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シナリオ詳細

出撃! ローレット・エンジェル!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ある鉄帝軍人の危機
 鉄帝、ヴィーザル地方。
 ここはノーザン・キングスを名乗る独立勢力がはびこる地域であり、領地境では度々鉄帝本国との小競り合いの発生する地である。
 さて、そのヴィーザル地方、シルヴァンス勢力圏。永久氷樹と共に生きる獣種を主とした『シルヴァンス』達が生きる地。此処は、そのとあるエリアにある前線基地である。外から見ても、多くのシルヴァンス戦士たちが哨戒を続けており、厳重な警戒態勢にある事は見て取れるだろう。
 その基地内にある、酒場に目を移してみよう。中にはひと時の休息を愉しむ戦士たちでごった返しており、酒と食事、そして賭け事による金が飛び交う風景がよく見られる。
 ――さらに視線を動かせば、酒場の奥、厳重な鍵のかけられた扉に気づく者もいるだろう。その奥には地下への階段があり、冷えた空気を感じながら降りていくと、いくつかの小部屋がある。
 そのうちの一つから、くぐもったうめき声が聞こえた。続いて、殴打の音。中を覗いてみれば、そこでは椅子に縛り付けられた鉄機種の男性と少女。それらを囲む、複数の獣種の男性たちの姿が見えただろう。
「ジャイル将軍、いい加減話してくれませんかね……?」
 獣種の男が言った。そのまま、手にした警棒を振り下ろすと、ジャイル、と呼ばれた鉄騎種の男が、その衝撃にうめき声をあげる。
「お父様! お父様!」
 椅子に縛り付けられた鉄騎種の少女が悲鳴を上げた。獣種の男が目くばせすると、仲間の男が少女の縛り付けられた椅子を壁際へとやる。
「やめろ! 娘には手を出すな!」
 ジャイルが叫ぶのへ、獣種の男は笑った。
「約束通り手は出してないでしょうがぁ! ですがそれもいつまで持つか。貴方が喋ってくれないなら、我々にはこの子をいたぶるという選択肢もあるのです……!」
 警棒を、少女へと突きつける。少女が、ひ、と悲鳴を上げた。
「ぐう、ぐううっ……!」
 ジャイルが呻く。痛みも、精神も、限界に近かった。そして、娘を人質に取られているというこの状況。ジャイルが耐えらえるのは、あとわずかかもしれない……! 今すぐ、誰かの助けが必要だ! だが、救いの手は、鉄帝から遠く離れたこちに現れるというのだろうか……!

