PandoraPartyProject

シナリオ詳細

101回目の恩赦(しゃざいのぽーず)

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●また鉄帝にご迷惑おかけしたの?
「ガハハ! 酒ですわー!」
「ヴァレーリヤちゃんてば元気ねぇ。でもまたこの酒場で飲み会ができてよかったわねぇ」
「それもこれも自分達の普段の素行のよさの賜物であります」
「ヴァリューシャがいつも可愛いからね! 貸し切りなのも仕方ないよ!」
 ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ (p3p001837)、アーリア・スピリッツ (p3p004400)、エッダ・フロールリジ (p3p006270)、そしてマリア・レイシス (p3p006685)の4人は、以前色々とご迷惑をおかけした酒場(なおマリアは無関係だ)で飲み会を開いていた。流石にこのメンツだけでの宴会は許可されず、保護者役で飲兵衛数名混じっているのだがそれはさておき。本来目付役になるはずのマリアは「ヴァリューシャは大丈夫だよ♪」と言ってきかないので、大体有名無実の存在なのだ。
 ともあれ、全員がほろ酔い気味で、マリアはそれよりちょっと酒の回りがはやい。
「ときにヴィーシャ、今日は各人一本ずつ手持ちで一番いい酒を持ち寄る会でありますが、ちゃんと高いお酒を用意したでありますか?」
「もちろんですわ! こちらにちゃんと用意してきましたのよ!」
「流石ヴァリューシャだね!」
 酒場で宴会やってる状況にあるまじき発言だが、酒場の主人を説得(おど)して承諾を取り付けているので問題はない。マリアは「ヴァリューシャの提案なんだから呑まなかったらそこの主人が悪いね!」というスタンスである。
「あら? ヴァレーリヤちゃんそのお酒なんか変じゃなぁい? こう……布? が瓶口に……っていうかその火花は誕生日ケーキ的な仕掛けかしらぁ?」
 チリチリチリチリ。
 アーリアが指摘したそれは、ヴァレーリヤの瓶へ伸びている。
 こころなしか黒ずんだその『酒』は、布? から異質な臭気を漂わせている。
「えっ……なんですのこれ? 持ってきたお酒はたしか」
 銘柄ラベル:『爆弾』。
「「「「えっ?」」」」
 店主はカウンター裏に退避済みだ。
 そして――閃光と爆風が4人(+α)を呑み込んだ。

●っていうわけで飲み会メンバーは軍警察に追いかけられるんだけど時間は遡って
「ふんふんふーん♪ いいお酒を仕入(おどしと)れてホクホクですわー!」
 ヴァレーリヤはとある伝手(よわみ)から入手した酒を手に集合場所へと急いでいた。これから飲み会、しかも気心の知れた酒クズ共である。それなりいい酒を仕入れてくるのだろうという期待が強い。
 ゆえに彼女も努力の限りを尽くしてゲット(隠語)した酒を手にスキップしていたが……そこに、老齢の男が駆け込んでくる。狙ってか否かは(彼女には)分からなかったが、ぶつかった衝撃で『とっておき』の酒瓶は袋ごと地面に落下し、石畳の上で軽い音を立ててから石畳に飲み干された。
「ああああああ……!!」
「失敬、お急ぎでしたかな?」
「急いでいたも何もとっておきのお酒が潰れましたのよ!? どう責任をとってくださりますの?」
 話し掛けてきた男……老紳士然とした相手に対し、ヴァレーリヤは烈火のごとく怒り狂った。だが相手もさるもの。ローレット内でも指折りの実力者、加えて『クラースナヤ・ズヴェズダー』と関わりのある彼女を前にして笑顔を崩さず、すかさず酒瓶の入った紙袋を差し出してきた。
「こちらは、そちらの瓶に負けず劣らずの上物ですよ。お連れ様がいれば飛び上がるほど喜ぶでしょう」
「まあ! 何も言っていないのに悪いですわ! でも善意は頂いておきますわ!」
 そしてヴァレーリヤは老紳士から袋をひったくるように受け取ると、意気揚々と駆けていく。
「……何も嘘は言ってねェよなぁ。『上物』だし『飛び跳ねるくらい』喜ぶぜ、ホント」
「おやっさん、首尾はどうです?」
「上首尾よォお前ェ、ヤツに酒を握らせりゃ大抵のことは水に流れる。その上でやつが持ってった酒が飛び跳ねれば疑われるのはヤツって寸法よ」
「完璧ッスね。これからも黒椋(おれたち)のために」
「ああ、黒椋(おれたち)のために」
 ……黒椋というのは、ごく小規模なテロ組織だ。総勢100名にも満たない構成員数で数々の爆破テロを行い、その全てで身元が割れなかったのはひとえに今のような手口で爆発物を偽装して人々におしつけ、時間差で爆破させる手口を繰り返していたがためである。
 そして、今回はヴァレーリヤを狙っての犯行だ。彼女ほどに「やっても瑕疵のないターゲット」はそうそう居ない。ヴェルス帝による凄まじい回数の恩赦さえなければ――という注釈がつくが。
 彼等が人混みの中に消えていくのを、たまたま飲み会に誘われていたイレギュラーズの1人が眺めていた。会話は聞こえずとも、ヴァレーリヤに接触した人物とその部下らしき男を怪しいとみて、ついていく……。

