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シナリオ詳細

<グラオ・クローネ2021>想いをひとつ摘まんで

完了

参加者 : 25 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 絶望が静寂に変わって、どれだけ時が経っただろう。
 絶望を打ち払った特異運命座標が渡った地、豊穣。幻想のどの国とも違うその文化は珍しく、特異運命座標と共に海を越えた者たちの中には、文化を学び国へ持って帰ったものもいた。
 その中に「つまみ細工」というものがある。
 布を細かく切り、端を張り合わせ、つまんで丸くしたり尖らせたりする。それらの破片を組み合わせて一つの細工を作るという独特の手法だ。
 それらの技術はまず、海洋にもたらされた。
 そして今、時期はくしくもグラオ・クローネ。つまり――


「其の技術をお菓子に転用できないか、と考えた人がいたんだね」
 グレモリー・グレモリー(p3n000074)は皆の前に皿を一つ置きながら、うん、と頷いた。其れは一見すると、カムイグラに売っていそうな細工に見える。しかし触ってはいけない、とグレモリーは言う。これはお菓子だからね、と。
「柔らかな生地――この作り方もカムイグラ独特のものなんだそうだけど、其れに色を混ぜて、つまみ細工のように貼ったり摘まんだり組み合わせたりして、一つのお菓子を作るんだ。開店前に君たちに見に来て欲しいんだって」
 君たちがいなければ、店主はこの文化と出会えなかったんだから。
 そういってグレモリーはつまみ菓子を一かけらつまみ出すと、ぱくりと食べてしまった。
「既製品を売っているのは勿論、君たちへの体験プランも用意してあるらしい。作れるのは簡単なものだと花だとか。通常の細工ものと違って持ち歩けない菓子だからこそ、作れる何かもあるだろうね」
 グラオ・クローネにぴったりだ。
 ぼんやりと呟いて、グレモリーはまた一かけら菓子を口に入れた。

GMコメント

 こんにちは、奇古譚です。
 今年もグラオ・クローネの時期が来ました。
 今回はちょっと和…豊穣テイストなお菓子のご案内です。


●目的
 “つまみ菓子”を作ろう

●立地
 海洋、海際にある一軒家のような店です。
 テラス席では海風に吹かれながら食事をすることが出来ます。

●出来ること
1.つまみ菓子を作る
 練り菓子の素材を使ってつまみ菓子を作ります。
 色の材料(液体です)と生地が配られるので、色々試してみると良いでしょう。
 つまみ用のピンセットなどは店が用意してくれますが、何か発想のために道具を持ち込んでもOKです。
 その場で食べる事も、箱に入れて持ち帰る事も出来ます。

2.既製品を買う
 既に作られたつまみ菓子を見て回ることが出来ます。
 花と星をテーマにした菓子が多いです。花は特に種類が多く、目で見て楽しむことが出来るでしょう。


●NPC
 グレモリーがのんびりすごしています。
 他の国のNPCも頼めば来てくれるかもしれません。

●注意事項
 迷子・描写漏れ防止のため、同行者様がいればその方のお名前(ID)、或いは判るように合言葉などを添えて下さい。
 また、やりたいことは一つに絞って頂いた方が描写量は多くなります。


 イベントシナリオではアドリブ控えめとなります。
 皆さまが気持ちよく過ごせるよう、マナーを守ってイベントを楽しみましょう。
 では、いってらっしゃい。

  • <グラオ・クローネ2021>想いをひとつ摘まんで完了
  • GM名奇古譚
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2021年03月04日 22時05分
  • 参加人数25/30人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 25 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(25人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
リリー・シャルラハ(p3p000955)
自在の名手
古木・文(p3p001262)
文具屋
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
アルテミア・フィルティス(p3p001981)
銀青の戦乙女
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
ミニュイ・ラ・シュエット(p3p002537)
救いの翼
ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)
キールで乾杯
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
メイメイ・ルー(p3p004460)
祈りの守護者
すずな(p3p005307)
信ず刄
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
ネーヴェ(p3p007199)
星に想いを
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ
ベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ(p3p007867)
雷神
冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)
秋縛
耀 澄恋(p3p009412)
六道の底からあなたを想う
イズマ・トーティス(p3p009471)
誠の鋼に至る者
白妙姫(p3p009627)
慈鬼

