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シナリオ詳細

み吉野の 山の秋風 さ夜更けて ふるさと寒く 衣うつなり

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 巫女姫、天香、ザントマンとの戦いを越えたカムイグラ。瑞――黄泉津瑞神も鎮め、かの京は未だ不穏な影を認めながらも前へ進まんとしている。
 先の戦いで破壊された箇所の修繕もまた、そのひとつなのだが。
「ぴ」
「ぴぴっ」
 神社の境内を闊歩する大きなカラーひよこはその手を邪魔せんと――邪魔をするつもりはないのかもしれないが――巫女たちの裾や袖をちょんちょんと引っ張ったりムシャムシャしたり。
「ダメですよ、あとでお相手致しますからね」
「ぴ!」
「ぴぃ!」
 巫女が彼らを諭そうにも聞く耳はなさそうである。1匹が鳴き出すと周りにいたひよこたちが釣られて鳴き出し大合唱。その声は神社の外まで聞こえていたようで、様子を見に登ってきた笹木 花丸(p3p008689)が目を丸くした。
「ひ、ひよこさん? 今度は何をしているのっ??」
 多くのひよこに取り囲まれた巫女の図。彼女の様子からして危害を加えられていないのは分かるが、それにしたって大丈夫とは言い難い表情である。
「あ、神使の、」
「ぴ?」
「ぴぴぴっ!」
 巫女の言葉を遮ってひよこたちがぐるりと振り返る。そのまなこが一斉に花丸を捉えた。
「これはもしかして、」
「「ぴーっ!!」」
 嬉々として飛びかかるひよこたち。受け止めんと腕を広げる花丸。嘴はやっぱりちょっと痛かった。

「神社の修繕を進めたいのですが、彼らがなかなかどうにも」
 もふもふ。
「1匹ずつ引き剥がすわけにもいかないしね」
 もふもふもふ。
「そうなんです。これで嵐でもきたらどうなるか……わかっていますか?」
 もふもふもふもふぴよ。
 境内の一角に腰を下ろし、すかさず膝へ乗ってきたそれぞれのひよこをもふもふする巫女と花丸。膝上のひよこたちはご満悦であるが、これではちっとも作業が進まないと巫女は零す。彼女は先立って修繕箇所の確認をしたかったのだと言うが、進みは悪そうであった。
 その一因としては参拝客の減少がある。近頃の呪詛騒ぎなどで京にはどこか外出しづらい雰囲気があり、それに伴って参拝が減っているのだそうだ。もともと参拝客がひよこたちを可愛がっていたので、機会が減って落ち着かないのかもしれない。
 しかしてこれ(客)ばかりはどうしようもない。神を信じるは個人の自由であるが故に。
「嵐が来たら……うん、大変なことになるね」
 花丸ももふもふしながら周囲を眺め見た。先日ひよこたちが暴れたことにより、至る場所の傷やひび割れが目立つ。しかも秋も終わりかけ冬も目前というこの頃に、まだ落ち葉がたんまり積もっているのだ。
「あ! それなら花丸ちゃんに任せて! 修繕はできないけれど、皆を呼んでひよこたちの相手をしたり落ち葉を集めたりならできるよ!」
 もふもふや小さいもの、可愛いものが好きそうなイレギュラーズは少なくない。なんなら自身がもふもふなイレギュラーズもいる。巫女たちの邪魔をさせないくらいは朝飯前だろう。



「……僕……イレギュラーズじゃありませんが……??」
「まあまあ!」
 そうしてやってきたメンバーその1、ブラウ(p3n000090)。一介の情報屋である彼はイレギュラーズではなく、なんならそろそろローレットに帰ろうかなあというところであった。しかし(見た目は)同じひよこだからと花丸に捕ま……連れられたのである。
「こういうのは人出があった方がいいんだよ!」
「むむ、まあ、そうですね」
 花丸の言うことも至極もっともと頷くブラウ。これからイレギュラーズをさらに集めると言うし、ここは自分の腕の見せ所なのでは?
「わかりました、僕もお手伝いします! まずは他の皆さんに声をかけてきますね!」
「花丸ちゃんも一緒に行くよっ!」