●ローレット・エンジェル、結成
 さて、先ほどの描写から、しばし時を戻そう。
 ジャイル将軍が拷問を受けているその日よりしばし前。ここは鉄帝、ローレットの出張所にある一室である。
『おはよう、ローレット・エンジェルの諸君』
 練達製のスピーカーから聞こえるのは、ローレット・エンジェルを指揮する、正体不明の男の声だった。いや、本当に男なのであろうか? その声は練達の機械技術により、その声すら偽装されているかもしれないのだ。人好きのする声音ではあるが、それすらも演技なのかもしれない。
 いや、そもそもローレット・エンジェルとは何なのか? 説明しよう。この度ローレットは、経験豊富なイレギュラーズ達を集め、試験的に特殊チームを結成した。それがローレット・エンジェルである。この場にいるあなたもまた、選ばれた『エンジェル』の一人だ。
「おはよう、支配人(マスター)殿。吾らが呼ばれたという事は、刺激的な任務であろうな?」
 にぃ、と笑う咲花・百合子 (p3p001385)。支配人はスピーカーから笑い声をあげる。
『もちろんだとも、私のエンジェル。まずはテーブルの上の資料を見て欲しい。ちゃんと人数分あるだろう?』
 八冊の資料が、テーブルに置かれている。あなた、そして他のエンジェルたちはそれを手にした。
「まぁ。今回は潜入と救出任務ね。鉄帝とノーザン・キングスが接する地に配属された、軍の将軍がさらわれたという事?」
 メルランヌ・ヴィーライ (p3p009063)がそう言うのへ、『そうだとも、メルランヌ』と支配人は答えた。
『ノーザン・キングス、シルヴァンス勢力の戦士たちは、卑劣にもジャイル将軍の娘、チュレイを人質に、将軍を無力化し、誘拐した』
「将軍は、シルヴァンスの前線基地に捕らえられている、か。ここまでは確定情報なんだ」
 長谷部 朋子 (p3p008321)が言った。
『ああ、鉄帝のエージェントによって、そこまでは確認された。だが、現場は難攻不落の前線基地。鉄帝のエージェントでは分が悪い……かといって、将軍一人のために、大軍を動かすわけにもいかない』
「鉄帝本国は、ノーザン・キングスを軽視してしますしね……そもそも、さらわれたのは何故なのですか?」
 橋場・ステラ (p3p008617)の言葉に、支配人は答える。
『ジャイル将軍は、鉄帝でもロスト・テクノロジー、つまり古代文明遺跡の発掘調査を行っていた人物だ。シルヴァンス勢力は、そう言った遺失技術の遺産を鉄帝から奪い、戦力に組み込む傾向にある。今回も、強力なロスト・テクノロジーの情報を得るために、将軍をさらったのだろう』
「なるほど……将軍がさらわれたのは、何時?」
 城火 綾花 (p3p007140)が尋ねる。
『昨日の事だ。チュレイともども攫われた。君たちには、すぐに前線基地に向かい、将軍と娘を助け出してもらいたいんだよ』
「昨日、ですか……救助者の身が心配です。すぐに動きましょう」
 蓮杖 綾姫 (p3p008658)の言葉に、エンジェルたちは頷いた。
『では、気を付けて行ってきてくれたまえ。君たちの華麗な活躍を、ここから楽しみにさせてもらうよ』
 支配人の言葉に、あなたも頷いて返した。そして、あなたをはじめとするエンジェルたちは、お互いに視線を合わせて、笑いあう。それから手をあげて、ハイタッチをすると、
『エンジェル・ゴー!』
 それを合図に、作戦行動を開始した!

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 此方の依頼は、イレギュラーズ達への指令(リクエスト)によってもたらされたものになります。

●成功条件
 ジャイル将軍とチュレイを救出して、シルヴァンス前線基地より脱出する。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●状況
 ローレット・エンジェル。それは新設された特殊チーム。
 そこに所属することとなったあなたは、支配人と呼ばれる指揮官の下、任務へと出発します。
 今回の任務は、シルヴァンス勢力に囚われた鉄帝の将軍、ジャイルと、娘のチュレイの救出です。
 二人は、シルヴァンスの前線基地、その酒場の一室に囚われています。
 二人を救うには、『前線基地への侵入方法』、『酒場への侵入方法』、そして『脱出方法』の三点を考える必要があるでしょう。
 前線基地には、多くのシルヴァンス戦士たちが存在し、鉄帝でも使われている銃などの兵器や、古代兵器の車両などが存在します。適切なスキルやプレイングがあれば、奪って足に使うことができるかもしれません。
 さあ、エンジェルたちよ! 己の知恵と力と女子力(男子力でも構いません)で、見事ミッションを成功させてください!
 なお、ミッション開始時刻は昼となっています。

●重要な備考
 此方のシナリオでは、それぞれ『思い思いの女子力勝負服』を着て作戦に参加することになります。
 男性が参加したとしても、『思い思いの女子力勝負服』を着て作戦に参加してください。貴方はエンジェルなのです。エンジェルならば当然のドレスコードなのです。
 どんな服を着ているかは、プレイングに記入するとよいと思います。アイテムや防具で持ち込んでも大丈夫です。

