シナリオ詳細
VDMランドだよ! ぜんいんしゅーごー!
オープニング
●
――VDMランド。
それはマリア・レイシス (p3p006685)の所有している、酒類をPRするためのテーマパークの事だ。様々なお酒を買えるのみならず作成工程の見学にも開放していれば、将来の酒職人が誕生する切っ掛けをもここは作るのかもしれない。
だが――先程記述したようにVDMランドは『テーマパーク』だ。
という事は多種多様なアトラクションをも兼ね揃えた場所でもあり……
「やったー! ついに、ついにプレオープン出来るよヴァリューシャ――!」
それらの準備が終わった本日――ついにプレオープンまでと相成った!
万歳するマリア。その眼前にはジェットコースターやメリーゴーランド。はたまた観覧車やとらぁ君を模したとらぁボートも完備されている――どこを見ても、どこへ行っても楽しめるものばかりだ。
いやそればかりではない! 和風出汁ソースが名物の串カツマリ屋の準備も万端だ!
「ふふふ、二度漬けは厳禁だけどね。とらぁ君のパンチが飛んでくるよ!」
「ええ、ええ! やりましたわねマリィ! これはもう、祝い酒をするしかありませんわ――!」
「そうよ! こんなお目出度い日に遠慮なんていらないわよね! 飲みましょ飲みましょ!」
「ヴァレーリヤさん、構いませんけれどこっそり飲むのはやめてくださいね? 帳簿がいつも合わないんですから……分かってますよね?」
既に一本開けようとしているヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ (p3p001837)と便乗するアーリア・スピリッツ (p3p004400)がいれば、不定期にマリ屋を手伝っている小金井・正純 (p3p008000)が鋭く目を細めるものだ。
ええい、毎日毎日まるで合わない帳簿の原因は一体誰だと思っているのか……
店主は『うんうん、そうだねヴァリューシャ!』なんて言ってるし、吐息を零しそうになる。
「ははは――とにかく目出度いのは確かよねぇ」
「とらぁ君達も色々準備を進めてて……あっ! 噂をすればあそこに!」
そんな様子を見ながらコルネリア=フライフォーゲル (p3p009315)とマリ屋の従業員でもあるタイム (p3p007854)は言葉を紡ぎ。そして別の方へと視線を向ければ――そこにいたのはVDMランドのマスコットであるとらぁ君――と。
「さぁさぁ皆さまこちらへどうぞ!! ご案内しますわ――!!」
「えっと、あの、これをどうぞ。今日は暑いですから……」
「『さいこうび』はこっちだよ! さぁ並んでね!!」
ヴァレーリヤによく似たトラコフスカヤちゃんに、経口補水液を手渡してくる、とらなちゃん。そして『さいこうび』の札を持つブラックタイガー(エビ)君だ。横入りはいけないよ。とらぁ君のビンタが飛んでくるよ。
「はっはっは――! 流石だね、マリア! こんなすごいのを作っていたなんて!」
――と、その時。どこからか跳躍してくる影が一つ。
それはトラコフスカヤちゃんを踏み台に大きく天へ。
そして――とらぁ君のもふもふな背に飛び乗れば――
「あ、ああ!? び、白虎君、どうして!?」
「ふふん。晴明の奴があれやそれやで式神としてうんぬんかんぬん……まぁ四神達も限定的にだけど『外』に出ることが出来るようになったのさ! これも瑞のおかげだね!」
「とらぁ」
「ふふん! 汝も虎! 皆、虎!」
そこにいたのはカムイグラで出会った四神が一角――白虎であった。
豊穣郷を守護する神霊である白虎……いや四神は本来、外に出ることが難しいとされていた。それは決して間違いではなかったのだが――かの国における神使達の英雄的活躍と平和が手にされたが故に――少々力に余裕が出来たのだ。
あくまでも外交の為の視察も任されている清明の式神の様な形で、だが……ともあれ取り計らってくれたのは瑞であるらしい。まぁ難しい事はともあれ、白虎は純粋に親交のあるマリアの下へ、VDMランドへ遊びに来た、という訳なのだろう。
一気に賑やかになるプレオーオンの広場。もうすぐ事前抽選で招かれたイレギュラーズ達も来るはずだ。
「とっても楽しくなりそうだね――ヴァリューシャ!」
「ええそうですわねマリィ! これもきっと、神の思し召しですわ!」
満面の笑顔。ああ、VDMランドの未来に幸あれ――
…………と。明るい希望に満ちている中で、すずな (p3p005307)は脳裏にふと、不安がよぎっていた。
「……なんでしょうねこの感覚は。いえ、何もなければいいのですが」
それは勘のようなモノでしかなく。故に口に出すまではしなかったのだが……
――しかしまだ誰も知らない。
ランドの工事がなんと、鉄帝の手抜き悪徳工事業者によって行われていたとは……!
