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シナリオ詳細

<アアルの野>クロムスフェーンと偽りの現実

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ボクは、忘れない。
 見せてくれた気丈な笑みを。

 ボクは、忘れない。
 捨てていけと、最期まで仲間を案じた心を。

 ボクは、忘れない。

 船の上で未来への希望を持ち、それを語った――『ブルーノ』という、その人を。



「やあ。皆忙しいみたいでね、ボクも手伝ってるんだ」
 どうぞ、と依頼内容の書かれた羊皮紙を渡す『Blue Rose』シャルル(p3n000032)。イレギュラーズは無いように目を通しながら、彼女の語るラサの現状について耳を傾けた。
 事の始まりはFarbeReise(ファルベライズ)という遺跡群が開かれ、願いを叶える秘宝たる色宝が発掘されたことによる。縁が深いと言われているパサジール・ルメスの少女たちによって開かれた遺跡で発掘された宝は真実、その力を発揮した。最も――色宝ひとつ程度では、小さな傷を治すのがせいぜいといったところではあったが。
 それでも数が集まれば脅威になるだろう。悪用の危険性から色宝を保護・管理するとネフェルストから傭兵や商人たちへ通達が行くと同時、大鴉盗賊団なる者たちが色宝を求めて大きく動き出した。彼らはネフェルストからの通達に従わず、自らのものにせんと過激な強奪を繰り返していた。
 それらの転機、と言えば転機だったのだろうか。年末も近くなろうという先日に、大鴉盗賊団は大きく打って出たのである。それがネフェルスト襲撃と、同時並行で行われたファルベライズ中核への進撃だ。イレギュラーズの働きによって阻止され、その折に囚われていたレーヴェン・ルメスも救助されたが、盗賊団は逃亡しイレギュラーズもまた目下の悩みを抱えることになった。
「ホルスの子供達……死者を模した土人形、だったね」
 シャルルは視線を依頼書へ向ける。そこにも『ホルスの子供達』について書いてあるのだろう。博士と呼ばれた者が行った死者蘇生の研究、その結晶。魂の代わりに色宝をコアに持ち、それさえあれば何度でも『作る』ことが出来るモノ。彼らは進もうとすれば必ず障害になるだろう。
「それと、遺跡の中は色宝の影響で変な場所もあるみたいだ。気を付けて行こう」
 色宝の力がより引き出される場所なのか、それだけ色宝が集まっているのか――恐らくは後者だろう。例の大鴉盗賊団たちも変わらず奥へ進もうという動きが見えるそうだ。道中はホルスの子供達だけではなく、盗賊たちとも鉢合わせないか気を付けなければ。

 ファルベライズの中核へ足を踏み入れると、輝くクリスタルで作られた美しい遺跡がイレギュラーズたちを出迎える。このクリスタルを削るだけでも『普通の』盗賊たちからすれば良い儲けものだ。けれども大鴉盗賊団はその先、中央の塔へ向かおうとしていると言う。一体そこに何があると言うのだろうか?
「暫くは階段だね」
 昇って、下って、うねりのある奇妙な階段をひたすらイレギュラーズは進む。途中にいくつかの踊り場はあれど、基本的には階段だ。――その、合間に。
「ホルスの子供達、ですか」
 アイラ・ディアグレイス(p3p006523)は癒えた喉で言葉を紡ぐ。宝石剣を構えたアイラの前で、視界が唐突にぐにゃりと歪んだ気がした。それに目を細めるも束の間、アイラの耳はここで聞くはずもない――波の音を拾い上げる。
 海の上。煌めく海の蒼と空の青。船上に佇んだその人は。

「……ブルーノさん……?」

 半ば茫然と呟かれた亡き者の言葉。それは偽りを現実へと呼び覚ます。
「皆、それはホルスの子供達だ!」
 シャルルの言葉に正気付くも束の間、彼の名を得たホルスの子供達は既に姿かたちを変えていた。絶望の青で変異種となってしまう前の、1人の男の姿へと。
「ソウ、俺はブルーノだ。なア嬢ちゃん」
 あんたが呼んだんだとでも言いたげな彼は笑って、手にしていた剣をアイラへ突き出す。咄嗟に宝石剣で弾き返すが――重い。
 気づけば周りの仲間たちも『誰か』になったホルスの子供達と相対している。その顔色は様々であるが、少なくとも良いものではないだろう。

