PandoraPartyProject

シナリオ詳細

欲望と、小さき命と

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●カムイグラの今
 豊穣郷、カムイグラ。
 先の<神逐>の戦いから、幾月。京(みやこ)、そして村々は確実に復興を遂げていた。様々な場所かかつての日常を取り戻し、いや、政が変わり、より良き日常を手に入れた事だろう。
 さて。復興のためには、多くの資源が必要だった。民たちの日常復帰を第一に貫いた帝により、貯蓄に近い資材も惜しげなく投下され続けた結果、復興自体は急ピッチで進められたが、必然、資材は目減りし、調達価格は高騰することになった。
 つまり、山林でも裸にすれば、それなりの一攫千金が狙えるようになった、とも言う。
 むろん、真っ当な『山林に生きる者たち』であれば、目先の欲に囚われ、未来を食いつぶすような真似はしない。
 ……が。欲に目のくらんだ者はいる。そして『山林に生きる者たち』が決して手を出さぬような場所は、そんな欲望に目をぎらつかせたもの達にとっては、格好の狩場であったのである……。

「……ん?」
 彼岸会 無量(p3p007169)とある依頼を終え、カムイグラの山村の茶屋にて休息をとっていた時。足元に、ボロボロの、一匹の小型動物が現れたことに気づいた。それはすねこすり、と言う妖で、小さな犬のような、猫のような、奇妙な姿をした妖だ。基本的に人に害を及ぼすことなく、時折いたずらで人の足元をするりと通り抜け、足元をくすぐる。そんな妖である。
 時折子供達に飼われてている姿を見かけるが、基本的には、彼らは山林の中で生活していた。はて、飼いすねこすりか、と無量があたりを見回そうとしたときに、一人の男の子がやってきて、そのすねこすりを抱きかかけ上げた。
 そして泣きそうな声で、こう言うのである。
「神使様。神使様。どうかこの子達をお救いください」
「……何がありましたか? 話してください」
 無量は真剣な表情で、子供の瞳を見つめた。子供は少しだけ目を伏せると、以下のように言ったのである。

 実は、この村のすぐ近く、『なかしの山』と呼ばれている山があるのですが、そこはこの子達のような、無害な妖たちが住む山なのです。僕たちの村は、代々この妖たちと約束事をして、『なかしの山』の恵みはとらず、妖のモノとし、彼らに困った事が有ったら守る。その代わり、あるきまった時期だけ、決まった量の山菜はキノコを、妖からもらう、というモノです。おかげで、秋や春、僕たちの村が暮らしていくには充分の食料を、妖たちからもらうことができました。
 最近よそから商人の男がやってきて、山は自分のモノだって言い出しました。もちろんそんなはずありません。あの山は、あやかしのもの。誰のものでもないのですから。
 でも、村の大人たちがいくら怒ったって、商人たちは聞いてくれません。ぎゃくに、用心棒をけしかけて、村の大人たちを殴ったりしました……それで、村の大人たちもすっかり手が出せなくなって、どうしようもなくなってしまったのです。
 商人たちは、用心棒と一緒に、山の木を斬ったり、山菜を奪ったりし始めました。山に住んでいた妖たちは、こうやっていじめられて、外に追い出されて……何匹も、行く所がなくなってしまった子達もいます。
 神使様、お願いです。あの商人たちを追い出してくれませんか?
 神使様にお願いするには、お金が必要だって知ってます。村の大人たちにお願いして、お金を払ってもらうように頼みます。
 ですから、どうか、お願いします。

 泣きそうな顔でそう告げる少年。無量は、少年の頭に優しく手を当て、撫でてやると、
「わかりました。少しだけ、私達で、そのことについて相談する時間をください。でも、必ず助けに来ます。信じてください」
 そう言って、安心させるように、微笑んで見せた。