ジェットコースターは妙な金属音を軋ませており作動すれば脱線当然。
メリーゴーランドに乗れば超高速回転。観覧車やワンカップなんて上下運動もしますよ。
とらぁボートは既に浸水が小さく始まっておりの重さが加われば……お分かりですね?
そしてお土産屋などの飲食物は全て質が悪く妙にまずいものばかり……!
あ、正純やタイムの手が入っているマリ屋は除くのだけど。それ以外がとにかく酷い!
そう――これもすべて業者探しをヴァレーリヤに一任したが為!!
鉄帝では貴重な締め出しをまだくらってない酒場で話しかけられた、善意で妙に格安の怪しい業者に施工依頼していたからだ……一応弁護すると、格安業者ではあったが異常な程ではない。まぁ結果はご覧のあり様ではあるのですが!
「さぁ……グランドオープン前のプレオープン、開始ですわ!」
露知らぬトラコフスカヤちゃんが笛を吹いて開始の合図。
それがまさか地獄の始まりになろうとは、一体だれが予測しただろうか……
- VDMランドだよ! ぜんいんしゅーごー!完了
- GM名茶零四
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2021年06月11日 22時05分
- 参加人数10/10人
- 相談8日
- 参加費150RC
参加者 : 10 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(10人)
リプレイ
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――そうよ! こんなお目出度い日に遠慮なんて……
「そう言っていたオープン前の私へ。引き返すならその時だったわ……」
以上、プレオープン終了後の『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)さんの発言記録でした――
●
時は巻き戻ってプレオープン直前!
「ふふっ、ようこそVDMランドへ! CEOのマリア・レイシスだよ! 沢山の遊戯施設に加えてマスコット達も皆いるからね――今日は楽しんでいっておくれ!」
この世には幸せが満ちていると信じている程に輝かしい笑顔を『雷はただ前へ』マリア・レイシス(p3p006685)は携えている。ふふ、可愛いね!
「さっ、まずはご挨拶からだね! こちらは当ランド自慢のお酒博物館学芸員とマスコット達!」
「1番! トラコフスカヤですわ! ご案内はお任せくださいませ!」
「2番! ブラックタイガー君、トラです!」
「とらぁ……」
「4……4番のとらなです……よろしくお願いします……
あっ。あとアルチュウさんは具合悪くて虹を出してて」
とらぁ君の背後に隠れるとらなちゃん。
いっぱいお客さんが来て緊張してるのかな? ともあれ――
「皆、ようこそVDMランドへ!
VDMランドのお酒博物館の学芸員兼マーライオンの私がご案内致しますわー!」
最後の一声は私ですとばかりに『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)がシャンパンのボトルを開けながらお祝いと共にラッパ飲みを開始した――! マリアにとって愛しき太陽が如きである彼女は――あれ? シャンパンとは別にその脇に抱えている見慣れないお酒は一体?
「ねぇヴァレーリヤちゃん。そのお酒ってどっから……」
「え、このお酒ですの? あげませんわよ! 幾らアーリアの頼みと言えど!!」
「あっー! ヴァレーリヤちゃんあそこに幻のお酒が!」
「えっ!! どこですのどこどこどこ!? 幻の竜酒どこですの――!!?」
瞬間。アーリアが彼方を指差して注意を逸らし即座に脇に抱えていたお酒を分捕る!
ううーん! これ中々いいお酒!
