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シナリオ詳細

静寂の青は漁日和……?

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 元々、海洋王国は陸地がほとんどなく、狭い国土への限界を常に感じていた為、海の向こうに新天地を求めたという歴史がある。
 それが最近になって、豊穣の発見に繋がったのは周知の通り。
 絶望の青と呼ばれた海域は今、静寂の青と呼ばれ、海洋王国の船がその先にある豊穣の地へと向かうことも珍しくなくなった。
 基本は王国の船がほとんど。民間の船で豊穣まで行く船は大型船などに限られているのは、今は静寂の青と呼ばれるようになった海にまだ海王種などが潜んでいるからだろう。

 ただ、この静寂の青に可能性を求める海洋の民やイレギュラーズが存在する。
 かつては絶望の青とも呼ばれたこの海は魔物が潜む恐ろしい海という認識でしかなかったが、漁場として利用したいという考えも出始めている。
 海洋王国の漁業は近海のものは今でもほとんど。
 いくら、静寂の青に可能性を見いだしても、危険はつきもの。民間で行うには護衛付きとなってしまい、採算が合わなくなってしまう。
「どの程度の海域で漁が行えるか、海域調査したいところですね」
 グリーフ・ロス(p3p008615)はとある依頼において、フェデリア島付近へと迷い込んだ狂王種を討伐したのだが、その依頼の折り、漁業を行うことができれば海洋の利益になるのではと考えたのだろう。
 とはいえ、漁業を行うに当たってはそれなりの調査が必要となる。何せ、狂王種などとの交戦を行う可能性があるということなのだから。
 グリーフは海洋の漁師達と話し合いつつ、依頼としてローレットに海洋調査を請け負うことにしたのである。


 依頼を受け、海洋へとやってきたイレギュラーズ達。
「確かに、遠洋漁業を行うという話は今でもあまり聞きませんね……」
 『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)はグリーフを介する形で出された海洋調査依頼を確認し、記憶をたどってそんな主観を語る。
「ですが、漁場が広がれば、海洋王国が潤うことになるのは間違いなさそうですね」
 アクアベルも海洋の出身とあって、国が潤うことは喜ばしいと考えている様子。自分みたいに人身売買などの対象となる子供が減るからという考えがあるからだろう。
 それはそれとして、調査に当たっては中型船から大型船を用意して当たりたい。現状、どれほど迄の海域が安全か、漁場として優れた場所なのかを確認する為には、小型船では厳しい。
「ある程度、しっかりとした船でないと、海王種に襲われた時大変ですし……。また、漁獲量がかなり見込めるのも大きいですね」
 それだけの漁場があると、この調査を行った提案したグリーフや海洋の漁師達も見ている。それだけの間、自然のままに海洋生物が生息しているのだから。
「何が起こっても対処できるよう、準備はしっかりとお願いします」
 説明の締めくくりに、アクアベルはそうイレギュラーズ達へと願うのだった。


 港で今回の調査に使うある程度の大きさのある船を選定したイレギュラーズ達は、10名ほどの漁師達の協力を得て出港する。
 一度、アクエリア島へと立ち寄った後、一行は静寂の青へと再度出港していく。
 漁師達も期待に胸を膨らませ、調査を開始する。
 一口に調査といっても、実際に漁網を海中へと投げ込むだけでなく、プランクトンや水を採取したり、音響探査を行ったりなど行うことは幅広い。
 ポイントを変えつついくつかの海域を調べたいところだが、あまり沖に出すぎると悪天候や海王種の襲来など危険が伴う。
 イレギュラーズ達はその調査を目にしつつ、有事に備えていたのだが……。
 突然、船が大きく傾いたことで、メンバー達は警戒を強める。
 何かが海から襲ってきている。そう感じた時にはもう遅く。
「あ、あれは、スパイダークラブ……!!」
 勢いよく海から這い上がってきたのは、海王種。どうやら、漁師達はその名を知っていたようだ。
 その巨大ガニは船の上へとのしかかり、やってきた獲物を食らうべく2つのハサミを大きく動かすのである……。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 こちらは、グリーフ・ロス(p3p008615)さんのアフターアクションによって発生したシナリオです。
 この先、海洋沖で漁を行う上での海域調査です。
 その最中でまたも狂王種と遭遇いたしますので、その討伐を願います。