「公的書類とか調べましたけど、あの山が売られたとかいう話はないですねー」
 京、ローレットの出張施設。
 畳の上に置かれたちゃぶ台、その上に乱雑に詰まれた資料の合間を飛びながら、『小さな守銭奴』ファーリナ(p3n000013) は言った。
「っていうか、元々所有者が居るような場所じゃないですからね。という事は国の管轄になるわけですが、お上から下々へ売られたって話もありません。100%、騙しかと」
「なるほど……」
 無量は口元に手をやり、深く唸った。カムイグラは今、資材となる木材などの価格が高騰している。その金を狙った、悪徳商人の暴走と言った所だろう。その欲望に、罪のない村。そして妖たちが巻き込まれているとなれば、とてもではないが見過ごせない。
「一応役所の方とも連絡とりましたが、私達(ローレット)に任せると。なんで、クソ商人どもは適当にボコって捕まえちゃってくださいな。あ、依頼料の方、ちゃんと村の人からご用意されてましたよ。不足分は役所から補助されましたが。なんで、お仕事として成立します」
「分かりました。では、ファーリナさん。依頼書の作成と手配、掲示をお願いします」
「はいはーい、おかまかせくーださい!」
 そして、悪徳商人討伐の依頼が、ローレットへと貼りだされることとなったのである。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 此方のシナリオは、彼岸会 無量(p3p007169)の調査(アフターアクション)から発生した依頼となります。

●成功条件
 悪徳商人の捕縛、或いは撃破。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●状況
 かつてから、妖たちの住む山として保護されてきた『なかしの山』。
 そこに現れた悪徳商人たちは、山の所有権を主張し、木々を伐採。
 住んでいる妖たちを痛めつけ、そして追い出そうとしています。
 この山を失えば、罪のない妖たちは生きていくことはできません。
 相手は悪党。遠慮はいりません。思いっきり、懲らしめてやってください。
 作戦決行時刻は昼。戦闘場所となるのは商人たちの作業場で、辺りは充分開けており、戦闘ペナルティとなるようなものは存在しません。

●エネミーデータ

 用心棒 ×5
  商人たちが雇った用心棒です。皆様ほどとは言いませんが、それなりに腕に覚えのある連中です。
  刀で武装した近接物理タイプが3体。術式による遠距離神秘攻撃タイプが2体、それぞれ存在します。
  近接タイプは出血系統のBSを、術式タイプは火炎系統のBSを、それぞれ使用してきます。

 現場作業員 ×6
  斧を持ち、木々を伐採する屈強な男たち。用心棒より戦力は劣りますが、その鍛えられた肉体から放たれる一撃に注意。
  前述したとおり、斧を持った物理攻撃を使用してきます。
  基本的に近距離攻撃を行いますが、斧を器用に投げつけて遠距離攻撃も行ってきます。
  BSは特使ってきませんが、シンプルに攻撃力は高めです。

 悪徳商人 ×1
  山を奪おうとたくらむ悪徳な商人です。戦闘能力は低いですが、様々な『号令・命令』で部下たちを鼓舞、回復します。
  刀を使った近接物理攻撃と、前述したとおり、神秘タイプの味方援護を行います。
  基本的に、「妖なんかどうなろうとどうでもいいだろうが!」と言うタイプの悪人です。同情の余地なし。
  ちなみに、彼の生死は問いません。捕縛してもいいですし、斬り捨てて己の罪の重さを思い知らせてやるのもいいです。

●おまけ
 山の妖たち ×たくさん
  山には妖たちが居ます。そのいずれも人に危害を与えない、小さな動物のようなもの達ばかりです。
  基本的に山の奥深くに隠れているため、皆さんが暴れても影響を与えるようなことはありません。
  一部は帰る場所を失い、途方に暮れているようなものもいるようです。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加と、プレイングをお待ちしております。

  • 欲望と、小さき命と完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年03月18日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

夢見 ルル家(p3p000016)
夢見大名
アクア・フィーリス(p3p006784)
妖怪奈落落とし
彼岸会 空観(p3p007169)
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
シガー・アッシュグレイ(p3p008560)
紫煙揺らし
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
希紗良(p3p008628)
鬼菱ノ姫
型破 命(p3p009483)
金剛不壊の華