サポートNPC一覧(1人)

グレモリー・グレモリー(p3n000074)

リプレイ


「ほー、こいつは見事」
 縁はケースの中に並ぶ様々なつまみ菓子を眺め、感嘆の息を吐いた。
 細かいつまみが組み合わさって、様々な花模様を作り上げている。カムイグラの祭りで見た時も思わず足を止めてしまう程だったけれど、まさか菓子に使うとは。
「花より団子、なんて言葉もあるが――」
 花も食える場合はなんて言うのかねぇ。花と団子?
 縁は花のつまみ菓子を覗き込む。野にある花は「其処にあるから美しい」のであって、摘んでしまえば魅力を損なうものだが、この花なら――
「……」
 どうかされましたか、と店員が問う。何でもねぇよ、と苦笑して、縁は一凛の花菓子を指差した。こいつを一つくれるかい? そう、其の、真っ赤な椿の花。脳裏に浮かんだ姿に苦笑する。食べられるかどうかは判らない。


 文はつまみ細工の花に見入っていた。どれも綺麗だ。縁だけ赤く染めた白い生地を何重にも重ねた菊の花や、薄紫でシンプルに、けれど其の端まで美しく仕上げられた菫の花。見た目は彼の世界でいう和菓子にも似ている。
「綺麗だよね」
 話しかけてきたグレモリーに、そうだね、と頷く文。
「でも、食べてしまうのが少し勿体ないような気も……」
「え?」
「え」
 グレモリーは思いっきり購入した花菓子を食べていた。……。まあ、お菓子だしね。食べてなんぼだよね。
 文は気を取り直し、土産を買って帰ろうと花を見繕い始める。どれも綺麗で可愛い。選ばなければならないのが心苦しいくらいだ。選ぶだけでも苦しいのに、果たして買って帰った花を食べられるのか?


 ヴァレーリヤとマリアは、チョコづくりの帰り道。うまく作れてよかったと互いに微笑み合いながら、このお店に入ってみようとつまみ菓子の店へ。
 中には様々な花がいっぱい。傍目に見れば花屋にも思えるが、これが全て菓子なのだという。
「本当に咲いているみたい……」
 どうやって作っているのかしら。後でちょっぴり聞いてみようかなあ。
「お店のお菓子って、こういうのに限らずとっても凝ってるものが多いよね。私もこんな風に作れたらなぁ……あ、でも私が作るときは、愛情はたくさん込めてあるよ?」
 冗談めいて笑うマリアに、ヴァレーリヤは私も負けてはいませんわと笑みを返す。
「お花や星のモチーフが多いね」
「そうですわね。花で有名な場所なのかしら? ――あ! 私はこのヒマワリにしようかなあ。マリィはどれがよろしくて?」
 プレゼントして差し上げますわ! と笑み掛ける彼女に、マリアは心の裡で呟く。
 ――君と一緒ならどんなのでも好き。でも、どんな花だって、君の笑顔には勝てやしない。



 ご存じかもしれないが、ゴリョウの趣味は料理である。
 つまみ菓子という響きは、そんな彼の興味を引くに足るものであった。創作意欲が湧いてくる。何より、今後の料理作り――レイアウトの参考になりそうだ。
 料理は――味は勿論だが――見た目も重要なファクターだしな!
 という訳で、彼が作り始めたのは……なんと人魚! ノリ……誰とは言わないが、薄く薄く、限界まで薄くした白い鱗を重ねて尾を作っていく。菓子職人顔負けの腕前である。
 鱗を作りながら、人魚らしい痩躯を成型するのも忘れない。斯くして、半透明とも思える美しい人魚の菓子が出来上がった訳だが……そこでゴリョウは気付いた。
 これを本人に渡したら、共食いになるのでは……と。


 メイメイはつまみ細工を前に、何度か頷いた。
 元となった細工の作り方は豊穣で少し教わったけれど、お菓子を摘まむのは初めてだ。何をモチーフにしよう、と暫し思案して。筆はありますか、と店員に尋ねた。
 メイメイが作るのは濃桃の薔薇と蒼い鳥。まずはイメージ図を描きだして、其れに沿って店員に教わりながら摘まんでいく。丸めて、少し取って、薄くして、先を摘まむ。そうすると薔薇の花弁が出来る。のだけれど、これがなかなか難しい。
 でも、喜んで食べて欲しい。だからメイメイは頑張った。幾枚もの花弁が重なった薔薇の花と青い鳥が幾つか。きれいな鳥を薔薇の傍に添えて、失敗したものははメイメイの口の中。――うん、美味しい。
 さて、この薔薇と鳥は誰の手元へ届くのだろう。


