PandoraPartyProject

シナリオ詳細

スイーツゴーレムの逆襲

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 イレギュラーズさん、ありがとうござりました
「なんかちがう気がする……」
 妖精サイズの机の前で、雷の気配を纏う妖精が小首を傾げた。
 お礼状を書こうとしているのに失敗ばかりだ。
 直接お礼を言いに行こうと誘われたこともあるのだが、内気なこの妖精にはあまりにもハードルが高い。
「ライちゃーん!」
「あそぼー!!」
 玄関ドアが元気よくノックされる。
 一度フェアリーシードにされてから、前にも増して気を遣ってくれている友人達だ。
「うん……」
 冒頭しか書けていないお礼状を片付け、雷妖精はふわりと浮かんで玄関に向かい、扉を開けた。
「ばあっ」
 変顔である。
 黙っていれば髪が艶々の美形妖精2人が全力を出した結果、気弱な雷妖精にとって刺激の強すぎる外見になってしまっている。
「ひぅっ」
 制御に失敗した雷が、2人の妖精をアフロ妖精に変えた。

●第一次討伐隊
「そこの馬鹿2人、少しは反省しなさい!」
 杖を持つ妖精が目をつり上げている。
「だってー」
「ライちゃん難しい顔してたから笑わせようかなって」
 善意ではあるのだ。
 友を助けるためイレギュラーズと一緒に戦った妖精でもあるので、徹底的に責めることも出来ずにずっとこの調子だ。
「ごめんなさい。2人の髪を」
 雷妖精が深々と頭を下げ、アフロ2人が気にしないでと本当に気にしていない態度で返事をする。
「そろそろ気分を切り替えなさい。多分誤報だけど敵がいるかもしれないのよ」
 杖を持つ妖精は一行の先頭に立っている。
 彼女もまたイレギュラーズと共に戦った1人であり、頑丈さには自信があった。
 だが、この相手は相性が悪すぎた。
「ぁ……」
 甘く爽やかな香りがきつい表情を蕩けさせる。
 山盛り生クリームの上にあるイチゴの香り。
 鮮やかに切り出されたパイナップルの香り。
 甘味が表皮まで表れたメロンの香り。
 どれもが魅力的に過ぎて、食虫植物に誘われる獲物のように誘導されていく。
「わーい!」
「食べられるモンスターだー!」
 先頭が陥落した後はもう駄目だった。
 アフロ2人が自分から匂いのもとへ近づき人間サイズのゴーレムに捕獲される。
 材料が生クリームや果実であるゴーレムは、小さな妖精達を仕留める術すら持っていない。
 けれど、妖精を虜にして人質兼護衛にするには、十分な能力を持っていた。

●妖精救出依頼
「妖精郷から依頼なのです」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は真面目な顔で写真を取り出した。
 特大サイズの生クリームショートケーキに襲いかかる妖精達の写真だ。
「錬金術ゴーレムの残党かどうか不明ですが、果物と生クリームで出来たゴーレムが妖精郷に現れたです」
 ローレットに頼まなくても大丈夫と出向いた妖精達が、ゴーレムに捕獲され洗脳された……ということになっている。
 甘さと美味しさに釣られて遊んでいるだけのようにも見えるが気のせいだ。きっと。
「1つめはショートケーキゴーレム」
 妖精に無惨に食い荒らされた、イチゴと生クリームとスポンジからなるケーキゴーレムだ。
 頭部にあたる特大イチゴが物悲しい。
「これは戦う前に自滅するかもです」
 写真には、マイフォークを手に襲いかかるアフロ妖精が2人映っている。
「2つめはパイナップルゴーレム」
 固い皮を剥いたパイナップルが素材のゴーレムだ。
「これは酸味が強いので不人気みたいなのです」
 小さな噛み痕はあるが他に傷はない。
 洗脳?された妖精を率いて妖精郷にある花壇を壊したり新築の妖精のおうちに悪戯書きするなどの悪行を繰り返しているらしい。
「最後にメロンゴーレム」
 表面の縞々も鮮やかなメロンからなるゴーレムだ。
 ユリーカは、妖精達が飢えた獣の目でメロンを見ている写真を示す。
 皮が固いなので、洗脳?された妖精達には中身を食べる手段がないようだ。
「近くにいる妖精を倒して、じゃなくて保護して、ついでもゴーレムも倒す依頼なのです!」
 とても馬鹿馬鹿しい依頼に聞こえる。
 だが洗脳?された妖精はかなり戦える妖精であり、イレギュラーズがゴーレムを倒そうとしたなら抵抗してくると思われる。
 ユーリカがイレギュラーズを見つめる。
 その瞳は、ボクにもお土産寄越せと無言で主張している気がした。

