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シナリオ詳細

<Common Raven>奈落への道

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 大鴉盗賊団――ラサで発掘されている秘宝『色宝』を狙う一団である。
 色宝は『願いを叶える』力が宿っているとされている。元々は一つの巨大な塊であった、とも。噂の真偽は今の所定かではないが――少なくとも彼らは色宝の存在を早期から認識し、色宝の奪取を幾度となく企んでいる。
 色宝が見つかるファルベライズ遺跡への侵入、或いは。
「はぁ、はぁ。くそう! 大鴉盗賊団の連中め、なんてしつこい……!」
「教授! こちらです、お早く!!」
 色宝を回収している者達を襲撃し――奪い取るなどの方法で、だ。
 遺跡へと調査に向かっていた学者達が襲われている。地下へと連なる道を見つけ、進んでみれば鍾乳洞の様な広い空間――つまり地下遺跡の様な場所を見つけのだ。調査の末に色宝も発見され、後は帰る段階だったのだが……
 数や暴力で勝る彼らが襲って来れば窮地へと陥った。
 強行突破して外へ……などという手段が取れる筈もなく。やむなく遺跡の奥へ、奥へと逃げている真っ最中。幸か不幸か洞窟の様な道が幾つもあり、まるで迷路の様にも成っているからか辛うじて盗賊団から逃げられている。
 ――だが果たしてこの道は逃亡出来る希望への道か?
 もしかすればどこかで行き止まり、奈落への道なのではないかと……しかし足を止めれば後ろから死神が如き盗賊団が迫って来る。故に思考を払う様に頭を振って学者達を突き進み。

「……逃がすな。決して逃がすな。抵抗するならば殺しても構わん」

 しかし盗賊団達もそう簡単に諦めたりはしない――彼らの背を追う。指揮を取っている様子を見せる黒衣の者を中心に、周囲の盗賊団員に指を示しながら学者たちを追わせていて。
「――待て」
「へいっ? どうしたんですかい?」
「罠だ」
 突如、黒衣の者がその動きを制止する。
 足元。指を這わせながら男が探れば……何だろうか。不自然な窪みがそこに在った。注意深く観察すれば見つかる様な形だが、しかし走ってでもいたら分からない程度の窪み。
「踏むな。踏めば恐らくこの横壁から槍が襲ってくるぞ」
「ひ、ひぇ……大丈夫なんですかいカーバックさん、こんなの喰らいたくは……」
「知らん。とにかく注意せよ。遺跡には大なり小なり、斯様なモノがあったりするものだ。
 遺跡は我らが喰らうモノ――遺跡に決して『喰われる』なよ」
 立ち上がり、窪みを踏まぬ様にと注意を飛ばしながら彼らは進む。
 この迷路のような道もいつまでもは続くまい。聞こえる足音は遠くなく、罠の回避に足止めされようとも――それは学者達も同様。いつか追いつく。焦らずともその内に。
 故に。
「色宝は我らのモノだ……決して逃がさんぞ、脆弱者共」


「た、助けてください! 教授が、教授達がまだ遺跡に取り残されていて……!」
 ラサ。その首都ネフェルストに駆け込む様に助けを求めてきたのは――学者らしき服装に身を包んだ人物であった。
 大鴉盗賊団が襲ってきたのだと、息も絶え絶えな様子でイレギュラーズ達に伝えている。仲間たちは襲われ散り散りとなり、己は偶然外へと続く道を見つける事が出来た故に助かったが……
「まだ残っているのです……色宝の回収も済ませ、後は帰るだけだったのに!」
「そこを狙われたんだな。災難に……分かった、もう少し詳しく話を聞かせてくれ」
 とにかく彼を落ち着けるべく水を一杯差し出して。
 今回の調査で見つけた色宝は指輪の様な形をしており、それは学者たちのリーダーである教授が持っていたらしい。しかしだからこそと言うべきか、彼は優先的に狙われて外へと目指すだけの余裕は無かった。
 ――襲撃されてまだそんなに時は経っていない。
 今すぐ向かえばまだ間に合うだろう。件の遺跡は落とし穴や槍が飛び出てきたりと『罠』が多いらしく、そういったモノの発見や解除に優れた者が向かうとスムーズに進めそう、との事だ。
「盗賊団の数は? どれぐらいいた?」
「ハッキリと全部確認した訳では無いですが……10人はいましたね。ああ何か、こう。黒衣を纏った様な奴がリーダーらしき様子を見せていました……」
「成程、な」
 リーダーを倒せば部下は統制が取れなくなるだろう。盗賊団の背後を襲い、奴らの撃破を優先するか……それとも学者達の救助を優先し真正面から盗賊団を迎撃する構えが良いだろうか。
 断言は出来ないが、色宝の回収が不可能と思えば奴らは退く可能性は高い。
 イレギュラーズ達と要らぬ戦いを続けるよりも退却を選ぶ事もあるだろう――件の遺跡は地下にあるらしく、あまり幅広い展開が出来ない事も考えれば戦い様は幾らでもあるものだ。
 さて如何にしてこの依頼果たすか――出発しながら思考を纏めるとしようか。

