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シナリオ詳細

<マジ卍体育祭2020>グラウンド横断ウルトラリレー

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●希望ヶ浜学園 マジ卍体育祭
 異世界から召喚された旅人達が集まる練達。
 その一区画にある再現性東京――文字通り『地球』の『東京』を再現した、しかし何かが違う場所――の、更に一区画。希望ヶ浜と呼ばれる地域にある教育施設「希望ヶ浜学園」にて、この度体育祭が行われることとなった。

 ここは、非日常だらけのこの世界で、それを厭う者達が日常を求めた場所。
 しかし、この地域にも非日常は存在する――それが夜妖<ヨル>と呼ばれる怪異達であり、その夜妖に対抗する人材を育成するのがこの学園の新目的だ。
 ローレットのイレギュラーズは、学生や教職員という立場で招かれ、この地域の怪異を人知れず解決しているのが現状である。

 まあ、そんな事を言っても表向きは青春を謳歌できる学校なので、当然学校行事もやる。
 体育祭だってやる。名前だって公募して投票して、民主主義的に付けた。

 ――マジ卍体育祭。

●走れなかった襷と、ウルトラリレーと
 その日の『千殺万愛』チャンドラ・カトリ(p3n000142)は、常なら誇らしげに頭上に戴いている角も、肩を飾っていた孔雀羽も収めて、目の色を除けばカオスシードと言っても差し支えない程度の容姿に『抑えて』いた。
「我(わたし)は、万人からのアイを求めません。しかし、外見のために我がこの地の人をアイせないことは悲しいですから」
 『日常』が求められる土地柄、希望ヶ浜では『人型』から外れすぎている外見の存在は『非日常』として恐れられてしまうこともあるらしい。
 ただし、この『希望ヶ浜学園』の人々はイレギュラーズの存在に理解がある。本来は彼のような偽装をする必要は無く、自由に堂々と行動できる場所のはずだ。
「我はアイする為に必要でしたので。ええ、ええ。とても未練がましい、怪我で走れなくなった学生ですよ」
 彼が言うには、今回祓うべき夜妖は元々この学園の学生で、足に自信があるリレーのアンカーであったらしい。それが、ある大会の前に事故で亡くなってしまったというのだ。
「自分がいないリレーなんて、自分の代わりにアンカーを走るなんて、と。アンカーの目印である襷に取り憑いて、それを着けた者の足を必ず怪我させていたというのです。事故で折ったり、切断させたり、と。学生と侮れない、ある意味純粋なアイ<我>ですね」
 この襷は、装着しない限り害はなかったという。その為、怪異が起きるようになってからは体育倉庫の奥に仕舞われて新調され、新たな事故はしばらく起きていなかった。
 しかし、マジ卍体育祭と名が付いたこの年に。新たな襷でまた足を折る事故が連続で起きたという。夜妖が以前の襷から乗り移ったのだろう、というのが学園の見方だ。
「夜妖としては、そこまで強い存在ではないでしょう。大人として祓って差し上げるか、説き伏せて立ち退いて頂くか……その辺りはお任せします。これ以上被害が出なければ、学園としては問題ないそうですので」

 そして――襷の夜妖と折り合いがついたなら。
 体育祭だ。マジ卍だ。
 この学園ではイレギュラーズも他所者ではない。学生であり、教職員だ。学園生活もまた本分である。
 チャンドラがダボ袖ジャージに袖を通しているのもその為だ。
「せっかくなので。その襷で、リレーに出てあげてほしい……とのことで。我としては、肉体労働はあまり得意ではないのですが……しかも、この種目ですし……」
 何に対してでもアイする姿勢を見せるチャンドラが、珍しく困った顔で大会プログラムを見せる。夜妖よりもこちらの方が重労働だとでも言いたげだ。
 その中身は。

『マジ卍グラウンド横断ウルトラリレー
  全問答えないとゴールできま10』

「この程度で揺らいでしまうとは、我のアイもまだ至らないようで。
 この機会に鍛え直すつもりで、参加させて頂きたいと思いますよ」
 何やら深刻に捉えているが、これそういう種目だろうか。
 リレーなのに全問回答って何なんだ。
 ちらりと見えたグラウンドにある花火筒みたいなのは何が出るんだ。
 よくわからんけど夜妖祓いも忘れずに頑張れイレギュラーズ!