 かくして。ひよこを巫女たちから引き離す作戦は開始されたのであった。

GMコメント

●概要
 これは大きめなひよこちゃんをもふもふしつつそれっぽく手伝いしようぜ、なシナリオです。
 することとしては大きく分けて以下2点となります。

・落ち葉集め
 境内にはまだまだ落ち葉が積もっています。巫女の仕事が進んでいないようですね。箒を借りて1箇所に集めましょう。
 気を抜いているとひよこたちが集めた落ち葉に飛び込んで撒き散らします。要注意。

・ひよこと戯れる
 これが本題だろうって思った方。そうです、これが本題です。ひよこたちは構って欲しくてウズウズしています。遊ぶなりモフるなりしてあげてください。
 害意には敏感なので、鋭い嘴でめっちゃ突かれます。悪いことはしないであげてください。
 ちなみに参拝客からはお菓子とかよくもらっていたらしいです。雑食です。

●ひよこ眷属×20
 30cmくらいのもふもふひよこです。それぞれが鮮やかな単色の毛並みをしており、カラーひよこの大きい版という表現がわかりやすいかもしれません。
 好奇心旺盛にして人懐こい神の眷属です。

●ブラウ(p3n000090)
 ブルーブラッドの情報屋です。30cm程度のぬいぐるみちっくなひよこになれます。食べないでください。
 皆様の希望に合わせて人型or獣型で参加します。特に触れられなければ獣型でひよこ眷属たちに埋もれています。

●ご挨拶
 ひよこを鳴かせる度にpipiSDを呼んでいる気持ちになります。愁です。
 めちゃくちゃもふもふして遊んであげてください。満足すれば巫女さんたちのちょっかいも控えるはず……はずです。
 それでは、どうぞよろしくお願い致します。

  • み吉野の 山の秋風 さ夜更けて ふるさと寒く 衣うつなり完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2020年12月13日 22時50分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アルペストゥス(p3p000029)
煌雷竜
鳶島 津々流(p3p000141)
かそけき花霞
ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
優穏の聲
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹
ラグラ=V=ブルーデン(p3p008604)
星飾り
笹木 花丸(p3p008689)
堅牢彩華

リプレイ

●ひよこさん祭り
 そう、待ちに待ったひよこ祭りの日である。
「ぴ!」
「ぴぴ、ぴ!」
「ぴよーっ!!」
 カラフルなひよこたちがイレギュラーズたちに気付き、嬉々として走ってくる。興奮気味にのしのしと寄っていく『煌雷竜』アルペストゥス(p3p000029)の傍ら、『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)は元気の良さに笑った。
「ふはははっ、再び会ったなピヨピヨ共!」
「ぴよっ!」
「ぴぴ!」
 ゴリョウのことを覚えているのか、彼を見上げてぴょこぴょこと飛び跳ねるひよこたち。彼らの中心に割り行ってじっと群れの中を見ていてアルペストゥスは、おもむろに群れの中へ顔を突っ込んだ。
