PandoraPartyProject

シナリオ詳細

正義のための悪

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


(まずい……これはまずいぞ……)
 極楽院 ことほぎ(p3p002087)は密かに焦っていた。それこそ今飲んでいるものの味もわからないくらいには焦燥に駆られていた。
 何故? それは彼女の活動スタンスによるものである。
 彼女は専ら顔の見せられないような内容――『悪属性』と呼ばれる種別の依頼を主に受ける者である。故にイレギュラーズとして受けるのは名声ではなく悪名。社会の裏側で依頼されるような内容が多いのである。
 もちろんイレギュラーズの誰それであると公言するわけではないが、悪事ある場所に『それらしき影』があったなら。それが数を重ねたなら。確たる証拠がなくとも人々に悪名が広まっていくのは仕方のないことと言える。
 だがしかし。それが今ばかりは困るのだ。
(ローレット職員の視線が冷たい気がする……!)
 彼女が依頼を受ける口、ギルドローレット。そこの受付とか、情報屋とかがどことなく冷たい気がする。確証はないが、思ってしまえばその不安感のようなものは中々拭えず。
(このままだと……仕事が回って来なくなるかもしれねェ……!)
 ダン、とジョッキを置く。困る。ここで悪依頼を受けられなくなるのは困る。どうにかして――信用の回復を図らねば!!

 どうして彼女がここまで必死になるのか、少し深く語らせてもらおう。まずローレット全体として、悪属性と呼ばれる依頼は善属性に比べ遥かに少ない。ここでことほぎが受けられる、というか受けて意味のある依頼が絞られる。
 そして彼女自身のギフト。彼女は決して悪属性依頼ばかりをこなしているわけではない。それでも彼女に対しての名声はとんと聞かないだろう。それこそが彼女自身のギフト――『悪しき魔女の噂』である。
 多少の善行程度は塗りつぶしてしまう程の悪名高さは、余計にことほぎという個人の印象を悪くしかねない。悪名という実績があるから尚更。その結果、依頼受注口であるローレットでさえも依頼を回してくれなくなってしまったなら、例え千里を走る魔女の噂であっても掻き消えていくことだろう。

 故に。ことほぎは押しきれそうな情報屋へ突撃したのである。

「僕ですか」
「アンタ、悪属性依頼も回してくれんだろ?」
 ブラウ(p3n000090)はそうですけど、と言いよどむ。彼もローレット来て暫しの後、悪属性依頼を受け持ったと聞いたことがあったのだ。だがこの様子だと数をこなしているかどうかは怪しい。
「非道なヤツを持ってこいって言ってるわけじゃねェよ。そうだな……わざと悪役になるような依頼とか」
 ここで普段受けるような悪依頼を受けても心象の回復は望めない。何かの役に立つような悪依頼が必要なのである。
「悪役を買って出る依頼ですか……うーん……あっ」
 ブラウはこれから出す予定である依頼書をパラパラとめくり、そのひとつへ目を留める。ことほぎの所望する依頼が果たしてあるのかと一瞬思いはしたが――ある時はあるものだ。
「ことほぎさん! こちらはどうですか?」
「ん、どれ」
 差し出された依頼書を読み、ことほぎは口角を吊り上げる。いいもんあるじゃねえか、と。



 依頼はとある幻想貴族の男からであった。初老とも呼ぶような年齢の彼は、少し前に息子へ爵位を譲って隠居生活を楽しんでいた――と言いたかったのだが。
『息子にはこれと言った実績がない。当主としては申し分ないのだが……』
 これまで非常事態なども起こらず、領地の整備も恙なく済まされている。息子も領地整備には携わっていたのだが、如何せん大きいことをしないと人々の目には留まりにくいものである。
 それ故に前当主である男は1人で、秘密裏に、ローレットへ依頼を出した。

 ――賊に扮して領地を襲って欲しいのだ、と。

GMコメント

●成功条件
 悪役に扮して撃退されること

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。不明点もあります。

●状況
 皆さんは『賊』に扮して領地を襲ってください。ある程度暴れたところで当主率いる兵たちがやってきます。
 そこで適当に交戦し、民衆が『その力で賊を撃退した』と思うような撤退をしてください。
 今回は賊のフリのため、死者を出すことは望ましくないでしょう。その辺りも手加減が見えてしまわないような工夫があると良いかもしれません。

