PandoraPartyProject

シナリオ詳細

闇色へ染めるヤツ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●黒猫? いいえ、白猫でした。
 この町でその事件が起こっていることは知っていた。ええ、知っていたとも。
 けれど。

「……っ、こうなるなんて思わないじゃないのーーーーー!!!」

 決して小さくない屋敷にその声を響かせたのは1人の少女。若く、女性でありながらも屋敷の主として使用人たちに慕われている。そんな彼女の珍しい姿に、近くを偶々通りかかったメイドが目を丸くした。
 両手で顔を覆う少女の前で、黒猫がにゃぁと小さく鳴く。

 いや。黒猫にしては少々おかしかった。
 前から見れば黒猫だ。しかし、振られる尾は真白。それだけではない、後ろ足や腹なども白い。
 まるでペンキでも被ってしまったかのような姿の――白かった猫。

「雪のような真っ白な毛並みが……私が念入りに手入れをしていたのに……町の壁とかは色が消えないって……ふふ、ふ……」
「お、お嬢様……?」
「ミア!!」
「ひゃいっ!?」
 どこか危ない笑みを浮かべ始めた少女にメイドが思わず声をかけた。その瞬間少女が勢いよく振り向く。紅玉の瞳が苛烈な光を宿しており、メイドは悲鳴混じりの返事をした。
「ローレットへ使いを出しなさい。うちの子にしてくれたこの所業……その身で贖ってもらうわ!」

●ギルド・ローレット
「場所はバルツァーレク領のとある町。デイ・ドリームの海に面したその町は貝殻などを使ったアクセサリーが女性に人気であることでも知られているわ」
 元々は漁業の町であったのだが、その町に住む貴族の女性が海岸の貝殻に目をつけたのである。恋愛成就や夫婦円満を謳ったアクセサリーは有名だ。
 スィールというその町で、ここ最近おかしな事件が起きていた。
「壁が黒く塗られているの。塗料でも撒いたような感じね。町民たちも繰り返される事件でネイビー・ブルーの面持ちだわ」
 そう告げるのは『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)。イレギュラーズ達の顔を見渡しながら再び口を開く。

 ある時は民家の外壁に。
 ある時は停めてあった馬車に。
 またある時は道一面に。
 日付も場所もばらばら。しかしスィール以外に出没していない事、どうやら早朝に海から陸へ上がり、散々『塗料』を撒いた後夕方に海へ引き返すのだという事がわかっている。

「あなた達にしてもらうのはこのモンスターの討伐。今後一切見る事のないよう、1匹も逃さずという依頼者の要望よ。参加者で早朝と夕方、どちらの時間帯に海岸線で戦うか話し合って頂戴ね。ギルドの方で周りの人払いをする必要があるから」
 逃がせばまた被害は続くだろう。イレギュラーズ達はプルーの言葉に頷いた。
「要望はもう1つ。……食材にするために持ち帰ってきてほしい、だそうよ」
 イレギュラーズ達は再び頷きかけ――いや待て、と首を傾げた。
 食材、とは。
「あの……モンスターって、どんなのなんですか?」
 1人が声を上げる。
「あら、言っていなかったかしら? パール・ホワイトの体躯を持つ海生生物」

 スィールイカよ、とプルーはモンスターの名を告げた。

GMコメント

●成功条件
 スィールイカ×12匹の討伐
 1匹以上食材として持ち帰る(生け捕りかどうかは問われていない)

●失敗条件
 スィールイカを1匹以上逃がす

●情報確度
 A。予想外の出来事は起こらない。

●エネミー情報
・スィールイカ×12匹
 人間種の12歳程度の大きさ。体の構造としては通常のイカと同じ。
 大き目の見た目に反して回避に強い。
 触手の手を鞭のようにしならせて近接攻撃を行う。
 また、スミをかけられると足止のBSが付く。
 個々の攻撃力は高くないが、連携を取ろうとする。
 個体数が3分の1になると海の中へ撤退しようとする。
 モンスターであるが、それなりの腕を持つ料理人がいれば食用にもなる。