GMコメント

旭吉です。
マジ卍ってなんだ。

●目標
 襷に憑いた夜妖を祓い、『マジ卍グラウンド横断ウルトラリレー』をゴールする

●状況
 練達の再現性東京、「希望ヶ浜学園」のマジ卍体育祭。
 体育祭が行われているその裏で、まだ体育倉庫に仕舞われている襷から夜妖を祓ってあげましょう。
 物理的に祓ってもよし、説得して自発的に出ていってもらうもよしです。

 夜妖祓いが終わったら、グラウンドでウルトラリレーを頑張ってください。
 ルールとしては以下の通りです。

  ・ロープで囲われた蛇行コースをリレー形式で継走し走る。
   イレギュラーズはイレギュラーズで1チーム(教職員も参加可能)
  ・バトンの代わりに、次の走者が待っている場所でクイズに答えます。正解すれば次の走者が走れますが、不正解ならそこで脱落です。
  ・クイズで脱落せずとも、道中で爆発したり(※命に別状は無い範囲です)、ビリビリしたり、ぬるぬるしたり、何か色々あります。
  ・どうにか10人繋いで、ゴールしましょう。
   リレー参加者はシナリオ参加者にチャンドラを加えた9人+モブ学生1人です。

●敵情報
 襷の夜妖×1
  足に自信があった学生の亡霊。大会のリレーでアンカーを走るのが自慢でしたが、事故で亡くなり走れなくなりました。
  襷に取り憑いて、アンカーとしてその襷を着ける者を怪我させてきたようです。
  それ以外の攻撃手段は特にありません。

 ウルトラクイズ(出題内容)
  以下の内容が出題されます。得意分野などに応じて分担するといいでしょう。

  ・神逐、読み方は?
  ・マジ卍体育祭、最終候補に残った他の名称をひとつ!
  ・希望ヶ浜学園、『希望ヶ浜』の説明は何行?
  ・希望ヶ浜学園、合唱祭はいつ?
  ・学園非常勤講師ホリス。またの名をギルオス教諭。彼のポストに送ってほしいものは?
  ・音呂木・ひよのちゃんの年齢は?(高校生だよ!)
  ・普久原・ほむらちゃんのあだ名は?
  ・希望ヶ浜ってどこにある?
  ・好きな制服を正直に!
  ・この体育祭の正式名称をひらがなで!

 描写としては、プレイングによりますがウルトラリレーの方が比重重めの予定です。戦闘はそこまでガチガチにしなくても大丈夫です。

●NPC
 チャンドラ
  肉体労働は苦手ですが、知識はほどほどに。

  • <マジ卍体育祭2020>グラウンド横断ウルトラリレー完了
  • GM名旭吉
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年11月27日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
サイズ(p3p000319)
妖精■■として
咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
赤羽・大地(p3p004151)
彼岸と此岸の魔術師
メイメイ・ルー(p3p004460)
約束の力
メイ=ルゥ(p3p007582)
シティガール
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
九重 縁(p3p008706)
戦場に歌を

リプレイ

●果たせなかったゴールを
 体育祭の準備も大詰めの希望ヶ浜学園。夜妖へ対処するため、イレギュラーズ達が体育倉庫へ向かう途中には、嫌でもグラウンドが目に入った。
 既にコースの確認が入念に行われていたそこには、やはり普通のリレーでは有り得ないものがごろごろしていた。
「花火筒だけじゃない……」
「普段の戦場と変わらないじゃないか……」
 夜妖よりもリレーの方が怪我人が出るのではないか。ちょっと訝しんだ『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)と『蛇霊暴乱』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)である。
「わ、わ……大変そう、で。難しそう、なリレーです、ね」
「体を動かすのは其処まで得意ではないのですが……ごほん」
 『さまようこひつじ』メイメイ・ルー(p3p004460)もびっくりしていたし、『ささぐうた』九重 縁(p3p008706)などは完全にアウェーライブ会場を見る目で見ていた。
「メイは楽しみですけどね! 都会の競走は流石違うのです!」
 一方で、髪も瞳もきらきらと輝かせる『シティガール』メイ=ルゥ(p3p007582)。
「白百合清楚殺戮拳にて重要なのは足腰の動き! 今も昔も走り込みは美少女の基礎よ!」
 どこから見てもすごい美少女である『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)の口から貫禄たっぷりに発せられたのは、確実に何かの道を極めた者のそれである。
「故に走るのは得意! どーんと任されよ!」
 伊達や酔狂で『美少女』を背負ってはいない。百合子は確かな実力に裏打ちされた『本物』なのだ……!

