シナリオ詳細
<ヴァーリの裁決>鳥獣の審判
オープニング
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昨今、幻想において大きな動きがいくつか確認されている。
まず、裏市場で行われているという奴隷売買。こちらは一部の貴族が奴隷商と手を組み、暗躍しているようだ。
その摘発と合わせてローレットに入った極秘情報として、『古廟スラン・ロウ』の結界に侵入した何者かが王家のレガリア……王権と象徴といえるもの……を奪取したこと、加えて伝説の神鳥が眠る『神翼庭園ウィツィロ』の封印が暴かれたという話も入っている。
「それだけではありません。幻想各地から、多くの魔物の出現報告が入っています」
幻想、ローレットでは、アクアベル・カルローネ(p3n000045)がこの状況に興味を示すイレギュラーズ達へと説明を行う。
『鳥』に関わる魔物、『巨人』に関わる魔物が多く確認されており、中には怪王種(アロンゲノム)化した物も……。
それらの因果関係の有無が気になる所だが、まずは数多く入る依頼に対処せねばならぬ状況だ。
何より魔物の襲撃を受け始めた場所にはイレギュラーズが管理する領地もあるのだ。
今回の事態は、エマの領地である蒼秘地区、蒼玉湖の畔で起こる。
そこに現れた多数の魔物が拠点となる廃墟へと向かっているという情報が寄せられたのだ。
「目撃証言によれば、巨大な大亀が多数の赤い鳥と少数の鹿を従えているそうです」
このままだと、数日後の朝には現地に到着すると見られている。
廃墟を寝床としている人々の安否が気遣われる状況だ。
「どうか、領民の皆様を守ってあげてください」
アクアベルはイレギュラーズ達へと丁寧に頭を下げ、説明を締めくくったのだった。
●
幻想アーベントロート領内、蒼秘地区にある蒼玉湖。
林が隣接した穏やかな湖が広がるこの場所は自然豊かな場所。
この一帯はエマ・ウィートラント(p3p005065)が管轄する領地なのだが……。
エマ自身はこの地にある廃墟に目をつけ、ちょっとした拠点代わりに使うつもりで領主に名乗りを上げた。
根なし草を自称すらしている彼はこの地の管理を領民に託し、自身は混沌中をさすらう流浪の旅に出ていた。
そんな彼の留守の間、エマが拠点とする廃墟へと少しずつ人々が集まる。
蒼秘地区は自然の幸が豊かなこともあり、湖の魚を獲る者や林の木々を使った林業を営む者も出始め、一時の居を構える領民も現れていた。
廃墟は労働者が寝床として使い、それで足りない分は野営のテントどころか、木々を使った家まで建ち始める始末。
領主であるエマがこの状況を見たら、どんな反応を見せるだろうか。
しばらくは何事もなく、廃墟に居つく労働者達も仲良くしながら互いの仕事に精を出していたのだが。
ここに来て、幻想中に起こる異変に巻き込まれることとなる。
ある日の朝のこと。
「ん、地震……?」
ずしん、ずしんと感じる地響きで、労働者達は目を覚ます。
外へと出た彼らは湖と逆側、林に挟まれた平原の奥から近づいてくる巨大な物体が……。
「な、なんだあれは……!」
それは、亀を思わせる姿。だが、頭や甲羅から多数の木々が生えていた。その威容は見る者にとてつもない威圧感を抱かせる。
それだけではない。その亀は紅い鳥と狂ったように角を振り回して走る鹿を従えていた。
魔物の群れは一直線に湖畔の廃墟を目指している。
「領主不在の状況で、どうすりゃいいんだ……」
「命あっての物種だ。逃げるぞ!」
労働者達は着の身着のままにその場から林の方へと逃げていく。
オオオオオォォォォ……。
ピーヒョロロロロロ……。
キエエエエエエェェェェ……!
