PandoraPartyProject

シナリオ詳細

全きIFのクワイエットヘヴン

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●非召喚のIF
 夢見る泉がありました。
 満月の晩に泉のほとり、水面を覗いてみたならば。
 きっとあなたは思い知る。
 ――全きIFのクワイエットヘヴン。

 あなたは召喚をうけ、イレギュラーズとなりました。
 空中庭園に呼び出されたその日、あなたは一体何をしていたのでしょうか。
 いったいどこに居て、どんな人物だったのでしょうか。
 そして召喚という、どこか一方的で、どこか強烈で、そして代えがたい事実は、あなたをどう変化させてしまったのでしょうか。
 いまいちど、振り返ってみませんか。
 あなたが――もし(IF)、召喚されていなかったら。どうなっていたのかを。

●ある少女のクワイエットヘヴン
 燃えさかる家を見ていたのです。
 パパがいた家が、ママがいた家が、メイドのエイジエが、料理人のフェルノルドが、犬のプルルが、金魚のマッケンジーが、みんないた家が、燃えていたのです。
 どこから?
 外から?
 私だけが無事でだった?
 いいえ、違うのです。

「う、ううう……」
 脇腹に刺さったナイフを、ゆっくりと慎重に、そして荒く重い息を整えながら抜く。
 冷たい金属の感触が身体の芯に残るようで、それでいて感じたはずの痛みはなく、どころか視界が黄色と青にチカチカと点滅していた。
 手が震え、ナイフを手放すのが難しい。けいれんする中指を、かたくなな人差し指を、浮き足だった薬指を順に引き剥がしていけば、やがてナイフは足下へ転げ落ち、やわらかい絨毯に音も無く受け止められた。
 息を、ゆっくりと吐く。
 燃えているカーテンの炎が、やがて近くの壁や天井へ燃え広がっていくさまが見える。
 この火を消すのにどれだけ水をかけたらいいのだろうか。綺麗に整ったテーブルクロスの上に倒れたコップの水が、クロスにしみてひろがっている。それを更に覆うようにして、赤い色がクロスをそめて広がっていった。
 コップの向こうに、両目を見にくく見開いたママの顔があった。
 視界の揺れと、呼吸の乱れ。やがて浅くなる呼吸の中で視界をゆっくりと動かすと、剣を握ったままうつ伏せに倒れたパパの背中があった。
 その先には倒れた燭台。
 叫ぼうとして、喉に流し込まれた煙と熱で咳き込んだ。
 パパ。ママ。
 どっちの名前を呼ぶはずだったのか。
 それとも犬や金魚や使用人の名前を呼ぶつもりだったのか。
 咳き込んだまま吐いた血が、絨毯へとこぼれ落ちていく。
 最後に視界に映ったのは、赤い色の仮面。

 救済のような、あるいは偶然のような召喚は――訪れなかった。
 きっと、燃えてしぬだろう。それが誰であったのかも、わからないくらいに。家族のそれと、同じように。

GMコメント

 このシナリオでは、あなたが不思議な泉で追体験することになる白昼夢を描きます。
 泉は『全きIFのクワイエットヘヴン』と呼ばれ、人々に不思議な夢を見せるといいます。
 そんななかで、なぜでしょう、イレギュラーズにおいてだけは、『召喚がおこらなかったIF』の夢を見せてくれるようです。

■プレイングでの指定
 リプレイで描かれるのは『召喚されなかった場合の物語』です。
 パターンとしては二つあります。
 ひとつは、あなたが召喚される直前にやっていたことをプレイングに書き、召喚が起こらずその日常が続いていくもの。
 もう一つは、召喚されずに日常が続いた場合、今頃どうなっているのだろう……という仮定のもの。
 どちらを選んでもよいですが、必ずどちらかを選ぶようにしましょう。


 これは仮定を考えるシナリオです。
 ありえなかった『もしも』を描くことで、もしかしたら、これまで見ることの出来なかった側面を見ることが出来るかも知れません。
 より深く、より色濃く、知ることができるやも。

●ラリー
このシナリオはラリーシナリオです。仕様についてはマニュアルをご覧ください。
https://rev1.reversion.jp/page/scenariorule#menu13
全1章構成。採用人数は未定です。