GMコメント

●勝利条件
 色宝を盗賊団に奪われない事。

●フィールド
 ファルベライズ遺跡群の一角で、地下遺跡と成っている箇所です。
 洞窟の様な通路が幾つも連なっており、戦闘をする際はあまり広く展開するという事は出来ないでしょう。また明かりが無いのでたいまつ、もしくは暗視など何がしかの手段を用意しておかなければ視界が厳しい事でしょう。

 この遺跡には罠が多くあります。
 主な罠は二つ。『落とし穴』か『横壁から槍が飛び出してくる』罠です。
 いずれも物理的な感知機能(例えば窪みに足を入れてしまったり、作動する糸に引っ掛かったり)によって作動するようです。何らかの非戦スキルなどによって回避する事は十分出来るでしょう。

 実は入り口(出口)は一つではありません。
 少なくとも皆さんは二つの道から遺跡に入る事が出来ます。
1:最も大きな道から入る
2:脱出した学者のルートから入る

 1から入ると盗賊団の背後から近づく事が出来ます。ただし後述の学者達からは最も遠いでしょう。2から入ると具体的な位置は不明ですが遺跡の途中から侵入するような形となります。
 どちらから入っても構いませんし、なんなら別れて入っても構いません。

●カーバック
 黒衣を身にまとった盗賊団の人物です。
 ただの盗賊と言う訳でなく、遺跡における罠や学術的な知識を持っているようで不思議な様子を漂わせています。少なくとも彼が罠に掛ると言う事はないでしょう。
 刀の様なモノを所持しており、特に刺突の技に優れている様です。

●大鴉盗賊団員×12
 前衛が10名。弓などを所持した者が2名の編成です。
 カーバックと異なり罠におどおどしている様子。慎重に歩みを進めている様です。

●学者×3
 色宝の調査の為に訪れていた学者達の様です。
 その内の一人の教授と呼ばれる人物が後述の色宝を持っています。実は彼らの生死自体は特に成功条件には関係ありませんが、可能であれば守ってあげてください。

●色宝
『しゅほう』或いは『ファルグメント』と呼ばれる秘宝です。
 色宝はそれぞれ異なった形をしていますが、ここにあるのは指輪の様な形状をしているようです。願いを叶えるという伝承がありますが、少なくとも一個単位では精々軽い傷が治癒する程度です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <Common Raven>奈落への道完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年11月29日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)
騎兵隊一番翼
ルカ・ガンビーノ(p3p007268)
運命砕き
恋屍・愛無(p3p007296)
終焉の獣
エルス・ティーネ(p3p007325)
祝福(グリュック)
リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)
黒狼の従者
カイロ・コールド(p3p008306)
闇と土蛇
笹木 花丸(p3p008689)
堅牢彩華
節樹 トウカ(p3p008730)
散らぬ桃花

