シナリオ詳細
<FarbeReise>引き返せと告げるは己自身
オープニング
●緑玉はただ光を湛え
円い部屋の中央に、円い台座がある。その台座の上には、大人の掌よりも大きなサイズのエメラルドが、緑色の光を淡く放ちながら宙に浮かんでいた。
この部屋はラサにあるファルベライズと呼ばれる遺跡群の、そのうちの一つの遺跡の、最奥たる部屋である。宙に浮かぶエメラルドはファルグメントと呼ばれる“願いを叶える”とされる秘宝であり、ファルベライズのそれぞれの遺跡には、このエメラルド以外にも様々なファルグメントが眠っている。
部屋の壁には、八つの扉がある。試練を潜り抜けた者だけが、この扉から部屋の中に至ることが出来るのだ。だが、エメラルドが未だここに在り続けるように、扉からこの部屋に至った者はいない。
宙に浮かぶエメラルドは、自分を手にする者を待つかのように、ただ静かに緑の光を放ち、部屋の中を照らし続けていた――。
●闇の中で待つもの
“願いを叶える”とされるファルグメント――一つ一つの力は微々たるものではあるのだが――には、当然心ない者に悪用される懸念があった。ラサ傭兵商会連合はファルグメントを商人達や傭兵達の相互監視が働くラサ首都ネフェレストで管理する事に決定する一方、ローレットにファルグメント確保の依頼を出していた。
そう言う経緯を経て、イレギュラーズ達はファルグメントを確保すべく、遺跡の攻略にかかっていた。様々なトラップやモンスターと言った障害を乗り越えたイレギュラーズ達は、やがて奥の壁に八つの扉がある方形の部屋へと到達する。
この部屋には、イレギュラーズ達が入ってきた入口の他には、扉しかない。おそらく、この扉を抜けなければファルグメントのある部屋にはたどり着けないのだろう。とは言え、この数はイレギュラーズ達を惑わせた。一体どれが正解の扉なのか、と。
やがて、イレギュラーズ達は意を決して一つの扉を選ぶ。扉の先には、漆黒の闇。先頭を進む一人が慎重に歩みを進めて扉の中に入り、別の一人が続こうとしたところでそれは起こった。
バリアか何かが張られているかのように、続こうとした者の身体が弾かれたのだ。それと同時に、扉はバタンと閉まり、何をしても開かなくなる。最初は困惑した七人だったが、別の扉でも同じようなことが起こるにあたり、この扉は一人しか通さないのだと察した。
それならばと、イレギュラーズは一人ずつに分かれて、残る扉を潜っていった。
「……引き返せ、引き返せ、引き返せ」
一条の光さえ見えず、ランタンなどの光でも照らせず、暗視を以てしても見通せない闇の中であったが、何故だろうか進むべき方向は理解出来た。しかしその一方で、絶えず低く重い声が囁きかけてくる。
その声に抗いながら歩を進めると、闇の中でありながら何故か“それ”の姿は見えた。自分自身と寸分違わぬ姿をした、“それ”の――。
“それ”はベースとなった自身の短所などを論い、故にこの先に進む資格はない、だから引き返せと述べながら、襲いかかってくる。それに対して、ベースたるイレギュラーズは――。
- <FarbeReise>引き返せと告げるは己自身完了
- GM名緑城雄山
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年10月12日 22時10分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●決して退かず
最初に扉の中に入った『観光客』アト・サイン(p3p001394)だったが、すぐ後ろで扉が閉まり仲間と分断され、孤立してしまった。だが、幾多もの冒険を繰り返してきたアトは動じない。
(……先に進め、と。どうやら扉は、八つお誂え向きに存在しているようだ)
アトはこの中を一人で進まねばならないらしいと判断し、三メートル棒やランタンを用いて周囲の状況を把握しようと努める。この冷静な対応は、熟練の冒険者ならではだった。
もっとも、棒は床以外を探り当てることは出来ず、ランタンは灯るだけで周囲を照らすことは出来ない。だが何故か進むべき方向が自ずとわかり、一方で「引き返せ」との声が聞こえることから、アトはここを魔法の部屋の類いと判断した。
ここを突破しファルグメントに至るため、アトは三メートル棒で床を探って罠を警戒しながら進んでいく。そのアトの前に、”それ”は現れた。
「何の大義も持たず、己の求めるままに彷徨うだけの”ならず者”でしかない僕よ。
君に、この先に進む資格はない。引き返せ」
(……なるほど、ならば僕の取るべき行動は唯一つだ。
絶対に後ろを振り返らないし、退かない)
”それ”の言葉に対し、アトは不退転の意思を込めて、床を強く踏みしめる。アトに退く意志がないとみた”それ”は、彗星のような速さでアトとの距離を詰めてくる。
「消えろ、消えろ、短き蝋燭! 僕の影法師でしかなきもの!