リプレイ

●欲深き者
 ここは、『なかしの山』。此処に住む妖たちは、昔より近隣の村と共生関係を結び、共に助け合って暮らしてきた。だが……今は、他所よりやってきた者たちの手で、その協力関係も、生態も、ズタズタにされようとしている。
「……っ! なんて、ことを……!」
 『闇と炎』アクア・フィーリス(p3p006784)が、ぎり、と奥歯をかみしめながらそう言った。体に巻き起こる、黒い炎が、ぼう、とその勢いを増す。
「絶対、許さない……! あんな奴ら……ここで、消さなきゃ……!」
 アクアが呟くたびに、ぼう、ぼう、と漆黒の炎が、その行く先を求めるように燃え盛った。巻き起こる、マイナスの感情。
「落ち着いてください」
 『帰心人心』彼岸会 無量(p3p007169)が言った。気持ちはわかるが、とは言えなかった。恐らく、無量の知らないことが、アクアの胸中に渦巻いていただろうから。
「ひとまず……商人たちを消すかどうかはさておき。今すぐ止めなければならないことは事実です」
「だな。これ以上放置して、山を荒らされては良くない」
 アーマデル・アル・アマル(p3p008599)が言う。
「皆、準備は良いな? 一気に攻めるぞ」
 アーマデルの言葉に、仲間達は頷いた。隠れていた木陰から、八名の神使達が一斉に飛び出す。
「な、なんだ!?」
 商人がうろたえた声をあげるのへ、ずい、と前に出たのは『離れぬ意思』夢見 ルル家(p3p000016)だ。
「天知る地知る人が知る! 豊穣での狼藉はこの天香ルル家(予定)が許しませんよ!」
「天香だと!?」
 ざわ、と商人、そして作業員たちの間にどよめきが走った!
「ばかな、何でこんな所に天香の人間が来るんだ!?」
「畜生、俺たちの行動が京にバレたか?!」
 何やらルル家を、天香の人間だと勘違いしているようである。まぁ、別に否定してやる理由もないので、ルル家はノってみた。
「その通りです! 拙者は何でもお見通し! 何せ天香ルル家ですからね! 天香の! ルル家!」
 なんか妙に強調するようにルル家。
「こほん。キサは天香ではないのですが」
 と、『鬼菱ノ姫』希紗良(p3p008628)が咳ばらいを一つ。
「そなた達がこの山を荒らしていたでありますか? その所業、許されると思うておいでか?」
「許可は――」
「とっている、という嘘は通じないでありますよ。どうやら反省の色は見えないようでありますね」
「今なら役人に突き出すくらいで勘弁してあげるわ」
 『狐です』長月・イナリ(p3p008096)が言った。
「もちろん、相応に罰はくだるでしょうけれど。でも、痛い目見るよりましじゃない?」
「ちっ、しょうがねぇなぁ……」
 商人は舌打ち一つ、「おい」と号令をかけた。途端、作業員、そして用心棒たちが一斉に武器を構えて、此方をにらみつける。
「神使様方には申し訳ねぇが、数の上ではこっちが上だ、テメェらをまとめた片付けて、俺たちゃとんずらさせてもらうぜ」
「盗人猛々しいってのはこういう奴の事を言うのかね」
 『金剛不壊の華』型破 命(p3p009483)は呆れるように言った。
「まぁ、分かりやすくて助かるのは事実だが。とっ捕まえる前に、少し痛い目みせてやった方が、より深く反省するんだろうさ」
 すらり、と刃を抜き放つ命。合わせて仲間達も、戦闘態勢の構えについた。
「さて、俺達の目的は商人だ」
 『スモーキングエルフ』シガー・アッシュグレイ(p3p008560)が言った。
「ああいうのは、得てして部下を見捨てて逃げるものだ。しっかり押さえておかないといけないね」
「わかりました。私が彼を抑えます」
 無量が言う。
「さて、もう一度忠告しましょう。今ならばまだ穏便に済ます事も出来ますが……如何ですか?」
 犯した罪を、贖う事は出来る。自ら罪を認め、心から深く反省するのならば……だが、無量の言葉に返ってきたものは沈黙。そして明確な敵意と殺意の視線。
「残念です。ならば、我々が貴方の横暴を止めざるを得ない」
 じり、と両者が間合いを詰め始めた。交差する敵意。その剣呑な雰囲気に、木々の鳥たちが、その様子を遠巻きに見つめていた妖たちが、一斉に逃げ出す。
 同時に、無量は保護結界を展開した。これ以上、山を傷つけることは避けたかった。しかし、商人たちはそのような気持ちを知らず――そして知っても一笑にふすだろう――武器を振り上げて、神使たちに襲い掛かる! 神使たちもまた、武器を構え、突撃。そして衝突が起こった――。

