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シナリオ詳細

再現性東京2010:逢魔が刻にあいましょう

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 夕方に神社へお参りにいってはいけないよ。
 黄昏刻のかわたれどき。
 逢魔が刻には鬼(かみ)がでる。
 人と魔が重なる時間。
 わかたれたはずのやくそくが曖昧になる時間。

 約束を破ったらどうなるの?
 そんなのかんたん。
 連れて行かれるんだよ。
 
  ”アレ ”が見えたらもう終わり。
  ”アレ ”はあなたが油断するその時をずっとずっと見てる。
 もし、もしも。
  ”アレ ”と目が合えば?
 そんなのかんたん。
 ”アレ ”とじぶんの境目がなくなる。
 そうなったら連れて行かれるよ。
 だから、だから。
 だからね?
 黄昏刻にお参りしてはいけないよ。

「ねえ、あなたたち、巫女さんなんでしょ?」
 カフェを楽しむ桜咲 珠緒 (p3p004426)と藤野 蛍 (p3p003861)に小学生ほどの少女が話しかけてきた。
「助けて! えみちゃんを助けて! いなくなったの!」
  珠緒と蛍は目をあわせてから必死の表情の少女の話を聞くことにした。
 どうやら学園祭のとき二人の巫女装束姿を見たというこの少女は二人を本職の巫女だとおもったようだ。
(本職の巫女が夜妖バスターをする職業であるかはさておいて少女はそう認識している)
 夕方神社にいく習慣のある友人がひとり行方不明になったという。
 最近彼女の通う小学校では怪しげな噂が流れている。曰く、夕方に神社にお参りにいくと ”アレ ”に出会うからお参りしてはダメだというもの。
 よくあるオカルトのそれだ。
 少女は毎日お参りをしている友人を心配して、しばらくは行くのをやめたほうがいいと忠告するが、少女の友人――えみちゃんはいつもお参りしているけどそんなもの見たこともないという。
 少女とえみちゃんは口論になった。
 えみちゃんはその日もいつもどおり夕方お参りにいったのだろう。
 次の日、えみちゃんは学校にこなかった。次の日も、その次の日も。
 不思議なことはそれだけじゃない。日毎に、えみちゃんのことを知らないというクラスメイトが現れ始めたのだ。
 少女はえみちゃんの家に様子を見に行く。
 しかし、えみちゃんのお母さんはこの家に娘はいないという。
 そして少女本人もえみちゃんの顔が思い浮かばなくなってきたのだ。
 だから。だから。
「わたし、えみちゃんにひどいことを言ったから。えみちゃんはいなくなったの。だから謝らないとだめなの。
 わたしがえみちゃんを本当にわすれてしまう、その前にえみちゃんを見つけて!! えみちゃんを助けて!」
 そう涙をながす本人もえみちゃんが誰であるのかおぼろげになっていっているのだろう。手のひらに書かれたえみちゃんの文字をぎゅっと握りしめて必死に訴える。
 ひとり「えみちゃん」の記憶を保持している理由はひとつ。
 えみちゃんにごめんなさいとあやまりたいから。
「安心してください。
 えみちゃんは私達がお助けしますので」
 珠緒ははっきりと少女にそう言った。蛍もまた気持ちはおなじだろう。
 少女は何度もお辞儀をしてありがとう、と泣いた。

GMコメント

 ぬめてつです。
 EXからのご縁ありがとうございます。
 再現性東京2010でございます。夜妖をやっつけてえみちゃんと少女がなかなおりできるようにしてあげてください。
 敵は
 
 ■登場人物
 少女
 ゆかりちゃん。小学4年生です。
 友人のえみちゃんと喧嘩したその日、えみちゃんは行方不明になりました。
 えみちゃんにごめんなさいしたいです。

 えみちゃん
 ゆかりちゃんのお友達です。
 行方不明になりました。クラスメイトはおろか彼女の存在は親ですら忘れています。
 えみちゃんは賽銭箱の中に隠されているようです。