リプレイ


 大烏盗賊団。近年勢力を伸ばしている盗賊団と聞いてはいるが――
「本当に日に日に活発化してるわね……何か大きな悪事の前触れじゃないといいけれど……
 とにかく今は学者さん達を助けるのが優先かしら」
「奴らも既に幾度となく撃退されている。あわせて相応の数の盗賊も無力化されているだろうに、こうも根強く活動を続けているとは……不穏分子はどこにでもいる、と言う事か」
 彼らの目論見を果たさせる訳にはいかないと『砂食む想い』エルス・ティーネ(p3p007325)は紡ぎ『ろっくの伝導』恋屍・愛無(p3p007296)もまた彼らのしぶとさには吐息を零すものである。
 先日は領地に関わるレベルでの大規模な作戦が行われたらしい故に決して打撃を受けていない訳ではないだろうが……もしかすれば盗賊を支援している商人でもいるのかもしれない。ラサは多くの傭兵や商人の集合体であり、そういう輩がいないとは言えない面を内包しているのだから。
 ともあれ今は救助を求める声に手を伸ばそう。
 往くルートは学者の一人が逃げ出してきたルートから、だ。ここからならば距離が幾分か近い筈。
「さて豊穣にばかり目を向けていたが、真逆の地にて『烏』を名乗る輩がいようとは……
 如何程の手合いかな」
 暗き洞窟へと身を落としながら『竜の力を求めて』レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)は小さく呟いた。
 烏。烏、か。自らの『名』と同じくの盗賊団があるとは。
 不思議な縁を感じるものである――別に友好的な意味ではないが。
 澄ます耳。暗き場所にて目は長所と成り得ぬが、優れた五感で補い周囲を把握して。
「すぐに敵と接敵する事はないでしょうが、警戒は怠れませんね」
「連中も条件は同じだろうけどな。さーてどこまで続いてるんだか」
 そして闇を見据えるのは暗きを見据える眼を宿す『黒狼の従者』リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)と『アートルムバリスタ』ルカ・ガンビーノ(p3p007268)である。はたして盗賊団達はどこまで進んでいる事か――最近ではパサジール・ルメスも狙っているという話も聞く。
 なぜだ。そんなに色宝が欲しいのか? 精々軽い傷を治す程度の力しか宿していない色宝をそうまでして狙う理由は何だ。戦力を小出しにして各地に広げるなんてカッコに潰される下策にしか思えない……或いはそうしてでも得るべきリターンでもあるのか……?
「あー、わかんねぇなクソ! ま、そういう頭使う仕事は得意な連中に任せて俺は目の前の敵をぶっ潰すとするか」
 頭を掻いてルカは目前を再度見据える。
 いずれにせよ敵も無限ではあるまい。
 潰していけばいつか奴らの頭を潰す機会もあろうと――進む。
「商会連合の人達も頑張ってるみたいだけど、どうしても手が足りない部分はあるみたいだし……こういう事もあるよね。それなら花丸ちゃん達がマルっと補えばいいだけだよねっ! がんばろー!」
「ええ。まぁ彼らも運が悪かったという事でしょう……早く見つけてあげるとしましょうかね」
 それに己らが補えばよいのだと『人為遂行』笹木 花丸(p3p008689)は気合を入れ『ひねくれ神官』カイロ・コールド(p3p008306)は最前面で罠が無いか確認しながら――進んでいく。照らすライトを貴重な光源として、妙な窪みが無いか不審な歪みはないかを見るのだ。
「……しかしどんな願いでも叶えてくれる秘宝、か。あんまりにもうますぎる話をなんで信じられるのやら、甚だ疑問だ」
 そして『薄桃花の想い』節樹 トウカ(p3p008730)はそういったライトの光でも補えぬ地点を、暗視の目にて見据える――同時に思考するのは『色宝』に関する事だ。
 アレは幾らなんでも話がうますぎるというのに奴らは考えないのだろうか。
 使う事に代償が在ったり――或いは欲深さに起こる何かがいるとは。
「……まぁいいさ。色宝の真実がどうであれ……
 他者の命を奪ってでも手に入れ。自分の欲を、願いを叶えたいなんて――
 善悪関係なしに止めさせてもらう」
 奥歯に力を。盗賊団の在り方に些かの嫌悪を抱きながら……
 彼は、固い決意を固めていた。


