PandoraPartyProject

シナリオ詳細

不定期クエストと美味しい薬草

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 R.O.O――Rapid Origin Online(ラピッド・オリジン・オンライン)は、練達の研究者によって作り出された電脳空間だ。混沌の『法則』を研究し、果てには強制召喚を打ち破って自力の帰還を叶えるための一歩として作り出されたものである。
 しかしこの空間は突如発生したバグにより、ログイン中のプレイヤーを閉じ込める事態を引き起こした。彼らを救出せんと白羽の矢が立ったローレットのイレギュラーズたちは、プレイヤーの救出、及びバグの原因調査のためR.O.O内に生まれた第二の混沌『ネクスト』へ降り立ったのである。

 そこは混沌のようでいて、混沌ではない場所。ローレットや練達に当たる部分は見当たらず、主要人物も似たようで異なっている。死したはずの人間が生きていたり、中には魔種になっていたはずの人物も『普通のNPC』として日々を営んでいたり……現実を知る者たちからすればどこか奇妙な光景だ。
 それでも、グラフィックや五感で感じるものは現実かと錯覚させるクオリティである。魚の焼ける香ばしい匂いや、水の冷たさ。テレビゲームでは感じられないそれに感動しつつも、サクラメント(ログイン・ポイント)に降り立ったイレギュラーズたちはゲームクリア――ひいてはプレイヤー救助に向けて、クエストを探しに各方面へ散って行った。



 さて、今回フォーカスを当てるのは混沌における幻想国――ネクスト『伝承(レジェンダリア)』である。大体街の光景は幻想とそう変わらない。ローレットが見当たらないくらいだろう。それでも拠点となる場所はいくつか存在している。そのうちのひとつのサクラメント(ログイン・ポイント)からログインしたあなたは、とある情報を胸に街の外へと繰り出したのだった。

 クエストといっても色々な種類が混在する。エネミーを倒す戦闘クエストや、果実を集める採取クエスト。恒常で存在するものもあれば、突然やってくる不定期クエストも存在しているのだ。
 あなたが向かっているのはその『不定期クエスト』である。特別な報酬があるわけではないようだが、見られるなら見てみたいという野次馬根性だ。
 ちなみに時間がわかっているわけではないが、クエスト受注の場所は知っている。そこで張り込んでしばらくすれば、クエストが始まるに違いない。
 情報のポイントについたあなたは立ち止まってクエスト受注の開始を待つ。

 少し経ち――

 暫く経ち――

 ――大分経ち。
 ゲーム内だと言うのに足の痺れを感じてきた頃、ようやく遠くからやってくる人影が見えた。薬師らしき男があなたの近くにやってきて、キョロキョロとあたりを見回す。
「間違いない、この辺りだ……!」
 そこへタイミングを見計らったようにポップするモンスターたち。雑草に足が生えたような姿である。とても強そうには見えないが、男は驚いて足を引いた。
「モンスター!? これじゃあ採取ができないぞ……」
 狼狽える男の頭上にクエストマークが現れる。これだ、とあなたは彼へ話しかけた。どうしたのかと問い掛ければ、彼は状況――クエスト内容を説明してくれる。
「この辺りには『美味しい薬草』があるんだが、見ての通りモンスターがいて採取が出来ないんだ。彼らも倒せば美味しい薬草を落とすことがあるんだけれど……」
 見た感じ、非戦闘民なのだろう。助力を申し出れば「本当かい!?」と男の表情が明るくなる。そこへ同じクエストを求めてか、他の冒険者(プレイヤー)もやってきた。これだけいれば、そこそこの量は見つけられそうだ。
 モンスターたちはかなり強いと言うわけではないようだが、無茶をすれば死の危険もあるだろう。ゲームの中だから本当に死ぬことはないが、それでも回避したい者はしたいはずだ。
 こうして不定期クエストは開始を告げる。一同は多くの薬草を入手するため、作戦会議と円になった。

GMコメント

●すること
 薬草をなるべくたくさん集める

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。不明点があります……が、ゆるい戦闘なのでそこまで突き詰めなくて大丈夫です。

