シナリオ詳細
<天之四霊>西白武神
オープニング
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夏はいつの間にか過ぎ去り、秋が居た。
時折肌寒くさえ思える季節に、木々が帯びた色彩を温かいと感じるのはなぜか。
そんなことを考えながら、西海和尚は客間の座布団を整えていた。
この日はさる重大な用事により、この寺院に神使を迎える準備をしていたのである。
高天京が西部に位置し、紅葉に彩られたこの寺院の名を京護武正院と呼んだ。
厳めしい名前ではあるが、それらしい武力的な機構は存在しない。
古の時代の国主が、合戦の際に武神の加護を得たとされる伝承に基づく。だからこの地に建立されたのだ。
寺院となった今では、四神が一つ『白虎』と縁が深いとされていた。
さて和尚が待つ用事というのは、簡単なようでいて難しい。
まずは発端から述べるために、時はしばし前へと遡る。
滅海竜を鎮めこの地へ到った神使――この国ではイレギュラーズをこう呼ぶ――達は、首都である高天京にて傭兵のような仕事を請け負っていた。
この国『神威神楽』に慣れるため、実績を積み上げるため――理屈は様々であったが、この国の権力者達七扇と中務省は、少なくとも表向きは神使達を歓迎したのである。
だがこの国には大きな問題があった。
最高統治者である霞帝が、こんこんと眠り続けていたのである。
さらには恐るべきことに、京の中枢には魔種が巣くっているのだ。魔を打倒すべき使命を背負う神使にとっても、また彼等の身元引受人となっている中務卿建葉晴明にとっても、それは看過しがたい事実だった。
さりとて魔が殿上を支配している以上、この地で活動するに面従腹背は必至である。
なんといっても魔の中心は天下人たる巫女姫と、大政大臣である天香長胤その人なのだから。
中務省と、それを率いる晴明が八扇を離脱した(故に七扇となっている)理由は、斯様な事情も含まれるという訳だ。
事情とはそれだけではないが、ここでは置いておこう。
ともかく重要なのは、魔の勢力が国を闇に堕とす大呪を策謀したという点だ。
此岸ノ辺の巫女が邪な策謀を察知し――そして神使と魔によるお為ごかしに過ぎぬ友好が決裂したのは、謂わば初めから約束された結末であったという事になる。
戦いは互いが互いの本拠地に攻め入り、防衛しあうという二正面状態となった。
そして結果を大局だけで評価するならば、両者痛み分けといった風情ではあった。
だがいくつか重大な結果がもたらされている。
一つは吉報。神使が霞帝の目覚める切っ掛けを勝ち得た事である。
もう一つは凶報。数名の神使――つまり仲間が囚われ流刑の憂き目を浴びせられた事であった。
こうして時勢はやがて来たる天下分け目の決戦へと進み始める。
晴明と目覚めた霞帝、そして神使達は、自凝島へ囚われた仲間を救い、また決戦に備えなければならない。
そのため霞帝は、この地に古来より伝わる四神の力を借りることにした。
ようやく話を戻すが、つまり神使がこの寺院にやってくるのは、四神が一柱『白虎』との対話を求めてのことであったのだ。
――涼風がすいと吹き抜ける。皆紅のよそ行きを着込んだ枝がそよぎ囁いた。
「おや、ご到着ですかな」
遠く眼下に橋を渡る影は、神使に違いない。
一行が歩む様子をしばらく眺めていた和尚は、もう一度ちゃぶ台を拭くと、すっくと立ち上がった。
ならば早速茶菓子を用意して、湯を沸かさねばなるまい。
●
京護武正院に到着した神使達は、この地独特であろう素朴な歓待『おもてなし』を受けた。
窓を見やれば寺院には幾つも建物があり、背に立派な山があり、けれどどれも驚くほど質素だ。
神使の多くにとって社と寺の区別は難しいが、それもその筈で寺院の敷地には鳥居まであると来た。
良く言えば大らかで、ともすれば――特に天義辺りの出身者にとってすれば――いい加減にも見える。
だがそれだけ歴史深いのだとも思える。
なんでも右手側に見える木造の塔は、随分古いものらしい。
和尚が云うには、この道の先にある石碑が、白虎とコンタクト出来るポイントらしい。
晴明からの連絡によって、そのための準備は整えてあるという事だった。
「我もみたよ! 式神通信」
所で先程から、うろちょろとついてくる子供が居る。
「天駆けるあれに、我も一回ぐらい乗ってみたいよ! はやいかなあ」
式神――晴明の連絡方法を知っているということは……一行は一瞬だけ身を固めた。
だが魔の気配はおろか、敵意の片鱗すら感じない。寺の子供であろうか。
白く豊かな髪を切りそろえ、アーモンドのような瞳を輝かせている。
頭の上には猫のような耳があり、妖憑(ブルーブラッド)のようだ。
あるいはそんな八百万がいてもおかしくはないが、さておき。
平素であれば愛らしい少女――いっそ童女と呼ぶべきか――と戯れるのも吝かではないが、今日ばかりは生憎と神使も暇ではない。一行は適度に相手をし、適度にあしらいながら山道を歩んでいる。