●目的
 狂王種の撃破。

●敵……狂王種
○スパイダークラブ
 全長10mほど。タカアシガニとも呼ばれる巨大ガニです。
 基本、船にのしかかってきて、攻撃を仕掛けてくる形です。
 前後に動きつつ、2本のハサミで斬りかかったり、叩きつけてきたりする他、泡を吹きかけてきたり、船を大きく揺らしてきたりと多彩な攻撃方法を持ちます。

●状況
 海洋調査に当たり、海洋の港において、中型(全長20m程度)、大型船(全長40~50m程度)を借りるか、自前で用意して相手にすることになります。どういった船で調査に当たるかをどなたかが明記していただきますよう願います。
 アクエリア島に立ち寄った後、静寂の青(元・絶望の青)において海洋調査に当たっていたところで、狂王種であるスパイダークラブに出くわすこととなります。
 海から上がってきた敵は船にのしかかり、乗組員を襲いつつ船を沈めようとしてきます。
 その前に、このスパイダークラブの討伐を願います。

 事後は手近なアクエリア島に向かい、倒したスパイダークラブを食することができます。
 調理方法はお好みでどうぞ、調理者が不在の場合はアクアベル・カルローネ(p3n000045)がお邪魔してカニ料理を調理させていただきます。
 別途、交流希望もございましたら、そちらも応じさせていただきます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • 静寂の青は漁日和……?完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年11月02日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾
十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
クーア・M・サキュバス(p3p003529)
雨宿りのこげねこメイド
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
ロロン・ラプス(p3p007992)
見守る
浜地・庸介(p3p008438)
凡骨にして凡庸
グリーフ・ロス(p3p008615)
紅矢の守護者
オライオン(p3p009186)
最果にて、報われたのだ

リプレイ


 依頼を受け、海洋の港へとやってきたローレット、イレギュラーズ達。
「海域調査か……」
 暗色の衣装で全身を覆う『元神父』オライオン(p3p009186)は唯一、露出した右目で海の向こうを見渡す。
 ここから船上での行動となる為、オライオンは船酔いの対策も行っていた。
 同じく、防波堤で『戦気昂揚』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)と共に、人の姿をとった海種男性、『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)は海を見つめていて。
「遠洋漁業とは、また面白いことを思いついたモンだ」
 海洋という国は、かつて『絶望の青』と呼ばれた海域へと挑んだ歴史が長い。それが身に染みついている分、ほとんどの海洋民はそんなことを考えもしなかったと縁は語る。
「……ま、かくいう俺もその1人なんだが」
 その提案を行ったのは、アルビノの女性の姿を模した秘宝種、『その色の矛先は』グリーフ・ロス(p3p008615)だ。
 彼女のもたらした新しい考え方は、海洋の漁業の在り方をも変えようとしている。
「危険がなく安全に漁ができるならいいんですが、長く人の踏み入れていない海ですからね」
 イレギュラーズ達が海洋軍と共に乗り越えた海ではあるが、まだまだ海域としては未知の部分も多い。
 こうした調査を行うに当たり、グリーフは仲間と話して。
「無理をせずに、大きな船で調査する方針だわ!」
 小柄な白翼の飛行種女性、『嫉妬の後遺症』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)が確認の為、復唱する。
 一行は狂王種が来襲した際に戦闘場所を、また、漁や調査の機材搬入、有事の安全性を考慮して、大型船を借りて出港することに決めた。
 それに伴って、調査員や船乗りの手を借りつつ、一行は出港の準備を進める。
「海洋生物はあらかた飲み干した覚えはあるけれど、今となっては懐かしいね」
 見た目は大きな水まんじゅう、『ひとかけらの海』ロロン・ラプス(p3p007992)は元居た世界で自らの体が広がりすぎたことがある。
 その際、ロロンは数え切れぬ程の生物を飲み込んだことがあるらしい。
「さあ、今回も良いお酒のつまみ……もとい、糧食の供給源を探すのです!」
 猫の耳と尻尾の付いた『めいど・あ・ふぁいあ』クーア・ミューゼル(p3p003529)は、意気揚々とこの依頼に臨む。
 なにしろ、当地はただでさえ珍生物の跋扈する混沌の、さらに直近まで人の手の届かなかった魔境なのだ。
「色々、捜し甲斐があるのです!」
「未開の海……如何なる困難が待ち受けておるのか……」
 年齢に対してかなり厳つさを感じさせる『アルドーのお墨付き』浜地・庸介(p3p008438)もまた沖の方を見つめる。
 この場は歴戦のイレギュラーズもおり、庸介は彼らに対して敬意を払いつつ協調を重んじてこの調査の成功に尽力をと考えている。
「いい魚が仕入れられるようになりゃぁ、喜ぶ連中は大勢いるしな」
 そう言う縁自身は魚介の類が食べられないそうだが、望む人々の為に一肌脱ぐことにしたのだった。