■グループタグ
 誰かと一緒に参加したい場合はプレイングの一行目に【】で囲んだグループ名と人数を記載してください。所属タグと同列でOKです。(人数を記載するのは、人数が揃わないうちに描写が完了してしまうのを防ぐためです)
 このタグによってサーチするので、逆にキャラIDや名前を書いてもはぐれてしまうおそれがあります。ご注意ください。
例:【もふもふチーム】3名

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 全きIFのクワイエットヘヴン完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別ラリー
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2021年03月30日 14時10分
  • 章数1章
  • 総採用数19人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

観音打 至東(p3p008495)
一菱流段位

 16歳の誕生日。過去を消し去るような、嵐のような、その召喚は――訪れなかった。

「そろそろ、姿を見せてはどうでござるかな?」
 ブラジル幕府の目も届かぬブラックエリア。現地には似つかわしくない正装の男が、刀を抜いて木の裏より現れた。
「流石は暮六晩鐘の暗剣娼。……いや、『元』をつけるべきでしたかな」
「その口ぶり。誕生日を祝いに来たわけではなさそうでござるなあ」
 背を向けたまま、刀の柄頭に手をかける。
 常人であれば即座に首をはねられるであろう剣技はしかし、いつのまにか反転しいつの間にか抜刀し、そして気付いたときには斬り終え、鞘に収めた『破竜一番槍』観音打 至東(p3p008495)によって、男は真っ二つに切り裂かれていた。

「チッ、生け捕りは無理か。この際口さえきければかまわん、この距離からなら――」
 闇討ち失敗の様子を遠い場所からこっそりのぞいていた男は弓矢をかまえ、至東に狙いをつけ――たその時には既に彼の後ろに至東が立っていた。
「――!?」
 走り逃げ出すも、至東は全く同じ速度で併走しながら脚を切り落とし、倒れた男に切っ先を向ける。
「これで何人目でござろうか……あのひとの数字に並ぶまで、そう永くはかからなかろうて」

成否

成功


第1章 第2節

小金井・正純(p3p008000)
未来を願う

「――み、――さずみ――正純」
 呼びかける声に目を覚ませば、揺れる馬車のうえだった。
「もうじき門が開きます。ここより先は異教徒どものすまう土地。居眠りなどしている余裕はありませんよ……『流星の聖銃士』正純」
 目を擦り身体を起こす。アドラステイア下層域にただよう、あの独特なにおい。かわいた、かすれた、地に生えた枯れ草に縋るようなにおい。
 自分もさして豊かでもない畑を一生懸命手入れする子供たちの姿が遠目に見える。自分もああして、この場所にやってきたのだったか。
「また『偽物』のことを考えていたのですか。睡眠が不足しているように見えます」
「ん、はい……」
 弓をとり、目を擦り、深く呼吸を整える。
 いもしない神に祈ることを強制され、遠い遠い星に憧れたまま、ありもしない救いを説く片棒を担がされていた日々。あのアストリアが魔種だとしった日の怒りと憎しみと、そして『どうせ』という諦観が、記憶という形で脚の裏から肩まではいあがってくるようだった。
 それを振り切って、ピルケースを開く。赤い錠剤を口に含み。水も無く飲み込む。
「もう大丈夫です。ファルマコン様の救いを、広めましょう」
「その意気です。正純!」
 笑顔で頷く仲間の聖銃士。
 正純もまた、笑顔で。
「みんな、もう心にもない祈りを捧げることなんでないんです。私達がそれを教えてあげるんです……セルゲイ」
 世界はこんなにも、美しいのだと。

成否

成功


第1章 第3節

リック・ウィッド(p3p007033)
ウォーシャーク

 窓の外はいつだってまぶしい。
 『ウォーシャーク』リック・ウィッド(p3p007033)にとって、外の世界はぴかぴかしたものでいっぱいだった。
 エリス様を魔種の手から解放した特異運命座標(イレギュラーズ)という、現代に生きる本物の英雄憚。世界の崩壊を回避する使命をもった人々がいるとだけは聞いていたが、その目で見たときはひどく驚き、そしてワクワクしたものだ。
 だからこそ、森の精霊たちが顕現し、その多くがイレギュラーズとして空中庭園に召喚された時は自分の番はいつくるのかと心を躍らせていた。

