PandoraPartyProject

シナリオ詳細

シャークライトの伝導

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 サメの季節がやってきた――!

「おあああああああ―――――――!」 
 コラバポス 夏子 (p3p000808)は思い出した。
 お約束を。そして、鮫はやばいのだと。そう、特にとんでもない召喚術で現れる鮫がやばいのだと。
 今回は勝手に来たとは言えないスティア・エイル・ヴァークライト (p3p001034)は「てへ」と笑みを零した。
 そう、今回はと言えば故意的にサメちゃんに来て頂いたのだ。

 説明しよう! サメちゃんとは!
 何でかやってくるスティア固有の存在なのである!

 制御不能のサメ。それが突然スティアの元から飛び出してくることを疑問に思うのは彼女の叔母くらいなものである。
 兄と義姉亡き今、一人残された可愛い姪を護る為に一家断罪の刃を振るい、氷の騎士とあだ名されても当主代行を行ってきた叔母。
 ……それが、悲しいことに、サメ召喚士になっていたら「だというのに――!!!!」と叫びたくもなるという者だ。
「どうして―――!」
 それはエミリア・ヴァークライトの台詞である。

「ううん、今日はタイムちゃんの為だったよね! タイムちゃん大丈夫!?」
「ええ!?」
 何も大丈夫じゃなかった。そもそも、召喚士スティアから飛び出したサメちゃんも制御不能なのだ。
 其れを見様見真似でやってみせるタイム (p3p007854)の元に現われるサメというのも当然……。

「ああああああああ―――――――!」

 夏子を頭からがぶり、である。携帯電話のバイブレーションのように体を震わせ続ける夏子。
 そんな様子を見ながらなんて惨いことをと息を飲んだのはリア・クォーツ (p3p004937)である。
「焔てめぇーーーー!」
「違うよ!」
 どうしてここにリアが居るのかと言えば、時間は遡る。炎堂 焔 (p3p004727)は「ねえねえリアちゃん!」とリアに声を掛けたのだった。
「実はスティアちゃんの領地で珍しい花が咲くらしいんだ! 芸術品だとも言われていて、それを持って行ったら伯爵も喜ぶんじゃないかなあ?」
「行くわ(二つ返事)」
 ……という経緯があったわけだが。
 今の状況はと言えば芸術品などはなく、サメが生えている。庭からサメが。我が物顔でフラワーぶって咲いているのだ。
「成る程、サメを斃せという訳か! 卿は中々酷な事を考えるものだ!」
 笑って見せたベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ (p3p007867)であるが、サメからは距離をとって居る。
 彼女にとってサメが我が花になるのかは定かではない。きっとならない。なったらサメも喜ぶかも知れないが。
「倒せるのか?」とベネディクト=レベンディス=マナガルム (p3p008160)は聞いた。
「倒すしかなかろうに」とベルフラウは静かに返す。
「ああ、だが――空を飛んで居るぞ」
「……」
「どうしてでありますかーーー!?」
 夢見 ルル家 (p3p000016)は叫んだ。
 サメは空を飛ばないし、陸を泳いだりしない。
 軟骨魚綱板鰓亜綱に属する魚類のうち、鰓裂が体の側面に開くものの総称であれど魚類は魚類だ。
 汽水域、淡水域に進出するサメが居たとしても空は飛ばないのだ。
 そんな、サメとも言えない恐ろしい『サメちゃん』をスティアは召喚し、タイムは真似て見せた。

「どうしてーーーーーー!」
 それはやっぱり叔母様の台詞だった。

GMコメント

 鮫は勝手にやってきます。リクエスト有難うございます!
 1年に数度くらい夏子さんを開幕でぱくっとしてる気がします!

