シナリオ詳細
湿地に舞う浮遊茸
オープニング
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仮想世界であるネクストにも、梅雨、そして雨は存在するらしい。
しとしと、しとしと……。
時期柄か長く降る雨は止むことを知らない。
特に、海と面した航海の地はなおのこと。おかげで湿度が高く、かなり蒸し暑さを感じてしまう。
「本当、あっつい……」
その飛行種の少女リゼットは航海の王都リッツパークへと戻るところだった。
足場がぬかるむ場所が多かったこともあって時折翼で飛んでいた彼女だが、雨の中だと体が濡れて重くなる。
やむなく地面を歩いて王都へと急いでいたのだが……。
「え、キノコ……?」
ふとリゼットが気づけば、周囲にふわりと両手に乗るくらいの大きさのキノコが浮かんでいた。
それは一つではなく、周囲に7、8体ほど浮かんでいた。
さらに、リゼットの行く手を遮るように巨大な柱のようなものが地面からそそり立つ。
その柱もまた巨大なキノコであり、周囲の浮遊するキノコを生み出していた。
それだけではない。巨大なキノコの菌糸が根のように広がり、リゼットの体を捕える。
「う、ううっ……また……!」
菌糸と胞子。それらが体の内外から彼女の動きを封じてくる。
体を動かそうとするが、思い通りに動いてくれない。……そんな時だ。
「邪魔すんなよ、キノコのくせに!」
そこに飛び込んできたのは、短髪の少年清水洸汰だ。
彼は邪魔な菌糸をバットで振り払い、さらに浮遊するキノコを叩く。
「あなた……は?」
「大丈夫、アンタはオレは救ってやるぜ!」
身の丈が倍、いや、3倍はある巨大な敵に、洸汰は果敢に立ち向かっていくのである。
●
『Rapid Origin Online』……略称『R.O.O』。
この仮想空間にはネクストという混沌とは似て非なる世界が広がっている。
「皆さん、お疲れ様です」
『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)はログインしたイレギュラーズへと挨拶し、今回の依頼について説明する。
依頼の目的は2つ。魔物となったキノコの群れ……そそり立つ巨茸と浮遊茸の討伐。そして、それらにとらわれたアバターの救出だ。
このキノコの群れは、航海セイラーの近くの湿原に現れており、入り口にある『サクラメント』を破壊してしまいかねない為、討伐の必要がある。
「皆さんが向かうタイミング、旅人の少年清水洸汰さんが飛行種の少女リゼットさんの救出に動いてくれています」
なるほどと頷く『R.O.O』の参加メンバー達。
そこで、一応とメンバーの1人が確認したのは救出対象のことだ。
「はい。皆さんもリゼットさんの救出を最優先に願います」
リゼットは何らかの事情でこの世界からログアウトができずにいたが、何とか自力でログアウトすべく、王都へと向かっていたようだ。
ただ、彼女はそれを巨大キノコに行く手を阻まれてしまう。
菌糸に絡まれ、胞子で体の自由を奪われるリゼット。そんな彼女を、ネクストで旅する清水洸汰が助けに入るようだ。
「実在の洸汰さんと同じ姿をしていても、彼はネクストの住人であり、混沌のことを知らない『R.O.O』のNPCです」
その為、洸汰を助ける必要はないが、ネクストの民と交流をしたいと考えるなら彼も救出したいところではある。
とはいえ、デスペナルティというものがあるからか、『R.O.O』の設定に問題があるのかはわからないが、混沌のモンスター以上に桁外れの力を持つことも往々にして確認されている。
一般モンスターとはいえ、油断していれば、あっさりと返り討ちにあってしまうことだろう。くれぐれも注意して交戦に当たりたい。
調べられる範囲で得た情報をデータとして、アクアベルは皆へと提供して。
「改めてキノコの群れの討伐と、リゼットさんの救出を。どうかよろしくお願いいたします」
そう告げ、彼女は丁寧に頭を下げたのだった。