 誰しもが、亡き既知の姿をとったホルスの子供達をこの場で倒さなければならないのだから。

GMコメント

●成功条件
 ホルスの子供達の撃退

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。不明点もあります。

●状況
 これは戦闘要素のある心情シナリオです。
 ホルスの子供達が取った姿の人間とどういう関係だったのか、どんな過去があったのか。そして特にどんな思いで相手と戦うのかを戦法と共にプレイングへ書いて下さい。

 イレギュラーズの前へホルスの子供達が立ちはだかると同時、皆さんは幻覚・幻聴に襲われました。その最中に映った亡き人の名を呼び、皆さんはそれぞれ1対1で亡き知人となったホルスの子供達と相対しています。それは『本来ならば刃を向けることのない』相手です。
 ホルスの子供達は決して弱くありませんが、1対1でも勝機が見えないわけではありません。あとは各々の心持ち次第です。
 彼らは思い出を持ちません。そして攻撃の手はやめずとも『名前』を持っていた者が望んだ反応を返そうとするでしょう。
 どうして欲しい、何を言って欲しいなどの希望があれば、言ってみるのも良いかと思います。

※アイラさんが参加される場合、アイラさんはブルーノと相対することとなります。故人NPCのため思い出のそうぞうはご自由に。どうぞ人の姿をした彼を倒してください。

●NPC
『Blue Rose』シャルル(p3n000032)
 ウォーカーの少女です。元世界での記憶はほとんどありませんが、それでもどこからか名前が零れ出てきてしまったのでしょう。彼女は知らない、けれども懐かしさを覚える相手と相対しています。
 彼女の勝敗が依頼の成否に大きく関わることはありません。気にしなくて良いです。

●ご挨拶
 愁と申します。
 1度は亡くなったあの人へ刃を向ける、その心中をどうぞ吐き出してください。
 それではどうぞよろしくお願い致します。

  • <アアルの野>クロムスフェーンと偽りの現実完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年01月25日 22時01分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)
柔らかく、そして硬い
赤羽・大地(p3p004151)
未来を、この手で
アイラ・ディアグレイス(p3p006523)
蝶刃
ルカ・ガンビーノ(p3p007268)
竜撃
エルス・ティーネ(p3p007325)
竜首狩り
小金井・正純(p3p008000)
天地凍星
カイロ・コールド(p3p008306)
闇と土蛇
笹木 花丸(p3p008689)
はなまるぱんち

リプレイ


 偽物だと知っている。
 もういないのだと理解している。
 それでも――手にかけることなどできようか。

「ロスティスラーフ……」
「ああ、親父殿。俺だよ」
 『柔らかく、そして硬い』ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)は顔を歪めながら目の前の、筋骨隆々な男を見つめた。忘れようはずもない――自分を逃すために命を散らした息子である。
(これは『ホルスの子供達』、ロスティスラーフじゃない……でも、)
 息子と同じ顔をしている。
 息子と同じ声で話している。
 人形にしては精巧すぎるこの存在を攻撃できるほど、ムスティスラーフは割り切れていなかった。どうあっても本物と重ねてしまうだろう。それはあまりにも痛くて苦しくて、そんなことを感じてしまう心ごと切り捨ててしまうかもしれない。
 故に、どれだけ息子『の形をしたモノ』に攻撃されようとも、自ら手出しはしない。耐えて耐えて耐え抜いて、相手がその矛先を収めてくれるのをひたすらに待つ。
(できることなら……僕と一緒に生きてほしい)
 そんな望みは叶わないだろうか――ムスティスラーフは瞑想して心を落ち着かせつつも、本物の息子へと想いを馳せる。
 あの時、命を賭して守ってくれた息子。同じ姿をした者が今ムスティスラーフを傷つけて、殺そうとしている。これは偽物だ。本物の息子ではない。
 そう――本当に思えているだろうか?
 認める勇気は足りているだろうか?
(いいや、だって僕は生き続けるんだ。生きられなかった2人の分まで!)
 角から放たれる蒼碧の光が彼を癒す。けれど未だ、ロスティスラーフの攻勢は止むこともない――。



