シナリオ詳細
雪原を覆う色
オープニング
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ヴィーザル地方――それはゼシュテル鉄帝国が北東部に存在する、極貧の大地。
そして、群雄割拠の末にノルダイン、ハイエスタ、シルヴァンスの三民族による連合王国が生まれた土地である。
侵略戦争によって肥沃な土地を獲得せんとする鉄帝国としては、旨味が無いのに厄介な土地だ。
「ここまでは上手くこれたか」
そう言ったのは両目が独特な輝きを秘める男である。
一見すると義眼のようにも見えるそれは、彼が元来持っている物。
簡易に張られた天幕の中には、自分以外にももう5人いる。
「おう。だが、どうやら鉄帝側が動きを見せたようだぞ、ウィレム」
答えたのは傷だらけの男。
「遂に来たか……」
爛々と輝く闘志を覗かせたウィレムは、拳を握る。
赤い腕は人間ではあり得ない金属のそれ――鉄騎の証。
「おう、その意気だ! このまま進んで、軽くひねって俺達がディルトモアの町を抑えちまおうぜ」
「ロベルト、あんまり驕る物じゃないぞ。我らは誇り高きハイエスタ、どんな敵であろうとそうでなくては」
「がははは! ビビっちまってんのか、誇り高きハイエスタ様よぉ!」
大声を上げて笑ったのは、鬚たっぷりの大男だ。
言われている言葉は険があるが、声色が不思議と嫌悪感を抱かない。
「ゲルト殿。そういうものではない」
そう宥めたのは隣にいた男だ。大男――ゲルトと並んではかなり小さく見えるが、一般的には筋肉質に入るだろう。
その眼は片方が眼帯に覆われていた。
「まぁ、うちらのもんが先に進んだ感じ、彼我の戦力は拮抗してるだろうよ」
「ええ。これまで同様、同数であれば捻りつぶすだけでしょう」
そう言ったのはそれぞれ、狼の獣種と、ハゲタカらしき鳥種の男。
「なんにせよ、今日は寝て明日に備えるぞ。
恐らくは明日だろう?」
ウィレムの問いに、獣種の方がこくりと頷いた。
●
「おう、意外といるではないか」
そう言ったのは咲花・百合子(p3p001385)だ。
冷える風にふわりと靡かせる髪は艶やか。
「よくもまぁ、ここまで来たものであります」
「うひゃー結構いるけど、頑張ろう!」
いつものように手を組んで敵を見据えるのはエッダ・フロールリジ(p3p006270)と長谷部 朋子である。
同じようにマッチョ ☆ プリン(p3p008503)はぐぐっと胸を張って筋肉を見せる。
冬空の陽光にきらりとプリンが光る。
「これ以上進ませるわけにはいかないな」
「ここで止まってもらおう」
槍を立てたレイリ―=シュタイン(p3p007270)と紅雷を滲ませるマリア・レイシス(p3p006685)もまた、敵を見ていた。
その他にも、メイスを握るヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)や、斧を構えるリズリー・クレイグ(p3p008130)、イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)、この地に集うは鉄帝に領地を持つイレギュラーズであった。
依頼人はとある鉄帝軍人だった。
いつものようにノーザンキングスの侵攻を受けていたその男は、いつものように彼らを退けようとして、敗走を余儀なくされた。
それが、眼前にいる敵軍――その数ざっと80ほど。やや規模が大きめのこのノーザンキングス軍に対して、男は直ぐにイレギュラーズに援軍を要請。
結果として、領地の兵を率いた9人が到着したというわけだった。
「オーダーは戦いに勝利する、ですわね」
ヴァレーリヤは敵軍を眺めながら呟いた。
――ごく単純な依頼である。
両軍が動きを始めようとしていた。
- 雪原を覆う色完了
- GM名春野紅葉
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年12月25日 22時00分
- 参加人数9/9人
- 相談11日
- 参加費---RC
参加者 : 9 人
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参加者一覧(9人)
リプレイ
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「ここを突破されれば吾等の耕した田畑は荒らされ、収穫物は奪われよう!
