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シナリオ詳細

再現性東京2010:夜妖になった男

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「……っクソ、なんだってこんなことになりやがった」
 男は半ば呆然と、両手を見つめていた。
 ぬるりとした感触は、大量の血によるもので、足元にも同じく血塗れの刃物が転がっている。

 手が震えた。足が戦慄いた。
 男はたった今、生まれて初めて人を刺し殺したのだ。
 転げた死体の上着で手を拭い、刃物を拭き取り、それから財布の紙幣を数枚ポケットに突っ込む。
 金銭を脅し取るつもりであったが、犠牲者はあろうことか立ち向かってきたのだ。
 もんどりうって倒れた際に、刃物が犠牲者を貫いた。
 こうして男は殺人者になった訳である。

 いくらかの不幸――男にとって――は立て続いた。
 買い物袋を取り落として叫ぼうとした女を、男は慌てて殴り倒した。
 女は頭から血を流して、死んでいる。
 男は走った、逃げ出した。

 けれど路地裏に隠れた時、幼子を育てる母猫が威嚇をしてきたのだ。
 男はそれも殺した。もうタガが外れていた。
 河川敷から通じる下水道へ身を隠すまで、男はついに四人もの命と、数匹の動物たちを殺していた。


「本当は夜妖じゃなかった、でも今は夜妖憑きの事件」
 カフェ・ローレットで『真心の花』ハルジオン (p3n000173)は、イレギュラーズへそう言った。
 ここ練達の再現性東京2010街『希望ヶ浜』では、モンスターを夜妖と呼び習わし、居ないものとして扱っている。夜妖を倒すのは希望ヶ浜学園や祓い屋、そして学園と提携しているローレットのイレギュラーズだ。
 この地域では、街の平和を守るために、イレギュラーズは日々暗闘しているだ。

 ハルジオンの説明によると希望ヶ浜で連続殺人が発生したらしい。
 容疑者はなかなか捕まらず、街では『怪異の仕業』という都市伝説が発生した。
 ネットワーク上では、根も葉もない噂が書き込まれ、この平和な都市で生活する人々の一部は――おそらく被害者の遺族や友人達を除いて――この悲劇をどこかエンターテイメントのように楽しんだのだろう。

「それで都市伝説から生まれた夜妖が、男に取り憑いた。だから夜妖憑き」
 殺人犯であれば地元の警察当局の仕事だけれど、夜妖憑きとなればイレギュラーズの出番だ。
「みんなには二つの選択肢がある」
 ひとつは、男もろとも夜妖を祓うことだ。男は夜妖事件の犠牲者として処理されることになる。
 もうひとつは、男から夜妖を祓い、男を上手く捕縛して警察当局に着き出すことだ。
 地元の法律に則れば、男は間違いなく極刑となる。

 男はどうやら河川敷に身を潜めているらしい。
 具体的な場所は、ハルジオンがaPhoneの地図にピンを指してくれた。
 それから詳細な依頼内容と調査報告が転送されてくる。

「どうするかは、みんなに決めて欲しい」
 ハルジオンはそう言って、イレギュラーズを送り出した。

GMコメント

 桜田ポーチュラカです。
 夜妖として処理されるべきか、人として裁かれるべきか。

■依頼達成条件
 夜妖の撃破。
 殺人犯の捕縛、または撃破。

■フィールド
 夜です。希望ヶ浜の河川敷。
 一般人の気配はありませんが、手早く片付けたほうがよいでしょう。

■敵
・殺人犯(夜妖憑き)
 本名は模戸山やすひこ(41)
 失職し、強盗を試みたところ、被害者を殺してしまいました。
 それから数名の命を奪っています。
 極めて身勝手な犯行であり、捕まれば極刑は免れません。

 ナイフを持って襲ってきます。
 戦いの素人ですが、夜妖に憑かれていますので強いです。
 接近格闘戦闘と、夜妖による出血系の神秘攻撃を行います。

・夜妖:ウワサバナシ×10
 悲劇を望む声です。
 神秘単体攻撃、範囲攻撃があり、遠近両用。
 持っているBSは麻痺系と呪いと呪殺です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●再現性東京2010街『希望ヶ浜』
 練達には、再現性東京(アデプト・トーキョー)と呼ばれる地区がある。
 主に地球、日本地域出身の旅人や、彼らに興味を抱く者たちが作り上げた、練達内に存在する、日本の都市、『東京』を模した特殊地区。
 ここは『希望ヶ浜』。東京西部の小さな都市を模した地域だ。
 希望ヶ浜の人々は世界の在り方を受け入れていない。目を瞑り耳を塞ぎ、かつての世界を再現したつもりで生きている。
 練達はここに国内を脅かすモンスター(悪性怪異と呼ばれています)を討伐するための人材を育成する機関『希望ヶ浜学園』を設立した。
 そこでローレットのイレギュラーズが、モンスター退治の専門家として招かれたのである。
 それも『学園の生徒や職員』という形で……。