 イレギュラーズ達を乗せた大型船は海洋の港を出て、沖を目指す。
 一路、アクエリア島へと立ち寄った後、船は以前「絶望の青」と呼ばれた海域「静寂の青」を目指す。
「落ちないようにだけ気を付けないとね」
 ロロンは別段泳げないわけではないのだが、水の身体を持つ彼は落ちたら誰も見つけられないと懸念していたのだ。
「これだけ大きな船なら、狂王種にも有利に戦えるでしょう」
 海域調査を行ったり、試しに投網で魚介の捕獲を試みたりする海洋の人々を見つつ、クーアは呟く。
 全長50mほどもある大型船は多少の波ではビクともせず、航海は非常に穏やかなものだ。
 イレギュラーズが本腰を入れて動く事態となるのは、十中八九狂王種の出現。
 それがこの船を揺らした場合、端の方の揺れはかなり大きくなるとクーアは予想し、乗組員達へと充分注意喚起する。
 また、クーアは船に備えてあった命綱や浮き輪、救命用のボートなどをすぐ使えるようにと、乗組員達へと依頼していた。
 他のメンバー達も、周囲の警戒を中心に動く。
 グリーフなどは保護結界を常時発動して船に傷がつかないようカバーをしており、警戒を行いながらも機材の移動や作業などの手伝いも遠慮なく申し出ていた。
 庸介はというと、ファミリアーを使って小魚に水中の索敵を行わせていて。
「……何かが浮上してくるぞ」
 エネミーサーチも働かせていた庸介は、海底の方から浮上してくる何かに気付き、全員へと襲撃に備えるよう声をかける。
「やはり、障害は先の個体だけではありませんでしたね」
 次の瞬間、グリーフが頭上へと勢い良く跳び上がってきたその巨大な生物を見上げる。
 それは、全長10mもある長い足を持つ大きなカニだった。
「イカ漁の次はカニ漁なのです?」
「ふーむ、カニか。今となっては懐かしいね」
 悠長に、クーアは飛び上がったカニに目を輝かせれば、ロロンもかつて体に含んだその味の記憶を思い返す。
「いつまでも、どうしても狂王種は出るだわねぇ……」
 そう言いかけた華蓮は、相手の立場からすれば、イレギュラーズ達こそ家に現れた敵といった認識なのだろうと思い至る。
「狂王種スパイダークラブ……奴さん、この船を沈める気か」
「今は、戦わないとだわね」
 すでに迎撃の構えをとる縁に続き、華蓮も臨戦態勢へと入る。
「デカブツが乗り込んできたか、喰われてやるわけにもいかん。抵抗させてもらうぞ」
 杖を手にするオライオンは、突然の出来事に調査員や船乗りが動揺しているのを目にする。
「俺達の後ろへと下がるんだ」
 敵の意識がそちらへと向くと面倒だと彼は瞬時に判断し、調査を行っていた人々を誘導していく。
 船の片側中央へとのしかかり、口を開く狂王種は纏めて食ってやると言わんばかりだ。
「こんがり焼き上げて、お酒と一緒に美味しく頂くのです!」
 海産物が好物なクーアは逆に喰らう気満々で飛び出す。
「未熟者であろうと出来ることはあるはず。タイ捨流浜地庸介、参る」
 庸介も仲間に続き、刀に手をかけて接敵していくのだった。