![](https://img.rev1.reversion.jp/illust/scenario/scenario_icon/44815/02c29fad5f164d62227212fbb95e02f1.png)
- 湿地に舞う浮遊茸完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年06月10日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
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混沌に似て非なる世界ネクスト。
アバターとしてこの世界へと飛び込んだイレギュラーズ達は、混沌で言うところの海洋……航海の王都へと至る。
「いやーまさか、こんなに早く『こっち』のオレに会えるなんてなー!」
見た目も本人と変わらず、元気な少年をした『永遠の少年』コータ(p3x000845)はネクストにいるもう1人の自分との出会いを楽しみにしていた。
「R.O.Oの世界で自分と出逢う……なるほど、そういう事もあるのだな」
それに、アクセスファンタズムの影響で落ち着いた印象の『胡蝶の夢見人』君塚ゲンム(p3x000021)が関心を抱く。
むしろ、本人のアバターとネクストでの自身は引かれ合うと言えるのかもしれないとゲンムは考える。偶然か故意かはいざ知らず。
「NPCはしょせんデータ上の存在かもしれない、が」
やや色黒な肌をしたスーツ姿の男性、『めっちゃだんでぃ』じょーじ(p3x005181)はそもそも現実の自身が頭の中まで機械である故、人のことは言えないとしながらも。
「なにより、そのような些細なことで子供を見捨てるなど、ダンディのすることではない」
自らの信念故、じょーじはこの依頼を受諾したようだ。
傍では、全長3mの自律AI搭載型二足歩行戦車『人型戦車』IJ0854(p3x000854)も救出対象となる少女と、それを助けようとする少年……コータと同じ姿をした清水 洸汰を守ると目的を再確認していた。
「しかも、ピンチの女の子を助けようとするなんて、まさにヒーローじゃん!」
「ヒーローは子供一人ではないと、示してやろう、ダンディにな!」
なれば、黙って見ている訳にはいかないと気合を入れるコータに、じょーじも声高に自分達の存在を主張するのである。
●
さて、現地は雨の為、日中にもかかわらずやや薄暗い。
中央島、首都リッツパークから陸地側、時期がら湿地となった場所を一行は歩く。
「じめじめしてて暑いな……これだけで動きが鈍くなったような気分になる」
湿度の高さに、実在の本人とほぼ変わらぬ青髪の青年の容姿をした『アルコ空団“路を聴く者”』アズハ(p3x009471)が瞳を閉じたままうんざりとする。
しとしとと降る雨に全身を濡らすメンバー達。
コータが人助けセンサーを働かせ、捜索対象の少女と少年の声を探ろうとする。
「ひょっとしたら、キノコが飛んでった痕跡が落っこちてたりしないかな?」
周囲を確認しつつ歩くコータは、途中、地面が妙にねばつくのを確認する。それがキノコの菌糸であると気づくのに、そう時間はかからない。
「キノコッス! キノコステーキは好きッス!!」
可愛らしい姿のはらぺこどらごん、『神の仔竜』リュート(p3x000684)は美味しいごはんの為に前方へと見えてきた敵へと向かっていく。
「しかし、巨茸は随分と大きいな。大きさの感覚が狂うよ」
アズハがそう思うのも無理はない。湿原に全長6mというとてつもなく太いキノコがそそり立っていたからだ。
そして、その周囲には両手に乗るくらいのサイズのキノコが傘を上下させてふわふわと浮かんでいる。
「なんだか、ふわふわしている物を見ていると、眠くなってきてしまうわ……ふあぁ」
欠伸をしてルビーのような赤い瞳を瞑るブロンドの長髪の『闇のしらべ』ルルリ(p3x001317)が言うには、この依頼がキノコでなくてタケノコを討伐する依頼だったら見過ごしていたとのこと。
