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シナリオ詳細

氷海揺蕩う海豹津波

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●氷のように白く、暗黒の海のように黒い
 きゅー、きゅうぅー。
 冬のヴィーザルの海を割って現れたるは、白い波……否、それは波の色ではない。この時期のヴィーザルの海は基本的に氷海であり、ノルダインの一部の者達も砕氷船や得物で氷を割って進む。ゆえに『揺れる白波』は存在しない。しないはずだ。だとしたらその正体は何か。アクセル・ソート・エクシル (p3p000649)とレーゲン・グリュック・フルフトバー (p3p001744)を含むローレットのイレギュラーズは、北方勢力『ノーザンキングス』に拠らぬヴィーザルの民(と鉄帝国軍)からその正体と、それを護衛する依頼を請け負っていた。
「あれがアザラシ津波っきゅー? すごい勢いっきゅ……」
「オイラも話半分に聞いてたけど、数が多すぎるな……」
 レーゲンとアクセルは目の前に広がる「アザラシ津波」に目を瞠る。海の白さを思えば、未だ成体ではない子アザラシもかなりの割合で混じっているのが分かるだろう。
 ヴィーザル沿岸の海岸地帯では、年に一度こうしてアザラシの出産期(混沌基準)に合わせて沿岸に戻ってくるのだが、勢い余って波に乗って浜に流れ着いてしまうのだという。
 放って置いてもアザラシ達は海に帰れるし、漂着してもそれなり元気でやれるのだが、問題はこの海にこそある。
 生命の常、食物連鎖……彼等にとっての捕食者たちである。
「それで、あれが……『サーファーシロクマ』ですか」
 『蒼ノ鶫』ドロッセル=グリュンバウム (p3n000119)はアザラシ津波の向こうから、サーフボードに乗って颯爽と現れたシロクマを凝視する。見れば、それは一頭だけではなくかなりの数がいるようだ。
 アザラシ達を海に返すのも無論のことながら、シロクマ達を撃退する必要がある。
 なんとも面倒な依頼を前に、イレギュラーズは眉をしかめた。

●イレギュラーズ側資料:大自然ドキュメンタリー『鉄の海・冬~アザラシ津波躍動300キロ~』
 ヴィーザル地方沿岸海域。北の果てに住まうというアザラシ達は、冬の寒さと氷を越え、毎年冬に南下する。
 流氷に乗って揺蕩う者もいれば、仲間と一団を形成し下ってくる者もいる。様々だ。
 その中ででも最も多いのが通称「アザラシ津波』になって降りてくるアザラシの集団。なんでも数頭のオスのハーレムが離合集散し一大集団を形成、そのまま群れて南下することがままあるためにそう呼ばれ始めたとか。
 集団の強みはやはり外的から逃げやすくなること。一部が捕食されても他の大多数が逃げ延びれば――。
『ああーシロクマ来たシロクマ。サーファーシロクマだ』
 ここで、ヴィーザル沿岸で撮影していた記録係がうめき声をあげる。見れば、遠くからサーファーシロクマの姿がぐんぐんと近づき、身を屈めてアザラシをすくい上げたではないか。白波を蹴立てて伸び上がった爪は一撃でアザラシを宙に打ち上げると、大口を開けて頭部へかじりつく。さらに首を振ってアザラシの首を折って絶命させると、氷の上に叩きつけた。子サーファーシロクマが群がる。
 彼等もこの厳しい冬を子供達に乗り越えさせるため必死なのだ。いつだって生存競争は過酷なのだ――。

 終
 制作著作 THK

GMコメント

 海外の動物ドキュメンタリーとか割と容赦ありませんよね。

●達成条件
 アザラシ津波のアザラシの6割生存
 サーファーシロクマの撃退

●アザラシ津波(アザラシ×200)
 ヴィーザル地方の沿岸部に毎年氷をかき分け現れる大量のアザラシの群れ。
 リプレイ開始時点で沿岸部~砂浜に打ち上げられた状態で、比較的身動きに困る状態。
(沿岸部、海上3:砂浜8位の割合)
 戦闘能力は皆無に等しく、サーファーシロクマの1~2回の攻撃で死ぬ。超死ぬ。
 動物との意思疎通や念話能力、統率能力があれば(別々のPC同士の組み合わせでいい)、避難をスムーズに進められるだろう。