 巨大なカニ、狂王種スパイダークラブは大型船の上に陣取り、大きく揺さぶろうとする。
 敵は船を沈め、海に沈む乗組員を食らっていくつもりなのだろう。
 最も素早いクーアが船の破壊規模を最小限に抑えるべく、船の端でブロックを仕掛けて侵攻を食い止めようとする。
 全長10mもある巨大ガニだ。2つのハサミも相当な大きさとなっており、直接切りかかってきたり、叩きつけてきたりするだけでも相当なダメージとなる。
 それらを多少食らっても問題なく立ち回れるようにと、ロロンは自己再生能力を高めてから精神力を弾丸としてカニの胴体へと叩きつけていく。
「みんなが食べるのは主に脚の方だったはずだから、落としちゃもったいないからね」
 できるなら、皆が喜ぶように仕留めたいと、ロロンは気遣いも見せて交戦していた。
 大人リッチなチョコを口にした華蓮は、安定した回復力で仲間達の癒しに当たる。
 それだけでなく、彼女は防御もそこそこ得意だと自負しており、前線に立って仲間達のダメージの分散に当たる。
 ある程度、乗組員の避難に当たっていたオライオンも戦線へと加わり、彼もまた回復支援を基軸として行動する。
「側面には立たぬようにせねばな」
 蟹の習性として横移動の速さを警戒するべく、オライオンは敵の両サイドへと回り込まぬようにし、かつ狂王種からの距離を保ちつつ前線メンバーの回復へと注力する。とりわけ、その対象はクーアや華蓮だ。
 少し遅れ、グリーフもまたスパイダークラブが船上で暴れるのを抑えに当たり、愛銃「MITUKASA52 SPECIAL」で巨大ガニの硬い鱗を撃ち抜きつつ、動きを鈍らせようとする。
 敵の抑えは意識するが、火力で劣ると自認するグリーフは引き付け役を仲間に委ね、一歩引いて戦況把握に努めていた。
(今はまだ問題ありませんが……)
 グリーフが船上を見回せば、オライオンのおかげで乗組員は巨大ガニから退避しており、すぐに直接の被害が及ぶことはなさそうだ。
 仲間達が抑えてくれている間に縁が正面から近づき、青刀『ワダツミ』を手に変幻自在の邪剣を見舞う。
 刹那、巨大ガニが呆けたところを見計らい、庸介は甲羅の隙間目がけて刃を一閃する。
「…………!」
 やはり、殻の中への攻撃は効果が絶大。敵は明らかに足をばたつかせて苦しんでいた。

