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シナリオ詳細

<傾月の京>月下の社

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●満月の満開の森
 『此岸の辺』――そこよりやや離れた、人里離れた森の奥。
 今は静かに、風が木々を揺らす音だけが響く――一つの社があった。
 その社の前に、一人佇む影――。
 周りに立つかがり火に照らされ、しかしその表情は呪符に遮られ見えない。
 おそらく女であろう、という事は分る。その身体つきと、身に着けた衣装は、確かに女性の物である。
 彼女の名は『白耀(はくよう)』。その名は本来の名ではない。彼女が自らに課せた名であり――本来の名は捨てた。この社を、社に収められたそれを守る使命を帯びた、その日から。
 この社は、『此岸の辺』、その呪的な防御をつかさどるための物である。常なれば、近づく者もなく、また近づくもの許さぬ神聖なる場であるが、今宵、それは違った。
 ざあ、と風がなる。かがり火が、辺りを照らす――その木々の影に、ちらちらと映るいくつもの影たち。
「――言葉を尽くせども、聞いてはくれますまい。されど言葉を投げかけましょう。どうぞお帰りください」
 白耀は、言った。
 返答は、ない。
 ただ、ざざ、ざざ、と風の音が返すのみである。
「――お帰りを。此処に踏み入る事は許されませぬ。此処は神聖なる穢れの地――あなた様方の来るところではございませぬ」
 ふ、と風が舞った。
 社を中心に、神聖なる気配が巻き起こった。それは、見えぬ壁、結界となって、社を包み込んだ。白耀の作り上げたものである。
「――強引に押し通るというならば、私も動かねばなりませぬ」
 ざざ、ざ、ざ、と影が動く。風が舞った。白耀の髪がたなびいた。途端、飛び出してきた影が、小刀を掲げて白耀へと襲い掛かる――寸前!
 白耀の服のすそより飛び出した紙片が、瞬く間に狼の形をとった。影の喉笛へと食らいつく。がぶり、と容赦なくかみちぎり、そのまま命を奪い取る。
 白耀の使役する、式である。
「悪しき者よ。お帰りなさい。無益に命を散らすこともありますまい」
 その言葉に、森が騒いだ。ぶわ、と鳥たちが飛び去り、同時に、無数の呪いと、悍ましき気配が立ち込める。
「この社一つに、随分と大仰な軍勢を用意したのですね」
 白耀は、その手を静かに合わせた。途端、服のすそより無数の紙片が飛び散り、様々な獣の形を成した。
「私はこの地を守るもの――その責務を果たしましょう。この地に力で押し通るというのならば、相応の罰を」
 式の獣たちが、主の命に応じるように、吠えた――。

 イレギュラーズ達は森を駆ける。目標は、この地に存在する『社』である。
 昨今、カムイグラを悩ませる『呪詛』の事件――その多くを解決してきたイレギュラーズ達であったが、しかし『此岸の辺』の『けがれの巫女』つづりは、高天御所のさらに強力な呪詛の儀式が行われることを察知する。
 その妨害のために高天御所へと向かうイレギュラーズ達――だが、それを妨害するかのように、さらなる知らせが入る。
 敵の軍勢が群れを成し、『此岸の辺』へ向けて進軍を開始したのだという。そのため、イレギュラーズ達はこちらにも対処しなければならなくなったのだ。イレギュラーズ達は、この窮地に二正面作戦を決行しなければならなくなったのである――。
 さて、『此岸の辺』に関連する施設も、同時に襲撃を受けることとなっていた。『此岸の辺』の呪的防御を構成する名もなき『社』にもまた、敵群が迫っていることを察知したイレギュラーズ達は、『社』へと向かい、進軍を開始する。
 社に到着したイレギュラーズ達が見たものは、呪獣と忌、そして七扇直轄部隊『冥』と戦う、一人の女性と式神の群れの姿であった。
「あなた様方は――」
 女性――白耀は声をあげると、静かに頭を下げた。
「言葉にせずとも、伝わることはございます。どうか、ご助力を」
 イレギュラーズたちが救援に来た存在であることを、その気配で察したのだろう。たぐいまれなる力を持っているようであるが、それでも彼女一人で、ここを維持することは困難だろう。
 イレギュラーズたちは、社を背に、武器を構えた。
 敵の気配は、あちこちから発せられている。
 長い夜が、始まろうとしていた。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 『此岸の辺』――その呪的防御を担当する『社』を防衛しましょう。