●制裁の戦い
「お前たち自身がやったことだ。自分でも体験してもらうぞ」
 アーマデルが『蛇鞭剣ウヌクエルハイア』を振るう。直剣の刀身がばらけ、ワイヤーでつながった鞭状の刃へと変形。それを振ることによって発する剣戟の音が、英霊の未練が残した残響を奏でる。びょう、びょう、と奏でるは、時を刻むかのような規則的な音。それは聞くものに焦燥感を与え、その動きを鈍化させる。
「くそ、なんだ、この音は……!」
 作業員たちが呻く……其処へ追撃のように、黒い『影の手』が伸び、作業員の男、その足を鷲掴みにした! ぐり、と黒い手が作業員の男の足首を握りしめ、男が痛みと恐怖に悲鳴をあげる。
「ゆる、さない……! くるしめ、消えろ……!」
 アクアの憎悪に、黒い炎が揺らめく。その圧力に、男たちがたまらずたじろいだ。
「な、なんだあいつは!?」
 商人もたまらず悲鳴を上げ、
「おい、あいつだ! あいつを始末しろ!」
「おっと残念! それはこの天香の! ルル家が! 許しませんよ!」
 商人の号令に、しかしルル家の眼が光った。鴉天狗の眼、それを通して放たれる波動が、前に立っていた作業員の男たちに、物理的な圧力となって降り注ぐ。波動は作業員の男たちの身体を押さえつけ、その身を呪縛する!
「う、お? か、身体が! 動かせねぇ……!?」
 いかに屈強な男といえど、その目に見透かされてはその身の自由は効かなくなる。まるで身体に鉛が張り付いたように重くなり、腕を振るう事すら難しい。そこへ攻撃を仕掛けたのは、イナリだ。
「がああ、ぐううっ!」
 獣のように、イナリは吠えた。四つん這いで走るその姿は、まさに獣のように見えた。その身を疑似的な魔に変性させ、戦闘能力を向上させたその姿は、まさにイナリの魔を想像させる。
 イナリは口に木剣を咥えるとと、その刃に雷をまとわせ、作業員の男に斬りかかった。雷の斬撃が、作業員の四肢を斬って、激しい出血をもたらした。激痛に、作業員がもんどりうって倒れる。
「ぐ、あっ!?」
 倒れた作業員へと、イナリは飛び掛かった。獣が獲物を抑え込むように、イナリは作業員の男の身体を押さえつけ、喉部へとかみちぎらん勢いでその歯をむき出した。
「ねぇ! ねぇ! あなたの四肢を先端からどんどん切り取ってあげる! どれくらいで息絶えるか、試してみましょうよぉ!?」
 爛々と輝く獣の瞳が、作業員の顔を見据える。獣は笑った。
「両手両足、全部なくなっても呼吸してたら褒めてあげるわぁ!」
「ひ、あ、ひぃっ!?」
 作業員は痛みと恐怖に混乱すると、そのまま意識を失う。イナリはつまらなさそうに鼻を鳴らすと、その獣じみた動きで跳躍。次の獲物を探す。
「くそ、殺されるぞ! 死ぬ気で戦え!!」
 用心棒が悲鳴を上げながら、叫んだ。もちろん、神使達に積極的に相手を殺すつもりはないが、しかしそれはそれとして、攻撃のインパクトはすさまじい。
「なるほど、乗ってみるの良いかもしれませんでありますね」
 すぅ、と希紗良は息を吸い込むと、き、と冷たい目を商人たちへと向けた。
「加減は致しません。死にたい者だけかかってくるでありますよ」
 そう言って、ゆっくりと刀を中断に構える。陽光を受けて輝く刃が、いやおうなしに、交戦の結果を、商人たちに思わせる。
「アッシュ殿とまみえるのは何度目でありましょうな。並んで刀を振るえること、光栄でありますよ」