それを見逃してよいのか? 否! 奴らを撃滅せしめ畑の肥にするのである!
吾らの縄張りに侵入してきた報いを受けさせるのである!」
自軍へと檄を飛ばすは『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)。
麾下の歩兵たちはそんな百合子の下で白百合清楚殺戮拳を学ぶ学徒達である。
「ヴァリューシャー! 気を付けるんだよー!」
神官たちを引き連れた『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)に声をかけた『白虎護』マリア・レイシス(p3p006685)は振り返る。
居並ぶ兵士達は練達と鉄帝の技術を複合させて簡易的に自身と同じような戦闘スタイルを実現させたティーグルの陸上機甲師団たち。
「よし! 数は揃えられなかったが、諸君らは精鋭の中の精鋭だ!
我が勇猛なティーグル陸上機甲師団の兵達よ! さぁ! 行こう!」
応、の言葉と共に、僅かに紅の雷が装備から爆ぜる。
「彼らには彼らの事情があるのでしょうけれど、今は戦いましょう。
この地に住まう人達を守るために」
少しばかり目を閉じていたヴァレーリヤはそっと目を開けると、メイスを構えた。
その後ろには同じような衣装に身を包んだ戦闘神官たち。
防御陣地の構築はあまりよくはない。
攻め破られた依頼人の要請を受け、後手で到着したこちらに陣地を構築するほどの時間が無かったのが大きい。
せいぜいが大盾を並べられた程度だ。
「それにしても、なんっだか敵の動きが妙ですわね」
それは異様に距離を取る2つの部隊への印象だった。
今はまだ、相応が弾の届く距離にないが、動きが始まれば砲撃を浴びせておく方が良さそうだった。
「ゼシュテルゥゥゥ! フィィィバァァァァァ!!」
円陣を組んでいた『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)が雇っている傭兵たちとそう声を上げる。
「行こう! ダレのシマで調子に乗ってるのかワカラセテやろうじゃないか!」
「「おう!」」
答える兵士達はイグナートが雇い入れた傭兵たちだ。
その傭兵たちは二人一組となって各地へと動き出す。
「ノーザンキングス連合軍か……お互い動員人数は少ないけれど、どれも一騎当千の精鋭ばかり!
普段領地で悪さしてくる盗賊団や流れの蛮族とは格が違うってもんだよね」
馬上にてネアンデルタールを担ぐ『蛮族令嬢』長谷部 朋子(p3p008321)は整然と居並ぶ互いの陣容を見ながら頷いていた。
「……でも、これを降してこそのあたしたちだよ、徹底的に蹴散らしてあげる!」
こん棒を振り上げれば、同じように装備を固めた騎兵達が雄叫びを上げる。
「ユクゾ! 我ラガプリン魂……見セツケルノダッ!」
そして、『たんぱく質の塊』マッチョ ☆ プリン(p3p008503)率いるプリンを糧に鍛え上げしマッチョたち。
「「「イェース!マッチョォ!!」」」
その掛け声とともにマッチョがポーズを決める。
●
敵陣から雄叫びが轟き、兵達が動き出す。
前面に出て向かってくるのは、2つの歩兵部隊。
その前衛がこちらの前衛とぶつかり合うよりも前、マッチョ達は動いていた。
「「「マッチョ隊、一魂投入ッ!」」」
ポーズを決めたその姿で高められた気力がプリンに注がれる。
それと気力が籠められたプリンは、敵陣の正面目掛けて雨あられならぬプリンあられと降っていく。
プリンは弾丸となってノルダイン兵らしい者達の弱点を撃ち抜いてく。
「さあ、野郎共! 準備はいいか? ――ぶっ潰せェッ!」
同時に動くのは『厳寒の誇り』リズリー・クレイグ(p3p008130)率いるヴィーザルの重戦士たち。
