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シナリオ詳細

<Liar Break>明けない空のクロウズクロウ

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●明けない空のクロウズクロウ
 飛行種サックス奏者のジャズミュージックが流れている。
 オレンジ色に照らされたバーカウンターの向こうでは、無口な男がシェイカーを振っていた。
 軋むドアの音。どこかわざとらしい二回のノック。
「あら、もう来てたのね。ということは……あの噂も聞いている頃かしら?」
 ドアには、『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)が立っていた。

 幻想楽団『シルク・ド・マントゥール』に関する最新の噂話。
 狂気と凶事を荷馬車いっぱいに運んできたサーカス団は、幻想国家をちみどろのおもちゃ箱に変えてしまった。
 人々は狂って殺し合い、サーカスが原因だと分かっても享楽の王が庇護する以上探りすら入れられない。
 だが事態はあるギルドによって一変した。希代の可能性をもつものだち、ギルド・ローレットである。
 彼らが描く魔法の指先は狂気を切り裂き凶事を踏みつぶし、享楽に浸る王に自らを省みさせるという、ある意味凄まじい偉業を成し遂げた。
 いや、偉業と呼ぶにはまだ早い。
 王の庇護を無くし猟犬と化した幻想貴族たちに追い回され幻想国家という巨大な檻に閉じ込められたサーカス団。彼らを残らず見つけ出し、叩きつぶし、今こそ平和を取り戻すのだ。

「勿論、持ってきたのはサーカスの話よ。幻想のある盆地に逃げ込んで、浚った人々を人質にとっているの。
 領地と領民を踏みにじられた土地貴族様は葉巻きを噛み千切らんほどの怒りようだったわ。
 まあ、あの土地はいわくつきだし……片付けようとしたところにまた虫がついたんだもの、無理もないわ」
 話の流れで察する通り、これは貴族から正式に依頼された『悪党の駆除』だ。

 対象となるのは『明けない空のクロウズクロウ』。
 黒い翼をもつスカイフェザーの楽団たちだ。
「彼らは三人組の楽団で、サーカス団の一員よ。勿論現在の呼び声のキャリアーでもあるわ。
 今はある盆地の村跡地に潜り込んで、浚ってきた人々を使役しているの」
 『使役』という物騒な言葉に、場にいた者も顔をしかめた。
「誘拐された人間が犯人に共感してしまう……ストックホルム症候群というのがあるけれど、今回の件は次元が違うわね。
 誘拐されたのは子供や若い女性たちなんだけど、彼らはクロウズクロウに完全に魅了されてしまっているの。
 彼らの音楽があれば幸福だと思い込んでいて、彼らの存在が人生で最も必要だと考えてしまっている。
 そういう『狂気』に犯されきった人たちなのよ。
 だから彼らは武器をとり、抵抗すべくこちらを攻撃してくるでしょうね」
 元々弱い人々だ。武器を持ってもそう酷いことにはならないが、リンチにあえばただでは済まない。
 そしてその隙に、クロウズクロウたちが逃げてしまう危険もあった。
「浚われた人たちの扱いまでは言及されていないわ。村へ乗り込んで、クロウズクロウを抹殺すること。これが私たちに与えられた依頼よ。けれど……」
 プルーは途中まで言って、小さく首を振った。
「決めるのはあなたたちよね。なんにせよ、サーカスの騒動に決着をつけられるなら、これ以上のことはないわ」

GMコメント

【オーダー】
 成功条件:クロウズクロウの抹殺

 サーカス団員『クロウズクロウ』を倒します。彼ら三人の死亡が成功条件です。
 戦闘にあたって狂気にあてられきった領民たちが襲いかかってくるはずですが、彼らの生死は問われていません。

【クロウズクロウ】
 三人の楽器奏者です。味方へのステータス強化と飛行しながらの銃撃戦を得意としています。
 彼らにとって『狂気に犯された領民』は明らかに捨て駒な筈なので、真正面からまともに戦ってくれるとはちょっと思えません。

