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シナリオ詳細

<Raven Battlecry>孤児たちの墓穴

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●大烏の斥候
 一歩一歩、歩みを進めて行く。
 地下に輝く湖は綺麗だった。今までこんなにきれいなのは、満天の星空以外に見たことがない。
 でも、今歩くこの場所は、死とと隣り合わせだったことに間違いはない。
 ドジを踏んだオスモはトラップにかかって死んだ。あっけなかった。上から降ってきた石に押しつぶされてぺしゃんこになったのだ。
 ターヴェッティとピルモはサラマンダーの怒りを買って、丸焼けになって、苦痛に踊りながら死んだ。ライヤはくし刺しになって死んだし、イェッセはゴーレムに頭を踏みつぶされた。
 僕たちは、そう言った危険を察知して自分たちの身体で解除するための斥候で、僕たちの死体の後ろを、たぶん大人たちが安全に降りてくるのだろう。
 ぎゃ、という声が聞こえた。そっちの方を見たら、マリッカの首が転がっていた。綺麗な女の子だったのを覚えている。物語が好きで、特に海洋のドレイク船長の物語がお気に入りだった。
 きっと大人になったら、と彼女は言った。海洋に出て、船に乗るの。そう言っていた。叶えばいいな、と思っていた夢だった。それはもう、無残に潰えたところだけど。
「後何人かしら、クスティ」
 リーッタが笑いながら言った。
「それは、後何人死ぬか? それとも、僕たちが残り何人生き残っているか?」
 クスティ、つまり僕が答えた。
「どっちもよ! でも、上手く行ったら残りは生きて帰れるかもね。マザー・カチヤは言っていたわ! いい子にしてれば神様が助けてくれるって」
 いい子じゃなかったから、マリッカは死んだのかしらん? と、僕はその言葉を飲み込んだ。多分違うだろう。良い子だった。でも、彼女の手を引いたのは、神様は神様でも、死神だった。
 多分、神様は良い子とか悪い子とか、そう言うのは気にしないで、ランダムに、助けたり見捨てたりするんだろうな、と思った。でも、それは言わないでおくことにしよう。マザー・カチヤの教えに反するし、僕たちはマザー・カチヤを信じて生きていくしかない。
 孤児たちだった僕らを救ったのは、確かにマザー・カチヤだった。僕たちに家を与えてくれて、ご飯を与えてくれて、生き方を教えてくれた。人殺したりする、随分と血なまぐさい生き方だったけれど、きれいごとだけを述べて結局手は差し伸べてはくれない人たちに比べたら随分とマシだ。
 マザー・カチヤは大鴉盗賊団に協力する、教会――それがどこの国の教会なのかは知らない。マザー・カチヤの独自のものかもしれないし。そこかの国に属するものだったとしても、マザー・カチヤは、自分たちの事をそこに報告していたりはしないだろうし――の司祭だった。
 大鴉盗賊団への協力――要するに、僕たちのような戦力を差し出して、見返りに金銭を受け取る事をやっているわけだ。『ようへい』みたいなものなのだろう、と僕は思った。
 いずれにしても。大鴉盗賊団は、ファルベライズの色宝を手に入れるために、この地底湖の眠る遺跡に進軍しているし、でも安全を確かめる必要もあるから、替えの効く僕たちのような『ようへい』を斥候に使っているという訳だ。
 でも、悪い話ではない。盗賊団のボスのコルボが言うには、首尾よく色宝を手に入れたなら、参加者全員で山分けだ、という事らしい。願いをかなえる不思議な宝。それを少しでも手に入れられたならば、今教会で訓練を受けている子たちが、いい加減に死ぬような未来を避けられるかもしれない。
 ならば……此処で僕たちが犠牲になるのも、そう悪い話じゃない。
「行こうか。マザー・カチヤと、子供たちのために」
「そうね! 皆のために!」
 僕たちは笑い合うと、遺跡の奥を目指して斥候を続けた。きっとこの暗い洞窟の先には、明るい未来が待っているはずだった。