●希望ヶ浜学園
 再現性東京2010街『希望ヶ浜』に設立された学校。
 夜妖<ヨル>と呼ばれる存在と戦う学生を育成するマンモス校。
 幼稚舎から大学まで一貫した教育を行っており、希望ヶ浜地区では『由緒正しき学園』という認識をされいる裏側では怪異と戦う者達の育成を行っている。
 ローレットのイレギュラーズの皆さんは入学、編入、講師として参入することができます。
 入学/編入学年や講師としての受け持ち科目はご自分で決定していただくことが出来ます。
 ライトな学園伝奇をお楽しみいただけます。

●夜妖<ヨル>
 都市伝説やモンスターの総称。
 科学文明の中に生きる再現性東京の住民達にとって存在してはいけないファンタジー生物。
 関わりたくないものです。
 完全な人型で無い旅人や種族は再現性東京『希望ヶ浜地区』では恐れられる程度に、この地区では『非日常』は許容されません。(ただし、非日常を認めないため変わったファッションだなと思われる程度に済みます)

  • 再現性東京2010:夜妖になった男完了
  • GM名桜田ポーチュラカ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年01月31日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
流麗花月
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
希望の蒼穹
ピリム・リオト・エーディ(p3p007348)
《戦車(チャリオット)》
ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
猪突!邁進!
眞田(p3p008414)
Re'drum'er
秋野 雪見(p3p008507)
エンターテイナー
ジョーイ・ガ・ジョイ(p3p008783)
どんまいレガシー

リプレイ


 夜の河川敷に息づかいが聞こえる。
 狼狽え、息を切らせた殺人犯のものだ。
 目の前に現れた得体の知れない者達に怯え苛立ちを向ける。

「さて、正直に言えば、件の殺人犯は見捨てたところで非難される事も無いだろうし、私も彼ごと夜妖を撃破するのが早いと思っている」
『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)は片目を瞑って目の前の殺人犯を見つめた。
「だが、私はこの再現性東京という場所に、そしてここを作り上げた人々を尊敬しているんだ」
 見ようによっては逃避の産物。しかし、混沌という異世界に故郷の姿を再現するためにどれだけの苦労があっただろか。苦難が立ちはだかっただろうか。
 それを考えるだけでゼフィラの胸は締め付けられる。
「ならば、私はこの「東京」の法を尊重したい。
 殺人犯にこの場所の法に乗っ取った結末を与えるため、多少の手間は受け入れようじゃないか!」
「何を言ってやがる!」
 ぶるぶるとゼフィラへとナイフを向ける殺人犯。
「被害にあった人々の家族の事を考慮するのならば。捕縛し、人の法で裁くのが妥当だろう。
 ここで終わらせるのは、あの男にとって楽な結末に過ぎるからな」
 ゼフィラの背後に立つのは『流麗花月』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)だ。
 ここで夜妖として始末してしまうことは出来るだろう。
 しかし、それまで犯した罪は有耶無耶の侭、家族の感情の行き場すら無くなってしまうのだ。
 残された家族の為にも殺人犯を捕えるのが良いと汰磨羈は告げる。