●エネミー
・グラン
 依頼人の息子であり、現在の当主です。子爵です。
 穏やかで円滑に物事を進めて行く才能があり、武官よりは文官向き。しかし鍛錬も怠っていないためそれなりに戦えるようです。
 片手剣と盾を装備し、複数の兵と向かってきます。攻撃は控えめですが統率力があります。

立て直し:乱れた体勢を整える号令を放ちます。【BS回復80】
統率:指示を与えることで士気を高めます。【自分中心のレンジ2内にいる味方の能力UP】

・子爵私兵たち×20
 グランに付き従う私兵たちです。彼らにも思うところはあるようですが、今のところはグランに付き従っています。
 グランと同じように片手剣と盾を装備している者、或いは槍を装備している者がいます。よって至近~中距離を得意としますが、数の利で乱戦になる可能性は高いです。
 剣持ちは耐久力のあるタンク。槍持ちは攻撃力と命中力の高いアタッカーです。
 彼らはグランよりも近くで皆さんと戦うことになるため、下手な演技や手抜きは見抜かれる可能性があります。

気迫:その気迫は逃げられないものです。【怒り】【乱れ】
鎧貫:鋭い一突きは鎧をも砕きます。【防無】【必殺】【ショック】【流血】


●フィールド
 子爵領です。広く長閑で、特に困ったことも起きていません。
 領地経営は良い方らしく、前当主(依頼人)は皆に好かれています。逆に当主となったばかりの息子グランはまだ見定めの時期といった様子です。
 領地にある町は比較的栄えており、子爵邸も存在しています。ここへ攻め立て、入口付近で暴れまわったりするといい感じに人々が子爵邸へ助けを求めに行くでしょう。

●注意事項
 この依頼は『悪属性依頼』です。
 成功した場合、『幻想』における名声がマイナスされます。
 又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。

●ご挨拶
 ご指名ありがとうございます。愁です。
 彼らに実力がないわけではありません。実践の機会がなかっただけで。上手く立ててあげましょう。
 それではどうぞ、よろしくお願い致します。

  • 正義のための悪完了
  • GM名
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年03月05日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
極楽院 ことほぎ(p3p002087)
悪しき魔女
※参加確定済み※
ピリム・リオト・エーディ(p3p007348)
復讐者
メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
虚無堕ち魔法少女
此平 扇(p3p008430)
糸無紙鳶
鏡(p3p008705)
レべリオ(p3p009385)
特異運命座標

