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シナリオ詳細

黒狼、新年を祝し開宴す

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 幻想レガド・イルシオンの王都メフ・メフィートより離れ、聖教国ネメシスに隣接する地に広がるドゥネーブ領。
 病に伏した前領主ドゥネーブ男爵その人を体現した様な穏やかな地に、ベネディクト=レベンディス=マナガルム (p3p008160)が領主代行として入り、いくつかの季節が巡り去っていった。
 雪が積もり寒さが身に染みる冬。
 ドゥネーブ市街、黄金の林檎を看板に掲げる酒場『ヘスペリデス』に気心の知れた仲間と共に新年の宴をと、黒狼隊のメンバーが集まった。
 窓の外に広がる真っ白に色づいた景色を眺めて、ベネディクトは部屋の中に視線を戻す。
「領主様とお連れの皆様ですね、本日はどうぞお楽しみくださいね!」
 そう笑顔で迎えた酒場の女将は、ハキハキとした口調で手際よく『会場』に料理を運んでいく。
「あ、わたし手伝いましょうか?」
「いえ、タイム様。ここは私にお任せ下さい」
 タイム (p3p007854)が前に出ようとするのを抑えて、リュティス・ベルンシュタイン (p3p007926)がスカートの裾を極力揺らさぬ様にして歩みでて、何か出来る事は無いかと聞いていた。
「それなら皆でやった方が早くない?」
「そっちの方が楽しそうだしな!」
 燕黒 姫喬 (p3p000406)が我先にとリュティスに続くと、秋月 誠吾 (p3p007127)も乗っかり皿を受け取っていた。
「あらあら、何だか申し訳ないわね。それじゃあ、こちらをお願いしてもいいかしら。お礼と言っては何ですけど、何か食べたいものがあれば言ってくださいね」
 困った様に笑っていた女将も、それならばと張り切っている様子だ。
「ボク、皆とこうして集まるの楽しみにしていたんです」
 グラスを運んでいたアイラ・ディアグレイス (p3p006523)の髪に止まった蝶が白く光り輝き、彼女の心に呼応するようにふるりと翅を震わせた。
「領主代行を引き受けてからこっち、色んな事が立て続けに起こっていたしね」
「そうです、一日くらいゆっくりしたっていいと思うのです。ベネディクトさんから新年会のお話を聞いた時は、名案だって思いましたですよ」
 あれもこれもと指折り数えるマルク・シリング (p3p001309)の隣でソフィリア・ラングレイ (p3p007527)がうんうんと大きく頷いている。
 タイムも輪の中に混ざりながら、時に危なっかしく手伝っていく。
 手を貸そうとしたところ「御主人様とお客様は準備が整うまでお待ちください」とそっと止められしまったベネディクトとバシル・ハーフィズは、賑やかな面々を見守ることになったのだった。
「いつも活躍は聞いてるぜ、今日は誘ってくれてありがとな」
「人数が多い方が賑やかで楽しいだろう? こちらこそ、この酒場を紹介してくれてありがとう」
 休暇に温泉でも入ってついでに大粒苺『フォレ・ロンス』を使ったお菓子でも摘まんでみるか、とふらりと現われたバシルが、それならばと『ヘスペリデス』を紹介したのだ。
「ここの女将さんの料理が旨くてな。酒も料理も旨いとくれば、文句の付けようがねぇ。
 それに冒険者としての話もありゃ最高だな」
 ヘスペリデスを気に入っているのか、ふと笑いと共に漏らした彼の言葉はいつもより柔らかい。
「準備できたよー!」
 姫喬の声に視線を向ければ、二人を待つ面々が早く早くと手招きをする。
「それじゃあ、始めようか」
 新たな年に、紡がれた縁を深めるために。

GMコメント

 リクエスト有り難うございます。水平彼方です。
 今回は酒場で飲んで食べてお話しして、楽しい一時をお過ごしください。

●目的
 飲んで食べて、語らいあって。交流を深め、宴を大いに楽しみましょう!