「久し振りに肩を並べての戦闘だからねぇ……格好良いところを見せられるよう努力しよう」
 シガーは、ふぅ、とタバコの煙を吐いた。その煙がふわ、と宙に舞うと、煙、そしてタバコの熱を代償に、熱砂の精霊刀がその手の中に顕現する。
「いざ!」
「参ろうとするか!」
 二人の刀士が、その刃を構え、一気に走り出した。希紗良は作業員へと向かい、疾走。一気に間合いへと潜りこむ。
「やぁっ!」
 気合一閃。振るわれた刃が、作業員の胸元を切り裂いた。ぎゃっ、と悲鳴を上げて、作業員が倒れ伏す。
 一方、シガーはじりじりと、別の作業員へと向けて間合いを詰めた。作業員の額に、脂汗がにじむ。
「くそ!」
 やけっぱちの悲鳴を上げて、作業員がその斧を振り回し、突貫。シガーは「ふっ」と息を強くはくと、力強く踏み込んだ。交差する、斧と精霊刀。宙に舞ったのは、斧の刃。持ち手のあたりから斬り捨てられたそれが、無残に宙を舞い、地に落着する。
「えっ」
 間抜けにも声をあげた作業員の男を、シガーの斬撃が切り裂いた。血は出ない。とっさに刃を翻した、みねうちの形。
「変わらず、鮮やかでありますね!」
 希紗良がにっこりと笑って言うのへ、シガーはひらひらと手を振った。
「いやいや、希紗良ちゃんに比べたらまだまだ」
 謙遜してみせるが、シガーの手際も鮮やかである。この二人の刀士を止められるものなど、きっとこの場の敵には居まい。
 一方、投げつけられた斧が宙を舞う。命はそれを手にした刃で打ち払った。ぎん、と手に重い衝撃が残り、弾かれた斧が地を滑り、止まる。
「さぁて、斧持ってるのはお前が最後か? 筋肉はあるとはいえ、戦い慣れてはいねぇな、やっぱり」
 神使たちは、難なく作業員たちを制圧できたと言えるだろう。筋力はあるが故に一撃の威力は高いが、そう何度も喰らうものではない。
 作業員は予備の斧を持ち出すと、吠え猛りながら命へ向けて走り出した。間合いに入ってから、大上段から斧を振り下ろす。命はつまらなさげにそれを見てから、僅かに体を反らした。
 体にあたる寸前で、斧が宙を斬っていく。勢いを殺せぬまま、作業員は斧を地へと突き刺す形となった。
「まぁ、ここまでだ」
 命は手にした刃を振り下ろす。斬撃が作業員の方から体を切り裂いて、そのまま意識も失わせた。
「くそ、やっぱり作業員なんぞ当てにならん!」
 圧されつつある事実に、商人が悲鳴をあげる。商人の号令に応じて、用心棒たちが前へと踏み出す――その隙をついて、無量が一気に、商人へと接近する。無量はゆっくりと、手にした妖刀を振りぬいた。これは、商人が防御に反応できる程度の速度である。商人は思惑通りに、護身用の刀で無量の妖刀を受け止める。そのまま足が止まった。
「人の後ろに隠れ、騙し、そそのかし、他者を傷つけ、笑い……貴方のような者を、人は外道というのではないのですか?」
「だ、黙れ! くそ! おい、お前等! 俺を助けろ!」
 商人が叫ぶのへ、用心棒たちが無量を狙う――だが、その動きを止めたのは、やはりルル家の『眼』であった!
「行かせませんよ! あなた達はここで縫い留めて――」
「ここで全員殺す!! 命乞いしたって絶対許さないからな!」
「おおっと!?」
 アクアの強い殺意、そして爆発的に燃え上がる黒い炎に、思わずたじろぐルル家。一方アクアはその手にかざした黒い結晶の槍を、用心棒へと向けた投げはなった。