「今回の夜妖は怪異……というか幽霊みたいなものなのか」
 体育倉庫が見えてくると、『遺言代行』赤羽・大地(p3p004151)が標的である夜妖の話を持ち出した。
「走ることの叶わなかった、無念……」
「私で言えばラストステージ、歌いきれなかったみたいなものでしょうね」
 メイメイと縁は、件の夜妖にいたく同情した。
「経緯を聞くと、確かに無念だったんだろうとは思うけど……選手を怪我させるのはちょっとなあ」
「足の怪我は、リレー以外にも影響が出るからな……」
 大地やサイズにとっても同情の余地はあるが、だからと言って夜妖の好きにさせてやるわけにはいかない。
「どうしても、祓わなくては、ならないのだとしても。その前に、一度でいいから、優勝させてさしあげたいですの」
 リレーの前に、祓ってしまうのではなく。一緒にリレーに出てあげたい。
 『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)はそう言うのだ。
「そうだな。拳で追放するより、満足して自ら逝くべきところへ往く方が望ましいと思う」
「メイ達と一緒にちゃんとゴールさせてあげて、後悔なく祓ってあげたいのですよ!」
「ノリアさん、私もアンカー、走らせてあげたいって思います!」
 アーマデルが、メイが。縁も、彼女に同意する。
「ヤツの望みは分かりやすいシ、こっちはある意味、未練を残して死ぬヤツに対しちゃ慣れてル。だとしたラ、少しは俺達でも度しやすいかもしれねぇナ」
「今回はリレーを頑張るつもりで来た故、戦わずに済むならばそれが良いな!」
 『赤羽』の言葉は本来の『死霊術士』としてのものでもあるが、百合子としては何にせよ平和的に解決できるならばそれが最善であった。
「せっかくです。学校生活、もう一度エンジョイしたいですよね!」
 縁が一足先に倉庫へ向かうと、イレギュラーズ達も続いていく。ただし、アーマデルだけが立ち止まったのを、『千殺万愛』チャンドラ・カトリ(p3n000142)が目に留めた。
「どうされました?」
「夜妖は元々この学園の学生だったなら、名前も分かってるのかなと思って」
 対象を名で呼ぶ、あるいは名を問う行為は『個人』を特定し、定義する儀式でもある。名も無きものは不安定だが、自己を定義し直すことで安定することもある――育った環境ゆえに、思うことがあったのだ。
「ふふふ。言霊、とも申しますから。ええ、ええ。アイする為には必要なのでしょう」
 チャンドラはそのように笑むと、満足げにひとつの名を答えた。

●襷の怪
 倉庫の重い扉を開ければ、そこは昼でも薄暗い場所だった。照明を点けても満足とは言えない明るさで、怪異の噂が立つには申し分ない条件だ。
「以前の襷から新調された襷に乗り移った、という話だったかな」
「私もちょっと探してきますね!」
 サイズと縁が率先して倉庫の中を探すと、さほど時間をかけずに1本の赤い襷が見付かった。単体では、ごく普通の襷だ。だがその1本だけ、他の襷や用具とは違う場所に明らかに隔離されていたのである。
 その襷へ、百合子が声をかける。
「おい、そこな襷よ。貴殿いつまでいじけて居るつもりだ。貴殿のやりたいことは生徒を怪我させる事ではなかろうが」
「可哀そう、だけれど……誰かを傷つけるのは、歪な在り方、です。スポーツマンシップ、が感じられません」
 叱るように百合子が、同情しつつも嗜めるようにメイメイが伝えるも、反応はない。
「襷は皆で繋ぐものなのですよ! それを最後で切ってしまったら、自分がずっと後悔したままになってしまうのですよ」
「自分が一番にゴールテープを切る事が望みであったろうに、目的と手段を入れ替えるとは何たる体たらくか」
 訴えるメイ。当初の望みを突きつけ続ける百合子。