 ネーヴェは作業に没頭する面々をきょろきょろと見回した。皆、どんなものを作っているのだろう。花? 星? 其れとも別の何かだろうか。
 自分も、と紅の色料を手に取る。ほんの少しだけ生地に混ぜ、桃色に練っていく。作りたいのは桜の花弁。巧く出来ても、出来なくても、これがわたくしの作品だとおまじないのように唱えながら。
 小さく千切り、薄く薄くする。怖くて時折薄くしきれなかったけれど、色は思うように出来たのではないかと思う。
 黒い皿に並べてみれば、成る程、黒を透かすほど薄く出来た花弁は桜と呼べるかも知れない。ネーヴェは其れをじっくり眺めて記憶に刻み込んだ後、一枚を取るとぱくりと口の中へ。ぱくり、ぱくり。終いには全部食べてしまって。
 次は誰かへのプレゼントを作りたい。そう出来たら、きっととても素敵だから。


 イズマは機械仕掛けの右手に手袋を付けて、生地に向き合う。でも、なるべく作業は左手で。生地をいくつかに分けて、色料を混ぜていく。青、黄色、紫、赤。この柔らかい生地は何で出来ているんだろうと思いながら、ピンセットで繊細に摘まんでいく。
 最初こそ慣れないゆえに不格好だったけれど、慣れてくると花弁らしい形になって来る。其れが楽しくなって、重ねてみたり、並べてみたり。イズマの顔には自然と笑顔が浮かんでいた。
 出来上がったのは様々な花の菓子。名もない花を一つ手に取って、ぱくりと一口食べてみる。控えめな甘さが口に広がり、成る程、とイズマは頷いた。
 見て楽しい、食べて楽しい。そういう訳だ。


 白妙姫はふむ? と首を傾げた。
「グラオ・クローネなる祭りは菓子を贈り合うものと聞いているが。チョコではないのか?」
 チョコではないらしい。だが面白そうだ。ならば早速、と白妙姫は出された生地を練り始める。どうせ行く先は己の腹の中なのだ。どうせなら色んなものを作ってみよう!
 緑を混ぜて、平たくした生地を丸めて一番上を尖らせ、竹。
 茶色で適当に枝を作り、尖った細い緑を幾つも差し込み、松。
 薄く薄くした桃色の花弁を五枚重ねて、桜。
 濃くした赤をまあるく丸めてゆったり重ねる。何枚も重ねれば――ほら、椿だ。見事なものだ。
 時折休憩を挟みながらも作り上げた菓子たちを見れば、まあ、雅な事。持ち帰って茶請けにするか、と白妙姫は満足げに笑った。


「型を使わず、自分たちの手で……凄いな。頑張ろう」
「ああ。芸術的なものとまではいかなくても、良い物が出来るといいな」
 リゲルとポテトは二人、つまみ菓子を作っていく。
 ポテトは星の形を作る。中は梅餡を入れてすっきりした味に。青に染めた白あんで包んで、ちょっと肩に頼って星の形に成型する。
 其れからおまけに白い羊羹で作った星を乗せ、蒼と黒を混ぜた着色料で、こう、ちょちょいと……そうすれば、ほら! リゲルのような星空の出来上がり!
 一方リゲルも集中していた。土台の葉は鮮やかな緑、其れから妻をイメージした愛らしいかぼちゃの花。そして娘のイメージとして紫の桔梗。傍には雪兎も置いて、クコの実を目にしよう。
「わあ……リゲルの其れ、可愛いな」
「ポテトの作ったものも綺麗じゃないか。これは……食べるのが勿体ないな。ずっと飾っていたい」
「ふふ……美味しい状態で食べような」


