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シナリオ詳細

ポメ'sブートキャンプ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ここはドゥネーブ領、黒狼隊の屋敷。
 そして、とある昼下がりのことである――

「ポメ太郎、食事の……、まさか……」
 リュティス・ベルンシュタイン (p3p007926)は気付いた。ポメ太郎が最近お気に入りの『チャウチャウクッション』の上で転た寝して居るときのことである。食事という言葉に反応してがばりと起き上がったポメ太郎の背後には食い散らかされた残骸(おやつ)が広がっている。
「それはなんですか?」
 メイドの冷たい視線!
「……なんですか?」
 ――だが、ポメ太郎は答えない!
 応えたら待ち受けるのは死のみだからだ!


「ポメ太郎が太った?」
 リュティスから報告を受けたベネディクト=レベンディス=マナガルム (p3p008160)はまんまるとした毛玉状態になった自身の使い魔――現在は野良らしい、黒狼隊の飼い犬だ――をちらりと見遣る。確かに、使い魔として活用しているときはスマートであったが、最近は屋敷で遊ばせているばかりで運動量も落ちている。
「まあ、確かに……そうだな、心なしか丸くなったような……」
「心なしかではございません。随分と、です」
 ぴしゃりと言い直したリュティスに「ははあ、確かに……」とリースリット・エウリア・ファーレル (p3p001984)はポメ太郎の身体を撫でる。触れてみればぷりぷりとした肉が掌に伝わってポメ太郎が丸くなったことがよく分かった。
「ファミリアーとして出動する事も少なくなりましたし、太ってしまったのでしょうね」
「ええ。それにここに居ればおやつを沢山戴くこともありましょう。ねえ?」
 リュティスの冷たい視線を受けてびくりと肩を跳ねさせたのは『おやつパーティー』を開催していた笹木 花丸 (p3p008689)と、そのおやつを傍らから奪い続けるしにゃこ (p3p008456)である。
「ち、違うよ! これは人間用。美味しそうでしょ? 希望ヶ浜でひよのさんが最近流行ってるって教えてくれたから皆にお土産と思って!」
「成程~! 映え~ですね。うんうん、しにゃ程の美少女とセットだと更に映えますよ!」
「しにゃこさんにはあげないよ! さっき食べたでしょ!」
「ど、どうしてですか!? しにゃに食べて貰わないとドーナツ達が可哀想ですよ!?」
 大騒ぎの花丸としにゃこである。其方へと視線をやったルカ・ガンビーノ (p3p007268)は「で、どうすんだ?」とベネディクトを揶揄うように笑みを浮かべる。
「飼い犬が太って不健康だってメイドが言ってんだろ? ダイエットでもさせるのか?」
「ダイエット。ああ、した方が良いな。此の儘では不健康だ」
 立ち上がったベネディクトにポメ太郎は「止めて下さい! そんな! ああー! ご無体なー!」と言いたげにクゥンクゥン鳴いている。
 ずんぐりむっくりしているせいか、寄ってくる際も肉が邪魔で上手に走れていない。
「なんだか毛玉みたいで可愛いよね!」
 にんまりと笑って抱き上げたフラン・ヴィラネル (p3p006816)は「お、重い」と苦悩の表情を浮かべて見せた。ずしっと来る。
「こ、こんなに重かったっけ……」
「貸して――……ああ、こんなには重くなかった」
 フランから受け取った秋月 誠吾 (p3p007127)は残念ながらという調子で首を振る。
 明らかに太っている。ファミリアーであった頃と比べればまんまるぷりぷりである。ポメラニアンではなく毛玉になる前にどうにかしなくてはならないのだ。
「此の儘では面白山高原先輩も『ポメ太郎……太っては健康に悪いぞ』と憂うだろうな」
「ええ。そうですね。犬も体重に気を配らねばなりませんし……此の儘では嫌われてしまうかも」
 ベネディクトとリースリットの言葉にポメ太郎は衝撃を受けたように飛び上がった。
 ――ずしん。
 その音に誠吾とフランは顔を見合わせる。
「ま、まあ、楽しくダイエットした方が良いんじゃないか?」
「そうだね! 折角だし、ドゥネーブでピクニック気分とか。お弁当も用意して! ね?」
 天使のような二人の声を聞きながら、ポメ太郎はしにゃこの手からおやつを奪い取り、リュティスに怒られるのだった。

GMコメント

 ポメ太郎君のダイエットにご指名いただき有難うございます。
 アイテムアイコンの頃と見比べてまんまるぷっくりしてましたね!