●成功条件
 サメちゃんにお帰り頂く。

●シチュエーション
 此処はヴァークライト邸。叔母様ことエミリア・ヴァークライトは言いました。「家の中でなら、良いですよ」と。逆に怖い。
 ヴァークライト邸に存在する庭園が今回の舞台となります。
 天義の春先は少し寒いですが、其れでも随分と活動しやすくなってきましたね。
 サメも勝手に出てくるわけですよ。どうしてって聞きたいのは叔母様です。たぶん。
 また、夏子さんは噛まれてますが、お腹の中ではないので大丈夫です。痛いけど。

●サメちゃん
 鮫です。ホオジロザメっぽい鮫です。サメ映画によく出る鮫です。

 鮫は空中を泳いでミサイルの様に飛び付いてきます。怖ろしい!
 だって、皆の事大好きだから。かわいい。
 簡単には死にません。怖ろしい!
 だって、皆の事大好きだから。かわいい。
 全力で逃げて全力で対処してください。
 斃せばサメ召喚の極意とかわかるかしれませんね!
 サメ達は何かに満足したら帰ります。

 愉快なメンバーを紹介するぜ!

 ・1匹目
 スティアさん(クラス:ホーリーメイガスと書いてますが多分『鮫召喚士』の間違いです)がなんか召喚した鮫です。いきなりそう言う事が起こるのは混沌世界にもよくあることです。きっと精霊さんが悪戯したんです。きっとね。
 いつものサメちゃんですが制御不能です。夏子さんを頭から齧るクセがあります。お茶目ですね。

 ・2匹目
 タイムさん(ギフト『こんなはずじゃなかったのに』の通りです)がスティアさんの真似をしてなんか召喚した鮫です。「どうしてこうなっちゃうの!?」って感じですね。
 サメちゃんと同じ外見ですがわりに云う事は聞きそうです。スティアさんのサメちゃんに対しては謎に対抗意識を燃やし攻撃を行い続けます。とても危険です。

 ・3匹目
 何でか花壇に生えてたサメちゃんです。大暴れします。もっとも制御不能です。
 如何していたのかは分かりません。

 ・てるこ
 犬です。自身をサメだと認識しています。テレーシアちゃん。シーズーです。
 サメ大戦になんでか混じっています。走り回っているだけです。かわいいですね。

●でんじゃぁ
 当シナリオにはパンドラ残量に拠らないサメによる強襲がありえます。
 サメが皆さんの事を大好きな事を予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
 リクシナなので逃げれませんでしたね。うっかり。

 それでは、よろしくお願いいたします!

  • シャークライトの伝導完了
  • GM名夏あかね
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年04月01日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

夢見 ルル家(p3p000016)
夢見大名
コラバポス 夏子(p3p000808)
八百屋の息子
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
アベリア・クォーツ・バルツァーレク(p3p004937)
願いの先
タイム(p3p007854)
女の子は強いから
ベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ(p3p007867)
雷神
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃

リプレイ


「そうか……もうそんな季節か」
 春うららかな日差しを浴びながら『八百屋の息子』コラバポス 夏子(p3p000808)は静かに目を閉じた。
「思えばいつもこの時期はサメが……うわー! んな訳あるかぁー! 違う! そういう話じゃなかったはずじゃん!
 そもそも今日は美女美少女が目白押しで、よりどりみどりスチィ邸会って言うから僕。ウキウキで来てみたらなんでサメ被ってんの?」
 その疑問は尤もだ。現われるサメちゃん、襲い来る牙。そして、響き渡る夏子の叫声。
「な、夏子殿―――――――!」
 サメちゃんによる熱烈歓迎、熱いキッスと咥内における抱擁を受ける夏子を見詰めて『離れぬ意思』夢見 ルル家(p3p000016)は叫んだ。
「やはりサメを召喚して制御しようなどと無謀だったのでは!?
 というかまずもって師であるところのスティア殿が制御出来てないのに何故タイム殿に制御する方法を教えられると思ったのですか!? これがわからない!」
 突然のパニック系サメ映画。サメが襲い掛かっては食らい付き夏子が痛みに悶え苦しみながらも「何がどうなってんだよー!」と叫んで居る光景に幻想王国のイケメン領主代行(顔が良い)こと『曇銀月を継ぐ者』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)はそっと額を抑えた。
「……正直に言って状況の理解が追い付かんが。
 だが順応をせねば何も出来ぬまま討ち果たされるだけだ。ならば、やらねばならんか――サメ討伐を」
「成程? いや、まあ待ってくれ。『今度鮫の依頼があるんだけど一緒にどう?』と誘われ行く行く、と言ったまではよい」
 そもそもその前提を受入れてくれる時点で理解力がハンパないのは『金獅子』ベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ(p3p007867)。
 美しい黄金の髪を揺らがせて悩ましげな表情を浮かべる彼女は正しく金の獅子である。
「……よいが実は私は初鮫依頼でな。何故鮫がいるのか、何故飛んでいるのか、何故この星は青いのか。
 それが分からねば与太与太しくも動けぬというものよ。つまりシリアスで格好いい私が顔を出してしまうわけだ。
 それは面白くない、面白くないだろう? と言う事でまず鮫についての説明を頼む」
 真面目な顔をして舞台裏のように「卿も聞いておくが良い」とベネディクトを見遣ったベルフラウはそっとしゃがみ込んだ。
「わん!」
「きゃう!」
 やけにドヤ顔をキメている犬二匹が説明役を引受けると言っているのだ。ポメ太郎に何が分かるのか、それは飼い主であるベネディクトには分からない。
 だが己のことをサメだと認識して、サメとして生きてきているというテレーシアであれば――……

