PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<Rw Nw Prt M Hrw>また君に会えたらと願うならば

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「……そこで何をしているのですか?
 もうじき、クリスタル遺跡の最奥に到着します。
 この人質をイレギュラーズの足止めに利用するのですから、
 無事に届ける必要があるのですよ?」
 そう言ったのは線の細い青年だった。
 紅玉のような瞳を向ける先にいるのは、占い師風の女性――ナディアと、薙刀を握る男性――マアルーフ。
 2人は、少しばかり前にイレギュラーズと交戦、這う這うの体で退却してきた――ということになっている。
「え、ええ。分かっています……」
 ちらり、ナディアが手を拘束されて歩き続ける集団――そのうちの一人を見る。
 視線を向けた相手、人間種の男も気づいたのかナディアをちらりと見て――申し訳なさそうに視線をそらして目を閉じた。
「……貴方」
 小さく漏らした声に気づかれないよう気を付けながら、ごくりと唾を飲む。
「アンタの旦那は無事みたいだな」
「えぇ……そちらはどう?」
「あぁ……」
 小声で声をかけてきたマアルーフが表情を変えずに微かに視線を向ける。
 その先には、小柄な飛行種の女性が見えた。
「うちも無事らしい。だが……」
「えぇ……私達、警戒されてるみたい……」
「まぁ……人質がいる奴だけ逃げ延びたんだ。
 多少頭が回れば警戒するのも分からなくはない……だが」
 マアルーフが視線を向けるのは、集団を追い立てるあの男だ。
「……ライラさんが旦那だって言ってた男に瓜二つの鉄騎種が、
 先導してるってのはどういうこった?」
「分からないわ……でも、ライラさんが言ってた人には見えない。
 正義感が強くて人が大好きな人……そんな人には見えないわ」
「……あぁ。本当に」
「――なにをこそこそしているんです?
 まさか――本当に奴ら側に寝返りましたか?」
 先導する男が、こちらに剣を向ける。
 切っ先が内反りになった不思議な形状の剣だ。
「この場で切り落としてもいいのですよ?」
「ま、待ってくれ。そんなわけないだろ?
 俺達がそんなことをすれば、アンタは……」
 マアルーフが前に出て言えば、男が鼻で笑って剣を下げた。
「早く行きますよ――首を落とされたくなくばね」
 背を向けて前に進む男を見据えながら、2人は一瞬だけ目配らせした。

(頼む、イレギュラーズ……助けてくれ――)

(何とかしないと……でも、何とかってどうすれば――)

 二人の思いは、まだ誰にも伝わることなく消えていく。


「ラダさん、お疲れ様です」
 アナイス(p3n000154)はこくりと頷いて見せる。
「私達が逃がしてやった傭兵と占い師っぽい女性から情報が入ったって本当か?」
 『ファルベライズ』最奥への到達に成功しつつある中、ラダ・ジグリ(p3p000271)はローレットに訪れていた。
「ええ。大鴉盗賊団は我々と同じようにクリスタル遺跡の最奥、ファルベリヒトの祠に到達しつつあります。
 この盗賊団の一部に情報のあったマアルーフ、ナディアの両名もいるようです。
 そして、その両名からの情報によれば……」
「……人質が一緒に最奥に向かっているって?」
「ええ。でも不思議な話なんですよね。
 そもそも人質は『生きているかは分からないが、存在していると証明することで一番効果を発揮する』ものです。
 居場所を知らせ、しかもそれが『我々が彼らとぶつかる最前線』では、奪い返してくれと言ってるようなものです」
「つまり、前線に行かせることに意味があるってことか」
 ルカ・ガンビーノ(p3p007268)の言葉にアナイスが小さくうなずいた。
「団長……お願いします、あの二人を助けてあげてください」
「俺達に言われなくてもだろうけど、一応、俺達もあの二人と少ない時間、一緒にいたんだ。
 俺達はこうして団長に命を救ってもらえた。お願いだよ!」
 アミラとジャミール――先に大鴉盗賊団との戦いを経て、ルカが自分の傭兵団で面倒を見ると宣言した二人が、そう言って声をかける。
「俺らが仕掛けた種だ。自分で最後まで面倒見るのが筋――だ」
「そうおっしゃっていただけて助かります。
 ……それから、マアルーフ、ナディアの両名がくれた情報によれば、
 先の依頼にて盗賊団を抜け、現状ではこちらに庇護されている女性――ライラの夫と見られる人物も確認されているとのことです」
「私も、行かせてください。
 夫がいるのなら――私がいた方がきっと、役に立つはずです。
 お願いします――あの人の場所に」
 ライラが何かをギュッと堪えるように声を出した。