●エネミーデータ
 シルヴァンス戦士たち ×たくさん
  シルヴァンスの戦士たちです。遭遇する相手にもよりますが、近接格闘や銃などで攻撃してきます。
  これといった特徴は無いですが、数は非常に多いです。
  戦闘能力も様々ですが、ちょっと強めのリーダー的個体も存在します。
  基本的には潜入作戦ですので、ぜんぶを相手にして戦うという事はないと思います。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイングをお待ちしております。

  • 出撃! ローレット・エンジェル!完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年06月29日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
※参加確定済み※
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
津久見・弥恵(p3p005208)
薔薇の舞踏
城火 綾花(p3p007140)
Joker
※参加確定済み※
長谷部 朋子(p3p008321)
蛮族令嬢
※参加確定済み※
橋場・ステラ(p3p008617)
夜を裂く星
※参加確定済み※
蓮杖 綾姫(p3p008658)
悲嘆の呪いを知りし者
※参加確定済み※
メルランヌ・ヴィーライ(p3p009063)
翼より殺意を込めて
※参加確定済み※

リプレイ

●降り立つエンジェル!
 永久樹氷に閉ざされた地、ヴィーザル地方シルヴァンス。そこには鉄帝への攻撃を目論む者達による前線基地が築かれていた。
 その厳重なる警備が行われる入り口ゲートに、今八人の女性たちがやってきたのである――。
「とまれ!」
 シルヴァンス戦士、ウサギの獣種の兵士が、女性たちを止めた。兵士は女性たちをじろり、とにらみつけると、
「何者だ! 一般人は立ち入る事は出来んぞ!」
「少しよろしいでしょうか、私達は旅をしながら芸を生業としているものです」
 そう言うのは、まさにダンサーと言った衣装の女性、『薔薇の舞踏』津久見・弥恵(p3p005208)である。
「一晩、こちらで宿を貸してはいただけませんか?
 代わりと言っては何ですが、皆様に華やかな一時をプレゼントいたします」
 ゆっくりと手を合わせて微笑む。妖艶さと清楚さを併せ持つ蠱惑の笑み。
「ここに集まりしは麗しき乙女たち、いずれも劣らぬ煌めく宝石。基地の夜を華やかに彩ることでしょう。
 ええ。そうねえ。対価は一夜の宿で結構。ちょっとした慰問と思って下さいな」
 そう言って笑むのは、赤いロングドレスに、毛皮のショールを羽織った、貴婦人風の女性――『翼より殺意を込めて』メルランヌ・ヴィーライ(p3p009063)である。
「お前が座長か?」
 兵士が尋ねるのへ、
「ええ、その通りです。どうかしら? ここは寒いわ、中でゆっくりと、お話しできないかしら?」
 メルランヌが、ゆっくりと兵士にしなだれかかった。耳元にわずかにかかる吐息。兵士の腕を、意図的に胸へと押し付ける。
「もし御心配でしたら、証拠をお見せしても良いですのよ? ねぇ、弥恵?」
 座長としての自分をアピールするように、メルランヌは弥恵を呼び捨てで呼んだ。弥恵は頷くと、兵士の反対側の腕へ、しなだれかかる。
「ここで、私の舞を披露しても良いですよ……?」
「ま、まて、わかった」
 兵士は慌てた様子で言うと、
「上の者に確認する……しばしそこで待て」
 兵士がゲートを閉めて、中へと消えていく。一同はそれを見送りながら、目くばせした。しかして、何か会話をすることはない。此処はシルヴァンスの勢力地。どこで監視されているか分かったものではない。リスクは最低限にするものだ。
 しばしの時間の後に、兵士は戻ってきた。
「お前達、入っていいぞ」
「まぁ、ありがとうございます」
 優雅に一礼をする赤の貴婦人。メルランヌはゆっくりと兵士の耳元に顔を近づけると、
「今夜は部屋を開けておきます……ぜひいらして?」
 誘惑するように笑うと、兵士はごくり、とつばを飲み込んだ。
「ただし! お前達が入っていいのは、手前の……此処からも見えるだろう、あの酒場の付近だけだ! 部屋は貸してやる。ただし、余計な部屋や、本部には入るなよ!」
「承知しています」
 弥恵がにっこりと笑った。
「休憩の時には、是非酒場まで。一番近くで、私の舞をご披露します」
 弥恵の言葉を残して、一同はゲートの中へと足を踏み入れる。雪が降り積もる基地内。石畳の道の奥には、本拠地と思わしき大きな建物がある。その横には、巨大なガレージがあって、蒸気式装甲車が数台見えた。
「吾はあちらであるな」
 白のセーラー服で清楚さと女子力をアピールする『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)が、ちらりとガレージへ視線を移す。
「使い魔とテレパスは吾の力で相殺しよう。ステラ殿、朋子殿、隙を見て潜入を試みようぞ」
 と、百合子が視線を向けるのは、肉食獣の毛皮と骨でがおーって感じのコーディネートをした『蛮族令嬢』長谷部 朋子(p3p008321)と、元世界で通っていた学園の制服を着た『花盾』橋場・ステラ(p3p008617)である。
「了解だよ! 運転は任せて! アクセル踏めば動くんでしょ? だいじょーぶだいじょーぶ!」
「う、うーん、少し不安ですが……」
 ステラが苦笑する。
「拙は色々と細工を。では皆様、将軍と、御息女を、よろしくお願いします」
 ステラの言葉に、仲間達は頷く。三人は見張りの兵士の隙をつき、ガレージへと向かって走り出した。残された一行は素知らぬ顔で酒場へ向かって歩き、やがて賑やかなその場所へと足を踏み入れた――。