 心はいまも躍っている。
 時折帰ってくる里の精霊種からローレットやイレギュラーズの話を聞きながら、自分が召喚される日を夢見るのだ。
 いつ召喚されてもいいように身ぎれいにしたし、召喚されたと分かったときの振る舞いを何度も頭の中でイメージした。
 誰も居ない時にこっそり台詞やポーズを練習したこともあった。
 憧れは輝いて。
 夢はまぶしくて。
 まぶしくて。
 まぶしくて。
 いまでも。
 いつまでも。
 それが、この先決して訪れないとしても。

成否

成功


第1章 第4節

イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)
秋の約束

 勲章を胸につけられる。
 技師たちが並ぶホールで、偉そうな髭を蓄えた軍官が『秋の約束』イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)の肩を叩き、笑顔でで大衆へと手を振っている。
(俺は、優秀な兵器を作ったらしい……)
 鳴り響く軍靴が、可愛らしく作られたぬいぐるみが、栄光を称え大衆の軍歌と重なっていく。

 発行された新聞には、イートハーヴが作り出したぬいぐるみの軍隊が敵国の町を壊滅させ、補給路を断絶させたと報じられた。我が国の決定的勝利へ導いたとして、イートハーヴとその肩を叩き笑顔の軍官の写真が添えられた。
 うつむいて表情を冷たくしていたはずだったが、巧みな加工によってイートハーブは不気味なほど笑顔に書き換えられている。
(ちがう……俺は、友達が、同志が、兄弟が、家族が欲しかっただけだ。
 大切なあの子達に罪なき命を奪わせて得る称賛に、一体何の意味がある?)
 新聞を廊下のゴミ箱に投げ捨てて、自室へとこもる。
 灯りに照らされた部屋の片隅には、薬瓶。こみ上げる吐き気をなだめようと薬をさがすが、手に取ったのは別の瓶だった。鎮痛剤だったろうか。誰かが、薬瓶いっぱいに飲めば死んでしまうと言っていたきがした。
 瓶を乱暴に開き、上を向いて開いた口に流し込む。
 もうろうとする意識の中で、ナイフを手に取る。
 腹にさしこまれる冷たい感触。

(何だ、『敵』を殺すのよりも、随分と簡単じゃないか……)

 救いのような、津波のような、すべてを持ち去ってくれるはずの召喚は……おとずれない。

成否

成功


第1章 第5節

蓮杖 綾姫(p3p008658)
断ち斬りの

 世界に剣があった。
 剣を振る物体があった。
 人間を、もしくは人間の形をしていたものを見つけては斬り、斬ってはまた見つけ出し。息がある限り斬り続け、それが肉の塊と成り果てるまで切断と解体を続けた。
 極論すればその物体はジュースミキサーのようであり、木材加工機のようであり、草刈り機のようであった。自動的に動き、自動的に人間をものいわぬ肉と骨と血へと加工する機械である。

 ――私達とヒトが分かたれた日からどれほど経ったのだろうか
 ――私は……ドレだけのヒトを斬ったのだろうか

 ――あぁ……そうだ、私は「怒って/悲しんで」いた……はず
 ――分かり合えぬ「諦観/絶望」に嘆いていた……はず

 ――本当にそうだっただろうか
 ――もう、よく思い出せない

 剣は折れ、肉は削げ、骨は樹に至る
 憤怒と絶望の末、行きつく先は静寂と醜悪の安寧

 最後にして決定的な変化としての召喚は――訪れない。

成否

成功


第1章 第6節

黒影 鬼灯(p3p007949)
零れぬ希望

 血は炎に似ている。

 足下に転がった首と、面覆越しの自分の顔を見比べて、家来たちが悲鳴をあげて逃げ走って行く。
 負う必要はない。もはやこの城は墜ちたのだ。やがて万の兵が押し寄せ開城を要求しにくるだろう。
 そして城主の首が落ちた今、抵抗する者はない。
「悪く思うなよ」
 『零れぬ希望』黒影 鬼灯(p3p007949)は窓より外へ出ると、かぎ爪のついた縄をもって天守閣へと素早く登った。
 瓦を踏んで見下ろせば、特製の油壺による連鎖爆発が場内のあちこちに炎をあげ、城の者たちが悲鳴をあげて走り回っている。水を一心不乱にかけるものもいるが、それが火を余計に広げることにも気付かないらしい。
 ス……と右腕をあげる。
 先ほど切り落とした城主の血が、手から肘にかけてべっとりとついていた。
 この腕が誰かを抱くことなど、あるのだろうか。
 奪うばかりが特技の、この腕が。
「……詮無きこと、か」
 鬼灯はため息ひとつ。城の天守閣より跳んだ。

