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シナリオ詳細

<ヴァーリの裁決>狙われた山賊峠

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●『山賊狩り』のアイデア
「はっはっは、笑いが止まらんなぁ~。やっぱり、幻想に河岸を移して正解やったわ」
 如何にも成金趣味と言った風の、下品に金銀宝飾をあしらった服を着た男、奴隷商人が可笑しくて仕方ないと言った様子で笑う。
 実際、奴隷商人は可笑しくて仕方なかった。傭兵のブラックマーケットで奴隷売買が困難になったため、商売の場を幻想に変えたところ、手持ちの奴隷がことごとく飛ぶように売れたのだから。
「……しかし、困ったなあ。もう『商品』が残ってへん。『仕入れ』、どないしよか」
 ただ、その一方で問題も起きていた。手持ちの奴隷が飛ぶように売れたため、『商品』の『在庫』がスッカラカンになってしまったのだ。商売において余剰の『在庫』は抱えないに越したことはないが、『商品』がなければ商売にはならない。しかし、この奴隷商人には幻想で『商品』を『仕入れ』るアテがなかったのだ。
「それでしたら、私にいいアイデアがあります。山賊共を狩って、労働奴隷にするのです。
 丁度いいことに、『山賊峠』なる、山賊共が集う峠道があります」
 奴隷商人が困っているのを見かねた、側に控えている使用人が、ズイと主人の前に進み出て自身の抱える案を述べた。
「ほう……山賊共を、なぁ。せやけど、普段にも増して『仕入れ』が難儀になるんやなかろうか?」
「まぁ、『仕入れ』は大変かも知れません。しかし、クスリを効かして頑健な労働奴隷として売り出せば、元は十分に取れるでしょう」
 奴隷商人は使用人の案に興味を示しつつも、その困難さに躊躇する。だが、使用人は自信ありと言わんばかりに、ニヤリと笑って見せた。
 確かに、山賊達を『仕入れ』るのは大変であろう。だが、頑健さが折り紙付きであるのは間違いない。一度『仕入れ』て薬物で従順にすれば、高く売れる『商品』になるだろう。奴隷商人はそう計算すると、使用人の案に乗ることにした。
「ほな、任せたで。あんじょう、上手くやったってや」
「はっ、お任せ下さい」
 使用人は恭しく頭を下げると主人の前から退出し、ニヤリと笑みを浮かべつつ『山賊狩り』の算段を考えるのだった。

●使用人の失敗
 月明かりも星の瞬きも、暗雲が覆い隠している。『山賊狩り』には絶好の夜だ。黒い装束に身を固めた三十人ほどの盗賊達が、山賊峠の入口から中腹へと次々と侵入していかんとする。
 だが、その前に立ちはだかる影があった。山賊峠のリーダー的存在であるグドルフ・ボイデル(p3p000694)だ。
「おめえら、おれさまの根城に何の用だ……なんて、聞くまでもねェな?」
 無骨な斧を手に、グドルフは盗賊達に向けてギロリと睨みを利かせる。
「……ちぃ、まさか見つかるとは! それも、グドルフ・ボイデルだけでなく、他のイレギュラーズ達まで!?」
 信じられないとばかりに我が目を疑う、盗賊達と同じ黒装束を身に纏った使用人。山賊の抵抗は予想していても、グドルフやイレギュラーズが立ちはだかってくることまでは予想していなかったのだ。
 この事態を招いたのは、使用人の犯した失敗が原因だった。『山賊狩り』に手を染める盗賊達は、元々の奴隷商人の部下ではなく使用人が金でかき集めた者達である。しかし、裏仕事に手を染める人員を数十人も高い金で集めるなど、それ自体が目立つのだ。
 ましてや、このところ幻想のイレギュラーズ領が次々と襲撃される事件が続いており、自分や知己の領地が襲撃されないかピリピリしているイレギュラーズは少なくない。そんな中で先に述べたような目立つ行動を取れば、イレギュラーズなり情報屋に察知され、こうして先手を取られるのは当然である。
 しかし、自らの失敗に気が付いていない使用人は、この事態を無理矢理力で解決しようとする。
「ええい! 怯むな! 報酬は倍出す! こいつらを叩き伏せろ!」
 高い報酬が、倍になる。その言葉に盗賊達は目の色を変え、殺意をむき出しにした。

GMコメント

 こんにちは、緑城雄山です。今回も<ヴァーリの裁決>のうちの一本をお送りします。グドルフさんの領地『山賊峠』に『山賊狩り』に来た奴隷商人の使用人と盗賊達を撃退して下さい。