 序盤こそ、スパイダークラブを上手く足止めしていたイレギュラーズ一行だったが、敵は思った以上にしぶとく大型船へとしがみ付いていた。
 縁は自身のギフトによって船が波に煽られにくくしてはいたが、狂王種の怪力で船を揺らされる影響は避けられない。
 体勢が崩されたメンバーは皆銘々に立て直しを図るが、オライオンは乗組員の無事を確認する。
「大丈夫か?」
 自ら後方に下がって戦場付近に近づいてしまった者を、彼は再び後方へと下がるよう誘導していく。
 その間、暴れるスパイダークラブへと攻撃を続けるイレギュラーズ達。
 だが、ライトニングで巨大ガニの胴体目がけて牽制を仕掛けていたロロンは、2本のハサミによる強烈な連撃を受けて意識を失ってしまう。
 勢いづく巨大ガニはさらに近場へと迫っていたメンバー目がけ、泡を吹きかけてきた。
 オライオンはその際、刹那の疑似生命体をけしかける。
 僅かに敵を混乱はさせるものの、それでも牽制以上の働きは果たせず、生命体は消え去ってしまう。
 前線は依然として、クーアや縁がメインとなって支える。
 縁は殴り掛かってくる巨大ガニの攻撃を、自らの逆鱗でダメージを返してみせる。
 クーアはというと、素早さに任せた立ち回りで相手の侵攻を食い止める。
「極力動かさずに仕留めてやりましょう」
 縁が上手く相手を抑えてくれるのを確認し、クーアは前方へと霊薬を振りまき、目の前の巨大ガニへと炎と雷の奔流を引き起こし、撃破に注力する構えへとシフトしていた。
 抑えの分担にと前線にいた華蓮は回復の手が余れば攻撃を……と考えていたが、思った以上にメンバーの攻撃の手が足りず、苦戦を余儀なくされる状況もあって調和の力での回復で手が塞がってしまう。
 華蓮は抑え2人を回復しつつ、自らの体力は回復せぬ状況のままで戦線を支える
「……いい頃合いですわ」
 自身の負傷が深まってきた華蓮は底力を見せ、巨大ガニの攻撃を避け始めていた。
 しかし、巨大ガニの攻撃対象はメンバー達だけではない。
 この大型船を沈めれば勝ちとすら認識する狂王種は守りの硬いメンバー達を狙うよりも、大きく揺らす船の破壊を目指す。
 同時に、態勢が崩れる船の乗組員達。オライオンは前線メンバーが敵の前進を阻止しているのを見て、主として回復に動いていたようだ。
 しばし、攻防が続くものの、イレギュラーズも攻め手に欠け、なかなかスパイダークラブを攻め落とすことができない。
「中々倒れねぇな。タフなやつだ」
 続く攻防に辟易とする縁。徐々にダメージは与えているはずだが、目の前の敵は中々弱るようには見えない。
 そこで、縁が再び変幻邪剣を披露し、巨大ガニの思考を僅かなタイミング奪ってみせる。
 その隙を逃さず、庸介が飛び出して。
「狼藉もこれまで。成敗致す」
 これまで仲間達が身を挺して攻撃を繰り返してくれていたこともあり、庸介は全力で威力を込めた刃の一撃で巨大ガニの口を突き刺してみせた。
「………………!!」
 これまで以上に激しく暴れる巨大ガニは庸介へと泡を浴びせかけてくる。
「ぐ……っ」
 その噴射に耐えられず、後方へと倒れ込んだ庸介は起き上がることができない。
 仲間が落ち始める状況にまで陥り、イレギュラーズ達の疲弊もかなり大きくなっていた。
 加えて、狂王種は直接イレギュラーズを狙うだけでなく、船の沈没まで狙って攻撃してきている。
 その都度、グリーフは乗組員や機材が水中へと投げ出されていないかを確認して。
「身の安全、機材の固定を願います。できれば、豊水で泡を洗い出して下さい」
 グリーフは合間に乗組員達へと指示を出しつつ、自身も海中へと落ちてしまった乗組員達の救出へと当たる。
 船の損傷も小さくはない。長い足を活かし、スパイダークラブが意図的にあちらこちらへと攻撃した穴が開き始めている。
 クーアもそれを考えていたらしく、雷の奔流を巨大ガニに浴びせかけて自分達へと注意を引き付けようとするが、同時に縁が青刀で切り付けてから海へと飛び込むと、巨大ガニも海へと飛び込んでいく。
「脅威は確実に排除したいですね」
 グリーフも海中から回り込み、ブロックに当たる。
 自由にすれば、船底に穴を開けられてしまう。海中での抑えは必須だ。
 巨大ガニが水面の上まで浮上すれば、船上のメンバーも遠距離攻撃を仕掛けていく。船が直接攻撃されなくなっただけ、イレギュラーズ達にとって有利になったともとれる。
 泡を吹く巨大ガニ。攻撃していることもあるが、それ以上に体力的に厳しくなってきているのは間違いない。
 我が物顔で散々暴れた巨大ガニだったが、その動きも大振りとなり、縁はそれをしっかりと見切ってから腹目がけて強力な一撃を打ち込む。
「狙った相手が悪かったな」
「…………!!」
 大量の泡を吹くスパイダークラブは浮力を失い、海の底へと沈んでいったのだった。