リプレイ


 ぼちぼち依頼のあった子爵領か。イレギュラーズたちはそんなことを思いながらとある町目指して歩を進めていた。天気も良く、どこまでも平穏長閑な風景が広がっている。
(この場所で悪党に扮して暴れる、とは……)
 気乗りのしない依頼だ、と『特異運命座標』レべリオ(p3p009385)は仮面の下で小さく眉を顰めた。どちらかと言えばレベリオはそんな悪党たちと敵対する側。理不尽から人々を守る立場で在りたい筈の自身が理不尽を行使する側になるとは――さりとて、この役目を放棄するわけにもいかない。依頼として受けてしまったのだから。
「要するに新領主とその私兵の実績作りってえこった。良いんじゃねえの?」
 『盗賊ゴブリン』キドー(p3p000244)は顎をなぞりながら依頼内容を思い出す。機会を与えてやろうと言う親心と、それだけにとどまらない貴族たる者の思想もありそうだが、キドーにとっては『知ったこっちゃねえ』である。
 ともあれ待っているだけでお誂え向きの展開がやってくるはずもなく、そして領民を無責任な危険へ曝すわけにもいくまい。貴族の中には領民の命を軽く考える者も少なくはないが、この領はまっとうらしい。
「親が子を想うのは当たり前の事さ。とびっきりのイカれた悪党を演じて――見事に倒されてやろうぜ」
 相棒たる二丁の拳銃に触れた『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)はにっと笑う。準備は万端、精々『彼ら』が早く気づけるよう盛大に暴れてやろうではないか。
(ま、元々アウトローだから自然とそれらしく振舞えるだろ)
 元の世界じゃ荒事も日常茶飯事、ヤのつく自由業の家育ちである。『糸無紙鳶』此平 扇(p3p008430)はかつてを思い出し。レベリオはこれまで相対した悪党たちのやり口や台詞を思い出す。死者を出さない程度にそれらしく見せる事が大切だ。
「もう窓口のねーちゃんに白い目で見られたくねーだわ……皆、頼むぜマジで!」
 些か情けない声を出す『悪しき魔女』極楽院 ことほぎ(p3p002087)は既に賊らしい、汚れた服に身を包んでいる。とはいえ貧しい者とさほどの代わりもないだろう。あとは近づいたら身元がバレないよう顔を隠せばよい。
「ことほぎたそにはかなりお世話になってますからねー」
 任せてください、と『《戦車(チャリオット)》』ピリム・リオト・エーディ(p3p007348)。世話になっている相手が困っているとなれば、協力しないわけもなく。
(……しかし、フリですかー)
 ううむ、とピリムは小さく唸った。普段から襲えと言われたならば片っ端から、それこそ無罪の民であろうと始末する彼女である。しかし殺生するなと言われるとどうもボロを出してしまいそうで。だからこそ思いついたのは『不運による失敗』であった。
 何をしても失敗するならば、例え本気で殺そうとしても殺せない。普段では憎むべき運要素もこんな時は役立つのである。
 全ては依頼の為。ドジっ子属性が付くとしても――そう、覚悟の上だ。
「本物の討伐に行ってしくじった日にゃ……とんだ赤っ恥。面目丸つぶれだもんな! ぎゃはは!!」
「そうならないようにして頂くためにも、本日は頑張ってもらいましょうー」
 爆笑するキドー。ピリムは淡々と返し、ジェイクは前方に街を見つける。そろそろだという言葉に一同はすっと表情を引き締め、ことほぎは顔を隠した。
「ちゃんとできたらご褒美を上げるわ」
 『汚い魔法少女』メリー・フローラ・アベル(p3p007440)は傍らのペット――虎へ語り掛ける。今日は調教の仕上げもできそうだし、新技も試せそうだ。
「さあて、面白くなってきやがった」
 ジェイクが笑みを浮かべる、それに被るようにして門をくぐったことほぎは『賊』として言い放つ。
「おうおう平和ボケしてそーな手頃な獲物じゃねーか」
 まだ町民たちは目に見えた怯えを見せない。けれど一同の怪しい身なりとその言葉に察しの良い者は動き出すだろう。

「――野郎ども、仕事の時間だ!」

 ことほぎの号令に一同は動き出す。ピリムはでんせつのまけんを手に、近い場所にいた女へ肉薄した。
「おらー脚をよこすんですよー」
 笑みが浮かぶ。舌なめずりする。嗚呼、依頼中であることが惜しい――なんて素敵な脚だろう!
「金を出しな!」
 レベリオは賊らしく店舗の扉を蹴破り店員と客を混乱の渦へ叩き落す。多少の抵抗もなんのその、ノーギルティで黙らせたレベリオは棚を蹴るなどして未だ残る客たちを挑発しながらレジへ向かう。
「ほら、金目のもの全部おいていきな。命だけは助けてやるよ」
 逃げそびれた男を追い詰めた扇はナックルナイフを手に目を細める。なぁに、反抗する威勢の良い奴には圧倒的武力で教えてやれば良いのだ。
「おらおらおらァ!!」
 片っ端から民家を襲うジェイクはそこにいた女の腰を抱き寄せ、金目の物を手に取っていく。ハマってしまうつもりは毛頭ないけれど、普段できない事ゆえの高揚感が彼を包んでいた。若い女はやはり良い――なんて、最愛の妻を持つ身ではつゆとも思わないが。
「金も女も俺様がいただくぜ! ヒャッハー!」
「おい、できりゃあ人間は傷つけんなよ? 商品価値が下がるからなァ」
 ことほぎはそう告げながらも威嚇するように壁をぶち壊す。多少の抵抗や反発はあれど、イレギュラーズの敵ではない。
「手足の一本、二本は……まあ構わねえか! 今は何だって売れるさ」
 気絶した領民へ手当てを施すキドーは嗤う。これから何が起こるかもわからないが世間は奴隷ブームである。生きているならば多少の欠損があったとて買い手はいるに決まっている。
「ぐっ……なんだ、これは……!」
 突然呻き苦しみだした男の前へメリーは立ちはだかり、金目の物を出すよう要求する。出さなければ再び死にたくなるほどの――しかし死ぬことはできない――痛みを与えるだけだと告げれば男は震えながらも貨幣の入った袋を投げ寄越した。
(誰も殺さない、何も奪わないだと不自然だものね)
 残念ながら、非常に残念ながら殺しはできないけれど。その分略奪では精一杯演技をさせてもらおう。メリーは連れてきていたペットをけしかけ、唸り声を上げさせて民衆を脅す。