●戦闘領域情報
 海岸線。浜辺。
 地面は柔らかな砂。敵も含めその場で戦う者全員に命中-10の補正がかかる。
 天気は晴れ。時間帯は参加者の相談結果により変動(早朝or夕方)

●ご挨拶
 初めまして、もしくは再びお目にかかれまして幸いです。愁です。
 戦闘シナリオをリリースします。倒しても塵になるわけではないので、倒せば2つ目の成功条件も簡単に達成できるでしょう。
 スミは軽く拭いたり擦った程度じゃ落ちません。BSですから。イカスミって当方は食べたことないんですが、美味しいんでしょうか?
 それでは、ご縁がございましたらよろしくお願い致します。

  • 闇色へ染めるヤツ完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年01月29日 21時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
木漏れ日妖精
ルアナ・テルフォード(p3p000291)
絶望を砕く者
ギルバート・クロロック(p3p000415)
ナルミ スミノエ(p3p000959)
渦断つ刃
ワーブ・シートン(p3p001966)
とんでも田舎系灰色熊
ニーニア・リーカー(p3p002058)
辻ポストガール
クーア・ミューゼル(p3p003529)
めいど・あ・ふぁいあ
オリヒカ・フィニス・フォリッド(p3p004338)
動き出した歯車

リプレイ

●青天の下
「はっじめっての、おっしごとー♪」
 歌うように告げ、ぴょんと隠れていた岩場の陰から出てきたのは『遠き光』ルアナ・テルフォード(p3p000291)。その後に続いてのっそりと『とんでも田舎系灰色熊』ワーブ・シートン(p3p001966)が出てくる。
「今回のぉ、イカはぁ、ただ単にぃ、建物を黒くしてるだけのようですけどねぇ。まぁ、おいら的にはぁ、初仕事ですからぁ、頑張っていくところですよぅ」
 ゆったり、ゆったり。のんびりとした口調のワーブは、次いで海へ目を向ける。
「相手が鮭だったらぁ、そのまま食べてたと思うんですよぅ」
 鮭に思いを馳せるワーブ。その背後から出てきた『渦断つ刃』ナルミ・スミノエ(p3p000959)は砂浜一体を見渡して目を眇めた。その手に握られているのは双眼鏡。
「……己の無力さに腹が立って仕方ありませぬ」
 海岸には既に何の影もない。今回の敵となるスィールイカはつい先ほど町の方へ向かっていったばかりだった。
 町へ暴れに行くのを見過ごすのは腑に落ちない。けれど逃がしてはならず、戦いに慣れない者もいる以上、戦うのは帰ってくる夕暮れの方が良い事は頭で分かっていた。
「イカさんに悪戯を許すのはちょっと残念だけど。その分きっちりみんな討伐しておいしく食べるんだから!」
「そうじゃの。まぁ、奴等も多少は気が緩んでおることを期待しようか」
 ルアナの言葉に続いたのはギルバート・クロロック(p3p000415)。その視線は街の方角へ向けられ、眉が剣呑に顰められる。
「全く……イカ共、街を散々汚しおってからに」
 昨日までの被害現場は相変わらず黒かった。海岸まで来る間に何か所か見たが、それは見事に真っ黒であったのだ。
「軽く拭いた程度じゃ落ちないスミ……。黒く塗られた部分のお掃除は後で手伝うよ。町への被害に目をつぶった分、お仕事はちゃんと果たさなきゃね」
「ええ。……どこの世界でもモンスターに困るっていうのは変わらないものね」
 ぐ、とルアナが握り拳を作って意欲を表す。そんな彼女の言葉に続いたのは『木漏れ日妖精』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)だった。その口調からは、自分の元いた世界にも同じような存在がいたことが察せられる。
「さて、夕方になる前に海岸の見分をいたしましょうぞ」
 ナルミの一言に、『万古千秋のフェイタル・エラー』クーア・ミューゼル(p3p003529)も含めた一同は分かれて海岸の地形などを確認し始めた。
「町から海岸へ続く階段は3箇所かの」
「戦うには十分な広さだと思うのです」
 各々感じたことや気づいたことを口に出し、夕方に向けて布陣を練る。それが終われば、あとは町に行っている仲間が帰ってくるのを待つ時間だ。
 ナルミは砂場での素振りを始めた。
 足元が不安定なのは仕方なくとも、出来るだけ慣れておきたい。
「頼んだぞ」
 ギルバートがファミリアーで使役する梟を腕から飛ばす。空へ羽ばたいたそれはあっという間に小さな点になった。
 夕方のいつ頃敵が帰ってくるのか、これで確認できる。
 その梟の影を目で追いながら、オデットはぽつりと呟いた。
「できたら夜になる前には終わらせたいわね……」
 視界が悪くなれば、より逃げられやすくなるだろう。
 太陽は未だ、天頂を過ぎた辺り。