●目標
 ポメ太郎のダイエット!

●ポメ'sブートキャンプ
 ドゥネーブ領のポピーが咲き誇る花畑&森林でのピクニック&ダイエットです。
 人間は一緒に走ったり、訓練しても良いですし、お弁当などを作ってきてお花を見ても良いと思います。
 戦闘はございません。モンスターはポメ太郎のために事前に排除してきた体でお願いします。
 ちなみに、ドゥネーブ領ですのでお疲れの場合は黒狼隊の屋敷に戻ることも出来ます。

 ・ポメ太郎のダイエットメニューを考案してみる
 ・ポメ太郎を鼓舞する
 ・お花畑を楽しむ
 ・森林浴
 ・お弁当やバーベキューなどを楽しむ
 ・その他、日常的にやりたいことを(イベントシナリオ風味に自由に楽しめます)

 自由にのんびりとした休暇を楽しんでいただけます。
 ただし、ポメ太郎だけはダイエットを行わねばならないのだった……!!!

●ポメ太郎くん
 ベネディクトさんが練達・セフィロト内部で偶然であったポメラニアン。
 ふわふわとした毛並みと元気が良さそうな様子で最初はどこかの飼い犬かと思われましたが、ペットショップから逃げ出してきただけでした。
 好物はきゅうりとバナナ。手作りまんまやおやつも大好き。
 躾は確りとされているので『おすわり』『待て』『伏せ』が可能。あんよが短いので高い所に上る為にぴょんぴょんと跳ね続ける姿が観測されます。あんよ短いです。
 お友達は黄泉津瑞神と面白山高原先輩。瑞のことは犬だと思い込んでるようです。彼女は豊穣からでれませんので「ポメさん、頑張って下さいね。またご一緒にきゅうりを食べましょう」とコメントを寄せています。
 面白山高原先輩は練達でがんばってるでしょう。先輩のために、頑張って痩せてください!

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • ポメ'sブートキャンプ完了
  • GM名夏あかね
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年06月23日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リースリット・エウリア・F=フィッツバルディ(p3p001984)
紅炎の勇者
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
秋月 誠吾(p3p007127)
虹を心にかけて
ルカ・ガンビーノ(p3p007268)
運命砕き
リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)
黒狼の従者
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃
しにゃこ(p3p008456)
可愛いもの好き
笹木 花丸(p3p008689)
堅牢彩華