●鴉の侵入を阻止せよ
 フィオナ・イル・パレストによる情報収集の結果、大鴉盗賊団による「ネフェルストの倉庫」への襲撃、および「ファルベライズの中核」への侵入作戦であった。大勢によるネフェルストへの襲撃と同時に行われる、少数精鋭によるファルベライズへの侵入作戦……どちらも見過ごすことは出来ず、確実に両方を止めなければならなかった。
 さて、このチームのイレギュラーズ達は、ファルベライズ遺跡群の中核である、地下湖に侵入していた。目的はもちろん、大鴉盗賊団の侵入阻止だ。敵部隊を見つけ次第、奇襲を仕掛けるのが、このチームの役目だった。
「……?」
 仲間達のうち一人が、声をあげた。静かに、というジェスチャーに応じ、耳を澄ませてみれば、苛烈な戦闘を思わせる音が、遺跡の奥から響いていた。
 イレギュラーズ達が様子を見ながら其方へと近づくと、巨大な一体のゴーレム、そして三体のサラマンダーが――おそらく、ファルベライズの守護システムの一つだろう――何者かと戦いを繰り広げているようであったのだ。
 大鴉盗賊団か――戦場へと駆けだそうとするイレギュラーズ達。しかし、その目に飛び込んできた大鴉盗賊団たちの姿は、その誰もが幼い子供たち――上はせいぜい15歳ほどだろうか――の姿であった。
 驚愕するイレギュラーズ達――しかし、子供たちのうち一人が此方を見つけると、敵意をむき出しにした瞳を、イレギュラーズ達へとぶつけてくるのであった。
「敵だ!」
「ラサの兵……イレギュラーズ!?」
「どっちにしても、ここで仕留めるんだ! ゴーレムも……まとめて!」
 どうやら子供たちは、大鴉盗賊団の所属の者で間違いないようだ。彼らが此方へとぶつける敵意は、本物である。
 イレギュラーズ達は、武器を抜き放った。守護システムであるゴーレム達は、おそらくこちらへも攻撃を仕掛けてくるだろう。
 期せずして発生した三つ巴の戦い――果たして、この場を制する者は誰か――!

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 ファルベライズ中核付近で、皆さんは敵と遭遇しました。
 すべてを排除し、この地点を制圧してください。

●成功条件
 すべての敵の無力化

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●状況
 皆さんは、ファルベライズ中核を進行中、大鴉盗賊団の一員である敵部隊と接触しました。
 敵部隊は、遺跡の防衛システムであるゴーレム、サラマンダーと戦闘中でしたが、皆さんの存在にも気づき、攻撃を仕掛けてきます。
 ゴーレムとサラマンダーも、遺跡の防衛システムとして、皆さんに攻撃を仕掛けてくることでしょう。ちょうど三つ巴の状況となりました。
 皆さんは、すべての敵を撃破し、この場を制圧してください。
 戦闘開始時は、ちょうど三角形のそれぞれ頂点に、各陣営が布陣しているような状況になっています。
 ちなみに、オープニング、『●大烏の斥候』の部分はプレイヤー情報であり、プレイヤーキャラである皆さんは存ぜぬ事情です。が、凄い直観力で全てを察しても構いません。
 なお、戦場は地下遺跡ですが、明かりは充分にあるものとします。

●エネミーデータ

防衛システム陣営
 ゴーレム ×1
  高いHPと防御技能を誇るゴーレム(石の巨人)。
  主に近距離物理攻撃を行ってきます。
  特筆すべきBSなどはありませんが、基本能力は高い方です。

 サラマンダー ×3
  HPは低めですが、攻撃力と素早さが高いです。
  神秘属性の攻撃が得意。中距離レンジが得意射程です。
  火炎系統のBSを付与してくることがあります。

大鴉盗賊団陣営
 クスティ ×1
  リーダー格の男の子のようです。年齢は15歳。最年長。
  剣を用いた格闘攻撃を仕掛けてきます。格下ですが、油断はならない相手です。

 リーッタ ×1
  サブリーダー格の女の子。13歳。青い髪がお気に入りのチャームポイント。
  神秘属性に偏重したスキル構成。ややサポートより。

 子供たち ×15
  剣、弓、魔法などで武装した子供たちです。下は10歳から。皆素直ないい子達で、クリスティとリーッタに従っています。
  特筆すべき能力はありませんが、数がやや多め。とはいえ、放っておけば防衛システム側とも戦う為、数は減っていくでしょう。
  なお、クスティとリーッタにも言える事ですが、彼らには、(よほどクリティカルでなければ)説得は通じません。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。