●成功条件
 白耀を守りながら、敵をすべて撃退する。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

●Danger! 捕虜判定について
 このシナリオでは、結果によって敵味方が捕虜になることがあります。
 PCが捕虜になる場合は『巫女姫一派に拉致』される形で【不明】状態となり、味方NPCが捕虜になる場合は同様の状態となります。
 敵側を捕虜にとった場合は『中務省預かり』として処理されます。

●備考
・当シナリオでは依頼の成否、もしくは此岸ノ辺へのダメージによって、此岸ノ辺に様々な影響が出る場合があります。

●状況
 此岸ノ辺、その呪的防御を担う、森の奥の『社』。
 此岸ノ辺の破壊を目論む敵に関係により、この『社』にも敵の襲撃が発生しています。
 社の守り手、白耀により、ぎりぎりで持ちこたえていたものの、彼女一人でここを防衛しきる事は難しいでしょう。
 また、白耀は社を守る結界を展開しています。彼女が倒されてしまった場合、社の防衛は非常に困難なものとなるはずです。
 皆さんは彼女を守りつつ力を合わせ、襲い来る敵を撃退してください。
 作戦決行時刻は夜。大きな満月とかがり火があり、社周辺は明るいですが、森の奥などは暗くて見通しづらいかもしれません。
 敵は数回に分けて波状攻撃を仕掛けてくる様子です。適宜備えつつ迎撃してください。

●エネミーデータ
 七扇直轄部隊『冥』 ×不明
  七扇に所属する暗部組織に兵隊です。
  イレギュラーズの皆さんより弱い相手ですが、一番数が多いです。
  オールレンジ対応で様々な攻撃を仕掛けてきます。

 『忌』 ×不明
  呪詛により発生した呪です。大体一回の攻撃につき1~2体います。中ボス枠。
  神秘属性の遠距離攻撃を主に行ってきます。呪いですので、『呪殺』を使ってくることもあります。

 『呪獣』 ×不明
  呪詛により傷つけられた妖です。すべて正気を失い、狂暴化しているようです。
  大体一回の攻撃につき1~2体います。中ボス枠。
  此方は物理属性の近接攻撃を主に行ってきます。『出血』系統のBSを付与してくるでしょう。

 複製肉腫 ×8
  敵の虎の子です。最後の攻撃の際にすべて解き放たれ、皆さんを襲います。
  打ち捨てられた死体を複製肉腫化させたもので、巨大な腐肉のゴーレムと言った様相をしています。
  見た目通りにタフで攻撃力が高いです。見た目通りに足は遅いので、速度で翻弄してやるのがいいと思います。

●味方NPC
 白耀
 『社』を守る謎の人物です。
 式神を使役したり、結界を展開し仲間を守るなどを得手とします。
 強力な味方ですが、しかし彼女が倒れれば敗北が濃厚になるという弱点にもなっています。
 助力を得つつ、要所では守ってあげましょう。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。

  • <傾月の京>月下の社完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年10月05日 22時50分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

フェルディン・T・レオンハート(p3p000215)
放浪の騎士
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
ドゥネーヴ領主代行
只野・黒子(p3p008597)
群鱗
グリーフ・ロス(p3p008615)
その色の矛先は
アシェン・ディチェット(p3p008621)
玩具の輪舞
バスティス・ナイア(p3p008666)
猫神様の気まぐれ
鏖ヶ塚 孤屠(p3p008743)
鏖ヶ塚流槍術