 ■ロケーション
 石階段の上にある古ぼけた神社。
 境内には社と古い賽銭箱があります。
 石階段の両わきには暗い森。誘うかのような狐火が頂上まで続いています。
 石階段の一番上には赤い鳥居がひとつ。そこから先は ”アレ ”のテリトリーになります。
 2ターン毎にランダムで一つずつ解除できないBSが積み上がってきます。対応防御があっても適用されます。

(フィールド効果ですので、鳥居をでて1ターン待機(主行動を消費)するたびに最初の一つから順番に一つずつリセットされます。鳥居を出ている間は攻撃もされませんが敵に攻撃や自分含め味方に回復行動などをすることはできません)(←2020/10/30:補足追記)
 【火炎】【業炎】【凍結】【痺れ】【乱れ】【崩れ】【窒息】【泥沼】【停滞】【不吉】【不運】【呪い】【致命】【怒り】【出血】【流血】
 時間は夕暮れ時。時間がたてばたつほどに暗くなっていきます。
 テリトリー内の広さは20*20メートルほどです。
 

 ■敵
  ”アレ ”
 不定形の影のような存在です。
 無邪気な噂話が形を得た夜妖です。
 賽銭箱のえみちゃんの生気を吸収することでパワーアップします。1ターン毎に攻撃力が上昇していきます。
 2ターン毎に夜闇に紛れ回避が10ずつ上がっていきます。
 14ターンでえみちゃんの生気はつきてしまいます。そうなった場合 ”アレ ”は不定形から 夜妖「えみちゃん」になってしまいます。
 倒す前に賽銭箱を狙うとえみちゃんを殺そうとします。

 遠2までの遠距離攻撃。近接範囲攻撃。至近高火力単体攻撃などがありますが、BSはついていません。

 体力は高め。回避および攻撃力は時間ごとに上昇します。命中はそこそこ。防御力はそれほど低くありません。
 えみちゃんへの生気の吸い取りを2ターン分伸ばすことでHPの半分を回復することができます。
 
 賽銭箱のえみちゃんに的確な言葉をかけることができたら、PC一人につき一回だけすべてのBSが解除されます。(←2020/10/30:補足追記)
(かけなくてもOKです。タイミングは指定したほうが的確に対応できるでしょう(例)BSが5つ重なった時点で声掛け))
 ほぼ同じ内容の声掛けの場合は先に声をかけたPCだけ効果を発揮します。
(指定がない場合には指定が有る方のほうが優先順位は高くなります)

 EX 
 こっちにおいで
 全体高火力攻撃です。【呪殺】【必殺】
 BSが5つ以上重なっている状態で食らうと戦闘不能になります。
 10ターン目以降の攻撃はすべてこっちにおいでにになります。
 
 めんどうですが、友達同士が仲良くできるためにお手伝いをおねがいします。

  • 再現性東京2010:逢魔が刻にあいましょう完了
  • GM名鉄瓶ぬめぬめ
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年11月15日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護
※参加確定済み※
桜咲 珠緒(p3p004426)
比翼連理・攻
※参加確定済み※
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
カルウェット コーラス(p3p008549)
旅の果てに、銀の盾

リプレイ


 ゆかりちゃんはひどい。
 毎日通ってるんだもん。いままでそんな事なかったし、あの神社のカミサマは良いカミサマだもん。
 キツネさんを悪く言われて私もかちんときたんだとおもう。
 本当はわかってるんだよ。変な噂で心配してるだけって。でもあの神社はそういうのじゃないから。
 だから――。
 きつねさまおねがいします。明日、ゆかりちゃんにごめんなさいと言う勇気をください。