 色宝が戦場を乱舞する。
 クリスタル遺跡が最奥――そこに鎮座ましますはかの大精霊『ファルベリヒト』が祠だった。
「はっ、はっ、っつ――くぅ」
 片手で頭を抑え、大薙刀を杖代わりに何とか立つマアルーフが、足を屈しながら周囲を見る。
 視線の先では、狂乱が始まりつつあった。
 悲鳴を上げ、悲痛に叫ぶ愛しき女性が、その手にナニカを握らされる。
 両手で頭を抑えたナディアが、天に向かって吠えている。

 ――頭が割れる。

 ――意識がブレる。

 ――あぁ! あぁ――!

 何も――――何もわからな――

GMコメント

 そんなわけでこんばんは、春野紅葉です。
 ラダ・ジグリ(p3p000271)さんのアフターアクションでもあります。

 それでは、約束を果たしに。
 そして、解放された彼らを助けに行きましょうか。

●オーダー
【1】ナディア、マアルーフの生存。
【2】アズィーズ、イェルハルド、シャリファの救出。

 【不殺】属性による攻撃で無力化、救出できます。

●フィールド
 クリスタル遺跡最奥。多種多様な色宝が周囲を乱舞する空間。
 足場もあまりよろしくなく、対策なしでは防技、反応、回避に若干のペナルティを受けます。

●エネミーデータ
・イェルハルド
 紅玉のような瞳に白い髪をした線の細い青年。
 『地平線のよすがに』(https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/4976)で登場したライラの夫です。

 流れの旅芸人でしたが騙されて盗賊団に加入。
 その後、離脱を試みて捕らえられ、今日まで監禁されていました。
 洗脳状態にあり、人質を連れてここまで来ています。
 先端が鎌のように内側に沿った2本の長剣を用います。

 洗脳状態であることはPL情報ではありますが、ライラと言葉を交わせば自ずと分かることです。
 分かっている前提で進んで構いません。

 物攻、命中、防技、EXAがやや高めのバランス型。

<スキル>
比翼連迅:両手の長剣による高速の2連撃です。
物至単 威力中 【必中】【邪道小】【スプラッシュ2】

・人質〔剣〕×6
 錯乱状態の人質です。
 狂気の影響を受け錯乱しており、狂化状態にあります。
 さほど脅威的ではありませんが数は多いです。

・人質〔銃〕×3
 ライフル銃を握る錯乱状態の人質。
 狂気の影響を受け錯乱しており、狂化状態にあります。
 さほど脅威的ではありませんが数は多いです。

・人質〔魔〕×3
 魔導書と杖を持つ錯乱状態の人質
 狂気の影響を受け錯乱しており、狂化状態にあります。
 さほど脅威的ではありませんが数は多いです。

●救出対象データ
・ナディア
 『地平線のよすがに』(https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/4976)にも登場した水晶を持つ占い師風の女性です。
 狂気の影響を受け、錯乱しており、狂化状態にあります。
 神攻、命中、回避が高め。【通常攻撃:遠距離】

<スキル>
多重魔法砲撃:多様な魔術を雨あられとぶちまけます。威力は高め。
神超扇 威力大 【万能】【溜2】【業炎】【氷結】【崩れ】【呪縛】【スプラッシュ3】

・マアルーフ
 『地平線のよすがに』(https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/4976)にも登場した流れの傭兵です。
 狂気の影響を受け、錯乱しており、狂化状態にあります。
 幅広な刃の大薙刀を持つ男性です。
 物攻、防技が高め、HPは並み程度のバランス型。【通常攻撃:中距離】