リプレイ

●月下の社に
 ざわざわと木々がなる。風に乗ってかすかに感じられる、敵意と殺意の気配。
 『此岸の辺』よりやや離れた、人里離れた森の奥。此岸の辺の、呪的防御を行う社――其処に今、九つの人影が立ち、そしてそれを取り囲むように、悪の先兵が布陣していた。
「これまで御身一人で……」
 足元に転がる死体――それは、七扇直轄部隊『冥』の隊員の物であり、この社を襲撃を仕掛けてきた下手人達でもある。『放浪の騎士』フェルディン・T・レオンハート(p3p000215)は、それらを一人で片づけたという、社の巫女の手腕に感心しつつ、声をかけた。
「敬服します。……失礼ですが、お名前は」
「私に名前はありません。この社に仕えた時から、私は私を捨てました」
 ひゅう、と冷たい風が、辺りを駆け抜けた。社の巫女が、その背に背負いし宿命とは如何なものであったか――今は知る由もないが、しかし決して軽いものではなかったことは、うかがい知れる。
「私を呼ぶことが必要ならば、白耀、とお呼びください」
「では、白耀さん。此処からは、ボクも微力を尽くそう」
「貴女は、援護をお願い」
 『狐です』長月・イナリ(p3p008096)がウインク一つ、言った。
「敵の狙いはこの社――そして、社の巫女たる貴女。頼りにはしてるけれど、無茶はしないで」
「心得ました」
 優雅な所作で、白耀が一礼をする。
「これより背中は預けよう。社の主よ、我らにも力を貸してくれ。守る為の力を」
 『ドゥネーヴ領主代行』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)が穏やかに告げるのへ、白耀は静かに頷くことで返答とした。それから、懐から一枚の符を取り出すと、小声で祝詞を唱え、解き放った。途端、イレギュラーズ達の身体に、温かな何かがまとわりつくのを感じた。それは決して、不快なものではない。
「簡易なものではありますが、魔除けの結界を皆様の御身に。幾ばくかの助けにはなるでしょう」
「あったかいのね……」
 『玩具の輪舞』アシェン・ディチェット(p3p008621)が両手を見つめながら、言った。仄かに輝くように感じる、温かな結界の光。
「のろい、と、おまじない、は同じ『呪』と言う字を用いるというけれど。この『おまじない』は、優しくて嬉しいわ。今、京を脅かす『のろい』は、怖くて悲しいから、同じ字を用いても違うものなのね」
 ディチェットは柔らかに笑った――京で流行る『呪い』が、こんな風に温かなものであったならよかったのに。しかしそれとは正反対のものが、しかも今宵はそれを超える大呪が、引き起こされようとしているというのだ。
「異貌の存在であれども、その身に宿る力は悪しき物では無さそうだね」
 『猫神様の気まぐれ』バスティス・ナイア(p3p008666)がくすりと笑って言った。身を包むその結界は、ディチェットがそう感じたように、バスティスにも温かに感じられた。
「この気配、神霊に通じる存在なのかな?」
 バスティスの言葉に、しかし白耀は返答を濁して返す。
「語ることを、今の私には許されておりません……申し訳ありませんが」
「いいよ。色々制約もあるだろうしね……大丈夫、気にしてないよ」
 にこり、とバスティスは笑った。バスティスはかつての世界では神聖を持つものの一人だ。生者との契約において様々な決まりごとがある事を、重々理解している。だから、白耀がどのような存在に仕えるものであろうとも、そこに容易く話せぬ禁忌がある事も、分かっているものだ。
 と――穏やかな時間は唐突に終わりを告げた。ざわ、となる木々の森が、強まった殺意と敵意により激しく揺れる。
「気配が濃くなりました……来ます、ね」
 『その色の矛先は』グリーフ・ロス(p3p008615)が静かに声をあげた。隠密での行動も可能であろうな冥たちが、ここまで自身の存在をアピールしてくるのは、此方の戦意を挫くことが目的だろうか。だとするならば、その目論見は無駄なものだと言えよう。
「どう……攻めてくるでしょうか、只野さん」
 グリーフは、『群鱗』只野・黒子(p3p008597)へと尋ねた。その戦略眼が、大局を見据える。
「すでに白耀様への攻撃が行われていることを鑑みて……敵は複数の部隊による波状攻撃を行い、此方の疲弊を狙ってくるものと思われるのです」
 黒子が言う。ですが、と呟いてから、続けた。
「戦力の逐次投入は下策……という事を教えてあげるのです」
 その挑発の言葉を受け取ったかのように、一斉に気配が動き出した。ざぁ、と木々をかき分けて現れたのは、前衛四名、後衛四名の冥の兵隊たち、そして一匹の呪獣と忌の姿だ。
「まずは第一波、と言った所ですか」
 『鏖ヶ塚流槍術』鏖ヶ塚 孤屠(p3p008743)が呟いた。ゆっくりと、手にした槍を構える。
「ここが呪的防御の要だと言うのなら、死守しなければですね。落とされたらマズイです」
 孤屠のいう通り、ここを墜とされれば、此岸ノ辺への影響は免れまい。此岸ノ辺はイレギュラーズ達の活動拠点でもあるため、此岸ノ辺えのダメージは、イレギュラーズ達全体へのダメージともなる。
「そう言う事だ。さぁ、始めよう……守り切るぞ!」
 マナガルムの言葉に、仲間達は頷き、刃を手に取った。
 かくして、此岸ノ辺を巡る防衛線、その一つの戦いの幕が上がった――。

