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シナリオ詳細

再現性東京2010:みらいのあなた

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


『かがみよ かがみよ かがみさん――

 こんなウワサはご存じですか?
 深夜4時44分に合わせ鏡を覗くと未来の恋人が映るのだそう。
 剃刀を咥えて、洗面器一杯に張られた水面を覗くと、というバリエーションもありますね。
 今回のウワサは鏡です。そう。深夜4時44分……。
 さあ、アナタも試してみては?』

 そんなメールが届いたのは一日前だった。『占いメール』というサイトに気まぐれで登録し、定期的に届く占いを時々試す程度だ。
 どうした事かそのメールが気になって仕方がない。
 未来の恋人――と、その言葉を口にして鈴子は片思いの先輩の顔が浮かんだ。
 先輩だったらいいなあ、ともごもごと唇を動かした。
 姿見と、小さな鏡を一つ。合わせ鏡にセットした室内で鈴子はaPhoneに表示される時間をまじまじと見遣る。

 04:43……。

 もうすぐだ。

 04:44……。

 今だ! と滑り込んだ。鏡に向き合う。緊張したように顔を上げればそこに映っていたのは――


 aPhoneへと表示されたメールをまじまじと眺めていた音呂木・ひよのは「だ、そうですけれど」と、『鏡面の妖怪』水月・鏡禍(p3p008354)の事を見遣った。
「鏡に映るという噂は僕も聞いたことがあります。『同類』の方でしょうか?」
 旅人たる鏡禍は『姿見の怪』である。平面しか知らぬ彼にとって立体の現世は緊張の連続だが――そうしたウワサがあれば自身と同じ種を見つけた気がして心が逸るのだ。
「まあ、夜妖で、鏡禍さんと同種の存在ではないでしょうね」
「……そうですか」
 自分自身とてこの世界では旅人という種の一種だ。再現性東京で言う幽霊や妖怪と類と勘違いされては困る。夜妖であるというならば対処も必要だ。
「そう言えば、音呂木さんはどうやってメールを入手したんですか?」
「役に立つかと思って、流行の占いメールサイトに登録しました。捨てアドですが」
 転送しましょう、とひよのはメールを鏡禍へと転送した。ふと、彼女は「これで、夜妖を呼び出せますね」と微笑む。
「え?」
「だって、このメールを受け取ったという事は『召喚の第一関門』でしょう。
 そして、未来の恋人を見たいと念じて4:44に合わせ鏡に映るのを待つのですよ」
 そうすれば夜妖が召喚される。実に立派な召喚の儀だ。メールで相手に『呪いを送付する』というのは実に現代的だが理に叶っているという事か。
「一先ずは、4:44に人気のない場所で合わせ鏡を行う必要がありますね。
 ……学園の体育館など、でしょうか。あそこなら広々としていますし締めきれば不要な人間に見られることも防げるはずです」
 頷いた鏡禍。一先ずは、夜妖召喚の為にそのメールを必要な人員に転送しますとひよのは自身のaPhoneを振っている。
「それじゃあ、準備に移りましょう。音呂木さんはこれを試してみたんですか?」
「いいえ。情報を調べただけですよ。どのような夜妖が召喚されるのかと思って。
 まあ、召喚されたのは目玉だらけのいかにもといった夜妖だそうだそうですが……」
 ふと、気になって鏡禍はひよのへと問いかけた。本当に運命の人は映るのですか、と。
「さあ、どうでしょう?」
 嘘つきな巫女は揶揄うように笑っただけだった。

GMコメント

 夏あかねです。オーソドックスなホラーもいってみましょう。

●成功条件
 夜妖の討伐

●現場
 希望ヶ浜学園体育館。時刻は4:44間近。
 鏡を二つ、合わせ鏡になるように設置し、夜妖を呼び出す儀式を行います。
 皆さんのaPhoneにはひよのから噂のメールが転送されていますので誰が映ってもOKです。
 運命の人が映ったのかは……さあ、どうでしょう?