GMコメント

■成功条件:ゴーレム3体の撃破。
 妖精が食べてしまっても撃破扱いになります。


■ロケーション:芝生が広がる公園
 日差しが柔らかで、芝生に寝そべると快眠が可能です。
 <夏の夢の終わりに>で死闘が行われた場所に、柔らかな芝生が生えた場所でもあります。
 危険なものは既に取り除かれていて、戦闘に参加したハーモニアや妖精が時折訪れています。


■エネミー
 ゴーレムは撃破されて10秒後までは不思議な力で保護されていて、衛生面と鮮度面で問題はありません。
 妖精は救出対象でもあります。
●ショートケーキゴーレム
 最初は全高2メートルありました。
 最初は魅了の力もあったようです。
 現在は全高1メートルもなく、のろのろと歩くので精一杯です。
 ・攻撃手段なし

●パイナップルゴーレム
 攻撃手段は白兵しかないものの、回避、命中、防御技術、特殊抵抗などを高レベルで備えた強敵です。
 しかし思考ルーチンは残念な出来で、破壊活動のつもりで悪戯しか出来ていません。
 イレギュラーズが攻撃すれば本気で反撃します。
 ・Pパンチ 【物近単】
 ・Pキック 【物至単】【飛】 命中がとても低く、たまに転倒します

●メロンゴーレム
 高品質メロン複数を素材に製作されたゴーレムです。
 見た目は薄装甲ですが防御技術は高く、香りの効果も強烈です。
 ・甘い香り 【神中範】【混乱】【狂気】

●アフロ妖精
 とてもしぶとい(EXF100)。
 2人組です。状態異常から回復しても、ゴーレムを守ろうとするかもしれません……。
 ・まとわりつく 【無】【怒り】
 ・ショートケーキを狙う
 ・メロンの隙をうかがう

●ライちゃん(雷妖精)
 フェアリーシードから回復した妖精です。
 ノーコン(FB高い)。
 イレギュラーズが状態異常から回復させると普通に回復します。
 ・いかずち 【神遠範】【不殺】とてもつよい。HPを0にした相手の髪をアフロにします。

●杖持ち妖精
 ダイヤモンドの髪を持つ魔法使い妖精です。
 【物無】の障壁と【神無】の障壁の両方を使いこなす凄腕ではあるのですが、状態異常に弱いです。
 特にイケメンと甘い物に弱い。
 ・ゴーレムを庇う
 ・ショートケーキを狙う
 ・メロンの隙をうかがう

■他
●妖精さん達
 戦場から少し離れた場所から様子をうかがっている妖精さん達です。
 4人の妖精の友人もいて、4人の性格や現在の心境を正確に解説してくれます。
 甘い物を振る舞われると非常に喜びます。

●戦闘以外の行動
 戦闘以外に力が入ったプレイングの場合、その方の戦闘描写は薄めになります。
 料理もパーティも、妖精と親睦を深めるのも大歓迎です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • スイーツゴーレムの逆襲完了
  • GM名馬車猪
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年10月31日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

クロバ・フユツキ(p3p000145)
深緑の守護者
クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)
安寧を願う者
オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
鏡花の矛
マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
マギー・クレスト(p3p008373)
マジカルプリンス☆マギー
トスト・クェント(p3p009132)
星灯る水面へ

