PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<Genius Game Next>簒奪の砂嵐

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 平穏な村に、突如として悲鳴が響いたのは夕刻のことだった。
 見上げた男はこの辺りでは見かけない、褐色の肌をしていて色鮮やかな赤い布を頭に巻いていた。
 母親らしき女性が子供を抱きかかえ、地面にへたり込んでいる。その後ろには集まった村人達が、取り囲む盗賊に同様に剣や弓矢を向けられて、床に膝を突き手を頭に置くよう命じられていた。
「大人しく俺たちの欲しいモンを出してくれりゃ、穏便に済ませるからよ」
 下卑た笑みを浮かべながら、タルワールの切っ先を子供へとくるりと向ける。母親が「子供だけは!」と哀願するのを至極楽しそうに表情を歪めた。
「要求は何だ」
「この村の全てが」
 長老が問うと赤い布を巻いた男がそう答えた。彼だけが色のある装飾を身に纏っていることを見ると、この男こそが盗賊団の頭なのだろう。
「酒も、食い物も、こき使う人でも。女も! 何もかもが欲しい」
 強欲にまみれた言葉に、長老は絶句した。だが村人の誰一人として、盗賊にあらがう力はない。
 ――ああ、誰か。
 声に出さずに、誰もが願った。この状況から、救い出してはくれまいか、と。


 もう一つの混沌R.O.Oが何かのバグで暴走し、結果として制御を外れデータを増殖し始めた。R.O.Oは『ネクスト』という世界を作り出し、実験のためにログインしていた人々がログアウトできない状態で囚われてしまっている。
 彼らはログアウトできなくなった救出対象だが、『バグ』はゲームのクリア報酬『トロフィー』として彼らを解放する場合がこれまでにも多かった。
 R.O.Oの冒険はあくまでゲーム中の出来事である。トロフィーをはじめとする筋道がネクストに用意されている以上、バグの根源や解決に至るためにはゲームに乗る必要があるとカスパール達、練達の首脳陣は考えている。
 そして、上記の推論を強力に補強する重要な事実が齎された。
 R.O.Oから全プレイヤーに『イベント開催告知』が出されたのだ。
 大規模イベント<Genius Game Next>。来る6/2、砂漠の悪漢『砂嵐』が伝承西部バルツァーレク領、南部フィッツバルディ領を襲撃する事が告知された。
『このイベントはネクストの歴史を変え得る重要なイベントです。特別クリア報奨も用意されていますので奮ってご参加下さいませ!』

 ――――
 ――

 バルツァーレク領に領地を持つ貴族、オディエルナがプレイヤーの前に姿を現したのは、そんな折だった。
 年は若い。「いかにも」な貴族の優男といった穏やかな風貌で、優雅に一礼して見せたオディエルナは曇った表情でプレイヤー達を見た。
「皆様に依頼したいのは、『砂嵐』の事なのです」
 最近動きが活発化していた『砂嵐』なのだが、とうとう国境を越え伝承に侵入。オディエルナが治める領地内で略奪行為を行っている。
「領地と言ってもほんの小さなものでな……。たまに視察に赴いた事があるが、人も土地も良いそんな場所だった」
 ですが、とそこで言葉を詰まらせたオディエルナに変わり、【バシル・ハーフィズのアバター】バシルが後を引き継ぐ。
「俺たちに出来る事は、そいつらを迎撃して被害を軽減することだ」
 バシルが盛大なため息を吐いて、そう語ると懐から煙草を取り出して火をつけた。無辜の民が害されることを嫌うバシルだが、データとはいえ不快感は拭えない。
「奴らは『砂蠍』キング・スコルピオの麾下の盗賊一味『シャウラ』だ。特徴はわかりやすく言えば……『よくある盗賊』の一団だ」
 シャウラを率いるのはジュバという男だ。他の盗賊と違い、鮮やかな赤い布飾りを頭部に巻いている。
「ああ、彼らの噂は耳にしたことがある。『簒奪』の異名を持つタルワール使いで、炎と風の魔法剣を扱うとか」
 バシルは「ああ」と頷いた。
「ジュバは風と炎、二体のジンを従えている。これらは自立して動くからジュバをやれば止まるものでもない。通常通り倒さないといけない」
 地面に棒きれで簡単な村の様子を描くと、中心部辺りを先端で軽く叩いた。
「現在の状況だが、村の中央辺りに村人が集められシャウラの盗賊が武器で脅して囲っている。ジンもこの中に混ざっているな。
 盗賊どもはプレイヤーに気がつくとこちらに注意を向けるだろう。村人達は動けないが、隙を見て逃がすか庇うかは任せよう」
「どうか、民の事をよろしく頼む」
 そういってオディエルナが頭を下げた。