嘶く亀に合わせ、赤い鳥は鳶を思わせる鳴き声を上げ、鹿も狂ったように泣き叫ぶ。
その一団の勢いは廃墟など瞬く間に破壊してしまう程の勢い。
逃げる労働者達は振り返る余裕もなく、廃墟から離れていくのである……。
- <ヴァーリの裁決>鳥獣の審判完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年03月30日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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依頼を受けたローレットイレギュラーズ達が至ったのは、蒼秘地区にある蒼玉湖の畔にある廃墟だった。
「この時期に魔物の襲来ですか」
一見すれば、冷ややかな印象を抱かせる『月下美人』雪村 沙月(p3p007273)は、幻想内で多発する一連の事件との因果関係を考える。
「これだけの規模の襲撃となると、何れは大本を叩かねば不味い状況に陥るな」
異世界の槍騎士、『曇銀月を継ぐ者』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)もこの状況を憂いていた。
「フム……亀と鳥と鹿が一気にやって来るのか……」
「うーん、何か共通点でもあるのかな? 実は亀の上に住んでるとか?」
髭を蓄えた大柄な男性、『身体を張った囮役』オウェード=ランドマスター(p3p009184)が唸ると、鉄騎の音楽一家の出である『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)もそれらの生態などに関して考えていた。
「さてさて、怪王種と出会うのは初めてだけれど」
小柄な長いウェーブヘアの『夢語る李花』フルール プリュニエ(p3p002501)は、それらが突然変異なのか、はたまた意図的に生み出された存在なのかと考える。
また、フルールは彼らが来る方角に何かあるのかといったことにも着目して。
「今回はできなくても、いずれ調べなければならないでしょうね」
「ただ、今は目の前のことに集中しましょう」
現状は人の命がかかっていることを沙月が指摘し、一行は一旦廃墟に入ることにしたのだった。
廃墟に入ると、この地の領主である『Enigma』エマ・ウィートラント(p3p005065)が内部の呆れた顔をして。
「いや本当、何をしているんでごぜーますか。貴方達は……」
廃墟はまだボロボロではあったが、居ついた労働者達が暮らしやすいように少しずつ整備されてきていた。その様子はもはやちょっとした集落のようになっていたのだ。
「逞しいというかなんというか、しばらくいなかった内に……」
「勝手に住み付いちゃった、とー……。それだけ居心地が良かったのかな、それとも領主のエマちゃんの徳なのカナ?」
呆れるエマへ、深緑出身の幻想種『森ガール』クルル・クラッセン(p3p009235)が微笑みつつ問いかけると、エマもまんざらではない表情をしていたようだ。
「なら、なおさら住人を助けてあげないとね」
クルルがそういった直後、少しずつ地面が小刻みに動くような感覚があり、この場の労働者達もどよめく。
「何だ、あれは!!」
1人が外を見やると、すでにこちらへと近づいて来る魔物の一団が視認できる。とりわけ、甲羅に木々を生やした巨大亀エンシェントタートルは遠目でも目を引く。
おかげで、危険を周知した労働者達。群れが到達する僅かな間に、沙月が強固かつ林側の建物へとその人々を誘導する。
ただ、行き場がないからと動かぬ者もいたのを、異世界出身の隠密、『離れぬ意思』夢見 ルル家(p3p000016)がじっと見ていて。
「廃墟は放棄して逃げれば良いのではと思わなくもないですが! 拙者にはわからぬ捨てられない何かがあるのでしょう!」
住めば都。さればこそ、彼らを守ることが自分達の役目だとルル家は意気込む。
「戦えぬ者達こそ、最も精神的に疲弊するだろう。早く何とかしてやらねばな」
「人を守るってあまりしたことないけれど、正義の味方っぽいわね。まぁ、あちらに正義が全くないとも限らないのだけど」
まずは事態の収拾をとベネディクトが動けば、関係ない人を巻き込むのは感心しないとフルールも外へ出ていく。
「まあ、廃墟であろうと守るのがワシらの役目じゃよ! それにここはアーベントロート領じゃからのう……」
「今はモンスター退治と人助け、がんばろー!」
続けて、もごもごとアーベントロート公爵家名代であるリーゼロッテの名前を口にするオウェード。次いで、クルルも意気揚々と魔物の群れとの戦いに臨む。
ォォォォォ……。
徐々に大きくなってくる鳴き声に、イズマが反応して。
「モンスターを食い止めるぞ!」
「死力を尽くさせて頂きましょう」
その立派な鳴き声が耳障りと感じたイズマがこの廃墟が襲われたら一溜まりもないと飛び出し、避難誘導に当たっていた沙月も接近される前に全て倒せば問題ないと続いていく。
「仕方がないでごぜーますね。ここはひとつ、領主らしい仕事のひとつもするといたしんしょう」
エマも覚悟を決めたのか、小さく微笑んでから仲間達を追っていくのだった。
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オオオオオォォォォ……。
ピーヒョロロロロロ……。
キエエエエエエェェェェ……!