「キノコを許すわけにはいかないわ……。戦争よ戦争……タケノコ派代表としてまけるわけにはいかないのよ……」
ルルリの独り言はさておき、その巨茸が地面に展開する中でふわふわ浮かぶキノコと合わせて、コータと同じ姿をした少年が飛行種の少女を守っている。
「やらせないぞ!」
飛行種の少女リゼットを庇う洸汰は毅然とした態度でキャッチャーミットを突き出し、キノコの群れへとバットを振り回す。
ネクストの敵は手強い。あの状況もいつまで持つか……。
「中々際どい状況ではあるが、洸汰君の奮闘のおかげで間にあったな」
しかし、じょーじは現状を前向きに捉える。後はこちらの作戦がうまくいくかどうか。
「助けに来たわよ!」
そこで、いち早くオッドアイの女性スナイパー『半魔眼の姫』オルタニア(p3x008202)が 弓「クライン・クライン」を手にして限界ギリギリの速さで連射していく。
「皆が体勢を整えるまで近づけさせない!」
オルタニアによる矢の嵐の中、コータがアクセス・ファンタズム『童心の伝道師』を使いながら少年少女に声をかけて警戒心を解こうとする。
「へっへーん、ヒーロー参上っ! ……今までよく頑張ったな、洸汰。ここから先はオレ達に任せとけー!」
「オレが……いる?」
驚く洸汰に対し、リゼットはすぐにこちらの素性を察したようで、洸汰の手を引く。
そんな彼らへと、IJ0854がぬかるむ足場でドスドスと音を鳴らして近づいてくる。
『おはようございます。私はIJ、貴方の健康を守ります』
名乗るIJ0854に、リゼットが縋ろうとするが、洸汰は大丈夫と制止する。
「悪いが、俺は最後まで戦うぜ!」
この場に留まる洸汰。ただ、そこに巨茸の菌糸が地面から絡みつき、自由を奪おうとしてくる。
「リゼットさんと洸汰さんを助けて、キノコを殲滅。スッキリ終わらせるぞ!」
2人の保護を行うIJを支援すべく、アズハもスナイパーライフルの照準を邪魔な浮遊茸へと合わせる。
他メンバーも個々に自らの思うままに行動する。
ルルリは仲間が引付、少年少女の保護に動いたのを受け、敵の攻撃に集中することに。
「足元ジメジメ嫌いっす!」
ふわりと浮くのは浮遊だけではなく、巨茸の菌糸を警戒するリュートも低空を飛行して今日のご飯の為にと奮起する。
仲間達の連携がうまくいくかは不透明だが、ゲンムはなんだっていいと割り切って。
「洸汰の心意気に応えて、彼の力添えをするのみだ――俺のやり方でな」
そう告げ、彼はガトリング砲を構えるのである。
●
そそり立つ巨茸が洸汰やリゼットを捕えようと、地面に菌糸を広げる。
ねばつくそれらは一度体に絡めば、常人では外すことすら難しい。
さらに、浮遊茸が胞子を撒き散らす。下手すれば、すぐに苗床にされてしまうだろう。
「集中……!」
戦う前に、オルタニアが意識を視野に集中し、広く深く戦場となる湿原を見回す。
浮かぶキノコは8体。オルタニアはその形、おおよその距離を把握する。
「デッカイのもいるわね……よし! あらかた分かったわ」
オルタニアを含めたメンバーがそれらに攻撃を仕掛ける手筈となっており、IJ0854は少年少女の救出に注力する。
『問題ありません、それよりも貴方の健康状況の提示をお願いします』
「大丈夫です」
まだ、自力で歩けるリゼットと彼女が手を引く洸汰に接近したIJ0854は、かばうモードをリゼットにセットして離脱へと転じる。
「ちょっ、オレはまだ……!」
手にしたバットでキノコを殴ろうとする洸汰はリゼットに引っ張られる形で離れていく。
それを目にしながら、コータは取り出した遊び球を投げつけ、浮遊茸を牽制する。
ふわふわ浮かんでいたそれらの幾体かが、コータに気をとられて近づいてくる。このキノコらにも、怒りという感情はあるのだろうか。
「まずは浮遊茸の数を減らして、戦況を変えよう」
コータへと移動する浮遊茸を、アズハは目を見開いて捉えて拳から振動波を発する。そうして、しばしアズハはキノコのみ動きを止めようとする。
(巨茸の菌糸も上手くすれば避けやすくなる……か?)