●波状
 両軍が、戦場と化した社、そして森を駆ける。
「この社を渡す心算は無い。最早立ち去れとも警告をする心算も無い──この場で朽ちよ、我が槍にてお相手しよう」
 真紅の稲妻が地を駆ける――いや、それはマナガルムの赤く輝く閃光の槍の一撃。月光のみが照らす森の中、我此処に在りと告げる、紅の戦旗。
 真紅の槍が、四人の冥達を薙ぎ払う――一人は、まともに正面から受け、そのまま命を失う事となった。残る三人はかろうじて急所への直撃を割け、健在。そのまま跳躍、マナガルムへと襲い掛かる。
「シィィィィィッ」
 鋭い呼気とともに振るわれる短刀が、マナガルムの端正な顔、その頬へ一筋の傷をつけた。わずかにピリリと走るしびれは、即効性の毒か。
「ふ……見た目通りに下衆な手を使う」
 しかし、白耀によって施された結界が、その毒を打ち消すのを感じた。とはいえ、そう何度も変わり身となってくれるわけではないだろう。マナガルムは手にした『グロリアスペイン』を振るい、冥達を引きはがす。
「ぶっ飛ばすわよ!」
 イナリが『贋作・天叢雲剣』を掲げると、引きはがされた冥の兵士の一人、その周辺に爆発が巻き起こった。暗闇を朱く照らす炎が冥の兵士を吹き飛ばし、そのまま意識を失わせる。続いてもうひと振り。続く爆発が、さらなる冥の兵士を吹き飛ばした。
「こっちは任せて! 呪獣と忌! お願いっ!」
「任された! フェルディン・T・レオンハート――推して参る!」
 イナリの言葉に、飛び出したのはレオンハートだ。白銀の小手が、月光を受けて凛々しく輝く。手にした細剣が煌き、呪獣、稲光を纏うイタチのような妖へ振るわれた。
 キィ、と小さく悲鳴を上げて後、呪獣はレオンハートへ、威嚇の声をあげた。ばぢばぢと雷が爆ぜる。なるほど、どうやらこの呪獣は、雷獣と呼ばれる、雷の化身のような妖が元になっているらしい。強力な妖であるが、それを呪いに用いたという事は、敵も相当の手練れという事か。
「君も被害者なのは分っている……けれど、すまない。今は加減している余裕はない……!」
 振るわれる呪獣の剛腕を細剣で受け流し、レオンハートは再び呪獣に斬りつける。刃が呪獣の目を切り裂き、その視界を奪う――同時に。
「せめて苦しまないように――一撃で落とします!」
 高く跳躍した孤屠が、上空から落下速度を乗せて槍を叩きつけた! 背中から心臓を貫かれた呪獣が、がぁ、と断末魔をあげながら地に倒れ伏す。
 一方、相方の死を知った忌は怒る様に雄たけびを上げた。呪獣と同様、雷獣の忌であるその獣は、その背に纏った雷を、一気に戦場へと解き放つ。走る雷がイレギュラーズ達を次々と打ち据え、後方、白耀のいる場所へと迫る――。
「白耀ちゃん、力を貸すよ!」
 バスティスは己の賦活の力を、白耀へと分け与えた。その力を借りた白耀は、複数の符を投げ放ち、それにて五芒星を描くや、結界を展開。撃ち放たれた雷は、バスティス、白耀、そしてディチェットを包む結界によって阻まれ、激しい閃光と共に消滅した。
「ご助力、心より感謝を。私一人では防ぎきれぬやもしれませんでした……」
「今は仲間だからね、助け合うものだよ」
 バスティスが笑う。それに対する白耀の覆われた表情は分らぬものの、何処か柔らかな雰囲気と印象を、バスティスに与えた。
 しかし、とバスティスは思う。この月夜は、この神聖なる場所においてなお、強大な呪術の気配を感じさせる。まるで死の国を思わせる様だ……。
「さぁ、白耀さん。わるいひとたちは、懲らしめてあげましょう?」
 ディチェットの構えたライフルが、白煙を上げた。放たれた弾丸は忌に命中。すかさず放つ第二射が、さらに忌の身体に傷をつけた。
「悲しい呪い、冷たい呪い……これ以上は、やらせないのだわ!」
 忌が吠える。再び巻き起こる雷は、しかし不発に終わった。
「合わせます、足を止めましょう!」
 ディチェットの銃撃に合わせるように放たれた、グリーフの銃弾が、それを阻害したのだ。二か所から放たれる銃弾が、忌へと驟雨のごとく打ち放たれ、忌に傷をつけていく。
「これで、トドメなのです!」
 黒子の放つ裁きの光が、忌へと降り注いだ。身を焼く聖光が、忌を浄化、消滅させていく。
 第一波をしのいだ、と言うわずかな安堵が、イレギュラーズ達の胸に浮かぶ。だが、戦いはまだ始まったばかりだ。
「さぁ、構えてください。第二波も、もう間もなく来るのですよ……!」
 黒子の言葉に応じるかのように、敵の気配が膨れ上がっていった。