「ゆかりちゃんは心配してただけで喧嘩をしたかったわけじゃない。いつもの場所を悪くいわれて意地になってしまったんだ」
 『優心の恩寵』ポテト=アークライト(p3p000294)が呟く。自分にだってそういったことがないとは言えない。『白獅子剛剣』リゲル=アークライト(p3p000442)のちいさな一言が気になったりして意地をはって喧嘩になることもある。それは好きの裏返しなのだ。
 ポテトに服の裾をつままれたリゲルはそうだねと頷く。
「仲直りできぬままに別れてしまうのは一生の心残りになるだろう。たとえ存在を忘れたとしても心に棘がささったまんまになる。
 子供を守るのは大人の義務だ」
 リゲルの言葉にポテトは強く仲直りをさせなくてはと思う。
「絶対にえみちゃんを助け出してあげよう!」
 『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)は皆を。そして自分を克己するためあえて大きな声で宣言する。
 もし、自分の大事な友達が帰ってこなかったら。それどころか大切なものを忘れてしまったとしたら――。そんなぞっとしないことはまっぴらだ。
「ふたりともきっと……今はとても辛い。二人共に救いが必要なのだわ」
 焔とは一転、静かな闘志を燃やすのは『嫉妬の後遺症』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)。誰かが困っていると手を出さずにはいられない華蓮は多少おせっかいだと思われても二人が仲直りする姿がみたいのだ。
「幼い言葉とはときに悲劇を生むであります」
 幼い子に己の言葉に責任をもてというのは厳しすぎるだろう。相手の言葉の裏など読むことなどできれば喧嘩などしないはずだ。ソレができないのが子供。そこに罪はない。
 悪いのはそれを都合よく利用するものだ。
「――ゆえ、騎士エッダ。推して参るであります」
 歩を進める姿はまるで主に傅くメイドのようで。――そう言葉にすれば本人『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)は断固として否定することだろう。
「ゆかりちゃん、すごいな」
 『新たな可能性』カルウェット コーラス(p3p008549)はぽそりと羨望の言葉を漏らす。
 母親ですら忘れた少女を唯一人覚え続けている。掌の名前をまるで宝物のように抱きしめていた。なぜそんなことができるの? そんなにすごい関係なの?
 友達は仲良くする。それは知っている。
 お互いで支え合って。それが友達するということなの?
 ボクも友達のこと、もっと知る、したい。そうすれば、ボクの友達ともすごい、関係なれるのかもしれない。
 自問自答に答えるものはいないけどでも。カルウェットは決める。
 二人を絶対に助け出すと。
 

 境界線。それは現と幽世を明確に分けるライン。そのラインは超えてはならない。それを超えるという概念が強力な夜妖を生む。

 それはあくまでも推測に過ぎない。今、考えるべきことは少女たちのお願いのこと。
 流した涙の意味をを忘れてしまわないように。『二人でひとつ』桜咲 珠緒(p3p004426)は解決を強く願う。
 ゆかりちゃんの涙は本物だった。だから――。その涙に誓って。
 奇しくも『二人でひとつ』藤野 蛍(p3p003861)もまた同じことを思う。二人の『巫女さん』の視線が交差する。二人は同時に頷いた。


 絶対に助ける。彼らイレギュラーズの想いはみな合致している。
 ならば。
 皆駆け足で神社へとつながる石段を駆け上がっていく。
「敵は正体不明。捜し人は囚われの身。もうgo for broke! ってとこね」
「砕けちゃだめですからね?」
 発光で夕闇を照らす蛍の軽口に珠緒はすかさずツッコミをいれた。