●サーファーシロクマ(親×4、子×6)
 サーフボードに乗って現れるシロクマ達。各種スキルで意思疎通は測れるかもしれないが、基本的に話を聞かない。
 海面上も移動面でリスクを追わず、機動5で駆け回る。
 砂浜では四足歩行で苛烈にアザラシを追い詰める。毛皮が厚く【凍気耐性】を持ち、HPと防技と物攻高め。
 爪は近扇相当、【飛】【失血】を伴う。
 牙はCTが高く【必殺】その他BS1~2種を伴う。
 一度アザラシの群れに突っ込んできたら扇の範囲内の大量虐殺が始まるのでヤバい。
 子は攻撃力等性能低めだが群れて単一対象を襲う傾向にあり、ダメージが集中しやすい。

●戦場
 ヴィーザル沿岸海域~砂浜。非常に広大なフィールドとなっている。
 沿岸部のアザラシとサーファーシロクマの離隔は100mほど。リプレイ開始時、飛行を持つ者はアザラシ達とシロクマの間に割って入る形で布陣してよい。
 簡易飛行はリプレイ開始後数ターンで着水してしまうので、氷上を駆けるのに納得させうるスキルかアイテム等を備えなければ着水数ターンで重傷となる。寒いので。
(飛行判定は「海面を0m地点として判定」する)
 砂浜は反応にやや下方修正がかかるため注意。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 氷海揺蕩う海豹津波完了
  • GM名ふみの
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年12月08日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
※参加確定済み※
レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)
希うアザラシ
※参加確定済み※
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
蒼剣の秘書
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
アンジュ・サルディーネ(p3p006960)
海軍士官候補生
ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)
生イカが好き