 イレギュラーズ達の、社を守る攻防は続いていく。イレギュラーズ達は、数度にわたる敵の攻撃を危なげなく迎撃。時折、白耀の身柄を狙うかのような冥の兵士が現れたが、
「いけません、前線を抜けた敵が白耀さんを! アシェンさん、お願いします!」
 グリーフの警戒による助言と、
「あら、女の人をかどわかす、なんていけないことなのよ?」
 ディチェットの護衛により、それらを阻むことに成功していた。
 次第に、焦りの感情が敵兵たちの間に蔓延していくのを、イレギュラーズ達も感じ取れていた。黒子の言葉どおり、戦力の逐次投入は悪手と言えただろう。いや、白耀一人が相手ならば、それも正解だったかもしれない。
 だが、今ここには、イレギュラーズ達がいるのだ。小粒の部隊を逐次投入するなど、個別に撃破してくれと言っているようなもの。
「チィ……!」
 前線指揮を執っていた冥の一人が、忌々し気に舌打ちをした。そのまま指笛を甲高くならせる――途端、地響きと共に、八体の巨大な腐肉の巨人が現れた。
「あれは……肉腫? 複製って奴ですか!?」
 孤屠の言葉に、
「間違いない……どうやら、あれが虎の子のようだね」
 レオンハートが頷く。追い詰められた敵は、最後の切り札を切ったようだ。八体の巨大な肉腫が、おお、と雄たけびを上げる。
「あなたは逃がさないっ!」
 イナリが叫び、手にした剣を振るった。爆発が、前線指揮官を貫き、爆破する。
「これで残りは、あの肉腫たちだけね? 割り当て、一人一体よ!」
「おっと、あたしは回復手だから。あたしのぶん、誰か頼むよ?」
 バスティスが手をひらひらと振る。
「じゃあ、私が二人担当するわよ!」
 ふふん、とイナリが胸を張る。
「一体一体、確実に仕留めて行こう」
 マナガルムが言う。
「見た目通り、脚は遅そうなのです」
 黒子の言葉に、
「ならば、近づかれる前に、ダメージを与えておきましょう」
「狙い撃ちね? まかせてちょうだい?」
 グリーフ、ディチェットが笑って返す。
「白耀、引き続き援護を頼む」
 マナガルムの言葉に、白耀は頷く。
「感謝を――」
 そう頭を下げようとする白耀へ、マナガルムは手で制した。
「それは終わってからにしよう。なに、もう間もなく終わるさ」
 マナガルムのその言葉を合図に、仲間達は一斉に戦闘態勢へと入った。ずしん、ずしん、と音を立てて、腐肉のゴーレムが近づいてくる。黒子の見立て通り、その足は遅い。ならば。
「足を止めて、狙い撃ちにします!」
 グリーフの銃弾が、腐肉のゴーレム達の脚を狙い撃つ。ばすん、と音を立てて足を貫く銃弾。ぐらり、と体勢を崩したところへ、
「さぁ、今です、皆さん!」
 その言葉に応じて、仲間達は一斉に飛び出した。
「さぁて、これで最後だよ! 大盤振る舞い、全力全回復で行くからね!」
 バスティスの賦活の力が、仲間達の背中を押す。その身に覆った大小の傷が次々と言えていくことが分かる――そして活力となり、駆ける力となる。
「雷電建御雷神! 必殺っ!」
 雷の力を纏いしイナリが、まさに稲妻のごとく地をかけた。横なぎの一閃が腐肉のゴーレムを切り裂く――ぐらり、とゴーレムが身体を揺らす中、倒れる間も許さぬ、連撃の上段から振り下ろされた電撃が、チリも残さず消滅させる。
「肉腫とて、急所を貫けば――」
 振り下ろされた肉腫の拳を跳躍して回避し、レオンハートは呟く。その細剣が狙うのは、顔面、額の中心――。
「ふっ」
 鋭い呼気と共に突き出された刃が、その額から脳を抉った。おぶ、と醜い断末魔の悲鳴を上げながら、腐肉のゴーレムが地に倒れ伏す。
「永久の眠りを妨げられた不幸……今ここで断ってみせよう」
 マナガルムは、手にした銀の槍を、腐肉のゴーレムへと強かに打ち据えた。その刃がゴーレムの右腕を切り落とし、翻す二の刃が左腕を切り落とす。
「今度こそ――眠れ、永遠に」
 突き出される短槍が、ゴーレムの胸部を貫く。どう、と音を立てて、ゴーレムは地に倒れ伏した。虎の子の複製肉腫と言えど、もはや勝ちの流れに乗ったイレギュラーズ達の敵ではない、という事だろう。次々と、その姿を戦場から消滅させていく。
「砂の嵐の中に、囚われると良いのです――」
 黒子の放つ熱砂の嵐が、残る腐肉のゴーレム達を包み込み、足を止める。
 その嵐を切り裂いて、孤屠の放つ槍が、ゴーレムの身体を貫く。
「近づかれる前に、やらせてもらいますよ!」
 口元から血を流し、にぃ、とわらう孤屠。再び突き出された槍が、ゴーレムの活動を停止させる――残り一体。
 すでにイレギュラーズ達の猛攻を受けてボロボロのゴーレムに、研ぎ澄まされた、一筋の銃弾が突き刺さった。正確無比な、物語を終結させるとどめの銃弾。それを額に受けたゴーレムは、ずし、と膝をつき、その活動を停止させる。
「もう、おやすみの時間だから……ゆっくり眠って。もう、誰にも起こさせないのだわ……」
 静かにそう呟くのは、銃弾の主、ディチェットだ。ディチェットは、掲げた銃口をゆっくりと下げると、悲し気に腐肉のゴーレム達を見やった。
 無理やり起こされ、使役され……苦痛を与えられる。その様が、たまらなく悲しかった。
 されど、彼らには再びの眠りが与えられ……。
 月下の社には、再びの静寂が戻ったのであった。

