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シナリオ詳細

<ヴィーグリーズ会戦>その願いを打ち砕け

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●一族の悲願
 ――良く覚えておくのですよ、愛しい子。
 それは甘い。甘い毒だった。
 幼い少年はそれを無垢な瞳で見上げ、嘘を知らぬ耳で聞く。

 ――あなたはもっと上の地位に立てる者なのです。
 自らを肯定し、欲を抱かせる甘い毒。
 肯定されることは嬉しい。否定されることは悲しい。だから肯定されるように、否定されないように上を見なくてはならないと教え込まれた。

 ――今に甘んじてはなりません。
 良い言い方をすれば、向上心があるとも表現できる。
 実際に母は少年へ沢山のことを施した。マナーレッスン、剣術指導、芸術との接点に話術……今よりも上に立つには真実、必要なものだったろう。

 けれど。

 ――蹴落としてやりなさい。あの場所は、あなたにこそ相応しい。
 これをもっと生々しく言うならば、『野望』であった。
 母は表向きのことから裏側の、汚い部分も少年へ教え込んだ。見つからないズルの仕方。どのように相手を蹴散らすか。どのように自分が上り詰めるか。

 少年は『母にとって』真っ直ぐ育った。彼女から良く学び、彼女と同調する1人の青年(駒)となった。
 けれど想定外はといえば、その母親も病に勝てなかったと言うことか。床に伏した彼女は最期まで子を――厳密に言えば子の地位を案じていた。

「……母様」
 青年は棺を前にして小さく、幼少期のように呼んだ。応えの返ってこない呟きは床へと零れ落ちる。
 彼女の、いや一族の悲願を彼は背負っていた。決戦の時がやってくる。ここで負ければ歩み続けた道が途絶えるのだ。
「必ずや上り詰めましょう。この国は、あの貴族たちだけのものではない」
 三大貴族を蹴散らし、その地位に自らが立つ。その光景を見ることができなかった母も、彼岸に渡った一族の者もようやく浮かばれよう。

 決戦は、近い。


●ローレット
「皆さん、ヴィーグリーズの丘で戦いが始まろうとしています! 依頼のご確認を!」
 ブラウ(p3n000090)が慌ただしく書類やら何やらを運んだびながらイレギュラーズたちへと呼びかけている。コルクボードの確認、あるいは情報屋から依頼を受けてくれ、と。
「あ、そこの方! この依頼をコルクボードにお願いできますか? ついでに受けていただけたら嬉しいなーなんて!」
 たまたま通りかかったあなたに依頼書を押し付けたブラウはすみませんよろしく! と言いながらも早足にあちらへこちらへ――終いには予想通りというか、派手にかけて書類がローレット内を舞った。
 慌てて拾い集める様を半ば呆れながら見て、それからあなたは依頼書へ視線を向ける。先程ブラウから渡されたものだ。
 ことの初めは春先まで遡る。ラサからやってきた悪徳商人が大規模な奴隷市を開催したのだ。そこからさほどの時をおかずして各地に魔物が出没し始め、貴族領やイレギュラーズ所有の領地を襲うこととなる。
 これに対処するため、国王フォルデルマンは『勇者選挙』を開催する。魔物討伐などを行うことでメダルを賞与され、より多く集めた者を勇者とするシステムだ。冒険者たちの参入もあったものの、勇者となったのはイレギュラーズであった。

 大規模奴隷市、魔物の出没、そして勇者選挙に現れた偽勇者の存在――全ての裏には腐敗した幻想貴族の影がある。
 その黒幕こそ幻想貴族ミーミルンド家とその派閥であると、イレギュラーズによって明るみになったのはつい先日のことだった。

 依頼書に記されたノワール・アルジュエ子爵もミーミルンド派の貴族であり、個人としては剣士として知られる人物でもある。彼の一族は昔から三大貴族を良く思っておらず、特に当主の母、亡きベルナデッタ・アルジュエは特にその気が強かったとか。
 母の意思を継ぐべく、当主はこの戦いに参戦するらしい。戦いの場となる『ヴィーグリーズの丘』へ向かっているという。彼を撃退――国へ歯向かったことを思えば撃破してしまっても咎めはないだろう――することがこの依頼に課せられたオーダーであった。
 しかしながら、相手は私兵の軍勢をつれている。イレギュラーズで対処するにしても多勢に無勢だ。
「あ! その依頼なんですけれど」
 書類を集め終わったらしいブラウが、依頼書に目を留めて声をかけてくる。伝え忘れがあったらしい彼は、ちょうどあなたが呼んでいた部分を指した。
「相手の軍勢なんですけれど、こちらも友軍がいるんです! 押し込める程ではないでしょうけれど……でも皆さんが戦うだけの時間は作ってくれると思います」
 三大貴族の派閥に属する貴族が出兵してくれるのだという。実力は五分五分、若干こちらが押されるかもしれないが――そこまでにどう戦況をひっくり返すかが鍵となりそうだ。