<スキル>
呪性斬:刃に呪いを帯びさせて振り下ろします。
物中貫 威力中 【呪縛】【致命】

・アズィーズ
 ナディアの夫。
 『●エネミーデータ』の人質〔剣〕にいます。
 ただし、皆さんにはどれが彼か分かりません。
 判別するにはナディアを正気に戻すと教えてくれます。

・シャリファ
 マアルーフの妻。
 『●エネミーデータ』の人質〔銃〕にいます。
 ただし、皆さんにはどれが彼女か分かりません。
 判別するにはマアルーフを正気に戻すと教えてくれます。

●友軍データ
・ライラ
 『地平線のよすがに』(https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/4976)にも登場した片手剣を握る踊り子風の女性です。
 夫の居場所を知り参戦します。腕も悪くはありません。
 神攻、命中、回避が高め。【通常攻撃:中距離】かつ初見奇襲。

<スキル>
翔雷斬:スパークを放つ斬撃を撃ち込みます。
神遠単 威力中 【万能】【感電】【麻痺】【停滞】

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <Rw Nw Prt M Hrw>また君に会えたらと願うならば完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年02月22日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
リウィルディア=エスカ=ノルン(p3p006761)
叡智の娘
ルカ・ガンビーノ(p3p007268)
運命砕き
エルス・ティーネ(p3p007325)
祝福(グリュック)
リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)
黒狼の従者
リンディス=クァドラータ(p3p007979)
ただの人のように
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切