 誘蛾灯のような狐火は石段の頂上まで続く。
 ふわふわ、ふわり。
 さあおいで。

 とん、と最初のひとり、焔が『テリトリー』に足を踏み入れる。
「うわっ、なにこれ?」
 肌にまとわりつく不快感。此岸と彼岸。明確に彼岸に踏み入れたことがわかる。どうしようもなく不安になってくる。
 焔はパァンと頬をたたき、正面の神社を見据えれば、賽銭箱の前に揺れる黒い人影――”アレ ”。
「○♯88****」
 ”アレ ”がイレギュラーズたちに呼びかける。意味はわからないが深いな気持ちは募っていく。
「最初から速攻でいくぞ!」
 リゲルがその類まれない統率力でもって皆を鼓舞する。事前のブリーフィングを思い返す。大丈夫だ。手順はしっかりと入っている。
「いる。えみちゃんは賽銭箱の中!」
 蛍の感情探査は恐怖の感情を賽銭箱のなかに見出した。
「同じくセンサーもそこを指し示している」
 蛍の言葉にリゲルも同意する。
「ではグローバルにスタンダードにスマートに」
 とん、とエッダは地を蹴るとアレに会敵し――。
「未だ姿すら固定できませんか?」
 挑発する。
「珠緒さんっ」
「はい! 蛍さんの分も合わせて叩きつけてきます!」
 蛍のエールを受け、珠緒の桜花の刃が輝き、アレに着弾する。
「我が血の桜花を舞わせ、黄昏の領域を塗り替えて見せましょう」
「やるねっ! ボクもいくよ! 最初から全力全開っ!」
 カグツチ天火を構え、焔がその名の通り炎焔のような苛烈さで飛び込んでいく。
「めんどくさい、する」
 カルウェットが銀糸を閃かせながら踊るようにタイラントシールドを押し付けるような形で突っ込んでいくのに合わせて、リゲルは中距離から魔性の顎を放つ。
「d.mcだそんb%%%%%」
 飛び込んできたアタッカーたちをまとめて薙ぎ払うかのようにアレは腕のような部分を振るった。
「まかせるのだわ!」
 華蓮とポテトの役割はヒーリング。彼女ら二人は攻撃手より、より綿密なプランを立てている。
 2ターン毎にテリトリーに交代で出入りし、要である彼女らが致命的なBSを受けることなく戦うこと。
 大丈夫だ。一人でも回復は事足りる。
「――――ゥ!」
 夜闇が質量を帯びたかのような錯覚。
 アレはイレギュラーたちの攻撃を見切るかのような動きを見せる。事実ダメージの入りが浅い。
 それに対してアレからの攻撃は先程より深く重くなってきている。
 華蓮の頬に汗が流れた。今はまだ良い。なんとか回復できる。
 しかし、このあとは? このテリトリーにいるという理由からだけではない不安が華蓮の心を締め付ける。
「********」
 アレが何らかの言葉を発する。その瞬間テリトリー内のイレギュラーズが切り刻まれ、出血した。
「……っ!」
 華蓮は皆を回復したい気持ちを強く抑え、ポテトと交代する。
「いまのはBSなのだわよ。思いの外火力の上がりが大きいのだわ。足りなくなったら私も出るのだわ」
「わかった。華蓮は出血を回復するんだ」
 ポテトは急ぎ皆のもとに向かう。
「リゲルっ!」
「大丈夫。エッダさんがよく耐えてくれている」
 リゲルはポテトを振り向かずに端的に状況を伝える。
「ボク、イモータリティある。エッダ治して」
 最前線でダメージをうけるカルウェットはポテトに言うと、自己修復をかける。
「まだいけますが、最善にかけるのがメイ……騎士です。お願いします」
 エッダを厄介としたアレは彼女に集中して攻撃をしかけていた。スイッチタイミング間際ではあるが時間が伸びるのであればそれは重畳。
 タンカーは耐えてこそなのだ。
 焔はギフトの炎をアレに付与しようとするが不定形のアレは揺れて炎をけしてしまい、お返しにと言わんばかりに業炎をイレギュラーズに返す。
 焔は炎でやり返されたことに舌打ちするも、すぐに気持ち切り替え紅蓮の桜を咲かせることに注力する。
 珠緒は光撃を続けるが未だ終わりはみえない。
 増えていくBSは焦りもまた呼び起こす。
「大丈夫、ボクがいるから!」
 蛍が不安に揺れる珠緒に声をかけた。
 そうだ。私にはこんな素敵な友達がいる。
 もし喧嘩したって仲直りできる。
 それすらできないえみちゃんとゆかりちゃん。このまま終わらせるわけにはいかない。
「はいっ、蛍さんがそばにいてくれるからっ!」
 珠緒は無理にでも笑って蛍に答え、光撃を続ける。
 交代で抑える方、共に力を振るい、傷を癒やし戦ってくれるみなさんが。
 そして蛍さんがいるのだから。
 珠緒はアレを睨みつけた。
 アレはえみちゃんの生気を吸っているためなのだろうか、ゆっくりと大きく、そして具現化していく。
 だというのに攻撃は次第に当たりづらくなっていく。イレギュラーズは焦りを強めるが、作戦を完遂させるため、自分がやるべきことを続ける。
「エッダさん、交代」
「わかりました」
 ひきつけ役がエッダから蛍にスイッチする。
 まだなんとか回復の手は一人でも間に合うが、あと数ターンもすれば、間に合わなくなるのは明白だ。
 ポテトは歯を噛みしめる。嫌な汗が吹き出してくる。武器を持つ手が滑りそうになるのを強く握りしめ回復を皆に施した。
「あっちも、やっかい」
 厄介な自分を自称していたカルウェッタも小さく愚痴を漏らす。
「交代なのだわっ!」
 鳥居の向こうから華蓮が叫んだ。
 今はダメージ量が間に合わなくギリギリのライン。ポテトは一瞬残ろうと逡巡するが先程うけたBSは不吉だ。それは回復手にとっては致命的にもなる。
「わかった、あとは頼む!」
 華蓮とポテトがすれ違う。
 リゲルが中距離から近距離に踏み込み蛍と抑え役をスイッチする。
 抑え役のスイッチが早くなってきている。
 これはいい状態とは到底言えないだろう。
 それでも。
「俺は仲直りした二人の笑顔がみたい!!」
 それはきっと幸せな未来。
 諍いはお互いをわかり合うため。
 忘れてしまったら、諍いがあったことさえなかったことになるのだろう。
 そうなればゆかりはまた笑顔を取り戻すだろう。
 それではダメなのだ。ちゃんとわかりあった笑顔がみたい。
 剣が騎士の願いによって輝く。えみにヒカリよ届けと。
「あっ! えみちゃんの感情がすこし変わったみたい!」
 蛍が叫ぶ。
 それが契機。
「良いのか?
 貴方「も」彼女に謝ることができなくても」
 剣戟のなかエッダの言葉は凛と響く。
「誰かのちからを借りることなく、それを成せ。
 彼女は貴方の言葉を待っているのに。
 このままでは貴方は死ぬだろう。
 心に怒りを灯せ。
 抗ってやれ。
 私は、生きるのだと!!!」
 力強いエッダの言葉は賽銭箱のなかうずくまる少女にたしかに届く。
 その証拠に、エッダの体の重さはなくなっている。
「ゆかりちゃんも戦ってる、えみちゃんも戦う、すべき。
 友達のちから、みせる、して」
 カルウェットはそれが見たい。友達のちから。絆とよばれる形ないもの。
「すぐにボク達が助けてだしてあげるから! 辛くてももう少しだけ頑張って! 最後まで諦めたらダメだよ!」
 焔が真っ直ぐな言葉を放つ。
 それは嘘偽りなどない確かな未来を約束する言葉。
「えみちゃん……珠緒は、ゆかりちゃんと約束したのです!
 貴方を取り戻すと!」
 ことさら珠緒はゆかりの名前をゆっくりと力強く放つ。