 女王は首を傾げていた。
 此処からどうつまんで組み合わせれば、隣のミニュイになるかしら? 彼女そっくりのお菓子を作りたいのだけど……あ! ギフトで型を作ればいいのだわ! これである程度難易度は下がるわね。
 一方ミニュイも悩んでいた。
 これはスーパー器用さと几帳面さが要求されそうだ。余り自信のある分野ではない。そうだ、無難に花を作ろう。アデニウム……だったか。昔ラサで見た眩い花は、そんな名前だった気がする。
 二人は黙々と作業を続ける。そうして少しの後、声を上げて息を吐いたのは同時だった。
「出来たのだわ!」
「はあ……」
「見て見てミニュ、貴方を作ってみたのよ? ミニュに見えるでしょ?」
 少しだけ不格好な其れは、頑張ってみればミニュイに見えない事もない。だが、ミニュイはうん、と頷いて。
「成程、似てるね。私が言うんだから多分間違いない」
「そうでしょそうでしょ! ねぇ、ドキドキした?」
「ドキドキ……難しい事に臨むチャレンジ精神は眩しいと思う」


 カイトは百合の花を作る。大きな百合の花だ。傍らに浮かぶリリーほど……とはいかないが、彼女が両手で抱えられるくらいの大きさにしたい。イレギュラーズに不可能はない! と、白い生地を練り始める。
 リリーはそんな彼の動作を真似して、白い生地を練る。同じ動作をしていれば、同じ花が出来上がる。大胆なカイトと、少しだけ引け腰な彼女では、作品の勢いが違うけれど。カイトはさらに赤い羽根を飾りに乗せて、花の上に白い雪だるまのような人形を乗せた。そして金粉をまぶし。
「出来たぜ、リリー!」
「り、リリーも出来たーっ……!」
 ――百合の花。もしかして、リリーの事考えてくれたのかな、なんて。お人形さんみたいに小さな頬が赤く染まるのを、柔らかな視線でカイトは見ていた。
「リリーの百合もきれいにできてるな。じゃあほら、あーん」
「あーん……? むぐ」
 促されるままに口を開けた小さな妖精に、カイトは小さく切った白い生地を食べさせてあげる。ほんのりとした甘さに妖精はきらきらと瞳を輝かせ。お返し、と、自分にとっては大きなかけらを百合から千切りとり、差し出すのだった。
 食べるの勿体ないけど、貴方となら、良いよ。


 ウィリアムとアルテミアは、並んで真剣に花菓子を作っていた。
 アルテミアは牡丹。ウィリアムは薔薇の花を作る。どちらも少し平たい花びらなので作りやすいように思えたが、どの程度薄くするかが難しい。アルテミアは内心、見栄を張って大小の牡丹を作るといった事を後悔しかけた。けれど、言ってしまったものは仕方がないし、何より作りたいという気持ちが勝る。紅の生地を薄く小さく広げ、一枚ずつ重ねていく。
 ウィリアムは其の様子を横目で見ながら、薔薇特有の丸みと鋭さを帯びた花弁を作っていく。其れはまるで粘土細工のようで、童心に戻った気さえする。知らず、笑みが浮かんでいた。
 そして一時の後。
「……出来た……!」
 アルテミアは紅白の牡丹。ウィリアムは葉のついた桃色の薔薇。お互いに見せ合えば、見事な成果に笑みが浮かぶ。
「じゃあ、交換して食べましょうか」
「そうだね。やはりお菓子は食べて楽しまないと。……一緒に来てくれてありがとう、アルテミア」
「こちらこそ。こうして一緒にお出掛け出来て楽しかったわ」
 柔らかく笑いあうアルテミアとウィリアム。其の微笑みこそ、花のようだった。


 隷属宣言……もとい、プロポーズ。してしまった。
 史之は人生の不可思議を噛みしめている。隣では伴侶を得た事で性別が固定された睦月(女性)が首を傾げていた。
「ふふ、しーちゃんが僕の伴侶。一生の伴侶だよ。そして今日は初デートだよ」
「そうだね、初デートだね。俺もう、う、う、うれし……げほげほ」
 嬉しいのだが、元の世界なら睦月は無性別でいなければならない存在だったので、彼女を女性にしてしまった史之は打首獄門コースである。此処が混沌で良かった。
「ねえねえしーちゃん、これ難しいよ。手でやった方が早いよ」
「あー、そうだね、手で摘まんでもいいかも」
 二人、仲睦まじく花菓子を作るのである。史之はこういった作業が得意なので丁寧に花弁を作っていく。不器用+すぐ投げ出すタイプの睦月も、今回は初デートだししーちゃんにプレゼントするんだと珍しく張り切って花菓子を作った。
「しーちゃんのお花は綺麗だねえ」
「すぐにカンちゃんのものになるよ」
 そう、もうすぐ出来上がる。
 そして交換する其の時には――のんきに笑っている君に婚約指輪も渡すよ。受け取ってくれるかな。