「がははは! 上等だ! 前の奴より遥かに歯ごたえありそうじゃねえか!」
笑い声をあげ、敵陣の先頭で大斧が振るわれる。
大斧の振り回しに味方の数人が僅かに巻き込まれる中、同じように兵士の先頭で騎士盾を押し立てるはリズリーだった。
「大勢で来て貰ったとこ悪いが、アンタらにはここでお帰り願わなきゃならないんだ」
最前衛の兵士達が押し返される中、二人の大将は必然的に互いを視認する。
「はははは! 面白れぇ! 押しつぶせ!」
雄叫びと共にもう一度、大斧の男――ゲルトがそれを振るう。
「迷わないよう送ってってやるさ。ヴァルハラにね!」
宝剣と大斧が激しい音を立ててぶつかり合う。
その横槍を入れるようにもう一つの歩兵が押し込んでくる。
「悪いが抜かせない!」
蒼き雷がマリアを、ティーグル陸上機甲師団を包み込む。
それらはやがて天へとのぼり、雷雲を生みだした。
ゴロゴロと鳴り響く雷雲は、そこから蒼き落雷を地上へと振り下ろす。
文字通りの天災が連合軍だけを撃ち抜いて削り落とす。
破壊の閃光は幾度となく降り注ぎ、敵の身体に致命的な呪縛を齎す。
動きを鈍らせた敵軍へ介入するは百合子達。
放たれるは拳。
無駄を削ぎ落し、最適化されし白百合清楚殺戮拳・鉄法の構え。
撃ち込まれる百裂拳は、鍛え上げられた鉄帝出身の学徒達のそれ。
腕が百に分裂するが如き拳に連合軍に隙が生まれた。
そしてそれは、一時的に押されていたリズリー達に好機を与え、反撃の機会をもたらす。
馬を走らせた『ヴァイスドラッヘ』レイリ―=シュタイン(p3p007270)はリズリーが抑える歩兵たちを迂回するように戦場を走っていく。
狙うは歩兵と交戦を開始したリズリーへと動き出した騎兵隊。
「私はレイリー=シュタイン! さぁ、最初に槍の錆となるのはどいつだ!」
槍を馬上で振るい、部下の騎兵隊と共に咆哮を上げたレイリー達シュタイン騎兵隊に敵の騎兵が突撃を仕掛けてくる。
「乗せられちまったもん仕方ない! 行くぞ!」
先頭、明らかに大将首らしき眼帯の男――ディートリヒの剣とすれ違いざまに弾きあう。
互いに傷はほとんどない。そのまま走り抜け、ぐるりと再び敵が向かってくる。
「さぁ、今日のために騎兵戦も練習してきたんだ! 行くよ!」
その敵の動きを遮るように突っ込んだのは朋子率いる騎兵隊だった。
こん棒を振り下ろして叩き割るように突っ込んだネアンデルタール騎兵に、敵の騎兵隊が分断される。
朋子は敵の騎兵隊へと幾度となく突撃をけしかけた。
突撃力を失う敵の騎兵が動きを鈍らせていく。
ヴァレーリヤ率いる神官部隊は敵陣の2つの部隊目掛けて進み出ると共に聖句を唱え始めていた。
「主よ、天の王よ。この炎をもて彼らの罪を許し、その魂に安息を。どうか我らを憐れみ給え」
各々のメイスからあふれ出す炎がその人数もあって宛ら本物の濁流が如く襲い掛かる。
砲撃を受けた敵軍が徐々に下がり、連合軍の陰に隠れるようにして後退していく。
ヴァレーリヤはその動きを横目に、メイスを押し立てる。
「「前進せよ。恐れるなかれ。主は汝らを守り給わん!」」
聖句と共に、神官たちは前衛の方へと向かっていく。
一方、敵の様子を各所で見ていた傭兵達が動いた。
後退していく敵兵の一部が空へと舞い上がったのだ。
走り抜けたイグナートはそのままマッチョの方へと走り出した。
舞い上がる敵兵たちが、主力戦となっている歩兵たちの方へと近づいていく。
「アレが何をするかワカラナイ。先に打ち落とそう」
「マッチョ隊! モウ一度、一魂投入!」
構え、気力を注入するその最中――それは起こった。
味方も敵も区別などない。武装するソレらの砲撃が、主力同士のぶつかり合いに介入する。
(ドクトリンも違えば思想も違う。作戦の統一など取れようもない。
