PandoraPartyProject

シナリオ詳細

偽りの緑簾石

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「今日舞い込んだ依頼は……これだね」
 『黒猫の』ショウ(p3n000005)はいつものようにイレギュラーズへと依頼書を提示した。そう、いつものこと。内容や国家は変われど、ほぼ毎日イレギュラーズに解決してほしいと言う依頼は何かしら舞い込んでくる。これもそのうちの1つだ。
「これはアドラステイアだ。子供たちが……そう、ちょうど君くらいの年齢もいるだろうし、もう少し年下の子もいるはずだ。そんな子たちの国さ」
 ショウの視界に留まったシャルティエ・F・クラリウス(p3p006902)は自分を差されたことにきょとんと目を瞬かせて、それから出された依頼書へ視線を落とした。自分ほどの年齢の子供たちが作り上げる楽園――それが真実楽園と呼べるのかは、わからないが。

 アドラステイアとは、天義の首都より離れた海沿いに存在する独立都市である。ほとんどが戦災孤児のような子供ばかりで、大人はほんのひと握り。新たな神『ファルマコン』を信仰し、その信仰が疑わしき者を告発・断罪しているのだと言う。
 天義からすれば明らかな反乱分子であり不正義だ。けれども天義という国自体は変革を遂げる最中であり、復興もまた進めなければならないとあって手が回らない。故にローレットへ依頼が流れてきているというわけである。
 かの独立都市に住まう者たちは外界(アドラステイアの外)へ食糧や物資を奪取し、旅人を誘拐・殺害し、また排斥しようという動きを見せる近隣の領主たちに対して攻撃を行っていると言う。それこそが正しいのだと言うように。

「今回もアドラステイア周辺に領を持つ貴族からだね。アドラステイアからすれば牽制……いや、見せしめかな」
 ショウは地図を広げ、アドラステイアと狙われている場所をとんとん、と順に指さす。領内にあるひとつの町が狙われている。自警団が応戦してはいるものの、町の入り口を突破されるのは時間の問題だ。
「町に入り込まれる前に撃退する。これがオーダーだ」
 侵入せんと戦っているのは聖獣と呼ばれる生き物数体と聖銃士たる少年少女たち。背後に町と自警団を庇う以上、無闇な深追いは危険を招くことになるだろうが――ある程度は踏み込まねば、アドラステイア側の勢いに飲まれてしまうだろう。
「頼んだよ。多くの命がかかっているからね」
 向こうも必死なんだろうけれど。ショウは依頼書へ視線を落とし、小さく呟いた。



 皆で幸せになるためなんだ。
 皆が幸せになるためなんだ。

 町の門扉は固く閉ざされ、その前ではアドラステイアの民が『聖獣』と呼ぶものと子供たち、そして町の自警団が戦っていた。けれども聖獣と子供たち押し切るのは時間の問題だろう。聖獣とは聖なる存在――それに勝とうなど土台無理な話なのだ。
 『紫焔』の称号を抱く少年は剣を掲げる。仲間たちに、同胞たちに、我へ続けと声を上げるべく。けれどその視界に映ったのは小さないくつかの影。こちらへ向かってくるそれにクリス・ノルドリアは顔を歪めた。
 イレギュラーズ。自分たちの邪魔をし、聖獣をも狩るという。ここに現れたということはクリスたちを邪魔しにきたということだろう。
「させない」
 皆の、俺達の邪魔をさせるものか。
「彼らを退ければ皆幸せになれる。そうですよね、ファザー・ユーゴ」
 この場にいないファザーへと小さく呟いたクリスは剣の切っ先をイレギュラーズへ向けた。

GMコメント

●成功条件
 聖銃士、および聖獣の撤退

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。不明点もあります。

●エネミー
・『紫焔』クリス・ノルドリア
 シャルティエさんの関係者です。心優しい少年でした。いいえ、今も心優しいのでしょう。『皆のために』していることですから。
 自身らの邪魔をする存在としてイレギュラーズを見ており、非常に好戦的です。聖銃士として剣を振るいます。引き際は心得ているようです。
 攻撃力が高く、身軽な動きで翻弄してくるでしょう。前衛で戦います。

