シナリオ詳細
<Rw Nw Prt M Hrw>クンツァイトの聖域
オープニング
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――これは、とある御伽噺。昔々から語り継がれる物語。
嘗てパサジール・ルメスは『ファルベライズ』と呼ばれる地域に住み、精霊たちと心を通わせる精霊使いの一族でありました。翼、鱗、ヒレや羽根……まるで自然と溶け合うように、空や海に住まう生き物たちの因子を持つ者が多い他種族部族の彼らは今のような移動民族ではなかったのです。
彼らの住まうファルベライズには光彩の精霊ファルベリヒトがおりました。かの精霊は非常に力が強く、その砂漠一帯の守神を兼ねていたとも言われています。
しかしある時――恐ろしい伝承の魔物が現れた際、民(パサジール・ルメス)を守るべく戦った光彩の力は粉々に砕け、小さな奇跡を与える秘宝へと変化しました。ひとつひとつではかすり傷を治す程の力しか持たない宝です。
けれどもパサジール・ルメスはその悪用を恐れました。守神の力が砕け散り、再び何者かが迫ってこないとも限りません。彼らは彼らの為に戦い、眠りについた精霊が再び『目覚めなければならない』という事態を引き起こしたくありませんでした。
故に、封印したのです。秘宝(ファルベライズ)を悪用されないよう、その遺跡ごと。そしてかの精霊の位置を悟られないように――そして静かに眠れるように、パサジール・ルメスは旅に出ました。
パサジール・ルメスは定住しません。
パサジール・ルメスに国籍はありません。
パサジール・ルメスは様々なものを運びます。もちろん、情報も。
それらはすべて、きっと、精霊のためであったのです。
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「ファルベライズは既に開かれている……何色に染まるのか、まだ分からないけれど」
『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)は資料へ視線を落としながら呟いた。この遺跡が、色宝という存在がどのような運命を手繰り寄せるのか未だ読めないところではある。けれどもここが手繰り寄せるための正念場であることは誰もが理解していることだろう。
「全体としては盗賊団やモンスターを抑え、かつホルスの子供たちを外へ出さないよう押し留め、最奥にいる精霊ファルベリヒトを鎮める。
やらなければならないことはたくさん、実にスカーレットだわ」
プルーが視線を向ければイレギュラーズたちが心得ている、というように深く頷いた。
ファルベライズには遺跡を閉じ込める外壁、色宝の見つかるその内側、そしてさらに奥深くに存在したクリスタルの遺跡、そして最奥となる祭壇が存在する。
最奥までたどり着いたイレギュラーズが目にしたのは無秩序に荒らされた祭壇、そして無数に観測されたホルスの子供達だった。
「次はあの最奥に、出来るだけ多くが向かう必要があるでしょう。けれど……道中もコルチーニ・レッド。あなたたちにはそれをフロスティ・ブルーにしてほしいの」
奥へ向かうにしても、手前で足止めをされては敵わない。故に障害を退けるチームを別で送り出すのだ。
「遺跡にはモンスターも棲みついているの。そのうちの一箇所へ向かってちょうだい」
依頼書を差し出すプルー。それを読み、現地に向かえということだろう。どうやら群れている中のリーダー格がアークモンスター――滅びのアークによって突然変異した怪王種(アロンゲノム)であるらしい。
「気をつけて。無事と勝利の報告を待ってるわ」
危険な相手、されどそれゆえに引く気はない。イレギュラーズは依頼書をしまい、急ぎラサの地へ向かった。
- <Rw Nw Prt M Hrw>クンツァイトの聖域完了
- GM名愁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年02月21日 22時40分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
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上がって下って、また下って上がり始める。高低のある意地の悪い階段は何者をも容易には中央へ近づけさせない。それが色宝の――大精霊ファルベリヒトの意思なのか、それとも『博士』の意志が混ざり込んだことによるのかは定かでない。元からそうであったのかすらも、御伽噺でしか伝え聞いていない今の人間たちには想像することしかできない。
「でも……ずっと、昔からこんな場所があったなら……すごい、ね」