「イカさん達、いつもどのあたりから帰っていくのかな?」
「あっちー」
「海岸に近い階段をにゅるにゅるーって!」
 『梟の郵便屋さん』ニーニア・リーカー(p3p002058)の問いに子供達が揃って海岸への道を指差す。この道を真っ直ぐ行けば、海岸の正面に出る階段があるはずだ。
「そこまではどうやって帰ってきてるかわからないかな?」
「んー、わかんねぇ」
「いつも建物の陰に隠れてるしー」
 ニーニアは子供達に礼を言うと、再び情報収集の為歩きはじめた。
 彼女の愛嬌のある外見や人心掌握術も相まってか、町の人々は快く教えてくれる。だが如何せん、イカ自体の動きはなかなか読めなかった。
(夕方は海岸に近い階段に気をつけてみようかな。漁師さんが前方の視力が弱いって言ってたから、攻撃は側面より正面からの方がいいかも……初戦闘でちょっと緊張気味だけど、相手は人型じゃないし、食材だと思えばなんとかなりそうだね!)
 これまで得た情報を整理していたニーニアの近くで、突如として悲鳴が上がる。はっと我に返った彼女がその場へ向かうと、黒く染まった外壁と渋面を浮かべる町民の姿があった。
「もしかして、今やられたの?」
「ああ……折角塗装し直したばかりだってのに」
 悔し気な町民。その背中越しに、向かいから走って向かってくる人影を認めたニーニアは目を瞬かせた。その人影もニーニアを見ておや、という顔をする。
「リーカーさん」
 ニーニアをそう呼んだのは『動き出した歯車』オリヒカ・フィニス・フォリッド(p3p004338)だった。
「オリヒカ君! どうしてここに?」
「既に墨の被害が出ているから、少しでも洗浄や塗装し直しの助力ができれば……と思ってな」
 先ほども別の場所で町民達に混ざって墨を落とそうとしていたのだが、これがまた中々前途多難。そんな最中に先程の悲鳴を聞いたのである。
 折角胸躍る世界へ来たというのに、それを塗りつぶしてしまうような色はいただけない。
 ニーニアはオリヒカの言葉を聞き、視線を今しがた被害に遭った外壁へ向けた。
「それなら尚更。今回の依頼、頑張らないとだよね」