暁光:暁に見るような紫の焔を武器へ纏わせ攻撃します。【炎獄】【必殺】
皆の為:不屈の心には理由があります。例え、歪んでいたとしても。【攻勢BS回復70】【致命】


・聖銃士の少年少女×3
 クリスに連れられた聖銃士たちです。元々は戦災孤児でした。彼と同じようにイレギュラーズへ敵対心を持って攻撃してきます。
 武器は弓、槍、魔導書と様々です。それぞれに応じたレンジで攻撃してきます。以下、各武器所持者のスキルです。

(弓)
毒矢:毒を纏った矢を放ちます。【猛毒】【出血】
弾幕:味方を傷つけず、敵の身を撃ち抜きます。【識別】【スプラッシュ3】

(槍)
鎧貫:防御をものともしない貫通攻撃です。【防無】【ブレイク】
薙払:周囲の敵を勢いよく薙ぎ払います。【飛】【邪道15】

(魔導書)
白蓮:白の花弁が対象周辺にいる味方を癒し、敵を傷つけます。【治癒】【HP回復200】【BS回復50】【敵識別に神秘攻撃】
緑蘭:掠め取り、奪います。【Mアタック100】【HA吸収50】

・聖獣×???
 白い大蛇の群れです。とてもたくさんいます。聖銃士たちの命令を聞きますが、基本的には自律した行動をとります。初手時点では自警団に向かう群れとイレギュラーズに向かう群れで分かれるようです。

呪牙:神を信仰せぬ貴方には呪いです。【呪い】【呪殺】
絞首:締め上げ、苦しめます。【足止】【呪縛】

・ファザー・ユーゴ
 今回は登場しません。
 クリスを導くような立場にある者のようですが、詳細は不明です。

●ロケーション
 アドラステイアに程近い町です。町の入口には木製の大きな門扉があり、現在は防衛のため閉じられています。しかし聖獣の力があれば破られてしまうでしょう。
 外側は草原が広がっており、アドラステイアの建物もよく見えます。隠れる場所はなく、見晴らしは良いです。

●友軍
・自警団の人間×15
 それなりの怪我を負っている武装した一般人です。町を守らねばと未だ踏ん張っていましたが、被害状況から士気はかなり下がっています。
 イレギュラーズの到着を以って、互いを庇いつつ町への撤退を目指します。軽症者はうまく鼓舞すれば戦ってくれるかもしれません。

●ご挨拶
 愁と申します。
 ここで撤退させられなければ町に大きな被害が出ることでしょう。どうぞ助けてあげてください。
 ご縁がございましたら、よろしくお願い致します。

  • 偽りの緑簾石完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年01月26日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
マルク・シリング(p3p001309)
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
サクラ(p3p005004)
聖奠聖騎士
シャルティエ・F・クラリウス(p3p006902)
不退転
冷泉・紗夜(p3p007754)
剣閃連歌
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
雑賀 才蔵(p3p009175)
アサルトサラリーマン

リプレイ


 少年の手にした剣、その切っ先がイレギュラーズたちへ向けられたのが分かる。『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)は小さく顔を曇らせた。
(また、アドラステイア……)
 子供の多くいる独立都市。日々『魔女裁判』と呼ばれる集会で裏切り者を炙り出し、崖から突き落とし、周辺から物資の略奪をも行う場所。天義の進行を疑問視し、別の神を信ずる者の場所。どこか心が騒めいて仕方がないのは自身の国で起きた事だからだろうか?
 アーリアとてこの国の出身であり、この国は間違っているとも思っていた。けれど今の彼女は変化も感じ始めている。
 これまでの天義と、これからの天義は違う。そしてアドラステイアは間違っていると思うからこそ――。
「止めないと」
「そうだね。そして……アドラステイアの欺瞞を暴くんだ」
 アーリアと並び駆ける『聖奠聖騎士』サクラ(p3p005004)。彼女もまた天義の民であるが、憤りを感じるのはその善悪よりも――アドラステイアに住まう子供たちの在り方だ。全ての真実を知らずに利用される彼らに善悪などありはしない。それを突き詰めるのならば彼らが事の次第を知り、自ら考え抜いた結果に対してだろう。
「それじゃあ皆、作戦通りに」
 マルク・シリング(p3p001309)の言葉に一同は頷き散開する。片やは迂回して自警団の戦う場へ。片やは真っすぐに聖銃士たる少年少女の元へ。
「天義の聖騎士、サクラ・ロウライト! 参る!