「無視しないで欲しいんだけど……えいえい!」
裾をひっぱってくる少女へ振り返ると、今度は突然満面の笑みで前へと走り出す。
「ん! じゃあ我の御技を見てよ! とくとごらんあれ!」
危ないと注意する暇もなく、少女は太い木へと一気に登った。
にんまりと得意げな表情は、まるで猫のようだ。
顎をあげてドヤ顔をキメる少女を一瞥して、一行は歩みを進める。
やがて木々は姿を消し、そこには小さな石碑を抱く広場があった。
一行の誰かが問うた。こんな所まで付いてきて良いのか、と。
「それ、我の台詞だから」
神使は眉をひそめ、小首を捻る。というか、なんなのだ、この子。
「ふふん、知りたい?」
疑問を感じた神使へ向かって、少女は嬉しそうに胸を張る。
そう云われると、知りたくないと答えたくなるが。
「なんで……」
躊躇する神使に、少女はがくりとひざをついた。
「ま、まあいいよ。でもこっちは知っておいて欲しいかな!」
う、うん。
「我は白虎!」
お、おう。
「白虎だよ! がおー!」
おう。
「あ、あれ? 結構重要なことを、言ったと思うんだけど……」
い、いや。そんな気はしてたし。
「……なんで…………」
うな垂れた少女――白虎は首をぶんぶん振ると、再び姿勢を正した。
「それじゃあ問うよ」
その言葉に、イレギュラーズは極度の圧迫感を覚えた。
恐怖か、戦慄か――否。
強大な魔物と相対した時に感じる危険か――否。
魔種と剣を交える際に感じるおぞましい気配か――否。
これは嵐や大炎、地震等と同様の畏怖であった。
少女だと感じていたものは、いつしか見上げる程の獣となっていた。
――汝等が此所へ来た理由は知れている。
この地の魔を討滅せんと欲しているのだろう。
義による武へ、我が力を貸し与えるのは吝かではない。
ならば話は早かろう。
疾く、我が前へ義と力を示すが良い。
なるほど、単細胞なことだ。
ならば見せてやろう。
この地へと到るため、竜を鎮めた力を。
冬の暴威を叩きのめした力を。
――よかろう。来るが良い。
我は西白が武神。金行の虎也!
- <天之四霊>西白武神完了
- GM名pipi
- 種別EX
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年10月27日 23時05分
- 参加人数10/10人
- 相談6日
- 参加費150RC
参加者 : 10 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(10人)
リプレイ
●
――疾く、我が前へ義と力を示すが良い。
我は西白が武神。金行の虎也!
蒼穹に雷鳴が轟いた。
十月終わりの風が『特異運命座標』柊 沙夜(p3p009052)の頬を撫でる。
「あら、まあ。大きい獣ねえ」
ふと口をついた言葉に、彼女自身が口元を微かにほころばせ――
「……ええ、わかっとるよ。ただの獣じゃなくて白虎よね」
その眼前に聳える――文字通り尋常な大きさではない――神獣と視線が交わった。
白虎は姿勢を低くとり、今にも飛びかかってきそうに見える。
構えは"待ち"か。
その程度の物は、小僧の頃にゲーセンの格ゲーでしこたま見かけた。
今更『Go To HeLL!』伊達 千尋(p3p007569)たろうものが、ビビってたまるか。
「頼々くん、ニケツしようぜ」
「あの冠位魔種にトドメを刺した伊達殿の後ろに乗れるとは光栄の極み!」
「っておい」
「えっ」
「いや、いいぜ!」
飛び乗った『虚刃流開祖』源 頼々(p3p008328)の鞘は無刀。虚刃流の証である。
「白虎ちゃん、こういうの見た事ねえだろ、楽しみだろ? OK、楽しませてやるよ!!」
Mariaのエンジンが唸りをあげ、フルスロットルに駆け巡る景色が、極限の集中に歪みコマ送りとなる。
「ふふ! 君が白虎君か! 私はマリア! マリア・レイシスだ!」
腰を落とし構えた『神鳴る鮮紅』マリア・レイシス(p3p006685)の頬を大気が撫でる。
涼やかだがどこか優しげな秋風は、まるで白虎の挨拶とも感じられた。
この地に生まれた沙夜は、その伝承を耳にしたことも、ひょっとしたらだがこの寺『京護武正院』へ来たことだってあるかもしれない。
けれど地響きのようなうなり声を前にして、不思議と恐怖は感じなかった。
「おとぎ話に出てくる様な四神様に会えたなんて、ワクワクするな」
同じく神威神楽を出身とする不動 狂歌(p3p008820)もまた、その伝承を知るものだ。
高く剣を掲げた狂歌の身を光りが包み、魅惑的な肢体のシルエットを描き出す。
直後、彼女の身は完全武装に覆われた。
狂歌達一行の目的は、この巨大な獣を討ち果たすこととは違っていた。
其れ――白虎はこの神威神楽の地に伝承される存在であり、四神が一つとの呼称通りに神ともされる。