叫ぶ魔物達の声はもうすぐそこまで来ている。明らかに廃墟を狙っていたようだ。
「モンスター達を通さないように、全部やっつけるよ!」
敵を見回すクルル。先行しているのは鳥、クリムゾンビーク。続いて鹿、少し遅れて亀が地響きを立てて歩いて来る。
「空を飛ぶ相手が混ざる嫌ーな構成だね」
鹿が加わった後、上下に意識が散るのは避けたいところ。
廃墟へと抜ける敵が最優先なのはもちろんだが、次点で対空、更に次点で陸上の敵と、優先度をつけて倒していきたいとクルルは考える。
素早く仕掛けるクルルは、纏まって飛来する鳥めがけて放った一矢。そこからマンドレイクの絶叫が鳴り響く。
ピーーーーィィ!?
あちらこちらで甲高い鳥達の鳴き声が聞こえ、中には硬直して落下してしまう個体も。
「一気に薙ぎ払ってしまいましょう」
沙月は向かい来る鹿を注視していたが、まだ仲間に先んじて接敵し、敵陣目がけて徒手空拳での連撃を繰り出していく。
まだ飛来してきた鳥の前方にいた数体にしか当たらなかったが、次はもっと多くを巻き込むようにと沙月は敵の動きの把握に努める。
「緩急をつけて、波のように来る敵相手です!」
さらに、仕掛けるのはルル家だ。
「はーい、鳥の皆様! 拙者の目をご覧あれ! そして、お狂いあれ!」
一時、ルル家の片目が無かった時に使っていた虚無の波動。その後得た鴉天狗の呪眼を通すことで安定した力を放つ。
ピーーー……。
早くも地に落ちて動くなる鳥も出始めるが、何せ数が多い。まだまだこちらも手数を増やす必要がありそうだ。
まだまだ残る鳥達も急降下して攻撃を仕掛けてくる。その盾となるべくベネディクトが前に出て、鋭くなった聴覚、嗅覚で接近する鳥の位置を探知する。
「相手になろう。ここ抜かせはしない」
防御態勢をとるベネディクトへと引き寄せられるように、鳥達が空から襲い掛かる。鋭い嘴は容易く獲物の肉を裂いてしまう威力がある。
剣と手甲で飛来する嘴をやり過ごし、ベネディクトは被害を軽減していた。
「ワシも負けてはおれんのう」
オウェードも鹿の接近までは口上をあげ、多少の鳥を引き付ける形だ。
後は防御態勢を取り、オウェードは構えた斧で飛んできた鳥に先手を取らせて傷を負いながらも、斧での一撃をしっかりと叩き込む。
近づいてきた鳥を視認し、フルールは虚空を見上げて。
「さてさて、精霊の子達。ひとつになって、咲きましょう。精霊天花、ここに」
呼び寄せた精霊と浮遊するフルールは、仲間の攻撃で弱った真っ赤な鳥へと紅蓮の炎で燃え上がる鳥の精霊による一薙ぎを浴びせかける。
力尽きて落ちていくクリムゾンビーク。ここはフルールと精霊の力が勝ったようだ。
クルルもすかさず矢を射かけ、胴や翼を貫く。呪殺の追撃によって態勢を立て直せぬまま、鳥達は絶命していく。
キエエエエェェェェ!