成否

成功


第1章 第7節

シャスラ(p3p003217)
電ノ悪神

 滅び行く世界の有様に、人類はついに膝を突いた。
「こんなにも脆いか……世界というものは……」
 人造の竜こと『電ノ悪神』シャスラ(p3p003217)。世界を導くだけの、護るだけの力を持ちながら、世界の崩壊に『間に合わなかった』竜。
 生まれるのが遅かったのか。それとも自分の決断が遅かったのか。それとも何もかもが手遅れだったのか。
「いや……」
 割れた仮面野下で、シャスラは目を閉じる。
「私の力が、及ばなかったまっで」

 BKクラス世界終焉シナリオ、通称『天ノ川の墜落』。
 空は砕け星は降り注ぎ、大地は割れ人々をその営みごと飲み込んでいく。
 栄華を極めた物質文明も、星そのものの崩壊を前にしてもはや無力であった。
 竜を作り出すほどの力を持ったにもかかわらず。
「最後の役目は、この崩壊を目に焼き付けることのみ……か」
 人間よりずっと頑丈な自分のこと。きっと最後に死ぬのもまた自分だろう。星が砕けていつまで生きていられるかなどわからないが、少なくとも……。
「見守ろう。そして記憶しよう。この星にあった者たちの、最後のひとりとして」

 ――希望の召喚は、訪れない。

成否

成功


第1章 第8節

清水 洸汰(p3p000845)
理想のにーちゃん

「清水淘汰を確保。これより連行する」
 部屋に踏み込んだ大人達が自分の父を気絶させ拘束し、担いで移動させるさまを、『理想のにーちゃん』清水 洸汰(p3p000845)はただ呆然と見つめていた。
「おにーさん達何言ってるの? とーちゃん眠ったままおきねーんだ。ユータもどっか行っちゃったし……」
 きょとんとして話しかける洸汰を、ヘルメットをした大人達は気持ちの悪いものを見るような目で見た。
「実験台の子供だ。こんな部屋に住まわせなんのつもりだ、マッドサイエンティストめ……」
「この様子じゃ再教育も無理だろう。弟の方はともかく……」
 『弟』というワードに反応して、洸汰は大人に掴みかかった。
「ユータはどこ? あいつ、オレが居なきゃすぐ泣いちゃうじゃん! かーちゃんもポチとタマと公子とチュン介もいないし!」
「…………」
 がしり、と腕を掴み引っ張られる。
「いってぇ! 暴力反対だぞ! 放せよー!」

 ある意味彼の救いとなるべき召喚は――しかし、訪れない。

 放り出されたのは、歪みきった荒野。
 すべてが嘘だと告げられ、奪われた、ひとりぼっちの少年がそこにはいた。

 それでも、生きて行かざるを得ない。

成否

成功


第1章 第9節

グドルフ・ボイデル(p3p000694)
山賊

 『山賊狩りのグドルフ』。
 それが彼に――『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)につけられた二つ名だった。
 居なくなった妹を探しに天義から出てきて随分とたつが、得られたのはその名前と僅かな金銭だけだった。
「悪人をしばいてカネをもらうのは、ずいぶんと気分のいいもんだ。
 山賊ばっかり狙うのは…………さあ、なんでだろうな。俺にも分からねえや」
 始まりは復讐だったのかもしれない。
 続けた理由は正義だったのかもしれない。
 もしくはそのどちらでもない、何かなのかも知れない。
 たとえば、惰性。
「名前もしらねえ奴を殺して、カネを貰う。そうい毎日さ」
 笑って懐から小銭を取り出し、カウンターへと置く。
 酒を飲み過ぎたせいか手が震え、席から辰を足下がぐらついた。
「おっと、いけねえ。ハハハ――」
 笑いながら酒場を出たその直後、見知らぬ子供がドッとグドルフの脇腹にぶつかった。
 冷たい。
 この感触は、なんだろう。