結構な上等品だけど一体どこから貰ったんだろう。不思議だなぁ。
「ん、んんん? なに、この甘……違う、下品な甘さは!? 安いシロップに一日浸けたみたいな、ぁ、中から凄い甘ったるい匂いが……! うう、胸やけがするぅ……」
一方で。施設を楽しむ前にと『Disaster girl』フォウリー(p3p009811)はチュロスの類を口に含んだ――ら。独特な味わいに、思わず味覚が爆発しそうであった。あ、あれぇ。何かおかしいぞ?
「…………なぁ。所で、さ。これ大丈夫か? ホントに大丈夫なのかマリア?
なんかすっげー音が響いてる気がするんだけど……んっ? なんだこれ、ネジ?」
と、その時。『慈悪の天秤』コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)の頭に降ってきたのは――おやどうやら錆びているネジの様ですね。上にはジェットコースターがあるだけなんだけど、一体どこのネジなんだろう。不思議だなぁ。
「わぁ、遊園地ですか。ずっと気になってたんですよねえ、たのしみー。
……ネジが降ってきたという事は覚悟しなければなりませんね。現実逃避は此処までにしておきましょう――だからとらぁ君。タイムさんを至急捕まえてください」
「あ――! いーや――! ちょ、とらぁ君! 私はマリ屋で仕事が、あぁ――!!」
もう嫌な予感しかしない『星の救済』小金井・正純(p3p008000)はホント現実逃避したい気分なのだが目を逸らしても解決しない事に吐息を漏らして。だから『優光紡ぐ』タイム(p3p007854)さん、逃がしませんよ。
「どうしたんだいタイム暗い顔をして! 人間、病は気からと言うように、いついかなる時も笑顔が大事だぞ!」
「そうだよ! 折角白虎さんも来てくれてるんだ! さぁまずは記念撮影だよね!!」
やむなく。凄い笑顔の白虎と『希う魔道士』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)と共に――開始前の記念撮影と相成った。これより輝かんばかりの記録を残すVDMランド始まりの軌跡として。
3、2、1――マスコット達と共に。まずはみんなで記念写真。
「……これが遺影にならないことを祈ろうね」
儚きタイムの願い――今、運命の戦いが始まろうとしていた。
●
――ねぇどうしてこうなってるんです、ヴァレーリヤさん?
――ち、違うんですのすずな! これには海より深い訳がありまして……!
プレオープン終了後に『一人前』すずな(p3p005307)より聴取されているマーライオンの発言記録より。
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「あっブラックタイガー君、とらぁ君サイン頂戴な――! ぬいぐるみをマリアちゃんからもらっていつか本物に会いたかったのよぉー! あっ、ダメだわこれ、ふかふか……人を駄目にするふかふかだわ……連れて帰るわぁ……だめ?」
そして記念撮影が終わった後。アーリアがとらぁ君にダイブする――
うーんこれぞ夢にまで見たふかふか! 思いっきり堪能し、サイン……いや手形……? も貰って『とらぁ』と手を振ってもらう。CEOが『引き抜きはだめだよ!』って言ってるけど今は存分に堪能しよう。
「ほへー。見てみてこれ虎耳グッズ! ほらすずなさんとマリアさんもっと顔寄せて!」
「なぁ三人ともこれつけてみねぇ? 似合うから、ぜってぇ似合うから……!」
「つけませんよ! 耳四つになるじゃないですか、ちょっと、コルネリアさん!!」
同時。後で買おうとお土産屋を除いてみたタイムの目に映ったのは虎グッズ!
コルネリアがすずなに付けようと画策し取り押さえて――
「ふふ、すずなさんちょっとぐらい良いじゃないですか――」
「えっ? 勿論ヨゾラさんとコルネリアさんと正純さんもやるんですよ? 恥ずかしくて無理>< なんて言わないですよね?」
「えっ?」
瞬間。とらぁ耳を配って写真を撮ろうと油断していた正純の下にタイムの魔の手が迫りくる……! ヨゾラは目を輝かせてブラックタイガー君人形やらを見ているが。その背後では熾烈な虎耳攻防戦! はい、がおーして! 32歳のがおー! がおけろー!
「さあさあ、お土産も良いですがテーマパークと言えばまずこれですわよね!