●成功条件
 『山賊狩り』(使用人、盗賊)の撃退(生死不問)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ロケーション
 グドルフさんの領地『山賊峠』です。時間は深夜、天候は晴れ。
 山道の入口であり、太くはない道の左右には森が広がっています。森からの攻撃、森にいる対象への攻撃については、命中にペナルティーが入ります。
 また、暗視、もしくはそれに類するスキルやアイテムが無い場合、命中と回避にペナルティーが入ります。

●初期配置
 使用人と盗賊達は、山道で一団になっています。人数が多いため、細長い隊形になっています。
 イレギュラーズはそこから山頂側に30メートル以上離れていれば、配置は自由です。

●奴隷商人の使用人 ✕1
 今回の『山賊狩り』の首謀者です。能力傾向は高命中高回避、高機動力高EXA。
 盗賊達の指揮官として働き、使用人がここにいる限り盗賊達の能力に多少のバフが入ります。
 また、盗賊達が逃亡するかの判定で、有利な(逃亡しない方に)修正が入ります。

・攻撃手段など
 スローイングダガー 物至(遠)単 【変幻】【多重影】【流血】【麻痺】【致死毒】
  投擲が可能な短剣です。投擲する場合は射程が括弧内になります。
 金で吊る 神自域 【治癒】【BS回復】【付与】
  金で戦意を煽って、BSが存在しないかのように盗賊達を動かします。
  また、盗賊達の士気が一時的に上昇します。この士気上昇分は、【ブレイク】で打ち消せます。
  自分には効果がなく、また盗賊達の士気が一定レベルを割れば効果を及ぼさなくなります。
 味方の影に隠れる
  未行動の味方に強制的に自分を庇わせます。パッシブで発動します。
  これを行う度に、盗賊達の士気がわずかに下がります。
 
●黒装束の盗賊 ✕約30
 使用人に雇われた盗賊達です。数は多いのですが、能力は高くはありません。
 金で雇われているため、戦闘不能になるまで戦おうとはせず、士気や戦況次第では逃亡を図ります。
 能力傾向としては、手数重視のスピード型です。

・攻撃手段など
 ダガー 物至単 【出血】【猛毒】
 麻痺薬注射 物至単 【無】【麻痺】【呪縛】
  山賊達に使う予定だった注射です。肌に刺さねばならないため、命中に大きなマイナスが入ります。
  また、各自2本しか持っていないため、2回までしか使えません(回避された場合は消費回数に含めません)。
 クロスボウ 物遠単 【猛毒】

●ブレイブメダリオン
 このシナリオ成功時参加者全員にブレイブメダリオンが配られます。
 ゴールド、ミスリル、アダマンタイトとメダルごとにランクがあり、
 それぞれゴールド=1p、ミスリル=2p、アダマンタイト=5pとして扱われブレイブメダリオンランキングにて総ポイント数が掲示されます。
 このメダルはPC間で譲渡可能です。

 それでは、皆さんのご参加をお待ちしております。

  • <ヴァーリの裁決>狙われた山賊峠完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年04月03日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
グドルフ・ボイデル(p3p000694)
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
武器商人(p3p001107)
闇之雲
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
ラムダ・アイリス(p3p008609)
血風旋華
グリーフ・ロス(p3p008615)
紅矢の守護者

リプレイ

●『山賊狩り』への反応、それぞれ
(へっへっへ、笑える。よりにもよって、ここを狙うかね)
 『最期に映した男』キドー(p3p000244)は、おかしくてたまらないと言わんばかりに暗い森の中で薄ら笑いを浮かべた。夜の闇はキドーの視界を遮ることなく、山道を駆けて山賊峠に押し入らんとする一団の姿は、まだ遠くではあるがキドーの瞳に映っていた。
 盟友たる『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)の縄張りである山賊峠で、奴隷商人の使用人が盗賊を雇って『山賊狩り』を行おうとしている。それを聞いたキドーは、『山賊狩り』を撃退せんとする盟友に手を貸しに来たのだ。
 それにしても、奴隷を『仕入れ』るのに『山賊』の縄張りを狙うとは、間が抜けている。自然と顔がにやついてくるのも、無理からぬ事であった。
(――ま、俺と山賊の仲だ。この貸しは利子無しにしといてやるよ。サッサと終わらせよう)
 キドーはククリの柄を握り、いずれ来るであろう『山賊狩り』達を待ち構えた。
(山賊狩りをする盗賊狩りってややこしいわねぇ……。
 目の付け所が悪いと思うわよ? このシマのボスがアレなんだし……だから、悲惨な目に合う)
 キドーの横では、『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)が苦笑いを浮かべている。これからやろうとしていることの語呂が悪いのも理由の一端ではあるが、山賊峠を狙った『山賊狩り』の迂闊さの方が、理由としては大きかった。
 『山賊狩り』の悲惨な未来を哀れむように、イーリンは瞑目する。
 キドーとイーリンのいる森から山道を挟んで反対側の森には、『咎人狩り』ラムダ・アイリス(p3p008609)と『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)が潜んでいる。
「いや~、流石に此処に襲撃かけるのはどうかとボクは思うなぁ~。なんていうかその、はっきり言って同情するよ……」
 これから戦闘が待っているとは思えないのんきな声で、ラムダは言った。これから『山賊狩り』がこてんぱんに叩きのめされるであろう事を思うと、そうする側であっても憐憫を感じてしまう。
「……うん、ここはご愁傷様って言うべき?」
「雇われた盗賊達にとってはそうだな。だが、奴隷商人の使用人は自業自得だろう」
 首を傾げるラムダの問いに、『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)は静かに応じた。アーマデルとしては、雇われた盗賊の生死には興味は無いし、逃げるなら逃げればいいとも思う。だが、この事態の元凶たる使用人だけは放っておく気は無かった。