●店主(マスター)ッッ!
「なんてこと! またマスターが瀕死に!」
「何持ってきてるんでありますかヴィーシャ! 今度こそ恩赦じゃ済みませんよ!」
「冤罪ですわ! あの男がテロ組織か何かなのですわ!」
「ヴァリューシャがそういうなら間違いないね! 探そう!」
 尾行から戻り、酒場についた1人を待ち受けていたのは爆発現場から軍警察を振り切って逃げようとしていた飲み会メンバーだった。ここまで言い逃れが赦されない状況も珍しい。
 今は一同をなんとか官憲の手から遠ざけ、真犯人をしょっぴかねば――!!

GMコメント

 リクエストありがとうございます。
 これ「恩赦百回」中の1回でいいんですかね。101回目ではなく?

●達成条件
 黒椋主要メンバーの捕縛(殺害は控えたほうがいいが必須ではない)
 拠点の爆破

●失敗条件
 上記達成前に軍警察に居場所を嗅ぎつけられて包囲されること

●フェーズ1・軍警察からの逃走
 今回はリクエスト者4名+希望者若干名が飲み会に参加している体になります。
 リプレイ開始時点で爆発に巻き込まれたため一律HPとAPが最大値の70%、【火炎】付与状態、酔っているため序盤のみ【恍惚】状態となります。80秒軍警察の攻撃をよければ2倍ダメージはないよ! やったね!
 この他、「黒椋拠点を見つけた帰りに逃げるメンバーを助けに来た」1名、「飲み会に遅れて現場に居合わせた」若干名などを自己申告可能です。
(尾行した1名は隠密系かファミリアー系があると説得力が増します)
 馬車や乗り物系で振り切れればそれに越したことはありません。いい感じに撹乱しましょう。

●軍警察×それなりの数
 以前も包囲した酒場での爆発事故なので対応がスムーズです。
 包囲しての狙撃戦術がメインなので、追いかけてもレンジ4以内に入れない状態を3ターンくらいキープできれば撒けるでしょう。
(まあつまり飲み会に参加してないメンバーが機動6以上で馬車に乗って颯爽と現れるとかそういうのがおすすめ。馬車がないなら借りよう!)