神と云えば西の大陸側から来たイレギュラーズ、或いは異世界からやってきた旅人達には各々違った印象はあろう。
「まぁ、かわいい女の子――と思ったら貴女が『白虎』さんなのねぇ」
ほんの数秒前まで、幼い少女に見えていたものが、一行を見据えている。
頬に手を当てた『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)は、西海の果てに存在する聖教国ネメシスはサン・サヴォア領の、これまたネメシスらしい家庭に生まれた。故にこの場合における『神』という言葉が『世界滅亡の神託をもたらした何か』とは、相当にニュアンスは異なる事は十二分に知っている。
しかして視界全体より巨大な威容には、そのように呼ばれる理由も得心行くというもの。
神使――イレギュラーズ達はこの日、各方角を守護する四神、そして中心たる黄龍(麒麟)から力を借りる為に、試練へ挑んでいた。
「小難しい細工や試練はなし、真っ直ぐぶつかり貴女に認めてもらうわぁ!」
アーリアはあくまで勝ち気に微笑んでみせる。
白虎が課したのは、かなり単純で『戦う』というものだった。その中で『義』を示せと云う。
足が震える。
正直に云えば『希望の紡ぎ手』アリア・テリア(p3p007129)は恐怖さえ感じていた。
音を愛するグリムアザースである彼女と、おそらく大気を司っているであろう白虎はどこか似ている。
だからこそと云うべきか、混沌肯定が人の内と定義した彼女と白虎は、精霊として次元が違うと思えた。
「けど、だからこそ死力を尽くす! 力を貸して、もう一人の『私」』!」
稲妻が爆ぜるように、黄金の闘気がアリアの身を覆った。
乗り越えねばならぬのだと誓って、アリアはかつて対峙したもう一人の己自身――キトリニタス・アリア・テリアをその身に宿す。
「ならば私は、剣と昂る心で語りましょう」
剣を抜き放った『勇往邁進』リディア・T・レオンハート(p3p008325)は、難しい言葉を並べるつもりなど、はじめからなかった。
彼女は言葉遊びを自身の不得手と心得ているが、だからやらないという訳ではない。
リディアは武人同士であれば、刃の交わりで心を通わせられることを知っているのである。
或いは――邪悪な怨霊を操る『通りすがりの外法使い』ヨル・ラ・ハウゼン(p3p008642)の業は、義という言葉尻から遠いと誹られるやもしれない。それでもヨルは愛らしい面持ちに微笑みさえ浮かべ胸を張る。
力とは使う者次第であるのだと。それを以て試練を突破し、この国の皆を守ると誓った。
「認めてもらわんと進めんからねえ。助けられるものを増やすために、全力全霊傾けましょ」
言葉を続けた沙夜もまた、それが白虎の望みであることを悟っていた。
「君、綺麗な毛並みだね!」
マリアはあえておどけて見せ、まるで友に語りかけるように気兼ねない言葉をかけた。
白虎は値踏みするように、マリアを見据える。
「虎と言えば私! 君に認められた暁には紅虎の称号を貰うよ! いいね?」
――よかろう。
「ヨシ! あ、あと友達になってくれないかい?」
マリアの問いへ答えるように、白虎は小さくうなり声をあげた。
少なくとも拒絶でないことは理解出来る。
つまりは、どれもこれも結果次第ということであろう。
「さあて、丁々発止と参ろうか!」
大見得を切った『精霊の旅人』伏見 行人(p3p000858)が、真正面から踏み込む。
(……俺を見ろ、俺から目を逸らすな!)
相手は己だと示すように、大きく、疾く。
柔らかく笑み、左手を差し出して誘うように指で招いてみせる。
――その瞬間姿勢を更に低くした白虎の前足がぶれ、行人の視界を純白の光が覆った。
●
静寂の中。
つ、と。耳の奥で低い音が響き始める。
おそらく――轟音であったのだろう。
予想通りの雷撃だ。目は見えるか。四肢は無事か。足は大地を踏めているか。
「ちょっとした理由で俺に電撃は効き辛くてね」
平然を装ってみせる行人ごと、幾度かの衝撃が辺り一面をなぎ払う。
岩肌に背を打ち付けられた行人は、すぐさま足元を蹴りつけた。
(白虎は、どこだ)
そしてあの『規格外』は、この一瞬に何度動いていた!?
雷撃から僅か一秒か二秒。
けれどようやくクリアになった視線であたりを伺い――後か。
衝撃と共に白虎の前足が、行人が背を預けていた巨岩を粉々に砕いた。
速いなどという単語では言い表しきれぬ。さながら大気の大精霊といった所だろう。
人の身で追いつくのは不可能に近いとも思えるが、それでも――行人は再び白虎を真正面から見据えた。
やり抜くしかない。そしておそらく、やってやれないこともない。
少なくともこの数秒間に放たれた、白虎の攻撃は全て行人個人を中心としており、それでも行人はまだ大地の上に立ち続けることが出来ているのだから。
「武神、白虎――相手にとって不足なし!