「おわあっ!?」
 ひよこたちの中から人らしい声が上がり、彼の嘴に咥えられてぶらんとぶら下がる。早速ひよこたちの全力疾走に巻き込まれたブラウ(p3n000090)は、救出手の姿を見て「アルペストゥスさん!」と嬉しそうに翼をばたばたと羽ばたかせた。ちなみに、飛べない。
「あ、ブラウ君だ。聞いてくださいよブラウ君」
 ぶらさがったブラウへ『星飾り』ラグラ=V=ブルーデン(p3p008604)が手を伸ばし、ブラウはころんとその腕の中へ納まる。ラグラはあったかひよこを抱きしめてもふもふすんすん。
「わたしがちょっと『からあげ食べたいな』って思うだけでいたたたつついてくるんです」
 言いながら思ったらしい。足元でひよこたちにつつかれている。流石神の眷属だなあとブラウは呟いて、
「ブラウ君は揉みこまれるなら醤油派ですかお味噌派ですか」
「今度は僕ですか!?!?」
 ぞわりと毛を逆立てるブラウ、ラグラは至極真面目な顔で――内心どう思っているかはさておいて――ブラウ君とは言っていませんよ、と返した。
「みんなふわふわしてるねえ」
 カラフルなひよこたちに『行く雲に、流るる水に』鳶島 津々流(p3p000141)がしゃがみこめば、ひよこたちは人懐っこく寄ってくる。とてもとても可愛らしいが、確かにこのままだと巫女の仕事も捗らないだろう。
「巫女たちの邪魔をすると、お家が直らなくて困ってしまうよ?」
「ぴ?」
「ぴぴー、ぴっ!」
 『魔風の主』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)の言葉にかくりと首を傾げる仕草もかわいらしい……が、これは話を聞いていなさそう、あるいは話を聞いていても聞く気がない態度である。やれやれとウィリアムは苦笑した。
「仕方ないな。では代わりに僕たちと遊ぼうか」
「だが、本当にこちらへ専念して良いのか? 必要があれば手伝うが」
 『天穹を翔ける銀狼』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)が首を巡らせると、問われた巫女が頷く。巫女とてひよこたちが纏わりつかなければ十分に働けるのである。どうぞこの子たちをもふもふしてくださいという彼女の言葉にゲオルグが固辞する必要も理由も存在しなかった。
 だって。これは仕事なのである。ピュアでイノセントでふわもこ可愛いひよこさんとキャッキャもふふするという仕事なのである!!!!
「ひよこさんたちこちら、手の鳴る方へっ!」
 『人為遂行』笹木 花丸(p3p008689)の鳴らした音にひよこたちがなんだなんだと言うようについていく。時たまその流れから外れそうになるひよこを戻してあげながら、『嫉妬の後遺症』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)はふふりと笑みを零した。
(いつもこういう子たちのお世話をする依頼をしていたいだわねぇ)
 そう、言うなればローレット保育園。滅びのアークを集める魔種を放っておくことはできないがゆえに彼女の願いは叶わないが、なればこそこういう依頼も同じくらい受けていきたいものである。