ただ、その全滅を待たずして、突っ込んでくる3体の錯乱の鹿。
それまで鳥の相手をしていた一部のイレギュラーズがすぐさま鹿の相手へと回る。
「できれば、鳥を巻き込むように狙いやしょう」
エマは向かい来る鹿を中心に、殺傷の霧を振り撒く。
巻き込まれた鳥も苦しそうに悶えていたが、鹿は血を流しつつも猛然と立派な角を振りかざして駆けてくる。
「足止めするだけじゃなくて、キッチリ倒してく必要があるな」
盾となるメンバーとは別に、イズマはしっかりと敵を足止めすべく鹿へと向かっていく。
突進しようとする相手めがけて、一度集中した彼は両手の双剣を突き入れる。
邪剣の効果で刹那身を硬直させる鹿の姿を認めるイズマはなおも気を抜かず、上空の鳥の様子や周囲の鹿、前方から近づく亀の鳴き声にも気を払うのである。
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徐々に鳥、クリムゾンビークが数を減らすが、暴れ回る錯乱の鹿の存在はイレギュラーズ達にとっても面倒でしかない。
「混乱、狂気……早めに倒したいですね!」
魅惑のステップはこちらの思考を乱すと、ルル家も優先撃破対象に据えた鹿へと、握る大太刀から繰り出す魔剣を連続して見舞い、手早く仕留めようとする。
仲間が集まったことで、沙月は飛行しつつ仲間を巻き込まぬよう流れるような動きで鳥や鹿へと連撃を見舞う。
あまり高く飛び過ぎると危険だと沙月も感じており、低空からの攻撃を繰り返す。
鹿の動きが速すぎた場合も想定していたエマ。確かにその挙動は読みづらくはあったが、なんとかなる範囲だと判断したようで、鳥と纏めて殺傷の霧を展開し続けていた。
依然として、クルルはマンドレイクの叫びを聞かせた鳥や鹿の体へと矢を射かけるが、その合間に仲間達の様子も随時チェックする。
キエエエエエエェェェェッ!!
奇怪な叫びを上げる鹿はイレギュラーズを錯乱させて来ようとする。メンバーの多くは事前情報もあって精神耐性を備えて戦いに臨んでいるが、そうでない者もいた。
クルルはそうしたメンバーを確認すれば、すぐさま内なる恐怖を振り払って万全に戦える状態へと戻す。
順調に討伐が進んでいるようにも見えるが、オウェードはかなり苦しんでいる。
鹿が来るまで、名乗りを上げて彼は鳥を引き付ける。続く鹿もそうだ。
そうして近づく敵へと斧での重い一撃を叩き込むオウェード。ただ、向かい来る敵を1体1体叩くだけでは追いつかない。
全力防御で防ぎきるとは行かず、ステップで翻弄してくる鹿の角に穿たれ、オウェードは運命から零れた奇跡の力を行使してしまっていた。
とはいえ、その間に他メンバーが手数を増やして。
「あの鹿はもう体力がない。一気に攻めよう」
ベネディクトは仲間に向けて声を張り上げて情報共有に努め、自ら敵陣へと乱撃を浴びせかけて、狙った鳥を寸断し、鹿を追い込む。
体勢がグラつく鹿の様子をイズマが逃さず、得意の双剣による剣術に魔術をくわえて刃を刻み込む。
ェェェ……。
弱々しく鳴いた鹿1体が横倒しになって力尽きる。
これでさらに勢いづくかと思われたその時だ。
オオオオオオオォォォォ!!