リプレイ

●自然に干渉することの是非とか滅茶苦茶話が長くなる
「う゛え゛え゛アザラシさーん! ……次回予告の鉄の海・冬~海ゴリラ頂上決戦も気になるけど、それはアザラシさんを助けてから見る!」
 『緑の治癒士』フラン・ヴィラネル(p3p006816)は現場近くの小屋で流された水晶の記録映像に『終』と字幕が出たところで堪らず泣き出してしまっていた。彼女にとっては依頼のための参考資料が思いの外琴線に触れたらしく、見ていたメンバーで唯一号泣していた。ところでその次回予告、A級闘士写ってなかった?
「THKでも行っている通りに食物連鎖……自然の摂理な訳なのだわよね……アザラシが可愛そうなのは確かだけど、そういうのにあんまり介入するのは……」
 『嫉妬の後遺症』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)は番組の内容を反芻し、やはり不用意に関わるのはよろしくないのではないか、と考えていた。自然の摂理だというなら死んでしまうのも已む無し、サーファーシロクマとかいう珍妙な生物が混沌にいるのは初耳だが、居るなら居るで、彼等も必死なのだと思うと正直乗り気ではない。
「レーさん森アザラシだから同類じゃないけど、でもあの熊のサーフボードとか人工物っぽいし、もうこれは自然の闘いじゃないっきゅ。たぶん」
「そう思うのは尤もでありますが、アレ爪で彫ってるでありますよ。……どうせならクマもアザラシも全部ころころして我が国の資源とするのが良いのでは?」
 『思いを力に変えて』レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)は異界の森アザラシであるため、混沌のアザラシとその捕食者に対してはいまひとつ詳しくない。『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)は鉄帝の人間の為その辺りも多少知見があり、THKストライク世代である(推定)。だから多分、アレ自然の摂理なんだよ。エッダの最後の言葉は正論ちゃ正論だけど聞かなかったことにしよう。
「食物連鎖は厳格だけど……今回は撃退して他の狩り場に行ってもらうしかないね」
「アザラシの平和はオイラ達が守る!」
 『空歌う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)と『ガトリングだぜ!』ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)は一応割り切って戦場へと足を踏み入れる。小屋から出ると目の前には砂浜が広がり、今まさにアザラシ津波が押し寄せんとしているところだ。イレギュラーズ達で可愛い物好きにとっては堪らない光景だ。思わず駆け出した数名を咎めだてるのは難しいだろう。
「そういえば、アザラシって美味しいのかしら。丸々と太った身体、ウォッカと一緒に胃に染み渡る野生の味……1匹くらい居なくなっても……はっ、な、なんでもございませんわっ!」
 『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)は、動き回るアザラシ達をちらりと見て溢れ出した欲望を思わず口にしてしまっていた。
 当たり前だが、アザラシ達とて人語は解さずとも捕食者の気配には敏感だ。ヴァレーリヤの周囲からは波が引くような勢いでアザラシ達がはけていく。
「ほーら、可愛いアザラシちゃん、私達が助けてあげますからね! ……ね?」
「まあまあヴィーシャ。保存がきかなさそうだから今回は諦めるでありますよ」
「うっうっ、ほんの冗談でしたのに……」
 エッダのフォローともいえないフォローに、ヴァレーリヤはさめざめと泣き崩れた。嘘くせえな。
「アンジュ、シロクマ嫌いなんだよね」
 『いわしを食べるな』アンジュ・サルディーネ(p3p006960)はあからさまな嫌悪感をありありと顔に浮かべ、断言する。仲間達は依頼だから、自然の摂理に反するけど、とそれぞれ言い訳を作ってシロクマに対抗する事を決断しているが、彼女は明確にシロクマへの敵意を持っている。何故か?
「シロクマってさあ、アザラシ食べつくしたら、今度はいわし狙うんでしょ? は? 許せないんだけど?」
 いわしを食べようとする者はたとえ神でも許さない。そんな決意と殺意を浮かべた彼女の表情に、フランがびくりと震えた。イワ死兆のトラウマは癒えていないらしい。
「うおお! 飛ぶぜ飛ぶぜー! 今日のオイラはジェットアザラシ! ワモンいっくぜー!」
「殺さない程度にのして帰ってもらおう!」
 ワモンとアクセルは水面上を滑るように飛び、流氷を巧みに縫って沖合へと突っ込んでいく。視界の先には、今まさにアザラシ達へと近づくべく波を切って進むサーファーシロクマの群れがあった。
「そぉい!」
 フランは持ち込んだ水銀装甲を身に纏うと、アザラシ達の前にレーゲンと並んで立ち、その姿をアピールする。
「レーさん達がシロクマから逃してあげるっきゅ! しっかりついて来るっきゅー!」
 レーゲンはポーションを飲み干すと、声を張ってアザラシ達に呼びかける。フランの通訳を受けたそれは遠くまで響き、次から次へと漂着するアザラシ達にもきっちりと届いた。
「ねー、逃げよ?」
 アンジュは行動を決めかねている優柔不断なアザラシ達に寄り添うようにしてか弱き少女を演じ、節なる願いを偽装する。言葉こそ通じないがその演技は大したもので、声をかけられたアザラシ達は彼女の誘導に従って動き出す。
「海に落ちない程度に、2人が打ち漏らした分を仕留めますわよーうおおおお!」
「でも自分達は鉄騎種でありますよ? この程度の冬の海などぶっちゃけその気になれば耐えられるのでは?」
 ヴァレーリヤの気合いに水を差す勢いでエッダが首をかしげる。……さて、本当にやってどうなるかちょっと気にはなるところだ。