お前はこの闇の中という舞台の上で大立ち回りするが、舞台袖に消えればそれきりだ!
僕の心の隅に人間性が芽生えたとしても、語りかけるお前は灯火が写した大きな影に過ぎない!
たかだが三年で作られた『アト・サイン』が、ダンジョンを踏破する『観光客』を止められると思うな!!」
”それ”の剣を剣で受けつつ、アトは”それ”に反駁するように叫ぶ。そして、己が存在を込めた大上段からの一閃で、”それ”を斬り伏せた。
●”根性”で、どうにかする
(なるほどな……一人で頑張れってか。
ま、やってやるしかねえわな。依頼だし頑張るのが俺の仕事ってなぁ)
闇の中で孤立しながらも、『ド根性魂』金野・仗助(p3p004832)は動じることなく進む。
その仗助の前に、仗助の姿をした”それ”が現れた。
「深く物事に思いを致すことなく、ただ根性を振りかざす愚者の俺。
アンタには、この先に進む資格はねえんだよ。引き返せよ」
「偽物の俺か……本当に、俺を真似てるのか? いや違うな、絶対違う。
だってよォ、俺ならば資格がどうとかごちゃごちゃうるせえことは言わねぇ!!
うだうだ考えるよりも、”根性”でどうにかするってのが”俺”だろうがッ!!」
”それ”の言葉は、仗助には届かない。根性で物事を解決するという仗助の在り方を否定したが為に、”それ”は自身とは全く異質な存在だと仗助に認識されてしまったからだ。
「引き返せ? 決して歩みは曲げねえし、止めるつもりもねえよ!」
盾役にとって、”ナニかを護り続ける意思”と言うのは欠かせない。そして、対象が何であれ護り続ける以上は倒れたり屈したりするわけにはいかないのだ。
”それ”の言葉に従ってここで引き返すと言うことは、敵の圧に屈することと同じであり、それを仗助自身が認められるはずはない。
堂々とそう告げる仗助に対し、”それ”は何の言葉も返さない――否、返せないのだ。
「俺の根性を見せてやる。だから、”テメエの根性”を俺に見せてみろや!!!」
仗助の挑発とも言える叫びに、”それ”は大盾を構えて体当たりを仕掛けてきた。
ガイン! 盾と盾のぶつかり合う鈍い音が響く。仗助はすかさず自身の信念を無形の鎧として纏いながら、逆に身体ごと盾を”それ”に叩き付ける。
盾同士が激突しあう鈍い音が響き続ける。しばらくは互角に見えたが、やがて仗助が優勢となり、勝利を得た。”根性”の有無が、明暗を分けたのだ。
●燃え尽きるまで、止まることなく
「キミは、何のために先に進もうとするのだ?
本来なら、キミは既に死んでいるはずじゃないか。
そんなキミに、この先に進む資格なんてありはしない。
さぁ、さっさと引き返したら如何だ?」
『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)の前に、ゼフィラの姿をした”それ”が現れ、立ちはだかる。”それ”はゼフィラが一度死んでいることを論い、引き返すよう促してくる。
「キミこそ本当に、私のつもりか? 私が遺跡を調べる理由など、言うまでも無いだろう。
未知の探求、失われた過去の研究……そのためにローレットに居るのだから」
ゼフィラには”それ”の問いを愚問だとばかりに切って捨て、そして言葉を紡ぎ続ける。
「それに……そうだね、確かに私は一度死んだ。だが、今の私はここで確かに生きている。
そして、ベッドの上で死を待つ事しか出来なかった頃と違って、自ら立って歩く事が出来る。
この世界で拾った第二の人生、燃え尽きるまで止まらないと決めているんでね。
そんな薄っぺらい言葉なんかで、止められはしないよ!
何も出来ずに死に向かって行く絶望に比べれば、臆することは何も無いさ。
自ら挑めるだけで、私には何よりも喜ばしいのだから!」
言い放ちながら、ゼフィラは”それ”に義手の拳を叩き込む。機先を制された”それ”は、自身がされたようにゼフィラに拳を叩きこまんとするが、ゼフィラは素早く身を躱した。
「後悔も反省も、後からいくらでも出来る。今はさっさと、そこを通してもらおうか!
この手足が砕かれても、私は探求を諦める事は無い!