「お前は、自分の名前を覚えてるか」

 問うたのはアーマデルだった。
「他人の足をどれだけ折っても満たされはしないだろう。魂を縛り付けるほどに強い未練は、代替物ではそうそう満たされない。
 そして満たされぬまま、代替物を求める程に変質して、より深く暗い沼に沈んでいく」
 『死』に近いものの知識として、アーマデルは伝えていたのだ。
 そこに確かにいる、襷の形をした『誰か』へ。 
「ここは学校、未練を晴らし卒業する時だ。 ――『羽矢坂千歳(はやさか・ちとせ)』」
 その名が出た瞬間、隔離されていた襷から黒い人影が浮かび上がる。
 身長や体格からして女子高校生だろうか。
「今から一緒に走ろう、千歳。お前の願いを叶えるのに、俺達皆で協力する」
「今度こそメイ達、一緒にゴールまで繋がないですか? 何時までも、この倉庫で立ち止まっていたらダメなのですよ! 学生はちゃんと、ゴールして……卒業しないとですよ!」
 大地とメイが、姿を現した人影にリレーへの参加を誘う。
「俺たちはリレーのアンカーを求めている。『マジ卍体育祭』と名付けられた体育祭の第一回目…だよな? とにかくその記念すべき初回の、リレーのアンカーだ」
「千歳殿が走りたかったアンカーだぞ。その願い必ずや叶えてみせよう……ノリア殿がな!」
 アーマデルは特別なアンカーであることを強調して、百合子はノリアを紹介した。
 だって吾はアンカーじゃないもん!>< と弁明を加える美少女。
「千歳さん、というのですね……お名前がわかって、嬉しいですの」
 人影に数歩近付いて、穏やかに微笑むノリア。
「人を傷つけないで欲しい……と、お願いしても。難しいと思いますの。でも、大丈夫ですの」
 そして、幾人ものアンカー達を傷付けてきた襷を、恐れることなく手に取った。
「走れなかった無念、晴らしてさしあげます。力を貸してくれませんか?」
 人影は、何も話さない。
「でも、悪さをするのは、ダメ、ですよ。卒業って、大変……らしいので。千歳さまも、一緒にがんばり、ましょう。わたしも、がんばり、ます」
「一緒に走りましょう千歳さん。そして、ゴールを一緒に迎えましょう!」
 メイメイと縁が誘う。彼女が生前辿り着けなかったゴールを、今度こそ。
「……わかるな? 今を逃せばこんな機会、そう巡ってはこないぞ?」
 アーマデルに再度念を押されると、人影の姿は薄れて――ノリアの手にある襷が、少し重くなった気がした。

●グラウンド横断ウルトラリレー!
「ノリアさん、大丈夫?」
 体育祭本番。ついにグラウンド横断ウルトラリレーでの出番となり、選手入場となる。
 千歳の説得の際は、いつ夜妖として暴走しても対応できるよう見守っていたサイズだったが、いざとなれば夜妖の呪いを受けることになるノリアを案じてはいたのだ。
「大丈夫ですの。でも……もし、ゴールに辿り着けないほど、酷い怪我になったら……その時は、お願いしますの」
 彼女は、あの夜妖のためにゴールすることを重視していた。
 ならば自分も、彼女にリレーを繋げられるよう頑張るとしよう。
「わかった。任せておいて」
 ――この、体育祭とかいうレベルを遥かに超えているウルトラコースを。

『位置について――用意!』

 ピストル音が響いて第一走者が走り出す。まず躍り出たのはこの日のために舞褸磨(ぶるま)の大争服(たいそうふく)でキメてきた百合子だ!
「ふっ、吾の美少女っぷりを見せるいい機会であるな!」
 何だこのEXA(ルビ:美少女力)はァ! その歩幅は大きくはないものの回転の速さがまさに美少女だ!
 アウト・イン・アウトをメリハリ付けて攻める姿はもはやサーキットレースを見るよう!
 次の走者が出発するゲートを開くには、そろそろ見えてきたあのボタンを押して正解する必要があるようだ……!
 最後のカーブを外から攻めて抜き去り、クイズボタンへ飛び込む。
『問題! 希望ヶ浜学園、『希望ヶ浜』の説明は何行?』
「数えてきたとも! 38行! 少なくとも吾の環境ではそうだったもん!!!」
 ゲートは――開いたーッ! 美少女の環境で38行だったならそうなのでしょう!

