シナリオ詳細
<アアルの野>宝を護るは盗掘者……?
オープニング
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砂漠地帯のラサには様々な遺跡が眠っているが、遺跡群の一つに「FarbeReise」(ファルベライズ)と呼ばれる区域がある。
その中には、小さな願いを叶える宝、『色宝(ファルグメント)』が眠っている。
幻想、ローレット。
「ちょっと話をきいてもらってもいいっすか?」
『パサジールルメスの少女』リヴィエール・ルメス(p3n000038)はそこに詰めていたイレギュラーズ達へと声をかける。
彼女はまず、現状、ラサで起こっている状況をかいつまんで説明を行う。
リヴィエールらパサジール・ルメスの民はファルベライズと縁が深い。
元々は色宝の回収も、彼らからの依頼で端を発したものだ。
回収された色宝を狙う大鴉盗賊団が大きな動きを見せ始めているのが気がかりだが、今はファルベライズ中核への調査も勧めたい状況にある。
「遺跡奥を目指す為、キミ達の力をお借りしたいっす!」
現状、ファルベライズ中核……クリスタル遺跡を探索中であるが、そこにホルスの子供達なる土くれの人形達が現れるのだという。
ホルスの子供達……土塊の体に『死者の名前』を与え、その姿を映し出すことができるという『博士』なる錬金術師による作品。
それらがとある通路で、死者の魂や遺跡の守護獣と共に道を塞いでいるのだ。
「さらに奥にはまた新たな敵がいると思われるっす」
また、いつ大鴉盗賊団と出くわすか分からぬ状況もある。
だから、1つずつ確実に障害を取り除き、先へと進みたいのだ。
今回の障害となるホルスの子供達の一団を討伐できれば、戻って報告して問題ない。ある程度調査に利用している道を使っていることもあり、道から外れすぎなければ、他の敵と出くわすこともないだろう。
「それでは、よろしくお願いするっす」
リヴィエールは行商もあり、同行することができないそうだ。
彼女の依頼を受け、イレギュラーズ達は一路ラサへと向かう準備を始めるのだった。
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ラサに至ったイレギュラーズ達は、ファルベライズの中核へと向かう。
そこは、クリスタルで作られた壁で覆われた遺跡。
その美しさに見とれながらも、メンバー達は中央の塔へと至る通路を歩く。
途中で、一行は長い通路の向こうに、リヴィエールが言っていた一団と出くわすことになる。
「コこハ、トオさナイ……」
「ワレらノ、タカら……マもル……」
奇怪な声を上げるのは、土でできた体を持つ4体の人形達。
クレイゴーレムともとれる見た目だが、胸部の色宝の存在もあり、メンバー達はこれらがホルスの子供達であることを知る。
「たカラ、ウバう……ウバう? イや、はカセハまモレト……」
「オレたちはトウクつセンモん……? ちガウ、シンにゅウシャヲハいジョ……」
意思の疎通すらできぬこの土くれどもは、その後ろへと死霊と遺跡の守護獣を従えている。
オオオォォオォオォオ……。
おぞましい叫びを上げる5つの黒い塊は時折人と思しき顔を出現させる。それらはレムルースと呼ばれる死者の霊だ。
アオオオオオオォォォォン!!