リディア・ターキッシュ・レオンハート、全力で参りますッ!!」
至近からの真っ向勝負だ。
身体中を駆け巡るアドレナリンの爆発と共に、輝剣リーヴァテインを振りかざす。
いかなる守りをも斬り伏せ、真正面から突破する全霊の剣閃。
燃え上がる蒼炎が白虎の巨体を駆け抜け――七星極光『蒼炎斬』。
巌の如き、否むしろ大空の如き白虎にとって、それは針の一刺なのしかもしれない。
人は自然を前にして無力なのか。だがリディアはそうは思わなかった。この瞬間に感じられた手応えは、あの滅海竜リヴァイアサンとは比べものにならない程、大きいのだから。
竜を越えた騎士に、出来ないはずがないではないか。
――成る程、竜神を鎮めただけはある。
そら見ろと云うやつだ。
震える大気の中で、リディアは再び剣を正眼に構える。
「相手は確かに強大――ですが、私達は決して一人ではありません!」
「もちろんさ。それじゃあ……行くよ!」
高く跳んだマリアが紅雷を纏い、一気に加速する。
その異能――限界を超えた放電は蒼く輝き、マリア自身を砲弾として白虎へと解き放った。
白虎とマリアは稲妻の中を舞う様に、無数の閃光が大気に複雑な幾何学模様を描き出す。
――猫の様に、ちょこまかと。
「虎だよ! ふふ、けど鬱陶しいかい?」
全ては仲間との連携のため。
無数にたたき込まれるマリアの一撃一撃は、巨体の白虎を相手とする以前にひどく軽いが、強力な打撃力が彼女の狙いではない。
その手数で翻弄し、仲間をアシストすること。なにより迸る雷撃と共に、白虎の精神エネルギーをそぎ落とすことが本懐なのである。その真価はここですぐに発揮されるものではないのだ。
マリアは、やがて来る最終局面を見据えている。
大技を放ち続ける白虎の戦い方は、ともすれば乱暴に過ぎる。
いかにそのエネルギーが無尽蔵に見えるとはいえ、限界はあるはずだ。
白虎の力の使い方から判断するに、それはきっと遠くない筈なのだ。そこに勝機が見えるだろうから。
●
交戦開始から僅か数十秒。
戦場には未だ劇的な変化は起きていなかった。
イレギュラーズの猛攻に、しかし白虎は揺るがず。
対するイレギュラーズ側もまた、誰一人として倒れていない。
状況の変化が小さいとは、あくまで総体での事であり、何かが狂えばどんなことが起きるかわからない。
大技ばかり使い、スピード勝負を求めている白虎は、早期決着を望んでいるだろう。大技ばかりということは、対応しきれなくなった時に破局が発生するということだ。また素早いということは攻撃が当たりにくいということであり、あたれば戦局に大きな影響があると予測することも出来る。
力の天秤自体は壊れたメトロノームのようにプレスティッシモ(最速)を飛び越え、右へ左へ無軌道かつ乱雑に振られ続けているのだ。
――人の身には、耐えきれまい。
「それはどうだろう。試してみるか?」
狂歌が嘯く。
地響きと共に降り立った白虎が暴風と共に突進してくる。
あんなものを受けては、人間などひとたまりも無いだろう。
だが狂歌はあえて大地を踏みしめ、真正面から巨大な盾を打ち付けた。
耳を劈くほどの強烈な力の応酬に、狂歌の両足が岩肌に二筋の轍を抉った。
「だが――穿った!」
強烈な一撃に脳髄が揺さぶられるが、打ち合いの衝撃には白虎とて無傷ではいられない。
「あらまあ、ずいぶん無茶をするものねぇ」
狂歌の身体を癒やしの術が包み込む。
柔和な沙夜の言葉はおっとりと聞こえるが、その判断は常に的確だ。
「あらぁ……大きいのに、すばしこいのねぇ。逃げ足にも自信があるのかしら。なぁんて」
素早い白虎に最も多くの打撃を加えることに成功しているアーリアだが、いくらかの悔しさは感じる。
「本当だよ! あんなのまるで猫じゃあないか! だけど、楽しいね!」
頬に手を添えたアーリアに頷いたマリアが、意趣返しとばかりに再び白虎へと蒼の雷撃を見舞う。
「余の命に参じよ。其は仮初の獣にして死奏者が騎兵なり――外法エメスドライブ!」
ヨルが掲げる書が独りでにはらはらと頁を送る。
死霊を核に顕現した刹那の魔獣が、白虎へと果敢に躍りかかった。
白虎と比すればあまりに小さな牙は、されどその膨大なエネルギーを着実に食い破る。
イレギュラーズは果敢な猛攻を続けていた。
現時点で最も大きな傷を負っているのは行人だが、白虎の攻撃が多少分散していること、そして当人自身の回復力と沙夜の支えにより、どうにか事なきを得ている。
それに白虎の攻撃は非常に速く重いが、しかし粗雑でもあった。
「不幸中の幸いなんて言えたら、御の字というものやねえ」
「助かる」
呟いた沙夜が調和の術式を紡ぎ、行人の傷を癒す。
「――っ!」
素早く身を翻したアリアの居た場所を、轟音と共に降り注いだ雷撃が穿った。
広範囲に降り注ぐ白虎の攻撃は思っていたよりも随分当たりにくい。
現にアリアは白虎の攻撃を、今のところ全て回避することに成功していた。