リプレイ

●妖精のいたずら
 ぶっといクレヨンで白色を塗りつけ、ジョッキから豪快に零れる泡を描く。
 凄くイイ顔で酒を酌み交わす妖精とイレギュラーズ達が、新築妖精ハウスに描き込まれた。
「すごーい!!」
 一番喜んでいるのが妖精ハウスの住人だ。
 もっと描いてとはしゃぎ、ボクのお家にも書いてと隣の住民も騒ぎ出す。
 これを1人で描き上げたのは『木漏れ日妖精』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)。
 依頼を請けてやって来た、ローレットのイレギュラーズである。
「これはいったい」
 『小さな決意』マギー・クレスト(p3p008373)が予想外の展開に少しだけ動揺する。
 オデットのお陰で標的であるゴーレム3体が警戒を解いている。
 だが、あまりにも馴染み過ぎではないだろうか。
「スイーツなゴーレムがいることにもビックリしましたが……」
 気を取り直して考える。
 オデットに対抗して絵を描く妖精達から、ゴーレムと同じ甘い香りがする。
「ボクも食べてみた……こほん、いけません! ボクはお仕事できたのでっ」
 ちらちらとケーキやメロンのゴーレムに目が向いてしまうのも仕方が無い。
 凝視して涎を垂らしている、黙っていれば可憐なギャラリー妖精達よりはるかにマシだ。
「お願いしますね」
 ささやかなプレゼントを添えてお願いをすると、見物客妖精がゴーレムから離れた。
 『黒裂き』クロバ・フユツキ(p3p000145)が堂々と、真正面から討伐対象に迫る。
 ほのぼの空間に巻きこまれていたゴーレム3体は反応が遅れた。
「どうもお初にお目にかかります。しがないバトラー、クロバ・フユツキと申します」
 危険な香りのするクロバが恭しく一礼すると、妖精の女性陣から歓声があがる。
「お菓子に合うおいしいお茶も用意してますよ。お酒はまだ日が高いのでご用意することは致しかねますが……」
 お菓子と聞いてアフロ妖精2人組が飛んでくる。
 アフロより多少理性的な魔法使い妖精は少し警戒している。
「私の用意したものでは不足でしょうか?」
 力不足を嘆く控えめな態度を装うと、魔法使い妖精が障壁を消し無言で化粧と髪型を直し始めた。
「食べられるゴーレム、ですか…」
 『罪のアントニウム』クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)は少し距離をとって観察している。
 ときどき訳の分からないことが起きるのが混沌という世界だが、今回もなかなか強烈だ。
「この前まで辛い戦いの続いていた妖精郷を思えば、とても平和な事だと思うのですが……」
 あの戦場とは正反対の平和な光景だ。
 しかしゴーレムがいつまでも大人しくしているとは思えない。
「目を覚ましてください。それはお菓子じゃなくてゴーレムですよ。倒さないと危ないですよ」
 心が弱った幼子に対するように、全身を鮮やかな雷で包む妖精へ語りかける。
 警戒されないように気を付け、そして何より慈悲と慈愛を以て、妖精が外から強いられた感情を取り除く。
「あ」
 雷妖精が正気を取り戻す。
 アフロな2人組は普段から状態異常じみた言動なので行動に変化がない。
 雷妖精ライは、ごめんなさいごめんなさいと謝り友達2人の側についた。ただ、これなら全力で攻撃してくることはないはずだ。
「おーい、一緒におやつ食べない? 美味しいものを食べるんだったらお茶の時間にしようよ」
 『よく食べる』トスト・クェント(p3p009132)が平和な顔でお菓子をほおばる。
 一見平凡な糸目に見えるが、魔法使い妖精のイケメンセンサーは惑わされない。
 異国を感じさせる美形、しかも服から覗く腕には実戦的筋肉もついていて実に良い。
「こんなバタバタしてちゃゆっくり味わえないし。どうせだったら、ちゃんと君と顔みてお喋りしたいな」
 まだ手をつけていないお菓子を配り、ぐいぐい距離を詰め、バトラーに扮したクロバをちらりと見る。
 とても手慣れていて、ダイヤモンドの髪をした彼女がふらふらと近づき、優しく捕獲された。
「これが本当のハニ―トラップってか? ……面白くないし上手くも無いな、忘れてくれ」
 『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)はお菓子を押しつけ代わりに杖を取り上げる。
「ったく、何と勿体無い」
 ケーキも果実も良い出来だ。
 ゴーレムでないなら世界も確保に向かっていただろう。
「甘味好きとはいえ俺はこういう系のは食べる気しないんだよ。衛生面で問題ないとわかっててもなぁ」
 『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)が軽く肩をすくめる。
 食の趣味とはそういうものだ。
 万人に受け入れられる食など存在しない。
「さっさと討伐するとしよう。妖精たちは食べたがってるみたいだし」
 負担の大きな術を、豊富な魔力量を活かして軽々と使う。
 イレギュラーズが放つ威圧感が増したのに気付き、ゴーレム達が慌てて警戒するが遅すぎる。
 操った?妖精とは分断され、イレギュラーズにより完全に包囲されていた。

