牙が無くなっている――そしてこの柔らかな肉付き、癒えた背中がスベスベと笑っている。ふと、触れれば小さくて冷たいもの。左薬指に指輪……? 幻想が現実になったとでも説くのか、ほどけた理想が状況を突き付けて……夢であったとしても嬉しいですね。
かすれた目はきっと、オマエのか弱さの証明だろうか。ながびく歓びは醒める頃、ある種の絶望として綴じられるに違いない。ふくふくと戯れていた肉の塊が帰ってきてと触腕を生やす……。
成否
成功
第1章 第16節
色見の変化を楽しむ為に鎖した檻、内側に生えた刺々しさを抜く事は出来ない。貫かれた脳はこぼれるかのように迷走し、あふれた言の葉を反芻していく。大事なもの? 疑問符に「小生」と語り掛けたとして世界の真意は解読不可能だろう、オマエにとっての大事なものそれは――それは――何だと謂うのか、鴉が光物を掻っ攫うかのように眼球を覗いている。消失、たとえば蟻から帰巣本能を拭い取ったら自殺するしかないだろう。身投げ場は誰かが作ったもので、最終的には濁流が這入り込む。そう、狂ってしまうのだ。※※の存在が見当たらない※※の存在が聞こえない※※の存在に触れない。どうして。どこに? そこにある。手を伸ばした。足をぶらり遊ばせた。からっぽの頭蓋を、嘆くように回してみた。いや、なり得る――汝は小生の神になりえるか。
底の知れない螺旋に思考が囚われたとして、答え合わせを成すのは自分自身だ。なりえないのであれば、なり得るというならば――そうする・そうなる――臭いものには蓋が要る筈だった。正解、全ては正になる。汝が小生の神なのだ――ゆりかごの棘は刺さったまま。
小生のものになってくれ。これは身投げするかのような絶対だ、成るのだ。千もの腕に抱かれて、抱く無貌を小生にみせるのだ。汝は、小生の神へと至る――弄った輪郭は生き甲斐の写し鏡――新しき我が神になって。新しき……になって?
情念、わからない。それっぽく色見の変――。
成否
成功
第1章 第17節
ふわっふわなアイデンティティを提げて、オマエは何処かに飛び込んだのだ。
はろーっ! じゅてーむっ! ごきげんようっ!
そんな隅っこで如何したんだいお嬢さん、やけに張り切ってまるで自棄を起こした心臓じゃないか。先程挨拶した世界の民がシリアス背負って声掛けてきた、そのまま彼方側の大口にシュート。美味そうなメインディッシュの名称は存在感だ。噛めば噛むほどにとても味が出る――未来人のヨハナ・ゲールマン・ハラタですっ! 既に何か大切なものを落としているような面で異世界の枠組み、つうっと舐るかの如く指を動かした。いやぁ今ヨハナなにを失ってるんでしょうねぇっ! 単位を選択するならば『ミリ』だ、たくさんの絵画を並べて誰なのか否か書いて魅せろ。
っていうか、他の皆さんがテンションダダ下がりなのにヨハナだけ空気違いませんっ? ある種の魔に中てられたのか消失が狂い『並行』を齧ったとでも謂うのか。少なくとも傍らに在ったタイプライター、決して記憶は欠けていない。ヨハナまた何か抵抗しちゃいましたっ? 頭の中まで追い抜いたポジティブシンキング、身勝手にあっち側を駆けている。そういう予定だったんですがっ!
むしろなんかこう……軽い。いつもよりぽわぽわした心地が胸に染み込んでいる。気が楽というか、余計な事を考えずに済むというか……これ以上の怠惰が在ると嗤うならば教えてくれ。まあ、きっと悪いことじゃないですよねっ!
成否
成功
第1章 第18節
消失したものは返ってこない。
イレギュラーでなければ掬い出せなかった。
さあ――現実に戻ろうか。
君はp3p――名前を入力してください。
NMコメント
にゃあらです。
大切なものを失くしにいこう。
●消失世界
住民の『大切なもの』を消失する事で保たれる世界です。
この世界の住民はすべての『大切なもの』を消失しています。
このままでは世界が『住民そのもの』を消失してしまうでしょう。
止めなければなりません。
●目標
自分の『大切なもの』を失くしてください。
それでどのような状況・状態になるかは個人で異なります。
●サンプルプレイング
旅人Ⅰの場合。
「大切なものか。手放したくはないが、これも世界を維持する為」
元の世界で友人から貰ったキーホルダー。
これは俺のパンドラでもある。
一生友達だと誓ったアイツ……待て。
アイツって誰だ? そもそも俺に友人など居たのか?
ダメだ、思い出そうとすると頭が痛くなる。
「――俺はどこに居ても独りか」
純種Ⅱの場合。
「この記憶は絶対に渡せない。これがないと……」
※※との出会い、※※との交流、それを通じて得た心の昂ぶり。
ああ、これは、きっと甘酸っぱいものだろうか。
会いたい会いたいあの人に会いたい……あの人との情熱的な……。
あれ?
急に熱っぽさが冷えてきた。何がそんなに大切だったんだっけ。
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