GMコメント

●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
 
※重要な備考『情勢変化』
<Genius Game Next>の結果に応じて『ネクスト』の情勢が激変する可能性があります。
又、詳細は知れませんが結果次第によりR.O.Oより特別報奨が与えられると告知されています。

 水平彼方です。R.O.Oのイベントから一幕をお届けします。

●目的
『シャウラ』一味の討伐

●ロケーション
 昼間の村の中での戦闘になります。
 中央の少し開けた場所に村人全員が集められ、武器を突きつけられています。

●敵
・『簒奪の』ジュバ
 シャウラの頭である男です。褐色の肌に赤い布飾りを頭に巻いています。
 曲刀の扱いに長け、他の盗賊よりも耐久・攻撃力に優れています。
 強欲で襲撃した村は自分のものだと考えており、村にあるものを根こそぎ奪い取ろうと行動しています。
 ジンの力を借り、炎と風の魔法剣を操ります。

・シャウラの盗賊×5
 タルワールを持つ盗賊です、はじめは村人達を脅すように刃を向けています。
 彼らはジュバほどの戦力ではありませんが、思考は彼と同じです。

・ジン×2
 ランプの魔神のような姿をした風と炎の二体の妖精。体が緑色をしているのが風、赤く輝いているのが炎のジンです。
 彼らが倒れた後も、ジュバはしばらく魔法剣を扱えます。

●村人たち
 襲撃時に村に居た十余名全員が一カ所に集められ、身を寄せ合って居ます。
 年寄りや女子供が殆どで、彼らに戦闘力はありません。
 彼らの無事は成否判定には含めません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <Genius Game Next>簒奪の砂嵐完了
  • GM名水平彼方
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年06月18日 23時40分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

すあま(p3x000271)
きうりキラー
Fin(p3x000713)
Fin.
キース・ツァベル(p3x007129)
噺家
オルタニア(p3x008202)
砲撃上手
崎守ナイト(p3x008218)
(二代目)正義の社長
†漆黒の竜皇†ブラッド(p3x008325)
煉獄の覇者
デイジー・ベル(p3x008384)
Error Lady
レイティシア・グローリー(p3x008385)
高潔の騎士