 ぱきん。賽銭箱に罅がはいる。
 ああ、あれは友達と喧嘩してしまった罪悪感が形作った怪異だと珠緒直感する。
 賽銭箱は閉じこもることで自分を守る殻。と同時にこの神社の守り神がせめていつも参拝にくる彼女を守ってくれた力も感じる。だからえみちゃんの言っていた、この神社は大丈夫であることもまた正しかったのだ。
 神社を穢しそして罪悪感を利用したのが『アレ』。
「皆さん、そのまま言葉をかけてください!」
 利用すべき罪悪感を消し去れば、きっと――。
 珠緒の呼びかけに蛍は頷くと叫ぶ。
「えみちゃん、必ず助けるわ!!」
 ぱきん。罅が増えていく。それはイレギュラーズにえみが答えた証なのだ。
「挫けるな、諦めるな。絶望するにはまだ早い。
 夜闇が道を閉ざそうとも! 俺達が光でこじ開ける!」
「帰ったらゆかりちゃんと仲直りしよう。ゆかりちゃんはえみちゃんを心配して待っているんだ」
 リゲルと境内に飛び込んできたポテトも続く。
「帰ったら、まずはゆっくり休みましょう。美味しいご飯を用意するのだわよ」
 私の作るごはんは美味しいからと『ローレットの母』はチャーミングに笑った。
 瞬間、全員の体の重みが消えてなくなる。
 彼らは大きく頷くとアレの消滅を成すため戦う。
 アレは大きく息をすったように見えた。