「ががーん!?」

 自分も何もかも分からないのにテレーシアこと、てるこが分かるわけがないと『リインカーネーション』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)は叫んだ。もっと理解できないのは彼女の叔母である。
「何故、どうして、どのように、こんな、こんな――!」
 叔母の慟哭を聞きながらスティアは「ひいいい」と唇から勢いよく漏れる叫びを抑えることは出来なかった。
「今回は、今回は上手くいくと思ったのに! どうしてこうなったんだろう? あっ、サ、サメちゃんの機嫌が悪かったのかなあ!?」
 サメちゃんに同意を求めるスティアに叔母様は「同意など、求めては居ません!」とぴしゃりと叱り付ける。
「う、うう……どうしてー! 上手くいく筈ー! 多分、きっと、メイビー!」
 どうして、の声を聞きながら『優光紡ぐ』タイム(p3p007854)は素人はだまっとれと言わんばかりに目を伏せた。美しい深慮を讃えたターコイズは思考するように伏せられて睫が震える。

 ――どうしてこうなっちゃったのかと思い返せば。

 夏子さんが持ってる筈の忌まわしき映像の詰まった記録媒体(でぃれくたーずかっと)。
 はっと思い出してタイムは「そう!」と叫んだ。
「あれ! あれよ! わたしは密かにあれをどうにかしたいと思ってて!!
 どうやって取り戻そうか悩んでいたらスティアさんから『夏子さんはサメちゃんに弱いよ』って聞いて、だから……
 それが……どうして!? このままじゃ夏子さんが食べられちゃう。それはそれでダメなの!!」
 ディレクターズカットをどうにかするよりも先に夏子がどうにかされてしまう。それがサメ依頼なのだ。


「……ねぇ、これって天義での常識なの? それとも、スティアの家系の常識?」
 そうではなさそうだと沈痛の面差しで立ち竦むヴァークライト家『当主代行』エミリア・ヴァークライトをちらりと見遣った『しもふり』リア・クォーツ(p3p004937)。困惑するものも多く、説明するてるこに「ふんふん、成程! へえ~!」と効果音ばりに同意を示すベルフラウと「成程! 理解した!」と言わんばかりに微笑むベネディクトを見てから、リアはゆっくり立ち上がる。
「……焔ァ! てめぇまたしょーもねぇ話を持ってきやがって!!!」
「こ、これは違うんだよリアちゃん! ボクもこんな事になるだなんて知らなかったんだよぉ!」(CV:鏑木はる)
『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)は叫んだ。
「本当にどうしてこんな事になってるの! 噂のお花ってこのサメちゃんの事だったの?
 だ、大丈夫だよねスティアちゃん! サメちゃんを何とかしたら元に戻るんだよね!?」
「え?」
 何も聞いていないスティア。遠い目をしてあらすじを確認しているタイム。そして「ぎゃあああああああ」――食べられる夏子。
「焔ァッ!!!!!!」
「待って、リアちゃん! ボ、ボクじゃ、ボクじゃないよーー!?」