●夜妖『合わせ鏡の怪』
 4:44に合わせ鏡をすると未来の恋人、運命の人が映るというウワサでできた怪異。
 『恋占い』を配信するメールサイトのメールを受け取って『未来の恋人』『運命の人』が見たいと念じながら合わせ鏡をすれば現れます。

 非常に巨大な目玉だらけの夜妖が飛び出すそうです。
 対象一人の行動を『見』た2ターン後に『同様の効果の攻撃』を返します。ステータスは夜妖に準拠します。(ランダムで一名が選ばれます)
 夜妖そのものだけの攻撃はブレイクが付随する者のみ。基本は自付与で固めているようです。
 厄介な相手ではありますが、数で言えばイレギュラーズが上回ってますので短期決戦でささっと倒すが吉かも知れません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

よろしくお願いします。

  • 再現性東京2010:みらいのあなた完了
  • GM名夏あかね
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年11月01日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に
高槻 夕子(p3p007252)
クノイチジェイケイ
メイ=ルゥ(p3p007582)
シティガール
長谷部 朋子(p3p008321)
蛮族令嬢
鏡禍・A・水月(p3p008354)
鏡花の盾
鏡(p3p008705)
九重 縁(p3p008706)
戦場に歌を

リプレイ


 かがみよ かがみよ かがみさん――

 口遊めば余りに軽い其の響き。深夜4時44分の怪談と逢うが為に『シティガール』メイ=ルゥ(p3p007582)は眠気眼を擦って立っていた。良い子は何時もは夢の中。ぐっすり眠っているはずの時間だけれど、今日は仕事とやる気を満たす。
「未来の運命の人が見つかると聞いてやってきました! もー、あーしの運命の人ってどんな人だろうかって? そりゃもうイケメンでお金持ちで優しくて」
 占いを行って運命の人を見たいのは『女の子』らしい感想である。うっとりとスキンケアを完璧に澄ませてちょっとの『睡眠不足』も余裕でクリアの『クノイチジェイケイ』高槻 夕子(p3p007252)は『理想の相手』を想像しては笑みを零す。
「運命の相手、ねぇ。既に結婚している私に見えるもんなのかね? ……まあ、旦那は死んだから未亡人なんだがね今は」
 肩を竦めた『死神教官』天之空・ミーナ(p3p005003)に「そもそも」と唇を開いたのは『鏡の妖』である『鏡面の妖怪』水月・鏡禍(p3p008354)であった。
「本当に運命の人は映るのでしょうか? もし映るとしてそれは本当に運命の人なのでしょうか?
 ……と、噂話に考えを巡らせるのはここまでにしましょうか。確かめるのは『妖怪』の僕ではなくて『人』の役目ですから」
 自分は鏡には映らないだろうと、鏡禍が傍らで呟けば『鏡』と呼ばれた言葉にぴくりと反応を示していた鏡(p3p008705)が「ああなんだ」と胸を撫で下ろす。
「鏡鏡って聞こえるから私が呼ばれたのかと思ってましたが、おまじないの話でしたかぁ。
 お茶うけ程度に生徒の恋愛相談なんかも聞く事ありますけど……未来の恋人が気になるなんてぇ、子供は可愛いですねぇ」
 実に可愛らしい思春期の悩みである。最も、鏡からすれば余り興味も無いことだが、希望ヶ浜学園のスクールカウンセラーとしてはチェックしておきたい事項だ。
「それにしても『合わせ鏡』ですか、私が鏡を見たら『合わせ鏡』って事になりますかねぇ、どう思います?」
「それなら、僕もでしょうか?」
 首を傾げる鏡禍。確かに、と頷く鏡達の様子を眺めながら夕子は何かが可笑しいのではと首を傾いだ。噂話の占いを実践してみるという集まりであると思っていたが――どうやら興味の無い面々も多数存在している様子である。
「鏡の怪談かー。運命の人が映るっていうくだりも合わせて、あっち(地球)じゃありふれたパターンだよね」
 馴染みがあるなあと『蛮族令嬢』長谷部 朋子(p3p008321)は頷いた。ほっと、一息。確かに、ありふれた話であるから『肝試しでもあるのか』と夕子はうんうんと頷いた。
「でも向こうと違ってこっちは本物の魔法やモンスターがいるから、あながち嘘とも言い切れない……ていうか確実に"出る"ってわかってるんだから、実はかなりワクワクしてるかも! まぁ出るほうは確実でも運命の人が映るかどうかまでは半信半疑だけどねー、とりあえず試してみっか!!」
 肝試しの方に心を躍らせているのか、と『ささぐうた』九重 縁(p3p008706)はくすりと小さく笑った。
「恋ってやっぱり皆真剣になりますよね。恋に恋する女の子はやっぱり可愛くて。朋子さんや夕子さんがきゃいきゃいしてるのは……眼福、いえなんでもありません。眩しいですね?」
 旅人である縁にとって恋人やそれに類する物は『其の世界』に置いてきた。今でも大好き――けれど、帰る方法が無い以上は、と思えば考えるのも苦しくなると言うものだ。
「鏡。成程。よりにもよって、今回は合わせ鏡の夜妖か。
 鏡とは、古来より神秘と関わりが深い道具だ。それ単品だけでも、呪い(まじない)に使うのは危険だというのに。全く。化け物一体が出てくるだけで済んだのは、不幸中の幸いと言うべきか」
 溜息を吐いた『流麗花月』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)はそれが異界に繋がって居たや悍ましき呪いを喚んだならばどうするつもりなのかと告げる。
 だが――汰磨羈の言葉にぴたり、と動きを止めた者が存在した。aPhoneで時間をチェックする汰磨羈や眠たげなメイではない。そう。夕子だ。
「…………夜妖?」
「……そうだぞ?」
 ミーナの言葉にあんぐりと開いた口が塞がらぬ状態であった夕子は首を振った。
「ししししし知ってたもんね、そうだってことは! ……でも、見えるかもしんない?」
 信ずる者が救われるのか――は分からない。兎に角、目の前に存在するのが夜妖なのは確かなようだ。