「ぐあっ!」
 腕を貫く槍に、用心棒が転げ倒れる。
「私利私欲でしか物を考えられない奴に、生きる価値なんて無いんだよ!」
 その背に生み出された光の翼、黒い闇の炎と共にはためくそれが、イレギュラーズ達の負った出血を癒し、同時に用心棒たちを叩きつけた。
「後ろの奴は私がやるわ!」
「サポートしよう。響け、残響。英霊の嘆きよ」
 イナリが吠え、地を駆ける。アーマデルの振るう蛇剣がうなりをあげ、再び英霊の逡巡を奏でた。響き渡る英霊の声が、用心棒たちを縫い留める。イナリ、そして後に続いた命が、後方に隠れていた術式を用いる用心棒を狙う。
「おらあっ!」
 命の刃、そのみねが、用心棒の胸を強く叩いた。が、と肺の中の息を吐き出して、用心棒の息がつまる。
「あっはははは!」
 イナリは狂笑をあげながら跳躍。用心棒へと飛び掛かった。咥えた刃、灯る雷。斬撃が用心棒を打ち倒し、意識を失わせた。
「つまんない! もっと足掻いたら!?」
「それ以上やったら死んじまうんじゃないか?」
 命はぼやきつつ、窒息しつつある用心棒をぶん殴って昏倒させた。ひゅう、と息を吸い込みながら、そのまま意識を失う。
「退くと良いのですよ。あなた達の刃、キサには届きません」
 希紗良はゆっくりと刃を構える。彼我に実力差は一目瞭然――さりとて用心棒にもプライドと言うものはある。退きはしないだろう。
 用心棒が刃を構え、駆けた。交差する。一閃! 希紗良の刃が煌いた。ふらり。倒れたのは、用心棒の男である。
「刃に事の善悪を問うつもりはないのですが、しかしあなたの刃は曇っていたのです。出直してください」
 ちん、と刃を鞘に収める。
 一方、シガーもまた、用心棒と相対していた。精霊刀が、ゆっくりと構えられる。一瞬の緊張。先の動いたのは用心棒。中断から振るわれる刃。だが、それが宙を斬る『よりも速く』、精霊刀は振るわれていた。後の先。その形。敵の攻撃を誘発して行われるカウンター。
 とん、と、刀のみねが用心棒の首筋を叩く。ぐぅ、と用心棒は声をあげて、そのまま倒れた。
「やれやれ、かっこいい所見せられたかな?」
 シガーが懐からタバコを取り出して、火をつけた。紫煙がたなびく。
「……さて」
 無量はゆっくりと、刃を構え、商人と相対する。
「貴方達が奪っているのは自然からの恩恵だけではない……自然との信頼関係そのものです」
「何きれいごと言ってやがる!」
 商人は吠えた。
「この地を支配しているのは俺たちだ! 人間様のものだろうがよ!」
 無量はその美しい眉を、僅かにひそめた。
「そいつ、殺さないの?」
 アクアが言った。憎悪の黒い炎が、そこに燃えていた。
「殺した方がいい……そいつは絶対に、反省なんかしない」
 無量はわずかに、瞳を閉じた。すぅ、と息を吸い込み。刃を返す。
「いいえ。やはり、ここは法の手に……人の良心に委ねるべきです」
 ゆっくりと、刃を振り下ろした。みねが商人の首筋を叩き、商人の眼が白目をむく。そのまま、ばたり、と倒れた。
「……そう。そう、なら……わたし、は……何も……言わない……」
 気を落ちつけたのだろうか。アクアの炎が、僅かに揺らめいた。
 悪は確かに、今ここに潰えた。
 だが、彼らが奪ったものは、そう簡単には戻らない。
 無量は少しだけ、ため息をついた。
 きっと、本当の戦いは、ここから始まるのだろう、そう思った。