●潜入! エンジェル!
 兵士たちの憩いの場でもある、酒場。今も休憩中の多くの兵士たちでごった返していた。娯楽の乏しい軍事基地においては、酒と賭博が、兵士たちの心の慰みでもある。
(そんな施設に、要人が捕らえられているとは思うまい……と言う所ですね。もし私達のような情報網があらず、将軍を助けようとするなら、本部吉の方を調査するはず……)
 と、胸中で呟く『断ち斬りの』蓮杖 綾姫(p3p008658)。巫女服風の和装に、編み上げブーツをはいた和洋折衷のいでたちである。他のメンバーが些かリラックス気味の表情を見せているの対して、綾姫の表情から緊張が抜けないのは、任務へのそれ……と言うよりは、特殊部隊の持つ、なんだか不思議な雰囲気への気恥ずかしさからだろう。
(……というか、どうしてエンジェル、何でしょう? 勢いでエンジェル・ゴー! とか掛け声みたくやってしまいましたが、今思い返してみると恥ずかしい……!)
 頬に手を当てわたわたと頭を振る綾姫。とはいえ、今は思い出し恥ずかししている場合ではない。綾姫は、酒場の奥、あてがわれた宿泊室のあるエリアに戻った。その最奥の部屋からは、くぐもった声と荒い息遣いが聞こえてくる。そして、ベッドのきしむ音。綾姫はふぅ、とため息をつきつつ、その最奥の部屋の扉を開けた。
「叫んだら命はないと思いなさい。その内気持ちよくなってくるわよ」
 と、男へ声をかけるのは、メルランヌである。メルランヌは、先ほどまでの貴婦人風のドレスから一転、ぴっちりとしたボディースーツを着ていた。男は、この基地の部隊長の一人であり、パンツ一丁で黒いキューブに拘束され、ベッドに転がされている。
 ……別に、艶やかな事をしているわけではない。ストレートにいれば、部隊長を捕まえて拘束、尋問しているわけである。
「メルランヌさん、首尾の方はどうですか?」
 男から目をそらしながら、綾姫が言う。メルランヌは頷くと、
「将軍と御息女は、ここの従業員用の扉の奥、らしいわね」
「あそこですか……確か鍵がかかっていましたが」
「ねぇ、あなた様? 鍵はどこ?」
 ぐ、と足をに力を込めて男を踏みしめると、呼吸困難に陥った男が喘ぐように言った。
「ぶ、部下に持たせてある……ポーカー勝負をしている、犬の獣種の……!」
「だ、そうです」
「ポーカー……たしか、綾花さんの担当でしたね」
 その言葉に、メルランヌは頷いた。
 ……一方、当の『Joker』城火 綾花(p3p007140)は、
「ねえ、そこの貴男。挨拶ついでにひと勝負、いかがですか?
 勿論勝ち負けだけの何のリスクもない勝負ですよ」
 と、犬の獣種の兵士の手を握った。ゆっくりと、懇願するように、その手を胸元へ。触れるか触れないかのギリギリのライン。お互いの体温が、空気越しに伝わる。
「おう、だが俺は強いぜ?」
 鼻の下を伸ばした兵士が、テーブルに着いた。
(チョロいですね。カジノでは大負けするタイプですよ)
 胸中でぼやきつつ、綾花は席に着く。バーテンダーからトランプを借りて、シャッフル。視線を横にやれば、弥恵のダンスに、多くの兵士たち、そして件のバーテンダーすら釘付けになっているのが分かる。となれば、こちらは賭け事で衆目の注意を引いて、隙の目を産ませてやる必要があるわけだ。
(さあ、カジノの仕事で培った技術、存分に披露してあげましょうか)
 にっこりと笑うと、綾花はお互いにカードを配った。
 さて、綾花と同じくバニーガール姿の『鋼鉄探偵の助手』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)が、その勝負を見やりつつ、くい、とグラスを傾けた。ちなみに、ヴァレーリヤの座るテーブルの上には、すでにいくつもの酒瓶が転がっている。綾花のポーカー勝負は白熱しており、一進一退の結果を繰り広げている。大勝ちせず、大負けせず。プレイヤーと観客を飽きさせず、ダイナミックなプレイングで目を引き続ける。言うは易し、行うは難し。綾花の腕の見せ所であった。