 大型船のあちらこちらに穴を開けられはしたが、なんとかスパイダークラブを討伐したイレギュラーズ達。
「あれも、食べるんでしょうか?」
「もちろんだ、引き上げるぞ!!」
 問いかけるグリーフに、船乗りらは強く意気込み、彼女も巨大ガニの引き上げを手伝う。
 一行や乗組員達は海へと沈んだ巨体を網で抱える形で引き、アクエリア島へと運ぶ。
「あんなに大きいんだもの、なんだっていくらだって作れちゃうのだわ!」
 運搬する間、料理は得意な方と主張する華蓮はママとしての腕の見せ所だと腕を鳴らす。
「蟹か……食べた事はあるが、調理の仕方は任せる」
 調理ができないオライオンはそちらを仲間に任せ、先程の戦いに巻き込まれて怪我をした乗組員へと治療を施す。
「なんたってカニよ!!!!!! 中々の高級食材なのだわ!!!!!!」
 スタンダードに茹でるのも良し、お鍋に入れて頂くも良し。
 非常にテンションが高い華蓮に、イレギュラーズや乗組員達は調理を一任することに。
 アクエリア島へと到着すると、グリーフが大きな鍋と大量の水を用意する。
 巨大ガニは庸介が切り分ける手伝いをと一刀両断してみせ、さらに華蓮が小さく切ってから先程の鍋に火をかけてからぶっこむ。
「こうすれば、カニから沢山出汁が出るのだわ」
 それを、ロロンは戦いで負った傷を気にかけつつ見上げる。
 体に含んで溶かして食べるロロンは、殻でもなんでもいいようではあるのだが。
「せっかく料理してくれるという人がいるなら、気持ちは受け取りたいかな」
 一方で、カニは食べられないと辞退していた縁はすでに仕事終わりの酒をちびちびと口へと流し込む。
「狂王種とはいえ、これだけでかいカニが漁れるとなりゃぁ、魚市も盛り上がるんじゃねぇかね」
 狂王種がどれだけいるかはまだ不透明だし、それ以外の魚介類も静寂の青には多数生息しているはず。まだまだ調査はこれからといったところだろう。
「今回はなんとかなりましたが、やはりまだ、安全とはいい難いようですね」
 その間にも華蓮の調理は進み、鍋にお味噌も加えてしっかりと煮込む。
 器に取り寄せた後は、それぞれ好きな薬味を使って食べてもらう形だ。
「では、頂こう」
 秘宝種は飲食の必要はないが、グリーフはこれも経験だと前向きな態度を見せて、口にする。
 独特の味わいが口の中へと広がる。新鮮な魚介類の瑞々しさや香ばしさを実感し、グリーフも目を見開いていた。
 出された料理を受け取るオライオンやロロンも、カニの出汁をたっぷりを含んだ味噌汁を飲んで小さく息をつく。その味は格別だったようだ。
「いや、私はカニは……否、有難く頂戴したく仕り候……」
 仲間とはぎこちないやり取りをしていた庸介も容器を貰い、1人で黙々と食べていた。
 なお、クーアは一部を別途こんがりと焼き上げ、お酒と一緒に美味しくいただく。
 華蓮のカニの味噌汁と合わせ、クーアは満面の笑みで身が詰まったカニを存分に味わっていた。
 また、イレギュラーズからは要望はなかったが、乗組員達からあれこれと要望が出ていたこともあり、華蓮はそれに応えてカニ飯やサラダなどを作って提供していた。
「最後のシメは、勿論雑炊だわ!」
 彼女の一言に、縁は肌寒い時期に差し掛かってきたことを実感する。
(シンプルに鍋にして、締めに卵と白飯を入れて雑炊……定番だが、流行るかもしれん)
 ただ、その漁の度に駆り出されてしまわぬことを祈りつつ、縁はさらに酒を煽っていたのだった。

成否

成功

MVP

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍

状態異常

エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)[重傷]
波濤の盾
ロロン・ラプス(p3p007992)[重傷]
見守る

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは戦力的に厳しくなる中、敢えて海に敵を引き付けたあなたへ。
 今回はご参加、ありがとうございました!

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