「――来たみてェだな」

 真っ先に気付いたのは感覚の優れるジェイク。その耳で足音を、目で姿を捉える。同時にそちらから声が飛んできた。
「この街でこれ以上の狼藉はできないものと思え!!」
 兵たちは声と共に二手へ別れる。町民の避難誘導班とこちらの対処班のようだ。ジェイクは捕らえていた女を突き放し、銃口を兵士たちへ向ける。メリーの虎は尻尾を丸め、怯えた風に一同の後方へと逃げて行った。
(あとで干し肉ね)
 なんてメリーが思ったのも束の間、ジェイクの発砲音が辺りへ鋭く響く。
「ヒャッハー! どいつもこいつも皆殺しだ!」
 放たれたのは銃弾、ではなく投網だ。まんまとかかったそこへことほぎの歌うディスペラー・ブルーが兵士たちを詰めたい呪いに引き摺り込んでいく。
「――狼狽えるな!」
 そこへ果敢に声を上げる青年こそがこの領地の新領主であり依頼人の息子たるグランだろう。若く見えるが馬鹿ではなさそうだ。
 彼の指揮に体勢を立て直した彼らへキドーは妖精の霧を起こす。レベリオは前衛へ駆け込むと、メリーの放った拷術で苦しむ兵士たちをあざ笑った。
「やれるものならやってみろ!」
 崩されないと言わんばかりに防御の構えを取ったレベリオ、そして未だ頭の霧が晴れない者たちはキドーへと向かっていく。その勢いに扇は何かを落とし、一瞬そちらへ視線を向けた。
 つい今しがた奪い取った小袋――それを拾う余裕は、なさそうだ。
(ぼちぼち頃合いですねぇ)
 似たりと笑みを浮かべた鏡(p3p008705)の顔が変化する。否、身につけるものはそのままに姿形そのものが変わっていく。それはどこにでもいそうな平凡な――兵士の1人に瓜二つな姿。よくよく見ればそれは《映し鏡》のように反転しているけれども。
「っ、お前は!?」
 乱戦の最中に注意など、誰しもできるはずがない。
 味方と同じ顔をした存在が自分たちと戦い始めた事で兵士たちに混乱と動揺が広がる。そこへ肉薄した扇は足払いをかけるとその拳で殴りつけた。
(この程度なら死なないでしょ)
 むしろこの程度で死んでしまうような軟弱なら――そんな人員をグランが連れてきたならば、依頼人にとって息子は見込み違いという事に他ならない。
 しかし。
「げ、すぐに立て直しやがった?!」
 ことほぎはすぐさま立ち向かってきた兵士たちにぎょっとする。流石は意思疎通の取れる人間、ではなく。これは確かに『彼』の力であろう。
 ブロッキングバッシュで仕掛けるレベリオ。キドーも瞬発力ある攻撃で敵の鎧にヒビを入れる。たたらを踏みながらも立ち直り、切りかかってきた兵士にキドーは唸り声を上げた。
「おいおい、聞いてねえよ! この街の私兵はこんなに固えのか!? 平和ボケしてると思ったのによお!!」
「そこらの賊に遅れをとると思うな!」
 吠える敵、攻勢の圧。それらに押されながらキドーは笑みを浮かべる。
 そうだ、そのまま勢いづけ。領民へ自身らを誇示するんだ。まあ――お縄につく気はさらさらないけれどな!