●斜陽の中
 ギルドによる人払いが済まされ、海岸に面した街路は1人として人影がない。そこに現れたのは今回の敵ーースィールイカだった。
 今日も墨で町を染めてきたスィールイカ達は人気がないことに疑念を持つこともなく、にゅるにゅると階段を降りていく。
 そんな彼等の前。海までの道に立ちはだかったのは数人の人影。ざわめく様にスィールイカ達の触手が動く。
「自分たちの縄張りを示す為かどうかは知らないが……好き勝手色を押し付けるなら容赦しない、覚悟してもらおう」
 オリヒカはそう呟き、静かにノービススピアを構えると発破をかけるように声を上げた。
「まずは数を減らす!」
 海の方、ひいては立ちはだかったイレギュラーズ達の方へ向かうスィールイカにまず動いたのはギルバートだ。
「一思いに殲滅してくれよう」
 ノービスマテリアルの呪符が、近づいてきた敵に飛来する。だが全力のその攻撃はするりと躱されてしまった。
 次いで別の敵が放った墨にギルバートは袂を翻し、目元へ飛ぶことを回避する。しかしギルバートの攻撃を躱した敵が、彼へ向けてその触手を勢いよく伸ばした。
 その触手は横から伸びてきた一閃に切り落とされることとなる。
 ノービススピアを振るったオリヒカは、踏ん張りのききにくい地面に一瞬視線を落とした。
「砂地に足を取られる…。なら意識していくだけだ」
 触手の切られた敵へ、ギルバートの攻撃が当たる。更にニーニアが放った矢が胴へ刺さり、敵は砂浜へ倒れた。
(そこまでタフという訳でもないようだな)
 攻撃も防御も、体力もそこまで高くはない。オリヒカはそう分析し、別の敵を攻撃しながら情報共有の為に声をあげた。

「1匹残らずイカ焼きにしてやるのです!……あ、でも原型は残るように調節してみるのです」
 言葉と共に、クーアのマジックフラワーが敵へ飛ぶ。それはルアナに群がっていた敵の1匹へ被弾した。
(お料理の感覚を忘れて久しいので、調節できる保証はありませんが……)
 クーアの懸念は杞憂に終わり、少し焦げたような匂いはするものの敵は健在のようだ。とはいえ先程からルアナに攻撃を食らわされていた為か、その動きは見るからに精彩を欠いている。
「クーアさん、ありがとっ!」
 ルアナはそう声を上げ、同じ敵へ追撃をする。どっ、と倒れた敵の陰からもう1匹に墨を吐きかけられるが、ルアナは剣を目元へかざして防いだ。
 墨を吐いた敵は、別方向から飛んできた魔力の弾の餌食となる。
「ふっとべー、ふっとべー、ぱーんぱん!」
 その可愛らしい外見とは裏腹に、始まりの赤を使用したオデットの魔弾は敵の命を的確に奪っていった。しかしオデットの攻撃を回避し、前衛を抜けてきた敵もいる。
「イカさんは退治だ〜!」
 オデットへ向かおうとしていた敵にぶつけられたのはニーニアの衝術だ。クリーンヒットしたそれは、敵を後方へ押し返すように吹き飛ばす。
 押し戻された敵は、ルアナの一刀両断によってその命を散らしたのだった。

 スィールイカは人的被害を出してはいない。1匹残らず討伐する必要があるのだろうか、とワーブは思う所もある。
「まぁ、しょうがないですけどねぇ」
 これは仕事だ。しかもこの世界に召喚されて、初めての。
 心の中で割り切ったワーブは、格闘や肉弾戦でスィールイカへ仕掛けていく。共に全力攻撃を仕掛けるのはナルミだ。
 ワーブの肉弾戦でぐら、と敵がよろける。そこは畳み掛けるようにナルミのスーサイドアタックが入った。捨て身の攻撃は敵の体力を大幅に削いでいく。
「……っ、あともう少しでござろうか」
 敵の触手が腕を打ち、顰め面で呟いたナルミ。その耳が捉えたのは仲間の声だ。
「お二方! 当たらないよう気をつけるのです!」
 咄嗟にナルミとワーブは聞こえた方から敵まで、一直線の道をあけるように飛び退く。
 その道を通り、スィールイカを襲ったのは死者の怨念を束ねたーークーアの死霊弓だった。
 怨念の矢に貫かれたスィールイカは、身じろぎすることなく砂浜に倒れた。
 直後、聴こえてきたのは歌声。己の声を楽器として、ニーニアが士気を上げんと声を出し、勇壮のマーチを奏でる。
「皆、あともう半分くらいだよ〜」
 それを聴いたナルミとワーブは一瞬視線を交錯させると小さく頷き、次の敵へと武器を構えた。