 具体的な話をしますと……
・領民をけしかけて肉壁とする
・領民が大量に組み付いて動きをとれない所を襲う
・領民にてこずる間にさっさと逃げる
 といった使い方が考えられます。
 彼らはスカイフェザーですので、飛行して射撃も届かない高度まで逃げて山を越えちゃうという手もとれるでしょう。
 極端なところ、こちらにも飛行可能なメンバーがいれば思い切って空中戦に持ち込んでしまえば『領民が手出しできないエリアでの直接対決』が可能になります。その間領民対策を地上メンバーに任せることもできるので、地味に推奨。

・浚われた領民たち
 狂気にどっぷり浸かってしまった領民たちです。
 近くの村から浚われてきた女子供の集団です。
 人数はざっくり30人前後とされており、結構な数です。
 武器は色々で、射程はR0~R3まで。
 彼らは狂気にどっぷりなので今のところは話し合いもできない状態ですが、元から暴徒ってわけでもないのでシルク・ド・マントゥールから隔離して暫く療養すれば元の生活に戻れる可能性があるかもしれません。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • <Liar Break>明けない空のクロウズクロウ完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年06月27日 22時00分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

世界樹(p3p000634)
 
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
幽邏(p3p001188)
揺蕩う魂
レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)
希うアザラシ
シルヴィア・エルフォート(p3p002184)
空を舞う正義の御剣
セティア・レイス(p3p002263)
妖精騎士
エスラ・イリエ(p3p002722)
牙付きの魔女
アベル(p3p003719)
失楽園
リア・クォーツ(p3p004937)
願いの先
ココル・コロ(p3p004963)
希望の花

リプレイ

●翼あるもの
 『明けない空のクロウズクロウ』。空を舞い暗黒をまき散らす様や、彼らに隷属した者たちが終わらない狂気と絶望に落とされることからそう呼ばれているという。
「魔種の旋律……なんて耳障りなのかしら」
 丘から見下ろした集落は家畜同然にまでおとされた民衆たちの姿があった。それを目にした『サフィールの瞳』リア・クォーツ(p3p004937)の反応は当然なものと言えただろう。
 彼らにうずまく感情は狂気と絶望。音として聞いたなら、酷い不協和音になるはずだ。
 『空歌う笛の音』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)も目にめいてその不協和が分かったのか顔をしかめた。
「ひどい。音楽をこんなことに使うなんて許せないよ!」
 こっくりと頷く『森アザラシと魂無き犬獣人』レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)。
「わざわざ女と子供だけ浚うなんて……卑怯な奴らっキュ。明けない空のクロウズクロウじゃなく、女たらしのクロクロかロリショタコンのクロクロ
と呼んでやりたいっキュ」
「ええ、とても許せません。神に拠らずとも私が許しません!」
 『空を舞う正義の御剣』シルヴィア・エルフォート(p3p002184)は美しい宝剣を握りしめると、翼をはばたかせて集落へと飛びはじめた。
 それを追って走り始める『風来樹』世界樹(p3p000634)や『牙付きの魔女』エスラ・イリエ(p3p002722)たち。
「年貢の納め時じゃな。覚悟するのじゃー!!」
「領民を囮にして自分だけ逃げようだなんて魔種ってやっぱり卑劣なのね。お友達にはなりたくないタイプだわ」
「うおー! 絶対に助けるのです!」
 花のような模様がはった盾を振りかざし、『夢見た空』ココル・コロ(p3p004963)が聖なる力で空へと飛び上がる。黄金色の粒子が妖精の羽根をかたどった。
 銃を手に斜面を駆け下りる『破片作り』アベル(p3p003719)。ガスマスクのゴーグル部分をとんと叩く。
「空飛ぶ楽団ねぇ、ヘンテコサーカスにしちゃ悪くない演目じゃないです?」
「…………」
 話を振られたが、『揺蕩う魂』幽邏(p3p001188)は一度視線をやるだけで沈黙を返した。言葉の代わりにアンチマテリアルライフルをがしゃこんと鳴らし、いつでも撃てるようにした。
 蝶のごとき翼を羽ばたかせ、『トータルパンツコンサルタント』セティア・レイス(p3p002263)がキッと集落をにらむ。
「特異運命座標の剣となるレイス家の宿命。自分がないみたいで、下らないって思ってた。でも今はすこし分かる……」
 剣を重々しく握り、掲げる。
「わたし自身が、特異運命座標であり、聖剣だから」
 イレギュラーズの一団は、狂気の集落へと突入していく。
 近隣から浚われ革の首輪をはめられた女子供の民衆が、獣のごとく吠えて立ち上がる。
 どこか優雅に演奏をしていた三人の楽団員たち――クロウズクロウがイレギュラーズの隠しもしない猛烈な気配に気づいて、ふわりと飛び上がった。
 ギターのクバリー。バイオリンのフロレス。サックスのモルッカ。三者同様に辛気くさい燕尾服。楽器の色まで丁寧に黒い。
「来たか」
「殺すの?」
 クバリーはクシで前髪をかきあげ、フロレスは口紅を塗り直す。モルッカがサックスの音を高らかに鳴らしたことで、三人の意見は一致した。
「そうだな。捕まえて、飼おう」
 そして銃声が鳴り響く。