 左右の森の中だけでなく、山道でもイレギュラーズが『山賊狩り』を待ち構えている。
「全く、杜撰も杜撰。イレギュラーズたちがピリピリしているこの時期に、よりにもよって『グドルフ・ボイデル』のナワバリに踏み込むなんてね。
 名を馳せたイレギュラーズたちの間でもそんな無謀な事はしたくないだろうとも。いっそ御愁傷様としかいいようがないねぇ」
「百歩譲って、賊を攫って好き放題使おうってプランは評価するとしましょう。だけれど、御時勢って奴を読めないのは商売人としては致命的よねぇ。
 あくどい商売のし過ぎで、神様ってヤツに見放されたんじゃない?」
 『闇之雲』武器商人(p3p001107)が使用人の迂闊さに触れれば、『never miss you』ゼファー(p3p007625)も深く頷く。このところ、幻想においてはイレギュラーズの領地に魔物の襲撃が相次いでいる。故に、イレギュラーズ達の間では自分達や仲間の領地に魔物が襲撃してこないか、警戒の水位が大きく上がっていたのだ。
 そんな中で『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)の縄張りに踏み込むのは、気が立っている虎の尾を踏むようなものでしかない。武器商人もゼファーも半ば呆れ混じりだった。
「山賊どもなんざ、好きにすりゃあいい」
 そのグドルフは、山賊峠の山賊が狩られようが奴隷にされようが、知ったことではないとばかりに吐き捨てた。
「……だがな、おれさまの縄張りに土足で入り込んで、好き勝手暴れるのが気に食わねェのさ!」
 それは即ち『山賊狩り』にグドルフが甘く見られたと言うことに他ならず、そんな連中をグドルフが許しておくはずはない。憤激と戦意を身体中に漲らせたグドルフは、ボキボキと指の骨を鳴らした。
(狙われているのが山賊とはいえ、グドルフさんの縄張りでのこと。微力ながら、お手伝いできれば幸いです)
 『白き不撓』グリーフ・ロス(p3p008615)は、以前に別の依頼でグドルフと同行していた。その際、粗野に見えるグドルフが人命を優先したことに、グリーフは感謝の念を抱いている。故に、グドルフの縄張りに『山賊狩り』が来ると聞いたとき、グリーフは助力を申し出たのだ。
 自身の核である『揺蕩う色彩の宝珠』に服越しに手を当て、グリーフは大きく深呼吸して精神を落ち着かせつつ『山賊狩り』を待った。