 それは憎たらしくて仕方のない相手。
 それは実父を殺した相手。
 何度殺したって足りないほどに――。

 『砂食む想い』エルス・ティーネ(p3p007325)は小さく乾いた笑みを浮かべる。ホルスの子供達については聞いていたけれど、とんだ幻影が見えてしまったものだ。
「……ほんと、笑えるぐらいに――」
 ぶわり、と一瞬にして刺々しい殺気が放たれる。大鎌を手にしたエルスはそれを振り下ろした。
「殺す……!」
 そこには常日頃の冷静なエルス・ティーネは存在しない。どのようにして痛めつけ、苦しめ、塵すらも残らないほどに切り刻むかを考えながら大鎌を振るう1人の吸血鬼がいた。
「私がどれだけ耐えて……どれだけ苦しんだか……ッ」
 今ここで叩きつけてもなお足りない。エルスの脳裏に浮かぶのは妹姫を――亡き妻にそっくりだという実の娘を可愛がる姿ばかり。その宝物ばかりを見て、王位さえも渡してしまうような愚王。何より、実父を殺した男だ。
 エルスも養父からの攻撃に傷を負っていくが、彼女は気にした風さえない。ただ攻勢あるのみと少しずつ少しずつ、急所を外して刻んでいく。
「酷く酷く、殺してあげる……ちゃんと苦しむように……悲鳴を上げられるように……」
 恍惚とさえしているように見える彼女はまず手足の指を、それから少しずつ四肢を切り刻んだ。死んで土塊になってしまわないように、慎重に。
 きっと現れたなら何度だってこうするだろう。同族を滅ぼした悪魔の業は、罪は――これから先、拭われることなんてない。エルスは心の片隅で寂しく笑った。



 優しい温もりに包まれたような気がした。
 暖かな声が呼びかけてくれた気がした。
 だから――私もまた、呼びかけてしまったんだ。

 我に返った『人為遂行』笹木 花丸(p3p008689)は首を振る。目の前に『在る』のは朧げだったモノ。それを見るとどうしようもなく泣きたくなって、体が小さく震えた。
(いつか……こんな事が起こるんじゃないかって、思ってはいたけど)
「……お母さん」
「ええ。どうしたの?」
 あやふやな記憶の中の声と被るような心地。近づいて――肉薄してきた母の攻撃を受け流すのはもはや反射だ。心はこんなにも揺らいでいるのに、師匠に鍛えられた其の武はどんな時であろうとも揺るがない。
「ねぇ……お母さん。私、こんなに大きくなったよ」
(違う。これは、偽物で)
 わかっている。わかっていても口にしてしまう。だって母の顔をしたその人は嬉しそうに微笑むから。
「ええ、大きくなっテ……ジマン、の、娘だわ」
 片言に、どこか違和感を感じさせる言葉が否応なく偽物なのだと突きつける。それでもその声で紡がれる言葉が目頭を熱くさせる。
(ダメ……私は、貴女の娘だから)
 母を母だと思うからこそ――逃げられない。
「もしも、貴女を倒せたら……褒めて、お母さん」
 力強く1歩を。その拳を握りしめて。母娘は鎬を削っていく。かつての記憶には背を向け――一時の蓋をして。母の攻撃は体が動くままに、より手堅く一撃を加える。
「証明するんだ。貴女の娘は、こんなにも立派に育ったんだって!」
 決意とともに繰り出された拳に、母は殊の外嬉しそうに微笑んだ。
「……よく、頑張った、ね」
 頭に置かれただけの手は、ほどなくして土塊へと変わった。



 それは気味が悪く。
 けれど懐かしい姿であり。
 今とは違う頃を知る人だった。

「あら……よく見れば親父殿ではございませんか。盗賊に殺された筈ですが、生きていたのですね?」
 乞食のようですね、なんて『無益なる浪費こそ最大の贅』カイロ・コールド(p3p008306)が呟けば『親父殿』の顔が憤怒に染まる。いや、元からか。
 相手が手にしたそれを振るい、カイロは咄嗟に受け身を取る。懐かしい鉄鞭の痛みだ。おかげで今、兄妹ともども痛みに強い体となった。結果が伴っているからこその『今となってはいい思い出』というやつである。
「何に怒っているのです? 乞食と言ったから? もしかして……家の資産横領の件ですか?」
 こればかりは反省するものの後悔はない。商家は潰れたものの、それに見合う利益は得たのだから。
「親父殿も昔から口酸っぱく言っていたではありませんか。『商人たるもの、利益を得る事を第一に考えろ』と」
 ねえ? と語りながらカイロは変幻自在な格闘術で打撃を繰り出す。もう鞭で叩かれているだけの自分ではないのだ。
「偽物とは言え、親父殿を殺すのはほんの少し気が引けますが……おっと、やっぱり戦います?」
 先ほどは受けた鞭をひらりと避け、カイロは困ったような笑みを浮かべた。仕方ない、仕事だし、向こうはやる気だし――さっさと始末しよう。
「それではさようなら、親父殿。これからも私が稼ぐ様を天から見守って……見守って頂かなくてもいいですね」
 これは偽物なのだから。カイロはそう独り言ちて土塊に戻ったモノを見下ろす。さあ、他の加勢に行くとしようか。