●酒場『ヘスペリデス』
 ドゥネーブ領市街地に黄金の林檎をシンボルにた看板を掲げる酒場です。
 にこにこと微笑む店主と、明るく快活な女将が切り盛りするアットホームな雰囲気で、地元の人々が常連客として足を運びます。
 店主お手製のパンを始め、サンドイッチやローストチキンなどなど、酒場にありそうなメニューを一通り揃えています。
 今回は大粒苺『フォレ・ロンス』を使用したタルトを用意しているそうです。お楽しみに。

 アルコール・ソフトドリンクを用意しています。
 未成年の方の飲酒は出来ませんのでご了承ください。

●バシル
 バシル・ハーフィズが同行します。
 主に酒を飲んで料理を摘まみ、皆様の冒険話が聞ければ楽しみな様子。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 黒狼、新年を祝し開宴す完了
  • GM名水平彼方
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年02月25日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

燕黒 姫喬(p3p000406)
猫鮫姫
マルク・シリング(p3p001309)
アイラ・ディアグレイス(p3p006523)
蝶刃
秋月 誠吾(p3p007127)
Mors certa
ソフィリア・ラングレイ(p3p007527)
地上に虹をかけて
タイム(p3p007854)
優光紡ぐ
リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)
黒狼の従者
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
曇銀月を継ぐ者

リプレイ


 黄金の林檎を看板に掲げる酒場『ヘスペリデス』に集まった黒狼隊の面々は、それぞれグラスのグラスに飲み物が注がれるのを待っていた。
「新年会に参加するのは少し落ち着かないですね。普段は奉仕する側ですので……」
 『黒狼の従者』リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)は落ち着き無く辺りを見回して――何か手伝うことは無いか探していると、『地上に虹をかけて』ソフィリア・ラングレイ(p3p007527)が満面の笑みでリュティスのグラスにオレンジジュースをなみなみと注いだ。
 せめてもとソフィリアのグラスを満たそうと思うが、すでにオレンジジュースを確保済みだ。
「グラスにたっぷりドリンクを注いで……わわっ、ボクまだ未成年! です!」
「ああ、すまん」
「わたしも今日はアイラさんと同じサイダーで」
 視線の先にあった瓶をバシルが指さすと、『護るための刃』アイラ・ディアグレイス(p3p006523)慌てて首を振る。 
 お洒落な内装を見ていた『優光紡ぐ』タイム(p3p007854)はアイラのグラスを見て注文する。
「ふふふ。ポメ太郎もおめかししたんだ。似合ってるね、かっこいいよ」
 胸元に蝶ネクタイを着けたポメ太郎は、誇らしげに見せびらかした。
「居酒屋での新年会。……ここはどこの日本なんだろうな? あ、グラスは行き渡ってるか?」
 故郷を思い浮かべた『Mors certa』秋月 誠吾(p3p007127)は、ふとこうして考えるのが久しぶりだと思い至った。良し悪しはさておき、今日は楽しまねば。
「飲み物は手元に届いたかな? バシルも大丈夫か?」
「ああ。ウィスキーを頂いた」
 バシルがロックグラスを軽く揺すって見せると、『曇銀月を継ぐ者』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)は笑顔で頷く。エールを手に持ち、咳払いを一つ。
「難しい話は抜きだ、新たな一年も宜しく頼む──それでは、乾杯!」
「新年おめでとう! 乾杯!」
「かんぱーい! なのですよ!」
「乾杯」
「いっひひ、宴だねぇ! それじゃあ、乾杯ぃ!」
『猫鮫姫』燕黒 姫喬(p3p000406)甘酸っぱいフルーツジュースを掲げてグラスを付き合わせると、中身を一気に呷る。
 マルク・シリング(p3p001309)はスパークリングワインを一口。
「あたしも誕生日がくりゃ、一緒に酒を飲めるんだけどねぇ」
「まあ、後もう少ししたらだね」
 うらやましそうに酒の入ったグラスを見る姫蕎に、マルクは優しく窘める。
「さあ、どんどん召し上がってくださいね」
 と、テーブルに焼きたてのパンが香ばしい香りとともにやってきた。
「リュティス、そちらの皿のローストチキンをこちらにくれないか」
 ベネディクトが近くに居た彼女に一番良い物を頼む、と冗談交じりに声をかける。
「必ずや一番美味しい部分をお届けしてみせます、このリュティスの名をかけて!」
 すると水を得た魚のように生き生きとチキンに立ち向かった。
「ほら、料理がきたぞー」
 切り分けられたチキンを、誠吾は皆に行き渡るように取り分けて回す。
「ドレッシングはお手製なのですね。お好きなものをどうぞ」
 リュティスが小ぶりなサラダボウルを持ってくると、これもチキンと併せて挟み頬張った。肉汁が染みてパンの風味と合わさればうまいこと間違いなし。スープやシチューにも合わないはずが無い。
「しちゅーやら煮込みやら、どれもうまそうだねぇ……」
 舌鼓を打つ姫蕎。頃合いを見て指を鳴らす。
「さあさ皆様お立ち会い! 出ばれやチンピラ共!!!」
「ヘイ、姫様! お騒がせしやす」
 現れた軟骨野郎手には平身低頭に断りを入れると、手にした大魚を豪快においた。
「こいつぁヒノデウオって言ってね。赤い鱗が綺麗だろう? 祝い事の時にゃ、よう持ち出すんよ。
 質のいい脂と旨味の染み出す赤身が上等な逸品なのさぁ。
 さ、適当に捌くから、好きな身をとってってくれよ!
 生が苦手ってんなら、適当に炙ってもらってもいい味出すさ!
 ――ああちょっとそこのメイドさん、配膳やら手伝っておくれな。あんたの旦那様にもね」
「承知しました」
「男の子は沢山食べんだよ! ほら誠吾君も、なんなら米に刺身を盛ってくるかい?」
「いいのか? なら遠慮無く!」
 ほかほかのご飯に盛り付け、丼にして楽しむ誠吾。
 ほかにも炙った身に甘辛いタレをつければ、それだけで周囲は食欲がそそられる香りで満ちた。