ただ、足元に伸びる菌糸を察し、アズハは飛行する。
打ち付ける雨は空へと浮かぶには邪魔になる。雨は菌糸類には好条件だと考えつつ、ゲンムはサイコロジカルガトリング砲を前方へと突き付けて。
「一応、言っておく――伏せろッ!」
一言仲間へと叫んだゲンムは弾幕を展開して、敵を自由には動かせない。
弾幕の範囲には仲間のイレギュラーズもいたが、ゲンムの弾丸は彼らには至らず、霧散していた。
「ぎゃおーっ!」
周囲へとこだまするリュートの叫び。それは力ある声となり、キノコらの動きを硬直させる。
「キノコはリュートのご飯ッスよ!」
そのまま、飛び掛かろうとするリュートを含めて頭上からは胞子が迫る。
ジョージもすぐさま回復をと構えるが……。
「ああっ!」
その時、菌糸が逃げようとするリゼットの足へと絡みつく。
『当機のみでは限界があります。援助を要請します』
「了解した」
改めて、IJ0854が呼びかけると、じょーじが癒しの力をリゼットの足に集中し、拘束を解いてみせる。
「もう手出しはさせねー!」
バットを握りしめる洸汰がキノコへと殴りかかろうとしている。
その様子を視界に入れていたコータも己の容姿を最大限に利用して暴れ、自分のペースに持ち込んで敵を……場をかき乱す。
「キノコが胞子を飛ばすのはカサの後ろからだから……」
ルルリは巨茸のみを見据えて迫っていた。
全長6mもあるどでかいキノコだ。新たな浮遊茸を生み出すカサを狙うにも近づく必要がある。
「そこを破壊してしまえば、ふわふわキノコを増やすことができなくなるんじゃないかしら……」
ルルリはそう呟き、歌を口ずさむ。
「リゼットちゃんだっけ? これ渡しておくわ」
IJ0854や洸汰がカバーに当たるリゼットへ、オルタニアが差し出したのはサイバー軟水だ。
「治療受けながら、ゆっくり飲んでるといいから。後は任せときなさい!」
「は、はい……」
「心配いらない、ただのお水よ」
菌糸から解放されても、身がすくんですぐに動けなくなったリゼットへとオルタニアが優しく告げる。
『問題(ノイズ音)ありません』
キノコらの攻撃が集まるIJ0854は、その攻撃で自らに異常がないことを確認する。
かばうモードの彼女に引かれる浮遊茸を含め、リュートは全力を籠めて巨茸へと大きく息を吸い込んで。
「どーんっ!」
放たれた色とりどりの光弾ブレスが巨茸を中心として大爆発を巻き起こす。
「焼きキノコッス! リュート焼くッス! 大きいのは全力で焼いて火を通すッス!」
しかしながら、巨茸はこんがりとした匂いを漂わせ、その場に立ち塞がり続ける。
ルルリは引付役となる仲間といつスイッチできるよう控え、巨茸を敵視する。
「巨大なキノコというだけでも殲滅対象。生かして置くわけにはいかないのだわ……」
こいつを倒さねば、浮遊茸は際限なく増え続ける。
だから、ルルリは敵の傘目掛けて纏う闇のオーラを打ち付けていく。
「…………!」
言葉を発することができない巨茸だが、自らを取り囲むように展開するアバターらに、並々ならぬ殺気を漂わせていたのだった。
●
リゼットの安全をIJ0854が確保しようとする中、じょーじは指を鳴らして近場の洸汰を含めて癒しに当たる。
じょーじとしては、IJ0854を始めとした前衛陣がしっかり状態異常対策を行ってくれていることもあり、負担はさほど大きくない。
「今ならいけそうだな」
後はタイミングを見て、じょーじは仲間の体力回復と状態異常回復を行うのみだ。
しかしながら、巨茸は多数の浮遊茸を生み出し、手数で攻め立ててくるのは実に鬱陶しい。
コータが千本ノックでボールの雨を降らせ、アズハは仲間を巻き込まぬ様浮遊してから距離をとって振動波を浴びせかけていた。
「よろしく、クライン・クライン♪」
オルタニアも呼びかけた弓から浮遊するキノコを1体ずつ射抜いていく。
「何発でも撃ち込んであげるわ!」