GMコメント

●成功条件
 ノワール・アルジュエ子爵の撃退、あるいは撃破

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。不明点もあります。

●エネミー
・ノワール・アルジュエ
 三大貴族を良く思わない幻想貴族です。マザコンです。幼いころからの母の教育と、一族が長く持ち続けた悲願によって偏った思い込みを抱いています。ただしひねくれた性格ではなく、純粋にそう信じているタチの悪いタイプです。
 彼は剣士としても名が通っており、片手剣と盾で戦いを挑んできます。攻守両方にバランスの良いタイプで、特に瞬発力が高いです。
 彼の前に立ちはだかる敵があれば容赦なくその剣を向けるでしょう。

・近衛兵(攻)×4
 ノワールの近くを護る兵士たちです。剣や槍を持ち、至近~中距離レンジで戦います。
 彼らは攻撃寄りのステータス持ちで、命中率も高いです。【乱れ】【麻痺】系統のBSを受ける可能性があります。
 後衛やヒーラーを優先して攻撃しますが、ノワールの指示があれば従います。

・近衛兵(守)×6
 ノワールの近くを護る兵士たちです。剣や槍を持ち、至近~中距離レンジで戦います。
 彼らは守備寄りのステータス持ちで、回避力も高いです。【反】を持っています。
 かばうやブロック等、イレギュラーズの邪魔をしてくるでしょう。

・私兵×???
 友軍が相手取るアルジュエ軍です。めちゃくちゃいます。
 場合によっては流れ弾が飛んでくることがあります。そこまで痛くはありませんが、ダメージにはなります。
 ノワールが撃退、ないしは撃破された場合は撤退します。

●フィールド
 ヴィーグリーズの丘の周辺。あたりは平野ですが、周囲は乱戦状態です。
 そのため流れ弾が飛んでくる他、倒れた兵士に躓いたりする可能性もあります。

●友軍
・貴族私兵×???
 味方貴族が出兵した軍です。敵私兵とぶつかり合います。
 味方も相手も沢山いるため、そちらの数を減らして味方を増やすよりはさっさと頭を叩いてしまった方が良いでしょう。
 時間がかかれば徐々にこちらが押されます。

●士気ボーナス
 今回のシナリオでは、味方の士気を上げるプレイングをかけると判定にボーナスがかかります。

●ご挨拶
 愁と申します。
 合戦の最中で敵の頭を狙いに行きましょう! ただし、撃退でなく撃破となれば相応に難易度が上がるとご承知おきください。
 それでは、よろしくお願い致します。

  • <ヴィーグリーズ会戦>その願いを打ち砕け完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年07月05日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
クラウジア=ジュエリア=ペトロヴァー(p3p006508)
宝石の魔女
矢都花 リリー(p3p006541)
ゴールデンラバール
ヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)
水底にて
メーコ・メープル(p3p008206)
ふわふわめぇめぇ
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
白夜 希(p3p009099)
死生の魔女
サルヴェナーズ・ザラスシュティ(p3p009720)
砂漠の蛇