 続く第二走者は縁。正直運動は得意ではない……!
 地響きがしてコースに花火が落ちてきたらびっくりもするが、ゴールを目指す気持ちだけは挫けない!
「といいますか、人に向けて花火を撃っていいものなんですか!?」
 背景に大爆発を背負う特撮的縁さんもロックカッコいいと思います。
 一位の維持はちょっと難しかったが、どうにかクイズボタンに到達した縁。
『問題! 普久原・ほむらちゃんのあだ名は?』
「えーっと、なんでしたっけ。†ほむら†さんでしたっけ?」

 『†』は『だがー』と読む。つまり『だがーほむらだがー』さんですね。
 縁はとてもよくわかったので、おもむろにスピーカーボムなど用いて、元気いっぱい、会場中の皆にようく聞こえるように、
『だがーほむらだがー!』
 ガコォン!! と開くゲート。沸き立つ観客席では、顔を真っ赤にして髪がぶわああとなっているほむらちゃんがいたとか。

 第三走者のチャンドラがまきびしコースを駆け抜けた後に答えた制服の好みは、「全てをアイしていますが脱ぎやすさならブレザーかと」という微妙な回答。一応ゲートは開いた。
 次に走った協力者の学生は氷が張られたコースをぼろ雑巾状態でクイズボタンに辿り着いた。
 設問の音呂木・ひよのちゃんの年齢については――彼女、年齢非公表なのだが?
「ひよのは……高校生だし……17歳……でいいんだっけ……?」
 という大地の事前打ち合わせにより、どうにか次へ繋ぐことができた。

 このクイズガバくない?

「さぁ、次はメイと一緒に繋ぐのですよ!」
 第一走者から受け継がれてきた襷を結んで走り出した第五走者のメイ。
 一人で気ままに野山を駆け回るのも楽しかったが、今は襷の千歳と一緒で、前にも後ろにも仲間がいて。たくさんの仲間と一緒に走るのは、とても心地良かった。
「千歳さんも生きてた時は、こんな感覚だったのでしょうか? リレーって……何だかすごいのですよ!」
 ぬるぬるエリアで地面から生えて打ち付けられる触手は、縄跳びのように飛び越えていく。滑る地面は敢えてそのまま滑っていった。
 何もかもが楽しくて。気が付けばごぼう抜きを達成した状態で、メイはクイズボタンに到達した。
『問題! 希望ヶ浜ってどこにある?』
「希望ヶ浜は、探求都市国家アデプトの区画の一つ、再現性東京2010街にあるのですよ!」
 開いたゲートの向こうの仲間に、襷を託して――。

 ぴょんぴょん、と準備運動を終えて。
 襷を受け取って駆け出したのは、第六走者メイメイ。
(不思議、です……身体が軽い、ような)
 もしかしたら、襷の彼女が本当に。そんなことを考えながら、メイメイは岩山コースをよじ登っていく。ほぼボルダリングである。
(クイズのバトンを繋げる、ため……!)
 滑り落ちそうになるのを何とか頑張って、手を伸ばして。
「メイメイー! 大丈夫かー!」
 次の走者の声がする。もうちょっとだけ、頑張ろう。
『問題! この体育祭の正式名称をひらがなで!』
「えと……『まじまんじたいいくさいにせんにじゅう』……」
 ゲート沈黙。ボルダリングの直後で声が小さかったのかも知れない。
 その後二度言い直して、ようやくゲートは開いた。

 メイメイから繋がれた襷を締めて、次に走ったのは大地。
(本当は文系だし、フィジカルも自信ないけれど……おふざけは無しだ)
 さあどんな障害が――と構えていた所へ、真正面からの強風。
 立っていることも辛いレベルで、走るなどとても考えられない。しかも風向きは時々変わるようで、まるで台風の中にいるような感覚だ。
(追い風になったら、一気に駆け抜けるしかないな……頼むから静かにしていてくれよ)
 祈るように襷を握り、這うように少しずつ進みながら、風向きが変わるのを待つ。そして風向きが変わった瞬間――!
「今しか……無い!」
 他の選手も同じことを考えていたのか、実質的なレースはそこから始まった。
『問題! マジ卍体育祭、最終候補に残った他の名称をひとつ!』
「暁光祭!」
 自信たっぷりに答える。何せその案で優秀賞を貰った当人なのだから。