私を止める事など不可能だと、証明して見せよう!」
さらに畳みかけるように、ゼフィラは”それ”を殴りつける。”それ”は激しい殴り合いの合間に回復を交えるものの、ゼフィラの猛攻の前に耐えきれず力尽きた。
●頼る分、支える
(古代遺跡には何があるかわからない……とはいうけれど、まさか一人で進む羽目になるとは、ね。
一人で進むのがこんなに不安だとは思わなかったけれど、皆同じだものね。頑張るしかないわね?)
『「Concordia」船長』ルチア・アフラニア(p3p006865)は、依頼においては支援役であり、後方で仲間を支える代わりに、前衛の仲間に護ってもらうのが常であった。それ故に一人孤立して闇の中を進む不安は強くはあるのだが、怯えていても事態が好転するはずもない。とにかく他の仲間と合流するしかないと意を決してルチアは進む。
そのルチルの前にも、やはり”それ”は現れた。
「自らは手を汚すことなく、仲間に頼り続けるしかない寄生者の私。
自らの安全のために、ソワソンを見捨てて逃れた卑怯者の私。
あなたに、この先に進む資格はないわよ。引き返しなさい」
”それ”の言葉を聞いたルチアの表情に、少々の苦渋が混じる。
「……確かに、そうとも言えるかもしれないわね」
だが、ルチアはすぐに決然とした表情になって、目の前の”それ”を見据える。
「だからって、止まる訳にはいかないの。
仲間に頼ってるのは事実だけど、その分私は仲間を支えている。
それが私の役割だけど、どうしても必要なら私だって、誰かを傷つけられる。
それに――小娘が一人ソワソンに戻って、何が出来たというの? 死体が一つ増えただけよ」
そう返すルチアの掌に、聖なる光が集まっていく。
「――私は、あなたの言葉に惑わされはしない!」
ルチアの叫びは、”それ”の言葉が精神にまとわりつこうとするのを綺麗に振り払う。同時にルチアは掌を前に突き出して、光を”それ”に浴びせかけた。
一方、”それ”もルチアと同じように光を掌に集め、ルチアに向けて放っていく。互いに癒やしを自身に施したために長く続いた、闇の中での光の応酬の末に立っていたのは、ルチアだった。
●言葉は逆鱗に触れて
(……『この手』の類の試練か。遺跡などで、たまに見かけるが。
やはり、最後に立ちはだかるのは己自身という事なのか。何度か経験あるが)
闇の中に一人孤立するというこの状況を、『双彩ユーディアライト』恋屍・愛無(p3p007296)は既に経験済みであった。その先に待ち受ける者も含めて。
故に、愛無の姿をした”それ”が現れた瞬間、”それ”よりも先に愛無は口を開いた。
「263G」
「……?」
機先を制した愛無の言に、”それ”は訝しむ。
「何かって? 今の僕の手持ち。全財産。それで良い感じの曲の一つもかけてくれ。
ジュークボックスだって、それくらいはやってのけるだろ? ――んじゃ、始めようか」
そこまで告げると、愛無は”それ”の言葉を待った。
「……ただ食欲のままに貪るだけの、利己主義者の僕よ。
お前にこの先に進む資格はない。引き返せ」
”それ”は己が役目を思い出したかのように、愛無に告げる。だが、その言葉は迫力に欠けていた。一方、愛無は”それ”の言葉を黙って聞いていたが、次第に全身に怒気を纏わせていく。
「……お前が『僕』なら、間違ったところで『引き返せ』なんて言いやしないさ。
僕は失ったんだ、何もかも。僕にとって引き返せるような『過去』は、もう『未来』にしかない。
僕は取り戻すためだけに生きている。かつて失った物を。今あるはずのモノを」
一歩、愛無が踏み出す。気圧されるように、”それ”は一歩退く。
「僕のツラして、『引き返せ』とか気軽に言ってみたか!?
『役目として言わなきゃいけない台詞だから、とりあえず言ってみました』ってか!?
今の僕の気持ちがわかるか!? 世の中、『逆鱗』って言葉があるんだ!」
愛無を理解せずになまじ愛無の姿を取った”それ”の言葉は、愛無の逆鱗に触れていた。”それ”が身構える暇も無く、愛無の繰り出した巨大な蟹の鋏は”それ”を挟み込み、食らっていた。
●諦めを抱けども
(……勘弁してくれよ。これってアレだろ、出てきた自分と戦って倒す展開になるやつ。
俺が俺と真面目に戦ったらどう考えても引き分ける未来しか見えないぞ。嫌になるな全く)
『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)もまた、この先の展開を予想していた。そして、溜息をついてみせる。守りに特化した者同士が戦えば、決着が付かないのは明らかだった。
(――で、相手はどうせこちらを否定する言葉を投げてくるんだろう?)