  • <Raven Battlecry>孤児たちの墓穴完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年12月21日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569)
同一奇譚
ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)
寄り添う星
白薊 小夜(p3p006668)
盲御前
一条 夢心地(p3p008344)
殿
只野・黒子(p3p008597)
群鱗
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
冬隣
朔・ニーティア(p3p008867)
言の葉に乗せて
望月 凛太郎(p3p009109)
誰がための光

リプレイ

●地下のにおい
 湿った空気のにおい。焼ける石のにおい。流れる血のにおい。焼けた肉のにおい。
 ファルベライズ中核を進行していたイレギュラーズ達の鼻孔をくすぐったのは、死を思わせる剣呑なる『におい』。
「これは……子供の?」
 死体だ、と言う言葉は飲み込んだ。『群鱗』只野・黒子(p3p008597)は、かがみ、足元に転がっていた刺殺体に視線を移す。
 奇妙なことに――それは、武装した幼い子供であった。装備だけ見れば、それなりの傭兵と言っても充分だろう。
「子供。子供が、死んでいるのね?」
 『女怪』白薊 小夜(p3p006668)が言った。それは、確認だった。僅かに感じる気配、そう言ったものから、そこに転がっているのが小さな物体であることは、小夜にも知覚できた。知覚は出来たが、それを飲み込むには些かの躊躇を必要とした。
「冗談でしょ」
 『言の葉に乗せて』朔・ニーティア(p3p008867)が、どこかすがるように言った。冗談にしては悪質ではあるが、その方が朔にとってはよっぽどよかった。
「残念だけど」
 と、アーマデル・アル・アマル(p3p008599)。
「言質を取った――その子から」
 アーマデルの言うその子、とは、無残な刺殺体となった少年の、霊魂である。霊魂との意思疎通を試みることが可能なアーマデルは、消えうせるのを待つだけの霊魂に、何とか接触できたのだ。
「背景までは分らないけれど、彼らは大鴉盗賊団に協力している……というか、雇われている、のかな。傭兵のようなもので、斥候を頼まれているらしい――」
「何言ってるの!?」
 朔は思わず、激高した。アーマデルは頭を振る。
「俺に怒らないでくれ……いや、気持ちはわかる。でも、事実だ」
 事実なのだろう、という事は、この場にいた誰にも理解できた。それは、刺殺体の少年の姿格好、そしてあちこちに打ち捨てられた子供たちの死体から、察することのできるものだった。
 だが、その事実はいかんとも、受け入れがたいものだっただろう。子供たちを、利用する……それはもちろんのこと、子供たちもまた、雇われるという形で、それを受け入れている?
「冗談でしょ……!?」
 吐き捨てるように、朔は同じ言葉を言った。胸がざわつく。恐らく、この場にいる誰よりも、強く。
「子供たちが心配なら――」
 『神威の星』ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)が声をあげた。仲間達へと視線を移し、頷く。
「急いだほうがいいだろう。見ての通り、ここは危険だ。罠に、防衛用の精霊……今この瞬間にも、戦闘になってるかもしれない」
 仲間達は、その言葉に頷く。朔は急ぐように、歩き出した。それを追って、仲間達は先へと進む。その後ろに立ちながら、
 ――だが。
 小さく、独り言のように、ウィリアムは呟いた。
 ――子供たちが俺達に刃を向ける。その可能性は、絶対に捨てきれないんだ。
 その言葉は胸の内に飲み込んで。ウィリアムは後を追った。