●衝突
 獣の如く吠え、石を手に群がらんとする民衆たち。
 そのはるか頭上を飛び抜ける金髪の女。
 誰よりも早く、そして先陣をきってクロウズクロウへ突撃したのが、シルヴィアである。
 靡く黄金の長髪と、陽光のごとく白い翼。
 思わず見上げ、目を奪われる民衆たち。
「私の名はシルヴィア・エルフォート。天義の騎士がひとり。この剣で、貴方達を断罪します!」
「天儀だと――馬鹿な」
 クバリーが黒い刀を抜き、シルヴィアの剣を受けた。衝撃で大きく流れ、空へと上がっていく。
 そんな彼らへ向け、幽邏は飛行しながら対物ライフルを発砲。人間を一瞬で殺しそうな弾がクバリーの翼をかすった。
 ちらりと眼下をみやる幽邏。
 一方でエスラとリアが地をかけ、民衆へと飛び込んでいった。
「……任せる」
「任されたわ!」
「貴女の旋律にあたしの心をチューニングさせたい。協力して」
 リアは美しい口笛をふき始めると、エスラたちの勢いが増していく。
「ごめんなさい。できれば痛い思いはさせたくないのだけど……あなた達を救い出すためでもあるの。ちょっとの間だけ我慢してね」
 エスラは襲いかかる民衆に手を翳し、魔術の衝撃を放った。
 吹き飛び、地面を転がって動かなくなる女性。死んではおらず、ただ気を失っているだけだ。
「殺さずに助けるつもり……?」
 フロレスが薄く笑う。が、そんな彼女のこめかみを、魔術の衝撃がかすっていった。
 リアが生み出した霊体のバイオリン。その弦に、剣がそっと添えられていた。
「この位置は不利だわ」
 フロレスは翼を大きくはばたかせると、みるみる飛行の高度を上げていった。
 射程圏外に逃れるためか。それともあわよくば戦場からも逃げるためか。
「そうそう、その調子」
 アベルはまるで笑ったように顎を上げると、上昇のタイミングが遅れたモルッカめがけてオーラの銃弾を乱射した。
 慌てた様子で回避し、空へと逃げていくモルッカ。
 背負っていたアサルトライフルで逃げ際の乱射をしかけてきた。
 アベルは赤い瞳を緑に変え、眼前に発生した斥力壁で弾頭を止め、ぽろぽろと弾いていく。
「それでいい。『近づいて来やがったら俺が打ち落としてやる』……ってね」
「クロクロは飛べる人たちに任せて、レーさんは自分のお仕事を頑張るっキュ!」
 レーゲンとグリュックは威嚇術を放ち、群がる民衆たちを片っ端から気絶させていく。
 元々戦闘力が乏しく、理性を失ったがためにモロに攻撃をくらうようになった彼女たちである。威嚇術による攻撃は見事に相手をとらえ、順調に意識を奪っていった。
「まかせた。ココル、ついてこれる?」
「はい!!! セティア、行くですよ!」
 セティアとココルは互いに螺旋状の軌道をとって急上昇。安全圏に逃げたはずのフロレスへと迫り、同時に剣と盾による突撃を仕掛けた。
 派手にはじき飛ばされ、空中で回転するフロレス。
 バイオリンを奏で、魔術弾をあちこちに乱射し始めた。
 そこへ飛び込む世界樹。断魔のハサミで斬りかかる。
「端からクロ、ウズク、ロウと勝手に命名しておいてやろう。地上の仲間は勝手に何とかしてもらうとしてじゃ」
「絶対に逃がさないよ!」
 フロレスたちが上昇してくることを踏んで、予め高度をとっていたアクセルが翼を大きく広げ、十字の描かれた聖盾を両手で突き出すように構えた。
「くらえー!」
 全身の魔力を盾に集め、高威力の光線をぶっ放すアクセル。
 直撃をうけそうになったフロレスはバイオリンの弓で切り裂くにようにして防御した。
「まだまだ!」
 アクセルは翼を大きく羽ばたかせ、抜けた栗色の羽根を矢に変えて次々と発射していく。
 彼らによる激しい空中戦が始まった。