『こっちにおいで』


 たったひとつだけ「アレ」は理解かのうな言葉を発した。

『こっちにおいで』『こっちにおいで』『こっちにおいで』『こっちにおいで』『こっちにおいで』『こっちにおいで』

 呼び声。
 だが――。
 えみにも、彼らにも。その言葉は通じない。
 
● 
 そうなんだ。
 ゆかりちゃんも、ごめんなさいしたかったんだ。
 だったら、わたしも、まけれない。
 きつねさまありがとう。わたしもちゃんとごめんなさいできるよ。


 アレは最初からなにもなかったように溶けて消えた。
 噂と罪悪感。
 そのうちのどちらかが失われればもともと不定形であやふやな存在であるアレはその姿を保てなくなるのが道理。
 イレギュラーズは呼び声をはねのけ、アレを消滅させることに成功した。
 賽銭箱の前には少女が倒れている。あれがえみちゃんだろう。
 ポテトは急ぎかけよると、少女を抱き起こし、抱きしめると温かいのみものを手渡す。
 彼らが帰り道を送りながらえみに状況を説明すれば、えみは何度もおじぎをして礼を言う。
 仲直りを見守るというリゲルとポテトの言葉にえみは首をふり、エッダを指差す。
「あのメイドのおねえちゃんが誰の力もかりずにやれって。だからできるよ」
 指さされたエッダはメイドじゃねえよといい掛けて、照れ隠しをするかのように優雅に完璧なカーテシーをした。
「仲直りするにしても一旦落ち着いて休んでからでもいいのだわ」
 言外に無理をするなと華蓮が言えばえみはわかってます、と元気に答えた。
「ゆかりちゃん、えみちゃん、笑っておしまい、それがよい」
 自分にもそんな友達ができたらなとカルウェッタは思う。
「おねえちゃんたちありがとう!」
 そういって帰っていくえみはすっきりとした顔をしている。
 明日、ゆかりにあやまってそして、きっと仲直りできるだろう。
 
 えみの後ろ姿をみて、焔は再度誓う。
(えみちゃんもゆかりちゃんも頑張った。
 だから次は私の番だよ。絶対に連れ戻すから待っててね)
 焔はまるで宝物のように友人の名前を呟いた。

「それにしても。
 アレは今回は消えたとはいえ――。
 噂話はなくなりません。また噂話となにかが絡みついてアレが現れてしまうかも――」
「大丈夫。そのときはまた二人でやっつければいいよ」
 珠緒が神社を振り向いて、そう呟けば、蛍が笑って珠緒の肩を叩いた。

成否

成功

MVP

エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました!
 このあと、えみちゃんとゆかりちゃんはお互いごめんなさいして、仲直りできました。

 MVPはもっとも勇気をくださったエッダさんへ。
 とても心強い言葉でした。

 寒くなってきましたので、皆様お体にはお気をつけくださいませ。

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