 やがて一行は、広めの空間に到着した。その先には、何か巨大なものが動くような音、炎の燃え盛る音、そして子供たちの喚声が響いている。
「どうやら、本当に、子供たちを利用していたようですね」
 黒子が呻くように言った。此処から見える子供たちは、そのどれもがしっかりと武装し、統率の取れた戦闘を繰り広げる、いわばプロフェッショナルの集団に見えた。
「敵だ!」
「ラサの兵……イレギュラーズ!?」
 驚愕するイレギュラーズ達を、子供たちが発見した。その眼は確かな敵意に満ちている。
「まずいわね……本気よ、あの子達」
 小夜が言った。その叩きつけられる敵意、闘志のようなものを、小夜は敏感に感じ取っていた。それは幼いものであったけれど、その意志は確かに、本物だ。
「どっちにしても、ここで仕留めるんだ! ゴーレムも……まとめて!」
「あはは! 大変ね、クスティ! 皆生きて帰れるかしら!」
 子供たちのリーダーだろう少年と、その隣に立つ少女。彼らの指揮により、武装した子供たちが、イレギュラーズ達へと刃を向けた。
「嘘だろ!? 子供たちと戦えって言うのか!?」
 『誰がための光』望月 凛太郎(p3p009109)が悲鳴のような声をあげる。
 ぎり、と誰もが歯を嚙んだ。状況から見て、戦闘は避けられない。イレギュラーズ達のオーダーは、この地点の制圧であるのだ。であるならば、防衛システム、そして大鴉盗賊団に所属する子供たちとの戦闘は避けられない。
 説得は、おそらく無理だろう。彼らの目に映るのは、明確な敵意。ビジネスとして人殺しをやり取りする者の目。頭がどうかなりそうだった。あまりにも非現実的な光景だった。
「nyahahaha――」
 だが――その目を背けたるような光景の中で、一人。『Storyteller』オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569)は笑い、一歩足を進めた。
 そして、よく通る声で。
「取引と行こう、『傭兵』たち」
 そう言った。

●取引
 ――やるんだね、オラボナちゃん?
 胸中で呟きながら、オラボナの隣に、朔は立った。取引、と言う言葉に、前線に立つ子供たちは怪訝そうな顔を見せた。どうしたものか、と考えあぐねているようだ。
 一方、イレギュラーズ達は、オラボナの発言の意図を察していた。
 これは、全員を救うための賭けだ。
 だから誰もが、異論をさしはさむことなく、オラボナの、そして朔のやろうとする事を見守っていた。
「言の葉で『治まる』連中とは見えぬ。ならば『連中(システム)』を鎮める『まで』の共闘は如何だ」
 オラボナが声をあげた。その眼は、クスティ、と呼ばれた少年――リーダー格の少年を見据えている。
「クスティ、お話みたいよ?」
 傍らにたたずむ、青髪の少女が言った。クスティはちらり、とゴーレム側を視線を移すと、
「しばらく防戦に徹しろ!」
 指示を出した。それから、オラボナの眼をじっと見据える。
「何が目的だ」
「貴様等は其処まで『愚か』とは思惟し難く、いかれた真っ赤な三日月の戯言に付き合うのは最高だろうよ。それに、嗚呼、貴様等は、『子供』という利点を最大限に享受して生き延びてきたのであろう?」
 にぃ、と、赤い三日月がその顔に描かれた。
 確かに――彼らをプロの傭兵とするのなら、ありとあらゆるものを利用して生き残ることも、またその戦法の一つとすることに間違いはないだろう。ならば、子供である、という事は、最大のメリットであることに違いはあるまい。