「強盗なんてことをする前になんとかならなかったのかなって思ってしまうけれど……」
『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)の言葉が河川敷に流れていく。
 何もかもを失って生きて行くには、この街は冷たい所なのかも知れない。
 しかし、凶行を及んで良い理由になんて成りはしない。
「考えてもしょうがないけれど、悲しいなって思うね……」
 他にやりようはいくらでもあったはずだとアレクシアは考える。
「……でも、自分のしたことにはちゃんと向き合ってほしいと思う。だから、夜妖は祓って、しっかり捕まえて終わらせるよ」
 他の誰でも無い、模戸山やすひこの為にアレクシアは決意をした。
「嘘から出た実とはこういうことを言うのだろうな」
 アレクシアの隣には『艶武神楽』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)が居る。
「夜妖を払うのは我々の仕事。それはちゃんとこなすさ」
 いつもの美しい鎧ではなく、黒いスーツを身に纏ったブレンダは真剣な表情で殺人犯を見据えた。
『Adam』眞田(p3p008414)は赤い髪を掻き上げて溜息を吐く。
「犯罪者はとっ捕まえられて牢屋行き……どこの世界でもそう、それが決まりだから。当然の話だな。ま、捕まったらの話だけどね!」
 捕まらなければ事件は迷宮入りだ。けれど、それはきっと許されない。
「俺もねー、殺人犯さんはやり過ぎだと思うわ。そんな訳で捕まりたくなかったら、鬼ごっこ頑張ろうね」
 眞田はにやりと笑い、手を前に構えた。月明かりにじわりと黒い影が眞田の足下から這い出してくる。
『不屈の恋』ピリム・リオト・エーディ(p3p007348)は殺人犯の足を舐めるように見つめた。
「面白そーな方ですねー。是非とも脚を頂きたいところですが始末するなとの事なので我慢しましょーねー」 美しい女性の綺麗な足の方が好みではあるが、歪んでしまった男の足も気にはなる。
 どんな風に骨が歪み、どんな所に傷跡があるのか。そこに刻まれた年月の記録はきっと甘美なものだ。

「ふむ……夜妖憑きになったのだけは気の毒でありますが、私欲のために他者を殺害しての結果とみれば自業自得でありますな、同情の余地なし! であります!」
 ぴしっと殺人犯に言い放ったのは『どんまいレガシー』ジョーイ・ガ・ジョイ(p3p008783)だ。
 ジョーイの感情を表すようにメットのバイザー部分にι(`ロ´)ノという顔文字が表示されている。
「このような輩を他の被害者と同じ扱いにするのは被害者たちに失礼だと思いますゆえ!
 吾輩は夜妖だけを祓ってから捕らえてきっちり罪をつきつけるべきだと意見しますぞ!」
 ジョーイの声に『ネコメイド本領発揮♪』秋野 雪見(p3p008507)も頷いた。
「犯罪者には正義の鉄槌! それが殺人犯となればそれこそ許しておけないにゃ!」
 指先を殺人犯に向けて雪見は真剣な表情で睨み付ける。
「そして! 夜妖憑きとはいえ、まだ人として裁けるならそれにこしたことはないにゃ。
 というわけで夜妖をボコって殺人犯もボコってお縄にゃ!」
 雪見の号令と共にイレギュラーズは一斉に駆け出した。


「あー、でもやっぱりズボン履いてますよねー。ちょっとだけでも見せてくれると嬉しいんですが」
 ピリムは斬脚緋刀を滑らせ、誰よりも速く蒼き彗星を殺人犯へと叩き込む。
 挨拶代わりの攻撃を身に受け痛みに悶える殺人犯。
「な、んだぁ!? お前ら!」
「ちょっと足の一本でもくれれば、見逃してやらないこともないですが……」
「意味がわからねえ! クソ! お前も殺してやる! 俺はもう何人も殺しちまったんだ、あと一人ぐらいやっちまっても変わんねえからなあ!」
 ナイフをピリムへと突き出す男。
「おっと、そいつは私を倒してから言うんだな」
 ピリムへと走って行く男の前に立ちはだかったのはゼフィラだ。
「安心したまえよ。殺しはしないさ。ただ、死にはしないというだけで痛くないとは言ってないからね」
 目の前に現れたゼフィラへとナイフを振り上げる殺人犯。
 しかし、ナイフが彼女の肌を切り裂く寸前の所で白い光が溢れ刃をはじき返した。
「なんだ!?」
「はは。私にはそのナイフは効かない。どうだい? 不思議だろう? 世の中にはキミの知らない不思議な事がいっぱいあるんだよ」
 言いながらゼフィラは背後の様子を伺う。
 周りを取り囲むように集まったウワサバナシへと真っ直ぐに飛び込んだアレクシアは赤き花の如き魔力塊を生成、炸裂させた。真っ赤な花が飛びちった河川敷。
 ウワサバナシは目の前に漂う花をうっとおしそうに払う。しかし、払ってもくっつくばかりで一向に取れないのだ。苛立ちは術者であるアレクシアに向けられた。
「悲劇がお望みらしいけど、そんなものはこれ以上起こさせやしないんだから!」
 ウワサバナシは誰かの不幸を願った大衆の思いだ。自分に関係の無い所で繰り広げられる悲劇はエンターテインメントとして楽しむ分には丁度良い。誰かの不幸は見世物として消費される。
 アレクシアに向かって移動を開始するウワサバナシ。
 定型の無い身体は悲劇を望む声そのもの。アレクシアの耳元で呪いにも似た言葉を吐き続けるのだ。