リプレイ


 その日、ポメ太郎は絶望していた――

「少し目を離していただけでこのような姿になってしまうとは情けない。黒狼のようになるのではなかったのですか?」
『黒狼の従者』リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)は苦しげに眉根を寄せ、首を振った。
「だというのに――! これではポメ太郎ならぬ、デブ太郎です」
 突然の罵り文句を受けてもポメ太郎は「くぅん……」と項垂れることしか出来ない。これがリュティスの言いがかりなら「いやいや、何処からどう見ても黒狼ではありませんか。ねえ?」なんて言えたものだが。
「ううん……あまり気にしてはいなかったのだけれど……確かにちょっと太り過ぎ……かな。うん、間違いなく……」
 頼みの綱であった『紅炎の勇者』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)が擁護のしようもないと肩を竦めたのだ。
「ふむ、多少大きくなっているなとは思っていたが……太っていたとは。……ちゃんと運動はしていたと思っていたんだが」
 飼い主である『黒狼の勇者』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)はあからさまな程にしょんぼりした尻尾を見て「あ、デブ太郎と呼ばれてショックを受けている」と呟いた。それ程に、ポメ太郎は悲しんでいた。
「おー、こりゃぷにぷにだな。結構散歩に連れ出してるのにあれじゃ運動が足りねえか?
 住民にやたら菓子とか貰うからトータルでマイナスなのかも知れねえな」
 からからと笑った『竜撃』ルカ・ガンビーノ(p3p007268)の言葉に、合点がいったように『Mors certa』秋月 誠吾(p3p007127)は頷いた。
「そもそも、だ。ポメ太郎の食事はリュティスが栄養バランスを考えて準備してるし、運動もさせてる。
 なのにこんなに太ったのは何でだ? て思ってたんだが……」
 黒狼隊の面々が可愛がるあまり、沢山食事を与えたのだろうと思い当たってから彼は頭を抱えた。
 屹度、ソフィリアもおやつを与えたりしていたのだろう。後で注意して置いた方が良いかもしれない。
「ポメ太郎……どうしてこんな事にっ! あ、今回ばかりは花丸ちゃんのせいじゃないからねっ!?
 可愛いからってご飯を食べさせ過ぎたらどうなるかって知ってたし!! じゃあ、犯人は――」
『人為遂行』笹木 花丸(p3p008689)の視線の先に立っていたのは――
「漫画肉焼きチャレンジして失敗作を延々ポメ太郎に食べさせたのがまずかったですかね……。
 責任の一端はあるかもしれませんけどしにゃだけが悪い訳じゃないですよね!?」
 そう、『可愛いもの好き』しにゃこ(p3p008456)である。花丸さんだって上げてたじゃないですか! と勢いよく指させば花丸は「違うよ?」と首を振る。
「でもその……ちょっとだけ……ちょっとだけポメ太郎の見てる前で、おやつとか食べてるのが申し訳なくって、ポメ太郎のおやつを買ってきた気もするけど本当にちょっとだけだよっ!?」
「ほらー!?」
 花丸としにゃこが五十歩百歩の戦いを繰り広げている傍らで一人の少女が安堵の息を漏らしたのだった。
「ふ、二人が悪いようんうん、あたしがポメ太郎に居候先のパン屋さんでもらったパン耳をあげてることは気付かれてない! よし! ……き、気付かれてないよね?」
「何て?」
「ううん?!」
『青と翠の謡い手』フラン・ヴィラネル(p3p006816)は冷や汗が背を伝う感覚を覚えながら、決心した――しにゃこさんが悪い!!(責任の押しつけ)