リプレイ


「うーんROOの世界に飛び込んでみたけどやっぱり異性のロールは難しいね……じゃなかった難しいですね。
 まあ、やることは一緒なんだけど!」
 人好きのする笑顔を浮かべた『噺家』キース・ツァベル(p3x007129)はロールプレイの感覚を掴むように、発声しては声の高さや話し口調を調整する。
「おお、盗賊って感じの盗賊だ。初心者向けな分かりやすいやつ、気兼ねなくぶん殴れるやつ!」
 『CATLUTONNY』すあま(p3x000271)は半身を乗り出して、離れた位置から村の様子を窺った。
温い風に遊ぶ裾を押さえながら、『Fin.』Fin(p3x000713)はレンズの向こうに輝く赤い瞳を歪めてしっとりと微笑んだ。
「強欲、いいことです。人間らしくて嫌いじゃないですそういうひと。
 ただ私の好み云々の前にこれは依頼なので……残念ですけど、全力で討伐しにいきましょう」
 静かな笑みから打って変わって好戦的な色を滲ませ、Finは唇の端を一層釣り上げた。
「ゲームの中だからってこんなことして……絶対許さない。
 顔面に一発ぶち込まないと気が済みやしない!」
「全てが自らのものだと宣うとは傲慢な男ですね。その傲慢の代償を己が命で払って貰いたいですが先ずは村人たちを救う事を優先しましょう」
 ぎりぎりと歯が軋むほどかみしめた『半魔眼の姫』オルタニア(p3x008202)が、左右不揃いの色をした瞳に怒りを募らせる。その怒りを宥めるように冷静な『高潔の騎士』レイティシア・グローリー(p3x008385)声に『機械の唄』デイジー・ベル(p3x008384)はこくりと頷いた。
「人質もいるのなら可能な限り助けないとですね。迅速果断、速攻で参りましょう」
「ならわたしが先に偵察してくるよ!」
 すあまはアバターの外見を二本の尻尾と鱗がある猫に変えると、ひたりと尾をひとつ揺らして駆けていった。
「ふん、下賤な盗賊どもめ。村を襲っての略奪行為など、その行為自体が三下の其れだと知るが良いわ。
 征くぞ皆の者、一息に蹴散らしてやろう」
 『正義の社長』崎守ナイト(p3x008218)が鷹揚に告げて、視線の先の敵を睨めつけた。
 村では戦火の火種が燻っている。
 この火が村に回る前に、なんとかしなければ。