●酒場
 拙作『姦し娘、酒と記憶を取引するのこと』で騒ぎになった場所。マスターまた命の危機にさらされてる……。


●黒椋(くろむく)構成員×25
 今回の下手人。OPの通り、ヴァレーリヤに意図せぬ形で自爆テロさせた人達。
 かなり数が多い。実行犯の老人は連装銃とナイフによる戦闘術に長け、【ロスト・ダメージ小】【神無】【物攻大幅上昇】の自付スキルを使用します。通常攻撃に【流血】【崩れ】付与。
 手数(EXA)が多くタフです。
 下位構成員は大して強くありませんが、通常攻撃に【攻勢BS回復(中)】を持ちます。
 何が言いたいかというと怒りによる引きつけ戦法がやや通じづらいクソ面倒な乱戦必死の相手です。

●黒椋の拠点
 今回の戦場になります。
  広いですが、一般的な倉庫みたいなところの2層構造なので2階部分から包囲射撃とかしてくるかもしれません。
 射撃で応戦するか何人かが上に登っていって攻撃して蹴散らすか、柔軟な戦術が求められます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 情報に偽りはほぼありませんが、提示した戦術はあくまで「一例」です。
 常識にとらわれず、柔軟な思考で事態に臨みましょう。

  • 101回目の恩赦(しゃざいのぽーず)完了
  • GM名ふみの
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年01月17日 22時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

咲々宮 幻介(p3p001387)
刀身不屈
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
※参加確定済み※
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
※参加確定済み※
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
※参加確定済み※
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
※参加確定済み※
日車・迅(p3p007500)
疾風迅狼
ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
薄明を見る者

リプレイ


「うっうっ……罪のないマリィとマスターになんてひどいことを……」
 『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)は爆発の直前まで元気いっぱいだったはずの『白虎護』マリア・レイシス(p3p006685)の黒焦げになった姿を抱きかかえて慟哭する。なおこれで死んでいない。しぶといな神と渡り合ってた奴は。
「拙者、付き添いで来ただけで御座るのに……ていうか、またヴァリューシャ殿で御座るか!?」
「やっと二十歳になったからお酒飲めるよーになったのに折角のお酒を台無しにしたのは誰だ―!? またヴァレーリヤがやらかしか!」
『血道は決意とありて』咲々宮 幻介(p3p001387)と『暁の剣姫』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)の2人は、直前にヴァレーリヤの酒瓶を見ているのでまあコイツが犯人か、で納得してしまっていた。ミルヴィは凄くもう、凄く可哀想だけど20歳最初の酒でエライ目に遭ってる奴結構知ってるから大丈夫大丈夫。まだマシ。
「ア゛ァー自分の酒がぁ!! 粗相であります粗相イッキ!! イッキする酒が……ない……?」
 割れた瓶を手に絶望的な表情になった『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)の絶望たるや察せずにはいられない。エッダ自身の酒がだめになったという事実ではなく、飲み直せないという事実に、である。くれぐれも勘違いしちゃだめだぞ。
「どうしてこの酒場で飲むとこうなるんだ……高い酒を持ってきたわけではないがお気に入りだったのだぞ! ぶっ殺してやる!!!!!」
 『艶武神楽』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)の正直さは誠意があり清々しささえ感じるが、しかし理不尽に対する怒りは仲間同様、相当なものであるようだ。
 ……あるようだ、も何も。お互いに秘蔵酒だったりお気に入りだったりを持ってきてそれがヴァレーリヤのせいでふっとばされたら普通はキレる。相手が相手じゃなければ乱闘が発生していた。
「マスター、マリアちゃん、貴方達の事は忘れないわぁ……」
 マリアは死んでないぞ『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)。それはそれとして、彼女は流れるように幻介から服を借り(かっぱらっ)てはだけた肌に羽織った。コレが夏ならなー! もう少し露出させててもなー! 誰も文句言わなかったのになー! テロ組織は恥を知れ!
「ところでヴァレーリヤちゃんの恩赦がいつまで続くか判らないし、マリアちゃんが鉄帝の政治家になるのが一番じゃない?」
「アーリア、ナイスアイディアですわ! そうと決まればマリアはマスターと並べて隠しておいて後で回収いたしましょう!」
 なんて? そしてなんで?
「皆さん! 早く早く! 警吏に捕まる前に! 落とし前をつける相手が待っていますよ!」
「この声は――迅くんねぇ! 馬車を」
「もうお借りしています! 早く!」
 『折れぬ意志』日車・迅(p3p007500)、混乱の極みにある仲間達の中に颯爽と現れアーリアの馬車の御者席に座ると、一同に乗るように急かす。どうやら何か見てきたらしいが――その顛末は少し遡る。