リプレイ


 クリスタルの迷宮に多種多様の色宝が乱舞していた。
「イェルハルド!」
 その集団を見つけた女――ライラが声を張り上げた。
 その視線の先には、特徴的な切っ先をした双剣を握る青年が一人。
 近づこうとしたライラを見た青年――イェルハルドが彼女に向けて剣を構えた。
「近づくな――我らを裏切ったのですか、ライラ?」
「裏切るってどういうこと? 大丈夫、貴方も剣を降ろして――」
 動き出そうとするイェルハルドの足元へ弾丸が走る。
「――イレギュラーズ! 忌々しき奴らですね!」
 アンティーク調の銃を構える『剣砕きの』ラダ・ジグリ(p3p000271)はちらりとライラに視線を向ける。
(なれるだけの力になると言ったからな……)
 そのまま視線を前に向ければ、その中には見覚えのある顔が2つ。
(ナディアとマアルーフもいるか……無事とは言い難いが)
「ライラ、アレが旦那か?」
 頷いたライラを見ながら、ラダは次を装填する準備を進めながら動き出す。
「とはいえ、状況が状況だ。悪いが旦那の救出は最後の方になる。
 だが必ず助ける。手助けを頼めるか?」
「はい――むしろ私の方こそ、お願いします!」
「……錯乱、していらっしゃるご様子でしょうか」
 イェルハルドを見つめた『夜咲紡ぎ』リンディス=クァドラータ(p3p007979)はライラの肩に手を置いた。
「大丈夫、声は必ず届きますから。信じて、呼びかけましょう」
「――はい、ありがとうございます」
 目の前の夫の様子に緊張しているのか、ライラの声色は揺れていた。
「それでは、一緒にいきましょう――」
 そのまま白紙の頁に記すはある少年の物語。
 未来へを背負い羽ばたく彼から励起するは文字通りの空を舞う翼。
 9人の背中に魔力で出来た翼が浮かび上がる。
「あの変わった形の剣、鈎っぽい形状をしているな……見るに内側には刃がある。
 となると、衣類や鎧に引っ掛けたり、腕や足を抑えたり…柔らかい所ならそのまま斬ったりできる構造、かもしれない」
 蛇鞭剣ウヌクエルハイア抜いたアーマデル・アル・アマル(p3p008599)は光源を反射するイェルハルドの剣を見ながら推測を立てる。
「おう、待たせたな」
 見つけた集団に向けて声をかけた『竜撃』ルカ・ガンビーノ(p3p007268)は黒犬(偽&誤)を担ぎながら彼らを見渡した。
(アミラとジャミールに頼まれたっつーのもあるが……)
「何より気の良い奴らが利用された挙げ句死んじまうなんつーのはどうにも我慢ならねえな」
 言うや静かにその表情を自信に満ちた笑みに変えて。
「だからよ、一人残らず助けるぜ」
 一振り、払う黒き刃が風を裂いて獣の咆哮が如く音を鳴らした。
「狂気の影響……ではなさそうね。洗脳、かしら?
 嫌な盗賊もいたものね……けれど」
 指輪より変じた大鎌をくるりと回して構えた『砂食む想い』エルス・ティーネ(p3p007325)はイェルハルドからその視線を別方向へ向ける。
「助けてと言ってくれるなら、助けない特異運命座標は少なくない。
 私も……その一人だもの!」
(……このために僕は来たのです。
 邪悪を打ち砕き、人質だろうと盗賊だろうと誰一人として見捨てない)
 魔術書――寓喩偽典ヤルダバオトを開き、魔術を紐解く『心臓もさもさらしいわ!?』ヨハン=レーム(p3p001117)はその目に覚悟を滲ませる。
「そんな理想、夢想を現実のものとするために僕は戦いましょう」
 呼吸と共に、電撃を魔力となして放出させる。
「イオニアス――デイブレイク!」
 雷霆が迸り、周囲の仲間達の動きを活性化させていく。
(旅芸人が盗賊団で、ね。色んな経緯があってのこととはいえ、旅をしていたのなら用心するべきだったんじゃないだろうか)
 そう手厳しい思いを内に見せる『銀なる者』リウィルディア=エスカ=ノルン(p3p006761)は狂乱の敵陣を見て、やがてその視線を一人の女性に向ける。
 戦場にはあまり似つかわしくない占術師の風を見せる女。
 事前の情報に聞かされていたナディアなる女――その手に収まる水晶の輝きは魔性を帯びつつある。
「人質と戦わせるなど趣味の悪いことを……
 殺してしまうのは寝覚めが悪いですし、助けられるように努力しなければなりませんね」
 弦を持たぬ漆黒の弓を構えた『黒狼の従者』リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)は魔力を収束させ、矢を形作りながら主君に思いを馳せる。
(……それにご主人様がおられたら助けろ! と命を下されるはずです)
 静かに視線をなにやら詠唱を唱え続けているナディアに向ける。
 可視化していく収束される魔力の量を見れば、放たれたら拙いことなど容易にわかる。
「此度は一緒の戦場で戦うことは叶いませんでしたが、私には私のできることをやるだけです!」
 形成された漆黒の矢をナディアに向けて構え呼吸を整え集中する。
 自らの安定性を上げたラダは敵陣を駆け抜けて真っすぐにイェルハルドの前へ躍り出た。
「イェルハルド、状況に違和感はないか?」
 躍り出てきたラダを警戒するようにイェルハルドが後退する。
「何を言っているのです?」
「何も分からないなら、分かることから考えろ!
 ライラの事は覚えているな? 彼女と一緒だったことも!」
 声に、イェルハルドの表情が歪む。
「ライラ! 声をかけ続けろ! 目に見えた反応はなくとも声は届く! 踏みとどまらせろ!」
 冷静に相手を観察しながらも、ラダは振り返ることなく声を上げた。
「貴方……! 剣を降ろして! 誰かを傷つける為にそれを身に付けたんじゃないって言ってたでしょう!」
 スパークの爆ぜる斬撃がイェルハルドへ注がれていく。
「黙れ黙れ黙れ!」
 三度の連撃を浴びせるイェルハルドの攻撃を受け切ったラダへ、リンディスは物語の一頁を紡ぐ。
 励起された戦術はある男の熟した鉄壁の防衛戦術。描いた物語は2人の動きを最適化させていく。
 その一方で、その目は相手の様子を読み取るよう試み続けている。
 仲間達が狂奔の人質を狙って動くのを横目に、描き出したある治癒魔術が傷を負った2人を癒し、再起させる。