それに避けきれない者も、どうにか低減出来ることが多い。
「傷の治療はうちが。そっち任せるんよ」
低減といっても威力そのものは重く、また幾度も受ければ大きな問題にもなる。
こうして仲間がいくらか深く傷つくこともあるが、パーティの屋台骨を支える沙夜はタイミングを見計らって行動しており、それは極めて有効に作用していた。
白虎は驚くべき速度で一手の内に幾度も攻撃を仕掛けてくるが、伴う痺れ、感電、ショック、麻痺、窒息、苦鳴、暗闇、体勢不利といった状態は、やはりヨルや沙夜によって即座に打ち払われている。
虚空の刃で白虎を切り裂いたバイクが、ひび割れた大地を駆け抜ける。
岩肌を切り裂く無数の亀裂を単車で飛び越え、千尋が叫んだ。
「冗談じゃねえな。もう安全運転って訳にはいかねえ、振り落とされるなよ!」
「無論である! 任されよ!」
仲間達の猛攻に追従するように、頼々達は白虎へ打撃を与え続けている。
たたみかけられた攻撃は、都度白虎を追い詰め、その一瞬を狙っての意図だ。
次の機会は、いつになるだろうか。
「パーペキなチャンスは多くねえだろうな……。
下手すりゃこっから一度かもしれねえ。いや、むしろ一度だけと考えるぜ」
「ならばますます無様は晒せん。伊達殿に紡いで頂くその勝機、我が必ず掴んで見せよう」
「オーケイ。任せたぜ!」
タンデムする千尋と頼々の火力は絶大で、既に白虎の力を大きくそぎ落としているはずではあった。
このまま攻めるか、それとも一度待つか。判断が試される瞬間だ。
「さて、そろそろ聞いてくれるかい」
――足りぬが、よかろう。
「ありがとう。まだ名乗っていなかったかな。俺は伏見行人。旅人をしていてね」
雷撃を打ち払い、崩れそうになる膝を叱咤して行人は語りかける。
ローレットに所属した理由。それは始めに『恩義』を受けたからであると。
「無宿者なもので、義理っていうのを大事にしているんだ。
それに、友人が出来たこの地がどうにかなるかの瀬戸際なんだ。
その一助になれるのなら、やってみる価値はある」
故に――「ここに立つのは『義理を通すため』だよ」。
――俺は、君の友に足るか、否や!!
●
この戦いで白虎は爪を出していない。徹頭徹尾において、殺さずの意思を貫いている。
大地は割れ、暴風は吹き付け、雷撃が襲っている以上、だから何だというレベルでこそある。
だが精霊と共に生きる行人は、そこに明瞭な意図を感じるのだ。
なぜなのかと問うならば、これは推測でしかないが――
例えば精霊や現象といったものと、人の身との戦いはある種のアンフェアさを持っている。
両者を――人と精霊とを比較すれば、答えは自ずと導き出せるだろう。
自明の理として、人は――生きとし生けるものは、傷つき過ぎれば命を喪うものだ。
対して精霊というものは、必ずしもそうではない。そもそも命という概念から外れた存在と言える。
仮に誰かのの武力が白虎を討ち滅ぼしたとして、それが些か行き過ぎた結果を招き、現存する白虎という個を完全に喪失する結果、人で云えば『命を失った』状態になったとしよう。
それでもこの世界から風や大地や雷鳴という、概念そのものが滅びる訳ではない。
つまり実存を失い、やがて伝承となった白虎という存在は、大自然そのものをゆりかごとして、人の意思や信仰や、それらに類する何かを糧に、この大地へと再び降臨するかもしれない。
実際に再度顕現したならば、そこに現れるのは『今の白虎』とは些か違う存在ではあるかもしれないが、さておき。そう言った意味では、精霊はこの世界がこの世界である限り、不滅だとも云える。
そもそも第一に、この戦いにそのような結末は期待されていない。
これはあくまで『試合』なのであり、決して『死合い』ではないのだ。
しかしそれは断じて、白虎が『本気で戦っていない』ことを、必ずしも意味しない。白虎は本気で試合を挑み、不可逆の勝敗を決しようとしているのである。
この戦いは『命のやり取りでこそない』が、されど『未来を掴めるか否か』という重大な勝負所なのだ。
万が一にも、運動競技者が、或いは武道を邁進する者が、個々の試合において『命の取り合いではないから本気ではない』などと云うだろうか。否そんな筈がない。
ひょっとしたら白虎は、そうしたロジックなど理解はしていないのかもしれない。即ち論理的な思考の帰結から、そのような解を導き出した訳ではないのかもしれない。けれどこれが真剣勝負であることは、白虎のみならず、互いが十分に認識出来ていよう。
そこは間違いなく、両者の共通見解である筈だ。
故にこの戦いは、黄泉津と云う領域そのものを味方に出来るか否かという意味を持っている。
両の拳を握りしめた行人は、仁王立ちの姿勢を崩さない。
ただ真摯に答えを待っている。
行人の睨み付けたままの白虎は、攻撃を仕掛けてこない。
――良い答えだ。
では、ならば。
――汝等も続けよ。
無論、爪を交えながら!