「献立の参考に、好きな料理をお伺いしても宜しいでしょうか」
 ほどよく料理で腹を満たした頃、リュティスはメモとペンを片手に切り出した。
 好きな料理、か。とマルクは顎に指を添えて考え込む。
「実は僕、『食べられれば何でも美味しい』ので、どんな料理も美味しくいただくけれど……最近は寒いし、温かい煮込み料理とかが好きかな。皆で囲めるようなものなら、特に」
 廃れ消えた故郷でひもじさを知るマルクは、飢えと寒さに震える事が無い日々に感謝しながら、ね。と優しく付け加えた。
「マルク様の要望されているものは鍋とかでしょうか?
 豊穣にそういうお料理にあった気がしますので今度用意してみましょう」
「んあ? あたしの好きな食べ物?」
 視線を感じて振り返った姫蕎は、ヒノデウオの活け作りを口一杯に頬張り飲み込んだ後に満面の笑顔で
「……チーズケーキ❤」
と答えた。
「ボクはうーんと、味覚があまりないので、味付けが濃いものが好きです。
甘いものが特に好きです……お、お料理ってことにならない? だめ?」
「とんでもございません。アイラ様は味付けが濃い物がお好きなのですね。
 そして甘い物が……女性も多いですし、問題ないかと思います。それに姫喬様もチーズケーキを要望されていますしね」
「好きな料理、なぁ……」
 数秒ほど考え込んだ誠吾は、そうだなあと前置きしてから口を開く。
「元々いた世界ではお好み焼きが好きだったんだけどな。こっちでは、リュティスが作ってくれるスープかなあ。美味しいし」
「本当、でございますか?」
「は? 忖度じゃねーよ? 普段が怖いからでもねーから!! ……怖いけど」
「お好み焼きですか? スープを褒めて頂けるのはありがたいですが、好みの物も作れるように精進致しますね。
 また試作にお付き合い下さい、頑張って再現してみせましょう」
「お、おう、楽しみにしてる」
 微笑ましい二人のやりとりに、仲間達からは暖かい笑い声が起こる。
「笑うなって!」
「ふふ、ごめんなさい。わたしが特に好きな料理はクリームシチューかな? 食べるのも好きだけどこれだけは結構うまく作れるのよ」
 タイムは朗らかに微笑んで、リュティスへと視線を向けた。
「作る人によって味が違うしリュティスさんや誠吾さんの作ったシチューも食べてみたいなっ」
「なるほど。珍しい料理なども食べてみたいということですね」
「わたしもみんなの好きなものにもチャレンジしてレパートリー増やせれば一石二鳥! うーんいいアイデア」
「御主人様は何がお好きでしょうか?」
「俺の好物か……そうだな、この間リュティスが作ったグラタンは美味かったな、もう一度食べてみたい物だ」
「それではまた作るようにしますね」
「うーん、皆の好きな食べ物を聞いてたら、どれも食べたくなってくるのです……」
 可愛らしい悲鳴を上げて、ソフィリアは頭を抱えている。
「甘い物もシチューや煮込み料理もグラタンもお好み焼きも……美味しい物は全部大好きなのですよ!」
「では、美味しいものを提供できるよう腕を振るいましょう」
 こうして書き留めたメモは皆の好きな料理で真っ黒に塗りつぶされていった。