寄せ集めの軍ならこんなものか……)
領主として着陣する『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)は冷徹な軍人らしい思考に徹していた。
「――されど。そこに見出せる価値はあるはずだ」
銃弾が、敵の味方の区別なしにシルヴァンス隊から撃ち込まれるその瞬間――エッダは真っすぐに敵陣を見据えた。
「――前進。電撃戦というものを、奴らに教授してやろう」
その指示とほぼ同時、ノイエ・フロールリジ騎士団が戦場を真っすぐに走り抜けた。
剣戟の音と銃弾の雨をかいくぐり、目指すは敵軍後方。
シルヴァンス隊の動きに一瞬の動揺を見せつつも主力戦に合流するように動きだした本陣――その後ろ。
「回り込まれたことに気づいたか? もう遅い。
敗走を赦す味方も居るだろうが。私は赦さぬ。
丁寧に包んで、押し上げろ」
粛々と指示を与えながら、最前線に立って、構えを取る。
「我が名はウィレム、敵将よ、勝負せよ!」
本陣から顔を出したウィレムを名乗るクレイモアを持つ男の言葉にも、耳を貸す気はなかった。
淡々と――粛々と。
「――はっ! 賢しらなシルヴァンス共はやっぱり味方も巻き込んできたかい!」
頭上から打ち据えられた銃弾を兵士達と潜り抜けたリズリーは笑って剣を構える。
連合軍が一時的に後退していた。
シルヴァンス軍の介入に動揺して混乱が生じているようだった。
「野郎共! 本番はここからだ! ――ぶちかませェ!」
怒号と共に、兵士達と共にリズリーは突っ込んだ。
突然の裏切りに混乱する一方で、その裏切り故に警戒心を強めた敵の動きがより堅くなっていた。
「邪魔だ! どけ! てめえら以外に殺すべき奴が出来た!!」
大斧を構えた男が怒号と共に突貫し返してくる。
レイリーは味方からの伝達を耳に入れつつ、二対一で押し込めている騎兵に槍を撃ち込んでいた。
向かい合う敵軍は歴戦の傭兵なのだろう。
二つの部隊で押し込んでいるはずなのに、巧みに挟撃されるのを避けようとしている。
自らの負った傷を修復しながら、もう一度、咆哮を上げた。
ディートリヒが再び至近すると、手に持っていた銃の引き金を引いた。弾丸が、レイリーの頬を掠めた。
返すように槍で打ち据えながら、向かい合う。
「降伏しろ! まだ戦うのか?」
「悪いが――死力を尽くして俺達に戦を教えてくれってのがあの人との契約でね!」
そう言って、ディートリヒが間合いを開ける。その横を突くように朋子の軍勢が突撃を仕掛けていく。
振り下ろされた剣を籠手で防ぎ、受け流す。
反撃に撃ちこんだ打撃が敵のその傷を縛り付ける。
騎士団の兵達と共に敵の向かう先をコントロールしながら、ただ撃ち抜き、倒れた兵士は念入りに殺していく。
「貴様、戦士の誇りはないのか?」
目を見開くウィレムを一瞥し、エッダは自然体で向かい合う。
「何一つ残さぬべきだ。
塵も残さぬべきだ。
生き残った怨みは決して軽くないから」
歯ぎしりしたウィレムが剣を振るう。
それに対する反撃は、割り込んできた雑兵に防がれた。
●
シルヴァンス軍の奇襲以降、戦場の動きは複雑になっていた。
ハイエスタ軍、ノルダイン軍の歩兵はシルヴァンス軍とイレギュラーズの双方からの攻撃を受けつつある。
正確には、シルヴァンス軍の砲撃の巻き添えを喰らっているというべきだが。
どちらにせよ、ただでさえ数で圧倒されていたハイエスタ、ノルダインにとっては致命的だった。
リズリーは引き続いてゲルト軍と戦い続けていた。
徹頭徹尾、最前線で戦い続けていたこともあり、その傷は浅くはない。
自らの傷を修復さえながら、もう一度構える。
「これで終わりだ!」
「ちくしょう! ちくしょうがぁぁ!」