 アーマデルは最速で動いた。
 振り抜かれた蛇鞭剣ウヌクエルハイアは鞭のようにしなり、ナディアとその近くにいた人質たちへと走り抜ける。
 風を切り裂き、軋り奏でる独特の不協和音。
 強烈な音は人々の脳髄を揺らし、うちうちまで響き渡り、その動きを縛り付ける。
 偽りの聖女と誹られた女の怨嗟を奏でる刃鳴に唸り声をあげる人々は、故に身に刻まれた癒えぬ傷に気づきもしない。
 ルカは詠唱を続けるナディアの眼前に割り込んだ。
 錯乱して目の泳ぐナディアと視線が合った。
 収束させた闘気は漆黒のオーラとなって可視化すると同時、愛刀の刃を大きく膨張させる。
 そのまま力任せに横殴りに叩きつける。
 収束していた漆黒が強烈な一撃となって彼女の身体を包み込んでいく。
 続けるように姿を見せたエルスは自らの魔力を鎌の切っ先に収束させていた。
 真っすぐに振り下ろされた美しき軌跡の斬撃は、ナディアの身体を強かに切り裂いた。
 咄嗟の回避さえなく、真っすぐな振り下ろしを受けてなお、女の詠唱は止まらない。
「目を覚まして! まだ…貴方達の帰りを待ってる人がいるでしょう!」
 声を上げる。ほんの一瞬、ナディアの瞳が揺らいだように見える。
 リウィルディアはその瞬間を待っていたかのように雪月花を振り抜いた。
 放たれた斬撃は真っすぐにナディアへと走り抜けて、その身体に傷を付ける。
 狙い澄まされた斬撃はまるで読んでいたかのように傷を付ける。
「うーん。洗脳、奸計、同士討ち。悪巧みのフルコースですねぇ」
 ヨハンは動き出した戦場を見ながらそう言うと、ヤルダバオトの頁を次に進める。
「ハッキリ言って僕の前でこんなチープな手が通用すると思われている事が不快です!」
 魔力を籠めて放たれた術式はナディアの足元にくるりと円陣を描き出す。
 魔力を注ぎ込まれた陣は一瞬にして強烈な光を放つ。
 連撃にナディアが微かに膝を曲げる。
 そこへ放たれたのはリュティスの矢だった。
 ナディアの頭上あたりへと放たれた矢は彼女の頭上で炸裂し、強烈な閃光となって瞬いた。
 慈悲を持ち、邪を払う鮮烈なる輝きに、ナディアの身体がくらくらと倒れていく。
「全員助ける。だから今は下がってろ」
 起き上がって、周囲を見て驚いた様子を見せるナディアへ声をかけたルカと、近くにいたエルスを、刃が駆ける。
 振り返りざま見ればそこにはマアルーフが立っていた。
 振り下ろしたであろう大薙刀が恐らく敵の定位置へ戻っていく。
 そして――その立ち位置は、ルカにとって最適の間合いだった。
 導かれるが如き栄光の一手、膨張する漆黒の一太刀を上段から振り下ろす。
 強靭な顎に抉られたような傷痕が、マアルーフに刻まれていく。
(洗脳されているとは言え手加減し過ぎるとやられるのかしらっ?
 程々に責めなくちゃいけないなんて難しいわね……)
 傷口の痛みを感じながら、エルスは脳裏に浮かんだ思いを振り払う。
(でもやるわ……だって救いたいんだもの!)
 前を見て、定まった野心のままに漆黒を描く鎌が美しい軌跡を描いてマアルーフに強かに撃ち込まれた。
 ヨハンの手にあるヤルダバオトが淡い輝きを放つ。
 それはそれより始まる魔術にあらず。接続するはこの世界そのものに。
 媒介と化した魔術書から魔力を吸い上げ、齎した輝きがルカとエルスに刻まれた傷跡を再生可能なものへと書き換える。
 反則的な輝きの後に、そのまま魔方陣を描き出す。
 美しき白亜の陣より放たれた鮮やかな輝きが、2人の傷跡を瞬く間に癒していく。