「俺から聞いても良いだろうか。領主代行とローレットの依頼もあって忙しいだろうが、休日はどう過ごしているんだ?」
 バシルの問いかけに、ベネディクトはそうだなと前置きして。
「休日や仕事の合間はポメ太郎と遊んでやったり、鍛錬の為に身体を動かしている事が多いかな。燕黒やラングレイについては外で活動している事が多そうなイメージだが、どうなんだ?」
「それは乙女の秘密だねぇ」
「お休みの日は、うちは良くお散歩してるのです!
 知らない道を進んで、初めての光景を眺めるのが面白いのですよ
ついでに、知らないお店に入ってみて、美味しいご飯を探すのも楽しいのです!」
 意味深に笑いぼやかす姫蕎に、元気いっぱいに答えるソフィリア。だが、いくつか心配そうな視線で見つめられると、図星をつかれたように首を横に振って背中の翼をはためかせた。
「……ま、迷子にはならないのですよ! 帰り道が分からなくても、空高く飛べば大体解決するのです!」
「……僕は、本を読んで過ごす事が多いかな。
 学術書とかで勉強したり、歴史の本や物語なんかの趣味の本だったり。
 ああ、最近はポメ太郎連れて、ドゥネーヴ領内を散歩している事も多いかな」
「ポメ太郎の散歩は、皆がやっているのか?」
「行ける人や、行きたい人が連れて行くな」
 話題の彼に目を向けると、円らな瞳を嬉しそうに輝かせて人から人へ渡り歩いている。
 タイムの足下に寄ると、何かを訴えるようにじっと見上げた。
「どうしたのポメ太郎? よしよし、ポメ太郎もまたわたしとお散歩いこうねぇ~」
 ふわふわの毛並みを撫でてそう言うと、嬉しそうに目を細めて元気よく返事をするポメ太郎。
 愛らしい姿に、その場の誰もが表情を緩ませてしまう。
「休日は鍛錬で終わってるのかな最近は。体を鍛えて有事に備えておきたいしな。
それ以外は勉強してる。こちらでの学問さっぱりだしな。ああ、ソフィリア。その皿はこっちに寄越せ。代わりにこれを食え」
「わーい、誠吾さんありがとうなのです!」
 手慣れた様子でソフィリアの世話を焼きながら誠吾が答えていく。
「一人ならゆっくり……っていうよりゴロゴロしてる、かな、えへへ。
 あ、でも最近は良く遊んでくれる人がいるから一緒にお出かけしたりけっこう楽しんでるの!」
「ボクもお買い物とお掃除と、それから旦那さんとのんびりしたり戦闘訓練したり、でしょうか?
 色々していると、お休みっていくらあっても足りないんですよね……!」
 タイムに続いてアイラが答え、二人は互いを見合って楽しげに微笑んだ。
「タイムとアイラは仲が良いのだな?まるで姉妹の様だ」
 ベネディクトの言葉に、最初は目を丸くした二人だがすぐに元の笑顔に戻る。
「姉妹? ふふ、ボクがおねーさんです」
「そういう風に見て貰えるの、嬉しい~」
 肩を並べた二人は、寄り添い幸せを共有する。それを見た誰かが微笑んで幸せの中に溶け込んでゆく。
「まるで家族のような繋がりがあるのだな」
 困難も幸福も、助け合い分かち合いながら黒狼達は生きていくのだ。それを見たバシルは、悪くないと知れず笑みを零して酒を呷った。