数発叩き込めば、キノコは落下して動かなくなる。
「鬼ごっこッスか!? リュートは鬼よりも怖いドラゴンッス! 逃さないッス!」
嬉しそうに浮遊茸へと飛びつくリュートが幾度か殴りつければ、キノコはすぐに落下する。
他メンバーも各個撃破に当たるが、ある程度減れば巨茸が浮遊茸を補填してしまう。
アズハはある程度数が減ったタイミングで巨茸へと狙いをシフトする。
銃弾や衝撃波で巨茸の動きが鈍れば、アズハは単体攻撃に切り替えて敵を弱体化すべく歌を歌って。
~~、~~~~♪
その音に、巨茸も聞き惚れていたようだ。
『動力最大。いきます』
今なら攻撃できるとIJ0854も判断し、ロケット弾を叩き込んでいく。
爆破四散する弾丸は敵のみを狙って燃え上がり、直接撃ち込まれた弾丸から流れる毒が巨茸を強毒におかす。
後は一気に畳みかけたいところ。
ガトリングを速射させていたゲンムが巨茸の動きを制すべく、さらに制圧射撃を展開させる中を、リュートが飛び込んで。
「グルル……お腹すいたッス……。つまみ食い……しちゃうッス……ッ!」
こんがりと焼けた巨茸の柄の部分目掛け、思いっきり噛みついていった。
さらに、オルタニアが狙いを定めて……弓を引く。
「…………!!」
しかし、危機を察したのか、巨茸はず菌糸を素早く動かす。
どうやら、敵は前線の抑えから逃れ、この場から離脱しようとしていた。
「あっ!!」
先程まで狙っていた洸汰やリゼットも躱し、逃れようとする敵は、オルタニアの方へと移動して。
「上等。マーチング・バレット・アーツをお見舞いしてやるわ」
迫ってくる敵へ、オルタニアはタイミングを合わせて拳での打撃を撃ち込み、続けざまに至近から矢を撃ち込んでいく。
だが、敵は止まることなく、菌糸を絡めてオルタニアの体を縛り付ける。
さらに広げた傘から放たれた浮遊茸がオルタニアへと纏わりつき、瞬く間に彼女の体力を削ぎ落してしまう。
「くっ……、でも、追い込んではいるはず……」
オルタニアは悔しそうな表情でその場から姿を消してしまう。
「まだ、あれほどの力を隠していたか」
思わぬ敵の行動にオルタニアの回復が間に合わなかったじょーじだが、まだ残る仲間の為にと考えを切り替えて体力回復を急ぐ。
前線が追いつくまでの間、不測の事態に備えていたルルリが敵の行く手へと回り込んでいて。
「少し付き合ってもらうのよ……ふあ」
しばしのタンク役となるルルリは、力強い言葉で敵の気を引く。
それだけでなく、彼女は軽やかなステップで敵の周囲を舞い、敵の巨体を刃で切り裂いていく。
続々と追いつくメンバー達が改めて浮遊茸を落としていき、頃合いを見たコータが巨茸目掛けてチョップを振り下ろす。
「もう自由にはさせないぜ!」
巨茸は再び菌糸を動かそうとするが、今度は体がついてこない様子。
状態を立て直したアズハがそこで空中から追撃をかけ、敵の傘目掛けて銃弾を撃ち込んだ。
「…………」
それまで地面で蠢いていた菌糸の動きが完全に止まって。
「これで終わりだ」
アズハが一言吐き捨てると、巨茸も徐々に力なくうな垂れてその巨体を横たえていったのだった。
●
その後、メンバー達は残るふわふわキノコを全て掃討して。
オルタニアが倒れはしたが、一行は無事に洸汰とリゼットを救出できた。
「……ふわふわキノコ……惰眠を貪る枕に使えるアイテム出さないかとおもったのだけれど……」
ルルリはそう言いながら周囲を見回していたが、本人もドロップにはあまり期待してはいなかったようだ。
「キノコを食べられるリュートはキノコより強いってことッス! えっへん!」
その傍らで、リュートはこんがりと焼けたキノコを食べていた。
こんがりと焼けた肉厚キノコは実に香ばしく、なんとも美味しそうである。
とはいえ、巨茸は厄介なものを残していて。
「キノコってのは、地中などに菌糸を蔓延らせるらしい。地面の下まで駆除するのは難しそうだがな……」