乗って下さいまし! 起動しますわよー!」
「待てヴァレーリヤ! さっきから私の職人魂が疼いて仕方がないんだ……私が機械のチェックをするからまだ絶対に起動するんじゃないぞ。いいな、絶対だぞ!」
同時。分かりましたわ! と『流麗花月』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)の発言を完全にフリだと理解したヴァレーリヤは勢いよく電源を入れた。皆、気を付け――と言う発言も間に合わず作動し始める各種機械達――
「あれ? ねぇねぇヴァリューシャ! なんかすごい勢いで回ってるというか、うわ――! 振り落とされるよヴァリューシャぁああ!!」
「あ、はいはいはーい! 僕も乗りまーす! いやーねこーゴーランドとか自領地ランドに作るのも良いかもねああああ!?」
約二秒で最高速度に到達したとらぁ君を模したタイガーゴーランドが火花を撒き散らす勢いと共に回りだす! 思わず宇宙猫顔になる汰磨羈の目の前には回転に巻き込まれるマリアとヨゾラ――
「あ、あれぇおかしいですわね? 私はただ、くるくる回る猫のアトラクションで皆のいい思い出になればと……だ、大丈夫ですわ! こんな時の為の緊急停止ボタンが、あっ駄目ですわ効きませんわ~」
連打しても止まらない光景にヴァレーリヤは絶望。故にサキイカで逃避するのですわ~おほほほ。ヨゾラ達は振り落とされない様になんとかしがみつくのが精一杯で……ああ! CEOが遠心力と共に投げ出された!
「ぐふぅ! ど、どうして……ヴァリューシャ~!?」
「――よく来たなマリア」
直後。まるで隕石が地面に着弾したかのようにマリアが辿り着いたのは、汰磨羈がチェックしようとしていたワンカップ広場だ。とーぜんまだネコチェックは終わってないです、ヨシッ!
「ようこそワンカップへ。歓迎しよう、盛大にnうわちょっと待てなんだこの上下運動聞いてないまずいまずいあっあああああああ」
「待ってとらぁ君私はいいよ、乗せないでどうして待ってああああああ!!?」
とらぁ君。持ち前の優しさからマリアをワンカップに乗せてあげる――さすれば汰磨羈と仲良く絶叫ハーモニー。うーん仲がいいですね!
「……あれコルネリアさん? ちょっと! 何をワンカップ酒買ってるんですか!! これからジェットコースターですよ、お馬鹿さんなんですか!?」
「うるせー正純! 一本だけ、一本だけだから!!」
地獄への切符が素面で切れるか! と、ワンカップ酒を取り上げんとしてくる正純に抵抗するコルネリア。まぁ取られてもポケットの中にまだ結構隠し持ってるんですけどね!
「さ。トラコフスカヤちゃんは、身長が足りないのでお留守番していて頂戴ね――あっ。よいしょっと! ふぅ、よしこれでOKですわ!」
「待て――! ヴァレーリヤ、お前今微妙に脱線していた車両を強引に元に戻しただろ!」
「おほほほまさか! 何を怯えていますの。確かに速いし凄い高低差があるけれど、只のアトラクションですもの――何も怖がる事はなくってよ!」
虹吐きそうになってた汰磨羈がなんとかジェットコースターにまでたどり着いたかと思えばいきなり信じられないものを見た。でもヴァレーリヤは皆を詰め込んでいく。スッカスカの安全レバーを正純が不審がる前にッ!