 汰磨羈はアレクシアに取り憑いているウワサバナシと殺人犯を打ち抜ける射程に飛び込む。
「そんなに可愛い女の子の悲鳴がお好みなのか? お姉さんの魅力にも気付いてほしいな?」
 しなやかな肢体から撃ち出される複合討技。
 水行のマナで生んだ霧を噴射し、そこへ木行のマナを込めた気弾を打ち込むのだ。
 発生した霧へ木行のマナが伝播し、水生木による急速なプラズマ化と熱膨張と衝撃波を撒き散らす。
「験禳・咆靂哮湃!」
 遠距離から駆け抜ける高威力のプラズマの光に、空気が震え静電気が肌を走った。
 汰磨羈が生み出した光に殺人犯は怯む。その隙を狙うように雪見が殺人犯の背後に飛びかかった。
「はい! そんなわけで私は殺人犯をボコボコにするにゃ!
 やることは至って単純、物陰に潜んでからの奇襲攻撃ぃ!!!!」
 不意をつかれた殺人犯はガードする暇も無く、背中の急所を雪見に切りつけられる。
「ぎゃああ!?」
「へへん! 悪い奴にはお仕置きにゃ☆」
 すぐさま殺人犯の背後から飛び去った雪見ははぐれているウワサバナシを見つけた。
「こんな所でなにしてるのかにゃ? 一人で逃げようなんていけないんだにゃ!」
 ウワサバナシを戦場に戻すように回り込み、追い立てていく雪見。
「シュッシュ! まだまだなのにゃ! 窮鼠猫を噛むというにゃ。私ネコだからワンチャン危ない!」

 汰磨羈はウワサバナシを引きつけるアレクシアを見つめる。
 彼女が多くの敵を引きつけてくれるお陰でこうして自分達は自由に動くことが出来る。
「こいつらも大概だな。他者の悲劇を望むなど、疎ましいにも程がある」
 アレクシアの負担を一刻も早く軽減するために、汰磨羈は惜しみなく技を放った。
 高威力の汰磨羈の攻撃にアレクシアの耳元に取り憑いていたウワサバナシがジリジリと消失する。
「危ない橋だったがよく動かなかったな」
「汰磨羈さんなら出来るって信じてたから」
 アレクシアの純粋な言葉に汰磨羈もゆるく微笑んだ。
「このひょろひょろしたものは脚なんでしょーかねー。夜妖といいましたかー?」
 ウワサバナシの一体を掴み上げるピリム。沢山の脚の中で一本を掴んで振り回した。
 感触は薄っぺらい。これであれば実体のある殺人犯の脚の方がマシだろうか。
「おっと、いけないいけない。脚に夢中で攻撃がおろそかになってましたー」
 攻撃をウワサバナシに叩き込むピリム。呆気なく消えて行く敵影にピリムはムッとする。
「哀れですねー。こんなものに取り憑かれなどしなければもっと長く楽しく遊びまわれたかもしれねーですのに……いやこの程度の脚捌きではほっといてもどこかで始末されそーですねー。
 あ、怒りましたー? すみませんねー他意はねーですので」
 自分に向かってくる敵を引っかき回すように大回りに戦場を駆け抜けるピリム。
 アレクシアとピリムの両方が引きつけてくれているウワサバナシへブレンダが狙いを定める。
 ウワサバナシの卑しい声がブレンダの耳にも届いた。
 ――あの可哀想な子はどうなったのかな? どんな風に殺されたのかな?
 知りたいなあ。きっと可哀想な殺され方をしたんだろうなぁ。可哀想に。悲しいなあ。
 彼等が発するのは、この希望ヶ浜に住む誰かが無意識に思った心だろう。
 本人達にこの現実を突きつければ、泣いて謝るような人々の無意識だ。
 だからこそ、無軌道に。エンターテインメントを欲する。人間の性なのだろう。
「貴様らの様な声に耳を傾ける必要などない! 消えろ!!!!」
 だからといって、他人を傷つけて良い訳などない。
 ブレンダの剣が河川敷の空気を切り裂いた。