「さあ――

 \ひよこさん祭りの時間だーっ!/」



「あ、巫女さん! アルペストゥスさんがちょっと穴を掘りたいらしいんですけれど、いいですか?」
 アルペストゥスが地面を見てうずうずしている様子にブラウが巫女へと声をかける。目を瞬かせた彼女は元に戻してくれるなら、ということで頷いた。
「だそうですよ!」
「グゥ!」
 ブラウの言葉に鳴き声ひとつ、常でがりがりと敷地の隅っこへ穴を掘っていく。アルペストゥスが顔を上げる頃には広く浅いくぼみが出来上がっていた。それを満足そうに眺めたアルペストゥス、わらわらと足元へあつまっていたひよこをおもむろに嘴で持ち上げる。
「ぴ?」
 きょとん、としたひよこが収められていくのはその穴の中。抵抗する間もなく穴には次々とひよこたちが収められた。
「……クスリやった記憶はないんで現実のはずなんですがあれ? アルふんふ君がひよこ詰め込んでるの幻覚ですか? え、ほんと?」
 ラグラがそれを凝視しながら呟く。なんだあのもふふわ空間やばいぞ。ちょっと入ってみたい気もするけど蒸し殺されそう。
「花丸ちゃんあたり突っ込んでみてくれません? 好奇心そそられるでしょ?」
「えっ名指し?」
「いや他の誰でも構いませんけれど」
 顔を見合わせる形になった花丸は尚アルペストゥスがひよこを埋めていく隠れ家を見やる。いやああれは魔の空間だろう。ふわもこに殺されてしまう。この後何もしなくていいなら飛び込んじゃうけれども!
 などと思っている間に余った隙間へアルペストゥスがお邪魔する。羽毛の翼を布団のようにしてひよこたちを撫でまわせばご機嫌な鳴き声が次々と上がった。とてもぬくぬくである。
「ぴぃ、ぴ、ぴ」
「グゥ? ……グ」
 よじ登ろうという気配に気づき、アルペストゥスが登りやすいようにと少し体を動かすとその背中へひよこが這いあがる。そうして少し高くなった目線で気づくのは、この穴に入りきらなかった同胞たちが花丸や華蓮と楽しく遊んでいる姿である。
「こっちだよー!」
「ぴぃ! ぴぴっ!」
「皆、こんにちはー。お名前は?」
「ぴ「ぴぴっ!」「ぴぃ! ぴぃ!」
 花丸へ呼び寄せられるように駆け出すひよこたちや、華蓮からの問いへ一斉に答えようと鳴き始めるひよこたち。賑やかだがうまいこと各々ひよこたちを引き付けている。
「遊んで来たらどうです? あ、わたしと遊びまいたたた冗談ですもう思いませんよ」
 からあげではなく蒸し鶏も考えたらダメらしい。つくつくつつかれたラグラは華蓮の方を指し示した。ママがお菓子持っていますよって。人の食べる菓子をひよこが食えるのかという疑問もあるが大丈夫だろう。だって神の眷属だし。後に聞いた話、巫女や参拝客はよく菓子をあげているらしい。
 ゲオルグもゲオルグで目いっぱい腕の中にひよこを囲い込みもふもふしてる。だって1匹ずつなんてしていたら他の子たちを待たせてしまうじゃないか。
(平和だ……いや、天国だ……)
 もっと少なかったら1匹ずつ丁寧にもふもふするところなのだが、此ればかりは仕方がない。次回にご期待ください。
 そんな彼らの姿を遠目にウィリアムはくすくすと笑みを浮かべる。あちらは楽しく順調そうだ。交代前にできるだけ進められるようにこちらも頑張らねば。
「隅々まで掃かないとね。ウィリアムさん、僕はあっちのほうを掃いてくるよ」
 津々流はまだ手のついていない方を指し示してそちらへ向かう。落ち葉掃除なら誰だってできる――もちろん津々流だってできる――簡単な仕事だ。だからこそ逆に手を抜けないというものである。それに、イレギュラーズには楽しみにしている事がもうひとつあるのだ。
(焼き芋、楽しみだなあ)
 巫女OKが出たので落ち葉でゴリョウが焼き芋をしてくれると言う。異世界割烹『ゴリョウ亭』を営む彼の手腕であれば焼き芋だってとても美味しいに違いない。そうでなくても落ち葉で焼き芋だなんて実に季節の風物詩らしいではないか。
 そのゴリョウはと言えば、家から持ってきた熊手でわっしわっしと落ち葉を集めているところである。農業には欠かせない道具であるが、縁起物として神社で扱うことも少なくない。神もこれを使う分には怒らないだろう。
「誰かこの辺りを掃いちゃくれねぇか?」
「あ、やるよ」
 大きく熊手で集めた後は箒の出番。細かい葉を集めるためにウィリアムが駆け寄っていく。神社の落ち葉はまだまだ積もっているが、その一片を片付けたところで小休憩だ。