「マリア。我にも今急遽応急処置したように見えたんだけど、アレはそういうものなの?」
「うん? ヴァリューシャ……まぁいっか! 大丈夫だよ、だってトラコフスカヤちゃんとヴァリューシャがチェックしてるんだもの! それよりも白虎君も乗りたいのかい? 仕方ないなぁ♪」
更に白虎とさっき酷い目にあった筈のCEOも乗り込んでいく。楽しみだなぁと語り合いながら、その背後ではまた脱線してた車両をヴァレーリヤが『どっせーい!』と強引にレールにねじ込んで。
「……ねぇヴァレーリヤちゃん。やっぱりさっきのって」
「おほほほ! ――さぁお乗りなさい!!」
「遂に言い訳すらしなくなってませんかヴァレーリヤさん!? ちょ、離し、いやあああ正純さん! 正純さーん!!」
「うう、皆で乗れば怖くない……怖くない……わたしのパンドラは100……死亡判定はない……!」
あらタイムちゃん、一緒に乗りましょ――なんて言ってタイムらを連れてきたアーリアだったが後悔し始めてきた。すずなは正純に助けを求めてるしタイムちゃんはまるで天に祈るかのように自分のパンドラ数えて。
「うそやっぱやだ――! アーリアさぁあんッ! この手を絶対離さないでえええっやだあああしにたくないよおおお!!」
「タイムちゃんお願い手繋ぎましょ嫌な予感しかしないわ! ああ、お守りの定期入れと『塔』のカードにヒビが!? どうして!?」
逆にどうしてそんなのを持ってきたのとタイムはアーリアに泣き叫ぶが、スタートボタンをブラックタイガー君が押せば作動し――段々と高度を上げていく中で。
「タイムさん私も一緒に! 正純さん助けてくれないので!!」
「何を言うんですか。すずなさんやタイムさんは(どうせいつもの事だから)大丈夫じゃないですか。それよりも皆さんを……フォウリーさんやヨゾラさんだけは守護らねば!」
阿鼻叫喚。タイムの体にしがみつく様にすずなが絡みつけば、その様子を見て正純は新規層と言えるフォウリーらの方へと視線を寄せて――
「ヘイヘイコルネリアちゃんビビってるぅーなに? こわいの?」
「はぁ!? 舐めんなよ、こちとらビビる子供じゃ――あれ? レールあそこ無くね?」
さすれば。フォウリーはそわそわした様子のコルネリアに声を掛ける。そしたらなんか変なの見えたんですけど。え、なんであそこレール途切れてるの?
「なんかレールから外れてるけどこれは……空中に描くラインってやつね! フゥ! 最先端――あれ? 長くない? なんでこれ飛んで、マジで飛んでる?」
「ふむん、謎の浮遊感。これは私の知らない間に新しい機能が付いていたようですわね! 流石は私の探した施工業者どおおお!?」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!? ま、まって! 皆、置いてかないで!」
フォウリーが『落下』していると気づいた時、ヴァレーリヤは皆の足を掴む。誰一人逃すまい、この地獄からは――! そしてその真似――という訳ではないのだが、咄嗟にマリアも脱出せんとするすずなの足を掴んで一緒に飛ぶ! わんにゃん!
そう。飛び散るジェットコースターがそれぞれを天へと運ぶのだ――!
「ヴァリューシャ! 御主、一体どこの業者に頼んだ!? 正直に答えれば罪は軽く、あもうだめだこれちょっと通りまs」
直後。やっぱり吹っ飛ばされた汰磨羈がやれやれと。
秘儀キャット空中三回転にて三回着地に失敗する! ボートの隣をまるで水切りの石みたいにすっ飛んでいく汰磨羈・*・:≡( ε:) その顔は虚無の様な、全てを悟っているかのような不思議な表情であった――おお、まだ跳ねていく。
「ヨゾラ、アタシ……生きてる? 生きてるよな?」
「うん……コルネリアさん生きてるよ大丈夫……僕も生きてる……?」
いやぁぁぁぁもうこらくちせ―――!! 安全シートが外れないという仕様にやられたフォウリーは天の彼方へ飛んでいき、その下の方では死んだ顔のコルネリアとヨゾラが辛うじて息があった。
流石に異変に気付いたトラコフスカヤちゃんとブラックタイガー君はあわわと慌てるものだが。
「とらぁ」
とらぁ君がメンバーを回収して次なるボートへと運んでいく! 待ってとらぁ君せめてちょっと休憩を……あっとらなちゃんが水を差しだしてきてくれた。優しいなぁ。
「ふ、ふふ……これもとらぁ君の優しさ、ですかね? あっ。ボートですか。とらァさんとかとらなさんも乗ります? ちょっとギシギシ言ってますけどこれ」
「正純さん今まで何を見てきたんですか! これもヴァレーリヤさんの罠ですよ罠!! え、とらなちゃんも乗りたいんです? じゃあ私はとらぁ君と……ってせまッ! せっま! とらぁ君やっぱ大きすぎですよ!!?」
「えっボートがあるって事はつまり競争って事だよね!!? うぇ――い!!