「菌糸が広域に拡散の可能性あり。後日調査が必要でしょう」
アズハが地面を確認していると、IJ0854も危険性ありと判断したのか、仲間達へとそう促す。
とはいえ、今は皆傷ついており、疲弊している。
今はこれで大丈夫だろうとアズハは判断して。
「一緒に、リッツパークに戻ろう」
見れば、ゲンムやコータが助けた2人の状態を確認する。
「もし制圧射撃に巻き込んでたら謝っておく。すまん」
「いや、大丈夫だ。助けてくれてさんきゅな」
ゲンムの問いに、立役者である洸汰が大きく手を振った。
コータがリゼットも怪我が軽微であると確認して。
「早く安全なところまで案内したいな。さっきみてーな事があると大変だし!」
多少の怪我はコータを中心として組んだ円陣で癒やし、アズハが言う様に一度街へと戻ることに。
帰路について程なく、ゲンムがとある予感を抱えながら洸汰へと問いかける。
「なぁ、アンタ。もう一人の自分と出逢うってのは、どういう気分だ?」
そっくりさんにしても似すぎているコータと洸汰。コータもそれに耳を傾ける。
「んー、不思議な感じするな」
とはいえ、楽しく遊べばいいがモットーな洸汰のこと。このネクストにおける彼もコータを見ても深く考えずにいる。
ただ、近い将来、自分もまたもう一人の自分と出逢うかもしれない。
その時、ゲンムは相手がどんな反応をするだろうかと考えてしまうのである。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは浮遊茸、巨茸と討伐において成果が大きかった貴方へ。
今回はご参加、ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
『Rapid Origin Online』のシナリオをお届けします。
●目的
全てのキノコの殲滅
●敵
〇そそり立つ巨茸(通称、巨茸)×1体
全長6m、横幅が1m程もある巨大キノコです。
浮遊茸と違って空中浮遊できませんが、根元の菌糸を広げて広範囲に攻撃してくる他、新たなふわふわキノコを発生させることがあります。
○ふわふわキノコ(通称、浮遊茸)×8体
全長40~50cm程度のキノコです。
地面に根を張るだけではなく、傘を広げて空中へと飛ぶこともできます。
その上で、周囲へと胞子を散らしたり、突如勢いをつけて体当たりをしてきたりします。
●状況
現場となるのは、航海(セイラー)の中央島にある首都を陸側から出て程なく行った場所にある湿地帯です。
現地到着は昼間ですが、しとしとと雨が降っており、かなり湿度が高くなった状況の中、キノコのモンスターの群れが現れます。
すでに、NPCの少年が通りすがりの少女を守りつつ戦っていますので、彼らを救出しつつキノコの殲滅を願います。
●NPC
〇清水洸汰……ウォーカーの少年。
諸国を漫遊している間にたどり着いた航海の地で、キノコの魔物に襲われる少女を見かねて助けに入っていたようです。
野球用のバットとキャッチャーミットを手にして、果敢に戦っております。
〇リゼット……見た目は航海に住む12歳くらいの飛行種の少女。
その実、『D.O.O』テストプレイヤーである女性のアバターです。
戦闘能力は皆無に近く、胞子によって動けずにいるようです。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
●ROOとは
練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline
※重要な備考
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
それでは、よろしくお願いいたします。
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