●空飛ぶ死線
 アサルトライフルによるフルオート射撃。
 天空を裂くように走る弾頭のラインが幽邏の翼で描く軌道ラインと交差した。
 ワンピースの表面に展開した神秘のベールが暖冬を払い、止めきれなかった衝撃にバランスが崩れる。
 回転しながら落下。急降下をかけ追撃するモルッカ。降下しながらのライフル射撃を。幽邏は突如翼を広げて急カーブをかけ回避すると上向いての発砲。
 対物ライフルの弾がモルッカの側面をすり抜けていく。
 舌打ちでもしそうなところを、幽邏はクールにレバーを引いて薬莢排出。即座に次弾発射。翼に直撃をうけたモルッカはきりもみ回転しながら落下。
 羽ばたいて離脱しようとする所を、ココルたちがかするような体当たりをしかけて牽制していく。
「天下のシルク・ド・マントゥールの団員様がたった一人の子供に苦戦しているのですか? 笑ってしまうのです! この程度なのですか! だったら、私一人で十分なのです!」
 突撃をかけ、銃で殴りかかるモルッカ。
 ココルはそれを盾で防いだ。
「女の人や子供にしか効かない音楽って、男の人には魅力に感じられないって事ですよね? あれれー?それってぇー、『下手だから』なんじゃないですかー?」
 はっはっはー、とはき出すように声を張る。
 それを追い払おうとフルオート射撃をしかけてくるモルッカに、ココルは盾を翳したまま後退。
 入れ替わるように飛び込んだ世界樹が断魔のハサミで攻撃を仕掛けていく。
 ライフルで受けるモルッカ。
 まるで鍔迫り合いのように競り合う二人――の背後で、幽邏がスコープを覗き込んだ。
 ハッとして離脱をはかろうとするも一瞬遅い。幽邏の放った弾がモルッカの翼を致命的に破壊。空中制御を失ったモルッカは民家の屋根へと真っ逆さまに墜落した。
 屋根を破壊しながら屋内へと転がり落ちる。
 テーブルを真っ二つに割って、頭を押さえて起き上がった――ところで、銃声。モルッカの頭がスイカのように爆ぜて散った。
 窓の外に寄りかかったアベルが、煙ののぼる拳銃を向けていた。
「言ったよね? ――おっと」
 襲いかかる民衆の拳を軽やかに飛び退くことでかわすアベル。
 窓枠から屋内に転がり込み、その場にあったフライパンを翳して投石を払った。
 扉が開き、裏口が開き、窓が割られ、なだれ込んでくる女たち。
 目の色を変えた彼女たちにアベルは手を上げ天空を指さした。
「提案。伏せたほうがいいと思うんですけど」
 直後、窓をフレームごと崩壊させ、クバリーとシルヴィアが突っ込んできた。
 屋内をめちゃくちゃに浚った後、反対側の窓を突き破って屋外へと転がり出る。
 空中で回転をかけ、大きく上昇。
「逃げられるとは思わない事です!」
 翼を鋭く羽ばたかせ、剣を防御姿勢で構えての強引な突撃。
 空中でぶつかり合った二人はつかみ合うようにして回転。民衆たちとは遠く離れた所へと墜落した。
 再び急上昇をかけ逃れようとするクバリー。が、それが命取りとなった。
 音。
 リアの吹いた口笛が一本の槍となり、上昇中のクバリーの胸を貫いた。
 直撃。いや、それ以上だ。
 クバリーは今度こそ墜落し。手から剣が外れて転がった。
 剣をとろうと這い、伸ばした手が思い切り踏みつけられる。
「があっ……!?」
「言ったはずです。逃げられないと」