「――彼か」
 剣を握り、狂奔に震えながら攻撃を仕掛けてくる人質達の中から一人を指さしたナディアを見て、アーマデルはそこを中心に据えた。
 横に引くようにして放たれた鞭剣が縦横に走り回り、強かに3人の人質達を打ち据え、怨嗟の歌を奏でる。
 受けた彼らがバタバタと倒れていく。
 リウィルディアは魔力を刀へと流し込む。
 導き、合わせ、求めた果てに形作る賢者としての魔術行使。
 そのまま刀を払うように宙に滑らせば、残像が形を成したように幾重もの氷の刃と化した。
 揺蕩う魔力を弾くように放てば、氷刃は疾走し、横一直線に人質たちを撃ち抜いていく。
 もうじき倒れそうと見て取れば、そのまま刀に魔力を籠めた。
「一気に片付けてしまいましょうか……」
 もう一度引き絞った弓――撃ち抜いた矢はリウィルディアの攻撃で怯んだ数人の人質たちの頭上で瞬いた。
 邪を払う神聖なりし聖なる輝きは、幾重にも瞬き、人々に救済と休息の輝きを齎す信仰の光である。
 唸るように声を上げる彼らが頭上の輝きに手を伸ばし、ぽつ、ぽつと倒れていく。


 車輪の如く側転しながら斬りつけたイェルハルドの剣が舞い、二度に渡ってラダの身体を刻み付けた。
 それとほぼ同時、ライラが前に出る。
「無理はするなよ。もうすぐ皆が来る。それまでの辛抱だ」
 慣れぬ盾役ではあった。敵の攻撃は必中を期し、一撃は重くはならない。
 それを差し引いても、その身軽さからくる連撃はラダの傷を増やしている。
「大丈夫ですか」
 リンディスは、ラダとライラの間に布陣し最適なる軍略を導き出す。
 敵の動向を踏まえた最適解を2人に投げかけながら、その一方で新たな物語を解き記す。
 名高きある魔術師の回復術を再構築し、描き出した陣がラダの傷を癒していく。
 ラダはその目に何かを見た。撃ち抜くべきは必中の先。
 それは元来、人殺しのための邪剣の理。
 それを射撃に応用して、恐らくは最適であろう場所めがけて引き金を引いた。
 真っすぐに跳ねたゴム弾は、イェルハルドの腕の関節を撃ち抜き、彼の動きが一瞬ながら停止する。

 その背後から爆ぜるように駆け抜けた風――アーマデルが超加速と共にイェルハルドへと突貫する。
 手に握るアルファルドを衝撃と共に撃ち込み、術式を叩き込む。
 爆発が如き衝撃にイェルハルドの眼が見開かれた。
 ラダの殆ど隣にたどり着いたリウィルディアが、続けるように刀を振り抜いた。
 不可視の斬撃は避ける事の叶わぬ必中の一撃である。
 叩きつけられた斬撃はしかして殺すことの亡き慈悲の一刀。
 ぐらり、イェルハルドが動き、倒れていく。


「わた、私は……なんてことを……」
 戦いが終わって後、イェルハルドが震える声で頭を抱えていた。
「……これからあんたらはどうするんだ?」
 ルカが声をかけたのは夫を支えるナディアと、妻を抱きしめ、落ち着かせようとしているらしいマアルーフの二人。
「私達はネフェルストへ戻ろうと思います」
 そう言ったナディアに頷き、その視線をマアルーフへ向ければ、少しだけ考えた様子を見せ。
「俺達もネフェルストに戻る。今回みたいなことがまた起きてシャリファが攫われちゃ困るし、稼業を考えないとな……」
「そうか……なら、もう捕まるんじゃねえぞ」
 4人は礼を言いつつ、頷いた。

「洗脳は解かれたみたいね……ともあれ、解決に導けたかしらね?」
 一息ついたエルスはより広くを見る。
(夫婦と言う繋がりは私にはまだピンと来ていない。
 だけど……この方々を見てわかる。とても大切な繋がり、絆なのだと……)
 ライラとイェルハルド、それにナディアとアズィーズ、マアルーフとシャリファはぞれぞれ、お互いに相手の事を気遣いながら落ち着かせあっている。
(っ……まだ戦いは終わってないわね……引き続き周囲を警戒しましょ)
 思い浮かびつつあった自分なりの『繋がり』に思いを馳せようとしつつ、それを一旦振り払って、エルスは顔を上げた。

成否

成功

MVP

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽

状態異常

ラダ・ジグリ(p3p000271)[重傷]
灼けつく太陽

あとがき

お疲れさまでしたイレギュラーズ。
MVPはラダさんへ。見事な健闘でした。

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