僕はこの三番とらぁ君に乗るよ! 君に決めた!」
その人物が正純とすずな、そしてヨゾラだ。やれやれ、ジェットコースターでは酷い目にあったがボートでなら……いや待て。なんだかこれも様子がおかし、あっ! 浸水してる!
「んっ? ねぇとらぁくんなんか沈んでませんかこの船」
「とらぁ」
「いや『とらぁ』じゃねーんですよ! はやくそこ退いて脱出を――ああっ! とらぁ君そんなに動かないでくださいっ! 脱出できな、もご!! し、沈m」
「待ってください待って! 私泳げないんですって!! スク水の時も大変な思いをあっしずごぼごぼ」
纏めて沈んでいくとらぁ君ボード。サムズアップしながら沈んでいくヨゾラ――!
この後ブラックタイガー君が頑張って助けに行って、溺れるメンバー(とらぁ君含む)に掴まれて皆纏めて溺れかけたとか……
●
その後。
ジェットコースターは倒壊を始め、カップからは炎が噴き出し。
なんとか防ごうと東奔西走した汰磨羈が爆発に飲み込まれて吹き飛ばされて――
「へんじがない ただののんだくれのしかばねのようだ」
「どうやってここに戻ってきたか記憶にないんだけど、だれかおぼえてる~?」
マリ屋へ到着したメンバーは誰もが死屍累々であった!
アーリアは床に突っ伏しながら酒缶にストローを突き刺しながら命の補給をして。同時にタイムは全身の痛みがどうやって出来たものなのか記憶を巡――あ、やっぱやめとこ。うんうん!
「はあ、はぁ……やっと落ち着きましたね……しかし、一体どこの誰に頼んだらこんな惨状になるんですかヴァレーリヤさん? そのお酒は一体どこから手に入れたものですか?」
「ち、違うんですの。これは只、現場を見ていた時に業者から渡されたもので……」
「ヴァリューシャを騙すなんて絶対に許さない……悪徳業者は滅さないとね! メッ!」
すごくつめたいしせん を向けてくる正純にヴァレーリヤは酒瓶を守る様に隅で震えながらも、やっぱりマリアはマリアなのであった。ヴァリューシャはわるくない!
「ま――それはそれとして今日はありがとう! もう後はゆっくりしようね!!」
かんぱーい! プレオープンが成功したかもともあれ!
協力してくれた皆を労うべくマリアは音頭を取るものだ!
「ビールください~! おつまみも~!! やだやだもう後はたのしむ~!」
「正純、素材の予算もうちょい貰ってもいい? いい?
ブラックタイガー、ブラックタイガーを……! いいモノ卸すとこ知ってるのよ……!」
「あ、美味しい。へーお酒も色々あって良いじゃない。お姉さーんこっちにも串カツ! あとお酒甘いの!」
後は宴会だよ宴会! タイムはもう今日は接客する気なんてありませんもん、ぷんぷん! とばかりにお酒を飲み干す勢い。同時にコルネリアは注文の品たる天ぷらを揚げながら新メニューとして必要なモノを下ろすために正純に直談判――ッ!
そしてフォウリーはマリ屋特性のカツに舌鼓をうつものだ。
ふ、ふふん。私の舌を満足させられるものか? と思ったけれど……
「行けるじゃないの……串カツセット、見た目は何の変哲もないけれど、使っているモノが違うわね……! 舌の上で食材たちが踊るわ……!」
「ふふ! 私が腕によりをかけて揚げた串カツは絶品だよ! さぁさもっと頼んでよね!」
「フォウリーさん、ヨゾラさんもこれに懲りずにまた来てあげて下さいね? 本来は。本来のオープンはもっとマトモな筈ですから……」
「いやいや楽しかったよ!! ほらほらかんぱーい! 皆お疲れ様ー!」
フォウリーの言葉にマリアとすずなが反応すれば、ヨゾラの方にも視線を移すものだ――
二人はVDMランドにとって新規のお客様とも言える者達。
どうなる事かと思っていたが満足いただけた様で……日本酒洋酒鉄帝酒に各種串カツ。さぁどれでも好きなものをお楽しみくださいと。
「そこの相変わらずマーライオンに甘いCEOは、後できちんとした業者に修理を頼むように……っと、有難うな正純。ともあれお疲れ様、だ」
「ええ汰磨羈さんもお疲れさまでした」
そして一角では汰磨羈に正純が酌をして一時過ごす。
疲れ果てたが終わりよければ全て良し、だ。まったく。この傷を癒すには肉が必要――そうつまり!