「ウワサバナシの相手はまかせろー! であります! 今日の吾輩に麻痺はききませんぞー!」
 ジョーイはアレクシアに取り憑いているウワサバナシに狙いを定める。
 バイザーの顔文字は勢いにぐるぐると回っていた。
 虚ろを帯びた硝子の杖を振りかざし、背中に生えた光の翼を羽ばたかせる。
 眩しい光と共に七色の粒子がジョーイから溢れて戦場を包み込んだ。
「まさに攻防一体の構えでぎったんぎったんのめったんめったんにしちゃいますぞ!」
 それは味方を癒し、敵をを蝕む光刃。切り刻まれたウワサバナシはちりぢりに飛び散った。
「他人の不幸の何が楽しいんだか。いや、悲鳴は俺も嫌いじゃないけど。ほら、ライブとかも声、やっぱ欲しいじゃん? だから夜妖さんよろしく!」
 刻むビートは爆裂し反響する。運命さえねじ曲げる喝采が眞田の脳内を過った。
「ライブってのは身を削り魂を削り皆で音を奏でる。だから君も一緒に! ほらほら、もっと声あげて!」
 己の全身全霊を掛けて叩きつける音楽と声。
 生きてものの、魂の籠もったうたはウワサバナシの囁き声なんて掻き消してしまう。
「まだ終わりじゃないぜ! アンコールは拍手と共にってね!」
 月を裂く旋律。夜に咲いた戦慄が眞田の喉から解き放たれる。
「悲劇が好きなら望み通りにしてやろうじゃん」
 河川敷に響き渡る眞田の声がウワサバナシを追い詰めていった。


「さあ、残るはキミひとりだ」
 ゼフィラは殺人犯との一騎打ちを魔力障壁で防いで上手く立ち回っていた。
 反応速度を生かしたマークも、己の力量をきちんと把握した上で美しく決まっている。
「日本の法では、私刑による殺害は認められていないからね。ここに身を置く人間として、法を遵守することだ」
 叩き込む冷たき霊刀。殺さぬように手加減をして打ち込むゼフィラ。
「くそう! どうしてこうなった! ただ、あの時ちょっと間違えただけなのに」
「因果応報――なるべくしてこうなった、という訳だ」
 男の慟哭に汰磨羈は現実を突きつける。
「極刑が下るまでの間、己が罪に潰され続けるがいい!」
 高威力のプラズマの衝撃派が殺人犯の身体を包み込んだ。
 死ぬ事は無い攻撃だが、痛みは男の全身を駆け抜ける。
 しかし、まだ肝心の夜妖が男の中から出てきていない。
「どうした、早く出てこい。それとも、この男諸共に死んでみるか?」
 死なない程度に追い打ちを掛けていく汰磨羈。

「今日の吾輩は善の右手! 己が欲望のために人を殺めし罪! しっかり向き合って償うのですぞ!」
 ジョーイの右手が殺人犯の頬を打つ。
 雪見とピリム、眞田の攻撃がそれに重なり殺人犯ががくりと膝を着いた。
「もう、十分でしょう? あなたにこれ以上手を汚させたく無い」
 アレクシアは殺人犯の前に立ち、赤い花をまき散らす。
「私たちはそう簡単には死なないけど。人を傷つけるという意味では同じだもの」
 だからもう諦めて。これ以上苦しみも痛みも味わって欲しくないとアレクシアは声を上げた。
「どうしてこうなったんだ。何故なんだ……」
 目を閉じた男の身体から夜妖が抜け出す。
 ブレンダは出てきた夜妖を燃え盛る焔を刀身に宿す長剣と吹き荒れる風を刀身に纏う長剣で切り裂いた。
 悲鳴を上げて消えて行く夜妖と残された殺人犯。

 そこに居るのは、夜妖になった男。
 今はただの殺人犯だった。

成否

成功

MVP

黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風

状態異常

なし

あとがき

 イレギュラーズの皆さん、お疲れ様でした。
 MVPは奮闘した方にお送りします。
 それでは、またのご縁をお待ちしております。

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