「っしゃー! こっから先はとおさねーぜー! うなれ! オイラの! ガトリング!」
 いつのまにか「とっかり仮面」モードになっていたワモンは、サーファーシロクマ達目掛けてガトリングを放つ。相手の爪の間合いでの果敢な先制攻撃は、親熊1頭と子熊3頭を巻き込み、それらに明らかな敵意を抱かせた。
「出来るだけここから退いて貰うよ!」
 アクセルはシロクマ側の射程外から、我こそは敵である、と名乗りを上げる。それにつられた熊達を除けば、親熊1、小熊1が2人の抑えを抜けた格好になる。
「来たでありますね。……そこなアザラシ達には手を出させないでありま――」
「いわし……オーバードライブ!!」
 エッダは身構え、その威圧感で以てシロクマ達を足止めしようとした。だが現実はどうか。背後から唐突に放たれた無念(おもい)が子熊1体を打ち上げ、サーフボードから転落させた。かろうじて息はあるが、流氷によじ登って戦線復帰……と相成るのには相応の時間がかかるだろう。復帰できても虫の息のはずだ。
「ヴィーシャなにやってるでありますか。こっちに熊が集まってるんだから仕事するであります」
「エッダのいる場所、完全に流氷の上じゃありませんの! 無茶ですわー!」
「お前それでも鉄帝民でありますか。オラッ早く来い!」
 サーファーシロクマの攻撃を受け流しながら叫ぶエッダに、ヴァレーリヤは今ひとつ及び腰であった。そりゃあ過酷耐性あるけど多分過酷耐性の使い方が間違っている、と。だが、シロクマ達がエッダをも抜けて前に出れば、それこそ大惨事の幕開けである。それは避けたい。
「ええい、仕方ありませんわ! おらー、早くお家に帰りなさい! そしてこんなことをしている暇があるなら、かき氷のパッケージに収まってなさい!」
 ヴァレーリヤは覚悟を決めると、エッダに攻撃を仕掛ける親熊へ向けて猛牛の如き突進からメイスの一撃を振り下ろす。守りの薄い鼻先を狙ったそれは、しかし反撃を目論見、振り上げられた腕に受け止められる。
 続けざまに、反撃の牙。ヴァレーリヤの胴に突き刺さった一撃は、守りを貫いてそれなりの手傷を彼女に負わせた。
「大丈夫、幾らでも支えるのだわ! 依頼主の希望を叶えるためにも全力を尽くすのだわよ!」
 華蓮は即座にヴァレーリヤを癒やすと、眼前で怒りに声を上げるシロクマをねめつける。
 あのシロクマにも、家族はいる。子熊が1頭、海から這い出そうとしている。助けに入りたいだろうに、目の前の数多の食糧を捨て置いてそれはできない。我が子が生きて戻ったなら、餌をやらねばならぬから。
 眼前で繰り広げられる生命の躍動は、熊達の生き様は、否定していいものではない。されど、彼等の敗北を望む人々がいるのだ。だから今は、彼女はその歪を受け止める器になろう。
「同胞達よ、我が名はレーゲン。同じ海豹だったが進化した上位種である。我らは同胞達を見守っている者からの依頼で同胞達を助けに来た!」
「シロクマさん退治まで少しぎゅうぎゅうになるけど我慢してね! あたしも今そっちに行くよ、華蓮先輩!」
 フランとレーゲンの誘導は佳境を迎えていた。次から次へと波打ち際に流れ着くアザラシ達へと声をかけるレーゲンの言葉は、フランを通じてよく響く。それは先ごろ実証されている。……だが砂浜にぎゅうぎゅうになったそれらをうまいこと誘導するとなると難易度は跳ね上がる。フランは時に手に生み出した蔦で逃げ遅れたアザラシをギュっとしてグイっと引っ張り上げ、空いたスペースへと放り投げる。この膂力は実際ゴリラなのでは?
 だが、イレギュラーズの奮戦があってもどうしても救えぬ命は出てしまう。流氷の合間を縫って流れ出す血の色は鮮やかで、しかし親熊が自分のことをそっちのけで子熊へ押しやる姿などは、自己犠牲と献身を思わせた。
「……っきゅ……」
 避難を完了させつつも、救えなかった命にレーゲンは歯噛みする。努力した者として、届かなかった手に思いを馳せるのは当然の心の動きだ。だが過去を振り返ってはいられない。今から、全てを救う覚悟をすればよい。
「うおー! アザラシが食われてばかりだとおもうんじゃねーぞ!」
 ワモンの脇を、子熊が抜ける。彼は全身のアザラシパワーを推進力として子熊に追いすがると、勢いよく体当たりを敢行する。衝撃で動きを止めた子熊は、アクセルの神気閃光を受けると流氷へと投げ出され、ぐったりと動きを止めた。……幸いにして死んでいないようだ。
「ワモン、避難は終わったみたいだからオイラ達も戻ろう! オイラは逃げ回れるけど、ワモンはそうじゃないんだ!」
「分かってるぜ! オイラも餌にはなりたくねえ!」
 アクセルは残っているシロクマ達に対して踵を返すと、ワモンを伴って大急ぎで浜辺へと飛翔する。ワモンは実際、ガトリングでシロクマ達を引きつける代償としてシロクマ達の猛攻を受けねばならず、彼の耐久力での時間稼ぎは相当にリスキーな行為だったのだ。だが、彼とアクセルにしか出来ぬ役割で、それをやり遂げた。命を削る刹那まで耐えて、だ。
「ワモンさん、こっちで治療するっきゅ! 後はレーさん達にまかせて一度休むっきゅ!」
「アンジュさん、いわしを食べちゃうシロクマさんはンヌッだよ!」
「アザラシ達が死んだらいわしを食べるんでしょ? なら食べられる前に直してあげないとだよね……いわしを食べるな」
 フランはアンジュの魔力をギュッとしてンヌッ! ってさせると、アンジュはギュっとされた魔力でアザラシ達と、引きつけ役の2人を治療する。多大な傷を受けつつも役割を全うした彼等をちらりと見ると、アンジュはパパ達(いわし)の力を借りて猛攻を開始した。呼びかける声に籠めた魔力すらもギュッとされたことで、常に使える回数を大幅に超えた攻勢が期待できる。
「しかし思うであります。 浮世の無常とはこれ即ち食扶持ちの在りや無しやに端を発するものが大半であると。であれば我らの此度の行いは善でありましょうかや、それとも悪なりしかや。 どうでありましょうここは一つ多少のアザラシはくれてや――」
 エッダは先頃、殺されてしまったアザラシ(かわいかった)のことを想いつつも、華蓮やアクセルの言い分通り自然の摂理に従うことも是と思っていた。被害を一定以下に抑えれば成功なら、多少の犠牲を甘受することも大切ではないかと思っ。
「GUAAAAOOOO!!」
「痛ってぇ今殴ったクマはどいつでありますか!!  粛清してやる!!」
「でええい、これでも喰らいなさいな!!」
 でも痛いのは許せないので、エッダは反撃態勢に入った。なおヴァレーリヤはさっきからどっせいどっせい殴りかかっている。相手の毛皮の分厚さに四苦八苦しつつ、それでも相当な傷を負わせている。
「……大分削れているだわね」
 華蓮は四方に気を遣いながら、しかし治療の合間を縫ってシロクマ達に毒を与え、着実に弱らせていた。
 手練の治癒手が多数揃っている状況下、彼女は攻めに転じる余裕が生まれる。彼女の能力は治癒を重視したそれだが、妨害に回っても慮外の性能を発揮するのだ。――殺さぬ戦いでは、残余の体力をテンポよく削っていくことが重要となる。
「白熊達、汝らも生きる為に 我が子の為に戦っているんだろうな だが、退かないのであれば……」
 レーゲンの言葉にあわせ、その背後から爆発と閃光が炸裂する。驚きに動きを止めたシロクマ達は、続くその言葉に瞠目した。
「この様に本気を出し、その血肉を糧とさせてもらう。ここから去れ!」
 今の所、完全に命を落としたのは子熊1頭。決して無視できない犠牲だが、さりとて狩ったアザラシの数を思えば『強いアザラシ』の言い分を聞くのは致し方ないのかもしれない――親熊達は子熊へとひと吼えし、アザラシの死骸を抱えて波に乗り、後退を開始した。
 イレギュラーズの勝利である。