「ただいま! 帰ってきたよ」
 偵察を終えたすあまは変化を解くと、仲間を手招きして耳を貸すように仕草で示す。
「ちょうどこの辺りなら、完全に死角とは言えないけど隠れながら近づけそう」
 指し示したのは家屋の集まった辺りだった。集められた村人達からは距離があるものの、間には逃走を警戒する盗賊がいて襲撃できそうだ。道が狭い分盗賊の攻撃を警戒する範囲が狭まるが、挟撃されればひとたまりもない。
「射撃に適した場所はどの辺りかな?」
 オルタニアの問いにすあまは一点を指さした。
「あの辺りかな。けどあまり顔を出すと見えるから気をつけてね」
「任せて! あとアタシも探って見たんだけど、あの辺りに敵が集中してるみたい」
「それなら、陽動も織り交ぜて……短期決戦でカタをつけましょう」
 情報共有を終えたオルタニアは、慎重に辺りを警戒しながら先んじて狙撃ポイントへと向かった。
「ラダはそこで待っててね」
 と全身を鎧で固めた大柄な人物に声を掛けると、他の面々もすあまの案内について行き、足を忍ばせて移動する。
 オルタニアがコンセントレーション・ビューで周囲の様子を窺い、タイミングを図る。
 配置についたのを確認すると、慎重に照準を合わせてゆっくりと矢を放つ。
 クライン・クラインから放たれた矢が爛れた空気を切り裂いた。くぐもった悲鳴を上げて、オルタニアに背を向けていた盗賊が血を流しながらその場に崩れ落ちる。
「誰だ!?」
 すぐさま得物を構えて周囲を警戒するシャウラ一味。村人達は殺気立ったシャウラ一味に気圧されて頭を抱えて地面にうずくまる。
 ざりり、と砂を踏みつける音に振り返ると、そこにいたのは場に似合わぬ煌びやかなオーラを纏った『正義の社長』崎守ナイト(p3x008218)の姿だった。
「お前の物は俺の物、そういう考え(thinking)嫌いじゃないが、こうも考えられるよな?
お前(ジュバ)の物は俺(ORE)……即ちこの正義の社長、崎守ナイトの物って事だ!」
「てめぇ何訳の分からねぇこと言っていやがる!」
 ごく自然な動作で決められたポーズは、奇妙で有りながらキレがあり、えも言われぬオーラを身に纏っているようだった。所々流暢な発音を織り交ぜた口調は場違いで、そして目立った。
「村人の命は依頼に関係ない? ノーマナーだ!
 こちとら未来の大企業社長。それくらい背負えねーで叶えられるかよ!
 何より、領民のために頭を下げたオディエルナの意気に応えてぇ!」
 社長? とにもかくにも分からないことづくしの男であるが、シャウラ一味と敵対するために現れたのだと言うことは分かる。
「と、とりあえずあの男からやっちまえ!」
 応ッ! と下卑た笑みを浮かべた盗賊達がナイト目掛けて刃を振り上げ襲いかかる。
 少し離れた場所で残る数名が村人達へと注意を戻そうとした。
「おや、つれない方々ですね。では一席。『ええ、毎度。つまらない話では御座いますが』」
 噺家・キースのお決まりの前口上を耳にした盗賊が、くるりと彼の方を振り返った。
「さあ、お耳を拝借」
 注意を自分の方へと惹きつけたところで、視界の隅で赤いジンが敵を視認すると、ジュバへと炎の加護を渡さんと片手を天に掲げた。
「させません!」
 レイティシアがすぐさま躍り出ると、手にしたソルジャースピアで胴を貫いた。
 傷を負わせた相手に怒り、炎を纏った拳をレイティシアへと叩き付ける。
「フハハハハ! そこまでだな、三下共!
 念の為確認するが……奪う者というのは、当然、奪われる覚悟もできているのであろうなぁ!?」
 高笑いと共にブラッドの魔眼が怪しく輝く。魔力の刃を掴み抜刀すると、盗賊へと斬りかかる。
「そんなもの、全部奪っちまえば関係ねぇ!」
「その心意気、やっぱり嫌いじゃないですけど……今は大人しくやられてもらえませんか」
 指先をついと滑らせ盗賊の方へと向けると、Finは禍々しい呪詛を彼へと差し向けた。
 触れた途端、ぞっとするような悪寒が背筋を走り抜け攻撃の手が緩む。
 それでもナイトへと振り下ろした一撃は止まることなく、ナイトは痛みに呻き声を上げる。
「てめぇら! よく獲物を見ろ、観察して何が最善か考えろ! それが賢い『狩り』だと教えがはずだ」
 場は混沌としていた。だがその状況をジュバの一括によってにわかに平静を取り戻す。
「村人達を人質に取る前に」
「みんな倒しちゃえばいいんだね! ジュバの相手はわたしだよ」
 聖杖パライバオーシャンを掲げたデイジーが放った呪詛によって相手の挙動を封じ、すあまの鋭い猫爪がジュバの顔をバリバリと引っ掻いた。
「このっ!」
 怒ったジュバが力任せにすあまを引き剥がす。曲刀を握った手ががむしゃらに刃を振り回し、纏った風の刃がすあまに細かな傷を負わせた。痛みはこらえて、表情は余裕を窺わせる笑みのままジュバをにらみ返した。
 シャウラ一味の注意が村人達から離れている隙に敵一団を倒す。
「そのためにも、アタシが頑張らないと……この眼なら出来るさ、きっと大丈夫! よろしくね、クライン・クライン」
 自らを奮い立たせると、オルタニアは村人に一番近い盗賊に狙いを定め、弓を引き絞った。腕を撃たれ攻撃の手を止めた隙に攻撃するよう支援を行う。
 今回は当たったものの、そろそろこの位置もばれることだろう。
 迅速かつ的確に、敵を倒し制圧する。
「そのため、この一席の時間は短いのです。お聞き逃しの無いように」
 キースは一旦距離を離すと、不可避の弾丸を放つ。
 悲鳴を上げて倒れた盗賊には一瞥もくれずに、次の獲物に狙いを定めた。
「貸せ!」
 ジュバが誰かに命じる声が聞こえた。その後に続いてごう、と耳元で風が鳴る。
 ジュバの振るった曲刀から、風の刃が一直線に走り抜けた。
 肌が痺れるような殺気に咄嗟に火を翻したFinだったが、手足がざっくりと切れて流れ出た血が地面に赤いまだら模様を描く。
「風のジン……ですか」
 戦況はいまだ混沌としたまま。戦いの音がけたたましく、平穏の村に響き渡っていた。