(また、性懲りもない)
 『アサルトサラリーマン』雑賀 才蔵(p3p009175)はため息をつきたくなるような気持ちに頭を振って、自警団たちの元へと駆けていく。未だ少しばかりの距離があるが、白き大蛇の群れが自警団へ波のように押し寄せている姿が見える。以前も聖銃士と聖獣を迎撃する依頼へ出たことがあったが、まだまだあれらはいるらしい。
(随分と動きが活発に見えるが……何かの前兆か)
 何事も無ければ良い――されど小魚の骨のように引っかかるからこそ思わずにはいられない。けれどまずは目の前のことに対処せねば。早くしなければ命の灯火が消えてしまう。
 門の方は、と才蔵が視線を向けると『狐です』長月・イナリ(p3p008096)が駆け寄っていくのが見える。あの距離ではすぐさま戦線へという訳にも行かなそうだが、逆に集中はできるだろう。
 イナリは固く閉ざされた門まで駆け寄ると種を地面へ撒き、自らのギフトで成長させる。あの聖獣たちに対してどれだけの効力があるか定かではないが、やらぬよりはやったほうが良いだろうと心を定めて。その薔薇に似たつる植物は硬く棘を持った実を実らせる。仮にここまで来てしまったとしても小さな意趣返しはできるはずだ。
(ひとまずはこれで……あまり戦場を放っておくのも良くないわ)
 1人が欠けるというのはそれだけ仲間への負担が増すという事。イナリは踵を返し、聖銃士たちと戦う仲間の元へ急ぐ。
 アドラステイアというのはひどく閉ざされた場所で、非常に偏った知識を与える場所だ。そのような環境は容易に知識を浸透させ、より強固に信じ込ませる。故に説得をするのはとても難しく、主観的に言ってしまえば面倒くさい。仲間たちはどうにかならないかと考えている様だが難しそうだ、なんて片隅に考えていると視界へ聖銃士たちと、相対する仲間たちが見えてくる。
「まぁ、まずは叩いて大人しくさせましょうか」
 彼女が武器を手に握る、その後ろでは聖獣対応に回ったイレギュラーズたちの応戦が始まっていた。
 敵陣へ突っ込んだ『白獅子剛剣』リゲル=アークライト(p3p000442)は剣を高く掲げ、自身の存在を誇示して注意を引きつける。その援護をするのはライフルを手に勘良く狙撃する才蔵だ。
「ここからは俺が相手だ!」
 高らかに上がった声に聖獣の群れはリゲルを見やる。その隙にマルクは自警団が多くいる場所へ駆け寄ると強烈な支援を施した。飛び込んできたリゲルと才蔵、そして治療するマルクの姿に自警団が戸惑いと安堵をないまぜにしたような表情を浮かべる。
「ミスター・マルク、あとどれくらいだ?」
「あと1回か……2回もすれば問題ないと思う」
 わかった、と頷いた才蔵は視線と銃口を聖獣たちから逸らさずも、その言葉は自警団の者たちへ。自身らが援軍である事、そしてここまで持ちこたえたことの賞賛を送る。
「もしもまだ戦えるのならば、防衛戦に強力してもらいたい」
「ああ、勿論だ」
「俺たちの町なんだ!」
 士気を少しずつ取り戻す自警団に才蔵は口角を小さくあげる。前衛で戦うリゲルはそれを感じ、聖獣の1匹を切り払いながら後方へ叫んだ。
「重症者の避難を最優先に! 軽症者は撤退の援護と、街の防衛をお願い致します!」
「おう、詳細な指示は任せてくれ」
 リゲルと才蔵の視線が交錯し、2人はそれぞれのすべきことの為動き始める。才蔵は動ける面々を2つに分け、それぞれマルクが撤退すべきと判断した怪我人の撤退援護と防衛へ向かわせる。リゲルは攻防一体の構えで応戦しながらも、自警団の皆が士気を落とさぬように先陣を切って戦い続ける。マルクもまたネメシスの光で聖獣迎撃に混ざるが――あまりにも多い聖獣の数に表情は歪む。
「数えきれないほどの聖獣……これは、元は、皆」
 その真実をイレギュラーズが知ったのはそう昔の話でもない。アドラステイアに住まう者たちもまた、知っているとは思えない。彼らの友人や兄弟ももしかしたらこの中にいるかもしれないのに。
(幾つ命を弄べば気が済むんだ――アドラステイア!)