●せんとーかいし
「大人げない気もするがね」
 『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)は戦いで手は抜かない。
 黒きマナを活性化させることで魔力運用効率を向上させ、負担が重いはず術を次々に行使する。
 妖精達が何度狙っても内側まで届かなかったメロン皮へ深く鋭い傷が刻まれる。
 半透明の果汁がとろりと垂れ、芳醇な甘い香りがマルベートの背後にまで広がる。
「時間をかけて楽しむのも悪くは無いが」
 悪魔が舌でメロン汁を味わい、耳で妖精の様子を探る。
 これまでの数倍濃い香りに気付いて、観客妖精達がじりじりと距離を詰めてきていた。
「クロバ」
「任された」
 マルベートによる援護を受けたクロバが仕掛ける。
 パイナップルゴーレムがメロンゴーレムを庇い、庇うだけでなくクロバを狙って拳を突き出す。
 硬い表皮で覆われた拳はクロバに浅くない傷を与え、しかし自らも深手を負ってしまう。
「良い攻撃だ」
 鬼気を覚醒させる。
 黒き業火が太刀とガンブレードを覆う。2つの刃による連撃が炎と共にパイナップルを痛めつける。
「残念だけどあんたの香りに惑わされるような妖精じゃないわよ?」
 オデットが空からゴーレムを見下ろす。
 メロンゴーレムが意図的に放つ甘いブレスはオデットには通用しない。この外見と言動ではあるが欲望に流されない性質なのだ。
 背中で光る羽より大きな魔法陣が多重に展開。
 それぞれ異なる4つの呪いをメロンに届かせ表面を燃え上がらせた。
「甘い香り……美味しそう、こほん。我慢我慢ですよ、ボク!」
 マギーは状態異常に対してあまり強くない。
 だから、メロンの匂いは届いてもメロンブレスは届かぬ遠距離から見えない攻撃を飛ばす。
『おーっとだんだか分からないがメロンに効いてるぞーっ。がんばれー、メロン食べさせろー!!』
 どう見ても偉い人っぽい妖精が、メシの表情をして解説というか応援をしていた。

●ちょーり
 パイナップルの足が地面を蹴りつける。
 メロンゴーレムほどではないがパイナップルゴーレムも固く、重く、速度も結構ある。
 だが無意味だ。
 『狐です』長月・イナリ(p3p008096)が張った障壁は物理的な攻撃も霊的な攻撃も無効化する。
 可食ゴーレムに障壁破りのような高度な技が使えるはずもなく、イナリを追いかけながら全く効かない拳や蹴りを繰り出している。
「あの妖精達……」
 見覚えのある顔を見つける。
 あのときのような切羽詰まった表情ではないが、悪戯のつもりでしたことが大事になり焦っている顔だ。
「じっとしてなさい。手助けしてあげるわ!」
 啖呵を切るまでは良かったのにメロンの匂いに惑わされる。
 障壁は状態異常を素通しなのだ。
「予想以上に危険な相手だ。無理はするなよ。隙を見せずに押せば勝てる相手だ」
 世界が言霊を介してエネルギーを送る。
 受け取ったイナリが瞬く間に復調し、魔力を供給された面々がエネルギーを節約せず猛攻を継続する。
「いい加減になさい。そろそろ本気で怒りますよ」
 眼鏡の下からクラリーチェの鋭い視線が向けられる。
 内側から神秘的な力が噴き出す彼女は優しい修道女というより悪魔払い専門家にも見える大迫力で、まずライが怯えて雷を消し、次にアフロなゴム妖精2人が真面目な顔でその場に正座した。
「よろしい」
 メロンの至近に4つの壁を出現させる。
 内側に倒れた土壁に巻き込まれ、ゴーレムは身動きをとろうにもとれなくなった。
 トストが繰り出す魔力製の茨が、上方向からメロンを押さえつける。
 続いてトストが放った純粋による魔力による一撃は、ほぼ静止状態のゴーレムに直撃して表面に亀裂を増やす。
「っしゃあ! 10秒ルーーール!」
 地面に倒れて砕ける前に、トストが駆け寄り確保する。
 漏れた香りに、ギャラリーが騒然とした。
「なかなかの創り手だ」
 マルベートが満足げに微笑む。
 3体とも味は良い。そして、戦闘用ゴーレムとしてはかなり残念な出来だ。
「頂くよ」
 必死に防戦するパイナップル横を通り過ぎる。
 特大苺と残り僅かなケーキのゴーレムを抱え上げ、背後から吸血鬼の如く首筋に噛みつく。
 爽やかな酸味と甘味が、舌から鼻へと突き抜けた。
「どこを見ているの?」
 仲間を討ち取られて呆然とするパイナップルに、異界の神の力を我が身に宿らせたイナリが近付く。
「他者の領域に侵入したら迎撃されるのは当然だよね。……君達はそのまま見てて」
 わくわくするアフロときらきらした目で見てくる雷妖精に声をかける。
「すぐに終わる」
 霊力を雷電に変えて刃に纏わせ、強化された膂力と実戦の中で身につけた技で以て思い切り振り抜く。
 パイナップルゴーレムの固くしぶとい表面が薄紙で出来ているかのように切り裂かれ、奥まで見える大きな傷口が開く。
「ん? そっか、もう普通の果物に戻ったんだ」
 地面に零れた種がイナリのギフトに影響されて、急速に成長しようとしていた。