「美味い串カツをたっぷりと馳走にならねばな! ああ白虎ととらぁ君もこっちに来たまえよ! むしろモフらせてくれたまえ。逃がさんぞ。今日はモフり地獄だ!」
「ふふ! 我の動きを捕らえられたらいいよ、がおー!」
串カツを食らいながら白虎たちと戯れるのである!
和気藹々のマリ屋。なんだかんだと皆の笑顔が溢れれば。
「アーリアも汰磨羈もおつかれさん、今日の思い出は皆と飲んだ事ね! いやぁVDMランドもたのしか……あ、フラッシュバック……」
「さぁ、コルネリアもぱーっと待て思い出すなヤメロ! 悪夢は終わったんだ!!」
「うぷ……しまった、いつも通り飲みすぎましたわ……お、お……!」
「ヴァレーリヤ? 待て! ここで虹るのはよせ! ヴァレー」
あああああ――! 轟く悲鳴が、一体何が起こったかを暗に示していて。
まぁ何はともあれ。
VDMランドプレオープンにご来店頂き、まことにありがとうございました!(by CEO)
外の壊滅した様子は一度忘れて。
今はただ。この楽しいばかりの一時を――皆と共に過ごすことにしよう。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
これはグランドオープンにも期待できそうですね!!!!(壊滅した様子からは目を逸らして)
楽しかったです、ありがとうございました!!!!!!!
GMコメント
リクエストありがとうございます!!
わーVDMランドだー! 以下詳細です!!
●依頼達成条件
VDMランドを満喫しよう!
●フィールド『VDMランド』
マリア・レイシスさんの領地にもある『VDMランド』です。
一部ではアルハランドとも呼ばれているとか……ともかく、ここでは様々なお酒を買えるほか、お酒を作る工程を見学したり、ジェットコースター、マスコットのトラコフスカヤちゃん、ブラックタイガー君、とらぁ君と多種多様なアトラクションを楽しめます……本来なら。
しかしヴァレーリヤさんがうっかり格安工事業者に依頼をしてしまった為、各地がとんでもない事になっております。ジェットコースターは明らかに怪しい金属音の響きが。メリーゴーランドは超高速回転し、観覧車とワンカップも同様に。あ、上下運動もするみたいですすごいなぁ。
とらぁ君ボートになんて乗ったら沈みます。あー!
無事なのはマリ屋ぐらいなものです。なんてこった……
ともあれ今日の所はVDMランドを満喫しましょう。
ええ、満喫出来るは不明ですが!
●マスコットたち
・トラコフスカヤちゃん
VDMランドのマスコット兼、領土防衛の切り札なのですわ!
本来はエネルギー生命体であり固定の姿はもっていなかった……のだが、紆余曲折の末にトラコフスカヤボディと名前を与えられ、その恩義からマリア達のVDMランドに。お客様のご案内などをするのですわー!
・ブラックタイガー君
『さいこうび』の札を持っているブラックタイガー君。
どこからどう見てもエビだが、本人は『虎』のつもりである。トラコフスカヤちゃんのトラチェックにも通ってるから間違いない、ヨシッ!
・とらぁ君
とらぁ……という鳴き声が特徴的ないつも『( ╹⋏╹)』顔のとらぁ君。
二度漬けは許さない。
・とらなちゃん
VDMランドの雇われマスコット『とらなちゃん』
最近せっせと園内を走り回る姿が目撃された医療班(見習い)。
酔っ払いたちにお水を運ぶ心優しい子。転ばないようにいつも気を付けているが……?
・特別参戦『白虎』(p3n000193)
豊穣郷で祭られている四神の一柱です。
あれやそれやの理由(設定委託:『武神:白虎』)によって豊穣の外にも限定的に出れるそうで、今回VDMランドに遊びにきました。皆さんと一緒に楽しむつもりの様です。がおー!
●情報精度
このシナリオの情報精度はK(串カツにゃんにゃん)です。
無いよりはマシな串情報です。グッドカッツ!
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