 リレーも残す走者は3人。その一人がサイズだ。
「ダンジョンに臨むくらいの心積もりでちょうど良さそうだね」
 アイススフィアを施しながら、走り始める。タイミングは隣りの走者とほぼ同時だったようだが、無理はしない。
 コース上には鉄線が見えてきた。先を走っていた選手が乗り越えようとして飛びのいている所を見ると、触れない方がいいらしい。
(これは……回復しながらならいけるか)
 なるべく触れないようにしつつ、触れて痺れてしまったら戦闘続行のスキルで立ち直る。その繰り返しで、サイズは電撃コースを走り抜けていく。
『問題! 希望ヶ浜学園、合唱祭はいつ?』
「六月」
 答えながら、六月には他にも行事が多かったな……などと思い返す。ここに来るまでに随分痺れもしたが、どうにか襷を繋げることができた。

 第九走者、アーマデルのコースはトンネルであった。真っ暗である。
 しかし持っててよかったサイバーゴーグル。
 だがトンネル内での爆音は方向感覚が乱れるのでやめてほしい。
 グラウンド横断、とは何なのか――そんな哲学が始まる頃に、次のクイズボタンが見えてきた。
『問題! 神逐、読み方は?』
「かんやらい。……神をあるべきところから追放することだな」
 練達の学園でどうしてそんな問いが出てくるのかも謎だがさておき、ゲートは開いた!

「アンカー。任せたぞ」
「はい……!」

 そして、ついにアンカーのノリアに襷が渡る。
 夜妖憑きの襷の呪いが、ノリアの脚に――
「……♪」
 ノリアは陸上で変化を解いて、その下半身をマアナゴのレプトケファルス幼生のものに戻してしまった。怪我させるべき『脚』が無いのだ。しかも、ノリア自身はギフトによりこのまま陸を泳ぐことができる。
 アンカーで襷を受け取っても大丈夫というノリアの自信は、ここから来ていた。
「さあ、一気にゴールしちゃいましょう!」
 呪いが発現しないことを確認して、恋人特製のおはぎ&ぼたもちをもぐもぐごくん。先に見えるネットは――物質を通り抜ける能力があれば、何も無いのと同じ。
 しかし、何だか目がとても痺れる。実はたっぷりと香辛料が塗り付けてあったのだ。
 目を開けられないほどの痺れに目を擦れば、更に痺れは増す。
 このままでは千歳が。

「ノリア様ー、千歳様ー!」
「ノリアさん!」
「どうした、大丈夫か!」

 メイメイ。サイズ。大地。仲間達の応援の声が聞こえる。
「千歳さん……力を……!」
 襷の彼女を信じて、ノリアは開けられない目のまま泳ぎ出す。

「ノリアさん、ゴールはこっちよ!」
「そこはカーブであるぞ! 右だ右!」
「そこは真っ直ぐー!」

 縁、百合子、メイの声も聞こえる。
 彼女達に導かれるままゆらゆらと泳いで、どうやらクイズボタンが近いことを知った。
「千歳さん……もうじき、ゴールですの……!」
 ボタンを押す。問題はギルオス教諭がポストに入れて欲しいもの。
 ノリアは白いものを手探りでジャージの上着に包むと、審査員がいるらしい方向へ高らかに投げた。

 ――ノリアのぱんつを。

 静まり返る会場。響く金属音。
 ゲートが開いたということは、つまり。

「ノリア様ー!」「ノリア!」「ノリアさん!」「ノリア殿!」
 仲間達が駆けつける。誰かが回復魔法をかけてくれたのか、目の痺れも取れた。
「わたし……千歳さん、ゴールですよ……!」
 襷に話しかけるが、襷は何も答えない。
 ただ、ノリアを傷付けなかった襷は、最初より軽くなっていたような気がした。

 ――なお、感動のゴールの裏側で「やっぱり……」という疑惑や確信を全力否定していた男性教諭Gがいたらしいことを追記しておこう。本人の名誉のために。

成否

大成功

MVP

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚

状態異常

なし

あとがき

まさかの名前を聞いて一緒に走ってあげる展開に胸が熱くなりました。
千歳ちゃんだそうです。
きっと彼女も満足できたことでしょう。
シリアスとコメディのジェットコースターでした。

ついしん。
ほむらちゃんと教諭Gさんの反応はSD様方に了承いただいてます。

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