『うそつき』リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)はクリスタル遺跡を進みながらその光景にほうと息を漏らした。綺麗で、キラキラしていて。『こんな時』でもなければ立ち止まって眺めてしまいそう。
「古代に封じられたもの、か」
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)は目を細める。どれだけ隠そうとも、人の噂に戸口が立てられないように完全などありえない。こうしていつか暴かれる――それがヒトの性なのだから。
(そして良い結果ならば勇は湛えられ、悪い結果ならば愚かさを謗られる……それもヒトの性か)
今回はどうなるだろうか。これまでイレギュラーズたちは大躍進を続け、その名声は混沌各地で伝わっている。されど盗賊たちに、あるいは大精霊ファルベリヒトに負けたならば――その先を考えようとして、やめた。現実にしたくない結果など、考えない方が良いに決まっているから。
「あ……あそこ、かな?」
リュコスが昇り階段の先、遺跡の壁にある扉のようなものに気付く。情報屋から連携されていた内容からしてもあの扉をくぐる時には警戒した方が良さそうだ。
「まさかこんなところにまで怪王種が出張ってくるとは……いえ、こんなところもまた『混沌の一部』ということですか」
小さく頭を振った『《Seven of Cups》』ノワール・G・白鷺は遺跡を見上げる。まるで別世界に来たかのようであるが、ここは紛れもない混沌世界であり、ラサの一角なのだろう。
怪王種――アロンゲノム。動物の反転現象。放っておけば様々な局面で妨害を行ってくる存在になる。ここで確実に仕留めなければならない。
「開けますよ」
皆が頷き、ノワールは扉へかけた手に力を込める。扉は案外容易く開いた。瞬間、内側から極寒の突風が吹き荒れる。
「……っ!」
「当たりだな」
小さく呟くアーマデル。吹雪の中にいる存在に『揺らぐ青の月』メルナ(p3p002292)は目を凝らした。
「あれが怪王種……滅びのアークの産物」
「実際に見るのは初めてだけど……なるほど、厄介そうだ」
一等大きな図体を持つモノがいる。銀色の、美しくも恐ろしいけもの。『神威の星』ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)は『万物喰らい』の異名を持つソレから部屋へと視線を移した。
もう少し小さな個体がいくつか。どれもこちらへ既に気づいており、低く唸りを上げている。
(グレイシャー……氷河、か。だが、この程度の数に圧される訳にはいかないな)
数だけで言うならばこちらの方が優勢。この吹雪が敵の味方をしていようと、後れを取る訳にはいかない。
「さっさと片付けるぜ」
「世界の脅威なら、野放しにはできないね」
ウィリアムとメルナの言葉に一同ば武器を構える。敵とイレギュラーズ、どちらが先に動き始めるかという緊迫感の中、『玩具の輪舞』アシェン・ディチェット(p3p008621)は静かに呼吸を整えた。
大精霊ファルベリヒトの対処に大鴉盗賊団の追撃、道中の安全確保、その他エトセトラ。すべきこと、しなければならないことは沢山あるけれど、大変だなんて弱音を吐けるわけもない。
(パサジール・ルメスの方々のこれまでを無駄にしない為だものね!)
弾かれるようなスピードでメルナが駆け出していく。それを皮切りに、戦いの火ぶたは切って落とされた。
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(今回のメンバーなら、火力は十分すぎるくらい。だけど……)
駆ける、駆ける。駆けながら敵の動きを見定める。視界の悪い吹雪、ぶれる輪郭。完全に避けきることは困難でも、ここで『全員が正面から激突する』わけにはいかないのだ。
(向こうを好きに動かさせたら、いけない!)
飛び掛かってくるクリスタル・ウルフを掻い潜り、メルナはグレイシャー・ウルフへ剣を向ける。
「あなたの相手は私だよ!」
明確なる敵意に巨躯の銀狼が唸り声を上げる。来る、と剣を横に構えた瞬間重い衝撃がのしかかった。一度、二度、三度。吹雪の中でも煌めく尾は、そのしなやかな動きに反して巨大なハンマーでたたきつけているのかという程の重量を齎す。
(これが怪王種の力……でも回復を貰いながらなら何とか耐えられる筈。ううん、耐えてみせる)
敵を仲間たちとつかず離れずの場所へ誘導しながら意志を強く持つ。揺らぐな。揺らがない限り私は強く前を向こうと在れるから。
――お兄ちゃんなら揺らがない。こんな戦い方だってこなす筈だから!
陽を強く意識すればするほどに、月という『影』もまた色濃くなる。『私』が確かに存在できる。勇猛果敢に立ち向かっていくメルナの傍ら、リュコスは小さく唸りを上げた。
強そうで、したたかそうで、キラキラしている。けれどぼくの方が強いオオカミなんだ!