叫び声をあげるゲルトに対して、リズリーは思いっきり騎士盾を叩きつけた。
後退したゲルトが血反吐を吐き、たたらを踏む。
そこへ刺すように入ったのはヴァレーリヤの神官部隊だった。
兵士達と共に炎を纏ったメイスで思いっきりゲルトの巨躯に叩きつければ、その身体を大いに焼き払う。
ゲルトが崩れ落ち、他の兵士達も倒れる中、未だ生き残っていた数人がその場から三々五々に散っていく。
「まだへばるんじゃないよ、前線を押し上げるよ!」
ちらりと周囲を見渡せば、残っている敵の歩兵部隊は既に味方の包囲と、騎兵の突撃を受けていた。
「次はあちらですわね! さぁ、恐れず次に参りましょう!」
ヴァレーリヤもまた、同じように次の敵の方に視線を向ける。
「……退け、最早お前らは敵にあらず! あの卑怯者どもを殺し尽くしてやる……!」
体中に傷を負った男――ロベルトがギラリとイレギュラーズを見渡した。
「くははは! 滾るわ! 貴様らとてそうやって戦を続けてきたのであろう?」
対応していた百合子は笑みを浮かべていた。
周囲の敵兵たちを打ち据え、致死毒をもたらしながらも、まだ降伏の意思を示さぬ男――ロベルトはハルバード片手に構えを揺るがさない。
振り抜かれてきたハルバードを拳で叩き上げて、代わって踏み込みと同時、再び打ち据える百裂拳が、ロベルトの肉体に真新しい傷を新たに増やしていく。
その背後――馬蹄が聞こえてくる。
「どうやら吾らの出番はここまでのようである。
さらばだ、ロベルト殿」
突撃を仕掛けてきた仲間たちの騎兵をしり目に、百合子達白百合清楚殺戮拳門下生達は別の部隊の方へと走り出す。
遊撃部隊である彼女たちの次の目標は、銃撃を叩きつけてくるもう一つのシルヴァンス軍だ。
レイリーと朋子はディートリヒ隊が撤退していくのを見てからすぐに馬首を翻し、疾駆する。
朋子と別れたレイリーが向かう先は、長距離から敵味方を問わず銃撃をぶちまけていたシルヴァンス軍――スヴァンテ隊だ。
そんなレイリーの動きを見止めた敵軍は、直ぐに撤退に移行していた。
「臆病風に吹かれたか、スヴァンテよ! 戦場で漏らして動けないか!
戦場で味方ごと打ち据えるような卑怯者はまさしくそうなのだろうな!」
それを追いすがったレイリーはそう叫ぶと共に咆哮を上げた。
撤退しようとしていたスヴァンテ隊の動きが止まる。
「恥を知るがいい!」
反応を示した敵軍が、翻って弾丸を打ち据えてくる。
「盾を構えて防げ!」
兵士達と共に弾丸を潜り抜けていく。
一方の朋子は乱戦に陥った後、既に大勢の決しつつある歩兵たちの戦いだった。
味方の歩兵たちが包囲を向ける敵軍めがけ、思いっきり飛び込んだ。
「蹴散らすよ! 着いてきて!」
兵士達にそう告げながら、陣頭で走り抜けた朋子は、そのまま包囲陣の中へ飛び込むと、中央で構える敵に向かってこん棒を振り下ろした。
振り下ろされたネアンデルタールに傷だらけの男がぐらりと体勢を崩す。
続くように兵士達の突撃をかまされた男が、そのままごろごろと転がり倒れていった。
マリアはリニアドライブを用いて空に舞い上がっていた。
同じように舞い上がる兵士達と共に立ち向かうは、シルヴァンス軍が一角、ハゲタカらしきその男――ヨナスとその配下たちと向き合う。
「君達には兵士の誇りが無いのか!」
「ほほほ、勝てばよろしいのです。
猪突猛進の間抜けと、戦士の埃だの馬鹿馬鹿しいものに縋るやつ等がおろかなのですよ」
機関銃の引き金を引いて撃ち抜かれた弾丸を躱しながら、兵士達と共に蒼き雷霆を生みだして打ち据える。
蒼き雷が動きの鈍るヨナスが痛撃にふらふらと微かに落ちていく。
体勢を崩した彼らの下へ、突如としてマッチョ部隊が姿を現した。
「なんですかぁ!?」
「オオオオ!!!!」