 そして話題は自然と未来へ、今年の抱負へと移っていった。
「『皆様に満足な暮らしを提供する』でしょうか」
 もちろん御主人様が最優先ではありますが……、とリュティス。
「それで新年の抱負だったか。領主代理として民に、周囲からも認められる様に一層の努力をしたい」
 まだ課題も多く残っている。領民の行く末を任せても良いと信頼されるよう、行動で示していきたい。それがベネディクトの掲げる目標だ。
「っあー、そうねぇ。あたしも組の頭になる年齢なのよねぇ……」
 ベネディクトの言葉に、頬杖をついた姫蕎が気怠げにため息を吐く。
 海洋サメヤクザ一族。それを背負う覚悟ができてるかといえばまだ甘い。
 それでも、姫蕎には一族のために血を流す覚悟はある。
「ま、いつも通り、手の届く範囲を守っていくさぁね。つまりこの海洋全体! 海の仕事は任せておくれ!」
 迷いを吹き飛ばすようにからりと笑うと、胸を張って堂々と宣言する。その姿に軟骨野郎達は感激し「姫様!」と感涙にむせぶばかりだ。
「……そうだね。」
 マルクには見据え続けた願いがある。
『世界から貧困を無くしたい』
 一人でも多くの人の力になれるように、一つでも多くの命を助けられるように、出来ることを積み重ねていく事。
「もちろん、ドゥネーヴ領の色々も手伝わせてもらうよ。僕だって今や、黒狼隊の一員だからね」
「マルクや皆の力を借りる事は多くあると思うが宜しく頼む。俺一人で出来る事は限られている。バシルも、何かあればその時は力を貸してくれ」
「頼りにされたら応えねぇとな。微々たるものだが、俺でよければ協力は惜しまねぇさ」
 照れくさそうに視線を外した情報屋へと、ありがとうと声をかけた。
「ボクはー……もっとお料理のレパートリーを増やしたいです。あとあと、もっと強くなって、頼れる先輩になりたいなぁって」
 やりたいことが沢山あるから、取りこぼさないように積み重ねていきたい。
 アイラの言葉に、タイムは悪戯っぽく声を弾ませた。
「あら、アイラさんはわたしにはいつだって頼りになる先輩よ」
「ふふ、ありがとう」
 アイラと笑みを交わしたタイムは、今の幸せをかみしめて言葉を紡ぐ。
 ローレットで請け負う依頼には危険なものも含まれる。だからみんなが無事でこうして笑い合える日々が続くように、と願いを込めて。
「こうやってまた黒狼隊のみんなで集まってパーティー出来たらいいなって。
 それとベネディクトさん、手伝いならわたしも数にいれてくださいねっ」
「タイムのことも頼りにしているよ」
 皆のやりとりと聞いていたソフィリアは頭を悩ませていた。
 しかしタイムの抱負を聞いて、ぱっと名案を閃いた。
「こうやって、皆で美味しいご飯を食べられるように、今年もいっぱい頑張るのですよ!」
 具体的なことはそのときになって考えれば良い。まだ見ぬ問題の解決方法なんて、考えても仕方ないから。
「……あ、誠吾さん、これ美味しいのですよ!」
「お代わりとってきてやるよ」
 と誠吾が立ち上がりかけたとき、甘い香りが鼻先をくすぐった。