 さて、諸悪の根源と書いてサメ召喚士と読むスティアの責任が全て焔へと押しつけられた所でスティアはタイムの横顔を見て居た。
「サメちゃんの召喚を教えて欲しい……って言ってたけど……タイムさんが大切なものを取り返したい、んだよね?
 この大惨事、取り返せるのかなぁ? 健闘を祈ろう……応援はしているよ!」
「他人事ではありません、スティア! どうして、このような! 彼は大丈夫なのですか!? まさか、ヴァークライトの邸内で殺人事件が起こるとなれば、私は如何すれば……」
 頭を抱えるエミリアにスティアは「お、叔母様……」と呟いた。こんな風に叔母の事を呼ぶのは幼き日に、叔母が「大丈夫ですよスティア」と微笑んで『二人きりのヴァークライト』になって以来なような――
「なんで毎回急に襲われてるんだろう!? 近くに犯人いる!? 俺知ってる人!?
 余計な事を考えてる場合じゃない! 生き延びる事に集中するぞぉ!!」
「耐えて! 耐えて下さい、夏子殿!
 正直めちゃくちゃ関わりたくないし放置したい気持ちマックスパワーなのですが、夏子殿はタイム殿のご友人と言いますし……拙者、タイム殿には一方ならぬ恩がありますのでご助力致しますよ! サメちゃんを倒しますから!」
 倒せると入っていない。けれど、ルル家は懸命に夏子を励ました。
 サメちゃんの傍でエミリアが愕然としているが『サメを倒す』という言葉だけでも酷く喜んでくれたことが見て取れる。
「よし、わかったぞう! 追加の説明(?)も在ったが、すべては焔が悪いそうだ! てるこも分かったか? ふふ、えらいぞ」
 尻尾をぶんぶんと振り回すてるこにベルフラウは大きく頷いた。ポメ太郎も分かりましたと言わんばかりに尾を振り回している。
「プレイングの擦り合わせもばっちりだ、任せて貰おう!
 しかしスティアの叔母上、エミリア殿と言ったか。美しいな。是非この後酒でも酌み交わしたいものだ……いや、別に他意はないぞ?」
「待ってー!? 叔母様は独身貴族、浮いた話もない異名は『氷の騎士』……! ベルフラウさんと晩酌して『氷の騎士恋愛編』に突入したら、私、私……!?」
「スティア!!!!!!!!」
 叔母の叫び声を聞きながらベルフラウは「その様な表情も美しい」と微笑んだ。微笑んだのだった。
「夏子、無事か? ……一先ず俺は花壇から生えているサメの対処に回る。
 はは、光浴でもしていたのだろうか。最近のサメは色んな種類が居るからな。きっとそういう種類が新たに生まれたのだろう。
 随分と元気よく暴れまわるらしい。それは、俺にとっては良い訓練になるかもしれん。良し、ひとしきり遊んでみるか」
 休日のパパのように微笑んだベネディクトに夏子は「ああ、めちゃくちゃ良い笑顔だな~」とぼんやりと考えた。

 そう この事件を生き延びて、生きて帰れたら 僕は――


 半身だけこんにちはしている夏子は鮫の口の中って妙に暖かいよね、春の生温い空気って感じとぼんやりと感じていた。
 初めての海での出会い。当然だ。だって、サメだもの。サメと言えば海だ。分っている。
 雪山砂漠プールに練達……あらゆる現場で遭遇して――「慣れるワケねぇじゃんンモおぉォっ!」