振り抜かれたそれは、プリンで出来たバット。黄金に輝くプリンが打撃と共に彼らの身体をプリン塗れに変えていく。
叩き落すように振るわれた一撃に、空を舞う敵が地上目掛けて吹っ飛ばされていく。
「ひぇぇなんですかこれは! いえ! いえ! なんなんですかあなたは!?」」
「オレノ名ハ――マッチョ☆プリンダ!」
「意味が分かりませんねぇ!?」
雷霆とプリンを浴びせかけられながら、ハゲタカはどこかへと飛び去っていく。
●
ゲルトが討たれ、ロベルトが倒れ、ヨナスが敗走したことで、残っていたスヴァンテはレイリーと百合子の追撃を受けながらなりふり構わず撤退していった。
そして、イレギュラーズは遂に最後の敵――ウィレム隊の下へ集結していた。
「オレが相手だよ!」
飛び込んだのは戦いの殆どで斥候に徹して温存していたイグナートの傭兵隊だった。
前方に構えていた10人のハイエスタ兵の殆どを仲間たちに任せて突入したその向こう、多勢ながらもダメージコントロールで損害を下げながら戦い続けていたエッダの下へ。
「ほかの諸将は負けたのか……!」
歯ぎしりするウィレムがイグナートを見て雄叫びを上げた。
「総員、突撃!! 我らの誇りをかけて、最後まで闘うのだ!」
兵士達の気力を振り絞った怒号を受けながら、イグナートは拳を構え、傭兵達は各々の武器を構えた。
疲れ果てた兵士と、気力の残るイグナート隊では話にもならない。
一人一人が打ち据えられていく。
イグナートはその最中に前に出た。
振り下ろされる刃の砕けたクレイモアを叩いて躱し、漆黒の右腕を突きこんだ。
手首を旋回させながら打ち据えられた掌打にぐわんとウィレムの身体が揺らぐ。
エッダはその様子を見ながら、蜘蛛の子を散らすように逃亡しようとするハイエスタ兵を見据えていた。
「一人も逃がすな」
騎士への命令をもう一度。
はたしてそれが、彼らへの命令なのか、自分へのものなのか分からなかった。
向かってきた雑兵の一人を打ち据えて――
(ヴィーシャ。マリア。
私の有様は、間違っていると思うか?)
向こう側、降伏を宣告する友人達を見据えながら、ただ内に思う。
「……問うまでもないな。
それでも私は、騎士なのだ」
血に生臭い風が、びょうと一つ吹いてきえていく。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
あとがき
お疲れさまでした、イレギュラーズ。
想定していた動きが殆ど看破されていました。
しいて言うなら、シルヴァンス軍の動きぐらいでしょうか……。
お見事です。
GMコメント
そんなわけでこんばんは、春野紅葉です。
物凄くお待たせいたしました。
※注意
なお、当依頼に関しては全体依頼とスケジュールが丸被りしてしまった点も踏まえ、
相談期間を大幅に長めで取らせていただきました。
全体依頼出発後から相談を始めても大丈夫ではあると思いますが、
その分、プレイングの出し忘れにだけはご注意ください。
それでは早速詳細に参りましょう。
■オーダー
戦いに勝利する。
それが敵軍の敗走でも、降伏でも、文字通りの皆殺しでも構いません。
勝てばOKです。
■戦場
植物に覆われた荒野部分です。
足元辺りにまでしかないため、身を隠すにはあまり適しません。
移動などに困難さなどはないでしょう。
■敵勢力
ノルダイン、ハイエスタ、シルヴァンス三部族による連合軍です。数は80。
とはいえ、一枚岩ではありませんし、それぞれは自分の大将の指示を優先しています。
【ノルダイン軍】×25
・ゲルト軍×10
大将のゲルトは大柄な大男です。
猪突猛進、豪放磊落。生粋のノルダインです。
戦場においては真っ先に前線を切るタイプ。
武器はバカでかい大斧です。