なるほど。行人の背に冷たいものが走る。
だが確かな手応えは感じられた。白虎は中々に欲張りと見える。
「なら、最後まで付き合うさ」
あれはきっと全員の言葉を待っている。それにおそらく、もう少しだけ遊びたいのだ。
「コケてねえのが奇跡ってモンだぜ、なあMaria!」
「……いや、それは二度ほど」
「そりゃ、まあ! そうとも言えるかもシンネーけどよ」
「立ち上がれたたなら、転んではいないのさ!」
「マリア殿――!!」
「だからチャンスは作る! 任せてよ!」
ならば次が勝負だ。
頼々は心実角【紫染】を鞘でなく刀と再定義し、【頼守】へと納めた。
目配せしたマリアが紅雷を展開する。
「さっきはさ……おどけてしまったけれど……」
紅を蒼へと変えて。再びマリアの雷光が閃く。
大事な友人・戦友達が捕まっているんだ……。
皆を助ける為に、どうか力を貸しておくれ!
その為なら力でも何でも! 君に見せて認められてみせるから!!!
私と君! どちらが真の虎か勝負だ!!!」
――続けよ。
「ずっと考えてきたんだ。『義』って何かって」
はじめは理屈っぽく考えたが、うまく言葉で表せなかったとアリアは述べた。
芸術は好きだが、言葉なんてそもそも万能ではない。
故に、理由ではなく結果――ここに居る事実と、それでたぐり寄せられる可能性を示すことにした。
「『義』なんて大層な言葉、私は上手く説明できないけど。
けど私は震えるほどの怖さと一緒にここにいる。
その先に、仲間を救うための扉があるって知ってるから! その扉をこじ開けるために私はここに立つ!」 なりふりなど、かまいはしない。
泥臭く、ただその可能性を信じて、術を紡ぎ続けてみせる。
「それに私達は一人じゃないんだ。このままたたみかけるよ! いっけええええ!」
美しい指先にアトルガゼットの薄明が煌めき、アリアの放った熱衝撃波が白虎の巨体を貫いた。
刹那、態勢――と呼べるかは定かではないが――を崩した白虎に、白虎自身の物とは異なる雷撃が弾け駆け巡る。
「……アーリアさん、準備OKだよっ!」
「ありがとう。アリアちゃん」
――汝の義は、何か。
「焦っちゃだめよぉ、必ずお見せするからぁ。ねっ」
――よかろう。
白虎へ向けて、アーリアは片目を閉じてみせる。
眼前に聳える威容に、恐怖を感じない訳ではない。
もっと云えば、そもそも聖騎士のように剣を振るう事も、術士のように火力でなぎ払う事だって怖い。
けれど相手を縛り、仲間に繋げることが出来ると信じている。
守り合い、手数で攻め、隙を造り、打破する。
これまでもそうしてきた。これからもきっとそうだ。
まずはそれを示す。そうしたら後で『とっておき』だ!
魔性のささやき――恋を語るのはファム・ファタル。一夜も保たぬ刹那の夢に、白虎は何を見るのか。
「『義』を示すか……」
白虎へ怨霊を解き放ったヨルが、天を仰ぐ。
果たして斯様な不浄を操る己が義を語ってよいものか。
否――だからこそであろう。
「余は闇に生まれ闇に忍び、そして光に生きる者を嗤い傷付けることしか教えられなかった。
そんな余に手を差し伸べてくれる人がいた……
最期の時まで余の事を思い人の心の光を教えてくれた人がいた」
猛攻撃のただ中で白虎は微動だにせず、ヨルを見据えている。
「そして余は知った……大事な人と過ごす時間は尊く喪うのは悲しいと。
だから……余は戦う、大事人を失い悲しい思いを他の人間にさせない為に。
それぞれの大事な人達と笑って幸せに過ごす為に。
その為に余は人を呪うこの外法の力を誰かを守る為に使うと決めた!
これが余の義、誰かの幸せを守る願い!
もう悲しい思いを誰にもさせたく無いから……
この国の人達の笑顔を取り戻したいから……
その為にも白虎殿のこの試練、余達は必ず乗り越えてみせるヨ!」
イレギュラーズは戦いながら、言葉を重ね続ける。
「義が何かは分からない」
狂歌はたしかにそう述べた。
「が、俺の戦う理由は村の人を守る為に戦って死んだ両親に恥じない生き方をすること」
このカムイグラに、狂歌の故郷がある。
そんな場所に、よくわからない呪いをばら撒く奴らは放っておけないと伝える。
「戦えない人を守る為に俺は体を張るぜ」
大上段に構えた剣を、狂歌は一気に振り下ろす。
闘気を弾けさせ身じろぎする白虎に、沙夜は渾身の魔力をたたき込んだ。
「小さくても結構。うちの一手も皆に繋げる一手よ!」
胸を張ってみせる。
「うち、神使になって日が浅いん。世界を救うとか、まだようわからんよ。
だって広がった世界の半分も見とらんし。重いもんいきなり背負えん
……でも。そんな大きいもん見なくたってええやろ?