 収穫者の名を冠した大鎌を振るい、邪竜獄炎斬を放つ。悲鳴を上げて足下に転がった盗賊を見下ろして、ブラッドは重苦しいため息と着吐く。
「……まったく、身体を張るのは得手では無いのだがな」
「そういう割に楽しそうな表情をしていますけど」
「言葉のあやだ。深淵をのぞく時深淵もまたこちらをのぞいているのだ――どれが本当の私なのだろうな」
 デイジーの指摘にブラッドは顔にかかる前髪を片手で掻き上げながら意味深長に笑った。敵へと視線を戻したデイジーが杖を構え、詠唱を始める。足下に現れた複雑に輝く紋様が幼い顔立ちを照らし、吹き上げる本流がフードと短い髪を嬲る。
 発動した魔法が盗賊達をまとめて屠る。
「次は炎のジンだね」
 狙撃ポイントから移動したオルタニアがサプレッション・ファイアで牽制しつつ、次なる敵への道を開ける。
 押さえ込んでいたレイティシアは火傷の辺りを押さえながら地面に膝を突く。
「すみません」
「その言葉はまだ早いですよ」
 なるべく敵が重なるように位置取ったキースが銀林月花の引き金を引く。赤く輝く体に風穴を開けると、Finはその傷を嬲るように毒をたらした。
 立ち上がったレイティシアが眼前をなぎ払うように攻撃すると、
「情熱(passion)は全ての心を裸にする……さあ、アンタの全てを曝け出しな!」
 ナイトが高らかに宣言すると、突如として輝くミラーボールが現れどこからともなく懐かしいダンスミュージックが流れ始める。
「は?」
 キレのあるダンスを披露するナイト。呆然とするジンとジュバ。
 天を指さすポーズで最後を決めると、衝撃波に吹き飛ばされてジンは倒れた。
「おやおや、よそ見する余裕があるのかな?」
 ジュバの顔を思いっきり引っ掻いたすあまがにししと笑う。
「まずはテメェをやらなきゃなんねぇな」
 挑発に乗ったジュバが不敵に笑う。両者ともに傷は深まり、互いに血を流す。
 風のジンへと集中砲火を浴びせるプレイヤー達に向かって、ジュバが風の刃を放つ。
 斬撃の軌跡が一直線に走り、傷を負わせていく。
 ジンが両腕を振り上げて力を貯める素振りを見せると、オルタニアはサプレッション・ファイアで体勢を崩させるように急所を狙う。
「なるべく早く倒してしまいましょう」
 Finの猛毒を乗せた攻撃をうけて、ジンは苦しみ身もだえて暴れ回る。レイティシアが盾で受け止め、ナイトが再び社長舞踏戦術で敵を苦しめる。
「長引くとジュバの魔法剣で狙われてしまう……そろそろ倒れてくれると嬉しいのですけど」
 キースが引き金を引くと、吸い込まれるようにジンの体に命中する。
「そろそろ終わりだ。安らかに眠るがいい」
 高々と『ハーヴェスト』をの刃を掲げたブラッドが、ジンの首を邪竜獄炎斬で容赦なく斬る。
 ファヴニール。邪竜の名を冠する一撃が、恐るべき威力で首と胴を切断すると、空気を振るわすような悲鳴を上げて空気に溶けるように消えていった。
「ハッ、これくらいでやられちまうとは情けねぇな……」
 使えねぇ、と吐き捨てるジュバに、ナイトは不快感を露わにした。
「一企業の社長として立つ俺(ORE)にとって、その言葉(word)は聞き捨てならねぇな」
「世の中には二つに一つしかねぇ。俺にとって使えるか、使えねーか。それ以上でも以下でもねぇだろ?
 俺にとってお前らは、俺の、邪魔をする、最ッ高に使えねぇ奴らだよ!」
「刮目しな。戦場(stage)での主役は特異運命座標。つまり……俺(ORE)じゃねーの!」
 ナイトとジュバの間に火花が散る。ジュバの気がナイトに逸れたそのすきにデイジーはすあまの方を振り返った。
 魔法など何も纏っていない一撃に押されるようにして、すあまの体に刃が届く。
 すあまの体力ゲージが赤を超え、残量がゼロに迫る。
「代わります」
 デイジーが声を掛ける前に、すあまは離脱を試みる。その道を断ったのは、他ならぬジュバだった。
「ここまでやり合って逃げるってか? つれねえな」
 最後まで遊ぼうや、と笑いながら言う男に嫌悪感をあらわにする。
 ぬれた音と共に剣を振るう大ぶりなモーションとエフェクトが眼前を走る。
「俺のモンを殺ったからには、こっちも相応に殺らねえと釣り合いがとれねえよな?」
 ぎらついた目が次の獲物を選定するように周りの人間を見た。
 刃を向ける特異運命座標の向こう、震えうずくまる村人達の姿を見やると手頃な獲物を見つけた肉食獣のように歯を見せて笑った。
「彼を止めないと」
 その表情を見て、察したキースが注意を逸らすように弾丸を撃ち込んだ。
「クハッ!」
 確かに腕を撃ち抜いた。だがジュバは表情を変えずに、熱に浮かされたようにおぼつかない足取りで村人達の方へと歩き始めた。
「ハハハ、ハハハハ!!」
 壊れたように空虚に笑い声を上げ、進路に割って入ったナイトに対して目もくれず後ろの獲物だけを見続けている。
「俺から奪われるだなんて我慢ならねえ! ああ!? 寄こせよ! 手前ぇらが持ってるモン全部さあ!!」
 植えた魂の奥底から上げたような、血の滲むような咆哮だった。
 オルタニアの射撃を受け、Finの呪詛を受け、それでも狂ったように前に進むジュバの歩みを止めようと一気呵成に攻め立てた。
「止まりなさい!」
 レイティシアの槍が脇腹を貫いたにもかかわらず、ジュバは突き刺さった短槍を掴むとそのまま騎士の体を乱暴に切り伏せた。
「すあま様と、レイティシア様を……!」
 聖杖パライバオーシャンの先を突きつけると、デイジーは持てる最大火力でもってジュバを攻撃する。
 満足に動けなくなっても、我武者羅に剣を振り回して悪あがきをするジュバを、目も当てられないとブラッドは額に手を当てて首を横に振る。
「ナイト、そいつから離れろ」
 広げた翼に魔力を集中させ、羽ばたきと共に無数の黒槍と化した魔力を一斉に展開。直線上に矢雨のように降らせ、体中に槍を受けがジュバの体が地面に縫い止められる。
「クソッタレ……」
 足下しか見えない敵をそれでも睨み付けて、ジュバはそのままあっけなく事切れた。