「うーん、すっかり遅くなってしまいました……でもなかなか良い情報を得られました」
 爆発テロが起きる直前、迅は例の酒場へと向かっていた。ヴァレーリヤと分かれた老人が見るからにあやしかったので追いかけてみれば、何やらアレなテロ組織のリーダー格ときたもんだ。そして相手に気取られず嘱託テロ事件を乱発する危険組織……鳳圏だってもう少し争いにマナーを持ってやるぞ。
「後はヴァレーリヤ殿が飛び跳ねる前にお酒をかいしゅ……出来ませんでしたね」
 回収すれば、と呟きかけた迅の前で、腹に響く炸裂音と爆風、そして瓦礫と酒瓶が飛び散った。あんな状態で生きている仲間達ってなんなんだろう、というのは今更なので考えないことにした。

「――というわけですのでお早く! 鉄帝の官吏の動きは優秀です! ここは」
「ここは私に任せて頂戴。これでも鉄帝で名の知れたイレギュラーズですもの」
 逃げるべきだと迅が進言するより早く、ヴァレーリヤは軍警察の前に身を晒した。愚策中の愚策であることはそこそこ付き合いのある全員が察した。
「この顔を見忘れたとはいわせませんわよ、そう、」
「私達飲兵衛の首魁、ヴァレーリア(※ヤではない)ですわー!」
「おっ、お前どっかで顔見た覚えがあるでありますなあ!! オラァ貴様自分が誰か分かっとって喧嘩売っとんのかワレァ!!」
「包囲崩しは任せたで御座る、拙者はお先に失礼するで御座るぞ!」
 ヴァレーリヤが何事か口にしようとしたのに合わせ、アーリアは誤情報とともに甘い囁き(アルコール臭)を撒き散らしエッダは軍警察という名の同僚に食って掛かり幻介は真っ先に逃げに入った。
 この中で誰が一番情けないか分かるかい? そうだね幻介だね働けオラァ!
「邪魔だァ!!!」
「お酒って飲むとふわふわするねー、悪くないかも♪ ……んー、あつい……ヒック」
 ブレンダは包囲を狭めようとした警官を蹴り飛ばし、ミルヴィは服をはだけさせ誘惑しつつ、近付く警官をノしていく。
「説得失敗、後は任せましたわ! あと幻介、そのお酒を寄越しなさ……麒麟が来る……胃の奥から……」
「ちょっとおヴァレーリヤちゃん、そのお酒ってもしかして『雨宿り』の」
 説得を諦めたヴァレーリヤが幻介に食ってかかろうとして、しかし迅のあらっぽい操縦に身をゆすられた。爆発前に飲んでいた酒が大返しをキめて食道胃液三段撃ち(隠語)しはじめた拍子に、懐から秘蔵酒がこぼれ落ちる。多分麒麟ってカムイグラのだろ? そういうことにしとこう。怒られるからネ。
 で、まあアーリアが気づいた通り(そして彼女も取り落した)酒は開封即発火する危険物……なんでそんなもんが幻想で出回ってるのかはさておき。
「おーっほっほ、今頃あちこちの酒場に残り99人のヴァレーリヤが向かったわぁ! ‥‥あっちょっとまって飛ぶと揺れてしんど」
 そして爆風を背景に、それはそれは美しい2本の虹が鉄帝の街路に広がったのは言うまでもない。報告書作成のお供が喉を通らなくなる惨状やめて。