「さあ皆さん、フォレ・ロンスのタルトが出来ましたよ」
 女将が大皿をテーブルの真ん中に置くと、そこには赤く艶やかなフォレ・ロンスをふんだんに使ったタルトがあった。
 早速一口食べた姫蕎の表情が驚きへと変わる。
「んなぁぁぁ美味いねこの苺タルト! 陸の甘味はたっまんないよぉ~!」
「む……このタルトは美味いな。誠吾、リュティスも食べてみたか?」
「いえ、今から」
 手持ち無沙汰になったリュティスは、主人の言葉に従ってタルトにフォークを入れる。
「本当に美味しいですね。フォレ・ロンス……侮れません。後で仕入れルートを教えて頂きましょう」
「それでは、兄を紹介いたしますよ。兄は生産農家の一人なんです。領主様にとあれば、きっと喜んで引き受けてくれますよ」
「では、後ほど連絡先をお願いします」
 少しお待ちくださいね、と女将は裏方へと戻ると、連絡先をメモした紙をリュティスに渡した。
「すみません。生で頂くことはできますか?」
「ええ、いいですよ」
 女将は厨房に声をかけると、とびきり大きな一粒を乗せた小皿をマルクへと渡した。
「こんな大粒の苺、初めてだよ。贅沢だな」
 囓れば甘い果汁が溢れ出て、決して大味にはならない。酸味はあるが甘さを引き立てる塩梅が絶妙だ。
「……む、どうした、ポメ太郎」
 ベネディクトは何かを訴えるポメ太郎の仕草に目をとめた。
 ……その動作は、火、火か? ああ、それは置いておいて? どや顔に腕を組んで……さっきの火を持ってくる?
「アカツキ達にもお土産を用意しろという事か?」
「マナガルム卿、俺もポメ太郎に賛成です。お土産としていくつか持ち帰らせてください。今日ここにいないメンバーにも、上手い料理を食わせてやりたいんです」
「タルトは是非、お土産に包んでもらいたいな。今日はここに来れなかった黒狼隊の仲間と……ちょっと大きな一切れは、リンディスさんに」
「まあ、それは素敵ね! よければ特製パンもご用意できますよ。勿論タダとはいいませんわ、渡す方へ『ヘスペリデス』の宣伝はお忘れ無く」
「ねえねえタイムちゃん、店主さん特製のパンがあるみたい!
 ボク、家族にお土産にしたいから、タルトとパンをいくつか買って帰ろうかなって思うんだけど……どうかな!」
「へ~! このお店パンお土産にして貰えるの? こんなに美味しいなら大切な人にも食べて欲しいよね。わたしもいくつか包んで貰おうっと」
「それにね、このパンとフォレ・ロンスでフルーツサンドを作ったりなんかしちゃうと、きっとおいしすぎる逸品ができますから……タイムちゃんに試して欲しくって」
 アイラはとびっきりのアイデアを耳打ちすると、タイムも目を輝かせて頷いた。
「フルーツサンド? とっても美味しそう、作るならアイラさんも一緒にやりましょうよ。その方が絶対楽しいし!」
「うん」
「お土産が決まったら、私までお願いしますね」
 茶目っ気たっぷりにいうと、女将は手土産用の準備へと戻っていく。
「ポメ太郎。帰ったら運動ですからね」
 胸元にご馳走をつけたポメ太郎を見たリュティスの言葉に、悲痛な鳴き声が上がる。それを聞いた皆が、また笑顔になる。
「ああ、こういう一日は本当に、悪くない。こんな日がこれからも続けばいいんだがな」
 賑やかな宴を見て、誠吾は――黒狼達の皆は改めて幸せをかみしめた。 

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

楽しいひとときを、ありがとうございました。
お楽しみいただけましたでしょうか?
バシルも皆様と過ごせたことを、とても嬉しく思っています。
今年一年が、皆様にとって実り多く、幸せなものであるように私からもお祈り申し上げます。
そして、ご馳走様でした!

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