構成される兵士達は全員歩兵、片手剣と片手盾、片手斧と片手盾、弓兵などがいます。
獰猛かつ残忍で、積極的に命を奪いに来る戦術を好みます。
・ディートリヒ軍×15
大将のディートリヒは比較的筋肉質な眼帯の男です。
元ラサの傭兵。比較的冷静で、戦術的な指揮を行ないます。
武器は長めの片手剣と銃を持っています。
騎兵です。騎乗、騎乗戦闘持ちです。
構成される兵士達は全員騎兵です。全員騎乗、騎乗戦闘持ちです。
獲物は馬上でも使えるような長めの大剣や槍などです。
騎馬突撃による突破力が自慢です。
【ハイエスタ軍】×30
・ウィレム軍×20
大将のウィレムは誇り高く、正々堂々とした戦を好む生粋のハイエスタである鉄騎種です。
また、同時に今回の敵軍の総大将ともいえます。
武器はクレイモア。
基本的には本陣にて堂々と構えていますが、
イレギュラーズの突撃を受けたり、戦況が悪化したりすれば行動します。
配下の兵士は全員歩兵です。基本的には勇猛果敢なハイエスタらしい者達です。
基本は本陣の守りを固めながら、徐々に本陣を押し上げてきます。
大盾を構えた兵士や、クレイモア、ハルバードなど、大型の武器を持っています。
・ロベルト軍×10
大将のロベルトは体中に傷跡のある屈強な男です。
ハイエスタの名に恥じぬ武人であり、兵士達と共に堂々と立ち向かってきます。
配下兵士は全員歩兵です。
基本的にはクレイモアやハルバードなど大型武器を用いて殴りかかってきます。
また、中には魔法戦士も混じっているようです。
【シルヴァンス軍】×25
・スヴァンテ軍×15
パワードスーツに身を包んだ狼の獣種です。片目に大きく切傷が刻まれています。
武将としての腕ももちろんですが、狡猾な性格をしています。
武器はアサルトライフル風の銃。
配下の兵士達も銃をもったりナイフを持ったりしている獣種です。
全員歩兵でゲリラ戦闘を好みます。
・ヨナス軍×10
恐らくは鉄帝から盗んだであろう、機械化した武装を身に纏ったハゲタカの鳥種です。
スキンヘッドに鷹のような眼をしています。
肩にはひっかけるようにして大きな機関銃を持っています。
配下の兵士達もスナイパーライフルや機関銃、マシンガンなどの重火器を手にする鳥種です。
長距離からの制圧戦を好みます。
【メタ情報】
シルヴァンス軍は皆様に対し、初手で超長距離からの奇襲をもくろんでいます。
何らかの情報から看破していても構いません。
場合によっては、他2軍からも嫌われるでしょう。
■イレギュラーズ側戦力
皆さんは自身の領地兵を各々10人、指揮下に置いた状態で連れてきています。
兵科などは指定可能です。指定が無い場合はイレギュラーズ本人のステータスを反映します。
なお、10人しかおりません。指定する場合でも、
自分の兵士は役目を1つに統一しておいた方がよろしいでしょう。
■特殊ルール
・騎乗戦闘について
当依頼においてはいわゆる騎乗ペナルティは
【騎乗】【騎乗戦闘】の併用により完全に打ち消せるものとし、併用時かつ騎乗中の場合、機動力を+1します。
皆さんが活性化していれば部下の10人も活性化してあるものとします。
・潰走について
敵味方共に、一定のターンずっと挟み撃ちを受けたり、大将首を討ち取られたり(イレギュラーズの場合は戦闘不能)した場合、
その部隊は潰走状態に陥ります。その部隊の兵士達は一切の動きをできなくなります。
なお、大将首を討って潰走に持ち込んでいる場合、その部隊はその時点で撃破扱いとします。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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