●明日に続く今
 さて、神使たちは商人一味をまとめて縛り上げ、村へと戻ってきた。道中も、アクアは何も言うことは無かった。もう興味を失ったのか、或いは、もはや自分が口を出すことは無いと考えたのか。ただゆらゆらと揺れる漆黒の炎が、アクアの感情を表しているように見えた。
「記録と照らし合わせれば、そいつが裁きを受けるべきなのは明白だ。そこは神使に所属する情報屋や己れ達が保証するぜ」
 命が言った。
「……これは、一応、言っておくんだが。アンタ達が手を汚す必要は無ぇよ、真っ当な判決が下る時にいい気分で呵々大笑すりゃいいじゃねえか」
「おっしゃる通りです……」
 村の男は静かにそう言うだけであった。元より、妖とも共存していた、穏やかな村の民である。さほど攻撃的ではなかったようだ。命は内心で安堵していた。そう何度も、人間の嫌な部分を見せられたくはない。
「所で……山の妖たちは、どうするのでありますか?」
 希紗良が言う。早いうちに商人たちを捕縛できたわけだが、それでも決して少なくない範囲の木々が、商人たちによって伐採されているのだ。当然、隅かを奪われた妖たちの数も、相応の数に上る。
「うーん、一応、近隣の村に協力を仰いで、山林に移住させることも考えた方がいいかもしれませんね!」
 ルル家が言う。
「すでにそう言う事が可能な地点はピックアップしております! 拙者、そういう方面には友達とコネがありますゆえ! しかし、これも村の皆さんや、妖の皆さん次第となるのですが」
 ルル家は、戦後のことも考えて、すでに避難先を探していたのだ。
「あとは、私達が治めてる領地で引き取るのも一つの手よね」
 ルル家と共に、傷ついた妖や、商人たちの手当をしてたイナリが言う。
「ただ、今いる場所からは離れちゃうから……皆の了解があってのことだけれど」
「……こういっては何だけど」
 シガーが言う。
「この村で、しっかりと預かる事は出来ないか? ほら、妖が困ったときは助ける……それが、この村の約束だったのだろう?」
「そう……そうですね。私たちは、助けられてばかりだ……今度は、助けなければ」
 村人たちが、次第に頷く。
「なら、住める場所……巣箱などを作るのを、手伝おう」
 アーマデルが少しだけ笑って、言った。
(妖にとっては、個としては違えと、人は同じ……私たちには、何も言う権利はない。そう思っていましたが)
 無量は胸中で呟いて、村の光景を見た。
 傷ついた妖を、村人たちは懸命に手当てしている。妖のために、村人たちも、神使たちも真剣に悩み、努力している。
(……すこし、悲観的だったかもしれません。失った自然は、すぐには戻らない。でも、きっと絆は……そう簡単には絶えないのですね)
 無量は少しだけ、微笑んだ。それから村人たちが妖の保護場を作るという提案を受けて、その作業を手伝う事にした。
 絆は絶えない。それが言葉の通じぬ者たちであったとしても。
 長らく繋ぎ続けてきたのならば、きっと。

成否

成功

MVP

アクア・フィーリス(p3p006784)
妖怪奈落落とし

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 失った山の自然は、すぐには戻りません。
 ですが、失われなかった絆があれば。きっと村人たちも、妖たちも、この後平穏に、幸せに生きてけるのでしょう。

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