普通なら綺麗な台詞を吐いて論破するところだが、俺には無理だと世界は頭を振った。その瞬間、世界の眼前に、世界の姿をした”それ”が現れる。
「敵を倒す力も無く、諦めを抱いている俺よ。
そんな俺に、この先に進む資格はない。諦めて、引き返せ」
(やっぱりな……俺に、その言葉を否定する、或いは受け入れる術はない。
人生に関する様々なモノを諦め、捨てて生きてきたんだ)
そんな自分が何を言って返そうとも、中身のない薄っぺらなものでしかない。だから、世界は”それ”に対して何ら反駁せずに黙り続けていた。しかし、だからと言って世界は何もしないわけではない。
(……こんな俺でも、死んだら悲しむような奴が少しはいそうなんでな。
そして単純な話、自分が偽物に敗れるなんてダサい事この上ないだろう?)
故に、”それ”に負けられないと、世界は宙に白蛇の陣を描き、命を与えてけしかける。白蛇は”それ”に噛みつくと、牙に宿る術式で”それ”の力を奪っていく。畳みかけるように、世界は”それ”を黒いキューブで包み、数多の苦痛を与えていった。
”それ”も同様にして世界に反撃を試みる……が、軍配は世界に上がった。本物の面子を保ったと言ったところだ。
「負けてやれなくて悪いな。家の冷蔵庫でケーキが俺の帰りを待ってるから、倒れるわけにはいかなかったんだ」
消滅した”それ”を振り返ることなく告げると、世界は再び歩み出した。
●食材か捕食者か
『風読禽』カイト・シャルラハ(p3p000684)もまた、一人闇の中を進んでいく。その前に、やはり”それ”が現れた。
「忍耐に欠けピィピィと喚き立てる、我が儘な俺。
敵を打ち倒す力も無い、ただの食材でしかない俺。
この先に進む資格は、テメエにはない。引き返せ」
”それ”の言い様に、カイトは少しだけ悲しそうな表情をする。
「でもなー、俺は俺だし? すべて引っくるめて俺を好きって言ってくれる彼女がいるし?
真似っ子しかできねぇテメエとは違うからな、安心しろ!」
だが、すぐに自信満々な様子となり、”それ”の言葉など気にしていないかのように、カイトは言い放った。カイトの思考は基本的にそれはそれ、これはこれであり、”それ”が何を言ってきたとしても、カイトが足を止める理由にはならなかった。
そして、他人を否定するより自分を肯定する性のカイトにとって、自身を否定してくる”それ”の言葉は響くはずもない。何を言われようが、自分の征く道を自由に進むまでだ。
「――あと、食材って言うな! 俺は捕食者の方だ!!
テメェを喰ってやる!! 喰ってお前を糧にしてやるんだ!!」
とは言え、食材呼ばわりだけはカイトの勘に障ったらしい。
カイトはバサリと羽ばたくと、緋色の羽根を”それ”に向けて飛ばした。”それ”も、緋色の羽根をカイトに向けて放っていく。飛び交う緋色の羽根は、カイトと”それ”とを、互いに傷つけ合っていった。
「――俺は昨日の俺を超えて、今の俺を超えて、更に進化する鳥さんだ!」
敵を逃さぬ緋色の応酬は、カイトが過去の、現在の自分を超える意志を示したのを切っ掛けに、次第にカイト優勢へと転じていく。奇しくも、カイトは齢を重ねたばかり。
「お前の言う俺の弱さだって受け止めて、それでも前に行ってやるぜ。お前を『喰って』な!」
ついに倒れた”それ”にカイトは嘴を突き立て、肉を裂き食らっていった。
●未来への希望を持ちて
「お前は、所詮ただの子供に過ぎない。妹さえも守り切れなかったお前に、この先に進む資格はない」
「……」
「今までの依頼だって、お前にできた事は無様に這いつくばることだけ。この先に進んで、何が出来るのか」
「……」
「こんなにも弱く醜い、『出来損ない』よ。悪いことは言わない、引き返せ」
「……」
自身の姿を取った“それ”の、己自身を否定する言葉を、『キトゥン・ブルー』望月 凛太郎(p3p009109)はただ押し黙って聞いていた。だが、しばらくして凛太郎はおもむろに口を開く。
「……お前の言う事は、正しいよ。俺はただの子供に過ぎなかったから、妹を守りきれず死んだ。
今までの依頼だって、みんなに助けられてなんとか生きのびたに過ぎない。
ああ、そうだ、俺は弱い。出来損ないと父さんに呼ばれた望月 凛太郎のままだ」
「認めるのか――それなら」
己への言葉を否定しない凛太郎に、“それ”は唇の端を吊り上げてニヤリと笑う。そして、再度引き返せと告げようとしたときだ。“それ”の言葉に被せて、凛太郎が叫ぶ。
「――でもな。お前が俺なら、何故、初めて俺の事を助けてくれたあのイレギュラーズの事を話さない!?」
「!?」
そのイレギュラーズは、大切なものを守り抜くなら何があろうと最後まで諦めず、決して倒れることなく立ち上がれと凛太郎に説いた。以来、凛太郎はその時のことを深く心に刻んでいる。
そう告げる凛太郎に対し、”それ”はただ戸惑ったかのように動かない。
「お前は、確かに正しいんだろう。でも、お前の言葉にはーーー未来への希望が無いんだ!!!