「負けないよ……!」
相手の懐へ飛び込み、手当たり次第に殴りつけるリュコス。それに当たらないよう接近したアーマデルは酒の香を撒く。吹雪にもかき消されないほどに強く、甘く、優しく。しかしてそれは立場が違えば苦く、鮮烈な毒となる。
「勝てない訳がないさ。星が皆を見守ってくれてる」
ウィリアムが撃ち放つ星の輝きは天の裁きとなって降り注ぐ。明滅する光は強く、その分自らへ跳ね返ってくるがこの程度で倒れる程ヤワじゃない。
仲間たちに続き、アシェンも思考を演算化させながら力を向上させる。アバターカレイドアクセラレーション――『可能性』を、その身に。
「逃がさないわ」
アサルトライフルを構え、放つ。そこに感情は無く、ただ奪う為だけの弾がクリスタル・ウルフの体内へ突き刺さる。よし、と心の中で呟いて再び照準を合わせるアシェン。ここで手加減する理由はない。手加減して長引いた方が問題だ。
(私は人一倍当てやすい。ならここで全力を出してしまうわ)
事実、彼女はここにいる誰よりも正確な射線を持つスナイパーだ。その一発を大事に、的確に敵へダメージを食らわせる。
(遺跡の中に生息していた種ですか)
元よりこういった生態なのか、それともこの環境を受けて変質したのか定かではない。けれどその正体を見定めるように『黒のミスティリオン』アリシス・シーアルジア(p3p000397)はじっと見つめる。吹雪の中で見えにくいこともあるが、クリスタル・ウルフたちの輪郭はどうもぼやけて見えるらしい。
しかし、ともアリシスは思う。ここまでの度重なる攻撃が全く届いていないわけではない。ならば同じように、集中的に攻撃し続ければいつしか当たるんのだ。
「周囲の空間事焼きはらってしまいましょう」
「ええ。厄介払いといきましょうか」
アリシスの神気閃光が眩く瞬く。それに合わせてノワールは白の波動を放ち、それが敵の1体を呑み込んだ。痛みはないだろう、だが変調は確かにきたしている。そこへコンビネーションよく『お嬢様に会いに』紫月・灰人(p3p001126)は踏み込んだ。打撃を受けたクリスタル・ウルフは、しかし殴り込んできた灰人へその牙を剥く。吹雪の中に鮮血が散った。
「ッ……、ハッ、とんでもねぇ奴がいたもんだ」
傷口を押さえ、灰人は笑う。強くないことなど十分に承知の上、それでもコレを野放しにするという選択肢はない。
「見た目にそぐわず狂暴だな」
「全くだぜ」
ありがとよ、と灰人は振り返らずにウィリアムへ礼を告げる。希望の星は――たとえ天井に阻まれて見えなくとも――沈むことなく天にある。その力を引き出しながらウィリアムはそれをメルナへ向けた。
「っ!」
受け身を取りながら地面を転がったメルナは星の加護を受けて静かに深呼吸する。被弾を最小限に収めようとはするものの、さすが『動物の反転現象』と呼ばれるだけあって苦汁を舐めさせられる相手だ。
(動きをよく見るんだ……少しだけど、予備動作はわかってきたんだから)
理解できることと反応できることは別なれど、意識して見ていれば反応しやすくはなる。あとは集中力と持久力の問題だ。
グレイシャー・ウルフが若干重心をずらす。頭で考えるより早く体を動かしたメルナは鼻先に鋭い風を感じた。通り過ぎる尾。即座に返ってきたそれを剣でいなし、さらに受け止める。
(よし……っ!)
この調子ならどうにか耐え忍べるか。メルナが全力を尽くす以上、あとは仲間たち次第だ。
「前菜は早く済ませてしまいましょう」
死者の怨念を矢のように放ったノワールに続き、アシェンが銃弾を放つ。急所を撃ち抜こうとしていた弾は、しかし吹雪によって軌道を若干逸らされた。命中こそすれ、本来よりはずっと少ない痛手だろう。
(吹雪はずっと吹き続けているのかしら……?)
アシェンは周囲を吹きすさぶそれへ視線を走らせる。狼たち自身の特性もあるが、この吹雪もまたひとつの障害だ。空も見えないようなこの遺跡で起きているのだから色宝の影響であると考えて良いだろう。そして色宝が願いを叶える宝だというのならば、『アシェンの願い』を受けて変化もするのではないだろうか?