 前を進むカイロは杖を地面に擦り付けながら進んでいた。
 前方に突き出し窪みがあれば嵌ろう。仕込みの糸でもあれば微かな感触を先んじて感じる事が出来る。
「まぁ糸に関しては自然の中でならともかく、このような洞窟で隠すに十分な偽装はし辛いでしょう。注意深く見て進めばさほど脅威ではありませんね――ただ、曲がり角など視覚が急に変わる地点には警戒が必要ですが」
 そして何より『時間』はかけられない。
 盗賊団が学者に学者たちに追いつく前に進む必要があるのだから。場合によってはスピードを優先するとしよう――なに、いざとなれば多少のダメージなど彼はものともしない。
「ふむ。ドローンを先行させているが、特に敵の気配はまだないようだな……こちらが先を進んでいるのかもしれない」
「解除もされていないからしてその可能性は高そうだな。或いは解除せずに回避だけで進んでいるとすれば話は別だが……そういう雰囲気も感じ取れない」
 レイヴンは自らが所有せしドローンを先んじさせ様子を伺わせている――罠の解除などが出来る程器用ではない故に偵察を主眼だ、が。学者にしろ盗賊団にしろまだその姿は見えないようで。そしてレイヴンと同様に低空を飛行しながら愛無は、カイロと共に罠の対処を行っている。
 いくつかの罠を解除したり警告を発したりしてきたが……しかしそれは逆を言えば人の手が入ってない罠が多く残っているという事。
「ま、いずれにせよ何時ぞやに司書殿たちとダンジョンに潜ったが、アレに比べるとまだマシかな。罠が発動したとしてもそう大したモノではない――かわいいものだ」
 想起するレイヴン。横壁から跳び出してくる槍は鋭いが、それでもパターンは多くない。『こんな感じで飛び出してくるのか』と理解すれば回避も十分可能であって。
「とはいっても落とし穴と槍……私達はともかく一般の方ならタダでは済まない罠の数々ね。学者の方々は大丈夫かしら……彼らも遺跡の知識はあるでしょうし、そう簡単に犠牲になってないと良いけれど」
「そこは信じるしかねぇな――俺達に出来るのは、一刻も早く進む事ぐらいだ」
 回避した落とし穴の罠の様子を見ながらエルスは奥にいるであろう学者たちの身を案じ、トウカも罠の警戒をしながら歩を進めていく。罠に上手く対処できるのはカイロと愛無がいるが、彼らの助けになる様に警戒の目を走らせているのだ。
 洞窟は、暗い。歩く音が響いて、それが己らのものだけであればなんとなし孤独を感じさせるものだ。
 それでもどこかにはいる。
 逃げているか身を潜めているかは知らないが――確かにいるのだ。
「んっ――! 皆、助けを求める感情が近くにあるみたいだよ……!
 多分学者さん達だよね……!」
 そして感情を探知する術を持つ花丸が『助け』を求めている感情を察知。
 となれば半径100m内に学者がいるッ――! この洞窟で助けを求めているような者がいるとすれば彼らぐらいだろう。近い。後はその『助け』の種類が盗賊達と接触してしまったが故のものでは無い事を祈るぐらいだが……

「ヒッ! き、教授! 盗賊団が遂にそこまで――ッ!」

 瞬間。聞こえてきた声は件の学者達か――ならば。
「……ご安心を。私達はローレットのイレギュラーズです。
 脱出に成功した方より依頼を受け――皆様の救助へと参りました」
「ロ、ローレットだって!? そうか! 脱出できた者がいたのか、よかった……!」
「三人とも無事? 私達、特異運命座標が来たからにはここからはあなた達を全力で守るわ!」
 暗闇に潜む彼らを発見したリュティスとエルスが、敵意を無い事を伝えながら挨拶を。
 どうやら彼らはこれより先、多くの罠があったが故に立ち往生してしまっていたようだ。それ故に助けが来る事を神に祈っていた、と言った所か……なんにせよ途中からのルートより潜入した事と、罠に対し迅速に対処できるメンバーがいた事が早期の接触に繋がった。
 ならばもはやこんな所に用はない。一刻も早く脱出を――
「と、思う次第ですが……流石にこれよりなんの接触も無く脱出とはいきませんか」
 されどリュティスは感じていた。近くで――非戦の技能を用いている者がいる。
 無論それはイレギュラーズ以外の反応だ。大烏盗賊団の者だろう。
 具体的にどれぐらいの距離にいるかは分からないが、探知があるという事はそう遠くはない――
「だけどよ、上手い事こっちが先に接触出来たんだ。なら『地の利』はあるってもんだぜ」
 ならばと口端を歪めるのはルカだ。罠に関しては得手とする者達には及ばなかったが……事、戦闘に関してならば己が本分。己が本領。
 構える黒犬の形を司った大剣を構えて――暗闇の果てを見据えていた。