「残り5体でござる!」
 声をあげたのはギフト《海神の唄》で敵の数を把握していたナルミだった。
 それと同時、ギルバートの魔弾がスィールイカを倒した。残った4体が互いを見合わせるように、ぐるりと見回す。
 これは全滅の危機ではないか、と。漸く気づいた敵達は海への全力逃走をしようとした。
 しかし。
「あと残り4体ですよぅ。そろそろ終わりが見えてきたですよぅ」
 のっそりと、ワーブが逃げようとしたスィールイカの目の前に立ちはだかる。
「そこは、通すわけにはいかないですよぅ」
「逃がさないのです!」
「最早引くことはなりませぬぞ!」
「1匹も逃さないんだからね。あともうちょっと、みんな頑張ろ!」
 他のスィールイカの前にもクーア、ナルミ、ルアナが立ちはだかり、ブロックすることによって敵を逃がさまいとしていた。
 ルアナは触手の攻撃を回避し、尚も海へ行かせまいと引き付ける。ニーニアの投げつけたSPOは命中したものの、状態異常を付与するほどの威力ではない。
 そんな中、突如として鮮やかな火花がスィールイカを襲った。マジックフラワーによってトドメをさされた敵の後ろから、オデットが倒れた相手を見下ろす。
「ざーんねんでした。過ぎた悪戯はこうやって退治されちゃうのよ。悲しいけれど、仕方ないわよね」
 一方、他より少し離れたところにいたワーブ。彼の引き付けるスィールイカから墨が飛ぶが、それは顔まで飛ぶことなく装備へかかる。ワーブは海へ逃がさまいと引き付け続け、触手の攻撃にも耐え。膠着状態であった。
 そのバランスを崩したのはギルバート。袖から引き抜き、投げつけたノービスマテリアルの呪符がスィールイカに飛来する。遠術の術式を宿した呪符は敵へ真っ直ぐ被弾した。
 よろめいたような動きを見せたスィールイカは、反射的にか攻撃のされた方向へ触手を伸ばす。だが、届く距離にギルバートはいない。更に重ねて放たれた攻撃に、敵は倒れ伏した。

 クーアは目の前に突き出された触手をノービスシールドでいなす。スィールイカの触手が盾越しに弾かれる
「え〜いっ!」
 触手を引っ込めたスィールイカへ、ニーニアがSPOを投げつけた。胴体へ液体のかかった敵は顔色、否、肌色が悪くなったように見える。
 そこへ飛来したのはギルバートの遠術。もろに食らったスィールイカは倒れ伏した。
「ぐぬぅっ」
 その少し離れた場所で、ナルミが呻き声を上げた。その顔にはべったりと墨がついている。
 ナルミより先手を取ることでブロックを防いだスィールイカは、そのまま海へ逃げようと触手を動かした。だが。
「逃がす訳にはいかない……!」
 オリヒカはナルミの代わりに立ちはだかり、ノービススピアを構える。
 敵はオリヒカと相対すると先程と同じように墨を吐き出した。それはナルミと同様、視界を黒く汚すーーだが。
「悪いが……墨以上に厄介なのと隣り合わせだったのでな……!」
 元いた世界は青空さえなかなか見ることのない場所だったオリヒカ。装着していた使い捨てアイフィルターを素早く付け替え、視界を確保する。
 そしてオリヒカはその傷だらけとなった白い体へ、スピアを振り下ろした。