そして、後方にいる2体の巨大な獣は、頭がワニで、身体がライオンとカバという合成獣アーマーン。
それらは大きな口をパクパクと動かすだけでなく、雷を迸らせることもあった。
討伐対象を確認した一行は早速、それらを撃破すべく前方へと駆け出していくのである。
- <アアルの野>宝を護るは盗掘者……?完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年01月31日 22時20分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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ラサ、ファルベライズ遺跡群。
依頼を受けたイレギュラーズ一行はその中枢へと突入し、光が乱反射する通路を奥へと進んでいく。
「狭いね……」
白い髪、伊達眼鏡をかけた『白い悪魔』白夜 希(p3p009099)が呟く。
ただ、ギフト「勿忘草」の効果もあって普段から存在感が希薄な彼女のこと、その声は皆から聞き流されてしまう。
「クリスタルの遺跡か。中には高価な宝石が眠っていそうだぜ」
ワイルドさを感じさせる大柄な『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)は周囲へと紅い瞳を巡らせて。
「とはいえ、その前に邪魔な守護者を片付けねえとな」
程なく、ジェイクの視線は獲物と見定めた者達へと向けられる。
「コこハ、トオさナイ……」
言語が覚束ない土くれの人形……ホルスの子供達である。
「子供達と聞いていたのですが、これは思っていたのとは違いますねぇ」
背から4つの蜘蛛の足を生やし、目を拘束具で押さえつけた『蠱惑可憐な捕食者』リーラ ツヴァング(p3p009374)はいろんな意味で子供好きとのことで、人形らの見た目を少し残念がっていた。
「たカラ、ウバう……ウバう? イや、はカセハまモレト……」
「オレたちはトウクつセンモん……? ちガウ、シンにゅウシャヲハいジョ……」
アアアァアァアア……。
グウゥゥ、グアアオオオォォ……!
それらは5体の死霊の魂や2体の合成獣を従えていたのだが、希は数よりも人形達の言葉へと注目して。
「なんて言ったの? 盗掘専門?」
「盗賊……いや、盗掘者か。こりゃあ流石に哀れなもんだな」
色黒な肌をしたラサの青年、『竜撃』ルカ・ガンビーノ(p3p007268)は、自我の認識に戸惑う人形に憐憫の念を抱く。
(やはり、意思疎通はできないか……)
相手は意志を植え付けられた土人形。その言動はもちろんのこと、霊魂に呼びかけても黒髪ショート、褐色肌の少年、アーマデル・アル・アマル(p3p008599)にはその意志を解することができない。
「遺跡を侵す我々が盗掘者を相手にするとは。数奇な事もあるものだな……」
虚ろな目で眼前の敵を確認した、『天罰』アレックス=E=フォルカス(p3p002810)の思考の通り、遺跡への侵入者であるイレギュラーズ達が対峙しているのは、盗掘者の姿を映した土人形。
「そうか、キミ達は博士に護ることを命じられて」
眠たげな眼の獣種少年、『騎士の忠節』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)は土人形達に呼びかける。
胸部に色宝を埋め込まれたそれらは博士なる存在によって作られたというが……。
「名と姿を盗むと言われ、そうしたものを見てきた。『らしい行動』をとるのは経験までも盗んだからだろうか?」
アーマデルはホルスの子供達について考察する。
死者からではなく、他者の記憶から生まれるものであるから死者『本人』の記憶は受け継がないが、どのように振舞うべきかを読み取る……。
「……のかな、考えても詮無き事ではあるけれど」
本当のところは分からないが、アーマデルの仮説は一考の余地はあるだろう。
「こいつらも言動からすりゃ博士の手のモンか」
死んだ盗掘者か、それをコピーさせられたホルスの子供達か、どちらに同情すればいいか分からぬルカはこう感じて。
「ジナイーダと言いこいつらと言い、置き土産がすぎるんじゃねえか、博士よ」
ジナイーダ……元は人間種の少女だった合成獣。その1件がイレギュラーズに与えた衝撃は大きい。
「博士は守れって……やっぱ博士ってのが指示してるんだね」
希がそこで、後ろにいる合成獣アーマーンに注意を払う。それらも博士が作った存在ではないだろうか、と。
「霊はホルスの子供になれなかった子かな……運がいいやら悪いやら」
アルヴァはホルスの子供達が博士に守れと言われていたことを思い出す。
だから、死んだはずの4人の盗掘者が別の意思を持って土塊として復活していた。
果たして、その博士は今どこで、何をしているのか……。
「色宝を使って、死者の国でも作るつもりなのだろうか?」
目的が何であれ、博士のやったことは死者への冒涜。こんなこと許されるわけないし、許すつもりもないと、アルヴァは仕込み杖に手をかける。
「まぁ、これもお仕事なのでぇ。頑張ぁりますぅ」
リーラはあわよくば子供をお持ち帰りとも考えていたが、その考えは改めねばならないと、刀を抜く。
『琥珀の約束』鹿ノ子(p3p007279)が一行の手前、一番左へと移動する。
「まぁよい。一切合切、土塊も怨霊も醜き獣も。全て喰らおうか」
「宝を護る死者の魂。ミイラ取りがミイラにならねえようにしねえとな」
アレックスが仲間を護るべく前に出ると、ジェイクが拳銃を抜いて目の前の怪物どもへと銃口を向けた。
オオオオォオォオォ……。
グウウ、グガアアアアッ!!