●うたげ
「おやつだー!!」
 妖精の群衆が押し寄せる。
 戦闘開始前より倍は増えていた。
「こちらへどうぞ、お嬢様方」
 再びバトラーに戻ったクロバは誘導……はしているのだが妖精の数が多すぎる。
 苺も生クリームケーキも瞬く間に妖精のおなかの中に消え、メロン争奪戦も熾烈を極めた。
 クロバは制止はせず茶の用意をする。
 甘いものの後には口の中の甘味を一度リセットする飲み物が欲しくなる。
 基本に忠実な行動は、多くの妖精達(主に女性陣)を惹きつける。
「ほら、甘いものばかりでも美味しいけど、せっかくだからより良い時間にするためにもうワンポイント加えていかないとね」
 クロバが煎れることで美味しくなったお茶に、妖精郷へ持ち込んだお菓子を適量ずつ添えていく。
 彼のお陰で、一定の秩序がなんとか保たれていた。
「お茶するならおれも入れてくださーい!」
「もう、仕方が無いわね。ほら恩人のイレギュラーズさんよ、通してあげて頂戴!」
 イケメンにとにかく甘い魔法使い妖精が、騒ぎの中心に連れて行く。
(参ったな。これじゃ情報屋にお土産を持っていくのは……)
 多少落ち着いたとはいえ妖精はメシの顔をしている。
 メロンを持ち帰ろうとすれば暴動、というより全力のだだこねや悪戯が始まってしまうかもしれない。
「みんな慌てず分けて食べてね。今タッパー開けるからお皿持って来て。1人1皿ずつだよ」
 欠食児童の世話をするお兄さんのようなトストを、まるで彼女のような顔をして見守るダイヤモンド髪の妖精であった。
 マギーは悪戯書きされた家の厨房で火を使う。
 出発前に乳兄弟が渡してくれたレシピに従い、砂糖とレモン汁を使い熱を与えてお菓子に変えていく。
「あまいかおり!!」
「練達の果物缶詰!?」
 家の外で妖精達が騒ぎ出す。
 窓にもみっちりと妖精が顔を並べてマギーを凝視している。
「全部調理するから、汚さないように協力して運んでね」
「はーい!!」
 妖精達はお菓子をくれるひとには従順だ。
 イレギュラーズ対ゴーレムの戦いを熱く解説していた妖精も、甘味に魅せられ濃い解説をしていた妖精も、率先してマギーを補助して楽しく会話していた。
「そりゃ私にゴーレムの攻撃は効かなかったけどお腹は空くに決まってるじゃない!」
 オデットは堂々と権利を主張する。
 ゴーレムを倒すのは仕事だ。
 だが倒して残った甘味の所有権は?
「いただきー!」
 イナリが生やした高級メロンを、アフロ妖精が素晴らしい連携で収穫する。
「あまーいっ!!」
 オデットが空から奇襲を仕掛けてメロンを奪取。
 アフロコンビの後ろであたふたしていた雷妖精にも押しつけた。
「ねぇ、あの髪型ってどうやったの?」
 アフロ2人はとにかく目立つ。
 真似をする気はないが興味はあるのだ。
「え、あの……」
 気弱な雷妖精は戸惑い、けれど逃げはしない。
 オデットは怖いひとではないと本能的に理解していた。
「良い機会だ」
 世界は無類の甘味好きだ。
 空間あるいは概念を付与術で弄ったポケットに、多少余っても構わないという勢いで大量に突っ込んでいる。
 日常的に甘味を楽しんだり緊急時のエネルギー補給にと役には立っているのだがもとの量が量だ。
 保存料が使われていない菓子を中心に、賞味期限がヤバいものが結構な量あった。
「餡子系と」
 右のポケットを指差す。
「生クリーム系だ」
 左のポケットも指差す。
 それぞれ指を使って広げてやると、お菓子に関しては鋭い妖精の感覚が、多種多様な甘味の気配に気付いた。
「わー!」
「きゃー!」
「私のものよっ!」
 手や唇についた果汁を拭いてもいない妖精達が、右と左とついでに前と後ろからも世界へ押し寄せた。
(そういえばあのゴーレムって自然発生してるのか? それとも誰かが造ってるのか? いや、もし誰かが造ってるんなら凄い才能の無駄遣いだな)