リプレイ


 剣戟。怒号。それらが響き渡るヴィーグリーズの丘をイレギュラーズは駆け抜ける。元は見晴らしの良い場所なのだろうが、こうも乱戦ばかりでは遠くを見通すことも容易くない。
 しかし、それでも。イレギュラーズは戦いに巻き込まれることなく走り続けられていた。
(いい歳して親が敷いたレールの上歩いてるだけとか……ださ……)
 『ゴールデンラバール』矢都花 リリー(p3p006541)はその一員として戦場を駆けていた。道は友軍たちが開けてくれている。自分たちは真っすぐ進み、最奥の敵将を迎え撃つだけ。めっちゃ楽。
 だがしかし、思うのだ。そもそもこんなことしなければ自分たちは、というか自分はニートな引きこもり生活が出来たのに。
 死んだ母親に従順なあいつより、親と戦うニート――さしずめ、リリーの方がずっと偉いのである。こちらに正面激突してこようというあたりも庇いようなく有罪だ、というのがリリーの言い分である。逆ギレとか言ってはいけない。
「教育か、刷り込みか、はたまた妄執か……いずれにせよ、くだらない」
「んーむ……まあ、儂らがハイそうですかと従う謂れにはならぬな」
 『影を歩くもの』ヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)の言葉に『宝石の魔女』クラウジア=ジュエリア=ペトロヴァー(p3p006508)は瞳を眇める。見方を変えれば彼も被害者であると言えようが、こちらへ害為すならば敵だ。
(きっと始まりは、愛する人に幸福であって欲しいという純粋な願いだったのでしょう)
 時を経たことで歪んでしまった願い――『砂漠の蛇』サルヴェナーズ・ザラスシュティ(p3p009720)は悲しいものだと思わざるを得ない。綺麗なはずだったその願望は、今や酷く醜い妄執へと変貌している。人を巻き込み、国を巻き込み、犠牲を厭わぬモノ。
 それを、易々と叶える訳にはいかない。
「我が名はウェール=ナインボート! 真のブレイブメダリオンを持つ勇者の1人である!」
 駆けながら『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)が声を上げた。その声は周囲で戦う敵味方の兵士へと遠くまで響き渡り、嘘か誠かは置いておいて『勇者を名乗る者が現れた』事実を広める。ただその事実だけであれば敵の扇動かもしれない――そんな警戒だけで終わっていただろう。
「突然だが、俺には息子がいる! 血は繋がらないが、目に入れても痛くない息子だ!」
 ウェールは元世界にいる会えない息子を思い出す。数年しか一緒にいなくとも、鮮明に思い出せるかの姿と、言葉と、思い出を。
 とても優しい子であった。ウェールが怪我をして帰ってくれば、心配のあまり涙を零してしまうくらいに――他人の傷を、自分の事のように心配する子だった。
「ここに集まった者にも守りたい者が、大切な者がいると思う。だからあなた達の大切な者が笑える明日を守りたい! 死なずに死ぬ気であなた達の力を貸してくれ!!」
 じわじわと上がる熱気。生きるという意志。勝つという気力。ウェールの言葉が染み渡るようにそれらは燃え盛っていく。
(俺が出るまでもなさそうだ)
 『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)はウェールの言葉に感化されていく人々を見てほんの僅か、口元を緩めた。ウェールの言葉は十二分に効力をあらわした。あとは気力で負けそうな者を見かけたら、そっと声をかけてやるくらいだろう。帰りを待つ者がいて、守りたいと願いものがある。その為の僅かな後押しなら、アーマデルにも出来るだろうから。
 とはいえ、戦いが苛烈になれば否が応でも流れ弾が飛んでくる。低空飛行で少しでも視認性を上げる『神は許さなくても私が許す』白夜 希(p3p009099)は、敵本陣の姿を見つけた。もうまもなく――射程の、中に。
 大きな深呼吸の後、希は深淵魔法を展開させる。自分の仕事は指揮官ノワール・アルジュエと彼を護る兵士を足止めする事。
「敵襲だ!」
 超遠距離からの攻撃に相手の初動は遅れる。動けない兵士たちを見て、一部の兵士たちがイレギュラーズたちへ向かってきた。アーマデルは怨嗟の英霊残響を響かせる。ヴァイオレットは近づいてきた彼らを見て否定の翼を展開させた。
「ワタクシを捉えられるものなら――やってみればよろしい」
 何もさせはしない。彼女に宿るは自由の翼。そこへ更に思考の一部を演算化させることで自身の能力を向上させる。
(狙うは大将首。短期決戦ですね)
 友軍たちは彼らが討ち取られるか、撤退するまで経戦を強いられることになる。あまり長く戦っていればそちらが崩壊することになるだろう。そうなればイレギュラーズとて数の波に飲み込まれることになる。