 聖銃士たちが戦う場でも同じ光が場を満たす。アーリアの放ったそれと同時、イレギュラーズは一斉に動き出した。
「怯むな……、っ!」
 最初に剣の切っ先を向けた少年が声を発するも、光の斬撃が1度、2度と飛んでくる。視線を向けられた『不退転』シャルティエ・F・クラリウス(p3p006902)は剣を構え、少年を見据えた。
「君の相手は僕だよ」
 そう告げるシャルティエへ、少年は一瞬呆けたようは顔をして。それからすっと真面目な顔つきに戻ると鋭く肉薄してくる。その姿はやはり、聞いていたようにシャルティエとあまり歳の差もないように思えた。少年だけでなく、他の聖銃士たちもだ。
(僕と同い年くらいの子達が、こんな酷い事……!)
 シャルティエは敵を惑わすように攻撃を躱し、いなしながら小さく眉根を寄せる。彼らの、彼の目を見れば操られているわけではないことは分かる。何らかの意思があり、だからここにいるのだと。けれども今の状況はあまりにも――理不尽だ。
「どうして」
 不意に少年が呟く。視線を向ければ彼はどこか、困惑しているようで。
「どうして……君は、そちら側についているんだ」
 彼もきっと思ったのだろう。シャルティエの事を『同じ年頃の子』だと。ならばどうして外の世界に居るのかと。
「聞きたいのはこっちだ。何の為にこんな事……っ、沢山の命を奪おうとしてるんだぞ!?」
 シャルティエはきっと彼を睨みつける。彼らが狙った町は無人ではない。人がいる。生きている。生活している。それらの営みも命も奪おうとする行為をどうしてしようと思えるか。
「皆で幸せになるんだ。そのために必要な事だよ!」
 剣が振り下ろされ、シャルティエは騎士盾で咄嗟に受け止める。2人の少年は間近に迫る相手を睨みつけた。


「刃にて風を鳴らして、歪みし義を斬るが為――冷泉・紗夜、いざ参らせて頂きます」
 切り開かれた道に『風韻流月』冷泉・紗夜(p3p007754)は鋭く駆け、魔導書を持つ少女へ迫る。けれどもそれを易々と叶えるほど聖銃士は甘くない。紗夜の居合が少女を傷つけるも、素早く割って入った少年が槍を思いきりに振り払った。強制的に開けられた間合いへサクラが飛び込み、素早く構えを取る。それを抜き放つとほぼ同時、白い花弁が辺りを舞った。彼らにとっての敵(イレギュラーズ)を傷つけ、味方(聖銃士)を癒す祈りの花。けれども――。
「ダメよぉ、ちゃんと倒されて頂戴?」
 ぱちりと瞬いた目を黄金色に。蜂蜜酒のような甘ったるいその色は目があったら最後、逃れられない蜜の罠だ。アーリアに魅入られた少女はしまったと顔色をなくし、迎撃せんと少年が槍を構える。隙を突いて後方の少女へ迫りながら、サクラは叫ぶように問うた。
「聖獣は、イコルを飲んだ人間の成れの果てと知って、それでもアドラステイアに従うっていうの!?」
「どういうこと? そんなわけないじゃない」
「外の奴らなんかの言葉を信じちゃだめだ!」
「嘘つき!」
 分かっていた反応だった。それでもそう返されてしまえばぐっと言葉が詰まる。アドラステイアという場所に押し込められ、思想を歪めさせられた彼らが素直に聞くはずもないけれど、それでも伝え続けなければ知ることなく終わるだろうから。
「私は、見た……! 目の前で聖獣に……怪物に変貌するアドラステイアの子供を!」
「怪物なんかじゃない!」
「聖なる獣なんだ!」
「ファザー・ユーゴがもたらしてくださった!」
 聞く耳の無い彼らからの言葉に、けれどサクラは『聖獣は人だったのだ』と伝え続ける。それより後方でアーリアは目を大きく見開いた。
「ファザー……ユー、ゴ?」