 どれが正しいとしても、混沌という世界は独特で底が見えない。
 世界は記憶にある異世界を思って遠い目になり、眉間に皺を寄せる。
「揺らすな。人を玩具にするんじゃない」
 お菓子がどんどん出てくることに気付いた妖精が、数人がかりでポケットを揺すって世界も揺らす。
「……っておい、そっちのポケットを漁るな! そこには俺専用の菓子が入ってるんだ!」
 胸ポケットを狙った妖精と世界の争いが始まり。
「そっちもダメだ! 今朝早起きして並んだ限定品が入ってるんだから!」
 隠しポケットを巡る決戦も始まる。
 決着には、時間がかかりそうだった。
「妖精さん達は急いで食べ過ぎです」
 クラリーチェは依頼した配達業者をこの場に呼び寄せる。
 箱の中に入っていても、砂糖と小麦粉とバターの良い香りがする。彼女作のケーキだ。
 そこにマギー作の甘い果肉を載せる。
 味と食感の種類を増やすため、小さく切ったパイナップルも併せて載せる。
「クリームを塗って、ゴーレムから切り落としたフルーツを盛りつければ立派なデコレーションケーキですよ」
(生クリームは念のため入れて置いた自作ですけどね)
「ささ、皆で食べましょう」
 歓声が響き、クロバがケーキにあう茶を入れ始めた。
「実は自邸の蔵から甘いぶどうジュースも持ってきたんだよね」
 食に対して貪欲な、それなり異常に美食家の悪魔の蔵である。
 飲兵衛なら興味はあるし機会があるなら絶対に狙うだろう逸品だ。
「塩辛いものも持って来ましたわ」
「これで人数分あると思うのですが」
 どこからどう見ても凄腕の妖精数人が唐突に現れ、マルベートと共に騒ぎの中心から離れて行く。
「なるほどね。ライちゃんはもう大丈夫なんだ」
 甘い果物と塩辛いナッツを肴に酒を味わう。
「ええ、元々素質はあった子ですから」
「良い経験をしたのでしょうね」
 何があったか察しているらしく、落ち着いた妖精達(ただし酒飲み)が優しい目を雷妖精に向けている。
「ライちゃんって実はエリート?」
 うまれは異世界でも体もメンタルも妖精であるオデットはすっかり馴染んでライと甘味の寸評をしあっている。
「わかんない。でも最近人前にでる仕事が増えてつらいの」
「あー、本読むのが好きなタイプかー。ほら飲んで。ジュースのんで忘れちゃお」
 オデットは、ライ達から元の世界に残したものを連想して、胸に小さな痛みを感じていた。

「生物が本当に死ぬ時は何時だと思う? 心臓の鼓動が止まった時? お墓に入った時? 自然に戻った時? 私はどれも違うと思う。生き物が本当に死んでしまうのは、皆から忘れ去られてしまった時、自分の痕跡が無くなってしまった時、それが本当の死だと思うのね」
 ひととは異なるうまれを持つイナリが、イナリとも別のうまれ方をして、戦い、去っていった少女を思う。
「彼女を助けられなかったのは無念だけど、私だけは、この世界の終わる瞬間まで彼女を記録していてあげないと……それが救えなかった私の贖罪かしらね」
 イナリは改めて心に刻みつけ、その場を後にした。
「君の命は本当にかけがえのないものなんだからね。沢山笑って愉しく生きてくれると私も嬉しいよ。消えていった命の分もね」
 マルベートはライに考えすぎないよう伝えて、立ち上がる。
「じゃあね。私も友達を連れて必ずまた遊びに来るからね!」
 妖精達は、今日も楽しく騒いでいる。

成否

成功

MVP

クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)
安寧を願う者

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ作成中、甘い物が欲しくてたまりませんでした。

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