(お願い、穏やかになって。冷たくて、厳しい風をやわらげて)
――されど風は、未だ止まない。
ウィリアムの描いた魔法陣が優しい光を帯び、安息の夜を映し出す。正気付いた灰人は頭を振り、今しがた突撃してきた狼へ向けて拳を叩き込んだ。
拳が痛いだなんて当たり前、今に始まったことでもない。そこから血が滴ろうが『倒せば勝ち』だ。実際、容赦のない攻撃に狼たちは疲弊してきている。追うようにアリシスの放った眩い光が狼たちを包み込んだ。
「あと、1体……!」
リュコスは弱ったクリスタル・ウルフを叩きのめし、視線を滑らせて――ぶるりと震えた。寒い。止まってしまえば凍え死んでしまいそうな、屋内とは思えぬほどの寒さだ。早い所倒して、暖かい場所へ帰ろう!
アーマデルは残された1体へ向けて駆けだす。周囲ではふよふよと浮かぶ酒蔵の聖女――霊魂である――の言葉を聞き流しながら瞬間的に加速した。
――仲間が倒れる前に、削り切る!
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「メルナ、もう少しいけるか」
「大丈夫……やってみせる!」
ウィリアムの声にメルナはついていた膝を起こす。近すぎず遠すぎない距離で『あちら』の戦闘がもうすぐ終わることは目に見えていた。あとは『こちら』が一瞬でも邪魔しないよう全力全霊を持って遮るのみ。
(できる。やれる――私は、お兄ちゃんの代わりだから!)
パンドラの光がメルナの瞳の奥、意志という力で煌めく。最後の力まで振り絞って耐え抜いたならば――。
「――待たせた」
一瞬、視界が暗転する。しかしそれはすぐに仲間の一撃だと知った。アーマデルに次いでリュコスも速度を武器に突っ込んでくる。息を整えたメルナはすぐさま攻めへと転じた。
不撓の精神は蒼き炎へ。それを剣身へと纏わせて一思いに薙ぐ。硬い体をも突き破るその斬撃にウィリアムもまた絶対不可視の刃で追随した。
「切り裂かれることなどないと思ったか?」
痛みに吠える狼にウィリアムは淡々と返す。この世に絶対などありえない。どれだけ守る為に固めていても、それを破る術は存在するのだ。
「確実に狩り落とすぞ」
「ええ。本日のメインディッシュ、残さず頂きましょう」
ノワールの白い波動が狼を包み、その身に異常を齎す。放置すれば外へ広がり、感染していくことだろう。ここで逃がすわけにはいかない。その硬い体も内側から蝕まれてしまえばどうもできないだろう。
「来いよ万物喰らい――俺がテメェの赤ずきんだ!」
灰人もまた拳を握りしめる。喰えるものなら喰ってみれば良い。そうなっても大人しく消化されるつもりはないし、中からぶち破って這い出してやる。
ビリビリとした想いが溢れ出し、文字通り周囲に知らしめる。自身の怒りを。敵対する存在がここにいるのだと!
敵の注意がメルナと灰人へ向いている間にアシェンはその頑強な体へライフルを向ける。吹雪も気にならないほどに精神を研ぎ澄ませ、撃ち放つ弾丸はかの命を一歩、確実に死へと歩ませた。
(他の個体が変質しなくて良かった)
アリシスは浄罪の剣を敵へと向ける。怪王種は周囲へ――まさしく反転のように――変質を伝播させると聞いた。もしかしたら別の場所で伝播した個体がいるかもしれないが、外で増やされるよりはずっと良い。その戦闘力が侮れないことはメルナの消耗具合を見れば分かるというもの。
防御へ切り替えたメルナへ素早くウィリアムが星の加護を降り注ぐ。相手が強くとも、そう易々と倒させるわけにはいかない。
「皆下がって!」
メルナが飛び退くと同時に発した声、その直後に狼の周囲で鋭い風が吹く。否、複数に別れた尻尾だ。
(猫又ならぬ狼又……は置いといて)
辛くも回避したアーマデルは周囲へ視線を走らせる。回避できた者、できなかった者、様々ではあるがウィリアムが既に回復へ魔力を練り上げている。ならば攻勢で押し切ってしまうべきだろう。
「いくら頑丈といえども、これを防ぐことはできないでしょう?」
ノワールの放った死霊弓が狼を内側から苛む痛みを増幅させる。アシェンは今一度自らの力を増幅させると素早く的確に二発の弾丸を撃ち放った。
「まだ立ち上がりますか」
その持久力に瞳を眇めたアリシスはより呪殺の威力を高めんと告死天使の刃を振り下ろす。さらには狼へ食らいつくように灰人が攻撃を浴びせかけた。
(――俺じゃ役不足かもしれんがよ)
だから引くのか。否。諦めるのか。否。
足りない部分は気合と根性、『意志』で補う他ない。これでも他の仲間たちとはまだ微かとも呼べないほどに距離があるけれど、それで立ち止まれるほどに大人な精神はしていなかったから。
「這いずってでも追いかけてやるんだ! そのためにテメェをぶっ潰す!!」
想いを力に。狼が体勢を崩した隙をリュコスは見逃さない。
(固くなりきれてないところが、あるはず……!)