(――しかし、そうならぬようにするのも儂らの役目よ)
 クラウジア魔法触媒をその手に。彼女の力がその周囲へと伝播する。
「儂のバフを持ってゆけい! ちょっとじゃが確実に助けになるであろう、奮えよ! 戦士たちよ!」
 イレギュラーズだけでなく、少しでも友軍兵士がその中に入るように。士気を上げんとするクラウジアの声に周囲の友軍が応と答える。クラウジアはにっと絵にを浮かべ、神聖なる光を激しく瞬かせた。
「それでは、取り掛かるとしましょう」
 サルヴェナーズは目元に巻いていた眼帯を取り去る。その瞳が宿す魔の力は会敵した兵士たちを催眠せんと広がった。
「くっ、なんだこれは」
「ああ、くそ……イライラする!」
「何を言ってるんだ? なんて甘い、どこから……?」
 魔術にかかったある兵士は苛立ち、ある兵士は魅了され。その合間を縫ってウェールは後方へ飛び込むと、がっしりとした鎧を纏う兵士に炎の牙を喰らわせんとする。
「皆さんのことは、メーコが守りますめぇ!」
 『ふわふわめぇめぇ』メーコ・メープル(p3p008206)の手にした鐘が鳴り、サルヴェナーズを回復せんとする。いくつかの視線がメーコへ刺さったが、気にしない。むしろ来れば良い。ただでやられるメーコではないのだから。
「ぎゃあっ」
 不意に空から何かが飛来し、敵陣へ落ちた。何かって――バールだ。しかもかなり磨き上げられたバールが文字通りに暴れまわっている。
「あいつだ!」
「えー……私兵の流れ弾じゃない……? というか、人を指さすなって教わらなかった……? どいつもこいつもまじギルティ……」
 すっとぼけるリリー。流石にバールを持った私兵はいなかったが、それにしたって指を差すたぁまじギルティだぜ。
 そんなこんなでイレギュラーズの攻勢から始まった戦いも、こちらの存在を認識すれば対応が追い付いてくる。
「……っ」
(――早い!)
 希は自身の攻撃より早く動いたノワールに目を見張った。かの一太刀に迷いはなく、希は攻撃方法を切り替えていた。
 守に重きを置いた近衛兵たちも存外身軽であるが、ここで潰れる訳にはいかない。希もまた、この作戦成功の要なのだから!
 カラン、カラン。メーコが鳴らす危急の鐘がサルヴェナーズへ向かおうとしていた近衛兵を自身へ繋ぎとめる。クラウジアの負担を減らすなら、少しでもこちらへ引き付けてダメージを分散させるべきだ。ふわふわの髪が蓄えた静電気を放出させるメーコん、アーマデルはナイトメアミラージュで加勢する。
 そうして敵視を分散させてくれる彼女の存在を感じながら、サルヴェナーズもまた敵を引き離さぬよう言葉をかける。甘く、彼らが聞き過ごせぬような、言葉を。
「ふふ、悲願を背負った跡取りという話ですから、一族にとってはさぞ大事な存在でしょう……ね?」
「貴様ぁ!」
 怒号と共に受ける痛み。しかしその痛みをもたらした者にもまた、相応の痛みを返して。サルヴェナーズは蓄積させた穢れを槍として変化させた。
 槍が向かう先、敵兵の合間を鋭い煌めきが無数に舞う。柄に嵌められた宝石のそれか、あるいは。
「ヒヒッ……ワタクシの動きが速すぎる? アナタ様方の動きが遅くなっているのですよ」
 残像を残すほどの手数にヴァイオレットが笑みを浮かべる。そこへクラウジアの範囲回復が降り注いだ。まだまだ彼女の余力はある。問題は――相手もまた、苛烈な攻撃を持っている事か。
「ならば、こちらを倒してしまえば良い!」
 力を溜めていたウェールの放つ焔が狼の姿を形取る。息子のように優しくあれと努力した、殺さぬ一撃。その後に容赦ないバールの一撃が降り注ぎ、轟音が響き渡る。
「お、結構響いた……」
 リリーは周囲の士気が上がっただろうかと視線を巡らせる。乱戦模様の戦場で一部の様子を把握することは厳しいだろうが、何と無く、何か大きなことが起こってることは察しているようだ。特にここは敵将のいる場所であるから、さらに攻撃を重ねてこちらの優勢が分かれば士気はぐんと上がるだろう。
 押しては引いて、順調とまでは言わないが、じりじりとイレギュラーズたちは押していく。希は仲間たちの様子を尻目に、ノワールへ口を開いた。
「私にはわからない。ここまでして名を得て……その先で、一体何を求めてるの?」
「一族の再興を。本来在るべき姿になるんだ」
 迷いなく言い切ったノワールに、希は眉根を寄せた。それこそ、理解できない。
 希にとって名声や栄光はどうでも良くて、理想の実が欲しい。けれどもノワールは希がどうでも良いと斬り捨てる名声や栄光が欲しいのか。
 だとすれば――その生き方を理解することは、あまりにも難しい。
(周囲にとって利のある期待であればこそ、抜け出す切っ掛けもなかったろう)
 哀れ、とも言えるのかもしれないが。アーマデルは小さく首を振り、彼へ肉薄すると柘榴の果実酒を香らせる。