「よう姉ちゃん、すごい飲みっぷりだな」
 と、猪の獣種が声をかけてくるのへ、ヴァレーリヤは笑った。
「ええ、色々と鍛えておりますので」
「所で姉ちゃん、最近いろんな酒場を出禁になってる聖職者の話知ってるか? 姉ちゃんみたいに赤毛で、よく酒を飲むんだそうだ」
「あら、そうなんですの? おほほほ……ねぇ、あなた、ちょっとそこの陰でお話しましょう。誰からも見えない場所で、二人きりで……」
 そう言って、ヴァレーリヤは猪男の腕にしなだれかかった。胸をアピールして、ゆっくりと柱の影へと男を誘う。男は疑いもせず、ヴァレーリヤに引かれて、柱の影へと足をは込んだ。
 途端、ゴッ、と鈍い音がして、猪男がひっくり返った。
「まぁ、酔いつぶれてしまいましたのね! 飲み過ぎは行けませんわ!」
 ヴァレーリヤは心配するそぶりを見せつつ、手にした酒瓶を放った。
(……っと。こんな事している場合ではありませんわね)
 ヴァレーリヤが、ゆっくりと犬の兵士の近くへと足をやる。そのまま、綾花へと目くばせすると、綾花は頷いて、テーブルに積まれていたコインを、意図的に床に一枚、落とした。
「あ……っとスミマセン、コイン落としてしまいました」
 身をよじる様に、胸を強調するように、身をかがめる綾花。犬の兵士が少し立ち上がって、綾花の胸元を覗くようにした――瞬間、ヴァレーリヤは男に近づくと、腰につるしていた鍵の束をこっそりとすり取った。ヴァレーリヤと綾花の視線が交差する。綾花は何事もなかったかのように椅子に座ると、
「ごめんなさい、勝負を続けましょう?」
 と笑う。ヴァレーリヤはそのまま人の輪から離れると、今度は踊る弥恵へと視線を向ける。弥恵が頷くと、しなやかな踊りを、より激しく、艶やかなものへと変えた。ゆっくりと、壇上から降りて、兵士たちの目の前で肢体を披露する。
「ここからは、もう少し、激しく……ねぇ、皆様、目をはなさないでいて……?」
 男たちから、おお、と声が上がって、周囲の視線が弥恵へと釘づけにされた。ヴァレーリヤはその隙をつくと、従業員用入り口のカギを開けて、中に入り込んでいく。様子を見ていた綾姫とメルランヌが合流した。どきどき、と綾姫の胸が脈打つ。スパイ的な行動に、徐々にテンションが上がっていった。
 三人は目くばせ一つ、廊下を進む。やがて地下への階段が見つかって、そこを降りて行った。ヴァレーリヤは物質透過を使って、部屋の内部を確認する。
「……いましたわ」
 奥の小部屋に、ジャイル将軍と娘のチュレイの姿があった。
「では、早速助けましょう!」
「ええ! どっせーい!!!」
 と、ヴァレーリヤは扉にむかって思いっきりどどっせえーーい!!! した!!!! 豪快に吹っ飛ぶ扉!! 踏み込む三人の目の前にあったのは、扉に思いっきり頭をぶつけて昏倒するジャイル将軍の姿だった! ヴァレーリヤが叫んだ!
「ひどい! 誰がこのような事を!」
「あ、貴方達は……!?」
 怯えたように尋ねるチュレイに、綾姫が応えた。
「私たちはローレット・エンジェルです!」
 ちょっとテンションが上がってきたので、ローレット・エンジェルと名乗ることに抵抗がなくなっていた!
「ローレット……え?」
「エンジェルです! あなた達を助けに来ました!」
 と、綾姫はチュレイへと駆け寄る。体を縛っていた縄をほどく。ヴァレーリヤはジャイル将軍の縄をほどき、ついでにおぶりながら言った。
「おそらく扉を開けると扉が吹っ飛んで中の人へダメージを与える罠だったのですわ……何と悪辣な……!」
「そんな……ひどい……!」
 チュレイが青ざめた声で言った。
「とにかく、脱出しましょう……! メルランヌさん、先に戻って上の二人に合図を」
「ええ、分かったわ」
 メルランヌが頷くと、先に上階へと向かっていった……。