「戦働きは兎も角、あんま健康にもよくなさそうだししっかり運動して痩せるぞポメ太郎」
「くぅん……」
 ダイエットは無理ですよぉとしょんぼりするポメ太郎に「さあ、ポメ太郎頑張って下さいね! ピクニックですっけ? ふふーん」とわくわくした様子のしにゃこ。ポメ太郎のダイエットのついでにピクニックを楽しもうと――ポメ太郎にとっての良心――リースリットが考案してくれたのだ。因みに食事内容は――ポメ太郎にとっての鬼教官――リュティスが決定しているのは残念でならないのだが。
「……しにゃこ、お前もやっぱちょっと太ったんじゃねえか?」
「えっ!?」
「ほれ、腹ぷにぷにしてんぞ。折角の機会だ、お前も鍛えてやる。ポメ太郎の100倍は厳しくいくけどな?」
 ルカは遠慮無くしにゃこの脇腹を掴んだ。「ふぎゃあ!」と色気も何もない声を出したしにゃこをちらりと見遣ってからリュティスは「良かったですね」と顔色一つ変えずにしにゃこにも死にに行けと言う。
「なんかしにゃも罰走を受ける雰囲気になってるんですけどおかしくないです?
 ハッハーン、このなーいすばでぃに嫉妬してますね!? 痩せてお胸削れろとか思ってるんでしょう!? この冷酷無比メイド!」
「……はい?」
「ポ、ポメ太郎もなんか言ってやってくださいよ! あのスカしたメイドをギャフンと言わせたくないんですか!?
 くっ……所詮犬……逆らえないですか……まぁしにゃもなんですけど……あ、止めて下さい。そんな目で見ないで! あ、あの――!?」
 バスケットを手にしてポメ太郎としにゃこを見詰めた立っているだけのリュティスの影が鬼の形をしている気さえしたと花丸は後に語る。
「何がナイスバディだガキンチョが。もっと色気を身に着けなけりゃそんなもんただの脂肪だ脂肪」
 揶揄うように笑ったルカにしにゃこが「お腹触らないでください! まったくデリカシーナシオですね!」と反撃するが効き目はゼロなのだった。
「にしても、ここまでまんまるになっちゃうなんて!
 さっき抱っこした時腰ぴきってしたし、このままじゃファミリアーとして偵察も出来ないよ?
 捕まったらもう帰ってこれないよ? あたしも体力つけるために一緒にやるし、がんばろー!」
『ポメの良心』であるフランの微笑みにポメ太郎は歓喜に打ち震えた。早速のダイエット兼ピクニックだ。誠吾は「それなら弁当が必要だよな?」とリュティスへ振り返る。
「ええ。ポメ太郎としにゃこ様のお弁当は私が作成します」
「じゃあ……皆の弁当は俺が作るかな。まぁ見た目は多少悪いかもしれないが、味は悪くないはずだ」
 唐揚げをはじめ、ピクニックの定番メニューを作ると決定した誠吾。たまに笑ってくれるとかわいげがある彼女だが、基本は視線で人も殺せそうな勢いでポメ太郎を見て居るのだ――かわいげの噺をすると命取りだと彼も学んでいる。
 サンドイッチや握り飯、女子が喜びそうな焼き菓子や適当な飲み物を用意しようかな、とリュティスと相談する背後でポメ太郎の尾はぱたぱたと揺れていた。
「いいですか、ポメ太郎。体重が元に戻るまではずっとヘルシーメニューで間食は抜きですからね。
 皆様もご協力お願いしますね? ……ご協力を頂けなかった方は偏食が治るように苦手な食べ物だけで料理を作って差し上げましょう」
 ショックを受けたポメ太郎にリースリットは目を伏せる。リュティスの表情は変わらないがポメラニアンにとって彼女の言葉は『絶対』なのだ。
「食事の管理はリュティスさんの職分ですから、そこはもう覚悟してもらうしかないですね。がんばってくださいぽめ」
 何を期待しているのですか、と見下ろすリュティスはソレでも優しさを発揮していた。ポメ太郎の好物であるきゅうりをメインにした物、大豆やコーン、セロリ、キャベツを入れたトマトスープ等々……少しでも美味しく食べてくれるようにと工夫しているが、その善意が犬に届くかは――『ピクニック』に続く!