「「はカセのいいツけ……こコはとおサん……!!」」
立ち塞がる敵に、アレックスは眉を顰めて。
「……『天罰』の前に立つ不敬を知れ」
動き出す仲間達に合わせ、彼は虚ろな瞳に力を籠めるのである。
●
「「おおおオおおオお!!」」
叫ぶ4体のホルスの子供達。それらに、死霊や合成獣も追随してきた。
クリスタルの通路には幅がある。
手前の右端へと位置取ったアーマデルは仲間が出る前に、英霊の遺した怨嗟の音色を敵陣へと響かせる。
人ならざる存在すらも呪い、その歪んだ生をもアーマデルの奏でる不協和音は脅かす。
重ねて、ルカが厄介な物理耐性のある死霊、レムルースをメインに見据えてパワーを魔剣へと籠めて。
「驚天動地! パンドラフィニッシュ!」
ルカが片手で放った剣閃が敵陣を薙ぎ払う。その一撃に射抜かれた死霊達も気圧され、やや勢いを削がれていたようだった。
それでも、全員が止まったわけではない。仲間へと土でできたナイフで攻撃しようとしてくる素早い土人形達に対してアレックスがブロックに入って。
「キミ達が護るものがあるように、俺にも護るものがあるんだ」
攻撃した仲間達の後、アレックスはすぐさま壁となり、敵の攻撃を防ぐ。
「俺たちはどうしてもこの先に進まないといけないんだ、安らかに眠ってくれ」
飛行するアルヴァも機動力を活かして先頭に出て、アレックスとアーマデルが囲まれないようブロックに入る。
近づいてくる土人形達は博士の言いつけを護るべく、土のナイフを振るい、スリンガーから土塊を飛ばしてくる。
それは本当に目的意志を持っているわけでなく、甚く機械的だとアルヴァは感じて。
「安心して、すぐに解放してあげるから」
縛り付けるその枷から解き放つ為。
アルヴァは自らに英雄の魂を再現せんとし、防御の構えを取ってその足止めに当たろうと身構える。
「ここから総攻撃だね」
希の言葉の後、すぐに動いたリーラはレムルースを優先的に捉える。
水晶の壁を蹴り、天井を道とするリーラは狭い通路を縦横無尽に駆け回り、神速の一撃を死霊へと叩き込む。
物理耐性のある敵だが、それほど体力はなさそうな相手。すでに消えかけたその死霊の様子に、リーラは笑みを湛えて。
「可愛い子供相手なら手加減しますけどぉ? そうじゃないなら問答無用であの世に送ってあげますよぉ」
リーラのプレッシャーを受けて僅かにたじろぐ敵だが、すぐに前のめりに攻撃を再開した相手へ、鹿ノ子もエンジンを全開にして。
「行くッスよ! 『月の型「狂禍酔月」』!」
刀状になった魔剣を抜いた鹿ノ子は高速の斬撃をホルスの子供達へと浴びせかけていく。
相手も素早いが、それでも鹿ノ子も負けてはいない。
「その身に受けよ高速の連撃! 付いた傷口に再び刃を!」
自らのつけた傷をなぞる様にして、鹿ノ子はなおも切りかかる。
その開いた傷口から浸食する狂気。傷を負った土人形がおかしな挙動を始めて。