「此所が例の……黒椋? とかいう連中のアジトで御座るか」
「さあカチコミのお時間です! 覚悟して頂きましょう!」
 道中で馬車の幌の間からバチクソ虹った幻介は、そのせいか幾分スッキリした顔で馬車から降りてきた。その他虹った連中はことごとくスッキリしているが中途半端に酔いが残っているブレンダとミルヴィは中々に地獄なのである。
「揺れる揺れる……うっぷ。耐えろ、耐えるんだ私の三半規管。いつももっと厳しい鍛錬を……うっぷ」
「あー、アタシ折角最初のお酒だっていいお酒もって来たのにあれって5000兆Gもするんだよ、どーしてくれんのー!」
 いや、まだ全然大丈夫そうだな? ブレンダの三半規管はもうちょっと揺さぶりをかけてもいけるのでは?
「馬車の中からこーんないいもの出て来たでありますぐびー」
 エッダ、すこしマシになった表情でしかし手にしたのはヴォードリエワイン! 一気飲みして酒と胃液の臭気の混じった呼気を吐いた彼女のさまを、女と呼べることはあろうか? いやない。
「多少吐いたところで血中に溶け込んだアルコホルはもうどうにもならんのでもありますよなぁうぃっひひひ」
「待っていなさい悪党ども、今、私が成敗して差し上げますわー!」
 エッダの不気味な状況はさておき、ヴァレーリヤは冤罪の恨みと割られた高いお酒、そして虹った恨みで黒椋の連中にはえもいえぬ怒りの感情が蟠っていた。まあそれはいい。だが、仲間達はその怒りをこそ使いみちがあると判断したのだ。
「えっ、ヴァレーリヤ殿を人間砲弾に?!」
 迅が驚きの声を上げる。
「できらぁ!」
 エッダが自分じゃないからいいやと安請け合い。
「えっ?」
「すごい決意よぉヴァレーリヤちゃん! 殴り込みは2階からなのね!」
「えっちょっと待って下さいましそのわたくしの準備がまだ」
「はっはっは! 飛べ飛べぇい!!!」
 困惑するヴァレーリヤはしかし、反論する前にアーリアとブレンダ(そして仲間達総出)に打ち上げられた。2階の窓からどっせい(隠語)した彼女は暴力と虹を撒き散らしながら騒乱を外に伝えてくる。
「……ヨシ!」
 全く全然ヨシじゃないんだが? 笑顔を背景に貼り付けたVはさておき、やりきった迅を見て幻介が覚えたのは恐怖だった。
 なお、ブレンダはそんな彼など知ったことでもなく修羅媛もかくやといわんばかりの勢いで、袋詰にした割れ瓶を次々と投げている。壁に当たるだろうと思ったんだが、ブチ抜いてる。物超貫ってそういう意味じゃないと思うんだよなあ。
「アタシの初めてのお酒を台無しにしたこと、赦さないから!」