●イレギュラーズの攻勢
 山賊峠に進入しようとした『山賊狩り』達は、グドルフと仲間のイレギュラーズが山道で待ち受けていることに驚愕した。その隙を、イレギュラーズ達は見逃さない。
「志半ばに斃れし英霊の怨嗟よ――我が敵を呪え」
「鳥撃ちじゃあねえんだ。烏合の衆の賊なんざ、数殺しても何の得意にもなりゃしねえ。サッサと尻尾巻いて逃げろっての」
 山道の左右の森の中から、アーマデルとキドーが仕掛けた。アーマデルは未練を残して死した英霊の怨嗟を呪いの刃を軋ませるような不協和音として『山賊狩り』達に聴かせ、キドーは熱砂の精に命じて使用人を中心として激しい砂嵐を発生させた。不協和音を耳にした盗賊達はたまらず耳を塞ぐが、そこを狙ったように熱く重い砂嵐を叩き付けられて、心身を共に蝕む苦痛に悶える。使用人だけは、盗賊の影に隠れることで不協和音からも砂嵐からも逃れて、傷つくことはなかった。
「ここの山賊を狩りに来たらしいけど、逆に殺されて五臓六腑バラされて売られる覚悟はできてるかぃ? ヒヒヒヒヒ!」
「グドルフさんの縄張りで好き勝手はさせません! ここの山賊達を狩りたいなら、私を倒してからにしなさい!」
 武器商人とグリーフは前方へと駆け出すと、『山賊狩り』達を挟み込むように左右に分かれた。そして武器商人は妖しい声と笑みで『山賊狩り』を嘲笑い、グリーフは高らかに叫んで、『山賊狩り』達の敵意を煽る。『山賊狩り』の大半が、武器商人かグリーフに敵意を込めた眼差しを向けた。
「常闇は来たれり、恍惚へと誘う不吉の月は昇り咎人達の心を狂気へと駆り立て呪縛する……対群精神感応術式『狂月』!」
「さあお立ち会い! その男は何人貴方達を使い潰すかしら?」
 さらに森の中から、ラムダとイーリンが動いた。ラムダは不吉の月を『山賊狩り』達の頭上に顕現させ、その心を惚けさせ、狂わせる。イーリンは掌に魔力を集め塊とすると、それを剣の姿に整え、大きく大上段に構えてから勢いよく振り下ろした。
 魔力の光が直線状に迸り、惚けて隙だらけとなった盗賊達を貫いていく。盗賊達のうち四人が、耐えきれずに倒れた。しかし今回も盗賊を盾にして無事だった使用人の姿に、流石に微妙な空気が漂い始める。イーリンの言葉と、目の前の現実によって、自分達も盾にされて使い潰されるのではと言う不安が心に芽生えたのだ。
「このおれさまに歯向かったんだ、タダで済むと思うなよ! 全員皆殺しだあッ!」
 畳みかけるように、グドルフが正面から『山賊狩り』達に斬り込んだ。己の肉体を武器にして台風の如く暴れ回り、盗賊達を拳で殴り飛ばし、脚で蹴り飛ばしていく。グドルフとしては実際に『山賊狩り』を皆殺しにする気は無く、雇われの盗賊達の士気を下げるために敢えて「皆殺し」と言ったのだが、盗賊達はその鬼気迫る剣幕にすっかり怯んでしまった。
「ほら。頑張って助けを求めなさいな? でっかい声出さないと、誰も聞こえないわよ」
 グドルフが開いたスペースに、ゼファーが身を躍らせて飛び込んだ。立ち塞がる者は殺す気で槍を縦横無尽に振るい、使用人目掛けて突き進んでいく。その中でゼファーは盗賊達の手足を特に狙って痛めつけ、苦悶の悲鳴を上げさせた。味方の悲鳴を耳にした盗賊達の士気は、ますます下がっていった。

 『山賊狩り』達は、左右に分かれて武器商人とグリーフを攻撃する。士気が高くないとは言え、数に押されては武器商人もグリーフも傷つくのは避けられなかった。しかし、武器商人とグリーフが傷ついたのは最初だけだった。二人がそれぞれ物理的な力を遮断する結界を展開すれば、『山賊狩り』達はもう二人に傷一つ付けられなくなってしまう。
 一方で、盗賊達はイレギュラーズ達の攻撃によって次々と倒されていった。否、使用人を狙った攻撃によって、盾とされたり巻き添えになっていったと言った方が正確であろう。そして、使用人が盗賊の影に隠れて盗賊を盾とする度に、盗賊達の士気が下がり使用人への信頼が失われていくのが、イレギュラーズ達には目に見えてわかった。