 シャルティエの相対する少年を見ていると、まるで幼馴染のようだと思っていた。
 騎士を夢見ていた彼――ユーゴ。クヴェル。元気にしてるかしら、なんて。

 まさか、そんなはずは。小さく唇を震わせたアーリアの後方から、イナリがようやく合流する。水の神を身体に宿した彼女はぱきり、と硬質な音を立てて長距離を一気に詰め寄った。そして息もつかせぬ連撃で少女を翻弄していく。矢が降ろうとも、槍が朱を散らそうともその標的は変わりなく。瞬間の悪性変質を遂げた彼女は火の神を宿し、パンドラの奇跡を帯びて少女へ猛攻した。少女の回復すらも追いつかないほどの攻勢に紗夜とサクラも乗る。
「少しだけ……眠って」
 サクラの武器が神の祝福を宿す。月のような軌跡に、少年は少女の名を叫んだ。



「複数人で近づいてくる聖獣を相手にするんだ!」
 才蔵は自警団の者へ指示を飛ばしながら集中力を高め、リゲルの間合いから外れて行く聖獣たちを撃ち抜く。その傍らでは武器を手に、1体の大蛇を囲む自警団の姿があった。あれなら問題はなさそうだと判断しつつ次の標的へ。その間にもリゲルは友軍へ被弾させぬべく、自身への注目を集めて行く。放たれた銀閃は複数の大蛇を巻き込んだ。
 その背後からおもむろに影が差し、リゲルははっと振り返る。同時に聞こえた乾いた音に次いで迫っていた聖獣はぐらりとよろめいた。
「ありがとうございます!」
「何、これくらいの援護はさせてくれ」
 才蔵は小さく笑みを浮かべ、また次へ。まだ聖獣は残っているのだ、油断はできない。負傷者をサンクチュアリで癒したマルクもまた聖獣へ向けて神気閃光を放つ。悪のみを裁く光に聖獣はボロボロとその体を崩していった。
(この聖獣達も……子供達の成れの果てなのだろうか)
 どれだけ倒されても、どれだけ少なくなっても立ち向かうことを止めない聖獣。どこか子供達に姿が重なってリゲルは眉根を寄せた。
 それでも、だからこそ倒さねばならない。悲劇の連鎖は断たねばならないのだから!

 火の神を宿し、息もつかせぬ手数で翻弄しながらイナリは相手の様子を見る。まだ倒れはしなさそうか。倒さなければならない相手ではあるが、殺さなければならない相手ではない。そして殺す気もない。そこの見極めをしっかりしておかないとうっかり誤ってという事も起きかねない。
 未だ胸中に動揺を燻らせたアーリアは、しかし気もそぞろにしていられないと味方を癒す。聖獣側はマルクに任せている分、こちらはアーリアがしっかりと支えなければ。
「アイツが回復手か……よくもルルを!」
 弓使いの少女――ルルとは魔導書を持っていた少女か――がアーリアへ向けて矢を射る。それが肌を掠める瞬間、ぴりと嫌な感覚がしたがアーリアは不敵に笑ってみせた。
「残念、私は毒に強いのよぉ?」
 歯噛みをする表情が見えるが、そうして誰かに注意を向けてくれるのならばそれはそれで構わない。ここで可能性の欠片を燃やそうとも、此処を通すわけにはいかないのだ。サクラと、そして紗夜も彼女に合わせてその少女を狙い居合を放つ。
「今、目の前にあるのは……夢の無い暴走と蹂躙、ですか」
 少女の瞳を見て紗夜はそう零す。己の信条と理想を掲げて戦うのが義であるならば、この戦いは義であるか。否、沢山の幸せを踏みにじって手に入れるのならば、沢山の命と血と引き換えに手に入れるのならばそれは不義である。
(血を流すことも、命を零すことも――理想の姿の変質も、止めなければ)