「平和ボケしてると踏んだが、中々わかってる指揮官がいるみてェだな」
 ことほぎは領主グランを睨みつける。向こうもことほぎの、只者ではない視線に気づいたか真っ向から睨み返してきた。しかしこの乱戦でいつまでもそれが続くわけもなく、2人は攻勢に打って出るなり体制の立て直しを図るなりと動く。
「人の脚が沢山あって大変結構なことですねー」
 にたにたにた。脚に笑み浮かべるピリムはそれを狩らんと武器を向ける。超えられない壁(FB)もなんのその、諦めることなく突撃して行った。入り乱れた戦いで"ピリムが外したのか""自身が避けたのか"など定かではないだろう。しかも彼女自身の放つ、本気の殺意を感じ取ればさらに。
 その中で鏡も翻弄する中、鎧を銃弾が掠める高い音を響かせる。鏡は視線を走らせ、ふっと小さく口端を上げた。
(伝えてませんしねぇ)
 そう、鏡のこれは独断行動。イレギュラーズの誰もが知らないことだ。故に先ほども一瞬だけ緊張が高まったが、兵士側の動揺も見て本格的な攻撃は受けていなかった。
 いや――すでにイレギュラーズは気づいているかもしれない。鏡自身がおらず、正体不明の人物が1人紛れているとあれば。ならば先程のジェイクが放った威嚇射撃も『分かった上での行動』である可能性は十分だ。
 デッドエンドワンを兵士の武器向けて放つジェイク。その後方からメリーは拷術をひたすら打ち込んでいく。バックアップを受けたながら扇はソニックエッジを叩き込んだ。
(領主は――)
 視線を巡らせる扇は敵後方にいる領主を視認する。こちらが統率を乱そうとする動きに合わせて立て直しやすい位置へ動いたか。
「――と、そろそろでしたかぁ」
 唐突にどろりと顔が、体が崩れていく。現れた鏡に動揺する兵士たちは、
「もう斬りましたよぉ?」
 言葉の意味をワンテンポ遅れて理解する。……盾がすっぱりと斬れ落ちたから。
 ことほぎは攻勢から守勢へ、回復を熱くすることで継戦力を上げていく。レベリオもまた強烈な回復を見せることで『傷を受けている』というイメージを上げていく。
 さあ――ぼちぼちか。
「この私の攻撃を全て躱し、全ての攻撃を私に当てるとは……恐るべき兵達ですねー」
 ピリムは口惜しそうに告げる。その体はすっかりボロボロだ。その傍らを兵士が抜けていき、後方へ戦闘を仕掛けていく。ジェイクは舌打ちひとつして更に後方へ。
「ここまでかしらね」
 メリーまで届きそうなその勢いに彼女は呟き、奪ったものを投げ捨てて踵を返した。
「なんだい、ひよっこ領主は大したことないって話だったじゃないか!」
「ちっ、こんな指揮官がいるなんて聞いてねェぞ!」
 扇とことほぎ、キドーもまた踵を返していく。追いかけようとする兵士へ鏡は体を隠しながら刀を振り下ろし――硬質な音を立てて刀が折れる。
「おやぁ、困りましたね」
 鏡は笑みを絶やさず刀身の途中から無くなったそれを見下ろす。これでは戦えないだろう。まさに裸一貫である。
「……逃げさせて貰います、それでは失礼っ」
 ばっと踵を返す鏡。途中の明らかに仲間達が荒らした民間へ飛び込み、それらしい布を掴み取って窓を割り破る。
(これなら良さそうですねぇ)
 布を体へ巻き付け、一糸纏わぬ体を隠し。追手をも振り切って鏡は逃げた。

 ――グランの功績が認められ、更に領地の発展へ繋がるのは、これから暫しのことである。
 そしてことほぎを初めとしたこの依頼を受けたメンバーへ、ローレット受付の視線が若干和らいだとかいないとか。

成否

成功

MVP

極楽院 ことほぎ(p3p002087)
悪しき魔女

状態異常

キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)[重傷]
社長!
レべリオ(p3p009385)[重傷]
特異運命座標

あとがき

 お疲れさまでした、イレギュラーズ。
 あちらは功名を上げ、こちらは心象回復。Win-WInですね。

 それではまたのご縁をお待ちしております。

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