 大烏盗賊団は罠に怯える団員達が恐る恐るしながらも確実に進んでいた。
 先頭を進むカーバック――歩みの遅さにイラつきながらも、しかしそれでも学者達との距離は縮まりつつあった。本来であればやがて彼らに追いつき、その命と色宝を奪っていただろう――
「急げ。このままでは脆弱者共にいつまでたっても追いつけんぞ――」
「あら。そんな脆弱者なんてを狙って色宝を横取りだなんて……
 大鴉盗賊団の方々は結構ダサい事をされるのね?」
 だがその目論見が最早崩壊していた事に気付いたのは、前方よりエルスが襲い掛かって来た事と同時であった。彼女の手に握られしは大型の鎌である――暗闇より一気に跳躍した彼女の一閃が盗賊団へと紡がれ。
「う、うわなんだ!? 罠、これも罠ですかカーバックさん!!?」
「落ち着け。チッ、蜘蛛の糸が繋がってしまったか」
「お釈迦様の気紛れってか? いや違うね――ただテメエらがクソ遅かっただけだろ」
 更にルカもまた同様に奥へと進ませぬ為に前へ出る。
 学者たちは下がらせている。こうなってしまえば洞窟と言う構造が幸いであり、如何に盗賊団の人数が多かろうがその強みは生かせない。幅広く展開する事は叶わず、迂回も容易ではないだろう。
 握る大剣。振るう一閃は彼らを薙いで怯ませて。
「さて、しかしこの狭さではハイドロイドには文句を言われるか……
 まぁいい。如何様にでもなろうさ、奴らが大したことがなければ――な」
 勿論その狭さ自体はイレギュラーズにとっても同じである為、レイヴンの言う様に彼らも自由自在に戦況を進める事が出来る訳ではない。それでも各々の最善を此処に。
 断頭の処刑人の姿を陽炎が如く。空裂く竜の爪を地の底にて振るわん――
「こうなってしまえば後は個々の力こそがモノを言う場面だ。覚悟してもらおうか」
「花丸ちゃん達を超える事が出来るとは思わないでよね!
 退かないんだったら……ぶっ飛ばして、痛い目を見てもらうから!」
 更に愛無と花丸も盗賊団へと攻勢を。奴らの足が揃う前に更に動揺を広げてやるのだ。
 愛無が発光の力を限界まで広げれば、まるで昼の太陽の下にいるかの如く戦場が輝く。ここまですれば闇を見通す力がないものでも通常通りの力を振るう事が可能になるだろう。そして、火力を集中させて一体一体を確実に落とすのだ。
 花丸が引き付けた敵に触手を放ち、剛閃。さすれば。
「私、神官のカイロ・コールドと申します。この先は諦めた方が良いかと。貴方達程度ではどう考えても無理ですって。顔色も悪いですし、今すぐ帰った方が良いですよ? ええ――暗闇故にそう見えている訳でもなさそうです。身の程を魂でご存知故か?」
 カイロもまた敵を挑発しながら万全の態勢で迎え撃つものだ。
 英霊の加護を此処に。発言に乗せられて撃を飛ばしてくる者がいれば即時反撃が彼らを襲うのだ。攻撃してくればくるほど傷つくのは奴らの身体――ああ全く愚かしい。