 それは亡くしたはずの姿だった。
 それは亡くしたはずの体だった。
 紛い物、されど相対すれば動揺せずにいられない――。

「……どうして」
 振り絞るような声で『遺言代行』赤羽・大地(p3p004151)――大地は呟く。目の前にいるのはよく『鏡の中』で見たことのある姿。けれど見たくとももう見られない姿。
「三船大地、カ」
 赤羽は舐められたもんだと瞳を眇めた。嗚呼、けれども大地の動揺を誘うには十分だろう。
 かつて彼も身に纏っていた学ランを着た、至って普通の少年。襟足までの黒髪に暖かな茶色の瞳をした人間。首を狩られる前の『大地』の姿である。
 それが――大地の方へ向かってくる。
「やめろ、そんな目で俺を見るな……!」
「落ち着ケ」
 赤羽は大地に淡々と言い聞かせる。確かにあれは大地にとって羨ましく、妬ましく、心を動かす存在であろう。だが――これは『紛い物』だ、と。
「この『赤羽』どころカ、『大地』の魂の一欠片すら籠もってねぇ土人形ダ。負けてやる道理も無イ」
「……そう、だ。そうだな……」
 三船大地の攻勢を受け流しながら、大地は徐々に冷静さを取り戻す。
 仲間がもう戻らない誰かを見ているのと同じように。『三船大地』もまた取り戻せないもの――死者であることこそ揺るがない事実だ。
(受け入れなきゃいけない現実で……変えちゃいけない過去だ)
「心は決まったカ?」
「ああ!」
 真っ直ぐに前を向く、大地の周囲をパンドラの煌めきが明滅する。これを倒して看取ることこそ、誰にも弔ってもらえなかった彼を送ることなのだろう。
 放たれた魔光は『三船大地』を捉え――一思いに、貫いた。



「……貴方は、誰ですか?」
 知らないはずなのに。
「なぜ、こちらを見て微笑んでいるのですか?」
 記憶にはないはずなのに。
 その嬉しそうな、悔しそうな表情が心を騒つかせるんだ。

 『不義を射貫く者』小金井・正純(p3p008000)は戸惑いながらも武器を構えていた。目の前にいるのは知らない、けれど心に波風を立たせる少年。否、その姿を取ったホルスの子供達。
(今は亡き、既知の姿を取る……とは聞いておりましたが)
 まさか自身がそのような存在と相対するとは、と正純は少年の仕掛けてきた攻撃をいなす。その表情をさせて、けれど何も告げさせない事が自身の望みとでも言うのだろうか?
(わからない)
 降る流星のように少年へと一撃を降らせ、正純は彼のことを観察した。一撃で倒すつもりは――倒せるつもりはないが、油断はできない。距離を詰めようとする彼から同じだけ距離を取り、正純は弓を構えた。
(貴方を見て、どうしてこんなに心が揺れるのか)
(貴方を見て、どうして嬉しいとさえ思ってしまうのか)
(貴方が、一体……誰なのか)
 記憶はその蓋を開けてくれない。思い出そうにも思い出せない。けれどだからこそ、こうも思う。
「貴方は、きっと私にとって大切だったのでしょう」
 そうでなければ、硬く閉ざされた記憶にいるだろう『彼の名』を呼べるものか。
 正純は照準を彼へ定め、全力の一矢を放った。思い出せるその時まで自身の中で眠ってもらえるよう――偽物は、撃ち抜く。
「いずれ、また」
 崩れゆく体。正純は姿形がなくなってしまうまで、まるで目に焼き付けるかのように見つめていた。