●静かの社で
「生き残りはいない、みたいね。逃げたのかしら」
 イナリが首をかしげるのへ、「恐らくそうなのです」と黒子が頷いた。
「此方に捕虜を残さなかった……と言う点では、優秀なようなのです。まぁ、乱戦でしたし、そのような余裕もこちらにはなかったのですけれど」
「むー、しょうがないわね。捕虜くらい取りたかったけれど」
「社は守れました。それでいいと思いますよ」
 グリーフがそう言うのへ、イナリも「そうね」と頷いた。いずれにせよ、作戦は成功したのだ。充分な成果を出したのだといえるだろう。
「さて……終わったわけだけれど。社の修繕の手が必要かい?」
 バスティスが尋ねるのへ、白耀は頭を振った。
「いいえ……皆さま、鮮やかな手並みでございました故、社への損害はほとんどありません。皆様の手を借りずとも、修復は可能でしょう」
「そうかい? いや、社の見学もしてみたかったのだけれど、残念だなぁ」
 そう言うバスティスへ、どこか柔らかな雰囲気を崩さずに、白耀はいう。
「社は禁忌の地でございますので……とはいえ、皆様なら、立ち入る資格もあるやもしれません。もしも落ち着いたら、その時には」
「白耀さんは、これからも……此処で一人で?」
 仕えを続けるのか、と、孤屠が尋ねる。白耀は頷いた。
「それが、勤めでございます。そしてそれは、皆様の力になるものだと、信じております」
「礼を言っておかないといけないね。ボクたちが活動できるのは、この社のおかげでもある」
 レオンハートが頭を下げるのへ、白耀もまた、恭しく一礼をした。
 今はどこか、温かみのある月光が、戦いに疲れた一同を照らしていた。そんな月を見上げながら、ディチェットは言葉を紡ぐ。
「全部終えたら、またお祭りとかもできるのかしら……」
「そうだな。きっと、すべて終えた、その時には……」
 マナガルムが頷く。
 この先に何が待ち受けているのかは、まだわからない。
 だが、この戦いの先には明るい未来が待っているのだと。
 そう信じて、進み続けるしかないのだ――。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 社は今も、森の奥。
 一人の巫女と共に、皆様の旅路の安全を祈っているのでしょう。

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