到達した亀、エンシェントが嘶き、戦場の空気を震わせる。
まだ残る鹿や数の減ってきた鳥の対応も迫られるメンバー達の中で、ベネディクトが亀へと近づく。
「貴様に自由に動かれては困るのでな。俺が倒れるか、貴様が倒れるまでは付き合って貰うとしよう」
相手の勢いを強めるわけにはいかない。ベネディクトは蒼銀の腕を構えてしっかりと体で亀の動きをブロックする。
亀はその場で足踏みし、近場のイレギュラーズを攻め立てる。
だが、敵の頭上からフルールが飛来して。
「飛んでる私に地響きなんて効かない」
彼女は頭の上を飛び越え、獣の手爪となった紅蓮の焔で木々の茂った亀の甲羅を叩き割らんとする。
亀を抑える間に、メンバー間で声を掛け合い、2体目の鹿を追い込んでいた。
「今夜は鹿鍋にキマリ! ですね!」
ルル家は危機として、弱ってステップも踏めなくなりつつある鹿へと斬撃を繰り出す。
数ある可能性から、確実に相手を切り刻む斬撃のみをルル家は具現化し、目の前の鹿の体を幾度も刻む。
ェェェェ……。
勢いもあって少し転倒したその鹿は目から光を失ったのだった。
なおも大亀エンシェントタートルが猛威を振るう戦場だが、イレギュラーズ達は魔物へと個別に対策を講じつつ、着実に敵戦力を削っていく。
沙月が敵周囲を見渡しながらも、仲間達の集中攻撃を受ける最後の錯乱の鹿を強襲する。
よどみない沙月の連撃は鹿の顔面や胸部へと叩き込まれ、相手は敢え無く崩れ去っていった。
これで、面倒な鹿は討伐を完了し、メンバー達は残る鳥を駆除してから強敵である亀の相手に注力する。
「いやー、おおきいですねー! 倒したら甲羅を観光名所に出来ませんかね!」
かなりの巨体の敵を見上げるルル家。
ともあれ、このまま通せば廃墟が崩れ去る危険もあると判断し、彼女は鹿と同様に魔剣を刻んで迅速な撃破を目指す。
「木の生えた巨大な亀って、動く森みたいで凄いな」
そう考えたのは、イズマだけではないだろう。
すでに、甲羅の上から攻める仲間も出始めていたが、彼はモンスター知識を生かし、敵を注視しつつ有効的な攻撃法を探しつつ、変幻邪剣によって亀の首を狙って切りかかっていく。
「甲羅などワシの斧で割ってやるワイ!」
防御を固め、オウェードは力強い一撃を亀の甲羅へと打ち込む。
強烈な打撃に亀もかなりの衝撃を受けたようだが、耐えて見せた敵は重量感のある体当たりを彼へと叩き込む。
その破壊力は恐ろしく、オウェードは卒倒してしまった。
「くっ……」
ベネディクトも亀の破壊力ある攻撃をその身に受け、苦しんでいる。
威圧ある視線にさらされながらも、彼は身を張ってその侵攻を食い止めていたのだ。
その巨体を完全に停止させる為、クルルは魔光を発して亀の体を包み込む。
「…………!!」
相手が硬直している隙を突き、エマが神の呪いを施し、続けて顕現した怨霊に襲わせて亀を弱らせる。
低空からの攻撃を続ける沙月は流れるように斬撃を繰り返すが、気力が尽きかければ強く踏み込んだ一撃で亀から気力を奪い取っていく。
仲間達の攻撃が繰り返されることで、徐々に亀の甲羅に亀裂が入って。
「可哀想だけれど、関係ない人に手を出そうとした報いよ。どうぞ安らかに逝って頂戴な」
フルールがなおも紅蓮の爪で亀の巨体を薙ぎ払うと、木々の重さも手伝って甲羅が割れ、亀の本体が露出する。
「今だ。甲羅の内部は衝撃に弱いはずだ」
イズマの一言で、敵の急所を見定めていたクルルが頷いて動き出し、その甲羅の裂け目目がけて矢を射かける。
オオオオオォォォォ……。
イレギュラーズの攻撃で相当に弱っていたエンシェントタートルは断末魔の叫びと共に蹲るように沈み、動かなくなったのだった。
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無事に魔物の群れを撃退し、イレギュラーズ一行は廃墟へと戻って。
「もう全部やっつけたよー」
避難していた人々へとクルルが呼びかけると、皆晴れやかな表情を浮かべる。
一時は倒れたオウェードだったが、深手を負いながらも起き上がった彼は労働者達の体調を気に掛ける。
「しかしながら、怪王種も一部に過ぎんのう……」