 シルヴィアのブーツであった。
 彼女は宝剣を今一度高く振り上げると、クバリーに狙いをつけた。
「その邪なる翼、我が剣で墜とします!」
 あがる血しぶき。断末魔。
 それを聞き取り、フロレスは露骨に舌打ちをした。
「よそ見してる暇が――!」
 アクセルのマジックミサイル乱射。
 魔力を打ち尽くした所で、盾を前に突きだしたミサイルのような姿勢で突撃。
 素早くかわしたフロレスだが、置き逃げのように放った魔力の爆弾が破裂し、フロレスの翼を傷付けた。
「いっとくけどこれ、地元じゃさいきょーの突き技のまねだから」
 バレルロールで下へと回り込んだセティアが聖剣を叩き込む。
「騎士が狐を狩るように、妖精騎士は鴉を狩る」
 バイオリンで防御したフロレス。破壊されたバイオリンを捨て、弓の弦に魔術を纏わせて切りつけてきた。
 空中を螺旋状に重なりながら幾度となくぶつかるセティアとフロレス。
 格闘に勝ったのはフロレスのほうだった。セティアは美しい翼を切り裂かれ、制御を喪って墜落する。
 が――。
「逃がさない」
 セティアが足首を掴んだことでフロレスのバランスが崩れ、引っ張られるように地上へと共に落下した。
 柔らかい土の上をはね、滑り、転がるフロレス。
 見れば翼が破壊されている。
「回復っキュ」
 レーベンがセティアにヒールオーダーをかけるべく駆け寄ってくる。
 一方でエスラが両手に魔術所を握って突っ込んできた。
「並べ!」
 悲鳴にもにた声で叫ぶフロレス。彼女を狂信する女や子供たちはエスラを阻むように並んだ。
「無意味よ」
 エスラの両手のうえ。魔術所のロックがひとりでに解除され魔方陣が無数に展開し始める。
 エスラそのものを像のようなエネルギー体が包み込み、民衆を次々と撥ね、吹き飛ばしていく。最後にはフロレスにまで体当たりをしかけ、派手に撥ね飛ばした。
 フロレスは粗末な立て付けの馬小屋を破壊し、枯れ草と土の上を転がった。
「もう大丈夫ッキュ」
 レーゲンたちによって回復したセティアが、よろよろと歩み寄る。
 起き上がり、逃げ出そうとするフロレスの首を掴み、無理矢理に組み付く。
 霊体のバイオリンを肩につけ、剣を構えるリアが駆け寄った。
「離れて」
「撃って」
 発言は同時だったが、察するのは一瞬だった。
 リアは勢いよく旋律を奏で、セティアごとフロレスの肉体を貫いた。
 飛び散る血液。落としたカボチャのように、フロレスの首が地についた。

●地に還れ
 その後、イレギュラーたちは発狂した民衆の鎮圧にあたった。貴族が易々と手を出せないようにと用意した『働く人質』でしかなかった民衆たちを倒すのは簡単だった。
 命をとることなく鎮圧し、草の上で並んで眠る彼女たちにできる限りのケアをして、イレギュラーズたちは土地を納める貴族のもとへと報告に戻った。
 話では、別の場所でもサーカスの団員たちが倒され、土へかえったと聞く。
 幻想に再びの平和が訪れる日は、遠くはあるまい。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete!
 ――congratulation!

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