●寝返りし盗賊達
 盗賊達が逃亡を始めるまで、ほとんど時間は要しなかった。何しろ、最初の一撃を除いて一切イレギュラーズ達に傷を付けることが出来ないでいるのだ。それでいて自分達は雇い主の盾にされるか、その巻き添えになって倒れていく一方。いくら高額の報酬が出るとは言え、そのために死んでしまっては何にもならない。一人、また一人と使用人の目を盗んで戦場を去った。
「お前達、何とかしろ! 倍の報酬が待っているんだぞ!」
「報酬が倍? ……んなもん、全部嘘に決まってるさ。
 どうせカネを出し渋られて買い叩かれるか、口封じに首ハネられるか、どっちかだ」
 戦況の不利と士気の低下を打開すべく使用人が報酬をチラつかせたが、そろそろ頃合いと見たグドルフはそれを真っ向から否定する。
「そんな事はない! 報酬はしっかり払う!」
「そもそも、我(アタシ)達が結界を張ったら傷一つ付けられないんだ。その旦那からの報酬自体、もらいようがないだろう? ヒヒヒヒヒ……」
 グドルフに反論した使用人だったが、武器商人に現実を突きつけられて黙りこくってしまった。
「……なあ、交渉といこうぜ。その使用人をとっ捕まえて、誰の差し金か徹底的に吐かせてくれれば、このカネをくれてやってもいいぜ。
 口先だけの報酬とこの現ナマ、どっちを信じるんだ?」
 そう言って、グドルフは盗賊達に金貨が沢山入った袋を見せつける。盗賊達は、ゴクリと生唾を飲み込んだ。グドルフ達と勝ち目のない戦いをするよりは、グドルフに従った方が容易く金を得られると、頭の中で天秤を傾け始める。
「私達の目的はその男って分かってるでしょう? さあ、運命を選ぶなら今よ」
 グドルフに乗じるように、イーリンが目を光らせて冷たく笑いながら、戦旗の柄の石突きを盗賊の死体にドン、ドンと突き立てるように叩き付ける。どちらが悪役かわからないその姿に、盗賊達は思わず顔を背けた。
「どーせカネ目当てでここまで来たんだろ? そこの馬鹿を見ろよ。頭数が減れば払う金も減って助かる、程度に思ってそうだぜ」
 盗賊達の内心も使用人の内心も見透かしたかのように、キドーは言う。実際には、使用人の方はそんなことは思ってはいなかったのだが、盗賊を何度も盾にしたと言う事実は、盗賊達にはキドーの言が正しいと示す証拠として認識された。 
「……あんまり、おれさまをイラつかせんなよ。使用人のその先──奴隷商人の野郎もブチ殺さなきゃ気が済まねェのさ!
 ま、引き受けねえってんなら、てめえらも今ここで死ぬだけだがね!」
「大人しく、言うことを聞いていた方がいいと思いますよ……そうすれば、グドルフさんは約束を守ってくれます」
「そうだね。ボク達は、雇われている君達には同情さえ感じてるよ」
「ああ。俺達が用があるのは、そこの雇い主だけだ。あとは手向かいさえしなければ、どうなろうと知ったことではない」
「ま、応じるならさっさと応じておきなさいな。そうしたら、こんなところで犬死するよりも、もっといい死に方ができる筈ですわ?」
 それでも即決しきれない盗賊達の様子に、決断を迫るべくグドルフが語気を荒げる一方で、グリーフが取りなすように盗賊達に声をかける。そこにラムダが同情を示していることを、アーマデルが使用人にしか関心が無いことを、ゼファーが応じるなら早い方がいいことを畳みかけるように告げると、盗賊達の心の天秤は一気に傾いた。
「ま、待て、お前達! 依頼人を裏切るのか……」
 盗賊達の様子が変わったことに気付いた使用人が逃亡を図ろうとするが、時既に遅し。
「……味方を盾にしておいて、依頼人も何もないわよね。そう言う契約ならまた別なんでしょうけど」
 呆れ混じりのイーリンのぼやきに、他のイレギュラーズ達がうんうんと頷く頃には、使用人は捕まっていた。

「へへ、それじゃ旦那。あっしらはこれで失礼しやす」
 盗賊達がグドルフから金を受け取って、山賊峠から逃げるように去って行ったのは夜も白み始める頃だった。
 盗賊達の尋問、と言うよりも拷問によって、使用人は主人である奴隷商人の名を吐いた。何しろ報酬代わりの金がかかっているから、盗賊達は目の色を変えて必死になっており、拷問は苛烈を極めた。
 その後、アーマデルは神官として、グリーフは疫病対策として死んだ盗賊達を埋葬し弔ったが、それを手伝わされたため、解放されたのがこんな時間になってしまったのだ。
 ――使用人が失敗したのを奴隷商人が知るのは、もう少し後のことであった。奴隷商人の命運は……今は、定かではない。

成否

成功

MVP

グドルフ・ボイデル(p3p000694)

状態異常

武器商人(p3p001107)[重傷]
闇之雲
グリーフ・ロス(p3p008615)[重傷]
紅矢の守護者

あとがき

 シナリオへのご参加、ありがとうございました。山賊峠を狙った『山賊狩り』は、皆さんの活躍に死亡するか寝返るかとなりました。
 よもや使用人がパッシブで盗賊達を盾にするのを逆手にとって、盗賊達の士気低下を狙われるとは思ってませんでした。お見事です。
 MVPは、賄賂を使っての交渉で、残る盗賊達を寝返らせたグドルフさんにお送りします。

 それでは、お疲れ様でした!

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