「ああアっ、アあああアああァっ!」
「まるで月に魅入られたウサギのように、さぁ、踊り狂え!」
狂気に満たされて正気を失う土人形へと、鹿ノ子は何度でも連撃を叩き込む。
さらに、希が神気を発して敵陣を灼く。
早くも1体の死霊が消え去る中、希は前線メンバーの疲弊具合をチェックし、攻撃するか回復に回るかの判断を逐一行う。
そして、少し後方に陣取るジェイクも土人形を中心に愛銃の餓狼と狼牙で敵陣目がけて弾幕を張り巡らす。
それだけでなく、ジェイクは動きの鈍っていた1体の胸部にあるコアを撃ち抜く。
「なるべく早く解放してやらねえとな」
――死んだ後くらいゆっくり寝かせてやりたい。
ジェイクはそんな想いを抱きつつ、さらに愛銃の引き金を引くのである。
●
イレギュラーズはホルスの子供達とレムルースと優先的に対し、戦いを進める。
「騎士の名の下に、この先へ進ませてもらおうか」
名乗りを上げるアルヴァの元に、素早く土人形が迫る。
「させハせん、さセるものカ……!」
動きは生前の盗掘者を思わせる動きを見せるホルスの子供達。
そのナイフ捌きにアルヴァの傷が深まれば、希はすぐに大いなる天の使いの救済を思わせる力を行使し、治療へと当たる。
なお、先に攻撃を仕掛けたアーマデルは上手く壁際に下がって敵の注意から反れていたようだ。
「数が多い、出し惜しみは無しだ」
そこで、アルヴァは自分の注意から反れた敵を見据え、さらに名乗りを上げて注意を引いていた。
こちらもタンクとしての役を果たすアレックス。
レムルースを他メンバーに任せ、敵陣の中にまで進み出たアレックスは土人形を破壊すべく嵐を巻き起こす。
ただ、彼の方へと魔獣アーマーンが迫る。
大きな口によるかぶりつきは肉ごと食い千切られかねない力がある。その侵攻をアレックスは食い止めようとするが、アーマーンの恐ろしさはそれだけではない。
グアアオオオオオオオォォ……!!
激しい雷撃を巻き起こし、こちらへと叩きつけてくることもある。
それも希は冷静に対処し、すぐさま死神の唄を響かせて仲間の治癒へと動く。
同じタイミング、鹿ノ子は自身の攻撃で正気を失った土人形に連撃を叩き込む。
敵の横が僅かに開けば、彼女は素早くサイドや後ろへと回り込み、黒蝶の刃を浴びせかけて土人形を仕留めてみせる。
さらに、鹿ノ子は後続の敵が味方後方にまで進んでこないようしっかりとマークも行っていた。
他メンバーの総攻撃も加速する。
(影に隠れ、意識の外から命を刈り取る。乱戦でこそ輝きますねぇ)
自らが打たれ弱いことを自覚し、リーラは目立つ仲間達の陰で刃を操る。
レムルースメインで攻撃するリーラだったが、土人形が弱ったと見れば、すぐに壁を蹴って距離を詰める。
(クレイゴーレムみたいですが、胸の色宝を狙えば楽に倒せたりしますかねぇ?)