「――皆、待たせた!」

 不意のその声は、イレギュラーズにとって援軍の知らせ。聖獣を相手取っていたリゲルたちが合流したのだ。マルクは味方を癒し、才蔵は後方からの援護射撃として聖銃士たちへライフルを向ける。リゲルは1人で内1人を抑え込んでいるシャルティエの元へと馳せ参じた。
「君の名前は?」
 剣を構えるリゲルの言葉に警戒心をあらわに――それでも誠実なる騎士であろうとするのか、少年は「クリス」と小さく名を告げる。そして新たに現れた『敵』を倒すべく鋭く肉薄した。
「クリス、聞いてくれ! アドラステイアは子供達を利用している!」
「利用? 全ては神のため、そして俺達が幸せになるためのことだ!」
 甲高い剣戟が続く。リゲルとシャルティエ、2人を相手取っては明らかにクリスの分が悪い。されど彼の瞳は未だ戦意を喪失させていなかった。
「変だって思わないのか!? 友達を陥れて、沢山の命を犠牲にして、居場所を手に入れるなんて……そんな場所でどんな幸福が得られるって言うんだ!」
「きみは外の世界にいるからそう思うんだ。犠牲になってしまった皆だって幸せになれる。今生きてる俺達だって皆でいつまでも幸せに暮らせるんだ……!」
 シャルティエの問いかけにクリスは熱を込めて語る。それはどこか狂気的にさえ見えるかもしれない。それが彼らにとっての正しさで、けれどシャルティエたちイレギュラーズにとっては受け入れられないものだ。
「……君の言う『皆』には、これから殺そうとしている人たちは含まれないんだね」
 ぽつりと告げたのは後方で支援をしていたマルクだ。彼の話に耳を傾けていたマルクは1歩踏み出す。
 彼もまたサクラと同じように、イコルを摂取したアドラステイアの子供が聖獣へ変わる様を見た。きっと彼が連れてきていた聖獣の中にもそんな子供が含まれていたのだろう。
「君と同じ、アドラステイアの子供だよ。それでも君は『皆の幸せのため』と言い張るのか?」
「そっちの人も同じことを言っていたけれど……『外の人間』の言葉なんて信じると思ってる?」
 うそつき。クリスの唇がそう形どる。マルクは小さく歯噛みした。
 自分の為と言わず皆の為という彼は、きっと優しさを持っているはずだ。ならばこの現状とも向き合えるかと思ったが、そもそも耳を貸すつもりもないか。
「外の人間は嘘つきだ!」
「信じるもんか!」
 それは他の子供達も変わらないらしい。サクラが桜の花弁のように火の粉を散らしながら居合術を放ち、眉尻を吊り上げる。
「貴方たちは仲間の為に戦っているんでしょう!? 私たちを信じろとは言わないけど、アドラステイアを盲目的に信じるのはやめなさい!」
「やめるもんか!」
「思い通りにはならないよ!」
 彼らはイレギュラーズが信仰を失わせようとしているとでも思っているのだろうか。彼らが説得しようとすればするほど、子供達は意固地になっていくようにも見えた。
「クリスも、皆も! 今の天義は子供を前線に立たせたりはしない! 仲間と共にあの都市を出るんだ!」
 それでもリゲルは『いつか』を信じて剣を振るうとともに声を上げ続ける。正気に返って、この言葉を思い出してくれたなら。その時は1人でも多くの子供が救えるだろうと先を信じるしかない。
「――花は風にて舞い散るものなれば、この剣風にて掻き消えるは、何か」
 紗夜の居合が少女へと肉薄し、次いで放たれた回し蹴りに少女が気絶する。まだ立っているクリスと槍持ちの少年が庇えぬよう、紗夜はその間に立った。
 聖銃士たちは傷つき、イレギュラーズもまた傷ついた。相手はまだ戦意を宿しているけれども。
「これ以上は双方、死者が出る。それは、尊ぶべき事でしょうか」
 紗夜は2人の聖銃士へ問うた。それでも剣を下ろさぬ彼らへアーリアが「もうすぐ援軍がくるわ」と告げる。
「そろそろだね」
 シャルティエもアーリアの言葉に頷いた。勿論そんなわけはなく――彼らへ撤退の意思を強めさせるためのもの。紗夜はなおもゆっくりと彼らへ告げる。
「この状況を報告する事こそ、正しき義務では?」
 言外に、自分たちは彼らを見逃す意思があると告げて。
「くっ……!」
 彼らは悔しさを滲ませながら、そしてイレギュラーズによって阻まれた2人の仲間を口惜し気に一瞥して身を翻す。
 その背中が小さくなるまで、イレギュラーズは見送った。

成否

成功

MVP

冷泉・紗夜(p3p007754)
剣閃連歌

状態異常

なし

あとがき

 お疲れさまでした、イレギュラーズ。
 彼らはきっと、またいつか会うことでしょう。

 それではまたのご縁をお待ちしております。

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