『ここ』はうちの故郷。知らん人も多いけど知ってる人もおる。
その人たちと故郷を守るために皆の、君の力が必要なんならうちはなんだってするわ
君は義と力を示せば力を貸してくれる言うとったね。
うちの義はこれよ。故郷を、知人を守る。そのために……力を貸して、白虎!」
リディアもまた続ける。
「私が振るう剣は大切な誰かを、愛しい何かを、護る為に在ります!
魔種とか、アークとか、パンドラとか……そういうのも勿論大切な理由です!」
ですが、と。言葉を切り、彼女は凛と剣を掲げた。
「私はこの地に来て。
ここに生きる命を知って。
その輝きをこの眼で見て、肌で感じて――心から感動しました! 愛しく想いました!」
ゆっくりと構え、白虎を見据える。
「……それを護る為に力を貸せるというのなら、貸さない理由なんて、ないんですよ!!
ですから私はこの場を一歩も引きません。我が、レオンハートの名に賭けて!! 」
リーヴァテインをリディアの闘気、蒼炎が駆け抜ける。
「私達、一人一人の力は及ばなくとも――その力を、心を合わせれば!
必ず貴女に届く! いえ、届けさせてみせる!!」
剣閃が蒼の軌跡を描き、白虎が蒼く燃え上がった。
リディアが重ねた一閃によって、一行が積み上げ続けた、千載一遇の機会が到来した。
「んじゃ俺、貰っちゃいますよ。一番美味しいトコって奴を」
仲間達が紡ぎ上げた最良のタイミングだ。
雷鳴を切り裂くエンジンの轟きと共に、千尋と頼々のタンデムが一直線に突っ込んだ。
「やっちまいな! 頼々くん!」
「許せ。なにぶん殺そうにも死なん鬼を殺すための流儀。さすがに、ちと痛いぞ?」
慣性に任せ、頼々がバイクから跳んだ。
白虎の眼前で、鞘へ右手添えられた右手を中心に大気が捻れ歪み――
「我としては鬼は滅ぼされてしかるべき生物としか思えん。
この国の者共を手助けするのは自らの在り方と矛盾も甚だしい。
鬼共を助けるという御大層な名分は我の中にはない。
そんなわけで助ける義理はないが……一人だけどうしても殺したい鬼がおる。
我が奴を『鬼』と形容したばかりに、自らに『鬼』としての在り方を……無辜の民を虐げる在り方を固定した愚かな女がな。
選んだのは奴の、紫自身の決断であるからな。奴が積み上げた数多の犠牲は奴自身が背負うべき業にほかならん。共に背負うなどと殊勝な心掛けもない。
我がすべきことは、これ以上の犠牲を出さぬよう奴を殺すこと。そして、――我が師でもある紫という1人の女を、永劫の孤独から掬い上げること、それこそ我が己に課した義務である!
奴は此度の騒動で裏から糸を引いていた勢力と繋がっておるらしい」
抜き放たれた空想の刃は仮初たらず、核を得て真実となる。
不可逆の結論が白虎を真一文字に切り裂いた。
「力を貸せ、誇り高き虎よ」
極大の破壊を前に、白虎の象はその形を失おうとしている。
迸る闘気が、今やゆらめく白虎の姿を辛うじて押しとどめていた。
――汝等の言の葉、しかと我が聞き届けた。
これを以て、終の審判としよう。
真っ逆さまに落ちてくる頼々へ千尋がバイクを走らせる。
「掴まれ!」
割れる大地を跳んだバイクへ、頼々は痺れる腕を伸ばした。
地響きと共に地割れが広がる。
シートを手のひらで突いた頼々は身体を跳ねさせ、辛うじて滑り込むように後部シートへ座り込んだ。
「頼むぜ、Maria!」
崖っぷちを後輪で蹴り上げ、どうにか持ちこたえる。
白虎の巨大な前足が天を貫き、雷鳴が轟いた。
――来る。
アーリアは、生まれた国を一度は見限り捨てた女だ。
けれど、それでも、その国が魔の手に堕ちることは嫌だった。
ただの人のちっぽけな力でも、護れる範囲を守り抜きたい。
――これも私の『義』ってやつよぉ
イイ女は、仲間を見捨てない!
暴風が吹き荒れ――小さな少女がけんけんぱのリズムでアーリアの正面に立つ。
猫のように握られた少女のこぶしが、アーリアの豊かな胸元でぽんと跳ねた。
「ついのしんぱん……あれ? ちょっとまって我のいげんが」
「あらぁ」
首を傾げた少女の頬を、アーリアは指先でつついてやった。
「が、がおー!」
●
「もういっぱつ行けるとおもってたんだけどなあ……」
「ふふん、紅雷を甘くみないことだね。それで、その」
座り込んだ少女に、マリアは期待をこめた眼差しを送る。
「なんだっけ?」
「紅虎のこと!」
「紅虎! 我は白虎!」
「私は虎! 紅虎!」
「うん。紅白で揃って、なんかおめでたい感じ! 今日から名乗るといいよ!」
「……どうして」
ともあれ、こうして戦いは終わりを告げ――
「あ!」
「え、何」
突然声を張り上げた少女――白虎にアリアが驚いた。
「まだ汝から聞いてなかったね!」
白虎がずいずいと千尋に近づいてきた。
「俺!?」
千尋は自身を指さす。そう云えばそうだった。
「俺こっち来てから必死だったからなあ……」
「それでそれで?」
「つうかなんで皆さんまで集まって来んですかねえ。
いやな、死にたくねえってのが最初の戦う動機だったけど、今じゃこっちにダチもできたらな」
千尋は指で頬をかくと、白虎の耳元に顔を近づけ、こっそりと呟いた。
――まあ、改めて言葉にすんなら。
『悲しい顔をしてほしくない奴がいる』
そして。
『そうさせない俺でいたい』
ってのが理由になるかな。
照れくせえなこれ……他のやつにはナイショだぜ?