「死んじゃった熊は熊鍋にしよう……大自然のいとなみ……」
 アクセルは死んだ子熊を引き上げると、手を合わせて鍋にする準備を始めた。華蓮は調理のメインに回り、エッダはその補助へと入ろうとしている。
「ぐへへ、助けてもらったと勘違いして私に近付いたのが運の尽き!大人しく私のおつまみに……」
「オイラは津波アザラシじゃねえ! ……ところで本当にシロクマ食うのか?」
「ワモンでしたわ……うっうっ、酒のアテがたりませんわ」
 ヴァレーリヤはアザラシをあわよくばしようとして、間違えてワモンを捕まえていた。運が悪いことに、アザラシはその頃おおかたアンジュがケツを叩いて返し終えるところだった。
「所でアザラシっていわしも食うでありますよね……いえ、だから何って言うわけではありませんが。いわし食うでありますよね」
「エッダ先輩、しーッ!」
 エッダの不用意なセリフは、ギリでアンジュに届くことはなかった。フランが止めたからだ。……それはいい。そこまではいい。
「さっき偶然捕まえたイワシを串焼きにしてお祝いに一杯やりましょう! かんぱーーい!!!」
「いわしを食べるな」
 ああ、ヴァレーリヤの後ろに、後ろにアンジュが!

 教訓:いわしをたべるな(文責・アンジュ)

成否

成功

MVP

ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)
生イカが好き

状態異常

ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)[重傷]
願いの星

あとがき

 凄まじい誘い受けを見た。

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