「怪王種はどこから来たのかしらね……?」
「やはり、大本を叩きたいところだな」
フルールも安否確認をしながら気に掛けると、その手伝いをしていたベネディクトも逸早く調査を始めたいようである。
「……それで? 執政官のラフィールはいずこへ?」
エマはこの地を任せていた人物を呼び寄せ、定期的に領地に戻ってくることを告げる。
放浪者であるエマも今回の事態は重く見ており、リーゼロッテから何かアクションがあったときに困ると判断したのだ。
「それと……今回のような事があれば、ローレットへ頼りなさい」
今回の事態をアーベントロートに報告すれば、領地が荒らされている以上何か沙汰があるだろうとエマは考えていた。
「それに……、ちゃんとした建物を建てられるよう掛け合っても良いでごぜーますが」
これだけの労働者が集まれば、廃墟とは言えないとエマも感じていたようで、居つく労働者達にどうしたいかと尋ねる。
「是非、お願いします!」
なんでも、この地は便利だが、環境的に居づらいと思う通いの労働者もいるのだとか。そういった人々が居つけば、さらに賑わうことだろう。
そこで、ルル家が人々と共に倒した鹿や鳥の肉を運んでくる。
「不運を被ってるだけでは精神的に損ですからね!」
それらの肉を使って鍋パーティーをしようと盛り上がる。
エマも便乗し、領地を救ってくれた仲間を盛大にもてなそうと告げて。
「お酒がある? 飛び切りの上物を用意なんし。あと、料理も忘れてはならないでごぜーますよ?」
「「うおおおおおお!!」」
領主として最大限の返礼をと皆に告げれば、労働者達はこれまでで一番盛り上がり、酒を用意し、得た肉を捌きだす。
そんな領地民の持て成しを受けながらも、イレギュラーズ達は一晩楽しい宴に酔いしれるのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
リプレイ、公開中です。
MVPは敵の牽制、味方のケア、さらに亀の討伐と幅広い活躍を見せた貴方へ。
今回はご参加ありがとうございました。
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
こちらは幻想アーベントロート領にあるエマ・ウィートラント(p3p005065)さんの領地、蒼秘地区で起こる事件です。
●目的
廃墟の防衛。領地民に死者が出ないこと。
●敵×
蒼玉湖付近へと現れるモンスターの群れです。
○怪王種(アロンゲノム)、エンシェントタートル×1体
全長8mほどもある頭や甲羅に多数の木を生やした亀。
威圧感のある視線、重量感のある体当たり、足踏みからの地響き、木の葉乱舞といった攻撃を行います。
○クリムゾンビーク×15体
全長50cm程度、赤い体色が特徴的な鳥です。
鋭いくちばしを持っており、急降下して貫いた獲物の肉を貪り食らいます。
○錯乱の鹿×3体
一般の鹿よりも2回りは大きい全長3mほど。硬い角を振りかざしたり、狂ったように突進したりする他、ステップを踏むことで相手を惑わしてきます。
●状況
幻想、蒼秘地区にある蒼玉湖の畔にある廃墟に、湖や林で労働を行う人々が居ついております。
この廃墟へ、モンスターの群れが向かっているという情報がありましたので、廃墟にいる領地民を護る為にモンスターを撃退していただきますよう願います。
基本的には廃墟を背に、林に挟まれた平原での交戦になるかと思います。
敵は緩急をつけつつ襲い掛かってきますので、時間差で到達する敵の対処が必要となるでしょう。
●ブレイブメダリオン
このシナリオ成功時参加者全員にブレイブメダリオンが配られます。
ゴールド、ミスリル、アダマンタイトとメダルごとにランクがあり、
それぞれゴールド=1p、ミスリル=2p、アダマンタイト=5pとして扱われブレイブメダリオンランキングにて総ポイント数が掲示されます。
このメダルはPC間で譲渡可能です。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは、よろしくお願いいたします。
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