●脱出! エンジェル!
「ん……? お前達、そこで何を……」
 と、ガレージに立ち入ったフェレットの獣種兵士が声をあげた瞬間、目の前に立ちはだかったのは百合子であった。
「うむ。貴殿にはこちらに来ていただきたいものでな。まさか美少女の誘いを断る筈あるまい?」
 にこり、と清楚に笑った百合子。刹那。百の拳が容赦なく兵士をぶん殴る! そのまま意識を失った兵士が、がーれじの端にあった大きな工具箱までフッ飛ばされて中にしまわれた。
「うむ。好調。朋子殿。運転は出来そうであるか?」
 百合子がそう尋ねるのへ、朋子は頷いた。
「うん! 多分これがアクセル! こっちがブレーキ! ま、ブレーキとかいらないよね、アクセルベタ踏みでOK。これがシフトレバーだけど、クラッチないっぽいからオートマかな? おじーちゃんの軽トラより動かしやすいと思うよ!」
「近代化の波であるな! いや、発掘兵器が近代的である理由もよくわからぬが。ステラ殿の方の首尾はどうであるか?」
「はい、問題ないですよ」
 ここには蒸気式装甲車が4台ほどあって、その内の一大の車体下からステラが顔を出した。
「ちょっとこの辺の管を切断しました! どうなるかはわかりませんが、多分動きません!」
「うむ! 良好!」
 呵々、と百合子が笑う。
「それより、もう結構時間がたってるから、向こうにも動きがあるかもだね。ステラちゃん、この車の起動のさせ方は解る?」
 朋子が言うのへ、車両下からはい出したステラが朋子の装甲車に乗り込んで、
「えーと、ここのパネルを開いて……この線を外して、二つをばちってやれば……」
「それで大丈夫なの?」
「はい! スパイ映画で見ました!」
 ステラが笑いながら、二つのリード線を接触させる。ばち、と言う音がして、蒸気エンジンに火がともる。
「凄い! 本当についた!」
 朋子が両手を上げて喜ぶのへ、ステラが微笑む。
「おお、ちょうど良いな! 向こうの酒場の動きがあったようだぞ!」
 百合子が言うのへ、二人は視線をやる。見れば、酒場で騒ぎが起こり、窓から兵士が投げ飛ばされたりしている。どうやら戦闘が始まっている様だ。
「よし! 二人とも乗るのである! エンジェル・ゴー!」
 女豹のポーズなどをとりつつ百合子が言う。
『ゴー!』
 二人が片手をあげて頷く。同時に、朋子がアクセルを踏み込んだ。上記の爆音を鳴らして、装甲車が走り出す!
「あ! なんだアイツら! 追え、追え!」
 騒動に気づいた兵士たちが、慌てて残る装甲車に乗り込んだ。それぞれがキーを差し込んでエンジンを始動! その瞬間、ステラの施した改造により、なんやかんやあって装甲車がすべて爆発! 大爆炎をあげてガレージが吹っ飛ぶ中、三人の装甲車だけが離脱する!
「さすがステラちゃん、すごいね!」
 朋子がケタケタ笑うのへ、ステラは小首をかしげて、
「あれー、切る配線間違えたましたかねぇ?」
 と呟くのである。