 起きていなくてはならないと眼をごしりごしりと擦ったメイは「未来の恋人に運命の人と言われても、メイはよく分からないのですよ?」と首を傾いだ。
「……噂になるくらいですから、気になる人が多いのでしょうか?
 そんなことより、メイは美味しいご飯のお店を知りたいのですよ。激辛専門店なら特に嬉しいのですよ」
 頬を緩めたメイ。美味しいお料理を教えてくれる鏡なら元気いっぱいに対応できるけれど、と目を擦り欠伸を噛み殺したメイが小さく姿勢を屈める。
 朋子と夕子が囮役として儀式を行うのを眺める鏡禍は「何処から出てくるでしょうか……」と小さな声で囁いた。
「どうでしょうね……」
 朋子と夕子、二人の姿を眺めながら縁は夜妖に備えつつも心の何処かに痼りがある様な気がして黙りこくった。どうしても『召喚前』の事が頭にちらついて仕方が無い。
 運命の相手を映すという鏡――ならば、其処に映るのは彼なのだろうか。そう思えば心は僅かにざわめいた。灰色のポニーテールの愛しい人が鏡に映ってくれれば良いのにと、想いを飲み込むようにごくりと喉を鳴らした。何が映るかは兎も角、自身にとっての運命の相手は彼だけだ――なら、この世界に居ない彼は映らないのかも知れないと僅かな楽観が心を占める。
「鏡の設置をして合わせ鏡にしないとな」
「はい? ……あ、そっちですか。姿見位の大きさがあれば充分ですよねぇ?」
 ミーナの言葉に呼ばれたのかと振り返った鏡は『自分のことでは無い』のだと直ぐ様に理解を示す。
「現状未来の恋人には興味はないので、他の方どうぞぉ
 ……タイプじゃない人が映ったらどうするんでしょう? キャンセルとか効くんでしょうかぁ?」
 どうだろう、と呟いたのは汰磨羈。今度は仲間の方の『鏡』を指してその言葉を口にする。
「鏡が後方、私が前方の鏡を担当……うむ、鏡と鏡が被ってどっちの鏡の事か分かり難くなるな?」「ええ、ややこしくって仕方がないですねぇ」
「……これは相談だが。この依頼の間だけ、『かがみん』と呼んでも良いだろうか?」
 真顔でそう問い掛けた汰磨羈に構いませんけれど、と鏡は肩を竦めた。鏡の妖怪に、合わせ鏡、鏡本人と、鏡禍……多数の『鏡』という文字列によって鏡のゲシュタルト崩壊が起りそうな仕事ではあるが、無情にも4:44は近づいてくる。
「何してるですか?」
「ああ。いや何……昔に電話を巣として魂を食らう妖怪とかいたから、なんとなくな」
 aPhoneをまじまじと見詰めるミーナにメイは「いるかもしれませんね!」と首を傾いだ。aPhone宛に『占いメール』を送信した鏡禍は「お願いします」と朋子と夕子へと告げた。
「朋子っち、それじゃ占って見よう」
「そうだね。それにしても……運命の人、運命の人かー。好みのタイプでも念じればいいのかな?」
 鏡が言っていたとおりに理想の人じゃ無ければキャンセルできるのかどうかさえ定かで無いならば出来れば理想のタイプが良い。夕子ならばイケメンでお金持ちで優しくて素敵な男性が良いと言う女子の理想が並べ立てられ、朋子は――
「えっと、んーと……身長は2m以上あって、筋肉ムキムキで、でもあんまり乱暴じゃなくて可愛げがあって……髪は長くても短くてもいいかな。ハゲててもいいや。けど最低限身嗜みは整ってて不潔じゃなくて、なんていうか頼りがいがあって……あとそれよりなによりあたしと真正面から喧嘩出来る人!! ……映るかな? まぁそこは見てからのお楽しみってことで夜妖退治だ!」
 凄まじく武力寄りの理想ではあるが――鏡が淡い色を灯し、そして『ぎょろり』と何かの眸が二人を覗き込んでいた。