「つまり、あなた達はよくあるセリフを吐くわけだ。『君たちを助けたい』ってね」
 そんなことは聞き飽きた、と言いたげだった。しかしてオラボナは、意に介さず、
「如何にも。しかし、貴様等がそんな救いに手を差し出すとは思惟せず。故に、今は『共闘』であるのだ。我々にも利点がある。貴様等にも利点がある。今一たび言う。貴様等は其処まで『愚か』とは思惟し難い」
 答える。
「嗚呼。勿論、後ろから刺しても構わない!」
 同時に、キィン、と何か金属音がなった。それは、朔が何かをはじいた音で、地下の数少ない明かりを反射して、それは宙でくるくると回転した。一枚のコインであった。
「それは――」
 幼い少年が、思わず声をあげるのへ、
「止めろ! 僕たちはもう、それを集める必要はないだろ!?」
 ビンゴか、と皆は思った。それは、アドラステイアと呼ばれる場所で価値のある、キシェフのコイン……その偽造品であったが、一瞬とは言え、興味を引くには充分な働きをしてくれた。そしてそれに反応するのであれば、彼らがアドラステイアに関係する/したものである事は、間違いがなかった。
「話を聞いてくれたら、あげるよ?」
「僕たちには必要ないものだ。でも、それを出したって言う事は、僕たちについて、ある程度は想像できているんだろうね」
 クスティが、警戒するように言う――朔は穏やかな表情を意識しながら、微笑んだ。
「――先ず、あのゴーレムを一緒に倒してから“どっちがお宝を持ってくか”ってのを決めない? それに、君たちも“私たち”を見てから本当に戦って勝てるかどうか、ってのを判断できるし、手の内を見る機会にもなるんだ。どうだい?」
「――いいだろう」
 クスティは頷いた。少なくとも、イレギュラーズ達に明確な裏切りの意志がないことは、伝わったようだった。
「……いいの? クスティ」
 小声で、青髪の少女が尋ねる。
「いいさ。子ども扱いは望むところだ。それよりリーッタ、連中への警戒は怠らないでくれ」
「うふふ、わかったわ!」
 青髪の少女――リーッタが笑いかけた。一方、クスティが子供たちに命令を伝えると、最前線の子供たちは、分かりやすく後退した。積極的に攻撃を仕掛ける様子はなく、防衛システムとの戦闘も、此方に完全に任せるつもりなのだろう。
「こちらを利用する気……って所だろうけど。其れこそ望むところだ」
 凛太郎が指を鳴らした。どうせもとより助けるつもりだ。だったら、危険から遠ざかってくれた方がいい。
 だがそれはきっと、イレギュラーズ達にとってはいばらの道だ。大きな傷を負う道だろう。それでも。
「全員救ってやる……!」
 凛太郎の言葉に、仲間達は頷いた。一気に武器を構え――。
「なるほど!」
 と、突然『殿』一条 夢心地(p3p008344)が声をあげた。
「巨人に火に童たち――察したぞ! これはウィッカーマンと言うヤバめのお祭じゃな! あの巨人の中に童を閉じ込め焼き殺す、禁忌の祭儀よ。おおこわい!」
 その言葉に、仲間達は目を丸くする――話を聞いておられましたか、殿!?
「となれば話は早い。童達を救出し、殿的な威厳を見せつける時じゃ!」
 抜き放った刀をびしっ、とゴーレム達へ突きつける殿。仲間達は苦笑する――とはいえ、やるべきことは間違っていないし、いい意味で緊張もほぐれた。
「さぁ、皆の者、行くぞ行くぞ!」
 殿の号令の下、イレギュラーズ達は最初の戦いに身を投じるのであった。