 一方、酒場から大八車を引いて飛び出してきたヴァレーリヤ。大八車の上には将軍と娘、そして綾姫、メルランヌ、綾花、弥恵が乗っていて、綾姫は釣り竿の先端に高級酒を釣るし、ヴァレーリヤの眼前につるしていた。
「さぁ、ヴァレーリヤさん、お酒が飲めますよ! エンジェル・ゴー!」
「お酒ですわぁぁぁぁ!」
 つられたヴァレーリヤがすごい勢いで走る! 一方、酒場から生き残った兵士たちがわらわらと飛び出してきて、エンジェルたちに攻撃を開始した!
「追手ですね……! メルランヌ様、将軍たちのカバーを。綾花様、迎撃をお願いできますか?」
「了解よ!」
 綾花が手をかざすと、裁きの光が兵士たちを薙ぎ払うように放たれる! 途端、なぜか大量の火薬を仕込んだかのように爆炎が巻き上がり、兵士たちを吹き飛ばす! まるで劇場版だ!
「おお、貴殿ら、無事であるな!」
 と、横から声がかかる。並走する装甲車のボンネットの上に座り込んでいた百合子が、呵々、と笑った。
「さぁ、乗り込むが良い! このまま一気に脱出するぞ!」
「ええ。さぁ、将軍、お先に」
 メルランヌが言うのへ、ジャイル将軍とチュレイが頷き、装甲車へと乗り移る。その間もひっきりなしに敵からの攻撃は続いていたが、装甲車相手には豆鉄砲のようなものだ。安全にメンバーは装甲車に乗り移ると、後方へ一斉にけん制攻撃を行う。その都度、仕込んだ火薬の量を間違えたんじゃないかな、位の爆発が巻き起こり、兵士たちをフッ飛ばしていった。
「よーし、アクセル全開! ヒャッハーー!!」
 朋子がアクセルをベタ踏みすると、装甲車は蒸気をあげて基地内を突っ走る。後方ではさらに爆発が巻き起こる。何やら食糧庫が爆発したらしく、あちこちから悲鳴が聞こえていた。こうなっては、もはやこちらを追う余力もないのだろう。すぐに追手の勢いが弱まっていく。
「ふふ。これで作戦完了、ですね」
 弥恵が風に髪をたなびかせながら、そう言った。
 かくして、任務は成功! 要人救出作戦は無事に完遂されたのであった!
 ありがとう、ローレット・エンジェル!
 次の活躍も期待しているぞ、ローレット・エンジェル!

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ありがとう、エンジェルたち!
 次の指令を待っていてくれたまえ!

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