 突然現われた目玉に直ぐさまに反応したのは汰磨羈。「かがみん!」と鋭く呼ぶ其の声は常の通りに冷静に。抜刀した臨戦状態の儘、自身の眼前に存在した鏡を叩き割る。
「はぁい」とにまりと微笑んだ鏡は鞘で自身の担当していた鏡を小突いた。ぱりん、と音立て落ちてゆく破片を眺め、楽しげに笑みを零す。
「逃げ道の排除、弱体、何か効果が出れば儲けものです。成功しようがしまいが、あとは最大火力で消えてもらいましょお」
「此奴のような類は、媒介とした物に依存するパターンである事が少なくないが……さて、どうだ?」
 二人の視線の先に存在した『眼』は声なき叫びを上げる。おっと、と縁は姿勢をぴんと伸ばした。戦闘の時間だ。鏡に『彼』が映らなかったことを残念がっている場合では無い。
 親しき友の勝利を、そして更なる躍進を望むようにその歌声を響かせて、縁は止まらぬ協奏曲で仲間の心を奮い立てる。手にしたマイクロフォンはアイドルのための商売道具。一に愛嬌、二にルックス、三が実力だとすれば四番目に大事なそれは己を削り、仲間達を支援する。
「見つけましたよ。僕の領分で悪さをするのはここまでにしていただきましょうか」
 鏡面は昏き湖底を湛え、銀で縁取りされた『自分自身』を手にした鏡禍は堂々と声高に宣言する。海洋王国で見つけた海色は僅かに潮の香りを湛えている。
「皆、今回は攻撃こそが最大の防御だ。回復は私に任せて目一杯食らわせてやれ!」
 号令をかけたのはミーナ。統率を取る煉獄の魔術師は、希望の剣を手に、ヴァルキリードレスを揺らした。先ずは、『視認』し相手の出方をチェックするところからである。
「ぎゃっ。目玉が相手ってマジ? うそ、やだやだ! あーしの運命の相手とかマジやばたにえんじゃん! キャンセル!」
 叫ぶ夕子はへその周囲に刻まれた赤き紋様へと熱を帯びさせる。熱波を広げ、JK忍法の開始である。戦いとかマジ卍――その上、暴力で運命の相手として夕子をどうにかしよう等と夜妖は動いているのだ。
「草生えるんですけどー。アタック続ければワンチャンあるとか思ってない? その必死さにヤバみ感じるわー」
 正直、無理である。やだやだと首を振る夕子の側でやることは簡単単純明快であると朋子が飛び込んだ。前に出て殴るだけ、と原子真刃に力を込める。ネアンデルタールの奥義が一つは極限の暴虐として悪魔の凱旋の如く夜妖へと飛び込んで行く。火のネアンデルタールの暴力的な歩みは止まることを知らない。制御不可能な暴虐を阻むのは暴力のみであると言うように、朋子は小さく笑う。
「むむ!」
 メイは叫んだ。
「ふっふっふっ、これなら技は真似っこ出来ても、推進器が付いてない夜妖には、きっとこの速度までは再現できないはずなのですよ! 真似っこできるものならやってみるですよ!」
 ふふん、と胸を張った。ロケッ都会羊は知らないおじさんから貰ったアイテムである。知らないおじさんもたくさん『素敵なもの』をくれていい人なのだとアピールするメイには社会の荒波を知って欲しい……かも知れない。ミーナは静かに夜妖を見ていた。
「『視』えた!」
 ミーナがそう叫んだ。その声に頷く様に、汰磨羈と鏡が反応する。
「見るという行為自体に依存する。故にその姿か。だが、その眼が大きい事を悔やむがいい」
 静かに大地を蹴り飛ばす。その眼玉へ向けて二つ、攻撃が飛び込んで往く。厄狩闘流新派『花劉圏』が一つ、殺意を込めた赫々たる霊気は彼岸花の軌跡を咲かす。その鮮やかな花さえ散らすは鼻歌交じりの暗殺抜刀術。
「目が沢山でよく見える、って感じですかぁ? ではどうぞご覧になってくださいなぁ。――見えるものなら、ですけどぉ」
 虚空を斬った。だが、それが『何かを斬り落とした』のは確かである。
「見られたら真似られる。なら、見えぬようにするまでだ!」
 汰磨羈の宣言と共に、幾人かが苛立ちを感じた。夜妖は『鏡禍を映していた』のだろう。だが、此度は攻撃で制するが勝ちなのだ。怒りに目が眩もうとも何も恐れる事はない。
 運命の人をリテイクするが為に頻りに攻撃重ねる夕子に自身の役割とは兎に角殴りつける事であるという朋子。そして、斬る事を目的とし、夜妖の退路を断っていた鏡と汰磨羈の側で、メイは「ビューん!」と眠気を超えたテンションで叫んだ。
「メイの速度受けると良いのですよー!」
「無理をし過ぎてはいけませんよ!」
 縁はメイへとそう告げる。恋する女の子を応援するポップスを謳いながら、仲間たちを疎外する者を打ち払う。怖いのはNGだ。流石に目玉だらけの妖怪を見て「可愛い」等とは言ってはいられない。戦闘が突然始まって気持ちがまだ『運命の人』に取り残されていたとしても――『嘘っぱち』を教えてくる相手を見逃すわけには行かないのだ。
「夜妖ごときが僕を割れると思いますか? 脅かす程度だったらこんなことにはならなかったでしょうね。……それと、鏡が反射する、ということが真似だけではないことも教えてあげましょう」
 同じ『鏡の妖怪』として。鏡禍はそう告げた。全てを引き受け、そして、夜妖がイレギュラーズを映して真似た攻撃全てを打ち払う。後の先、卓越した防御技術を破壊力へと変換し、攻勢へと転じる。
 鏡禍の側で『暴力的』に地面を蹴った朋子は「受けてみろ!」と叫んだ。それは神の怒りを驕る傲慢なる雷霆の一撃。始原の獣は牙を剥き『鏡』など噛み砕く。その牙を研ぎ澄まし、力とパワーをその身に宿して熱き衝動を放つ。
「ちなみに、あーし、告白ならお断りだかんね!」
 首を振った夕子の火炎が災厄の焔を放つ。ばちり、ばちりと音を立てたそれと共にJKぢからは眩む事はない。幾重にも重なる攻撃に『行動された』ならば全てを打ち払う準備は万端だ。夜妖が逃走する道もなく――あとは倒し切るだけと、闘気の焔が飛び込み、その破片を灼いた。