●救うために
 イレギュラーズ達はゴーレム、そしてサラマンダーたちへと向かって行く。一方で、オラボナと凛太郎は、子供たちを押さえるようにゴーレム達から距離をとった。
 子供たちはと言えば、共闘、競争と持ち掛けたものの、積極的に攻撃を仕掛けるつもりはないようだった。守りを固めるように、戦場から距離をとる。
「うむ……子供たちも怯えておる! ここは殿の威厳を見せつけてやる時じゃな!」
 夢心地が『東村山』を振るう。大丈夫な剣気がサラマンダーを切り裂いた。その刃は、大丈夫だ、と言う安心感を見る者に与える、活人の刃だ。
 サラマンダーが、反撃の炎を吐き出した。一斉に放たれたそれらが、イレギュラーズのみならず、子供たちへと降り注がんとするのを、凛太郎は受け止める。かざした両腕が、熱で焼かれる。その痛みを、凛太郎は飲み込んだ。
 ちらりと後ろを見れば、その姿に驚く子供たちの姿があった。
 子供たちは、どうして、と目で問いかける。
 だから凛太郎は、当然だろう、と目で答えた。
「申し訳ありませんが、あなた達は前座ですらない」
 冷たく呟く、黒子の放つ裁きの光が、ゴーレムとサラマンダーを打ち据える。そして戦場に、不協和音が鳴り響いた。怨嗟の声が奏でる歌。アーマデルの『英霊残響:怨嗟』が、サラマンダーを呪い、蝕む。
「お前達は、邪魔だ――!」
 アーマデルが叫んだ。今ここで、イレギュラーズ達がなすべきことに、なしたいことにとって、彼らはただ、障害でしかなった。アーマデルの奏でる怨嗟の音に、サラマンダーが消滅する。
 イレギュラーズ達の戦いは、鬼気迫るものだった。元より手加減などするつもりはなかったが、それでも『全力で』と特筆するほどに――過剰なほどの力を以って、ゴーレム達と相対していく。
 それは、戦いを短期に決着させることはもちろん、子供たちに自分たちの実力を見せつけるためのことでもあった。自分たちには、決して勝てない。そのことを、まざまざと見せつける。そのための戦い方と言うモノが、有った。
「こいつで――最後だ!」
 ウィリアムが放つ不可視の刃が、ゴーレムを千々に切り裂いた。あれほどの巨体が、無残にもバラバラに解体されていく。これもある意味で、狙った演出だ。分かりやすく派手に、ウィリアムはゴーレムをバラバラにしてやる。
 まともに正面からぶつかる形となったことで、イレギュラーズ達もそれなりの傷を負っていたが、しかしまだ倒れる者はいない。
「……さて、再び対話の時間だ」
 オラボナが言うのへ、子供たちは明確な敵意を向ける。クスティが刃を突きつけた。
「いいや、もう話すことは無いね」
「……分かっているのでしょう? 私達にはかなわないという事くらい」
 小夜が言った。ゴーレム達との闘いで、子供たちにも、小夜の強さと言うものはよく理解できていた。理解できてしまうほどに、子供たちも戦い慣れしている。
「そちらから手を出して来ない限り、私の刃は貴方達に向かないわ」
 小夜は冷たく言い放つ。その上で、ふぅ、と静かに息を吐いて、続けた。
「……選択肢はあげる。ただここで死なないだけ、なんて無責任な事は言わないわ。仕事を探す手伝いや口利きもしましょう、働けない幼い者は、私も含めた領地持ちのイレギュラーズの所で独り立ちするまで世話してもいい、生きるならば。けれど、それでも貴方達が戦うと言うのならここで終いよ」
 ごくり、と子供たちは唾をのむ。小夜の放つ殺気は、本物だった。
「さて、どうする。陳腐な科白を言うならば、『我々は貴様らを助けたい』」
 オラボナが言った。
「小夜殿ではないが、俺にも仕事を紹介する当てはある。リズックラーと言う運送屋だが、頼りになる相手だ。相談に乗ってくれるだろう」
 アーマデルが続く。
「……お前達みたいな奴らを、俺も知っている。他に生き方を知らない。生き方を教えてくれた奴は、社会的に見れば悪……それでも、そこが家なのだろう。分かるさ……でも、それでも、そこからは離れなきゃならない」
 クスティは、静かに目を閉じた。リーッタが、小首をかしげる。
「盗賊に関与していたことが気がかりなら、最大限便宜を図るよう、此方からも進言しましょう。あなた方へ指示を出すもの、そして本拠地の情報提供があれば、他の仲間を助け出すことは可能かもしれない」
 黒子が言う。
「……見たらわかると思うけど、君たちに私たちは“殺せない”と思うんだ。色宝は譲ってほしい。必要なものなんだ、私たちには」
 朔は身をかがめて、子供たちに視線を合わせて、言った。
「その代わり、私たちが君たちの願いを叶えるのは、どうかな。
 色宝が欲しかったってことは、理由があるんでしょ。
 君たちじゃあ叶えられない願いを、叶えるから。助けるから。
 お願い。おねーさんたちに、あなたたちを助けさせて」
 はーっ、と、クスティは苦し気に息を吐いた。目を開ける。哀しげな眼だった。じっと、朔を見つめ返した。
「お姉さんたちのいう事は、本当で……きっとその手を取れば、『僕たちは助かる』」
 クスティは、笑った。
「投降したい子は投降して。許可する」
 クスティの言葉に、少なくない数の子供たちが、武器を落とした。おずおずとした様子で、イレギュラーズ達の側へ、歩いていく。
「――でも、僕は投降できない。しちゃいけない」
 クスティは言った。
「どうして――!」
 朔は顔を歪めた。
「そこのお兄さんが言ったとおり、僕たちには本拠地があって、そこにはたくさんの子供たちがいる――やっぱり、そこにいる子を、見捨てられないよ。見捨てて、自分たちだけ助かるなんて、そんなことはできない」
「そうよね、クスティ」
 リーッタは笑った。
「お姉さん、ごめんなさい。でも、あなた達が本気なのはよくわかったわ! ありがとう。私達、悪い子で。だから、ごめんなさい」
「助け出せる!」
 朔はすがる様に、言った。
「みんな助け出せる! 約束する! だから!」
 お願いだから。
 クスティは、剣を抜き放った。
 残る子供たちが、ゆっくりと、各々の武器を構える。
 もとより言葉など、届かぬ相手で。
 決して少なくない数の子供たちを、投降させたことが――少しでも心を開かせたことが、奇跡みたいなもので。
 それでも。
「どうして……おねがい、お願いだから!」
 すがる様に、そう叫ぶことしかできなくて――。
 そんな朔の願いは、剣戟の音に塗りつぶされた。