「大丈夫か?」
 目と耳を塞ぎ、その場にうずくまるばかりの村人達へとナイトが声を掛けると、恐る恐る顔を上げておずおずと口を開いた。
「あ、ありがとうございます」
 助かったのだ、と安堵の表情を浮かべしきりに頭を下げる村人達をナイトはやんわりと宥めた。
「ところでこの村、大人の男性少ないですね。仕事で出稼ぎとかですか?」
 キースの問いに、近くに居た女性が小さく首を横に振った。
「たまたま村の近くに出たという魔物を退治するために、出払っていたんです。普段は畑仕事など、やることも多いですから。夕暮れには戻ると思いますけど」
「成程」
 つまり、間の悪さもあって容易に制圧されたのだろう。
 村の様子を見て回ったナイトは、普段は長閑であろう様子を見て頭の中に納めていく。
「今後同様の事があるとも限らねぇ。オディエルナに村起こしのビジネスを提案し、面倒を見てぇな」
 社長として出来る事を。練り始めたプランを持ち帰るべく、彼はきびすを返した。
「助けていただいて、ありがとうございます!」
 村を後にする特異運命座標たちの背中に、村人達の感謝の声が届く。
 その声こそが、彼らを救ったのだと実感させる、何よりのものだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

すあま(p3x000271)[死亡]
きうりキラー
レイティシア・グローリー(p3x008385)[死亡]
高潔の騎士

あとがき

お疲れ様でした。
皆様のおかげにより、村人達を無事に守ることが出来ました。
ありがとうございます!

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