 建物の中に飛び込んだミルヴィは、人間大砲になったヴァレーリヤをよそに地上で襲い来る者達へ対処していく。剣と嵐ならぬ酒瓶と虹の幻影に巻き込まれた雑兵達は、彼女に対して感情が迷子になる。……敵として討伐すべきなのか別の意味でにじり寄るべきなのか。心乱されつつも数の暴力を頼りに彼女に一撃見舞えればよし、そうでなければ混濁した意識のまま戦わねばならぬわけで。
「裏咲々宮一刀流、参之型――」
「えっ、は……?」
 背後から襲いかかる幻介の(酒瓶による)斬首の一閃にて、顎を砕かれ螺旋を描いて吹っ飛んでいく。峰打ちで済んでよかった。
「今日も我が二剣は冴えわたっているぞ! 飛びたい奴からかかってくるがいい!!」
「酒が回るでありますなウィッヒー!!」
 ブレンダとエッダも内部に突撃(カチコミ)をかけると、当たるを幸いにぶちかましぶちのめしていく。エッダの独特の歩法からの一撃が混乱の渦中にある雑兵に対応できようはずもなく、ブレンダの二刀(酒瓶)の烈しさはいくら群がろうとも圧倒的破壊力で蹴散らしていく。
「情けない連中で済まないね、折角――捕まりに来てくれたのだろうに」
「あなたが今回の首謀者ですわね! 今、私が成敗して差し上げますわーぁおろろrrrrr」
 ヴァレーリヤの前に現れた老人は、初対面のとき同様に人の良い笑顔を貼り付けてヴァレーリヤに迫る。流石に2度も3度も騙されるほど彼女も頭は鈍くない。怒りで握られた酒瓶(メイス)をあらん限りの力で叩き込んだ彼女は、首魁の男がゆるい笑みのまま振るってきたナイフを躱せない。
「おやおや、噂に聞き及んだヴァレーリヤとやらも存外期待はずれでございましたかな? いま少し楽しませてくれるとばかり思っておりましたが」
「言いたい放題言いますのね!?」
 別に、ヴァレーリヤの腕が彼に劣るということはない。悪く見積もってもイーブンか彼女のほうが上だろう。それでも防戦一方なのは、単純に相性の悪さ――男の強化術式をどうにかする手段がない故である。
「あらあらぁ、あんな所に隠れていたのねえ……? ヴァレーリヤちゃんに好き放題して悦に入ってるのは頂けないわぁ、ねえエッダちゃん?」
 とはいえ、イレギュラーズとてその状況を無視するはずもなく。アーリアは地階のテロリストを思う様ボコすと、上階の首魁を狙おうとするが上手いこと他者の体を影にのらりくらりと間合いに入るのを避けていく。
「アーリア、あの空飛ぶやつ自分もやりたいであります!」
「……やりましょっかぁ」
 別に自分が狙われたワケではないが、幻介はものすごく嫌な予感に背筋をこわばらせた。