 気付けば路上に横たわり、かざした手は血に濡れていた。
「まあ……こんなもんか……」
 召喚は、おきなかった。
 それがさだめだとでも言うように。

成否

成功


第1章 第10節

茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)
音呂木の巫女見習い

「『人工戦神計画』ぅ?」
 暇を持て余しあらゆる遊びに飽きた頃、『奏でる記憶』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)に告げられたのは奇妙な単語だった。
「そ。『祟神』っていう正体不明機が暴れて国際問題になってるんだって」
 立体ウィンドウを指先で操作しながら、心斎橋 芹那がぼんやりと言った。
「国家なんてもう解体されたと思ってた。まだそんなこと考えるひといたんだ」
「秋奈ちゃん……さてはニュース見てないでしょ。もう何カ国も独立宣言してるんだよ」
「いいじゃんべつにー」
 三人はもう随分と長い間装着されることのなかった装備に手をかける。
 刀を抜くと、つい武者震いがした。

 戦い神が呼んでいる。
 全宇宙を敵にしても我が元にきたるべし。
 我は与えん無限なる力を。我は伝えん星歴の終焉を。

「やったぜ戦争! ちょーど暇してたんだ」

成否

成功


第1章 第11節

キドー(p3p000244)
最期に映した男

 ――召喚は起こらなかった。変化は無く、彼の世界は昨日と同じよううに回った。

「ヘヘヘ、旅行者ってのはいいカモだぜ全く」
 小さくて軽いコイン袋を手の中で弄び、裏路地へと入っていくゴブリンがいた。
 『最期に映した男』キドー(p3p000244)というコソ泥である。
 そんな彼の行く手を阻むように、三人組のゴブリンが道の真ん中へと立った。
 キドーよりずっと大柄なゴブリンと、彼ほどではないがキドーよりはやはり大柄な二匹のゴブリンである。
「まだスリなんかやってんのか、キドー」
「なんだよ、関係ねーだろ」
 難癖をつけて金を巻き上げられないようにと服の中に隠し、キドーは相手を睨んだ。
 とはいえ、やりあって勝てるかといえば難しい。
 キドーより優れた戦闘力をもつ者は山ほどおり、キドーより優れた泥棒も数え切れない。
 それでもいつか、回し続けた人生というガチャからSSRが出ないか試し続ける毎日である。それも、自分の手に負えるくらい手頃な幸運として。
「チッ……」
 大柄なゴブリンは舌打ちし、道をあけた。
「姐さんが呼んでるぜ」
「おう」
 姐さんの相手は疲れるんだよなあという感情が顔に出たようで、大柄ゴブリンたちも同じような顔をした。

 まあいい。今日もまた人生のガチャを回してみるさ。
 明日にはなにかラッキーなことがあるかもしれねえ。今日の有様だって、飢えて死ぬよかずーっとマシさ。

成否

成功


第1章 第12節

ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)
鳥籠の画家

 籠の中の鳥に、召喚は訪れなかった。

 異端審問官アネモネ・バードケージ。またの名を『束縛の聖女』。
 天義の盲目的信仰心によって守られた彼女の隠れた悪名を知るものは極めて少ない。
 いや、知るものがいたならば、みな彼女の『鳥籠』の中に入れられた。
 神への冒涜。魔種への供与。邪教の崇拝。様々な罪で囚われた者たちのなかに、『束縛は鋭く痛む』ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)の姿もあった。
 口封じとして収容された者も多いこの鳥籠の中で、彼は『コレクション』として収容された人間である。
 『プレイルームで遊ぼう』と言われるたび恐怖に身体が引きつり、他の囚人たちも飛び火を恐れて彼から距離を置いていた。

 そんな彼が望むことは、ただ一つ。
「出してくれとは、もう言わない。酒も煙草も、なにもいらない。
 ただ、ただ、頼む……」
 鉄格子を掴み、ながく伸びた前髪の間から目を開く。
「せめて俺に筆を……絵を描かせてくれ!
 描けない絵描きは、息をしていないも同然だ!!」

 願いは、地下室の石壁を反響するのみであった。

成否

成功


第1章 第13節

かんな(p3p007880)
ホワイトリリィ

 そこは『滅びた』世界だった。
 人類終焉シナリオの起きたその後の世界。対抗策として生み出された文字通りの最終兵器であるかんな(p3p007880)は……悲しいかな、生み出されるその瞬間から既に、遅きに失したのだ。