「じゃあ、汝等を認める!」
「感謝する。いや、さすがにほっとしたヨ」
ヨルが胸をなで下ろす。
白虎は力そのものの形ではなく、ありようを見てくれたのだ。
自身の術を外法と定義づけるヨルにとっては、さぞ気が気でなかったろう。
同じく大きく深呼吸した狂歌が武装を解き放つ。
「汝はこの国の者だよね」
「そうだが」
「その剣、すごく珍しい! 海向こうの?」
「ああ、そうだ。珍しくはないが、使い勝手がいいんだぜ」
白虎は好奇心が強いらしく、一行のあれこれについて聞いてまわりはじめた。
もしや試練も『遊びたかった』『知りたかった』だけではあるまいか。
「あらまあ、こう見ると小さな子供のようやねぇ」
沙夜が頭を撫でてやると、白虎はくすぐったそうに目を閉じた。
「それじゃ改めまして。いいかな?」
「うん」
「俺は君と友誼を結びたいんだ。
君が悩むのならば相談に乗りたいし、君が助けを求めるのならば必ず手を貸す。
遊びも良いし、こういうのでも良い――」
「もちろん!」
行人の言葉に白虎は笑顔で頷いた。
「私も白虎君と仲良しになりたい……」
「もう仲良しだよ。紅白だし! あ、そうだ。汝等まだ帰らないよね?」
「我としては吝かではないが……」
言葉を濁した頼々が一行を振り返った。
事態は逼迫している。
イレギュラーズに、それほど長い時間は許されていない。
だが目配せした一行は、しばし考えた。夜には戻らねばなるまい。
「では本日は夕刻まで、お付き合いしましょう」
リディアが述べる。何も最後ではない。また遊びに来れば良いのだ。
「ほんと!?」
「レオンハートの名にかけて、約束します!」
「やったね!」
ならば。こんなこともあろうかと! 実はアーリアはとても大切なものを準備していた。
「良いお酒とつまみは用意したんだけど……認めてくれたなら、祝宴でもどぉ?」
「じゃああっちに行こう! 和尚さんの般若湯もあるんだよ!」
嬉しい言葉に、ついつい艶やかな笑みが零れる。
飲み比べ出来そうだ。
――山を下る影は、行きと違って一つ増えていた。
慌てて湯を沸かし始めた和尚は、秘蔵の酒がすっかりからっぽにされてしまうことを、まだ知らない。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
依頼お疲れ様でした。
白虎の試練を乗り越え、友好を結ぶ事が出来ました。
その加護がいかなるものか。
そのうち判明することでしょう。
それではまた皆さんとのご縁を願って。pipiでした。
――マリア・レイシス(p3p006685)は白虎の加護を得ました
GMコメント
pipiです。
白虎と仲良くケンカして、お友達になってみましょうか!
●目的
白虎に義と力を知らしめる。
白虎は『戦い』と、イレギュラーズ達の『義』を望んでいます。
戦いの中で、言葉や想いを感じ取ろうとしているのです。
●ロケーション
山の中の広場です。
なんも気にせず戦えます。やったぜ!
●敵
『四神』白虎
白い巨大な虎に見えます。
白虎自身は、自然や現象(あるいは大精霊)のようなものです。
人の世の盛衰にも(もっと言えばこの世界の存亡にも)興味はありません。
単に世の理として、そこに存在しています。
しかし人格――と述べて良いものかは疑問ですが――としては、神使に純粋な好意を持っています。
能力は一切不明です。
恐らく直接的な物理攻撃の他、大地に関する力や、大気、雷撃を操るものと思われます。
分かっているのは「そのような伝承が残されているから」です。
曖昧なのは「天災すぎで何してんのかわかんねーから」です。
もちろんめちゃんこ強いです。
能力傾向は見た目やイメージと遠くない筈です。
保有BSは属性に準じた格好であるとは思われます。
もっとも、倒すのが目的ではありませんので。きっと大丈夫でしょう!
●四神とは?
青龍・朱雀・白虎・玄武と麒麟(黄龍)と呼ばれる黄泉津に古くから住まう大精霊たち。その力は強くこの地では神と称される事もあります。
彼らは自身が認めた相手に加護と、自身の力の欠片である『宝珠』を与えると言い伝えられています。
彼ら全てに愛された霞帝は例外ですが、彼らに認められるには様々な試練が必要と言われています
●重要な備考
<天之四霊>の冠題の付く『EXシナリオ』には同時参加は出来ません。
(ラリーシナリオ『<天之四霊>央に坐す金色』には参加可能です)
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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