胸部深くまで刃を突き入れたことで、崩れていく土人形。その様子にリーラは笑みを浮かべていた。
直後、アレックスの起こした暴風が敵陣で吹き荒れる。
「もうシわけ……はか……セ……」
与えられた任を果たせず、謝意を口にしながらも最後のホルスの人形は崩れ去っていく。
だが、それらが従えていた死霊と魔獣は健在だ。
オオオオォオオォオォオ……。
耳に残る呻き声は生ある者を死ぬまで苦しめ、自分達の仲間へと引き入れんとする。
イレギュラーズの狙いは継戦力を奪うそれらのレムルース達へと集まって。
「物理耐性があるってことだしな」
ジェイクは怨嗟の声を上げるレムルースを多数捉えられるよう仲間と調整して移動する。
そして、銃口から放つは存在を罪とする裁きの弾丸だ。
銃弾そのものではあまり傷は与えられないが、纏めて敵を撃ち抜けるだけでなく霊体にすら血を流すことができる。
突出を避けつつも時折跳び上がって壁を蹴り、動けるスペースを確保していたアーマデルは死霊を呪いで縛り付け続けていたが、鹿ノ子の『風の型「絶風」 』はピンポイントに死霊を狙う。
時折、死霊は腕を現して呪いを及ぼそうとしてくるが、鹿ノ子は難なく避けて。
「動きを読むことはできるッスよ!」
お返しにと鹿ノ子はそいつの相手の防御を崩し、神秘攻撃が得意な仲間に追撃を託す。
「お前らももう、ゆっくり眠りな!」
――このレムルースも死霊って事は、ここで死んだ誰かの魂なんだろうな。
そう考えるルカもまた多くのレムルースを射程に収め、大声で叫んでからパワーを籠めて死霊達を薙ぎ払うと、1体が跡形もなく消し飛んでいた。
オオオォオオォオオオ……。
せめて1人くらいは恨み辛みを味あわせようとする死霊だが、希がそれをさせない。
「残念ながら貴方達の呪いは届かせてあげないし、その肉は貴方達の物じゃないから憑りつかせもしない」
仲間達の疲弊を見て、彼女はすぐに死者の指を触れさせ、体力気力のカバーへと当たる。
アーマデルがさらに、蛇銃剣で斬りかかる死霊を弱体化させ、個別に追い詰める。
相手の存在が消滅し翔ければ、ジェイクが銃弾を撃ち込み、神秘の力をもって死霊1体を撃ち抜き、消し飛ばす。
「ちょっと気を付けてくれ」
そして、仲間へと呼び掛けたルカが一気に残る死霊を倒しにかかる。
「驚天動地! パンドラフィニッシュ!」
オオオオォオォオ…………。
次の瞬間、レムルースの呻きが完全に消え去った……のはいいのだが。
「これ、いちいち叫ばねえといけねえの、ちと恥ずかしいな!」
技を繰り出す度に叫ぶルカは思わず、頬を赤らめてしまうのだった。
●
ホルスの子供達は崩れ、死霊レムルースも消え去ったが、まだ合成獣アーマーンの巨体が2体並んで通路を塞ぐ。
とはいえ、巨躯故にホルスの子供達やレムルースと交戦の最中で攻撃に巻き込まれていたそれらの傷も決して浅くはない。
グウウ、グワウアアアアッ!!
飛び掛かるその動きはライオンの膂力によるもの。それでいて、カバのどう猛さとワニの噛みつく力は脅威だ。
それらを常時引き付けていたのはアルヴァだったが、さすがに彼も傷が深まって苦しくなっていた。
そこで、アレックスがすかさず魔眼で相手を凝視し、雷光を発して援護する。自身が崩れるより、アルヴァが崩れた方が味方の被害が大きいと判断しての行動だ。
「クク、好きに暴れるだけの私は気楽なものよ」
笑みを浮かべるアルヴァに注意が反れた隙に、希が彼へと大天使の祝福をもたらして傷を塞ぐ。
「さあ、もうひと踏ん張りだ」
傷の言えたアルヴァはさらに名乗りを上げ、仲間の攻撃を待つ。
ルカはチームのヒーラーとなる希へとアーマーンの注意が向いていないことを確認しつつ、直視の一撃をその片割れへと向かわせる。
ワニの顎もなかなかのものだが、膨張した黒の大顎は負けず劣らず激しく食らいついて牙を体の深くにまで食い込ませる。
その背後、影に隠れていたリーラが姿を現し、刀でワニの頭を命ごと刈り取ってみせた。
もう1体のアーマーンには、仲間と足並みを揃えるアーマデルが直接蛇の吐息を浴びせかける。
グ、グガオオオォォ……。
小さな蛇であれど、巨大な獣にすら及ぶ強力な毒をもたらし、焼けつくような痛みに苛む。
いかに素早い相手でも、痛みに悶える敵ならと鹿ノ子が迫って。
「僕の連撃から逃れられるものなら逃げてみろッス!」