 生み出したものも。
 守るべきものも。
 命令するはずずのものも。
 すべてが滅びたその後で、神殺しの業をおった白き少女は戦い続けた。
 エンドロールのそのあとで、止まらぬオルゴール人形のように。

(文字通り、世界の滅びるその日まで――それとも、『わたし』の滅びるその日まで)

 悲しむべきか、喜ぶべきか、『世界よりも頑強に』作られてしまった少女は、世界のルールを相手に破壊を繰り返し、それにもはや意味などないことを理解しながらも、止まる選択をもたず。
 やがて彼女は、世界そのものとなるのだろう。
 滅びた後の、終わらぬエンドロールとして。

 ――ピリオドの召喚は、起こらない。

成否

成功


第1章 第14節

イルミナ・ガードルーン(p3p001475)
蒼騎雷電

 日常が壊された日、カットコールのように訪れた召喚は――かからなかった。

 統合群のロボットたちを掻い潜り、一路南へ飛ぶ『蒼騎雷電』イルミナ・ガードルーン(p3p001475)。
 向かうべき先は……なぜだろう、わかっていた。思考に流れるまでもなく、身体が自然とその座標へと向かって進んでいくかのように。
 もしくは、特定のトリガーによって発動する『コード』に直接座標が刻まれていたかのように。

 途中、幾度か統合軍による妨害があった。
 戦闘用ロボットの軍勢が、戦艦が、彼女を阻み攻撃を仕掛けてきたが、流星の如く突き進む彼女を止めることなどできなかった。
 そんな彼女が、たどり着いたのは……。

「そこまでだ、イルミナ――いや、『Deus.exe』」
 ワープポータルで先回りしたのだろうか。ドーム状の施設のその入り口に、銃を構えたリアムの姿があった。
「この先へ進むことは許されない。博士の計画は……『世界人類を作り直す』計画は、既に過去のものだ。今更そんなことをしてどうなる。過去の亡霊がある日のまま蘇り何も無かったかのようにリセットされたとして、今生きる私達が消し去られるのみだ」
「知りません。自分は……イルミナは」
 胸に手を当て、目を細める。
「『心』にしたがって、ここまで来たのです」
「理屈で譲れはしない、か。平行線だな」
 バチ、とリアムのボディにスパークが走る。
 世界を賭けた戦いが、始まろうとしていた。

成否

成功


第1章 第15節

バルガル・ミフィスト(p3p007978)
影に潜む切っ先

 技術特異点を越えた人類は既に、土地や人種によって統治される形態を越えていた。
 国家という枠組みは機能不全に陥り、資本による統治を行える大企業連合こそが世界を動かしている。
 だが、変化したのはそれだけだ。
 たった、それだけだ。

 『影』バルガル・ミフィスト(p3p007978)の枕元に立体モニターが開き、時刻を知らせる表示とアラーム音が響く。
 のそりと伸びた手がアラームを撫でるように停止させ、ナイトキャップをかぶったのっそりとした男が布団から起き上がる。
 低所得者向け代用コーヒーとチーズ味とは名ばかりの固形レーションを口に放り込みながら立体モニターに文字を打ち込み、流れてきた情報をピックアップしていく。
 その一つが拡大され、展開され、不正な方法で抽出された位置情報が割り出される。
 バルガルはマグカップを置き、スーツに袖を通し、いつも通りに玄関を出て行く。

 モニタの表示が切り替わり、対象人物の死亡通知が流れた。
 やがて扉は開き、バルガルが部屋へと戻ってくる。
 そしていつも通りに身体と道具のメンテナンスを行い、アルコールの入ったプラスチックボトルと睡眠薬の錠剤を手に取った。

 召喚は、訪れない。
 きっと明日もこの生活が続くだろう。
 社長共(クソ共)を皆殺しにする、その日まで。

成否

成功


第1章 第16節

カイト・シャルラハ(p3p000684)
偉大なる大翼

 ――召喚は訪れなかった。

 ウン十年ぶりだという『大遠征』が発令されてから数ヶ月。
 海洋王国は大きな低迷を見せていた。
 無理からぬことである。ファクルをはじめとする名だたる海洋軍人をはじめ多数の有力貴族がのきなみ『絶望の青』に飲まれ、そして一人たりとも帰ってこなかったためだ。