「何をしている。無暗に動くな、敵の光を利用し姿を捉えよ。数が多いのに負けるつもりか」

 瞬間、一閃。
 カーバックだ。彼の刺突が戦場を穿ち、彼の言葉が盗賊団に統制を取り戻す――
 雑魚はともかく彼だけは油断ならない。この状況に至ってもまだ冷静で。
「御大層な態度だな。そんなに色宝が欲しいのかね」
 だからこそこんな奴を教授達の方へ進ませる訳にはいかないとトウカは立ち塞がるのだ。
 願いを叶える秘宝――ああ。もしそんなモノが本当にあるのなら、自身にも叶えたい願いがある。
 それはきっと奇跡の領域でなければ叶えられない願いだ。
 でも、そんな奇跡があるのなら奪い合うものでは決してない。
「分からねぇ奴はぶちのめしてでも――分からせてやるよ」
 振るう斬撃。乱れるが如くの剣閃はしかし敵だけを裂いて。
 鮮血をまき散らし、一筋の華が如く。
 ――鬼灯のような血だまりを地面へ残す。浅くない傷を愚か者達へと。
「こいつら……強い。何者だ? 学者の護衛なんぞいなかった筈だが……まさかローレットか」
「お気づきに成られたようで結構。ところで、そちらの足元にあるのも――お気づきでしょうか?」
 カーバックがトウカ達の正体に勘付き始めた頃、リュティスが放ったのは光だ。
 邪悪を裁く天の光――敵だけを穿ち、その身をよろめかせ。
「うわあああ!! や、槍が俺の身体を……!」
 罠のある地点へと押し込むのだ。
 ここまでは回避してきたようだが、だからこそ『残っている』モノへと誘導する一撃――流石に意図して何度もは出来ないとリュティスは思考する、が。
「おや。上手くかかればラッキー程度と思っていたのですが、存外に上手くいったようですね」
 一度でも掛かれば盗賊団達の注意に『罠』の要素が追加される。
 戦闘以外の事に思考を割かせれば隙が出来る事もあろう。
 ――追い詰めていく。黒き蝶の陰りを彼らに見せて、攻勢は決して緩めずに。
「ふむ……これが噂の大烏盗賊団なのか? 光物を狙うが故の鴉を名乗ったか?
 ――あまりに矮小。あまりに愚物。
 コソ泥ごときが鴉<レイヴン>を名乗ったこと、後悔してもらうぞ」
 レイヴンは引き続き後方より彼らを潰していく。
 こんなものが同じ名を冠しているという呆れを――心の中に渦ませながら。
「ほざけ……と言いたい所だが、押し込めんな」
 カーバックは舌打ちする。彼の刺突は強力であり、盗賊団の数もまだまだ残ってはいるが……しかし些か以上に分が悪い。前衛向きの者達が多いために閉所戦闘でその全力が出せていないのだ。
 地の利無し。士気も劣る。カーバック一人では如何とも覆しがたく。
「……やむを得ん退くか」
 故にカーバックは後ろへと退く。部下の盗賊達をその場に残して。
 彼らだけでは退く事は出来ない。此処までカーバックの知見によって罠を回避して来たのだから――帰りも同様だ。イレギュラーズ達と戦いながら撤退など出来ようはずがない。逃げる事を決めた彼自身を除いて。
「待てよ――カラス何とかの目的はわからねえけどよ、お前は私怨に見えるな」
 が、彼の姿が暗闇に消える前に言葉を紡いだのはルカだ。
「やたら遺跡に詳しいのも妙だ。思えばパサジール・ルメスが色宝に関わる一族なんて事をカラスが知ってるのもおかしい。そういう情報は一体どこから手に入れたモンだ? どっかにいねぇとおかしいよな、情報源がよ」
 盗賊団の一人を斬り捨てつつ、辿り着く結論は――一つ。

「お前、パサジール・ルメスの出なんじゃねえのか?」

 少なくともその関係者だろう? と。
「さて――どうかな。仮にそうだったとしても、貴様らは届くまい。
 色宝の果てになにがあるかを」
 カーバックは意味深な笑みだけを紡いで、その問いには答えない。
 やがて彼は走り去っていく。闇の彼方へ、別なる奈落へ。
 残された盗賊団達は見捨てられ事に慌て始めるが――もう何も出来ない。精々が最後の抵抗ぐらいであるが、統制の無くなった者達が歴戦のイレギュラーズ達に叶おうものか。一人、また一人と倒れれば捕縛もされて。
「生きてる盗賊団の方々はちゃんと裁いて貰わないと。生かしたからって甘えだなんてお馬鹿な事を言うのなら……きっと罰に耐えられるわ。冷たい牢の中で自分がやってきたことをじっくりと反省してもらいましょう」
「ええ。出来れば全て排除したい所ですが、今までやってきた事の報いを受けさせることも重要でしょう。罪を知り、罰を受けるべきです」
「可能であればカーバックも捕えたい所だったが……逃げ足の速い奴だ」
 エルスとリュティスがきつく盗賊団を縛り上げて、愛無はカーバックの消えた先を見据えている――流石に今から追っても追いつかないだろう。罠もまだ残っている筈だ。それに最重要なのは色宝の回収であって。
「しかしこいつが色宝、ねぇ。まあ綺麗な色はしてるがよ……こんなもんが集まっても願いが叶えられるのか……?」
 一方でレイヴンとトウカは救出した学者達より此処にあった色宝を一目拝見。
 指輪の形だ。なるほど多少の神秘は詰まっていそうだが……
 集めえば大いなる神秘でもなせるのか?
 謎はあるが、ともあれ盗賊団の思惑はまた一つ潰されて。
「はぁ、さてさてお次は帰り道ですか……嗚呼、面倒ですねぇ」
 またも同じ道を通らねばならないのかと、カイロは愚痴をこぼしながらも――帰路に着く事とした。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ!

 大烏盗賊団の目的はまた一つ潰されました。
 ここ以外、あちこちでも彼らの動きは阻害されている様です。
 色宝を求める動きの真意ははたして……?

 その辺りはまたいずれ、となるでしょう。ありがとうございました!

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