●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

●当クエストについて
 不定期かつ時間制限のあるクエストです。一定時間が経つと、どれだけの量が集まっていてもクエストは終了します。
 なお、クエストの残り時間については視界の隅にリアルタイムで表示されているものとします。OPではクエスト開始後に作戦会議をしていますが、相談がどれだけ活発に伸びようと皆様がリプレイ上で活動できる時間が短くなったりはしません。安心して相談してください。
 クエスト内容としては『見つけた『美味しい薬草』を男へ納品すること』ですので、ひとつでも納品すれば成功です。アイテムを所持した状態で男に話しかけると、納品するかどうかのウィンドウが表示されます。
 もしひとつも納品しない状態でクエスト終了を迎えた場合、皆さんがドロップさせた美味しい薬草は自動的に男へ全て納品されます。

●グラッシャー
 今回のクエストエネミー。そこまで強くありませんが、数の利で押し込まれると厄介です。
 姿は足が生えた雑草です。棒人間の足みたいなものが根っこの代わりについています。生えている草でビンタしてきたり、鋭くなった葉の側面で切りかかってきたりします。
 倒すとまれに『美味しい薬草』をドロップします。また、全部倒しても一定時間でリポップします。

●フィールド
 伝承のどこかにある草むらです。他のモンスターはいません。
 草むらを念入りに探すと、まれに『美味しい薬草』をドロップします。

●美味しい薬草
 良薬口に苦しと言うけれどこの薬草は美味しい。人によって甘かったり酸っぱかったりするけれど、一説では『その人の好みの味になる』らしい。
 煎じてもいいし生で食べても良い。

●男
 クエスト発生NPC。薬師です。クエストが終わると「ありがとう、子供たちが待っているんだ!」と言って去っていきます。
 モンスター発生地点よりちょっと離れたところにいるので安全です。

●ご挨拶
 愁と申します。伝承で不定期クエストです。
 美味しい薬草はクエスト成功ラインを超えると、納品しないこともできます。クエスト完了後に味見してみるのも良いでしょう。
 アイテムドロップはしません。ご了承ください。
 それでは、いってらっしゃい!

※重要な備考
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

  • 不定期クエストと美味しい薬草完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年06月01日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

すあま(p3x000271)
きうりキラー
ナハトスター・ウィッシュ・ねこ(p3x000916)
叫ぶ流星
天魔殿ノロウ(p3x002087)
無法
Teth=Steiner(p3x002831)
Lightning-Magus
アリシア(p3x004649)
デッドリーヘブン
■■■■■(p3x007903)
リデル
カノン(p3x008357)
仮想世界の冒険者
ルージュ(p3x009532)
絶対妹黙示録

リプレイ


「美味しい薬草だって!」
 『CATLUTONNY』すあま(p3x000271)はぱっと目を輝かせる。美味しい草。しかも薬効あり。一粒で二度美味しいアイテムだ。
「猫草より美味しいかなあ……!」
「ねこーーーーっ!!」
 すあまの言葉へ反射的に『星の魔法少年☆ナハトスター』ナハトスター・ウィッシュ・ねこ(p3x000916)が叫ぶ。それからはっと正気に返り、小さく咳払いをした。その後の表情はさも何もなかったと言いたげだが、ログにはちゃんと残っている。残っているとも。
 しかしすあまはナハトスターの叫びをそっちのけで、美味しい薬草に想いを馳せていた。猫草より美味しかったらどうしよう。ここから離れられないかもしれない。しかもしかも、皆の好みに合わせて味が変わるというじゃないか。
「薬も食べ物も、もうこれひとつでいいのでは?」
 ふとそう思った。これさえあれば健康かつ幸せに生きられるのでは。
「はいどうも! 【P-Tuber】のアリスです!」
 真剣に考え始めたすあまから少し離れたところで『リデル』■■■■■(p3x007903)は元気いっぱいな挨拶を。まだまだR.O.Oの練習中だが、今のうちにしっかりロールプレイを定着させなければ。
 薬草採取のクエストといえば如何にもゲームらしいとはしゃぐ『絶対妹黙示録』ルージュ(p3x009532)に、しかし『無法』天魔殿ノロウ(p3x002087)は首をひねる。
(聞いたハナシと若干違うよーな。草かりってこーだっけか?)
 定番のクエストであるところは否定しない。しかしなんだ、何かがこう、違う気が。
 だが『仮想世界の冒険者』カノン(p3x008357)などは『採集クエストは冒険者のお家芸』とまで言っているし、こういうものなのだろう。というかそういうことにしておこう。気にしたって仕方がない。
「美味しい薬草、食べてみたいし頑張ってクリアするぜ!」
「おー!」
 拳を突き上げるルージュとすあま。彼女たちにカノンはふふっと小さく笑ってみせた。
(こういう所でこういう事が出来るのは、少しテンションが上がりますね……冒険者として!)
 さあ、早速始めようじゃないか。