「お、こいつは大物だな」
 漁船に改造した船から釣り上げた魚をボックスに詰め込んで、『鳥種勇者』カイト・シャルラハ(p3p000684)は家へ帰るべく風を読み直す。
 他国からの領海侵犯も著しい昨今、カイトのようにこじんまりとした漁師には危険な海域くらいでしか漁ができなくなっていた。が、それだけに稼ぎも悪くない。
 ……そんな理屈をいいわけにして、カイトは日々危険な海域へと船を出し続けた。
 青へ、青へ、まるで呼ばれているかのように近づいていく。
 やがて海とひとつになる、その日まで。

成否

成功


第1章 第17節

江野 樹里(p3p000692)
ジュリエット
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
眞田(p3p008414)
Re'drum'er

●request fo you
「ふむ。今の光。何やら天啓を得られるような、そんな気がしたのですが……気のせい、ですか……」
 空を見上げた『ジュリエット』江野 樹里(p3p000692)には、しかし、召喚は訪れなかった。

 それから十数年の時が経ち、樹里はいつしか精霊のひとつに溶け込んでいた。
 生前の記憶の殆どを故郷に置いていき、『受理の光』を祈るただただ純粋な精霊へと。
「ふむ、次は…あぁ、またあの名もなき執政官ですか……。
 ではいきましょう」

 かつて美声の巫女がいたと知りどうにかその声を聞けないかと旅をし続ける雇われ執政官がいた。
 ラジカセのそばに座ってたまった仕事をかたづける彼女のそばに立ち、杖を握る。
「囁き 祈り 受理 念じませい――!」

 光はおこり。
 しかし、祈りは潰えた。
「ふむ。此度もまたリク文は灰になりましたか。
 しかし嘆くことはありません
 諦めぬ限り、受理の光はいつか降り注ぐのですから」
 現にほら、隣には受理の光が。

●さよならの価値
 不治の病におかされた『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)に、ついに天寿を全うする時が来た。
 永遠のような闘病生活は彼女の肉体を蝕み、投薬治療の代償として歩くことすらできなかった。
 この世界にはもう、彼女を治療する方法はない。
 細々と声をあげることしかできない彼女のそばには、両親の姿があった。
 ゼフィラの手を包むように握る二人。
 ゆっくりと眼球が動き、渇いた唇がが動く。
 両親は涙をながしながら、なにかをつぶやいたように見えた。
『どうか奇跡を』
 そう述べたのだろうか。
 けれど。
 
 ――幸か不幸か、召喚は訪れなかった。

 病室の扉が開き、男性と少女が駆け込んでくる。
 ゼフィラの夫と娘だ。
 残していってしまうのか。
 そう思いつつも、言うべきことは言うことにした。

「さよなら」
 そして
「愛している」

●MURDER
 『Adam』眞田(p3p008414)は愉快に生きることにした。
 ノイズキャンセリングヘッドホンを首から提げ、ゲームセンターでスティックを弄ぶ。
 この場所でしか出会わない刹那的な仲間と刹那的に遊んで、刹那的であるがゆえに互いの深い部分を軽率にさらけ出すこともあった。
「マダさんって学生でしょ? 今日は学校ないの? 大学、だよね?」
「あー、今日はサボり。気が乗らなかったんだよね」
 缶飲料を片手にベンチに座り、仲間がダンスゲームをプレイするさまを眺めている。横には二歳ほど年下……だと当人は主張している少女が炭酸飲料の空き缶を弄んでいた。
「ふーん……」
 年頃からして同じようなものなのだろう。少女は手首にまいたリストバンドを指でめくってみせた。
「ねえ、死にたくならない?」
 あまりにも普通に言われて、眞田はぴくりと眉を動かした。
 手首の様子を見て、息をつく。
「ンー、いや……殺したくは、なるかな」

 オトナたちのしいたルールの中に、自分たちは生きている。
 それを乱したらどうなるのか、考える暇すら与えずに。
 酷く乱して壊したら、この日常から逃げ出せるんだろうか。
 それとも、どこまでも追ってきてルールのなかに放り込まれるんだろうか。
「ねえ、名前……なんだっけ」
「んー。ソーダ」
 あからさまな偽名を名乗りながら、少女はゴミ箱に空き缶を放り投げた。

 ――召喚は訪れなかった。そして日常は、続く。

成否

成功


第1章 第18節

 かくして召喚は成された。
 あなたの日常へ、おかえりなさい。

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