彼女の握る刃は美しくも怪しい剣戟となり、アーマーンを徐々に狂わせる。
「お前達が本来の遺跡の守護者だってな」
ジェイクが語りかける合成獣は正気を失いかけており、その言葉を解しているかも怪しい。
だが、ジェイクは小細工なしで攻め立てる。
「敬意を払って叩き潰す。そして、俺達がお宝を頂く」
ジェイクもまた、黒い顎を呼び起こし、アーマーンの身体へと食らいつかせる。
その牙は心臓にまで至り、アーマーンの目から光が消えていく。
「これで進む事が出来るな」
どうとその巨体がクリスタルの通路に倒れたのを確認し、ルカは刃を収めたのだった。
●
障害となる全ての敵を討伐し、イレギュラーズ達。
アルヴァや希が落ちていた色宝を回収し、さらなるホルスの子供達の生成を防ぐ。
「やれやれ、本当に反吐が出る」
非人道的であるその存在を認めてしまえば、護るべきものを見失いかねない。それ故に色宝を見つめるアルヴァは思わず毒づいてしまう。
「何故ここにいる。何に縛られてるの……?」
希は改めて、周囲へと霊魂疎通で呼びかける……が、残念ながら返事はない。
先程いたレムルースらが盗掘者の魂なら、それをなぞらえたと思われるホルスの子供達に植え付けられた記憶はどういう形で再生されるのかと、こちらも色宝に視線を落とす希は考えを巡らす。
「すでに尋常じゃない数の色宝が世に出ている。このクリスタルの迷宮そのものが、力のある石なのでは。……いや」
しかし、アークの連中が出てこないことから、世界を滅ぼす程の力はないのだろうとも彼女は推察する。
「改めて、クリスタルの迷宮……美しいものだな」
この美しい光景を絶賛するアレックスは、遺跡で唯一陰気臭い部分……『博士』の残した『ガラクタ』を片付けた後にまた来るのもいいかもしれないと本音を覗かせた。
「まだまだこっからが本番だな」
ともあれ、ルカも通路の前方を見ながらも、今回は報告の為に仲間と共に入口へと引き返していくのである。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPはホルスの子供達の状況を探り、さらにチームの盾として皆が万全に戦えるよう敵を抑えた貴方へ。
今回はご参加、ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
『アアルの野』のシナリオをお届けいたします。
●目的
クリスタルの迷宮内の一角にて、ホルスの子供達一団を退けること。
●敵
○ホルスの子供達×4体
胸部へとコアのように色宝が埋められた土塊の生き物です。
見た目は軽装の男性2名、女性2名。どうやら、盗掘者の名前が与えられているようですが、奇怪な言葉遣いを理解するのは難しく、この場でそれを知るすべはありません。
自分達が盗掘者だったという認識を持っており、土くれでできた短刀を両手に持って切りかかってきたり、スリンガーから土塊を射出してきたりします。
○レムルース×5体
死者の霊達です。ホルスの子供達を作り出すべく、呼び寄せられたものだと考えられます。
物理耐性を持っており、相手に憑りついて窒息、苦鳴を与えんとする他、強力な呪いを及ぼすことがあります。
○アーマーン×2体
全長3mほど。ワニの頭、ライオンの上半身、カバの下半身を持つ合成獣。
元々は遺跡の守護獣だったようですが、ホルスの子供達に従っているようです。
見た目よりは素早い相手で、しつこく食らいついてくる他、電撃を操って浴びせかけてくることもあります。
●NPC……リヴィエール・ルメス
今依頼は依頼説明のみで、依頼には参加しません。
●概要
ファルベライズ・中核であるクリスタル遺跡の一角となる通路にて、ホルスの子供達の一団を討伐、撃退していただきますよう願います。
遺跡内は輝くクリスタルで構成されて煌めいております。
遭遇するのはその通路で、幅は10mほど、長さは50mほどあります。
敵は通路の端付近10mの辺りで待ち構えており、ここを突破できる状況を作ることができれば依頼は成功となります。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
それでは、よろしくお願いいたします。
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