 ノワール・アルジュエ。彼は幼いころから重い期待を母から寄せられていたのだろう。それは洗脳、或いは呪いに近い筈だ。自身がそれに溺れている事すら認識できていないかもしれない。
 それでも。後顧の憂いを断つために、そしてここで仕損じないように。まずは確実な『撃退』を目指さなければ。
「一族の悲願だか何だか知りませんが、そんなものに如何ほどの勝ちがあるのです?」
「自身の祖先が願ったことを叶えて、何が悪い!」
 ヴァイオレット放った闘気の糸をノワールが――受ける前に近衛兵の1人が庇う。その背後で叫ぶノワールは、自身の意志でこの戦いを遂行しているようだが。
「子の思想を縛り、戒め、生きるべき道さえ定めてしまう……親と子は、そんな事をするだけの関係ではなかった筈です」
「不敬な!」
「亡き大奥様をも愚弄するか!」
 周囲に残る近衛兵たちが怒りをあらわに吠える。その攻勢に、しかしクラウジアが呑まれることを良しとしない。
「この回復、抜けぬとは言えぬが易易とは抜かせぬぞ?」
「メーコも皆さんを護りますめぇ!」
 クラウジアに続き、自信満々に叫ぶメーコ。その身は傷だらけだが、受けた痛みは微塵も感じさせない。そうして強く在ることこそが、仲間の士気を上げると信じているから。
 リリーによって投げられるバールは標的を主人守る近衛兵たちへと変えていた。しかし奴らにバールを投げるとこちらも痛い。おかしい、どうして。
「従者の失態は主人の失態、おらマザコン何か言えだよぉ……」
 痛いし終わらないし帰りたい。引きこもりたい。怒りがリリーのバールをぶん投げる力を上げる。すぐさまとはいかないが、その最中にサルヴェナーズがノワールの動きを阻害した。
「行かせませんよ」
「この……退け!」
 退けと言われて退く者はいないだろう。サルヴェナーズから逃れんと動き回るノワールを執拗に追いかけていれば、希から新たな問いが投げかけられる。
「勇者になりたい。貴族として上りつめたい……その果てに何があると信じてるの? 何が欲しいの? だって、」
 あなたが認められたかったお母様は。
 希の唇から零れた言葉に、ノワールは軽く目を見張った。そしてぐっと唇を噛み締めて――それでもまだ、引く様子はない。しかしその決断ももうすぐか。
 アーマデルの放つ悪夢に次いでウェールが飛び出していく。自らの想いを伝える為に。
「子爵に戦う理由があるように、こちらにもある。この国は民が生活を営む場所でもあるんだ! 民を平気で犠牲にするミーミルンド派への参戦なんて止めろ!」
「はっ……無理な相談だな!」
 閃く剣閃がサルヴェナーズを退ける。クラウジアは小さく眉根を寄せた。
「……主らの悲願というが、妄執と何が違うというのじゃ?」
 こうしていがみ合い、食い合っている間にも魔種の手が伸びてきているかもしれない。そのまま幻想国ごと滅ぼされるのがオチではないのか。
「妄執?」
 けれど、彼は笑った。
「あなた方が今の幻想国に従っている事こそが、間違っているんだよ」
 純粋に、そう信じているから。
「……所詮、傀儡のアナタに言っても詮無き事ですか、アルジュエ公」
 はぁ、とヴァイオレットはため息をついた。疑うことなきその姿は正に傀儡だ。その目が覚めるのは死してから、だろうか。
「せめて、最期を嗤って差し上げましょう」
 美しく笑う女は、その身から真っ直ぐに闘気を放つ。依り合わさり、細く、鋭くなったそれは――。
「子爵……!」
 ――瀕死の近衛兵に阻まれた。
 ずるりと崩れ落ちる近衛兵に一瞬気を取られるうちに、ノワールは素早く身を翻す。
「待ちなさい――」
「いや、」
 追おうとする仲間をアーマデルは遮った。追い詰めれば仕留められるかもしれない。だが、追い詰めた先で何があるか予想できず、こちらの被害もまた少なくない。アーマデルは敵味方共に死者がいないかとあたりを見渡す。
 淀んだ赤と、土埃に塗れて。それでも立つ者は多い。多少なりとも犠牲が出てしまうのは、戦争だからと片付けてしまったら随分軽すぎるものだけれど。
 ――今この瞬間。この戦場の勝利は、イレギュラーズたちが確かに掴み取ったのだ。

成否

成功

MVP

サルヴェナーズ・ザラスシュティ(p3p009720)
砂漠の蛇

状態異常

白夜 希(p3p009099)[重傷]
死生の魔女
サルヴェナーズ・ザラスシュティ(p3p009720)[重傷]
砂漠の蛇

あとがき

 お疲れ様でした、イレギュラーズ。
 ノワールは何処かへ消えました。その行先は誰も知らず。この一帯はあなたたちによって制されました。

 それでは、またのご縁をお待ちしております。

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