そんな奴に、俺は絶対に負けない。さぁ、根比べだニセモノ野郎!」
さらに畳みかけながら”根比べ”を挑む凛太郎に、言葉を返せず応戦する”それ”。互いに倒れても立ち上がりを繰り返した”根比べ”の結末は、満身創痍になりながらも最後まで立っていた凛太郎の勝利に終わった。
●秘宝への到達
それぞれ、”それ”に打ち克ったイレギュラーズ達は、同時に八つの扉からファルグメントたるエメラルドのある円形の部屋に姿を現す。そのイレギュラーズ達の姿を、自身を持ち帰る資格があると言わんばかりに、エメラルドから放たれる緑色の光が照らしていた。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
シナリオへのご参加、ありがとうございました。ファルグメントたるエメラルドは、皆さんの手によってしっかりと確保されました。
”それ”の言葉を、「未来への希望が無い」と喝破した凛太郎さんに、MVPをお送りします。良いフレーズでした。
GMコメント
こんにちは、緑城雄山です。今回は<FarbeReise>のうちの一本をお送りします。偽物の自分に打ち克ち、その先の部屋にあるエメラルドを確保して下さい。
ファルベライズは前人未踏の遺跡であるため、以下はOP後半で描写したものを除き全てプレイヤー情報となります。
●成功条件
エメラルド(ファルグメント)の確保
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
●遺跡
ファルグメントの確保を頼まれた遺跡です。
方形の部屋の八つの扉は、それぞれ円形の部屋の八つの扉に繋がっています。しかし、円形の部屋の扉に至るには自身の偽物に勝たなければ行けません。
偽物と遭遇している闇の中は、光源や暗視でも見通せませんが、何故か進むべき方向は直感的にわかります。また、闇の中ですが偽物の姿ははっきり見えるため、偽物との戦闘にペナルティーはかかりません。
また、この闇は無限に広がっており、壁などはありません。いわゆる亜空間的なやつです。
●“それ”
ファルグメントに至る最後の試練です。
イレギュラーズの偽物の姿を取り、この先に進む資格がないから引き返せと言いながら攻撃してきます。模倣したイレギュラーズの能力を持つ一方で、模倣したイレギュラーズには出来ないことも普通にやってきます。
また、偽物の言葉は【副】【無】【疫病】【恍惚】の攻撃としてイレギュラーズの心を刺してきます。
偽物の言葉の内容はGMの独断と偏見となりますが、「いや、そう言う私の偽物だったら絶対こう言ってくる」と言う拘りがある場合は、プレイングで指定して下さい。
●特殊ルール
この試練では、イレギュラーズの意志とか精神力と言ったものが試されます。
そのため、プレイングで偽物の言葉を拒絶し、この先に進む意志を示した場合、その内容によってイレギュラーズの能力に補正が入ります。例えば、ステータスや判定へのボーナス、あるいは攻撃への【弱点】【防無】の付加や、【恍惚】の無効化などです。
ポイントは、前に進む意志の強さと、偽物の言葉を否定する論拠です(否定とは言いましたが、例えば短所は短所として認めて、それでも前に進む理由を述べるようなパターンでも構いません)。
白紙や薄プレですと、当然これらのボーナスは入りません。
●描写について
このシナリオのリプレイは、皆さん一人一人について個別に概ね700~800字程度で描写する形を取る予定です。予め、ご承知おき下さい。
それでは、皆さんのご参加をお待ちしております。
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