「くぅん」
 やはりポメ太郎は絶望していた。お弁当を食べてピクニックを楽しむのかと思いきや、花丸が「さ、ポメ太郎頑張ろうね!」と微笑んで居るのだ。
「ポメ太郎、ボール遊びしようねっ! 身体を動かすならちゃんと楽しみながらやらないとっ!
 あ、しにゃこさんも参加ね? ルカさんも言ってたじゃん。今太ってなくても食って寝てばっかしてるとーって」
「な、なにおう!?」
「そう、これはしにゃこさんを思っての事っ! 別に花丸ちゃんのご飯を奪おうとしたことへの恨みだとかそんなんじゃないよ? ホントだよ?」
 ――本音が混じっていた。そんなこんなでボール遊びからピクニックがスタートなのである。
「……色々と継続させるとして考えつつ、今日はとりあえず切欠になれば良いものになればよいとしましょう
 あんまり激しくしても良くないとは思うので、今日は程々に…………なればいいですね……?
 でも実際、あまり無理に激しくしても身体への負担がかかりすぎるのは良くないですし……まあ、少しずつで……」
 リースリットの優しさに尾をばしばし揺らすポメ太郎。ボール遊びの前に準備運動をしようかと微笑んだフランはウォーキングとランニングを行ってから身体を温めようと提案した。ボール遊び前に身体を慣す作戦だ。
「じゃあ行こっか! ポメ太郎! しにゃこ先輩!」
「どうしてですか?」
 何故か犬のように共に連れて行かれるしにゃこ。一人と一匹は俯いて「なんでこんな事……」という顔をしていたが――
「瑞さんに『ほっそりしましたね』って褒められたくないのかー!」
「……!」
「しにゃ関係ないですよね?」
 ポメ太郎のやる気が上がった!
「面白山高原先輩に『いいぞポメ太郎』って認められたくないのかー!」
「!!!」
「いや、それもしにゃ……」
 ポメ太郎のやる気が更に上がった!!
 モチベーションをアップさせて走ってゆくポメ太郎。その目の前にきゅうりをチラつかせて走り続けるフランは「そろそろ身体も温まったよね?」とにんまりと微笑んだ。
 木陰で休む誠吾とその傍らでダイエットに励むポメ太郎としにゃこ達を眺めるリュティスは「しにゃこ様とポメ太郎を競い合わせるのも良いかも知れませんね」と悪魔の囁きを漏らした。
「さあポメ太郎、このボールを取ってきて下さいね。しにゃこ様より早く取ってこれたら良いことがあるかもしれませんね」
 このボールですよ、と見せるリュティスにポメ太郎は「えっ!? 本当ですか!?」と尻尾をぶんぶんと振り続ける。
 ボールを受け取ったルカはにいと意地の悪い笑みを浮かべてからボールを構えた。
「おし、いくぞポメ太郎、しにゃこ! ボール投げっからな! きっちり取ってこいよ!
 しにゃこはポメ太郎に負け越したら明日からダイエット飯だからな!」
「って、いや、しにゃが拾いに行くの変ですよね!? 犬とヒエラルキー一緒って事ですか!?」
 ちょっと待ったと飛びかかろうとするしにゃこにリュティスは「しにゃこ様が勝利したときはお弁当を交換しましょう」と悪魔(?)の提案をさらりと告げたのだった。
「……勝ったらお弁当交換!? ――はっ、こんな短足わんこにしにゃが負けるとでも!?」
「くぅん」
 花丸はポメ太郎が会われそうな目でしにゃこを見た事に気付いたのだった。 
「よーし! 頑張れポメ太郎ーっ! 頑張ったらベネディクトさんが後でご褒美をくれるって言ってたよっ!」
「しにゃは!?」
「しにゃこさんも頑張ったらまたドーナツあげるからファイトだよっ! ご飯抜きも嫌ならもっと走ってしにゃこさんっ!」
 手をぶんぶんと振った花丸。ルカは「行ってこい!」と勢いよくボールを投げ。
「ワアアアアアアンンンン」
 凄い勢いでポメ太郎が駆けてゆく。アンナ形相のポメ太郎は見た事無い、とリースリットとベネディクトは顔を見合わせた。
「な、なんという……」
「あれ程のスペックが……」
 リースリットとベネディクトは恐ろしいものを見た気がする。俊敏に短い足をせこせこと動かしているポメラニアン。その傍らかた桃色の影が飛び出した!
「その約束後悔させてやりますよ! いくぞおおおうわああああ! しにゃの方が先いいいあああああ!?」
 勢いよく小石に躓いて顔面から転がっていくしにゃこ。その背を足蹴にしてポメ太郎はボールまで一直線である。
「あああああ………」
 手をばたばたと動かすしにゃこに勝利の目は存在しない。「どうですか? 勝ちましたけど?」という顔をしたポメ太郎がボールを構えてドヤ顔でルカとベネディクトの元へと帰って行った。
「しにゃこ……お前いくらなんでも情けなさすぎるぞ?」
 娘を預かっているという意識がある以上、しにゃこをグズグズの状態で返したら親御さんにドヤされる、とルカは呟いた。保護者は辛いのだ。
「オーバーワークも良くないからな、ちゃんと休憩も挟みながら行こう。良し、行くぞ。ポメ太郎!」
 優しい飼い主ベネディクトは水分をリュティスに用意させ少しの休憩の後リベンジマッチを許した。
 だが――やはりしにゃこは負け続けるのであった。