 もはやこの状況に半分くらい慣れて妙に冷静だったスティアは「はっ、これって慣れちゃダメなんだ!」と驚いた。
「こらー! 大人しくなりなさーい!」
「今日も生きる努力をするぞ! いつも通り槍で口に引っ掛けたかったのに――武器! ヴァークライト邸に持ち込んでないのです!
 痛い、スチィ! ス、スチィ! 俺を巻き込んでる~~~!!!!」
「えっ、ごめんなさーい!?」
 取り敢えずサメとサメの同士討ちを狙ったスティアのフレンドリーファイアに巻き込まれる夏子。懸命に生き残ろうとするが彼がばたばたと脚を動かす度に夏子の身体はするするとサメの口の中へと落ちていく。
「あはっ変なの」
 思わず笑いが出たらしい。人間は突然笑顔になるときがあるのだ。
「抵抗すればするほど、歯の返しのせいか奥へ奥へとスルリスルリ」
 夏子が飲み込まれていく様子を見ながらもタイムは己を落ち着かせるために深呼吸を繰り返した。
「落ち着かなきゃ。ふー。あらあら? てるこちゃんもポメ太郎もあんなにはしゃいじゃって……。
 ほら危ないよこっちにおいで、ってサメ? 完全にサメになりきってる? ポメ太郎まで!? じゃあサメ太郎なの!? そんな!!」
 サメの着ぐるみを着用しているポメ太郎と己をサメだと認識しているてるこを見て「サ、サメしかいない……」とタイムは呻いた。
「夏子さんを何とか救出したいけどわたしの召喚したサメちゃん(2)も――対抗意識を燃やして齧ろうとしてるしアアア夏子さんッ!
 2匹のサメに頭と足齧られたら夏子さんばらばらになっちゃう! サメちゃん(2)、食べるならわたしを食べなさ――リアさん!? リアさんがわたしの身代わりに!?」
「言ってねぇだろうが!!!! 初めましてだな!? 香草女! あたしの為にここで死ね!!!」
 焔を盾にすべく掴んでいたリアの前であんぐりと口を開けたサメちゃん(2)。夏子をもぐもぐしているサメちゃんに対抗意識を燃やすが取り敢えず腹ごしらえにやってきたのだろう。
「リアちゃん、離して――!? って、アッ!?」
 勢いよくリアを押した焔。どん、と言う音と共にリアの身体がサメの許へと投げ出される。
 リアは叫んだのだ。「香草女、テメェ――――!」、と。
 初対面であることを鑑みて「初めまして」とちゃんと挨拶する辺りリア・クォーツはしっかり躾けられた教育を受けた淑女だった。サメを前にしても、挨拶を忘れないのは淑女の鏡だとエミリアはぼんやりと考えた。だが、リアは初対面だろうがそんなことはどうでも良かった。
「あたしの中には、てめぇに対する憎しみが渦巻いているのよ!
 なんでか? てめぇの薄っぺらい胸に手を当てて考えろ! ついでにてめぇの服をビリビリにしてやったら美味しそうに見えるかもな!」
 そう叫びながら、サメの口の中に落ちていくリア。焔は「アアア、リアちゃんに怒られる、助けてー!?」と悲痛なる叫び声を発し、ベルフラウは「うーむ……」と呟いた。
「我が花達も食われて……いや、花壇に咲いているサメに食べられたならばもしかするとそれは花そのものになるのではないか?」
 考えるベルフラウに焔は「助けて、どうしよう!?」と叫んだ。
「あっ、サメちゃんサメちゃん、たぶんこのお胸の辺りとか美味しいと思うよ、霜降りだよ。
 ……じゃなくて! リアちゃんから離れて! 烈火業炎撃で焼きサメにしちゃうよ! 大丈夫だよ、すぐに助けるから! だから怒らないで!」
 リアに怒られるという事が心に刻まれすぎている炎堂 焔。旅人。半神半人、炎の神を祭る神殿の巫女である。

「ぐっ、流石にやるな……! だが俺もこの程度ではまだまだやられんぞ……!」
 真面目にサメと戯れるベネディクト卿。顔が良すぎてサメちゃんも「うふふ~」といった様子だ。顔が言い。
 厳しい訓練だと思えばサメも悪くはないとベネディクトは感じていた。サメを許容すればエミリアが苦しみ、夏子が毎度食べられて……
「そういえば夏子は今は何を……」
「抑えだな。……抑えにはベネディクトと噛まれている夏子(笑)がいるし、特にすることが無いのよな……。
 先程見ていたスティアがタイムに教えていた召喚術でも試してみるか……」
 ベルフラウは悩ましげに呟いた後、「良いか?」とベネディクトに聞いた。聞かれた側のベネディクトは「……受けて立とう」と呟く。
 エミリアは「ええ……」と酷く悲しげな声を漏らした。スティアがそんな声を聞いたのは自身が鮫だと思い込んでいる犬を邸で飼いたいと言ったとき以来だった。