●戦いの終わり
「ちぃっ……!」
 小夜は、自身に振り下ろされた刃を、苦も無く受け止めた。舌打ちをしたのは、こうなってしまったからだ。子供たちは確かに、武術の心得があるのだろう。だが、その力量は小夜には遠く、届かない。斬るのは容易い。斬るのは……。
「くっ……」
 止められないだろう。こうなっては。斬るしか、無いのだ。斬ると決めたら、小夜の動きは素早かった。円を描くような軌跡が、剣士の少年を斬り、打ち倒した。
「くそ……利用されてるだけだって、分かるだろう!?」
 ウィリアムが叫ぶ。利用されていることは分っている。それでも、彼らが守るべきものの為には、今こうして戦う事しかできない。それは、ウィリアムにはわかっていた。分かっているからこそ、叫ばずにはいられなかった。
 閃光が、術士風の少女を打ち据えた。命を奪わぬための攻撃だった。少女が昏倒し、手にした杖を手放したのを、ウィリアムは悲痛な表情で見据える。
「なんじゃなんじゃ……ウィッカーマンはもう終わりじゃぞ!」
 夢心地が子供たちに応戦する。しかし動揺があるのだろう、東村山の刃も、今一つその本領を発揮できない。
「畜生! なんでだ! なんでだよ!」
 凛太郎が叫んだ。振るわれる刃を、その手で受け止めて。
「傲慢に、偽善に! オレに救われとけや馬鹿どもがァ!!!」
 悲鳴に近い声だった。リーッタが笑う。
「かっこいいわね、おにいさん! でも、ごめんなさい!」
 リーッタの手にした杖がほの青く光る。編み上げた術式が、子供たちを癒し、立ち上がらせた。
「ごめんね、みんな! もうちょっと付き合って――きゃあっ!」
 光が、リーッタを打ち据えた。黒子の放つ裁きの光だった。
「すみませんが。戦うとなるならば、あなたを先に狙わせていただきます」
「リーッタ!」
 クスティが叫ぶのへ、オラボナが立ちはだかった。
「貴様等は救いの手を求めている。何故――」
「さっきも言ったよ、お姉さん!」
 クスティの斬撃を、オラボナは受け止めた。カウンターで放つ黒の拳が、クスティの腹部にめり込んだ。
「残念だ――」
 クスティが意識を失い、地に倒れ伏す。それを皮切りに、残る子供たちは次々と戦闘不能に陥っていった――。
 洞窟に静寂が戻る。残されたのは、一部の子供たちと、イレギュラーズ達だけだ。
 倒れ伏した子供たちの中には、何とか命を取り留めたものもいた。だが、そうではないもの達も、確かにいた。
 ――イレギュラーズ達は、戦いを制し、目的を達成した。
 それに間違いはない。
 ただ、その胸中には、子供を利用したものへの怒りと、生きるために手段を選べなかった子供たちへの悲しみが、確かに渦巻いていたのだった。

成否

成功

MVP

朔・ニーティア(p3p008867)
言の葉に乗せて

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 子供たちの幾人かは、皆さんに投降、あるいは保護されています。
 クスティとリーッタに関しては、残念ながら死亡していた模様です。
 残された子供たちの処遇は、皆さんにお任せします。

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