「燃えてもブツはドロップするんですよね?」
 開幕早々物騒な事を呟いた『デッドリーヘブン』アリシア(p3x004649)はわらわらと現れたグラッシャーたちへ薬物と火薬を詰め込んだ提灯を放り込む。これは燃え盛る彼女の熱いハートで愛なのだ。受け取って燃え上がれ!
 突如放り込まれた炎にわさわさと逃げ惑ったグラッシャーたちはアリシアへ反撃するべく向かっていく。その炎から運よく逃れたグラッシャーへ、ノロウはガンを飛ばした。
「自分だけのうのうとしてられるなんざ思わねェこったな!」
 引き付けられたならアリシアの方へ。まとめればまとめる程、仲間も殲滅しやすくなる。『Lightning-Magus』Teth=Steiner(p3x002831)は集まったグラッシャーたちめがけ、一時的に召喚した魔導機構砲を構えた。即座にプラズマ生成と発電を開始したそれは超高速で射出され、射線上にいた者を悉く吹き飛ばしていく。
「いったか?」
「もーちょい! いっくぞー!」
 ルージュが気合を入れれば、手にした剣から淡く光が発生し始める。これが何なのか、実態は知らないけれどもルージュは『愛の力』だと言っている。何故なら最強の力は愛だから。
「ルージュ――アターック!!」
 眩い光が2度、3度。仲間を巻き込まないようにという妹力(気遣いと読む)によって、多少敵を取りこぼしながらも味方への誤射はない。
「残りは任せて!」
 必要以上に魅せる動きで■■■■■は銃を構え、グラッシャーへ発砲する。最後にリロードするところまで美しく――見惚れるように。
 まずはこの群れを倒して最低クリアラインを越えなければと、ナハトスターも流れ星と猫を召喚する。愛らしい猫たちと星は気ままにグラッシャーへじゃれて、降って、ダンスして。グラッシャーがクタクタになってしまうまで遊び倒すのだ。
「美味しい薬草ちょーうだい☆ ……いや、もしかして『くーださい☆』の方が良かっ……いや何でもないよー☆」
 言い方はともあれ――着実にグラッシャーの体力は削れている。美味しい薬草をドロップしてくれるのも時間の問題だ。
「まずは駆逐あるのみです! いきますよ!」
 カノンは後方から無数の魔弾による弾幕を発生させる。今のところ、彼らに遠方を攻撃する技は見受けられない。ならば後方から攻めればそれなりに戦いやすい筈だ。
「わたしもいっぱい集めるよー!」
 その魔弾を追いかけるようにすあまが駆ける。アリシアが集めたグラッシャーはそれなりにいたが、度重なる範囲攻撃でそこそこ倒れたか。残るうちの1体へ、すあまはじゃれつくように飛び掛かった。
 アリシアはと言えば、多数の攻撃を喰らいながらもワイヤーを操ってグラッシャーを打つ。その口元はにんまりと弧を描いていた。
「あら、ここがイイんですかぁ?」
 叩かれても叩かれても向かってくるグラッシャー。向かってくるからワイヤーを振るうアリシア。そこへ再びTethが魔導機構砲でエネルギーを射出する。幾度にも重ねられた範囲攻撃と、漏れを許さぬ各個撃破によって、グラッシャーの第一波をまずは乗り越えたのだった。
「今のうちに採取もしたいですね」
「うん! カノンねー頑張ろう!」
 カノンとルージュは草むらでまれに見つかる事のある美味しい薬草を探す。手足が汚れるのは気にしない。だってそういうクエストなのだから。
(というか、見て『美味しい薬草』だってわかるのか?)
 純粋な疑問がルージュの中に芽生えるが、それこそ見て見なければわからない。そもそもまれに見つかる事がある、ということは中々見つからないということでもあるだろうから。
「ありました!」
 冒険者の技能で目ざとく見つけたカノンはアイテムウィンドウを開き、それが収まったことを確認する。先ほど倒したグラッシャーのドロップ品は自動的にここへ入ったようだ。
「すごい! 見て分かるもんなんだ!」
「ええ、見つけること自体は難しそうですが……しっかり探せば見て分かるみたいです」
「じゃあ先に納品しよっか。これでクエストクリア自体は確定かな?」
 すあまはNPCへ声をかけ、納品するかどうかのポップアップを見る。ここで納品してしまえば――ボーナスステージの始まりだ。
「ところでさ、」
 不意に呟いたのはノロウである。何だろうかと視線を向けられる中、ノロウは依頼人から美味しい薬草を盗めたりしないのかと問うた。
「でも、特に持ってなさそうだよ?」
「私たちのように、アイテムとしてしまってしまうみたいですねぇ」
 ■■■■■とアリシアがNPCをまじまじと見るものの、相手は視線を寄越しこそすれどれだけ近づいても反応を示さない。そういうNPCなのだろう。そしてその手元にも、先ほど納品したはずの薬草は、ない。
(ま、できたらラッキーくらいの気持ちだったしな)
「来るぞ!」
 仕方ないかとNPCを一瞥したノロウの耳に、Tethの言葉が飛び込んだ。視線を巡らせれば、離れたところから再びわらわらとグラッシャーたちがやってきていた。
(リポップが早いな)