動くためには関節が必要だ。そこまで固くしてしまったら今のように動けないはず。そう睨んでいたリュコスはある一点を見つけ走り出す。
「これで、トドメ……ッ!!」
速度に身を任せた蒼の彗星は、勢いのままにグレイシャー・ウルフを貫いた。
巨体が崩れ落ち、その上へ雪が見る間に積もっていく。アシェンは天井を仰ぎ見た。吹雪いて視界は悪く、どこでこれが生じているのかわからないけれど。
「お願い――」
どうか、鎮まってくれと。色宝の影響を強く受ける空間は、1人の願いを受けてやがて静かさを取り戻していく。
(精霊さんが、静かに眠れる場所となるように……)
綺麗な遺跡を眺めたい気持ちも、ほんのちょっぴりあるけれど。すっかり見通せるようになったフロアに、アシェンは小さく微笑んだ。
「すっかり生き絶えたか」
敵の生命反応がないことを確認したウィリアムはそれきり、黙って亡骸を見下ろす。怪王種。動物の反転。
(意思持つ人ならともかく、動物はそれに抗えるのか……?)
もしも敵の思うがままに怪王種が増えていってしまったら――なんて、嫌な想像だ。
「しかし、これで他の方々の遺跡探索を邪魔されることはなくなりましたね」
ノワールは辺りを見渡し、フロアを突っ切って先の道へ踏み込む。また階段。今度は下っているが、その先ではまた上る階段が見える。中央へ向かうまでにどれだけの労力があるか定かでないが――あとは、託すのみである。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
お疲れ様でした、イレギュラーズ。
どのような展開になっているか、続報をお待ちください。
GMコメント
●成功条件
クリスタル・ウルフたちの討伐
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。不明な点もあります。
●エネミー
・『万物喰らい』グレイシャー・ウルフ
クリスタル・ウルフの突然変異体。怪王種です。
非常に大きな銀色の狼であり、その牙はクリスタルだけでなくなんでも噛み砕きます。
その皮膚はこれまで喰らったもの故か非常に硬く、牙も爪も硬質な何かでできているようです。
もしもイレギュラーズが敗北したならば遺跡の外へと出かねません。その時の被害は非常に甚大なものとなるでしょう。
噛み砕き:文字通りに噛み砕きます。【移】【ショック】【凍結】【致命】
尻尾払い:かの尻尾は複数本あるのです。【スプラッシュ3】【ブレイク】
・クリスタル・ウルフ×5
体の表面がキラキラと輝く狼です。その主食は遺跡を作るクリスタルであり、ゆえにこのような姿をしていると思われます。
その煌めきによって輪郭がぶれ、捉えることが難しいでしょう。グレイシャー・ウルフのように皮膚が硬質化しているわけではなさそうなので、攻撃は通るはずです。ただし【反】を持っています。
残像:非常に捉えにくい一撃です。【邪道30】
突撃:鋭利なかの毛並みは刃にも似ています。【出血】【魅了】
●フィールド
ファルベライズ中核、クリスタルの遺跡。無数の階段が続いた不思議な空間です。
エネミーと接敵する場所はひとつの大広間のような場所です。このフィールドは色宝による影響を受けて、真冬のように吹雪いています。
●怪王種(アロンゲノム)とは
進行した滅びのアークによって世界に蔓延った現象のひとつです。
生物が突然変異的に高い戦闘力や知能を有し、それを周辺固体へ浸食させていきます。
いわゆる動物版の反転現象といわれ、ローレット・イレギュラーズの宿敵のひとつとなりました。
●ご挨拶
愁と申します。
最奥へ辿り着くため、堅実に進んでいきましょう。
それではどうぞよろしくお願い致します。
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