「これがポン菓子だ!」
 小休憩もゴリョウの出番。自ら作った混沌米『夜さり恋』の古米を使った菓子である。小さくて軽い菓子にはひよこも興味津々だ。
「グルゥ」
 アルペストゥスとその隠れ家でぬくぬくしていたひよこたちも菓子の気配にのそのそと出て来る。彼らの瞳は口より雄弁だ。
「ぶははっ、腹減ったか? 沢山持ってきたから遠慮せず食ってくれ!」
 入れている袋はさして大きいものではないが、菓子自体も大きくはなく沢山入れられた。それをゲオルグは一掴みとり、両手に乗せてひよこたちへ差し出す。
「ぴ?」
「食べていいぞ」
 いいの? というように小首を傾げるひよこへ胸をキュンキュンさせながら、しかしぱっと見それを外へ出さず頷くゲオルグ。しかし彼らが自らの手から菓子を啄み始めると――ちょっと耐えられなかった。尊い。
「一緒に食べようか」
 ウィリアムもひよこたちへ上げながら自分でもつまむ。その隣では花丸がひよこたちと小さく火花を燃やしていた。
「ダ、ダメだよ! これは花丸さんのだし皆はもうゴリョウさんからもらって……」
「ピィ……」
 うぐぐと詰まる花丸、劣勢。
「もらって……」
「ピィ……?」
 ダメ? と上目遣いのひよこ、優勢。
「もうッ、しょうがないなー!」
 勝利、ひよこ。ちなみにその後ろではアルペストゥスが満足と言わんばかりに頷いている。おねだりの仕方を伝授したのは彼のようだ。
「ふふ、美味しいからねえ」
 そんな光景を眺めながら津々流はにこにこと笑みを浮かべる。けれど、そろそろ作業再開のお時間だ。
「それじゃあ今度は私たちが掃除だわね!」
「うん、よろしくね」
 張り切って掃除へと向かう華蓮、花丸、ラグラ。ゴリョウは焼き芋の準備やポン菓子の差し入れをしてくるということもあって引き続きひよこもふもふには参加せず、差し入れから戻り次第落ち葉をガンガン掃いていくらしい。その分、というわけではないがゲオルグは引き続きひよこもふもふのグループである。
「それじゃあ皆、落ち葉拾いで競争なのだわ!」
 華蓮ママは引き連れてきたいひよこたちへそう宣言。どゆこと? と顔を見合わせる彼らへ華蓮は落ち葉集めを手伝ってほしいのだと告げる。競争なのは頑張った証になるからだ。沢山拾ってもいいし、数ではなく質ということで綺麗な落ち葉を拾うのでも良い。
「ほら、瑞樹ちゃんとか手伝ったらめっちゃ構ってくれそうっすよいってこい」
 ラグラはそちらへと後からきたひよこを押し出し、もとい誘導する。手伝ってはいるのだからハイ・ルール違反ではあるまい。それにこの後は焼き芋があると教えればひよこは容易に食い気へつられた。これでいいのか神の眷属。
「よぉしっ、小山を作っていくよー!」
 花丸も張り切って箒を握る。前半頑張ってくれた仲間たちの分も今度は自分が頑張らなければ!
 けれどそうは思えど――小山の誘惑が花丸と、ひよこたちを襲う。
「ぴーっ!」
「ダ、ダメーっ!?」
 耐えられず飛び込もうとしたひよこをあわやキャッチした花丸は「メッ!」とひよこを叱る。ひよこの気持ちは十分にわかるけれども今は我慢の時なのだ。
「花丸ちゃんだって我慢してるんだから! 今は向こうで皆と――」
「ぴよーっ!」
「ああーーっ!?!?」
 言い聞かせている間に他のひよこがボッフン。落ち葉が巻きあがり、周辺に居た花丸や他のひよこたちはそれをモロに被る。
「おやまあ、いつかやるとは思っていましたよ。ねえ?」
「ぶはははっ、そうさな! ま、向こうにピヨピヨ共を預けてまた掃くとするかね」
 ラグラとゴリョウは口元に笑みを浮かべつつ、華蓮の提案より遊びたくて仕方がないひよこたちをひよこ担当の方へと連れて行く。戻ってきたらまた掃き集めるとしようか。
「それで連れてこられちゃったのかい? それじゃあ退屈しないように鬼ごっこしようか」
 こうして預け先のウィリアムから提案された鬼ごっこで遊び始めるひよこたち。座ってのんびりひよこをもふる津々流とゲオルグはその光景を和やかに眺める。ゲオルグの連れてきていたにゃんたまたちもカラフルなひよこに慣れてきたか、その辺りでじゃれつくという何とも和やかで癒しな空間を作り出している。ゲオルグの呼び出したジークも一緒だ。
「これでお金が貰えるのか……本当に良いのだろうか?」
 むしろ払いたいくらいだと呟くゲオルグに津々流は小さく苦笑する。
「いいんじゃないかな? これで巫女さんたちはちょっかいを出されずに仕事ができるんだから」
「そうですそうです。……だから津々流さん、僕じゃなくてあちらをもふもふしてほしいです」
 めちゃくちゃもふってたひよこがしゃべり始め、津々流は思わず下を見る。きゅるんとした円らな黒の瞳が半眼で津々流を見上げていた。