 迎撃しながらTethは目を細める。クエスト詳細には一定時間でリポップすると書かれていたが、それが長いのか短いのかは記載されていなかった。できることなら次、敵が途切れたタイミングで状況共有をしたいものだが――手短に済ませねばならないようだ。
 再び敵を撃破した一同は、草むらを探したり納品したりしながら各自の状態を確かめる。制限時間に対しての撃破ペースや、効率的な力の使い方など。
「アリシア、まだいけるか?」
「任せてくださいよぉ、沢山燃やしますからぁ」
 その手に包丁を握ったアリシアがにっこり笑う。しかしここまでもそれなりのペースで体力は削れている筈だ――と言いかけた瞬間、再びグラッシャーがポップした。
「もう次か……皆、気張っていこうぜ!」
 三度のグラッシャーに立ち向かう一同。安全第一ではあるが、■■■■■としては今後に生かせそうな撮れ高が欲しい。故に出来る限り――ちょっと冒険してしまうかもしれないが――頑張りたい。
「ほらほら、見惚れてると隙だらけだよ!」
 狙い始めからリロードまで。目を引き付けてやまない動きを意識しながら戦う■■■■■。ナハトスターも可愛い猫と流れ星を召喚しながら出来る限り多くのグラッシャーを倒せるよう、ひいては沢山美味しいい薬草をドロップしてもらえるよう撃破していく。
「ねこー! 可愛いよねこ、ねこーー!!」
 敵にじゃれつく猫にメロメロなのは、彼だから仕方がない。
 アリシアはワザモノの包丁を構え、360度に薙ぎ払う。このまま死ぬわけにはいかないが、しかして主だった敵を総じて引き付ける彼女への圧は強い。このままだと危ないか、と下がろうとしたが――その瞬間、大量のグラッシャーがアリシアへと飛び掛かった。
 ノロウは彼女に代わって敵を引き付けにかかる。最悪自分は攻撃さえしていれば回復するのである。他のメンバーは体力次第で下がるらしいが、自分としてはまあ最悪、死んでもいい。何せここはゲームの中なのだから。
「攻撃は最大の防御、ってなァ!」
 グラッシャーの1体をぶちのめすノロウ。数度薬草見たから特徴はバッチリなのだが、如何せん敵が途切れない。途切れても大した時間がないとなれば、より攻勢となってその時間を作り出すしかないだろう。
(時間は……もう少しか)
 残り時間を確認したノロウは敵へ視線を戻す。薬草を抱えたままタイムオーバーになるのはあまりにも勿体ない。死にかけた時にも気を付けなければとTethも残り時間と体力の残量を見る。
 全員生存を目標としていたが、実際Teth自身は制限時間いっぱいまで粘るつもりであった。万が一死ぬのならば、そこで成果を下げてはならない。
「沢山薬草ゲットだー!」
 ルージュアタックが炸裂し、グラッシャーが大量に転がる。その姿は暫しして掻き消え、ぽこんとドロップ品がアイテム一覧に入ったことを知らせるSEが鳴った。
(今のうちに……!)
 カノンは敵の波が途切れたと見るや否や、素早く採取の体勢になる。可能な限り多くの納品と、味見の為に!
(これは……ただの雑草ですね)
 カノンは見つけた美味しい薬草と、辺りに生える雑草も一緒に回収しておく。だって回収できるし。食べられるし。美味しいんだぞ!
「カノンねー、それは……」
「え? ああ、食べ比べ用ですよ」
 ルージュがしきりに目を瞬かせているが、カノンは本気である。本気だとも。
 その近くで■■■■■も草むらを捜索する。探して実にならない可能性はあるが、マメな働きは大事だ。そして根気強さもまた重要である。
「皆、まだ大丈夫?」
「あと1回くらいかなー?」
 すあまの言葉にナハトスターが首を傾げながら答える。皆の様子を見るにあとそれくらいだろう。制限時間もそれなりにいい感じだ。自身が回復もできるが、この人数を1人で持たせ続けるのは無理がある。
 皆であと1度掃討したら終えようと決め、ほどなくしてまたグラッシャーがやってくる。そろそろ体力を考慮すべきかと思ったすあまは――目の前のグラッシャーを、おもむろに齧った。
「!!!」
 それは美味しい薬草をドロップするグラッシャー自体は美味しいのだろうか、という好奇心。目を丸くしたすあまは目に涙を浮かべて、それからちょっと離れた所へ駆けこんで地面にぺっぺってして埋めた。
「うええ……ま、まずい……」
 しかもまずいだけじゃなくて口の中でびちびちしていた。やばかった。早急に口直しがほしい。
「回復するよー☆ 猫ー☆ あー猫行っちゃう猫……」
 ナハトスターの魔法で猫や子猫が現れ、ころんと可愛い動きをする。そして仲間が回復すると早々に消えて行ってしまった。エフェクトだから仕方ない、でも猫行っちゃうのはかなしい。
「命も薬草もくーださーいなっ!!」
 ノロウの連撃がグラッシャーの命を屠る。その後方からは何よりも撮れ高が欲しい■■■■■がセオリー通りにとグラッシャーを撃ち抜いた。徹頭徹尾格好良くいるのは最終的に魅せられる分だけ――その為の準備は、UPされない裏の部分なのだ。