 ――私の愛鮫が! ずきゅんどきゅん 泳ぎ出しー  (ふっふー)
 ずきゅんぶちゅん おいかけてーゆーくーよー こんなーサモンーはー はーじめてー (3 2 1 Fight!!) (歌唱:ベルフラウ)

「さあ、どうだ!」
 出なかった。エミリアは酷く安心していた。


 サメをどついては「え? 拙者知りませんよ」と微笑むルル家。サメ(1)から無事に抜け出した夏子は「なんでだよう! こんな素敵な女性が沢山いるのにどうしてこうなんだよう! バカバカ! ベネディクトー! 頼むから救い給えー!」
 女の子達ときゃっきゃウフフを求めていたのに。どうしてこんな事になったのかと呻いていた夏子が何とかサメから抜け出したことに確認してからルル家は素知らぬ顔をした。
「平和ですねえ~、あ、エミリア殿。お茶のおかわりを頂けますか?
 って! あぁ! また夏子殿が! 何やってるんですか! 拙者の苦労を何だと思ってるんですか! ちゃんと考えて齧られてくださいよ!」
「彼はサメに好かれるのですね」
 成程、と頷くエミリアがサメに慣れた事を感じてルル家は少しばかり悲しくなった。
 説得するスティアは「そろそろサメちゃんは大人しく従ってくれても良いんじゃないかな!?」とサメちゃんに向き在っているが――
「えぇ、夏子さんが好きだからだめって? そっかあ……」
「ス、スティアちゃん!? そこで、従っちゃダメだと思う!! リアちゃんが食べられちゃう……って何か聞こえる……?」
「え?」
 てるこを抱えて歩み寄ってくるスティアと焔。花壇に刺さっていたサメの中から聞こえる声にスティア、焔、タイムが耳を澄ませた。

 ――香草女……覚悟しとけよ……? 焔ァ! ちょうどいい機会だからここで諸悪の根源を断つ!

「……え、こわい」
 サメの中から聞こえる声のであった。リアは焔には並々ならぬ怒りを覚えていた。別の仕事ではわざわざ爆弾を押しつけてきた。善意に付け込んで道を塞いできた彼女にもう二度と善意を見せるものかと感じていたのだ。
「サメを俺が倒そう。何、一度慣れてみれば案外倒せるものだな? な、ポメ太郎」
 ――そんなわけ無いというようにてるこが「ぐるる」と唸った。サメへの執念を感じる犬である。
 激戦が行われる中でサメがぴょいぴょいしそうな召喚の儀式を行っていたベルフラウは悩ましげに「うーむ出ない……何が違うのだろうか……」と呟いたが……夏子の頭がサメのキッスで別の場所に行ってしまいそうである。
「すまん! 夏子! いくぞ、うおおおお!!!!!!」
「夏子さん!」
 恨み言を呟き続けるサメからずるりと全身血塗れのリアが現われて追いかけ回される焔。サメを撃破するために全員の攻撃が集まり、重なった攻撃の余波で見えた光に「キレイだな」と感じた自分に頭を抱えたエミリアはずるりと飛び出してきた夏子に気付いた。
「は、はは……」
「もう! 夏子さんったら……」
 倒れた夏子の側に座って、そっとその頭を膝へと乗せたタイムは微笑んだ。柔らかに微笑んだタイムに「いやぁ……上下全身イカれるかと思った……」と夏子は目を閉じた。
 全てのサメでの騒動をそっちのけに感動シーンが展開されている様子にルル家は「タイム殿が良いならこれで一件落着であります!」と締めくくったのだった。


 一時はどうなるかと思ったわ。でもいつかきっとサメの極意を掴んで記憶媒体を取り戻してみせる。わたしの戦いは始まったばかりなのだから――

 出演

 サメ(p3p001034)
 サメ(p3p001034)
 サメ(p3p001034)
 てるこ(p3p001034)

 エピローグナレーション
 タイム(p3p007854)

 エンディングテーマ
 ベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ(p3p007867)

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 シャークライト伝説!

 サメちゃん「あ、これ、お土産のパンドラです。どうぞどうぞ」

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