「恋も運命の人には僕には関係ありませんが、もしも鏡に僕の姿が映ったらそういうことを考える人であれたのでしょうか、と考えざるを得ません。まぁ、鏡の破片にもいつも通り僕は映りませんけどね」
 ほら、と破片を拾い上げた鏡禍の傍らで『体育館に鏡の破片はとっても危ない』と大掃除を始めたメイがふんすと一念発起していた。
「ひょおおおーー!」
 深夜テンションに戦闘後の興奮が交じり合い眠たいを通り越して、メイが掃除を始めた。その様子に小さく笑みを溢しながらも鏡禍もその手伝いを始める。
「運命の人……よくあるインチキ占いだったわね」
 がくりと肩を落とした夕子に「どんまい」と朋子が励ます様に肩を叩く。勿論知っていたけれど、占いだと聞けば飛びつかないJKは存在しないだろうと彼女は力説した。
「あーしは次の恋占いにかける!」
「恋占い……か」
 それは世界を超えるのだろうか、と小さく呟く縁に「世界が変わっても同じような占いは無数存在してると思わないか?」とミーナは問い掛けた。
「例えば、私が知ってるのって、未来の自分が見える奴なんだよな。
 最初は10年後の姿が見えて、次は20年後と段々歳をとって、最後は現実で老衰を起こして死んじまう奴。この未来の恋人って奴も未来に影響を与える話だったし……時間を超えるのはどの世界も危険って事だな」
 そうだ。そうして未来を『確定させる』行為こそが危険だ。それを見て、その通りに進んでいこうとする――そんな他者を誘惑し、洗脳する行いはどのような者よりも恐ろしい。
 そうした害を危惧していた汰磨羈は「何にせよ、あまり大きな害がなくてよかった」と胸を撫で下ろす。
「儀式によっては、秒数や階数まで指定するものもあるのだが。案外、この程度の夜妖で済んだのは、条件が緩かったからかもしれんな……」
 今後、同じようにそうしたものがあるかもしれない――そう呟いた彼女の傍らで鏡の破片を拾い上げる鏡、こと、かがみん。
「…………つまり皆の運命の人は目玉のお化け、って事ですかねぇ?」
 呟く鏡の言葉に「ぎゃあ」と夕子は叫んだ。「リテイクリテイク!」と何度も何度も繰り返す――「ひよのっち! マジで本当の占いとかないのー!?」
 彼女の声は、まだまだ陽の登ったばかりの体育館に木霊していた……。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました!
 運命の相手ってよく言いますけど、本当に映るんですかね?

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