●黄昏時を過ぎ
「各自、怪我は大丈夫か?」
 オリヒカが周りを見渡す。多少の怪我はあれど、返ってくる声は皆力強い。
「真っ黒にぃ、なってますねぇ」
「装備は墨だらけだが……依頼達成には変えられないさ」
 ワーブの言葉にオリヒカは肩を竦めた。
 微かに残る夕日で照らされる姿は、皆どこかしら黒い。けれどもこれでイカを持ち帰れば依頼達成である。
 黒くなった装備品を見下ろしたり、武器の墨を拭ってみたり。ルアナはその中で武器をそっと見下ろした。
(……ルアナ、記憶ないのに剣の使い方知ってた。武器選ぶとき「これだ」ってすぐに分かった)
 一体自分は記憶を失う前に何をしていたのだろう。そんな疑問が頭をよぎった。
「ルアナさん、どうされたのですか?」
 物思いに耽るルアナに気づいたか、クーアが声をかける。はっとしたルアナは彼女に微笑みを向けた。
「ううんっ、なんでもない! お疲れ様!」
 夕日がほとんど沈み、暗いと感じたオデットはギフト《太陽の友達》で自らの翼を輝かせた。
 ふわりと揺れる翼に合わせ、淡い光と温もりが周囲にいた者の表情を和らげる。
「よーし、持ち帰るイカを選別しちゃおうか! 漁師さんにお願いして箱と氷用意してもらったんだ。ここに入れたらどうかな?」
 ニーニアが岩場の影から箱を持ってくる。やや大きめなそれはイカ1匹入れるには十分だ。
「さっきの戦いで猛毒状態にしちゃったのは避けて選びたいな〜」
「その他のイカね。手伝うわ」
 オデットが倒れたイカを覗きこむ。そしてふと首を傾げた。
「イカ? っていうのは初めて見るけどおいしいのかしらね。食べれるなら私も食べてみたいわ」
「私も可能でしたら、食材として持ち帰ったイカを食べてみたいのです」
 いつの間にやらオデットと反対側でイカを見下ろしていたのはクーアだ。不意にその猫耳がへにょりと垂れる。
「……私の腕が錆びついていなければ自力でお料理もしてみたかったのですが。残念なのです」
 料理という行動自体ができないクーアには、他人に任せるしか方法がないのである。
(悔しいので料理内容について徹底的に解説してやるのです。メイド・イン・ロストの本領なのです)
 技術が習得できなくとも知識は出てくるはず、とポジティブ思考なクーア。その背後からギルバートがイカを見た。
「のちにローレットへ打診してみてはどうかの? もしかしたら……という事もあるやもしれんぞ。どれ、食材はわしも頂こうかの」
 彼はお土産として余ったイカを持ち帰るつもりだった。ギルドメンバーと美味しく食すのである。
「拙者、食すのであれば刺身にして一杯やるのが好きでござるな。ギルバート殿はどのように?」
「わしか? イカ焼きにして、皆で食べようと思っておるぞ」
「刺身もぉ、イカ焼きもぉ、どちらも気になりますねぇ。どんな味がするのかなぁ」
「折角食べるなら、美味しく食べなきゃね?」
 ナルミとワーブ、ルアナもその輪に入り、イカをどのようにして食すのが美味しいか談義が始まっていく。
 一先ず1匹、イカを箱の中に詰めたニーニアは町の方を見た。昼間は町がよく見えたのだが、夜の帳が下りた今は外壁の色を判別することは難しいだろう。
「明日来て、お掃除や塗り直しの手伝いかな」
「……俺も、手伝わせてもらう」
 隣から声がして、ニーニアはそちらを向いた。立っていたオリヒカがニーニアを見遣る。
「依頼内容にはなかったが……そのまま帰るのは、なんか嫌だからな」
「うん、そうだね〜。じゃあ、待ち合わせ場所とか決めておこう」
 ナルミも後から塗料落としの手伝いを申し出、軽く話し合って待ち合わせの場所や時間を確認する。
 そして月の出始めた頃、一同は海岸を後にして帰路に着いたのだった。

 翌日、町には新たな被害が出ることもなく。掃除に勤しむ姿や外壁の塗り直しをする姿が見られたという。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした。無事にスィールイカ撃破、お届けもばっちりです。
 前衛後衛のバランスや、戦闘後半をいかに有利に持っていくか、またスィールイカを逃さない対策も素晴らしかったと思います。
 ちなみに当方はサクサクのイカリングが好きです。

 素敵なプレイングをありがとうございました。
 またご縁がございましたら、よろしく御願い致します。

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