 珍しくもない理由で死んだ人だった。
 弟分として可愛がってくれた人だった。
 ――そして、初恋を教えてくれた人だった。

「久しぶりだな……ディアナ」
 2度目の名を呼ぶ。1度目は幻に呟いてしまったが、今度は『彼女』としてはっきりと。呼ばれた彼女は小さく微笑んで、手にしていた――見覚えのある――武器を構えた。
(自分がいざその立場になれば、少しは気持ちがわかるもんだ)
 死人の形をとらせようだなんて趣味が悪い。これまで『竜撃』ルカ・ガンビーノ(p3p007268)はそう思ってきたが成程、多少は分からなくもない。死んだ者が動いて、話して、自分を見てくれるという感覚は何とも言い難い。
「久々に手合わせ、して貰えるか?」
 稽古をつけてもらっていた記憶は苦い。新人以下だったのだと理由を付けるのは簡単だが、それでも悔しいものは悔しいのだ。
 その後、結局勝ち逃げされてしまったと思っていたのに――期せずして再び刃を交えられる機会がやってきたのである。逃すわけにはいかないだろう。
 だけれども、何度か刃を交えればルカの眉間に皺が寄る。思い出の彼女とは比べ物にならないくらいに剣は軽く、動きは遅く、読みも甘い。あまりにも本物とかけはなれすぎて、ルカが難なく食らいついていけるくらいに。
(完全再現は難しいのか……? いや、)
 ある仮定に辿り着いたルカはさらに皺を深めた。弱い相手ではない。弱くなったのでないのなら。
「俺が強くなったのか……?」
 いつの間にか目標へ追いつき、追い越してしまっていた。思い出の彼女は思い出だからこそ、ルカにとっていつまでも『強い存在』だった。
「……寂しいもんだな」
 苦く笑みを見せたルカはす、と表情を改める。
 初恋の、並んで戦いたかった相手――なれど、紛い物であったとて生き返ってくれとは願わない。命が取り返せる世界はきっと、命を大切にしない世界だから。
「俺はそんなの見たくねえからさ……ずっと、眠っててくれ」
 じゃあな、ディアナ。初恋のヒト。どうか――安らかに。



 色々なことを教えてもらったの。
 潮の香りとともに、海洋のことを。温かい気持ちを。
 まるで貴方は――。

(痛い。……熱い)
 心が、喉が、目の奥が。彼を忘れてしまいそうになる時、必ず思い出す言葉がある。
『捨てていけ』
 『護るための刃』アイラ・ディアグレイス(p3p006523)が未熟だったから言わせてしまった。置いていくしかできなかった。そう、思い知る言葉。
 あと少しだって笑っていた彼はもういない。彼を置いて越えてしまった絶望の青は、もはやアイラにとって何の意味も持たなかった。
 だからこそ。
「彼の声で話して、ボクの名前を呼ぶなんて――許さない」
「ドウしてだい? 俺のこと、呼んだじゃないか」
 その微笑みはあの時を思い出す。けれどアイラだってもう『あの時のアイラ』じゃない。
 何回も敵を殺した。人だって手にかけた。命を屠ることで得た強さがある。
 だから大丈夫――そう心で呟いてアイラは走り出す。その手にしているものは偶然か必然か、彼にもらった剣だった。
 早く殺さなくちゃと肉薄して、斬りつけて。その度に生まれる傷にどうしようもなく胸が締め付けられるような錯覚が生じる。慣れたはずでしょう? そう言い聞かせ、戦況はアイラの方が優勢であるけれども。
「おしまい、かい?」
 彼女は唐突に剣を下ろした。そして彼の言葉に顔をあげる。
「そう。代わりに……わがまま、言っても、いい?」
 ぎゅっとしてほしい。彼女の望みを『彼』が叶えぬわけもなく――広げられた腕にアイラは飛び込んだ。
「だいすきだよ……おとうさん」
 体を貫く衝撃と同時、アイラもまた彼の左胸へ剣を突き立てる。温もりを最後まで感じていたくて、腕に力を込めた。
 強くなるから、見ていて。大丈夫、ありがとう。もう、心配しないで。

 ――あなたとであえたことが、いちばんの、さいわいでした。

成否

成功

MVP

小金井・正純(p3p008000)
天地凍星

状態異常

ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619) [重傷]
柔らかく、そして硬い
アイラ・ディアグレイス(p3p006523) [重傷]
蝶刃

あとがき

 お疲れさまでした、イレギュラーズ。
 さあ、進みましょう。ホルスの子供達はまだまだ向かってくるでしょうから。

 それでは、またのご縁をお待ちしております。

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