「ふふっ、素直に教えてくれたら後でイイことしてあげる♪」
「なっ、何を言っているんだお前は! 俺達がそんな事をゲロるとでも思っているのかお前達でもあるまいし(超絶早口)」
「……無理してない?」
「ぐ、ぬ……!!」
 一方、ミルヴィは身動きとれなくなった構成員を縛り上げるとしなを作って懐に入り、上手いこと事情聴取できないかと試みていた。だがやはりというか、彼らも通り一遍のテロリストでは済まない凄みがあるのか中々口を割らない。誘惑と矜持の綱引きは簡単にはいかなさそうだ。
「う、また酔いが回って足元が……一旦下がるで御座る。気持ち悪いで御座る……」
 幻介はアジトに殴り込んでから縦横無尽に駆け回っては構成員をしばきまわした為、体力と酔いの回り具合で色々と限界が近づきつつあった。あったのだが、持ち前のガッツと捕まりたくないという意志が彼を突き動かす。
 それでもだめなら一休み、比較的マシな部類のブレンダの横なら……そう思った。それが間違いだとは誰も教えてくれないから。
「ん? まだ酒瓶が転がっていたな」
「えっ、ブレンダ殿? どぉして拙者の襟首を掴むので御座るのぉ?」
 実はシラフみたいなツラしといて彼女が一番エグい酔い方をしているという事実に彼は気づいていなかった。
 だから、彼は襟首を掴まれた時にそれを実感し――。
「そーれ吹っ飛べ! ははははは!!!」
「待って待って、今そんな乱暴にされたら……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?」
 上の足場目掛け、幻介は虹を撒き散らしながら飛んでいく……ヴァレーリヤ達とは反対方向へ!
「さて、これだけ痛めつけたのだからもう動けますまい。あとは貴女がここにいると警察に吹き込んで我々はトンズラ、それで全て丸く収まりますなあ。いやはや、私また佳いことをしてしまいましたかな? 世の為国の為、害になるような方は害になるような場にけしかけて丁度佳いでしょうからなぁ、はっはっはっは――」
「言いたいことはそれだけでありますか?」
 ヴァレーリヤを足蹴にして高笑いをキメた首魁は、しかし下から超速で飛来するその影に気づくのが一拍遅れた。エッダが、拳を構え突っ込んできたのだ。
 仕組みとしては至って簡単。アーリアだけでは推進力に力不足であったので、近くで不完全燃焼気味だった迅にエッダ(の靴裏)をブン殴らせ、以て足場に飛び乗る推進力としたのである。そんなのアリか?
「オウコラてめぇーらよくも好き勝手やったでありますな」
「はっ、貴女の事もよくしっておりますよ。所詮私の敵では」
「うるっせぇでありますよ自分が今日持ってきてたのはビンテージモノだったのでありますよ!?」
「ふっ、やはり効かンブフォゥッ!?」
 首魁は堂々たる構えでエッダの攻撃を受け止めカウンターをかまそうとし、見事に頬を打ち抜かれた。彼の付与術式が有効ならこうはなるまい。エッダもヴァレーリヤも、彼とは贔屓目に見て相性最悪だったのだ。ならば、『堂々とした』ことが運の尽きだ。
「さっきまでは上手く隠れていたみたいだけどぉ、お姉さんの手の届くところで嬉しそうに高笑いしたら狙ってくれって言ってるようなものじゃなぁい? 1人ふたり倒したところでまだヴァレーリヤちゃんは98人いるのよぉ?」
 えっ、その設定残ってたんだ……それはさておき、アーリアは得意げにアレコレぶち上げていた首魁から付与術式を引っ剥がすと、そのまま理性と服を引っ剥がすべく術式を放つ。
「その程度の精度で私が――」
「まだ死んでいませんわ! 世界のお酒を私のものにするという野望は、始まったばかりなのですから!」
「えっなんで立てr」
「100マンGはかたいヴィンテージ割ったんですからキャッシュで払うか臓器で払うか選んでいいでありますよ」
 『マン』なところが巧妙なてんさいエッダちゃんとヴァレーリヤによる妨害! 首魁は動けず!
 アーリアの魔術が――当たる!
「おろろろ……お前も虹まみれにしてやろうか……」
「ふっ、ふざっ――」
 背後から迫った幻介の酒瓶アタックからの羽交い締め、そして――2人は虹と共に宙に舞った!


「ん? 爆破するのか? 火の扱いは任せてくれ」
「爆薬でしたら僕が設置済みです!」
「急ぎますわよ! 軍警は鼻が利きますわ!」
「アタシの潔白、証明されるかな? されるよね?」
「大……丈夫? でござる……かな……?」
「大丈夫ですわ! 証拠は全員縛り上げたのですから!」
「あいつらテロの材料ばっかり買い込んで素寒貧だったのであります。貧乏人め」
「さあここから退散するわよぉ! 行って、トロイカちゃん……そして着火!」

【某日、鉄帝帝都近郊にて大爆発が発生、倉庫全焼の上で周囲に捕縛されていた者達が救助された。調べによると彼らはテロリスト集団であり、彼のヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤの自爆テロを仕込んだ首謀者と見られている。これによりVDMの捜査令状は取り下げられたが、別件の騒乱罪が持ち上がった。ヴェルス帝は追加の恩赦を検討しており――】

成否

成功

MVP

なし

状態異常

咲々宮 幻介(p3p001387)[重傷]
刀身不屈
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)[重傷]
願いの星
マリア・レイシス(p3p006685)[重傷]
雷光殲姫

あとがき

 ひでぇもんだよう。

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