 こうして一同は殲滅を終え、ほどなくしてタイムアップとなる。NPCは薬草に喜びながら足早にどこかへと駆けていった。
「さて」
 そう前置いてTethが取り出したのは、納品せず残しておいた美味しい薬草である。皆も各々残しておいた薬草を取り出した。
「美味しい薬草味見ターイム! どんな味なのかなーわくわく☆」
 ナハトスターは真っ先にむしゃり。続いてTethも思い切って齧る。他の面々もそれに続いた。
「かっっっらい!!」
「甘ーい☆」
「甘い草って言っても、サトウキビとは違うんだな?」
「ほぁ! 食感は草なのにお肉の味がする!」
 皆口々に言い合いながら草を咀嚼する。こんな草むらの近くで集まって草を食べている集団なんて、傍から見れば奇異かもしれないが――きっと彼らの話を聞けば半信半疑でも興味を引かれてしまうだろう。
 同じ種類を食べている筈なのにこれだけ味の違う草なんて、恐らくここにだけだろうから。

 しかし、まあ。『味』は好みでも『食感』はやはりどれも草なのである。
(お肉の味……でもお肉の食感じゃない……)
 すあまは肉汁とか、熱々柔らかなあの感触に想いを馳せる。やっぱり薬も食べ物のこれひとつだけ、とはいかなさそうだ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

アリシア(p3x004649)[死亡]
デッドリーヘブン

あとがき

 お疲れ様でした、冒険者たち。
 食べた味は何に似ていましたか?

 それでは、またのご縁をお待ちしております。

PAGETOPPAGEBOTTOM