 アーリアとミディーセラは二人、お互いにプレゼントするためのつまみ菓子を作っていた。
 アーリアは豊穣の海辺で見た月を。どうせだから童話チックに、三日月に鼻と目を足して可愛らしく仕上げてみる。
 ――真ん丸の満月も好きだけれど、やっぱり私はちょっと不完全で、欠けてる月の方が好きだわぁ。
 ミディーセラは同じく豊穣で見た桔梗の花を作っていた。色は綺麗に混じったけれど、なかなか摘まむのがうまくいかない。いびつになったのを直そうとして、更にいびつになってしまって、しょうがないので練り直す。其れを何度も繰り返していた。
 そんな彼を横目に見ていたアーリア。なんだか微笑ましくて、幼げな頬が……なんだかお菓子みたいに見えてしまって。つんつん、つついてみる。たまにつまんでみる。
 最初は集中していて何も言わなかったミディーセラも、頬を摘ままれるとちらり、とアーリアを睨み。
「今はダメですよアーリアさん。真面目に作ってるんですからね」
「あらぁ、むにむにでお菓子と勘違いしちゃった」
「何をいって……ああっ」
 あーあ。また失敗してやり直し。でもアーリアなら、気の済むまで待ってくれるだろう。


「すずなは菓子作りは得意か?」
 ベルフラウが問う。自分は料理はすれど、甘味は初めてだと付け足して。
「経験はほぼないですね!」
 元気にすずなが答える。彼女も料理はすれど……というタイプのようだ。
 でもすずなは作りたい。ベルフラウといえば白薔薇。彼女に似合う白薔薇のお菓子を作りたい!
 ――しかし、難しい。隣でベルフラウも何やら作っているようだが、……何を作っているのだろう。視線をそっと送ったつもりが、こら、と制止されてしまった。
「後からのお楽しみだ」
「ご、ごめんなさい……」
 斯くして。すずなは白薔薇と白い牡丹の相の子のような花を作り上げた。花弁がとても難しくて、其れ以上に恥ずかしくて。白薔薇なんです、と繰り返しながらベルフラウに差し出す。
「……では、私からはこれを」
 ベルフラウが差し出したのはすずなの黄色をした剣つまみの花。刀を振るう卿の事を考えて作った、と言われれば、すずなの頬は赤く染まった。どんなに拙くとも、想いが通じれば何よりも美味。


 想い人へのぷれぜんと! これは俄然張り切れます!
 と、菓子作りに奮闘していた澄恋。隣で其れを見ていたレイリーは、思わず声をかけてしまった。だって、目的が同じ気がしたから。
「あの、……私はレイリー。貴方も、もしかして」
「澄恋です! ええ、旦那様のために!」
「澄恋殿。こんなに熱心に作ってるなんて、貴女の旦那様は幸せね」
 時間はたっぷりある。ゆっくりと焦らず生地を摘まみながら、二人が語るのは想い人の話。レイリーの想い人は苦しい事を抱え込んでしまう、放っておけない人。澄恋の旦那様は気配り上手で、包容力があって、優しくて……数えきれない程たくさん良い所がある人。
 ううん、レイリーの想い人だって。自分への好意は素直に受け止められないのに、レイリーの事は褒めて愛してくれる人。話し始めれば止まらない、想い人の良い所。
 澄恋は言う。見えないから、想いはどうしても伝わりにくいもの。だからこうして形にすることで、伝わる愛があるのだと。
 レイリーは頷いた。ほんの少しでも――この菓子で、伝わる想いがあれば良い。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした!
つまみ花菓子の一時、楽しんでいただけたようで何よりです。
さて、新しい旅路をゆくお二人に称号をお送りしました。ご確認下さい。
ご参加ありがとうございました!

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