「とと。なんだ。もうバテたのか?」
 助けてくださいとしおしおとした様子でやって来たポメ太郎に誠吾は苦笑を漏らした。いざという時に身体が鈍らぬようにポメ太郎には鍛えて欲しい。
 そう思いながらもそろそろ昼食の時間だろう。リースリットは「昼食にしますか?」と優しく助け船を出した。
 誠吾の準備した弁当を少しだけポメ太郎に分けるというご褒美で満足したポメラニアンの尾っぽが揺れている。
「誠吾、調理の腕を上げたな。美味い。ポメ太郎……としにゃこも特別メニューなのか。巻き込まれてしまったようだが……その分、俺達が味わっておこう」
 微笑むベネディクトに誠吾はどこか安心したように微笑む。リュティスの特訓のお陰だろうか、誠吾の料理スキルはかなり向上し、屋敷の食事の水準もぐっと上がったようにも思える。
「うん、美味ぇな。腕を上げたじゃねえかセーゴ。
 しにゃことポメ太郎のは……肉がねえのはちと物足りなさそうだがそれはそれで美味そうじゃねえか。しっかり食えよ。食わねえとぶっ倒れちまうからな」
「え? もう終わりじゃ……」
 ルカを見たしにゃことポメ太郎の眸には「まさか」という色が浮かんでいた。花丸は「まだまだ後半戦だよね?」と首を傾げる。
「えええっ!? ハァハァ……もう無理……笹木様、ドーナツ一個でもいいからお恵みを……死んじゃう……!」
 じりじりと迫りくるしにゃこ。花丸はひょいっと誠吾が用意したおやつバスケットを抱え上げて首を振った。
「負けたからなしだよ。ポメ太郎は勝者だか別メニューでのんびりトレーニングしようね」
「わん!」
 尾を振ったポメ太郎に「道連れだあああ!?」としにゃこが飛びかかる。――その首根っこを掴んだのは無表情のリュティスなのだった……。
「しにゃこさん、行ってらっしゃい。頑張ってね!」
 手を振る花丸に「おに! 鬼畜!」としにゃこは叫び連れ去られていく。ベネディクトは「ポメ太郎ももう少し頑張ろうか」とそのふわふわとした頭を撫でて提案した。
「そうですね……近くに川がありましたし、そちらはどうでしょうか? 暑くなってくる時期ですし、丁度良いでしょう。
 ぽめを手で抱えて水面近くで支えて固定しながら足で泳がせる……というのも。
 関節や靭帯に負担が少なく普段使わない筋肉を使う、とかなんとか、運動に良いと聞いた事があります」
 立ち上がったベネディクトが川へポメ太郎を抱えて下っていく。リースリットの提案通り、支えたまま犬掻きをするポメ太郎は真剣そのものだ。
 誠吾は「其の儘持ち上げて」と揶揄うように提案し――水に浸かっていると思い込んでいるポメ太郎はエア犬掻きにせっせと励むのだった。
「……ポ、ポメ太郎」
 笑っちゃいけない。花丸は思わず堪えた。可愛らしいその仕草は一生懸命そのものである。
 ベネディクトは笑いを堪えながら、川から上がりポメ太郎をリースリットに手渡してそっとその頭を撫でた。
「一先ず、弁当を分けたが本当のご褒美はまた探しに行こうか」
「わんっ!」
 ベネディクトに「流石ご主人様」と喜ぶポメ太郎。ご褒美をあげるよ、と微笑むフランはそのふわもこの身体をマッサージする。
「もちもちのパンみたい」と呟いてしまったのは……まあ、それだけ太っていたという事なのだろう。
「しにゃのことも! してもいいですよ!?」
「うんうん。わー、おにくが伸びーる。パンみたいだねー?」
「ええ!?」
 フランが揶揄い笑えばしにゃこは決意したように立ち上がり「よし、帰りましょう! もうしんどいです!」と叫んだのだった。
「ガンビーノ式の特訓にいくぜ。ほれ、嫌がってねえでさっさと立て!」
「水分補給は自由にして良いのでこの辺を100周くらいしましょうね。私も一緒に走ってあげますから」
 ガンビーノ式特訓か、それともメイドの地獄のトレーニングか。
「100週!? 今からそんな走ったら日が暮れます! ダイエットは一日にしてならず!」
 やめてくださいと首根っこを引っ張られてゆくしにゃこ。ルカのいうガンビーノ式特訓にはついて行ける気はしないが、フランは意を決して挙手をした。
「ねールカさん、あたしももっと体力付けたいし今度特訓つけてー!」
「そうだな、フランも体力あるに越した事ぁねえからな。俺の特訓は優しくねえから頑張ってついて来いよ?」
「えへへ……お手柔らかに」
 そうして、黒狼隊の一日は過ぎてゆくのだった。

成否

成功

MVP

しにゃこ(p3p008456)
可愛いもの好き

状態異常

なし

あとがき

 一番痩せたのはしにゃこさんなのでは……!?

 お疲れ様でした。

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