「あれ? ブラウさんだ」
「僕です! もふっても何にもなりませんよ」
 はは、とまた苦笑を浮かべた津々流はブラウを介抱し、その隣にいたよく似ている毛並みのひよこを膝へ載せる。うん、負けず劣らずもふもふである。抱っこしても良いし撫でても良い。とにかくもふもふである。
 掘った秘密の隠れ家でひよこたちと戯れていたアルペストゥスが何かに気付いて軽く首をもたげる。見えたのは掃除を終え、下処理の済んだ芋を抱えて持ってきたゴリョウである。
「おう、焼き上がりまではもうちょっとかかるぜ」
「グゥ」
 彼の言葉にならもう少しと隠れ家へひっこむアルペストゥス。その周りではふわもこひよこたちも一緒だ。
 ゴリョウは持ってきた芋を濡らした古紙で包む。家事全般の得意な華蓮も隣で一緒になって包み、それを更にアルミホイル――練達が作り出した文明の利器である――をくしゃくしゃにしたもので包む。
「僕たちもなにか手伝うかい?」
「いいや、そのままピヨピヨ共をしっかり押さえておいてくれ! 火に近づいたら危ねぇからな」
「それじゃあお言葉に甘えてもふもふ……じゃなくて、押さえておくよ」
 ウィリアムの問いに返ってきた言葉へ津々流がふふと笑い、もふもふを腕の中に閉じ込める。ゲオルグやにゃんたま、ジークたちも彼らと戯れているし、暫くはこのままでも大丈夫だろう。
 遠火でじっくり焼かれた芋は、包みを開ければほかほかと湯気を立てる。今度こそとアルペストゥスとひよこたちもやってきた。
「甘いのが苦手な奴はじゃが芋も一緒に焼いたぜ!」
「バターを塗ると最高だよね。さつま芋に塗っても美味しいよ」
 ウィリアムの言葉に勿論用意してあるぜとバターを取り出すゴリョウ。それを切った芋に乗せれば、接着面からとろりと溶け始める。
「花丸ちゃんは焼き芋ーっ!」
「私ちゃんも焼き芋ですね」
「ひよこたちはどうする? 食べられるかな?」
 焼き芋を選んだ女性2名を横目に、ウィリアムがひよこたちを見下ろす。口々に鳴いて騒ぐ様はどちらが良いかわからないものの、食べられるから食わせろと言っているようでもあった。
「はい、順番にあげるのだわ。いい子に並べた子からよ」
 華蓮ママから鶴の一声、わらわらと彼女の前へ並び始めるひよこたち。これでいいのか神の眷属テイク2。もらった芋はアツアツで、津々流が「ちょっと待ってね」と息を吹きかけてひよこが食べやすいように冷ましてやる。
 それをひよこたちがつつく様を可愛いとゲオルグが悶絶する傍ら、アルペストゥスが前足で器用に芋を千切ってもしゃもしゃと食べていた。が、彼の体格だとあっという間になくなってしまって。さらにその隣ではブラウがひよこ姿でちまちまと啄んでいるものだから、ついついふさふさのたてがみを擦りつけんとしてしまう。
「わ、アルペストゥスさん? あっという間に食べちゃったんですねえ」
 いります? と出される芋。ほんのちょっぴり悪い気もするけれど、美味しい匂いがアルペストゥスを誘惑してやまない。
「大丈夫ですよ。ブラウさんには私からあげますから」
 ラグラの言葉にそれならと頷いて芋を頂くアルペストゥス。ラグラは焼き芋をたんまりとブラウの前へ出した。
「えっこんなに食べられませんが?」
「何言っているの成長期でしょう。さあまあるくなあれまあるくなあれ」
 それは一体誰のための言葉なのか――ラグラはぞわわっと毛を逆立てるブラウを横目に自分の焼き芋へ齧りついた。やっぱり仕事の後は甘いものだ。
「沁みる」
「お代わりーっ!」
 ぽつんと呟かれたその直後に元気な言葉。花丸へゴリョウが次の焼き芋を渡すとヤケドしないように気を付けながら頬張る。
「んーっ、おいし!」
 冷えて疲れた体に甘味という癒し。そしてもふもふのひよこたち。
 アルペストゥスたちはすっかり満足したようで、隠れ家へいそいそと籠る。秋風が少し冷たく感じても彼らはふわもこ完全防備だ。アルペストゥスは周りにカラフルなひよこたちを、そして抱えるのはお気に入りの黄色い毛玉を。優しくて愛らしくて、ちょっと美味しそうなそれを抱えて見る夢は、現実と負けず劣らず楽しくて暖かな夢なのだろう。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れさまでした、イレギュラーズ!
 巫女の仕事も無事進んだようです。神社も少しずつ修繕されていくことでしょう。

 それでは、またのご縁をお待ちしております。

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